【解決手段】柔軟性を示す透明基材4と、透明基材4の上に形成された下地層3と、下地層3の上に複数のドット2aにより形成されたドットパターン2とを備えた精密ドットパターン印刷フィルム1であって、ドット2aの直径が50μm以下であることから、パターン精度に優れている。したがって、この精密ドットパターン印刷フィルム1をブラックマトリックスとすることにより、迷光が防止され、高いコントラストを有するブラックマトリックスを得ることができる。さらに、当該ブラックマトリックスを光拡散フィルムに用いることにより、広い視野角特性を有し、高いコントラストを有する光拡散フィルムを得ることができる。
前記ドットが遮光性を有しており、当該遮光性を有するドットは、その膜厚を1μmとした場合において、波長380nm〜780nmの可視光領域における光学濃度が2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の精密ドットパターン印刷フィルム。
柔軟性を示す透明基材と、前記透明基材の上に形成された下地層と、前記下地層の上に複数のドットにより形成されたドットパターンとを備えた精密ドットパターン印刷フィルムの製造方法であって、
柔軟性を示す透明基材の上に下地層を形成する工程と、
前記下地層の上に複数のドットからなるドットパターンを形成する工程とを含んでなり、 更に、前記ドットパターンを形成する工程が、
前記複数のドットに対応した形状のパターン溝が形成されたグラビア印刷用版胴の上に、前記ドットを形成するインクを二枚のブレードを用いて塗工する工程と、
前記版胴上に塗工されたインクを前記透明基材上に形成された下地層に転写する工程とを含み、
前記インクの転写は、前記下地層を前記インクが塗工された版胴に圧着することにより行われ、当該転写時に前記版胴と前記下地層とが接触してから離間するまでの転写時間を0.5秒以上かつ10秒以下とすることを特徴とする精密ドットパターン印刷フィルムの製造方法。
前記インクは、チクソトロピー性を示し、回転粘度計により測定される粘度が、回転数を0.5rpm以下としたとき100Pa・s以上、かつ、回転数を10rpm以上としたとき50Pa・s以下であることを特徴とする請求項4に記載の精密ドットパターン印刷フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面では、特徴をわかりやすくするために、その特徴部分を模式的に示したり、各構成要素を見やすくするため、その寸法の縮尺を異ならせて示したりすることがある。
【0022】
[精密ドットパターン印刷フィルム]
先ず、本発明の一実施形態として
図1及び
図2に示す精密ドットパターン印刷フィルム(以下「ドット印刷フィルム」と記載する場合がある。)1について説明する。
図1は、ドット印刷フィルム1の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1に示すドット印刷フィルム1の構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
ドット印刷フィルム1は、
図1及び
図2に示すように、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の柔軟性を示す透明基材4の上面に、光透過性のある下地層3が形成された透明フィルム5と、この下地層3の上面に複数のドット2aにより形成されたドットパターン2とを備えている。
【0024】
なお、本実施形態では、ドットパターン2の説明を簡略化するため、
図1及び
図2に示すドット2aの平面形状を円形とし、ドット2aの配置も規則的な配列パターンとしたが、ドットパターン2については、これに限定されるものではない。例えば、ドット2aの平面形状については、楕円や多角形等の任意の形状を選択することができる。このように、ドット2aの平面形状が円形以外の場合には、当該ドットの平面形状を円近似し、その近似円の直径をトッド2aの直径とする。また、ドット2aの配列パターンについても、ランダムな配置としてもよい。
【0025】
本実施形態のドット印刷フィルム1は、光拡散フィルムに使用されるブラックマトリックスとして好適に用いられる。このドット印刷フィルム1をブラックマトリックスとして使用する場合、ドットパターン2は、遮光性を有するドット2aによって形成され、得られたドットパターン2がブラックマトリックスとなる。なお、本実施形態では、ドット2aが遮光性を有する場合について説明するが、ドット印刷フィルム1をブラックマトリックス以外の用途に用いる場合であれば、ドット2aは必ずしも遮光性を有することを必須とするものではない。
【0026】
ドット印刷フィルム1をブラックマトリックスとして使用する場合、ドット2aの直径は、5μm以上かつ50μm以下であることが好ましく、より好ましくは7μm以上かつ30μm以下であり、さらに好ましくは10μm以上かつ15μm以下である。
【0027】
ドット2aの直径が5μm未満であると、光の反射・散乱効果が低下することで、光拡散フィルムにおける視野角の向上効果が得られ難い。また、ドット2aの形成を後述のグラビア印刷法を用いて行う場合において、ドット2aの直径が5μm以上であれば、印刷性が良く、良好な形状のドット2aを得ることができる。一方、ドット2aの直径が50μmを超えると、透過する光量が低下することに加え、ドット2aによる画像のざらつき感が発生してしまう。
【0028】
特に、本実施形態のドット印刷フィルム1をブラックマトリックスとして使用する場合は、ドット2aの直径が15μm以下であることが好ましい。ドット2aの直径を15μm以下とすることで、当該ブラックマトリックスを用いて形成した表示装置において、輝度やコントラストが高く視認性に優れるとともに、広い視野角特性をも有する表示装置を得ることができる。また、本実施形態のドット印刷フィルムにおいては、長尺印刷フィルムの作製に適したグラビア印刷法を用いた場合においても、直径15μm以下のドット2aを良好な形状で形成することができる。したがって、長尺、かつ15μm以下のサイズのドットを有するドット印刷フィルム1としても好適である。
【0029】
下地層3は、酸化物微粒子及び有機高分子を含む複合材料により構成されている。酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、若しくはシリカ等の無機酸化物微粒子を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。
【0030】
有機高分子としては、後述するドット2aを形成するインクに対して親和性を有する樹脂であればよく、例えば、エチルセルロース、プロピルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジンエステル樹脂等を挙げることができる。また、これらを2種類以上混合して用いてもよい。
【0031】
特に、ポリウレタン樹脂等の柔軟性を有する樹脂を使用すれば、下地層3が柔軟性を有することとなり、その結果、後述する
図3に示すグラビア印刷装置にてドット形成用のインク9が版胴6から下地層3上に転写される際に、下地層3が版胴6のパターン溝7に追従して接触し、かつ、パターン溝7に押し込められることで、転写性も良好となるので好ましい。
【0032】
これら酸化物微粒子(O)と有機高分子(R1)との比率(O/R1)は、質量比で90/10〜10/90であることが好ましく、より好ましくは60/40〜40/60である。酸化物微粒子(O)の比率が上記範囲よりも高いと、透明基材4との密着強度が弱くなり、得られたドット印刷フィルム1の透過率が低下し、ヘーズ値が高くなる。一方、比率が上記範囲よりも低いと、透明基材4との密着強度が弱くなるのに加えて、グラビア印刷法によりドット2aを形成する際の受容層としての効果が小さく、印刷したドット2aのパターンに垂れ、滲みを生じる虞がある。
【0033】
また、下地層3の厚さは、0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜3μmである。下地層3の厚さが上0.5μm未満であると、後述するグラビア印刷法によりドット2aを形成する際の受容層としての効果が小さくなる。一方、下地層3の厚さが10μmを超えると、後述するグラビア印刷法によりドット2aを形成する際に、ドット2aのパターンに割れ等が生じる虞がある。
【0034】
ドットパターン2を形成する複数のドット2aは、光吸収性を示す顔料と、有機高分子とを含む複合材料により構成されている。光吸収性を示す顔料としては、可視光領域である波長380nm〜780nmの範囲で光を吸収できるものであればよく、例えば、カーボンブラックや、チタンブラック、酸化鉄等の金属酸化物等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。また、銀錫合金微粒子のように、黒色を呈する金属微粒子を用いることもできる。
【0035】
有機高分子としては、グラビア印刷に適性があればよく、例えば、セルロース系樹脂、ロジンエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。また、これらを2種類以上混合して用いてもよい。なお、セルロース系の樹脂等は、後述するインク9のチクソトロピー性を制御しやすく、更に印刷時の転写性も良好となるため、より好ましい。
【0036】
光吸収性を示す顔料(M)と有機高分子(R2)との比率(M/R2)は、質量比で30/70〜80/20であることが好ましく、より好ましくは、40/60〜70/30である。光吸収性を示す顔料(M)の比率が上記範囲よりも低いと、ドット2aの遮光性が不十分となることで、コントラストの低下を招くことになる。一方、光吸収性を示す顔料(M)の比率が上記範囲よりも高いと、後述するドットパターン2の形成工程において、ドット2aの印刷性が悪くなり、有機高分子による膜硬化が不足し、下地層3に対するドット2aの十分な密着性が得られなくなる。
【0037】
ドット2aの各種条件が上記範囲を満足することで、ドット2aは、厚さ1μmにおいて、波長380nm〜780nmの可視光領域における光学濃度(OD値)を2以上とすることができる。これにより、ドットパターン2が形成されたドット印刷フィルム1は、光拡散フィルムに使用されるブラックマトリックスとして好適に用いることが可能となる。
【0038】
また、ドット2aの厚さ(高さ)は、0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜5μmである。ドット2aの厚さが0.5μm未満であると、必要な遮光性を得るために光吸収性を示す顔料の比率を増加させる必要が生じる。その結果、ドット2aの印刷性が悪くなり、有機高分子による膜硬化が不足し、下地層3に対するドット2aの十分な密着性が得られなくなる。一方、ドット2aの厚さが10μmを超えると、ドット2aに割れが生じる虞がある。また、ドット印刷フィルム1をブラックマトリックスとして使用した場合に、ドットパターン2が形成された面上にRGB膜を塗工・形成する際に、ドット2aが存在する部分で盛り上がり段差が生じるため、光漏れを生じる虞がある。
【0039】
なお、ドット2aの厚さ(高さ)は、ドット2aの上面中央の平坦部分の厚さをもって、その値とする。ただし、ドット2aの直径が小さく、上面が平坦とはならない場合には、平均の厚さをもってその値とする。
【0040】
なお、光吸収性を示す顔料としては、波長380nm〜780nmの可視光領域だけでなく、紫外光領域である波長365nm(Hg−i線)等の紫外光を吸収できるものを選択してもよい。これにより、ドット2aは、可視光だけでなく紫外光に対しても遮光性を有することになる。このような顔料を選択することにより、ドット2aは、厚さ1μmにおいて、波長380nm〜780nmの可視光領域及び365nmの紫外光における光学濃度(OD値)を2以上とすることができる。
【0041】
また、このような光吸収性を示す顔料を用いて、ドット印刷フィルム1を製造する際と同様の方法により、透明基材上に各種の遮光性パターンを形成したパターン形成フィルムを作製すれば、当該パターン形成フィルムは、遮光性パターンが紫外光を遮光することから、ブラックマトリックス等の可視光遮蔽用途だけでなく、紫外線感光性樹脂のパターン形成用フォトマスクとしても用いることができる。なお、前記カーボンブラックやチタンブラック、酸化鉄等は、紫外光に対して光吸収特性を有している。
【0042】
また、遮光性パターンには、必要に応じてUV吸収剤等の紫外線カット材料を添加してもよい。これにより、遮光性パターンにおける紫外線領域での遮光性を更に高めることができ、フォトマスク用途としての性能をより高めることができる。
【0043】
[精密ドットパターン印刷フィルムの製造方法]
次に、上記ドット印刷フィルム1の製造方法について説明する。
上記ドット印刷フィルム1の製造方法には、透明基材4の上に下地層3を形成する工程と、下地層3の上に複数のドット2aからなるドットパターン2を形成する工程とを含む。
【0044】
「下地層の形成工程」
下地層3の形成工程は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等の柔軟性を有する透明基材4の上面に、下地層3を形成するための下地層形成用塗料を塗工した後、乾燥させる工程である。これにより、透明基材4の上面に下地層3が形成される。塗工方法としては、例えばグラビア印刷法やバーコート印刷法、オフセット印刷法等を用いることができ、その中でも特に、マイクログラビア印刷を用いることが好ましい。
【0045】
下地層3の厚さは、0.5μm〜10μmであることが好ましく、より好ましくは1μm〜3μmである。下地層3の厚さが上0.5μm未満であると、後述するグラビア印刷法によりドット2aを形成する際の受容層としての効果が小さくなる。一方、下地層3の厚さが10μmを超えると、後述するグラビア印刷法によりドット2aを形成する際に、ドット2aのパターンに割れ等が生じる虞がある。
【0046】
下地層形成用塗料としては、上記の下地層3の構成成分である酸化物微粒子及び有機高分子の他に、有機溶媒を含む塗料が好適に用いられる。
酸化物微粒子としては、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、若しくはシリカ等の無機酸化物微粒子を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
下地層形成塗料における酸化物微粒子の含有量は、0.2質量%〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜8質量%である。酸化物微粒子の含有量が0.2質量%未満であると、下地層3の厚さが薄くなり、ドット2aを形成する際の受容層としての効果が小さくなる。一方、酸化物微粒子の含有量が15質量%を越えると、下地層3の厚さが厚くなり、印刷したドット2aのパターンに割れ等が生じる虞がある。
【0048】
有機高分子としては、次工程でドット2を形成するインク9に対して親和性を有する樹脂であればよく、例えば、エチルセルロース、プロピルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジンエステル樹脂等を挙げることができる。また、これら2種類以上を混合してもよい。
特に、ポリウレタン樹脂等の柔軟性を有する樹脂を使用すれば、下地層自体が柔軟性を有することとなり、その結果、グラビア印刷法にてドット形成用のインク9が胴版から下地層上に転写される際に、下地層が胴版のパターン溝に追従して接触し、かつパターン溝に押し込められることで、転写性も良好となるので好ましい。
【0049】
下地層形成塗料における有機高分子の含有量は、0.2質量%〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1質量%〜8質量%である。有機高分子の含有量が0.2質量%未満であると、下地層3の厚さが薄くなり、ドット2aを形成する際の受容層としての効果が小さくなるからであり、一方、15質量%を越えると、下地層3の厚さが厚くなり、印刷したドット2aのパターンに割れ等が生じる虞がある。
【0050】
有機溶媒としては、上記酸化物微粒子が分散可能であり、上記有機高分子を溶解することが可能で、かつ透明基材4に対する濡れ性を有していればよい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサノン等の環化脂肪族炭化水素、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、2−プロパノール等のアルコール類等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。
なお、酸化物微粒子の分散については、表面処理剤や分散剤等を併用してもよい。
【0051】
「ドットパターンの形成工程」
ドットパターン2の形成工程は、上記の下地層3の上面に、ドット2aを形成するためインク9をグラビア印刷により塗布した後、乾燥させる工程である。これにより、下地層3の上面に複数のドット2aからなるドットパターン2が形成される。
【0052】
ドット2aを形成する際は、上記のドット2aの構成成分である光吸収性を示す顔料及び有機高分子の他に、有機溶媒を含むインク9が用いられる。また、インク9は、グラビア印刷に適したチクソトロピー性を有することが好ましい。
【0053】
光吸収性を示す顔料としては、可視光領域である波長380nm〜780nmの範囲の光を吸収できるものであればよい。例えば、カーボンブラックや、チタンブラック、酸化鉄等の金属酸化物等が挙げられる。また、これらを2種以上混合してもよい。また、銀錫合金微粒子のように、黒色を呈する金属微粒子を用いることもできる。
さらに、光吸収性を示す顔料として、波長380nm〜780nmの可視光領域だけでなく、紫外光領域の波長365nm(Hg−i線)等の紫外光を吸収できるものを選択すれば、ドット2aに、可視光だけでなく紫外光の遮光性も付与することができる。
【0054】
インク9における光吸収性を示す顔料の含有量は、1質量%〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%〜20質量%である。光吸収性を示す顔料の含有量が1質量%未満であると、ドット2aの遮光性が不十分となることで、コントラストの低下を招くことになる。一方、光吸収性を示す顔料の含有量が25質量%を越えると、ドット2aの遮光性やコントラストについては問題ないものの、印刷性が悪くなる。
【0055】
有機高分子としては、グラビア印刷に適性があればよく、例えば、セルロース系樹脂、ロジンエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラート樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。また、これらを2種類以上混合してもよい。これらの樹脂の中でも、セルロース系の樹脂等は、インク9のチクソトロピー性を制御しやすく、更に印刷時の転写性も良好となるため、より好ましい。
【0056】
インク9における有機高分子の含有量は、5質量%〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%〜20質量%である。有機高分子の含有量が5質量%未満であると、インク9の粘度が低いために、グラビア印刷時に糸引き等が発生して良好な印刷状態が得られなくなる。一方、有機高分子の含有量が25質量%を越えると、インク9の粘度が高くなり過ぎてグラビア版上へのインク9の入りが不十分となり、設計通りの印刷パターンが得られにくくなくなる。
【0057】
なお、インク9中における光吸収性を示す顔料(M)と、有機高分子(R2)の比率(M/R2)は、質量比で30/70〜80/20であることが好ましく、より好ましくは、40/60〜70/30である。光吸収性を示す顔料(M)の比率が上記範囲よりも低いと、形成されたドット2aの遮光性が不十分となることで、コントラストの低下を招くことになる。一方、光吸収性を示す顔料(M)の比率が上記範囲よりも高いと、ドット2aの印刷性が悪くなるだけでなく、印刷されたドット2aにおいて有機高分子による膜硬化が不足し、下地層3に対する十分な密着性が得られなくなる。
【0058】
有機溶剤としては、上記光吸収性を示す顔料が分散可能であり、上記有機高分子を溶解することが可能で、かつグラビア印刷に適性があるものであればよい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、α-テルピネオール等を挙げることができる。また、これらを2種以上混合して用いてもよい。
なお、光吸収性を示す顔料の分散については、表面処理剤や分散剤等を併用してもよい。
【0059】
また、インク9のチクソトロピー性については、ブルックフィールド(BF)回転粘度計により測定される粘度が、回転数を0.5rpm以下としたとき100Pa・s以上、かつ、回転数を10rpm以上としたとき50Pa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは、回転数を0.5rpm以下としたとき200Pa・s以上、かつ、回転数を10rpm以上としたとき25Pa・s以下である。
【0060】
インク9の粘度が回転数を0.5rpm以下としたとき100Pa・s未満になると、グラビア印刷時にインク9の垂れ・滲みが抑制できず、転写後のドット2aのサイズが設計よりも肥大化してしまうことに加え、糸引き等の不具合が生じることで、良好な印刷外観が得られなくなる。一方、インク9の粘度が回転数を10rpm以上としたとき50Pa・sを超えると、極小のドット2aを印刷するときに、グラビア版上へのインク9の供給が不十分となり、設計通りの印刷形状が得られなくなる。
【0061】
上記の範囲でインク9のチクソトロピー性を制御することで、後述する
図3に示すグラビア印刷装置にてドットパターン2を形成する際に、回転する版胴6とブレード10,11との接点でインク9にせん断力が加わり、インク9が低粘度化することで、パターン溝7へのインク9の供給と、パターン溝7以外の余剰なインク9の除去とを十分に行うことができる。一方、低せん断力下ではインク9が高粘度化するため、パターン溝7中のインク9の下地層3への転写、すなわちドット2aの印刷(形成)時には糸引き等の不具合が生じることなく、良好な印刷外観が得られる。このように、上記の範囲でインク9のチクソトロピー性を制御することで、直径が15μm以下である極小のドット2aを高精度にパターン印刷することが可能となる。
【0062】
なお、インク9は、上記チクソトロピー性を損なわない範囲で、必要に応じて各種成分を添加することができる。
例えば、UV吸収剤等の紫外線カット材料を添加することにより、ドットパターン2の紫外光領域での遮光性を高めることができる。このようなインク9を用いて、透明基材上に各種の遮光性パターンを形成したパターン形成フィルムによれば、紫外線領域の遮光性能をより高めることができるから、当該パターン形成フィルムを紫外線感光性樹脂のパターン形成用フォトマスクとして用いる際の遮光性能をより高めることができ、フォトマスクとして好適に用いることができる。
【0063】
また、分散剤や表面処理剤を添加することにより、光吸収性を示す顔料の有機溶媒に対する分散性を向上させ、より均質で遮光性の高いドット2aを形成することもできる。
【0064】
さらに、インク9には、チクソトロピー性を調整するために、無機微粒子や有機微粒子を添加することもできる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物微粒子を挙げることができる。有機微粒子としては、例えば、アクリル樹脂の微粒子等を挙げることができる。また、これらの微粒子を2種類以上混合して用いてもよい。これらの微粒子のインク9に含有させる含有量は、微粒子自体の成分や粒子径のほか、他成分の種類や量等の各種条件により変わるため一概には言えないが、概ね30質量%以下であることが好ましい。
【0065】
「グラビア印刷装置」
ここで、ドットパターン2の形成においては、例えば
図3に示すようなグラビア印刷装置を好適に用いることができる。このグラビア印刷装置は、円筒状の表面に複数のドット2aに対応した形状のパターン溝7が形成された版胴6と、版胴6の表面にドット2aを形成するためのインク9を塗布するディスペンサ8と、版胴6の表面に塗布されたインク9をパターン溝7に充填させるとともに、パターン溝7に充填されたインク9以外の余剰なインク9を除去する第1のブレード10及び第2のブレード11と、版胴6との間で透明基材4の片面に下地層3が形成された透明フィルム5を挟み込みながら、所定の時間だけ透明フィルム5の下地層3側の表面に版胴6の表面を押圧させるバックアップロール12と、ドット2aが形成された透明フィルム5を案内するガイドロール13a,13bとを概略備えている。
【0066】
このグラビア印刷装置を用いたドットパターン2の形成では、透明フィルム5の下地層3が形成された面を版胴6の表面に所定の時間だけ接触し押圧させることにより、パターン溝7中のインク9を下地層3上に転写させる。そこで、この押圧時間、すなわち、インク9の転写時に版胴6が透明フィルム5の下地層3に接触してから離間するまでの時間を、転写時間とする。
【0067】
図3に示すグラビア印刷装置を用いたドットパターン2の形成工程では、先ず、この転写のために、バックアップロール12及びガイドロール13a,13bの位置調整を行い、印刷速度に合わせて一定の押圧時間、すなわち転写時間が得られるようにする。
【0068】
転写時間としては、0.5秒以上かつ10秒以下とすることが好ましく、より好ましくは1秒以上かつ5秒以下とする。転写時間が0.5秒未満であると、下地層3上への有機溶剤の吸収が不十分となり、版胴6のパターン溝7に充填されたインク9の粘度が上がらず、糸引き等の不具合が発生し、良好なドットパターン2の形状が得られなくなる。一方、転写時間が10秒を超えると、下地層3への有機溶剤の吸収が過剰となり、インク9が高粘度化し過ぎることで、下地層3への転写が悪化する。
【0069】
次に、第1のブレード10及び第2のブレード11の版胴10の表面に対する接する角度を調整する。
ここで、第1のブレード10と版胴6との接点における版胴6の接線aに対して第1のブレード10が為す角度角θ1は、45°以上かつ90°以下の鋭角であることが好ましい。角度θ1が45°未満であるか、または90°を超えると、パターン溝7へのインク9の入りが不十分となる。
【0070】
また、第2のブレード11と版胴6との接点における版胴6の接線bに対して第2のブレード11が為す角度θ2は、100°以上であることが好ましい。角度θ2が100°未満になると、極小のドットパターン2を印刷する際に、パターン溝7の深さも浅くなるため、このパターン溝7に充填されたインク9の一部が、第2のブレード11により掻き出されてしまい、所望のドットパターン2の形状が得られなくなる。これに加えて、掻き出されたインク9が版胴6の表面に付着する結果、透明フィルム5のドットパターン2が形成される領域以外にもインク9が転写されるために、黒色のざらつき感が生じ、良好なドットパターン2を形成できなくなる。
【0071】
第1のブレード10及び第2のブレード11の角度θ1,θ2を上記の範囲に設定することで、版胴6の表面に塗布されたインク9をパターン溝7に確実に充填させるとともに、パターン溝7に充填されたインク9以外の余剰なインク9を確実に除去することができる。これにより、下地層3の上に設計通りのドットパターン2を高精度に印刷することができる。
【0072】
透明フィルム5の転写時間と、第1のブレード10及び第2のブレード11の角度θ1,θ2との調節を行った後に、印刷を行う。
先ず、版胴6の表面にディスペンサ8によりインク9を塗布し、次いで、第1のブレード10及び第2のブレード11により、パターン溝7にインク9を充填させるとともに、版胴6の表面に塗布した余分なインク9を除去する。
次に、版胴6とバックアップロール12との間で透明フィルム5を挟み込みながら、転写時間が0.5秒以上かつ10秒以下となるように、透明フィルム5の下地層3の表面に版胴6の表面を押圧し、その後、透明フィルム5の下地層3の表面から版胴6の表面を離間させる。これにより、透明フィルム5の下地層3の表面にインク9が転写(印刷)される。
【0073】
透明フィルム5の下地層3の表面に転写されたインク9は、その後の乾燥機等(図示せず。)を用いた乾燥工程により、溶媒が除去されることで硬化する。これにより、透明フィルム5の下地層3の表面に複数のドット2aからなるドットパターン2が形成される。
【0074】
なお、溶媒を除去した後に、さらに熱や光等を加え、有機高分子の重合を進める等により、インク9(ドット2a)の硬化度を高めてもよい。
以上の工程を経ることにより、上記ドット印刷フィルム1を得ることができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の製造方法によれば、ドット2a形成用のインク9における光吸収性を示す顔料、有機高分子および有機溶媒の各種条件を上記範囲の値とすることで、得られるドット2aの厚さ1μmにおける波長380nm〜780nmの可視光領域の光学濃度(OD値)を2以上とすることができる。さらに、インク9における光吸収性を示す顔料、有機高分子および有機溶媒の各種条件を上記範囲の値とすることで、インク9の粘度を調整するとともに、インク9のチクソトロピー性を上記のように制御することにより、グラビア印刷装置用いて微小なドット2aの形成を可能とすることができる。これらにより、光拡散フィルムに使用されるブラックマトリックスとして好適に用いることが可能な、ドット印刷フィルムを得ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態の製造方法によれば、長尺の透明フィルム5に対して、直径が50μm以下、特に直径が15μm以下の極小サイズのドット2aを良好な形状でかつ連続的に形成することができる。また、このような極小のドットパターン2が形成したドット印刷フィルム1を、大面積かつ高精度に製造することが可能である。特に、長尺の透明フィルム5に対して連続的に印刷可能なグラビア印刷法を用いることで、長尺の透明フィルム5に直径が50μm以下、特に好ましくは直径が15μm以下の複数のドット2aからなる精密なドットパターン2を連続的に形成できることから、短工程かつ低コストでの製造が可能となり、生産効率や製造コストの改善を図ることができる。また、以下の実施例では、ドットが遮光性を有する場合について説明するが、ドットは必ずしも遮光性を有する必要はない。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。また、以下の実施例では、ドットが遮光性を有する場合について説明するが、ドットは必ずしも遮光性を有する必要はない。
【0078】
[実施例1]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
アルミナ粉末240gと、リン酸エステル系分散剤28gとをトルエン1332gに投入し、サンドミルを用いて分散させ、アルミナ分散液を作製した。次に、エチルセルロース240gをトルエン1808gに溶解させた溶液に、上記アルミナ分散液と、シクロヘキサノン552gと、メチルエチルケトン(MEK)1800gとを加え、ホモジナイザーで混合し、実施例1の下地層形成用塗料を作製した。
次に、この下地層形成用塗料を、厚さが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)からなる透明基材の上に、マイクログラビア印刷により塗布した後、乾燥させることによって、透明基材の上に膜厚2μmの下地層が形成された実施例1の透明フィルムを作製した。
【0079】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、カーボンブラック粒子(比表面積140m
2/g)を、アルキルアンモニウム塩系の分散剤を用いてエタノール中で分散させた後、固液分離して乾燥させることで、分散剤による表面処理を施したカーボンブラック粒子を得た。
次に、エチルセルロースを、α−テルピネオールとブチルカルビトールアセテートが質量比で2:1になるように調整した溶液に溶解させた後、上記表面処理を施したカーボンブラック粒子を加え、3本ロールミルで混合、分散して、実施例1のドット形成用のインクを作製した。なお、カーボンブラック粒子とエチルセルロースとの質量比は30:70とした。
【0080】
ここで、インクの粘度特性の調節は、カーボンブラック粒子表面の分散剤量、すなわちカーボンブラック粒子を表面処理する際のアルキルアンモニウム塩系分散剤の添加量を調整することで行い、BF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき100Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき40Pa・sとなるようにした。
【0081】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として直径15μmの真円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例1の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にて、ドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び110°に設定した。
【0082】
実施例1で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.2以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.2であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0083】
[実施例2]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例2の透明フィルムを作製した。
【0084】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、カーボンブラック粒子とエチルセルロースの質量比を45:55とし、インクの粘度特性をBF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき200Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき20Pa・sとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のドット形成用のインクを作製した。
【0085】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として短軸が10μm、長軸が20μmの楕円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例2の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にて、ドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び110°に設定した。
【0086】
実施例2で得られたドットは、膜厚1.0μm、短軸10μm、長軸20μmの楕円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は3以上であり、波長365nmでの光学濃度は3.1であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0087】
[実施例3]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例3の透明フィルムを作製した。
【0088】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、カーボンブラックとエチルセルロースの質量比を60:40とし、インクの粘度特性をBF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき250Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき15Pa・sとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のドット形成用のインクを作製した。
【0089】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として直径15μmの真円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例3の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にて、ドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び10°に設定した。
【0090】
実施例3で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は4以上であり、波長365nmでの光学濃度は4.1であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0091】
[実施例4]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例4の透明フィルムを作製した。
【0092】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、カーボンブラック粒子(比表面積140m
2/g)を、アルキルアンモニウム塩系の分散剤を用いてエタノール中で分散させた後、固液分離して乾燥させることで、分散剤による表面処理を施したカーボンブラック粒子を得た。
次に、エチルセルロースと紫外線吸収剤(パルソール1789、DSMニュートリションジャパン社製)とを、α−テルピネオールとブチルカルビトールアセテートとが重量比で2:1になるように調整した溶液に溶解させた後、上記表面処理を施したカーボンブラック粒子を加え、3本ロールミルで混合、分散し、実施例4のドット形成用のインクを作製した。なお、カーボンブラック粒子とエチルセルロース及び紫外線吸収剤との質量比は45:40:15とした。
【0093】
ここで、インクの粘度の調節は、カーボンブラック粒子表面の分散剤量、すなわちカーボンブラック粒子を表面処理する際のアルキルアンモニウム塩系分散剤の添加量を調整することで行い、BF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき210Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき25Pa・sとなるようにした。
【0094】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として直径13μmの真円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例4の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にて、ドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び110°に設定した。
【0095】
実施例4で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径13μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は3以上であり、波長365nmでの光学濃度は3.7であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0096】
[実施例5]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例5の透明フィルムを作製した。
【0097】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、実施例4における印刷速度を20m/分、転写時間を1.1秒とした以外は、実施例4と同様にして、実施例5の透明フィルムの上にドットを形成した。
【0098】
実施例5で得られたドットは、膜厚0.7μm、直径13μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.2以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.9であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0099】
[実施例6]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1のアルミナ粉末をシリカ粉末に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の下地層形成用塗料を作製した。
次に、この下地層形成用塗料を、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、マイクログラビア印刷により塗布した後、乾燥させることによって、透明基材の上に膜厚2μmの下地層が形成された実施例6の透明フィルムを作製した。
【0100】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、実施例6の透明フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の透明フィルムの上にドットを形成した。
【0101】
実施例6で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.1以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.1であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0102】
[実施例7]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1のアルミナ粉末をジルコニア粉末に替えた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の下地層形成用塗料を作製した。
次に、この下地層形成用塗料を、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、マイクログラビア印刷により塗布した後、乾燥させることによって、透明基材の上に膜厚2μmの下地層が形成された実施例7の透明フィルムを作製した。
【0103】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、実施例7の透明フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7の透明フィルムの上にドットを形成した。
【0104】
実施例7で得られた遮光性ドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.2以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.1であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0105】
[実施例8]
「下地層形成用塗料の作製及びプライマー層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例8の透明フィルムを作製した。
【0106】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、カーボンブラック粒子(比表面積140m
2/g)を、アルキルアンモニウム塩系の分散剤を用いてエタノール中で分散させた後、固液分離して乾燥させることで、分散剤による表面処理を施したカーボンブラック粒子を得た。
また、アルミナ粒子を、アルキルアンモニウム塩系の分散剤を用いてエタノール中で分散させた後、固液分離して乾燥させることで、分散剤による表面処理を施したアルミナ粒子を得た。
次に、エチルセルロースを、α−テルピネオールとブチルカルビトールアセテートが質量比で2:1になるように調整した溶液に溶解させた後、上記表面処理を施したカーボンブラック粒子と表面処理を施したアルミナ粒子とを加え、3本ロールミルで混合、分散して、実施例8のドット形成用のインクを作製した。なお、カーボンブラック粒子とアルミナ粒子とエチルセルロースとの質量比は28:2:70とした。
【0107】
ここで、インクの粘度特性の調節は、カーボンブラック粒子表面とアルミナ粒子表面の分散剤量、すなわちカーボンブラック粒子とアルミナ粒子を表面処理する際のアルキルアンモニウム塩系分散剤の添加量を調整することで行い、BF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき100Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき50Pa・sとなるようにした。
【0108】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として直径15μmの真円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例8の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にて、ドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び110°に設定した。
【0109】
実施例8で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.2以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.0であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、以下の表1A及び表1Bに示す。
【0110】
[実施例9]
「下地層形成用塗料の作製及び下地層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例9の透明フィルムを作製した。
【0111】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、実施例8におけるカーボンブラック粒子とアルミナ粒子とエチルセルロースとの質量比を26:10:64とした以外は、実施例8と同様にして、実施例9のドット形成用のインクを作製した。
【0112】
ここで、インクの粘度特性の調節は、カーボンブラック粒子表面とアルミナ粒子表面の分散剤量、すなわちカーボンブラック粒子とアルミナ粒子を表面処理する際のアルキルアンモニウム塩系分散剤の添加量を調整することで行い、BF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき150Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき50Pa・sとなるようにした。
【0113】
次に、上記
図3に示すグラビア印刷装置において、版胴として直径15μmの真円形状のパターン溝が形成されたグラビア版を用い、上記実施例8の透明フィルムの上に、印刷速度15m/分、転写時間1.5秒の条件にてドットを形成した。なお、第1のブレード及び第2のブレードの角度は、それぞれ50°及び110°に設定した。
【0114】
実施例9で得られたドットは、膜厚1.0μm、直径15μmの真円形状であり、糸引きやドットの欠け等の不具合は発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.1であり、当該ドットが十分な遮光性能を有していることがわかった。
以上から、外観、光学特性とも問題のない良好なドット印刷フィルムが得られたことが確認された。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0115】
[実施例10]
「下地層形成用塗料の作製及びプライマー層の形成」
実施例1と同様にして、厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材の上に、膜厚2μmの下地層が形成された実施例10の透明フィルムを作製した。
【0116】
「ドット形成用インクの作製及びドット印刷フィルムの作製」
次に、アルキルアンモニウム塩系分散剤の添加量を調整することで、インクの粘度特性を、BF回転粘度計による粘度が、回転数が0.5rpmのとき400Pa・s、かつ回転数が10rpmのとき150Pa・sとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、実施例10のドット形成用のインクを作製した。
次に、実施例10のドット形成用のインクを使用した以外は、実施例2と同様にして、実施例10の透明フィルムの上にドットを形成した。
【0117】
実施例10で得られたドットは、膜厚1.0μm、短軸10μm、長軸20μmの楕円形状であり、糸引きは発生していなかった。また、ドット部分の波長380nm〜780nmでの光学濃度は2.5以上であり、波長365nmでの光学濃度は2.2であり、当該ドット自体は十分な遮光性能を有していた。ただし、ドットの中にインクの未転写部分(ドットの欠け)が存在するものがあり、このため、ドット印刷フィルムとしては、他の実施例に比べて外観及び光学特性が低下していた。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0118】
[比較例1]
透明フィルムとして、下地層を形成していない厚さが100μmのPETフィルムからなる透明基材を用いた以外は、実施例2と同様にして、前記透明フィルムの上にドットを形成した。
【0119】
比較例1で得られたドットは、直径40μmの略円形まで肥大化しており、膜厚も変動が大きく測定できなかった。更に糸引き等の不具合が発生していた。このため、良好なフィルム外観及び遮光特性を得ることができなかった。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0120】
[比較例2]
ドットの形成時に、上記
図3に示すグラビア印刷装置における第2のブレード11を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして、透明フィルムの上にドットを形成した。
【0121】
比較例2で得られたドットの寸法は設計通りであったが、第2のブレードを使用していないために、版胴上でパターン溝以外の余剰部分のインクを確実に除去することができなかった。その結果、得られたドット印刷フィルムにおいてドットパターン以外にもインクが付着したために、黒色のざらつき感が生じてしまい、良好な外観及び光学特性を有するドット印刷フィルムを得ることができなかった。
以上の作製条件及び得られたドット印刷フィルムの評価結果をまとめて、下記の表1A及び表1Bに示す。
【0122】
【表1A】
【0123】
【表1B】