特開2015-66557(P2015-66557A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-66557(P2015-66557A)
(43)【公開日】2015年4月13日
(54)【発明の名称】加圧治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20150317BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20150317BHJP
   B23K 101/40 20060101ALN20150317BHJP
【FI】
   B23K20/00 340
   B23K3/00 310H
   B23K3/00 310R
   B23K101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-200701(P2013-200701)
(22)【出願日】2013年9月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩之
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167AA01
4E167AA17
4E167AA29
4E167AB05
4E167AD02
4E167BA10
4E167BA17
4E167DA05
(57)【要約】
【課題】積層された被接合材に対し、均等に圧力を加えた状態で保持することが可能な加圧治具を提供する。
【解決手段】加圧治具100は、基部10と、基部10に装着されたアーム20と、接合対称となる積層体200を間接的に加圧する加圧部材としての押圧ボルト30と、積層体200に重ねて配置される圧力受けプレート40と、基部10に締結されることによって積層体200を加圧する圧力を発生させる締結部材としての締結ボルト50と、を備えている。この加圧治具100は、積層体200を積層方向に加圧しながら加熱して接合する接合方法に使用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合部材と、第2の被接合部材とを、接合材料を介して積層して積層体を形成し、該積層体を積層方向に加圧しながら加熱して接合する接合方法に用いる加圧治具であって、
前記積層体を載置する載置部を有する基部と、
前記基部に装着されたアームと、
前記アームに取り付けられ、前記積層体を間接的に加圧する凸曲面を有する加圧部材と、
前記加圧部材の前記凸曲面に対応する凹曲面を有し、前記載置部に載置された前記積層体に重ねて配置される圧力受けプレートと、
前記アームに取り付けられ、前記基部に締結されることによって前記積層体を加圧する圧力を発生させる締結部材と、
を備えたことを特徴とする加圧治具。
【請求項2】
前記アームは、前記基部に回動可能に装着されており、
前記締結部材は、前記アームにおいて、前記基部との回動支点とは反対側に装着されている請求項1に記載の加圧治具。
【請求項3】
さらに、前記加圧部材による前記積層体への加圧力を調節する調節機構部を有している請求項1又は2に記載の加圧治具。
【請求項4】
前記加圧部材は、前記アームに形成された孔に挿入して装着されるボルトであり、前記調節機構部は、前記ボルトと螺合するナットである請求項3に記載の加圧治具。
【請求項5】
前記凸曲面の曲率半径をR1、前記凹曲面の曲率半径をR2としたとき、R1<R2の関係を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の加圧治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を製造する際の接合工程に用いる加圧治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体チップなどを備えた電子部品の製造において、ニッケルなどの金属材料を含む金属接合材のペーストを用い、半導体チップと金属製基板を接合して積層体を形成することがある。この場合、接合工程では、積層される半導体チップと金属製基板との間にペーストを挟み込んだ状態で加圧して保持し、炉の中で一定時間300℃以上の温度で熱処理をする必要がある。このような熱処理を含む接合工程では、例えばバネ、シリンダーなどの加圧手段を使用できない。そのため、例えば金属製基板上にペーストを介して積層された半導体チップの上に、荷重を均等にするための金属板を重ね、さらに、その上に重りを配置して荷重を加えた状態で熱処理を行うことが行われていた。
【0003】
また、圧接・ろう接などの金属接合に際し、特許文献1では、被接合部材の上に圧力調整板を積層し、4つのアームの先端にそれぞれ取り付けられた加圧ボルトを備えた治具を用いて熱処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−36899号公報(図2など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記積層体を形成するための接合方法において、重りの荷重を利用する方法は、小さな半導体チップ上に金属板を介して重りを配置するため、荷重のバランスを取ることが難しく、被接合部材への荷重が不均一になって接合部位に横ずれが生じやすいというも問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載されているように、圧力調整板に4点でボルトの締結による荷重を加える方法においても、4箇所の加圧力が均等になるように加圧ボルトを調節することは難しい。そのため、被接合部材への荷重が不均一になって接合部位に横ずれが生じやすいというが問題があった。
【0007】
本発明は、積層された被接合材に対し、均等に圧力を加えた状態で保持することが可能な加圧治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の加圧治具は、第1の被接合部材と、第2の被接合部材とを、接合材料を介して積層して積層体を形成し、該積層体を積層方向に加圧しながら加熱して接合する接合方法に用いる加圧治具である。本発明の加圧治具は、前記積層体を載置する載置部を有する基部と、前記基部に装着されたアームと、前記アームに取り付けられ、前記積層体を間接的に加圧する凸曲面を有する加圧部材と、前記加圧部材の前記凸曲面に対応する凹曲面を有し、前記載置部に載置された前記積層体に重ねて配置される圧力受けプレートと、前記アームに取り付けられ、前記基部に締結されることによって前記積層体を加圧する圧力を発生させる締結部材と、を備えている。
【0009】
本発明の加圧治具において、前記アームは、前記基部に回動可能に装着されており、前記締結部材は、前記アームにおいて、前記基部との回動支点とは反対側に装着されていてもよい。
【0010】
本発明の加圧治具は、さらに、前記加圧部材による前記積層体への加圧力を調節する調節機構部を有していてもよい。
【0011】
本発明の加圧治具において、前記加圧部材は、前記アームに形成された孔に挿入して装着されるボルトであり、前記調節機構部は、前記ボルトと螺合するナットであってもよい。
【0012】
本発明の加圧治具は、前記凸曲面の曲率半径をR1、前記凹曲面の曲率半径をR2としたとき、R1<R2の関係を有していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加圧治具によれば、加圧部材の凸曲面と、圧力受けプレートの凹曲面とを当接させることによって、積層された被接合材に対し、積層方向に均等な圧力を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係る加圧治具の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す加圧治具の平面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る加圧治具によって加圧される積層体の構成例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る加圧治具によって加圧される積層体の他の構成例を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る加圧治具によって積層体を加圧する手順の一部を示す説明図である。
図6図5に続き、加圧治具によって積層体を加圧する手順の一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る加圧治具100の概略構成を示す断面図である。また、図2は、図1に示す加圧治具100の平面図である。
【0016】
加圧治具100は、基部10と、基部10に装着されたアーム20と、接合対称となる積層体200を間接的に加圧する加圧部材としての押圧ボルト30と、積層体200に重ねて配置される圧力受けプレート40と、基部10に締結されることによって積層体200を加圧する圧力を発生させる締結部材としての締結ボルト50と、を備えている。この加圧治具100は、積層体200を積層方向に加圧しながら加熱して接合する接合方法に使用される。
【0017】
<基部>
基部10は、本体11と、本体11から略垂直に立設された二つの壁部12と壁部13を有している。
【0018】
本体11の上面には、接合対称となる積層体200を載置する載置部11aを有している。この載置部11aに積層体200を位置決めして載置し、加圧する。
【0019】
壁部12は、ほぼ水平方向に貫通する穴12aを有している。この穴12aには、アーム20を回動自在に取り付けるシャフト14が挿通されている。
【0020】
壁部13の頂部には、ほぼ垂直な方向にねじ穴13aが設けられている。このねじ穴13aには、締結部材としての締結ボルト50が螺合される。
【0021】
基部10は、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属で構成することができる。
【0022】
<アーム>
アーム20は、基部10の壁部12に回動自在に装着されている。アーム20の基端側には、貫通穴21が形成されており、この貫通穴21にシャフト14が挿入されている。貫通穴21の中心は、アーム20の回動支点となっている。
【0023】
また、アーム20において、回動支点となる貫通穴21とは反対側の端部に、締結部材としての締結ボルト50を固定するための挿通部22が形成されている。挿通部22は、アーム20の端部をコの字形に切欠くことによって形成されている。
【0024】
また、アーム20の中央付近、つまり、回動支点となる貫通穴21と、その反対側の端部の挿通部22との中間には、加圧部材としての押圧ボルト30を挿入するねじ穴23が形成されている。
【0025】
アーム20は、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属で構成することができる。
【0026】
<加圧部材>
加圧部材としての押圧ボルト30は、アーム20のねじ穴23に取り付けられる。押圧ボルト30の先端部は、積層体200を間接的に加圧する凸曲面31が形成されている。
【0027】
押圧ボルト30は、この押圧ボルト30に螺合するナット32を装着した状態でアーム20のねじ穴23に取り付けることができる。ナット32は、アーム20に取り付られた押圧ボルト30を上下に変位させ、押圧ボルト30による積層体200への加圧力を調節する調節機構部として作用する。
【0028】
押圧ボルト30は、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属で構成することができる。
【0029】
<圧力受けプレート>
圧力受けプレート40は、平板状をなす独立した部材である。圧力受けプレート40は、加圧部材としての押圧ボルト30の凸曲面31に対応する凹曲面41を有している。凹曲面41は、圧力受けプレート40の中心と、凹曲面41のもっとも深い中心とが一致するように設けられている。圧力受けプレート40は、凹曲面41を上にした状態で、載置部11aに載置された積層体200の上に重ねて配置される。
【0030】
圧力受けプレート40は、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属で構成することができる。
【0031】
<締結部材>
締結部材としての締結ボルト50は、アーム20の挿通部22に取り付けられる。締結ボルト50は、挿通部22に挿入された状態で基部10の壁部13に形成されたねじ穴13aに締結される。締結ボルト50をねじ穴13aに締結することによって、アーム20がシャフト14を支点にして下方へ押し下げられる。その結果、アーム20に取付けられた押圧ボルト30が圧力受けプレート40を押圧し、載置部11aに載置された積層体200を積層方向に加圧する圧力を発生させる。
【0032】
締結ボルト50は、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属で構成することができる。
【0033】
熱処理における熱膨張を考慮すると、基部10、アーム20、押圧ボルト30、圧力受けプレート40及び締結ボルト50は、いずれも熱膨張係数が近い材質で形成することが好ましく、同じ材質で構成することがより好ましい。
【0034】
次に、図3から図6を参照しながら、本実施の形態の加圧治具100の使用方法について説明する。図3及び図4は、本実施の形態の加圧治具100によって加圧される対象物である積層体200の構成例を示す説明図である。
【0035】
<積層体>
積層体200は、図3及び図4に示すように、第1の被接合部材201と、第2の被接合部材202とを、接合材料203を介して積層した構造を有している。第1の被接合部材201としては、例えば銅、アルミニウムなどの金属製の板材を挙げることができる。第2の被接合部材202としては、例えばICチップなどの半導体装置を挙げることができる。接合材料203としては、例えばニッケルなどの金属微粒子を含む接合用ペーストなどを挙げることができる。
【0036】
図4に示すように、第1の被接合部材201の複数の箇所に、それぞれ第2の被接合部材202を接合することも可能である。つまり、加圧治具100を用いることによって、2つ以上の第2の被接合部材202を同時に第1の被接合部材201に接合することができる。
【0037】
積層体200は、その積層方向に、加圧治具100を用いて圧力を加えられた状態で、例えば300℃以上の温度に加熱される。この加圧・加熱処理によって、接合材料203が接合層に変化し、第1の被接合部材201と第2の被接合部材202とが接合される。
【0038】
図5及び図6は、加圧治具100に積層体200をセットして加圧する手順の一部を説明する説明図である。まず、図5に示すように、シャフト14を中心にして、アーム20を図中の反時計回りに回動させることによって、基部10の載置部11aの上方を開放する。この状態で、載置部11aに積層体200を位置合わせして配置し、その上に圧力受けプレート40を重ねて配置する。
【0039】
次に、アーム20を時計回りに回動させることによって、アーム20を加圧位置にセットする。図6は、アーム20を加圧位置にした状態を示している。そして、押圧ボルト30にナット32を螺合させて嵌め込み、さらに押圧ボルト30をアーム20のねじ穴23に挿入する。この段階で、押圧ボルト30の凸曲面31と圧力受けプレート40の凹曲面41とを当接させて位置合わせを行う。
【0040】
次に、締結ボルト50を基部10の壁部13のねじ穴13aに挿入し、押圧ボルト30が圧力受けプレート40を所定圧力で押圧するまで、締結ボルト50を締結する。このようにして、載置部11aに載置された積層体200に所定の圧力を加えることができる。ここで、ナット32は、押圧ボルト30が動かないように固定するためのものであるが、このナット32を緩めて押圧ボルト30を回転させることで、アーム20に対して押圧ボルト30を上下させて、押圧ボルト30による押圧力を微調整することができる。
【0041】
熱処理は、積層体200を加圧した状態(図1の状態)で保持する加圧治具100を、例えば加熱炉内に入れて行うことができる。熱処理温度は、接合材料203の種類によって異なるが、例えば300℃以上500℃以下の範囲内とすることができる。
【0042】
次に、押圧ボルト30の凸曲面31と、圧力受けプレート40の凹曲面41との関係について説明する。本実施の形態の加圧治具100において、押圧ボルト30の凸曲面31と、圧力受けプレート40の凹曲面41との組み合わせは、押圧ボルト30と圧力受けプレート40とを点接触させるとともに、圧力受けプレート40の中心に押圧力を集中させる意義を有している。押圧ボルト30と圧力受けプレート40とを点接触させることによって、押圧ボルト30の加圧力のうち、垂直方向のベクトルを大きくし、横斜め方向へのベクトルを極力小さくできる。また、凸曲面31を凹曲面41に嵌め合せるように当接させることよって、押圧ボルト30と圧力受けプレート40との位置合わせが容易になるとともに、押圧ボルト30と圧力受けプレート40との水平方向における微小な位置ずれを補正する機能も有している。その結果、圧力受けプレート40に対し、垂直方向の圧力を均等に加えることが可能になり、積層体200の接合部分での横すべりや横ずれを抑制できる。仮に、圧力受けプレート40の上面が平面である場合には、押圧ボルト30の加圧力のうち、横斜め方向へのベクトルが大きくなりやすいため、圧力受けプレート40を均等に加圧することができず、圧力受けプレート40が傾き、積層体200の接合部分に、横すべりや横ずれが生じやすくなる。
【0043】
圧力受けプレート40に対し、垂直方向の圧力を均等に加えるためには、凸曲面31の曲率半径をR1、凹曲面41の曲率半径をR2としたとき、R1<R2の関係を有することが好ましい。ここで、R1<R2の関係を前提として、凸曲面31の曲率半径R1は、例えば3mm以上5mm以下の範囲内とすることが好ましく、凹曲面41の曲率半径R2は、例えば5mm以上10mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0044】
以上のように、本実施の形態の加圧治具100においては、押圧ボルト30の凸曲面31と、圧力受けプレート40の凹曲面41とを当接させることによって、積層体200に対し、積層方向に均等な加圧力を加えることができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。例えば、上記実施の形態では、基部10に対してアーム20を回動自在に構成したが、例えば基部10に対して、平行状態を維持したまま、アーム20を上下に変位させるスライド機構を利用してもよい。
【0046】
また、基部10に対して、アーム20を回動させる方向は、鉛直方向に限らず、例えば水平方向に回動させる機構としてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…基部、20…アーム、30…押圧ボルト、31…凸曲面、40…圧力受けプレート、41…凹曲面、50…締結ボルト、100…加圧治具、200…積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6