とし、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドのドレッシング後における上記研磨面の水抽出液を用いて調製された電気伝導度10μS/cmの試験液Aと上記研磨用組成物との体積比1:1の混合液中における上記砥粒の平均二次粒子径をD
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0014】
<砥粒>
ここに開示される砥粒の材質や性状は特に制限されず、研磨用組成物の使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。
砥粒の好適例としては、コロイダルシリカ砥粒、ヒュームドシリカ砥粒、沈降性シリカ砥粒等のシリカ砥粒が挙げられる。また、砥粒はシリカ以外の材質からなる砥粒(以下、非シリカ砥粒ともいう。)であってもよい。非シリカ砥粒の具体例としては、アルミナ砥粒、チタニア砥粒、ジルコニア砥粒、セリア砥粒等の金属酸化物砥粒や、ポリアクリル酸等の樹脂砥粒が挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。なかでもシリカ砥粒が好ましく、そのなかでもコロイダルシリカ砥粒、ヒュームドシリカ砥粒が特に好ましい。
【0015】
砥粒の平均一次粒子径は、典型的には5nm以上、好ましくは10nm以上である。平均一次粒子径の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。
砥粒の平均一次粒子径の上限は特に限定されない。より平滑性の高い表面を得る観点から、平均一次粒子径は、典型的には300nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。例えば、一次研磨を終えたNi−P基板を研磨する用途向けの研磨用組成物において、上記の平均一次粒子径を有する砥粒を好ましく採用し得る。
【0016】
砥粒の平均一次粒子径は、例えば、BET法により測定される比表面積S(m
2/g)から平均一次粒子径(nm)=2727/Sの式により算出することができる。砥粒の比表面積の測定は、例えば、マイクロメリテックス社製の表面積測定装置、商品名「Flow Sorb II 2300」を用いて行うことができる。
【0017】
ここに開示される研磨用組成物中における砥粒の平均二次粒子径D
m0は、典型的には10nm以上であり、通常は20nm超、好ましくは30nm超、より好ましくは40nm超、さらに好ましくは50nm超である。平均二次粒子径D
m0の増大によって、より高い研磨レートが実現され得る。
砥粒の平均二次粒子径D
m0の上限は特に限定されない。粒子径変化率P
AおよびP
Bの一方または両方が大きくなりすぎることを避ける観点から、平均二次粒子径D
m0は、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下である。より平滑性の高い表面を得る観点から、平均二次粒子径D
m0は、好ましくは350nm以下、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは110nm以下、特に好ましくは70nm以下である。さらに高品位の表面を得る観点から、平均二次粒子径D
m0は、55nm以下であってもよく、40nm以下であってもよい。
【0018】
ここで、砥粒の平均二次粒子径D
m0とは、研磨用組成物を測定サンプルとして超音波方式で測定される粒度分布における体積基準の平均粒子径(mean particle diameter)をいう。平均二次粒子径D
m0は、例えば、日本ルフト社製の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置(商品名「DT−1200」)を用いて測定することができる。上記測定サンプルとしては、砥粒の含有量が6重量%となる濃度の研磨用組成物を用いるとよい。目的とする研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%とは異なる場合には、水の量を増減することにより砥粒含有量を6重量%に調整した研磨用組成物を測定サンプルに用いて平均二次粒子径D
m0を測定するとよい。すなわち、ここに開示される研磨用組成物は、砥粒含有量6重量%において上記の平均二次粒子径D
m0を示すことが好ましい。
【0019】
研磨用組成物中における砥粒の含有量は特に制限されない。すなわち、研磨用組成物の砥粒濃度は、6重量%に限定されず、6重量%とは異なる濃度であってもよい。
研磨用組成物の砥粒濃度は、例えば30重量%以下とすることができ、通常は20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
研磨用組成物の砥粒濃度は、1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは3重量%以上である。砥粒濃度が低すぎると、物理的な研磨作用が小さくなり、研磨速度が低下するため、実用上好ましくない場合がある。
上記砥粒濃度は、被研磨物に供給される研磨液の砥粒濃度にも好ましく適用され得る。
【0020】
<水>
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒の他に水を含有する。水としては、イオン交換水(脱イオン水)、蒸留水、純水等を用いることができる。
【0021】
<酸または塩>
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒および水の他に、研磨促進剤として、酸または塩を含有することが好ましい。ここで、酸または塩を含むとは、酸および塩の少なくとも一方を含むことを指し、酸を含み塩を含まない態様、塩を含み酸を含まない態様、および酸と塩の両方を含む態様、のいずれをも包含する意味である。
【0022】
酸の例としては、無機酸や有機酸(例えば、炭素原子数が1〜10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸等)が挙げられるが、これらに限定されない。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
無機酸の具体例としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等が挙げられる。
有機酸の具体例としては、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、クロトン酸、ニコチン酸、酢酸、アジピン酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、グリコール酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ニコチン酸、ピコリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタンヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸、α−メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
【0023】
研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。酸の含有量が少なすぎると、研磨速度が低下し、実用上好ましくない場合がある。
また、研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下である。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の表面精度が悪くなり、実用上好ましくない場合がある。
【0024】
塩の例としては、前述した無機酸または有機酸の、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩、例えばアルカリ金属塩;アンモニウム塩、例えばテトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;等が挙げられる。塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金蔵リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。例えば、L−グルタミン酸二酢酸四ナトリウムを好ましく使用し得る。塩は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
研磨用組成物中に塩を含む場合、その含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。酸の含有量が少なすぎると、研磨速度が低下し、実用上好ましくない場合がある。
また、研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは7重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の表面精度が悪くなり、実用上好ましくない場合がある。
【0026】
このような酸または塩は、典型的には後述する酸化剤と合わせて用いられることにより、研磨促進剤として効果的に作用し得る。研磨効率の観点から好ましい酸として、メタンスルホン酸、硫酸、硝酸、リン酸、フィチン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸等が例示される。なかでも好ましい酸として、メタンスルホン酸、クエン酸およびリン酸が挙げられる。研磨効率の観点から好ましい塩として、リン酸塩やリン酸水素塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0027】
<酸化剤>
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒および水の他に、研磨促進剤として、酸化剤を含有することが好ましい。
【0028】
酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0029】
研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、0.1重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、例えば0.6重量%以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨速度が低下するため、実用上好ましくない場合がある。
また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、3重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5重量%以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の表面精度が悪くなり、実用上好ましくない場合がある。
【0030】
<塩基性化合物>
ここに開示される研磨用組成物には、塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
アルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩または炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウムが挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0032】
<粒子径変化率P
A>
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様では、電気伝導度10μS/cmの試験液Aと上記研磨用組成物との体積比1:1の混合液中における砥粒の平均二次粒子径D
mAと、上述した砥粒の平均二次粒子径D
m0とから次式:
P
A[%]=|D
mA−D
m0|/D
m0×100;
により算出される平均二次粒子径変化率P
Aが10%以下である。ここで、試験液Aは、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドのドレッシング後における上記研磨面の水抽出液を用いて調製される。
【0033】
上記試験液Aは、例えば以下の手順で得ることができる。すなわち、ノニオン性の界面活性剤を用いて湿式成膜法により作製された発泡ポリウレタンを研磨面に有する研磨パッドを用意する。その研磨パッドを研磨機の定盤に固定して、一般的なドレッシング処理を行う。例えば、アルミニウム等の金属からなる基材の表面に電着または焼結によりダイヤモンド粉末を固定させたパッドコンディショナー(パッドドレッサーとも呼ぶ。)を用いて研磨パッドの表層を削り取るダイヤモンドドレッシングを行う。ダイヤモンドドレッシングは、典型的には、上記研磨パッドの表層を、2μm以上の深さまで削り取るか、あるいは研磨パッドの発泡部分(気泡)が2μm以上、通常は5μm以上の平均開口径で表面に現れるまで削り取るように行われる。このとき、例えば1〜1.5L/分程度のレートで水を供給するとよい。
次いで、適当なレートで洗浄用の水を供給しながら研磨パッドの表面をクリーニングし、その排水を採取する。得られた排水の電気伝導度を測定し、電気伝導度が10μS/cmよりも低い場合には、水の供給レートを小さくして、電気伝導度10μS/cmの排水(試験液A)が得られるようにする。得られた排水の電気伝導度が10μS/cmよりも高い場合には、該排水に適量の水を加えて希釈することにより、電気伝導度を10μS/cmに調整して試験液Aを得る。あるいは、水の供給レートを大きくして、電気伝導度10μS/cmの排水(試験液A)が得られるようにしてもよい。
電気伝導度の測定は常法により行うことができる。測定には、例えば、堀場製作所製の導電率計(型式「DS−12」、使用電極「3552−10D」)を使用することができる。
洗浄用の水としては、イオン交換水、蒸留水、純水等を用いることができる。
【0034】
平均二次粒子径変化率P
Aは、上記試験液Aと研磨用組成物とを体積比1:1で混合する耐凝集性試験を通じて、上記体積比1:1の混合液中における砥粒の平均二次粒子径D
mAと、混合前の研磨用組成物中における砥粒の平均二次粒子径D
m0とから算出することができる。
【0035】
研磨用組成物と試験液Aとを体積比1:1で混合する操作は、これらの液温がいずれも20℃〜28℃程度の範囲にある条件で行うことが好ましい。混合操作は、容器内の研磨用組成物を撹拌しながら試験液Aを加え、その混合液を引き続き攪拌することにより好ましく実施することができる。研磨用組成物に試験液Aを添加し始めてから添加を完了するまでの時間は30秒以内とすることが好ましい。上記混合液中における砥粒の平均二次粒子径D
mAの測定は、試験液Aの添加完了から攪拌を継続し、概ね10分以内に行うことが望ましい。例えば、試験液Aの添加完了から攪拌を継続して5分後の混合液を測定サンプルとして用いるとよい。
【0036】
ここで、混合液中における砥粒の平均二次粒子径D
mAとは、上記混合液を測定サンプルとして超音波方式で測定される粒度分布における体積基準の平均粒子径(mean particle diameter)をいう。平均二次粒子径D
mAは、例えば、日本ルフト社製の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置(商品名「DT−1200」)を用いて測定することができる。平均二次粒子径D
mAの測定には、平均二次粒子径D
m0の測定と同じ装置を用いることが望ましい。
【0037】
研磨用組成物中における砥粒の平均二次粒子径D
m0と、上記混合液中における砥粒の平均二次粒子径D
mAとを上記の式に代入することにより、粒子径変化率P
Aを算出することができる。
【0038】
平均二次粒子径変化率P
Aが低い研磨用組成物は、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドを用いた研磨中に該研磨パッドから流出した成分(パッド流出成分)が研磨用組成物中に混入しても、該研磨用組成物中における砥粒の分散状態が変動しにくい。このような研磨用組成物によると、パッド流出成分の混入により砥粒が凝集して粗大粒子(LPC)が発生する事象が効果的に抑制され得る。
【0039】
発泡ポリウレタン(典型的には、湿式成膜法により製造された発泡ポリウレタン)の製造においては、発泡剤、発泡助剤、整泡剤、成膜助剤等の目的で界面活性剤が使用され得る。したがって、上記パッド流出成分には、発泡ポリウレタンの製造過程で使用された界面活性剤が含まれ得る。
上記パッド流出成分に含まれ得る界面活性剤として、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレン重合体;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンエチレンオキシドポリオキシド化合物等のポリオキシアルキレン付加物;複数種のオキシアルキレンの共重合体(ジブロック型、トリブロック型、ランダム型、交互型);等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。上記パッド流出成分に含まれ得る界面活性剤の他の例として、シリコーン系界面活性剤が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の代表例として、ポリオキシアルキレン・ジメチルシロキサンコポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・ジメチルシロキサンコポリマー等のようなポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。研磨面を構成する発泡ポリウレタンは、このような界面活性剤の1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて含有し得る。界面活性剤の使用量は、研磨パッド用発泡ポリウレタン(典型的には軟質発泡ポリウレタン)の製造における通常の使用量と同程度であり得る。
【0040】
砥粒の分散状態がパッド流出成分の影響を受けにくいことは、使用する研磨パッドの研磨面の組成(例えば、研磨面を構成する発泡ポリウレタンの製造に使用され得る発泡剤、発泡助剤、製泡剤等の種類や使用量)、該研磨面の調整条件(例えば、ダミー研磨やジェット水による洗浄等の、あらかじめ流出物を低減させる処理を行ったか否か)、上記研磨パッドの使用状態(研磨開始からの研磨時間、研磨面の磨耗状態等)等による研磨品質の変動を抑制する観点からも好ましい。
【0041】
ここに開示される研磨用組成物は、粒子径変化率P
Aが10%未満であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下(例えば4%以下)であることがさらに好ましい。粒子径変化率P
Aが小さい研磨用組成物ほど、パッド流出成分の混入による影響を受けにくいといえる。したがって、研磨中における砥粒の分散状態の変動が少ないといえる。粒子径変化率P
Aの下限は、理論上、0%である。
【0042】
上記耐凝集性試験は、例えば、砥粒の含有量が6重量%となる濃度の研磨用組成物を用いて好ましく実施することができる。目的とする研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%とは異なる場合には、水の量を増減することにより砥粒含有量を6重量%に調整した研磨用組成物と試験液Aとを体積比1:1で混合して耐凝集性試験を行うとよい。すなわち、ここに開示される研磨用組成物は、砥粒含有量6重量%において上記の粒子径変化率P
Aを満たすことが好ましい。
【0043】
<イオン強度>
特に限定するものではないが、好ましい一態様に係る研磨用組成物は、砥粒含有量が6重量%となる濃度におけるイオン強度が0.150mol/L以下であり得る。イオン強度が0.150mol/L以下である研磨用組成物は、上述した好ましい粒子径変化率P
Aを示すものとなりやすいので好ましい。かかる観点から、イオン強度が0.135未満である研磨用組成物がさらに好ましい。イオン強度の下限は特に限定されず、研磨用組成物を所望のpHに調整できればよい。研磨速度の向上の観点から、通常は、イオン強度が0.01mol/L以上であることが好ましく、0.02mol/L以上であることがより好ましく、0.03mol/L以上であることがさらに好ましい。
【0044】
本明細書中においてイオン強度とは、研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%となる濃度において、該研磨用組成物中の全てのイオンについて下記式(1)により算出される値をいう。目的とする研磨用組成物の砥粒含有量が6重量%とは異なる場合には、水の量を増減することにより砥粒含有量6重量%に濃度調整した場合における研磨用組成物についてイオン強度を算出する。
【0046】
ここで、式(1)中のIは、イオン強度[mol/L]を表す。m
iは、各イオンのモル濃度[mol/L]を表す。z
iは、各イオンの電荷(価数)を表す。各イオンのモル濃度は、イオン強度の算出に係る研磨用組成物のpH域において解離する(イオン化する)各物質のイオン量(割合)から算出される。例えば、砥粒含有量6重量%に調製された研磨用組成物中に1mol/Lの濃度で含まれる物質Aが、そのpH域において50%しかイオン化しない場合、イオン強度に反映させるモル濃度は0.5mol/Lとなる。
【0047】
イオン強度の算出に係る研磨用組成物(すなわち、砥粒含有量が6重量%となるように必要に応じて濃度調整を行った研磨用組成物)のpH域で解離している各物質のイオン量(割合)は、各物質の解離定数(電離定数、酸解離定数)によって求めることができる。
例えば、研磨用組成物中でA
−とH
+に解離する物質AHの酸解離定数がpKaであり、上記物質AHが研磨用組成物中に1.0mol/L含まれており、その研磨用組成物のpHが3である場合には、A
−の濃度m
Aは、(10
−pKa×1.0[mol/L])/1.0×10
−3の式で求められる。
研磨用組成物に塩を添加する場合には、その塩のカウンターイオンのモル濃度によってイオン強度を算出する。例えば、研磨用組成物中でA
−とB
+に解離する物質ABについては、研磨用組成物中AH又はBOHについては、分けてイオン強度を算出する。
また、研磨用組成物中で一段階以上の多段階の解離をする物質を含む研磨用組成物においては、それぞれの段階で解離しているイオンについてイオン強度を求める。
なお、イオン強度の算出は、研磨用組成物の温度が25℃である場合について行うものとする。
【0048】
研磨用組成物のイオン強度は、例えば、該組成物に含まれるイオン性化合物の種類および使用量(濃度)により調節することができる。上記イオン性化合物としては、上述した研磨促進剤や塩基性化合物として機能する化合物を利用し得る。これら以外のイオン性化合物を用いてイオン強度を調節してもよい。
【0049】
<アニオン性界面活性剤>
ここに開示される研磨用組成物には、アニオン性界面活性剤を含有させることができる。研磨用組成物にアニオン性界面活性剤を含有させることは、粒子径変化率P
Aをより小さくする上で有利となり得る。すなわち、アニオン性界面活性剤を含有させることにより、パッド流出成分の混入が砥粒の分散状態に与える影響が抑制され得る。
【0050】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸系のアニオン性界面活性剤を好ましく使用し得る。ここでいうスルホン酸系アニオン性界面活性剤の概念には、スルホン酸系化合物およびその塩が包含される。スルホン酸塩化合物の例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;その他、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリイソアミレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。このようなスルホン酸系化合物の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。スルホン酸系化合物塩の好適例として、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩およびベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩が挙げられる。
スルホン酸系のアニオン性界面活性剤のなかでも、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレンスルホン酸系化合物およびその塩が好ましい。
【0051】
アニオン性界面活性剤の他の例として、ポリアクリル酸およびその塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)等のポリアクリル酸系アニオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤のさらに他の例として、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
アニオン性界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、粒子径変化率P
A,P
Bを抑制する観点から、砥粒の含有量が6重量%となる濃度に換算した場合におけるアニオン性界面活性剤の含有量を、例えば0.001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.005重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、10重量%以下とすることが適当であり、好ましくは5重量%以下、例えば1重量%以下である。
【0053】
<その他の成分>
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、キレート剤や防腐剤等の、研磨用組成物(典型的には、Ni−P基板等のような磁気ディスク基板の研磨に用いられる研磨用組成物)に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0054】
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸およびα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0055】
<粒子径変化率P
B>
この明細書により開示される事項には、砥粒と水とを含有する研磨用組成物であって、該研磨用組成物中における上記砥粒の平均二次粒子径をD
m0とし、ノニオン性界面活性剤を含む試験液Bと上記研磨用組成物とを所定の量比で混合した混合液中における上記砥粒の平均二次粒子径をD
mBとして、次式:
P
B[%]=|D
mB−D
m0|/D
m0×100;
により算出される平均二次粒子径変化率P
Bが所定のレベル以下に抑制された研磨用組成物が含まれる。粒子径変化率P
Bが所定のレベル以下に抑制された研磨用組成物によると、研磨パッドからの溶出物が混入しても、そのことが研磨後の表面の品質に及ぼす影響を効果的に抑制することができる。
【0056】
粒子径変化率P
Bは、試験液Aに代えて試験液Bを用いる点以外は上述した粒子径変化率P
Aと同様にして求めることができる。ここで、試験液Bとしては、ノニオン性界面活性剤の水溶液を用いることができる。また、上述した研磨面の水抽出液がノニオン性界面活性剤を含む場合には、その水抽出液をそのまま、あるいは適宜希釈または濃縮を行った上で、試験液Bとして用いてもよい。
研磨用組成物と試験液Bとの混合比は特に限定されないが、通常は、体積比で100:1〜1:2程度とすることが適当であり、例えば体積比1:1程度とすることができる。
【0057】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、試験液Bとして、ノニオン性界面活性剤の水溶液を使用する。このような試験液Bとしては、例えば、市販のノニオン性界面活性剤をそのまま、あるいは適宜水で希釈し、または濃縮を行って調製したものを、好ましく用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリンエチレンオキシドポリオキシド化合物を用いることができる。
本発明者は、粒子径変化率P
Bが低い研磨用組成物は、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドを用いた研磨中に該研磨パッドから流出した成分(パッド流出成分)が研磨用組成物中に混入しても、該研磨用組成物中における砥粒の分散状態が変動しにくいことを見出した。このことは、パッド流出成分に含まれるノニオン性界面活性剤が、該パッド流出成分による砥粒の分散状態の変動の一つの要因となっていることを示唆している。このため、試験液Aに代えて試験液Bを用いることにより、パッド流出成分に対する砥粒の分散状態の安定性を簡易に把握することができる。
【0058】
ここに開示される研磨用組成物は、粒子径変化率P
Bが10%未満であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、5%未満(例えば4%以下)であることがさらに好ましい。粒子径変化率P
Bが小さい研磨用組成物ほど、パッド流出成分の混入による影響を受けにくいといえる。したがって、研磨中における砥粒の分散状態の変動が少ないといえる。粒子径変化率P
Bの下限は、理論上、0%である。
【0059】
<用途>
ここに開示される研磨用組成物は、上述のように研磨中における砥粒分散状態の変動が少ないという特徴を活かして、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドを用いて各種の被研磨物を研磨する用途に好ましく適用され得る。上記発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドは、少なくとも研磨面に発泡ポリウレタンを有するものであれば特に限定されず、例えば、全体が発泡ポリウレタンにより構成されている研磨パッド、発泡ポリウレタンの層が不織布等のパッド基材に支持された研磨パッド等であり得る。
また、ここに開示される研磨用組成物は、研磨中において砥粒の分散状態が変動しにくいことから、発泡ポリウレタン製の研磨面を有する研磨パッドを使用しない態様の研磨工程にも適用され得る。例えば、発泡ポリウレタン以外の発泡樹脂を研磨面に有する研磨パッド等を用いた研磨工程に使用することができる。
【0060】
ここに開示される研磨用組成物の研磨対象物(被研磨物)は特に限定されない。上記研磨用組成物は、例えば、磁気ディスク基板、シリコンウエハ等の半導体基板、レンズや反射ミラー等の光学材料等、高精度な表面が要求される各種被研磨物を研磨する用途に好ましく使用され得る。例えば、基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板(Ni−P基板)の研磨に好ましく適用され得る。上記基材ディスクは、例えば、アルミニウム合金製、ガラス製、ガラス状カーボン製等であり得る。このような基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層以外の金属層または金属化合物層を備えたディスク基板であってもよい。なかでも、アルミニウム合金製の基材ディスク上にニッケルリンめっき層を有するNi−P基板を研磨するための研磨用組成物として好適である。かかる用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0061】
また、ここに開示される研磨用組成物は、例えば、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))が100Å〜300Å程度の磁気ディスク基板を一次研磨して10Å以下の表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))に調整する用途や、一次研磨を経た磁気ディスク基板をさらに研磨(二次研磨または仕上げ研磨)する用途等に好適である。なかでも、磁気ディスク基板を二次研磨または仕上げ研磨する用途においては、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。
【0062】
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で被研磨物(磁気ディスク基板)に供給されて、該被研磨物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、被研磨物に供給される研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。
【0063】
ここに開示される研磨用組成物は、被研磨物に供給される前には濃縮された形態(濃縮液の形態)であってもよい。かかる濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍〜50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は、2倍〜20倍(典型的には2倍〜10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
【0064】
このように濃縮液の形態にある研磨用組成物は、所望のタイミングで希釈して研磨液を調製し、その研磨液を被研磨物に供給する態様で好適に使用することができる。上記希釈は、典型的には、上記濃縮液に前述の水系溶媒を加えて混合することにより行うことができる。また、上記水系溶媒が混合溶媒である場合、該水系溶媒の構成成分のうち一部の成分のみを加えてもよく、それらの構成成分を上記水系溶媒とは異なる量比で含む混合溶媒を加えて希釈してもよい。
【0065】
研磨用組成物のpHは特に限定されない。例えば、研磨レートや表面平滑性等の観点から、pH4以下が好ましく、pH3以下がより好ましい。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni−Pの研磨に用いられる研磨液に好ましく適用され得る。
【0066】
ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水系溶媒以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて被研磨物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。
【0067】
<研磨>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、被研磨物の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて被研磨物を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(典型的にはスラリー状の研磨液であり、研磨スラリーと称されることもある。)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0068】
次いで、その研磨液を被研磨物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に被研磨物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記被研磨物の表面(被研磨面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、被研磨物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て被研磨物の研磨が完了する。
【0069】
上述のような研磨工程は、基板(例えば、Ni−P基板等の磁気ディスク基板)の製造プロセスの一部であり得る。したがって、この明細書によると、上記研磨工程を含む基板の製造方法が提供される。
【0070】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0071】
<実施例1>
砥粒、クエン酸、L−グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(GLDA−4Na)、31%過酸化水素水、アニオン性界面活性剤およびイオン交換水を混合して、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、アニオン性界面活性剤濃度0.04%、pH2.7の研磨用組成物を調製した。砥粒としては、平均一次粒子径23nmのコロイダルシリカを使用した。アニオン性界面活性剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を使用した。クエン酸およびGLDA−4Naの使用量は、研磨用組成物のイオン強度が0.052mol/Lとなるように設定した。
【0072】
<実施例2>
砥粒、リン酸、GLDA−4Na、リン酸水素二カリウム、31%過酸化水素水およびイオン交換水を混合して、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、pH2.2の研磨用組成物を調製した。砥粒としては、実施例1と同じものを使用した。リン酸、GLDA−4Naおよびリン酸水素二カリウムの使用量は、研磨用組成物のイオン強度が0.134mol/Lとなるように設定した。
【0073】
<実施例3>
砥粒、クエン酸、GLDA−4Na、31%過酸化水素水、アニオン性界面活性剤およびイオン交換水を混合して、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、アニオン性界面活性剤濃度0.04%、pH2.6の研磨用組成物を調製した。砥粒およびアニオン性界面活性剤としては、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩を使用した。クエン酸およびGLDA−4Naの使用量は、研磨用組成物のイオン強度が0.135mol/Lとなるように設定した。
【0074】
<比較例1>
砥粒、リン酸、リン酸水素二カリウム、31%過酸化水素水およびイオン交換水を混合して、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、pH2.0の研磨用組成物を調製した。砥粒としては、実施例1と同じものを使用した。リン酸およびリン酸水素二カリウムの使用量は、研磨用組成物のイオン強度が0.16mol/Lとなるように設定した。
【0075】
<比較例2>
砥粒、リン酸、GLDA−4Na、リン酸水素二カリウム、31%過酸化水素水およびイオン交換水を混合して、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、pH2.1の研磨用組成物を調製した。砥粒としては、実施例1と同じものを使用した。リン酸、GLDA−4Naおよびリン酸水素二カリウムの使用量は、研磨用組成物のイオン強度が0.267mol/Lとなるように設定した。
【0076】
<比較例3>
アニオン性界面活性剤を使用しない他は実施例1と同様にして、砥粒濃度6%、過酸化水素(H
2O
2)濃度0.6%、pH2.7、イオン強度0.052mol/Lの研磨用組成物を調製した。
【0077】
<耐凝集性試験>
[平均二次粒子径D
m0の測定]
実施例1〜3および比較例1〜3に係る研磨用組成物を測定サンプルとして、日本ルフト社製の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置 (商品名「DT−1200」)を用いて平均二次粒子径D
m0を測定した。
[試験液Aの準備]
ノニオン性の界面活性剤を用いて湿式成膜法により作製された発泡ポリウレタンを研磨面に有する研磨パッドを用意した。その研磨パッドを両面研磨機(スピードファム社製「9B−5P」)の定盤に固定し、1〜1.5L/分のレートでイオン交換水を供給しながら研磨面のダイヤモンドドレッシングを行った後、1〜1.5L/分のレートでイオン交換水を供給しながら研磨面をブラシでクリーニングし、その排水を採取した。得られた排水の電気伝導度を堀場製作所製の導電率計(型式「DS−12」、使用電極「3552−10D」)により測定したところ、10μS/cmであった。そこで、この排水をそのまま試験液Aとして使用した。
[平均二次粒子径D
mAの測定]
各例に係る研磨用組成物に試験液Aを1:1の体積比で添加して混合した。試験液Aの添加完了から攪拌を継続して5分後の混合液を測定サンプルとして、日本ルフト社製の超音波方式粒度分布・ゼータ電位測定装置
(商品名「DT−1200」)を用いて平均二次粒子径D
mAを測定した。
[平均二次粒子径変化率P
Aの算出]
上記で得られた平均二次粒子径D
m0および平均二次粒子径D
mAを次式:
P
A[%]=|D
mA−D
m0|/D
m0×100;
に代入して、平均二次粒子径変化率P
Aを算出した。得られた結果を表1に示す。
【0078】
<研磨試験>
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液として使用して、被研磨基板の研磨を行った。被研磨基板としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を備えた直径3.5インチ(約95mm)、厚さ1.27mmのハードディスク用アルミニウム基板を、Schmitt Measurement System Inc.社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS−3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。この被研磨基板を、上記試験液Aの準備において使用した研磨パッドが定盤に固定された両面研磨機にセットし、以下の条件で研磨を行った。
【0079】
[研磨条件]
研磨荷重:120g/cm
2
基板装填枚数:2枚/キャリア×4キャリア(計8枚)
下定盤回転数:60rpm
研磨液の供給レート:83mL/分
研磨時間:5分
リンス:イオン交換水(1〜1.5L/分)
【0080】
[スクラッチ数評価]
研磨後の基板について以下の条件でスクラッチ数をカウントした。
測定器:ケーエルエー・テンコール社製の表面検査装置「Candela OSA6100」
測定範囲:半径位置 20〜45mm
検出器チャンネル:P−Sc(Radial & Circumferential laser)
【0081】
その結果を、以下の2水準で表1に示した。
○:基板1枚当たりのスクラッチ数が20本未満
×:基板1枚当たりのスクラッチ数が20本以上
【0083】
表1に示されるように、粒子径変化率P
Aが10%以下である実施例1〜3では、粒子径変化率P
Aが10%を上回る比較例1〜3に比べて、スクラッチの発生が明らかに抑制されていた。また、イオン強度を0.150mol/L以下に抑えることにより粒子径変化率P
Aを10%以下に抑制しやすくなること、イオン強度を0.135mol/L未満に抑えることによりさらに粒子径変化率P
Aを低下させやすくなることが確認された。また、実施例1および比較例3から、アニオン性界面活性剤を含有させることにより粒子径変化率P
Aを10%以下に抑制しやすくなることが確認された。
【0084】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。