(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-74945(P2015-74945A)
(43)【公開日】2015年4月20日
(54)【発明の名称】舗装用補修材、及びそれを用いた舗装体の補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20150324BHJP
【FI】
E01C23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-213031(P2013-213031)
(22)【出願日】2013年10月10日
(71)【出願人】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509264268
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・メンテナンス北陸株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134647
【弁理士】
【氏名又は名称】宮部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】森山 守
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】川原 和弘
(72)【発明者】
【氏名】前多 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
(72)【発明者】
【氏名】前田 恵佑
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】兼吉 孝征
(72)【発明者】
【氏名】安久 憲一
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA13
2D053AD03
(57)【要約】
【課題】速硬性を有し、且つ硬化後に過度な強度が発現しない舗装用補修材、及びそれを用いた舗装体の補修方法を提供することを目的とする。
【解決手段】セメント、低強度骨材、及び混和剤を含み、前記低強度骨材の絶乾密度が2.0g/cm
3以下、及び前記セメント100質量部に対して、前記低強度骨材が20〜140質量部であることを特徴とする舗装用補修材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、低強度骨材、及び混和剤を含み、
前記低強度骨材の絶乾密度が2.0g/cm3以下、及び
前記セメント100質量部に対して、前記低強度骨材が20〜140質量部であることを特徴とする舗装用補修材。
【請求項2】
前記セメント100質量部に対して、前記低強度骨材が25〜100質量部である請求項1記載の舗装用補修材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の舗装用補修材を用いて、舗装体を補修することを特徴とする舗装体の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体の補修に用いられる補修材、及びそれを用いた舗装体の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路等のアスファルト又はコンクリートによって舗装された舗装体は、塩害、中性化、凍結融解、化学的腐食、又は交通荷重等の作用により、ポットホールと呼ばれる窪み(穴)が生じることがある。舗装体にポットホールが生じると、通行の妨げになったり、車両のタイヤやホイールを傷つけたりする原因となる。そのため、ポットホールを補修する必要がある。
【0003】
ポットホール等を補修する方法としては、例えば、特許文献1にセメントモルタル用組成物を用いることが記載されている。セメントモルタル用組成物は、水と混練され、この混練物であるセメントモルタルが、ポットホール等の窪みに注入される。そして、注入されたセメントモルタルが固化し、ポットホールを塞ぎ、舗装体の表面が補修される。
【0004】
このような舗装体の補修作業中は、車両の通行を止めなければならないので、補修時間は短い方が好ましい。このため、短時間で強度が発現するセメントモルタル用組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。このような速硬性のセメントモルタル用組成物を用いると、短時間で硬化するので、補修時間を短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−8501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、速硬性のセメントモルタル用組成物を用いると、硬化後すぐに強度が発現する一方、その後の時間経過により強度が過度となり、補修材が剥離したり、補修された表面の一部が飛散したり剥離したりする懸念がある。そこで本発明は、速硬性を有し、且つ硬化後に過度な強度が発現しない舗装用補修材、及びそれを用いた舗装体の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、セメント、低強度骨材、及び混和剤を含み、低強度骨材が所定量配合されることにより、速硬性を有し、且つ硬化後に過度な強度が発現しないことを見出した。すなわち、本発明は、セメント、低強度骨材、及び混和剤を含み、前記低強度骨材の絶乾密度が2.0g/cm
3以下、及び前記セメント100質量部に対して、前記低強度骨材が20〜140質量部である舗装用補修材である。また、本発明は、前記舗装用補修材を用いて、舗装体を補修する舗装体の補修方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、速硬性を有し、且つ硬化後に過度な強度が発現しない舗装用補修材、及びそれを用いた舗装体の補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】圧縮強度に対するゴルフボール反発係数の関係を示したグラフである。
【
図2】ホイールトラッキング試験を実施した補修材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔アスファルト舗装体用補修材〕
本発明に係る舗装用補修材は、セメント、低強度骨材、及び混和剤を含む。本発明において用いられるセメントは、ポルトランドセメントと急硬材とを含有するセメント、アルミナセメント、及び超速硬セメントからなる群から選ばれる少なくとも1種のセメントであることが好ましい。
【0011】
ポルトランドセメントは、公知のポルトランドセメントを制限なく用いることができ、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中よう熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、及び白色ポルトランドセメントを挙げることができる。また、ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合したセメントを使用することができる。
【0012】
急硬剤としては、公知の急硬材を特に制限されることなく使用することができ、例えば、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、水ガラス、硝酸塩、亜硝酸塩、仮焼ミョウバンを含むミョウバン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及びカルシウムアルミネート類を挙げることができる。
【0013】
アルミナセメントは、公知のものを制限なく用いることができ、例えば、AC−1(AGCセラミックス社製)を挙げることができる。
【0014】
超速硬セメントは、公知のものを制限なく用いることができ、例えば、商品名、ジェットセメント(住友大阪セメント社製)、及びライオンシスイ105(住友大阪セメント社製)を挙げることができる。
【0015】
本発明において用いられる低強度骨材は、例えば、軽量骨材、ゼオライト、パーライト、及び再生骨材が挙げられ、パーライトであることが好ましい。低強度骨材は、絶乾密度が2.0g/cm
3以下であり、好ましくは、1.8g/cm
3以下である。硬化体中の骨材分散性確保の面から、絶乾密度は0.2g/cm
3以上とすることができる。絶乾密度が高いと、セメントが硬化して、28日が経過した後の最終的な圧縮強度(以下、長期強度ということがある。)が高くなることがあり好ましくない。絶乾密度は、JIS A 1109(細骨材の密度及び吸水率試験方法)によって測定することができる。
【0016】
本発明において用いられる混和剤としては、例えば、硬化促進剤、及び凝結遅延剤が挙げられ、これら両方を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、及びアルミン酸ナトリウムが挙げられる。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、及びリン酸塩が挙げられる。混和剤を用いることにより、可使時間や強度発現を調整することができる。
【0017】
本発明に係る舗装用補修材は、その他に、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースなどのメチルセルロース類;酢酸ビニルエマルジョン、及びアクリルエマルジョンなどの高分子エマルジョン;スチレンブタジエンゴムラテックス、及びクロロプレンゴムラテックスなどのゴムラテックス;並びにシリコーンなどの消泡剤の各種混和材又は混和剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0018】
本発明において用いられる低強度骨材は、セメント100質量部に対して、低強度骨材が20〜140質量部であり、好ましくは、25〜100質量部であり、より好ましくは、25〜80質量部である。低強度骨材の量が少ないと、長期強度が強すぎることがあり、低強度骨材の量が多いと、硬化直後の圧縮強度(以下、短期強度ということがある。)が弱くなることがある。
【0019】
本発明において用いられる混和剤の添加量は、セメント及び低強度骨材の合計100質量部に対して好ましくは0.01〜5.0質量部、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部とすることができる。
【0020】
〔アスファルト舗装体の補修方法〕
本発明に係る舗装体の補修方法は、本発明に係る舗装用補修材を用いて、舗装体を補修する。舗装体は、例えば、道路である。
【0021】
具体的な補修方法としては、まず、本発明に係る舗装用補修材と水を撹拌混合する。水は、セメント及び低強度骨材の合計100質量部に対して、20〜60質量部とすることができる。次に、その混合物をポットホールなどの補修部分に注入する。注入物が固化することにより、補修部分が補修される。
【0022】
本発明に係る舗装体の補修方法によれば、速硬性を有し、且つ硬化後に過度な強度が発現しないので、補修時間が短く、また補修された部分が塊で飛散することも、車両走行により骨材が細かく割れて細粒化して飛散することもない。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
超速硬セメント(商品名:マイルドジェット,住友大阪セメント社製)、低強度骨材(商品名:パーライトC,絶乾密度:0.74g/cm
3,三井金属鉱業社製)、及び混和剤として、アルミン酸ナトリウム(大洋社製)及びクエン酸ナトリウム(日星社製)をセメント及び低強度骨材の合計100質量部に対して2.0質量部の量で混合して、実施例1に係る舗装用補修材を得た。
【0024】
(実施例2〜4,比較例1〜2)
低強度骨材の配合量を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜2に係る舗装用補修材を得た。
【0025】
(実施例5〜8,比較例3〜4)
実施例1とは異なる低強度骨材(商品名:アサノライト,絶乾密度:1.68g/cm
3,太平洋マテリアル社製)を用い、表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5〜8及び比較例3〜4に係る舗装用補修材を得た。
【0026】
(比較例5〜6)
実施例1とは異なる骨材(川砂,絶乾密度:2.64g/cm
3,揖斐川産)を用い、表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様にして、比較例5〜6に係る舗装体用補修材を得た。
【0027】
(実施例9)
超速硬セメント(商品名:ライオンシスイ105,住友大阪セメント社製)、低強度骨材(商品名:パーライトC,絶乾密度:0.74g/cm
3,三井金属鉱業社製)、及び混和剤として、アルミン酸ナトリウム(大洋社製)及びクエン酸ナトリウム(日星社製)をセメント及び低強度骨材の合計100質量部に対して2.0質量部の量で混合して、実施例9に係る舗装用補修材を得た。
【0028】
実施例1〜9及び比較例1〜6に係る舗装用補修材を用いて、可使時間、短期強度、及び長期強度を以下のように測定した。結果を表1に示す。
【0029】
可使時間:実施例1〜9及び比較例1〜6に係る舗装用補修材に、セメント及び低強度骨材の合計100質量部に対してそれぞれ水40質量部を加えて、コテによる手押しによって可使時間を測定した。
短期強度:実施例1〜9及び比較例1〜6に係る舗装用補修材に、セメント及び低強度骨材の合計100質量部に対してそれぞれ水40質量部を加えて、ポットホールに注入した。注入して30分経過後の圧縮強度をJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従って測定した。
長期強度:実施例1〜9及び比較例1〜6に係る舗装用補修材に、セメント及び低強度骨材の合計100質量部に対してそれぞれ水40質量部を加えて、ポットホールに注入した。注入して28日経過後の圧縮強度をJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従って測定した。
【0030】
【表1】
*1:セメント100質量部に対する配合量
‐:試験不可を示す
【0031】
実施例1〜9及び比較例1〜6から、本発明に係る舗装用補修材は、短期強度が3.0N/mm
2以上であり、速硬性を有し、かつ長期強度が18N/mm
2以下であり、硬化後に過度な強度が発現しないことが分かる。また、可使時間が5〜10分の間であり、使用に適している。
【0032】
(参考例)
試験の目的:短期強度が3.0N/mm
2以上の場合、車両のタイヤ跡がつかないことを実験により検証した。
【0033】
試験の概要:交通開放に必要な強度及びゴルフボール(以下、GBという)反発係数を把握するため、ホイールトラッキング(以下、WTという)試験による検討を行った。試験は舗装調査・試験法便覧B003に準じた方法で行った。試験に先立ち、圧縮強度およびGB反発係数を測定した。その後、WT試験を実施した。WT試験実施時のGB反発係数を測定することにより、交通開放に必要なGB反発係数及び圧縮強度を推定した。WT試験条件を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
試験結果:圧縮強度に対するGB反発係数の関係を
図1に示す。練混ぜ後、4水準のGB反発係数に対してホイールトラッキング試験を実施し、補修材の状況を目視で確認した。ホイールトラッキング走行試験後の状況を
図2に示す。GB反発係数3%では車輪が供試体に埋もれてしまい、反発係数10%、及び23%の時も部分的にタイヤの痕跡が残った。反発係数40%になると、供試体に痕跡は残らなかった。試験結果より、交通開放の目安となるGB反発係数は40%程度、同じく圧縮強度は3.0N/mm
2程度であると考えられる。