【課題】低抵抗値と、色素増感型太陽電池に使用される電解液に対する耐久性とを両立させることが可能な透明導電体膜と透明電極及び色素増感型太陽電池並びに透明導電体膜の製造方法を提供する。
(ただし、Rは有機官能基であり、0≦x≦2、0≦y≦4かつ0<(2x+y)≦4である。)にて表される有機ケイ素化合物及び導電性高分子を含む被覆膜24とを備えている。
前記被覆膜は、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を含む混合液を加水分解してなるアルコキシドの加水分解生成物と導電性高分子とを含む混合物の乾燥硬化膜であることを特徴とする請求項1記載の透明導電体膜。
前記シリコンアルコキシドの質量は、該シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの合計100質量部に対して、15質量部以上かつ45質量部以下であることを特徴とする請求項6記載の透明導電体膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の透明導電体膜と透明電極及び色素増感型太陽電池並びに透明導電体膜の製造方法を実施するための形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の色素増感型太陽電池を示す断面図、
図2は、同色素増感型太陽電池の透明電極を示す平面図、
図3は、同色素増感型太陽電池の透明電極を示す断面図である。
この色素増感型太陽電池1は、光透過性を有する負極2と、電解液3と、正極4とにより構成されており、さらに、この負極2と正極4との間隔を保持するスペーサー(図示せず)及び電解液3を密封する封止ケース(図示せず)等により全体が構成されている。
【0023】
負極2は、透明電極11と、この透明電極11上に形成された酸化物半導体及び増感色素を含有してなる半導体層12とにより構成されており、透明電極11は、透明基材21と、その上に形成された透明導電体膜22とにより構成されている。この透明導電体膜22は、
図2及び
図3に示すように、金属または合金からなる網目状の導電性膜23と、この導電性膜23及び透明基材21を覆うように形成される有機ケイ素化合物及び導電性高分子を含む被覆膜24とにより構成されている。
【0024】
この導電性膜23は、平面視格子状に形成された導電性の金属メッシュ25により構成され、この金属メッシュ25により囲まれた空間部分が開口部26とされている。ここで、金属メッシュ25は金属製であり遮光性であるから、遮光材としても作用する。したがって、この導電性膜23では、金属メッシュ25の部分は透光性を有さず、一方、開口部26の部分は遮光材となる金属メッシュ25を有さないから透光性を有している。
【0025】
また、透明導電体膜22は、被覆膜24及び金属メッシュ25が重なった透光性を有しない部分と、被覆膜24のみが形成された開口部26の透光性を有する部分とにより構成されている。
さらに、透明電極11は、透明基材21上に被覆膜24及び金属メッシュ25が重なるように形成された透光性を有しない部分と、透明基材21上に被覆膜24のみが形成された開口部26の透光性を有する部分とにより構成されている。
以上により、透明導電体膜22及び透明電極11においても、金属メッシュ25が形成された部分は透光性を有さず、金属メッシュ25が形成されていない開口部26は透光性を有している。
【0026】
なお、
図2においては、金属メッシュ25が縦線部と横線部が直行した網目状(平面視格子状)とされ、かつ開口部26が金属メッシュ25により囲まれた正方形状とされているが、平面視した金属メッシュ25の形状及び開口部26の形状は、上記の形状に限定されることなく、用途に応じて様々な形状をとることが可能である。
【0027】
また、
図3においては、透明導電体膜22は、被覆膜24及び金属メッシュ25が重なった部分が厚く、かつ、被覆膜24のみの部分が薄くなるように形成されているが、金属メッシュ25上の被覆膜24を薄く、かつ、被覆膜24のみの部分を厚くすることにより、被覆膜24の表面をほぼ平坦面としてもよい。
また、開口部26に金属メッシュ25の高さとほぼ同等の厚みの透光性を有する平坦化層を形成し、これら金属メッシュ25及び平坦化層上に被覆膜24を形成することによっても、被覆膜24の表面をほぼ平坦面とすることができる。
【0028】
電解液3は、電解質である金属ヨウ化物(ヨウ素イオン)と溶媒とを含有している。
正極4は、透明基材31上に透明導電体膜32が設けられた透明電極33により構成されている。
そして、この色素増感型太陽電池1の半導体層12に外部から光5が入射することにより、発電が行われる。
【0029】
「色素増感型太陽電池」
次に、この色素増感型太陽電池1の各構成要素についてさらに詳しく説明する。
透明電極11を構成する透明基材21としては、可視光線に対して透明性を有する基材であればよく、好ましくは、可視光線の波長領域(概ね380nm〜800nm)の平均透過率が70%以上の透明基材である。
材質としては、一定の強度を有し、かつ電解液3への耐食性を有する材質であればよく、例えば、石英ガラスやカリガラス等の無機系透明ガラス、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の有機系透明樹脂を用いることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)は、透明性、耐久性、耐薬品性(耐電解液性)、生産性等の点において優れているので好ましい。
【0030】
また、この透明電極11が可撓性を必要とする場合には、透明導電体膜22が可撓性を有することはもちろんのこと、透明基材21として柔軟性を有する透明樹脂を用いることにより、屈曲可能なフィルムタイプの色素増感型太陽電池1を容易に得ることができる。
この場合の透明樹脂の厚みは、透明導電体膜22を支持する支持体としての強度と、柔軟性、光透過性等の機能を考慮して、50〜200μmであることが好ましい。
【0031】
透明導電体膜22は、網目状の金属メッシュ25からなる導電性膜23と、
この導電性膜23を覆うように形成され、SiO
x(OH)
yR
4−x−y……(3)
(ただし、Rは有機官能基であり、0≦x≦2、0≦y≦4かつ0<(2x+y)≦4である。)にて表される有機ケイ素化合物及び導電性高分子を含む被覆膜24と、
を備えている。
この透明導電体膜22における開口部26の占める面積の割合は40%以上かつ90%以下、すなわち金属メッシュ25の占める面積の割合は10%を超えかつ60%未満とすることが好ましく、より好ましくは開口部26の占める面積の割合が70%以上かつ80%以下、すなわち金属メッシュ25の占める面積の割合が20%を超えかつ30%未満である。
【0032】
ここで、開口部26の占める面積の割合が90%を超えると、金属メッシュ25の線幅Lが細くなりすぎるか、または間隔Sが広くなりすぎてしまい、よって、金属メッシュ25の占める面積が相対的に低下し、その結果、導電性膜23における電気導電性が低下し、よって透明電極11の電気抵抗が増大し、光変換効率が低下する要因となるので好ましくない。
一方、開口部26の占める面積の割合が40%未満では、透明導電体膜22の透明性が不足して太陽光の入射を遮ってしまい、よって半導体層12に十分に太陽光が入射せず、やはり光変換効率が低下する要因となるので好ましくない。
【0033】
導電性膜23は、透明導電体膜22に導電性を付与するためのもので、この導電性膜23の材質としては、電気抵抗が低い金属または合金であればよく、特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、スズ、チタン、およびそれらの合金等が挙げられる。特に、電気抵抗が低いことと製造コストが低いことを考慮すると、銀、銀合金、銅、銅合金等が好ましい。
この導電性膜23は、充分な導電性を有する必要があることから、例えば、金属メッシュ25の線幅Lは、5μm以上かつ100μm以下、金属メッシュ25の線間隔(開口部26の一辺の長さ)Sは、150μm以上かつ500μm以下とされている。
【0034】
この金属メッシュ25の膜厚は、1.0μm以上かつ5.0μm以下が好ましく、よ
り好ましくは2.0μm以上かつ5.0μm以下、さらに好ましくは2.0μm以上かつ4.0μm以下である。
ここで、金属メッシュ25の膜厚を上記の範囲に限定した理由は、膜厚が1.0μm未満であると、金属メッシュ25が充分な低抵抗、例えば、表面抵抗(=面積抵抗)が0.2Ω/□以下)の金属層とならず、その結果、導電性膜23の導電性が低下するので好ましくない。一方、膜厚が5.0μmを超えると、金属メッシュ25のパターンが厚くなりすぎてしまい、よって、この導電性膜23のうち金属メッシュ25の部分と、金属メッシュ25が無い開口部26との段差(凹凸)が大きくなりすぎてしまい、この導電性膜23上に被覆膜24を設けた際に、金属メッシュ25上の被覆膜24が薄くなり、電解液である金属ヨウ化物に含まれるヨウ素イオンへの耐腐食性が低下する虞がある。
【0035】
なお、金属メッシュ25が厚くなる場合、この金属メッシュ25と開口部26との段差(凹凸)を平坦にする平坦化処理を行うことが好ましい。
例えば、開口部26の透明基材21上に、透明樹脂あるいは透明金属酸化物等の平坦化層を設けて金属メッシュ25の頂面との段差を低減することにより、金属メッシュ25上の被覆膜24が薄くなるのを回避することができる。この場合、開口部26では、透明基材21上に平坦化層が形成され、この平坦化層上に被覆膜24が形成されることとなる。
この平坦化層としては、導電性を有するものであればより好ましい。この平坦化層を設けた場合には、金属メッシュ25の厚みを、例えば15μm〜20μm程度まで増加させることができる。
【0036】
この金属メッシュ25の製造方法としては、低抵抗と十分な開口率が得られるものであればよく、特に限定はされないが、例えば、金属薄膜をメッシュ状にエッチング加工してもよく、透明基材上に金属粒子を含む導電性ペーストを用いてメッシュ状のパターンを形成してもよい。
【0037】
中でも好ましい製造方法としては、柔軟性を有する透明フィルムあるいは透明シート等の透明基材上に下地層を形成した後、この下地層上に、グラビア印刷等の印刷法により触媒インク層をメッシュ状に印刷し、得られた触媒インク層上に、無電解メッキ法を用いて、メッシュ形状の金属層を形成する方法がある。
このメッシュ形状の金属層上に、さらに電解メッキ法等を用いてより緻密な金属層を形成してもよい。なお、下地層は、透明基材と触媒インク層との密着性向上、及び触媒インク層のパターン形成性向上のために設けるものであるから、透明基材及び触媒インク層と馴染み易い酸化物微粒子及び有機高分子を含む複合材料により構成されることが好ましい。また、その厚みは0.5μm以上かつ10μm以下程度が好ましい。
【0038】
被覆膜24は、導電性膜23上に形成することで、この導電性膜23を構成する金属メッシュ25の金属または合金を、電解液3、特に腐食性の高い金属ヨウ化物(ヨウ素イオン)から保護するために設けられるものであり、上記の式(3)にて表される有機ケイ素化合物及び導電性高分子を主成分とするものである。
この被覆膜24は、有機ケイ素化合物を主成分とする膜中に、導電性高分子が均一に分散された状態であることが好ましい。
【0039】
ここで、有機ケイ素化合物は、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種以上を含む混合液を加水分解して水性ゾルとし、この水性ゾルを乾燥及び硬化したものであり、ケイ素の酸化物、またはSiO
n(OH)
4−2nにて表されるケイ素に酸素と水酸基が結合したケイ素酸化水酸化物中のケイ素の一部に、さらに有機官能基が結合しているものである。この有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、フェニル基、アミノ基等から選択することができるが、特にアクリル基が好ましい。
【0040】
ところで、この有機官能基は、有機変性シリコンアルコキシドにおける有機変性基を基としているので、シリコンアルコキシドのみを用いて有機ケイ素化合物を形成した場合には、有機官能基を含まない場合がある。例えば、式(3)中の(2x+y)=4の場合等である。
本実施形態においては、このような有機官能基を含まない化合物についても、有機ケイ素化合物に含めるものとする。
【0041】
導電性高分子としては、被覆膜24中に均一に分散し、かつ電解液3に対する耐腐食性を有するものであればよく、特に限定されないが、この被覆膜24中に均一に分散させるためには、製造工程上、シリコンアルコキシドまたは有機変性シリコンアルコキシドへの分散性ないしは相溶性が高いか、または極性溶媒、例えばアルコール類、ケトン類や水に対する分散性がよいことが必要である。これらを考慮すると、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、あるいはこれらの誘導体が好適に用いられる。
【0042】
この被覆膜24における、有機ケイ素化合物に対する導電性高分子の添加量は、有機ケイ素化合物の全質量に対して1質量%以上かつ15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上かつ10質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上かつ5質量%以下である。
ここで、添加量が1質量%未満では、被覆膜24の導電性が不足し、その結果、透明電極11の電気抵抗が増大して光変換効率が低下する虞がある。一方、添加量が15質量%を超えると、導電性高分子が多すぎて被覆膜24の透明性が低下し、やはり光変換効率が低下する要因となる虞がある。
【0043】
この被覆膜24の厚みは、0.5μm以上かつ10μm以下が好ましい。
ここで、被覆膜24の厚みが0.5μm未満では、被覆膜24が薄すぎてしまい、電解液3が導電性膜23へ浸透し、導電性膜23を電解液3から保護するという被覆膜としての機能を維持できなくなる虞があるので好ましくない。一方、被覆膜24の厚みが10μmを超えると、導電性膜23を電解液3から保護するという被覆膜としての機能は全く問題ないが、この被覆膜24に起因する光の反射及び吸収が無視できなくなり、よって、この被覆膜24の透明性が低下し、さらに膜の内部抵抗が高くなり、光変換効率の低下を招く虞がある。
【0044】
この被覆膜24の厚みは、金属メッシュ25の膜厚の1/4以上であることが好ましい。この被覆膜24の厚みが金属メッシュ25の膜厚の1/4未満では、金属メッシュ25上、特に透明基材21上の金属メッシュ25がある部分と、金属メッシュ25が無い開口部26の部分との段差部分、すなわち金属メッシュ25の断面のエッジ部分における被覆膜24の厚みが薄くなり、被覆膜としての機能を維持できなくなる虞がある。
なお、被覆膜24を薄くしたい場合には、金属メッシュ25と開口部26との段差(凹凸)を平坦にする平坦化処理、すなわち開口部26の透明基材21上に透明樹脂あるいは透明金属酸化物等の平坦化層を設けて金属メッシュ25との段差を低減することができる。この平坦化層としては、導電性を有するものであればより好ましい。
【0045】
この被覆膜24には、絶縁性金属酸化物粒子を含有させてもよい。
この絶縁性金属酸化物粒子としては、無色透明で電解液3に対する耐腐食性を有するものであればよく、特段の限定はないが、安定性、屈折率、入手の容易性等の点からアルミナ、ジルコニア等が好ましい。
【0046】
この被覆膜24では、絶縁性金属酸化物粒子を含有させることにより、被覆膜24の電解液3に対する耐腐食性をより向上することができる。また、絶縁性金属酸化物粒子により被覆膜24の屈折率を制御することで、導電性膜23の開口部26にて直接接している透明基材21と被覆膜24の界面における光の反射を防止し、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0047】
この絶縁性金属酸化物粒子の一次粒子径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
ここで、この絶縁性金属酸化物粒子の一次粒子径が200nmを超えると、被覆膜形成用塗料中における粒子の分散性が維持できなくなり、その結果、粒子が被覆膜中に均一に分散することができなくなる虞がある。また、一次粒子径が200nmを超えると、この粒子により光散乱、特にミー散乱が発生し、入射光が散乱されて太陽電池の変換効率が低下する虞がある。
【0048】
この絶縁性金属酸化物粒子の添加量は、被覆膜24における有機ケイ素化合物の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
ここで、この絶縁性金属酸化物粒子の添加量が20質量%を超えると、この粒子による光散乱が無視できなくなり、太陽電池の変換効率が低下する虞がある。また、添加量が多すぎた場合、粒子間に有機ケイ素化合物が存在しない隙間が生じ、その結果、被覆層24内に電解液3が侵入して被覆層24の耐腐食性を低下させる虞がある。
【0049】
このような被覆膜24は、例えば、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を混合した後に加水分解し、得られた加水分解生成物の分散液または加水分解生成物の水性ゾルに導電性高分子を添加して被覆膜形成用塗料とし、この被覆膜形成用塗料を導電性膜23上に塗布、乾燥及び硬化することにより、容易に得ることができる。
また、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を混合し、この混合液に導電性高分子を添加して混合した後、この導電性高分子を含む混合液を加水分解して被覆膜形成用塗料とし、この被覆膜形成用塗料を導電性膜23上に塗布、乾燥及び硬化することによっても、容易に得ることができる。
なお、この被覆膜24に絶縁性金属酸化物粒子を添加する場合、被覆膜形成用塗料に所定量の絶縁性金属酸化物粒子を添加し、通常の分散方法を用いて分散させればよい。
【0050】
一方、正極4は、透明基材31上に透明導電体膜32が設けられた透明電極33により構成されている。
この正極4も電解液3に直接接するので、電解液3に対する耐腐食性が必要とされる。そこで、正極4を構成する透明電極33においても、負極2における透明電極11と同様、透明基材31と透明導電体膜32とから構成されることが好ましい。
なお、この透明基材31は負極2における透明基材21と同様であり、透明導電体膜32は負極2における透明導電体膜22と同様である。
【0051】
正極4は、負極2が光透過性を有することから、必ずしも光透過性を有する必要はない。このように正極4が透明性を必要としない場合には、
図4に示すように、光透過性の無い(不透明の)基材41上に、白金等の高耐蝕性金属電極42が設けられた、光透過性の無い(不透明の)金属電極43により構成することとしてもよい。
【0052】
「透明電極の製造方法」
透明電極11は、次のような工程により、容易に得ることができる。
(透明基材)
まず、透明電極11の基材となる透明基材21を用意する。この透明基材21は、例えば、石英ガラスやカリガラス等の無機系透明ガラス、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の有機系透明樹脂を用いることができる。また、透明基材21に可撓性を付与したい場合には、この透明基材21に柔軟性を有する有機系透明樹脂を用いることが好ましい。
【0053】
(導電性膜の形成)
この透明基材21上に、メッシュ形状の金属または合金からなる金属メッシュ25からなる導電性膜23を形成する。この金属メッシュ25としては、上述したとおり、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、スズ、チタン、およびそれらの合金等が挙げられる。
【0054】
この導電性膜23の形成方法としては、金属薄膜をメッシュ状にエッチングすることにより金属メッシュ25としたものを透明基材21に貼り付ける方法、透明基材21上に蒸着法またはスパッタ法等により金属薄膜を成膜し、この金属薄膜をメッシュ状にエッチングすることにより金属メッシュ25とする方法、透明基材21上に金属粒子を含む導電性ペーストを用いてメッシュ状のパターンを形成し、乾燥または乾燥硬化して金属メッシュ25とする方法等を用いることができる。
【0055】
中でも好ましい方法は、透明基材21上に下地層を設けた後、この下地層上に、グラビア印刷等の印刷法により触媒インク層をメッシュ状に印刷し、得られた触媒インク層上に、無電解メッキ法を用いてメッシュ形状の金属層を形成して金属メッシュ25とする方法である。この無電解メッキ法で得られた金属メッシュ25上に、さらに電解メッキ法等を用いてより緻密な金属層を形成して、2層構造あるいは多層構造の金属メッシュ25としてもよい。
【0056】
この下地層としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ等の酸化物微粒子と、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジンエステル樹脂等の有機高分子を含む複合材料により構成されることが好ましい。
また、触媒インク層は、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア、チタニア等の酸化物微粒子にパラジウム、白金、金等の貴金属微粒子を担持させた貴金属担持微粒子と、セルロース誘導体、ロジンエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂等の有機高分子を含む複合材料により構成されることが好ましい。
【0057】
また、金属メッシュ25を形成する金属層としては、無電解メッキ法による形状形成が容易な銅またはニッケルが好ましい。
この印刷−無電解メッキ法による導電性膜23の形成工程は連続的に行うことができるので、例えば、長尺の基材等への導電性膜23の形成も容易になり、コストダウンを図ることができる。
【0058】
(透明導電体膜の形成)
上記の導電性膜23が形成された透明基材21上に被覆膜24を形成する。
まず、この被覆膜24を形成するための被覆膜形成用塗料を作製する。ここでは、この被覆膜形成用塗料の主成分であるシリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を準備する。
【0059】
シリコンアルコキシドとしては、特段の制限はなく、アルコキシ基として任意のものを用いることができるが、取り扱いの点や製造コスト等の観点から、汎用性のあるテトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)が好ましい。
また、このシリコンアルコキシドとしては、複数種のシリコンアルコキシドを組み合わせて使用してもよい。
さらに、シリコンアルコキシド以外のアルコキシド、例えば、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド等を用いてもよく、シリコンアルコキシドとこれらシリコンアルコキシド以外のアルコキシドとを組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、有機変性シリコンアルコキシドとしては、有機官能基としてビニル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、フェニル基、アミノ基等を有するアルコキシドから選択することができるが、特に、アクリル基を有するものが好ましい。
ここで、アクリル基を有する変性シリコンアルコキシドを用いる理由は、一般的に電解液3に使用される溶媒であるアセトニトリルやアルコールの溶解度パラメータ(SP値)が11〜12程度であるから、有機官能基のSP値ができるだけ低い材料を選定することで、被覆膜24を形成する有機ケイ素化合物の電解液3に対する親和性を低くし、よって透明導電体膜22の耐腐食性を高めることができるからである。
なお、異なる有機官能基を有する複数種の有機変性シリコンアルコキシドを組み合わせて用いてもよい。
【0061】
この有機変性シリコンアルコキシドにおけるアルコキシ基については、上述したシリコンアルコキシドと同様に特段の制限はないが、やはり汎用性のあるメトキシ基やエトキシ基を選択することができる。
【0062】
シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドは、単独で用いることもできるが、両者を組み合わせて用いることが好ましい。
ここで、両者を組み合わせた場合における、シリコンアルコキシドと有機変性シリコンアルコキシドとの比率としては、シリコンアルコキシドと有機変性シリコンアルコキシドの合計量に対する有機変性シリコンアルコキシドの比率が55質量%以上かつ85質量%以下とすることが好ましい。
【0063】
ここで、有機変性シリコンアルコキシドの比率が55質量%未満では、有機官能基による有機ケイ素化合物の電解液3に対する親和性低下の効果が発現しにくくなり、有機変性シリコンアルコキシドを組み合わせて使用する効果が薄れてしまう虞がある。一方、有機変性シリコンアルコキシドの比率が85質量%超えると、後の加水分解工程において加水分解作用が不十分となり、その結果、得られた加水分解生成物を用いて被覆膜24を形成した場合に、加水分解生成物同士の結合が不十分となり、よって、被覆膜24の緻密性が低下し、この被覆膜24における耐電解液性が低下する虞がある。
【0064】
次いで、これらのシリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドを混合して、混合液を得る。
ここで、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドは、液状であり、また特性も類似していることから、一般的な混合方法により容易に混合液を得ることができる。
【0065】
次いで、この混合液に、水と、必要に応じて触媒を添加し、シリコンアルコキシドと有機変性シリコンアルコキシドを加水分解させて、水性ゾル(加水分解生成物を含む分散液)を得る。
この加水分解生成物の成分は、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるケイ素の酸化物あるいは酸化水酸化物(SiO
n(OH)
4−2n)と、有機変性シリコンアルコキシドの加水分解生成物である有機官能基が結合したケイ素の酸化物あるいは酸化水酸化物が、均一に混合したものである。
【0066】
次いで、この水性ゾル(加水分解生成物を含む分散液)に導電性高分子を加えて混合・攪拌し、分散させる。この導電性高分子が被覆膜24中に均一に分散するためには、この導電性高分子が水性ゾル中に均一に分散する必要があることから、導電性高分子としては、極性溶媒であるアルコール類、ケトン類、水等に対する分散性がよい物質を選択することが好ましい。
このような導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等、あるいはこれらの誘導体を挙げることができる。
【0067】
これらの導電性高分子は、水性ゾルに直接投入して混合・分散させてもよいが、予め、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、水等から選択される1種または2種以上の極性溶媒中に分散させた導電性高分子含有溶液を水性ゾルと混合すれば、導電性高分子と水性ゾルとをより容易に混合・分散できるので好ましい。なお、混合・分散方法としては、通常の方法を用いることができる。
【0068】
この導電性高分子の添加量は、水性ゾルの固形分、すなわち加水分解生成物から得られる有機ケイ素化合物に対して1質量%以上かつ15質量%以下が好ましい。
ここで、導電性高分子の添加量が1質量%未満では、被覆膜24の導電性が不足し、その結果、透明電極21の表面抵抗が増大して光変換効率を低下させる虞がある。一方、添加量が15質量%を超えると、導電性高分子が多すぎてしまい、被覆膜24の透明性が低下し、やはり光変換効率が低下する要因となる虞がある。
この導電性高分子として極性溶媒に対する分散性が低いものを用い、その表面を表面処理剤等で処理して水系分散媒に対する分散性を持たせることもできる。ただし、この場合、表面処理剤等が導電性を阻害しないこと、電解液3に対する耐腐食性を有するものであること、等を満足する必要がある。
【0069】
この導電性高分子が添加された水性ゾルに、必要に応じて、絶縁性金属酸化物粒子を添加し、混合・分散させる。
この絶縁性金属酸化物粒子は、通常、水等の極性溶媒に対する親和性が高く、かつ分散性がよいので、特段の表面処理を行う必要は無く、また分散方法も通常の方法を用いればよい。
このようにして、被覆膜24を形成するための被覆膜形成用塗料を得ることができる。
【0070】
この被覆膜形成用塗料は、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を混合し、この混合液に導電性高分子を混合させた後、この導電性高分子を含む混合液を加水分解する方法によっても得ることができる。
【0071】
この方法では、導電性高分子について、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドからなる混合液に分散させることができること、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドを加水分解した際に凝集を生じさせないこと、等の特性が必要とされる。
このような特性を有する導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等を挙げることができる。このような導電性高分子を用いることにより、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドからなる混合液への混合・分散は通常の方法を用いて行うことができる。
【0072】
このシリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの種類、その組み合わせ、加水分解方法、生成物、さらには絶縁性金属酸化物粒子の添加については、上記の水性ゾルに導電性高分子を加える方法と同様であるから、説明を省略する。
【0073】
次いで、この被覆膜形成用塗料を、導電性膜23が形成された透明基材21上に塗布し、塗布膜を形成する。塗布方法は公知の方法を用いればよいが、導電性膜23上に塗布することができればよく、透明基材21の裏面側への塗布が不要であることから、片面塗布を考慮した方法を選択することが好ましい。さらに、導電性膜23が形成された透明基材21が柔軟性を有していれば、グラビアコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター等の連続塗布方法を用いることができ、長尺化及びコストダウンを図ることができる。
【0074】
次いで、この塗布膜を乾燥し硬化させることで、被覆膜24を形成する。
この塗布膜の乾燥・硬化方法としては、抵抗発熱体や赤外線ランプ等を用いた加熱手段による方法が容易であり、また工程も連続的に行うことができるので好ましい。
この加熱により、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの加水分解生成物である水性ゾルから、ゾルの分散媒、すなわち加水分解時に加えた水、導電性高分子添加時や絶縁性金属酸化物粒子添加時に使用した水やアルコール等を含む極性溶媒が除去される。さらに、シリコンアルコキシドの加水分解生成物であるケイ素の酸化物または酸化水酸化物(SiO
n(OH)
4−2n)、及び有機変性シリコンアルコキシドの加水分解生成物である有機官能基が結合したケイ素の酸化物あるいは酸化水酸化物においては、その水酸基同士が脱水縮合することで、酸化水酸化物が重合し、酸化物が形成される。これらの作用により、被覆膜形成用塗料から緻密な被覆膜24が形成される。
【0075】
この加熱温度は、上記の酸化水酸化物が重合して被覆膜が形成される点を考慮すると、高温である方が好ましいが、一方、透明基材、下地層、触媒インク層等に用いられている樹脂、導電性高分子、有機変性シリコンアルコキシドが有する有機基等が変質しない範囲に抑える必要があるので、通常は50℃〜150℃程度の範囲で選択される。
以上により、透明電極11を形成することができる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の透明導電体膜22によれば、金属または合金からなる網目状の導電性膜23と、上記の(3)式にて表される有機ケイ素化合物及び導電性高分子を含む被覆膜24と、を備えたので、色素増感型太陽電池に使用される電解液に含まれるヨウ素イオンへの耐腐食性を向上させることができる。したがって、透明性に優れるのはもちろんのこと、低抵抗値と、色素増感型太陽電池に使用される電解液に対する耐久性とを両立させることができる。
【0077】
本実施形態の透明電極11によれば、透明基材21上に本実施形態の透明導電体膜22を形成したので、透明性及び導電性に優れ、色素増感型太陽電池に使用される電解液に対する耐腐食性の高い透明電極を提供することができる。
【0078】
本実施形態の色素増感型太陽電池1によれば、本実施形態の透明電極11を備えたので、高効率の色素増感型太陽電池を提供することができる。
【0079】
本実施形態の透明電極の製造方法によれば、シリコンアルコキシド及び有機変性シリコンアルコキシドの群から選択される1種または2種を含む混合液を加水分解し、アルコキシドの加水分解生成物を得る工程と、このアルコキシドの加水分解生成物を含む分散液に導電性高分子を添加・混合し、被覆膜形成用塗料を生成する工程と、透明基材21上に形成された金属または合金からなる網目状の導電性膜23上に、被覆膜形成用塗料を用いて塗布膜を形成する工程と、この塗布膜を乾燥及び硬化して被覆膜24を形成する工程と、を有するので、色素増感型太陽電池に使用される電解液に含まれるヨウ素イオンへの耐腐食性を向上させることができ、したがって、透明性に優れ、低抵抗値と色素増感型太陽電池に使用される電解液に対する耐久性とを両立させることができる透明導電体膜22を備えた透明電極11を容易に得ることができる。
【0080】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態の色素増感型太陽電池を示す断面図、
図6は、本実施形態の色素増感型太陽電池の透明電極を示す断面図である。
なお、透明電極の平面形状は、外観的には第1の実施形態の透明電極の平面形状と何等変わらないので、ここでは図示していない。
【0081】
この色素増感型太陽電池51が、第1の実施形態の色素増感型太陽電池1と異なる点は、第1の実施形態の透明電極11と、この透明電極11上に形成された導電性金属酸化物膜52とにより透明電極53を構成し、この透明電極53上に半導体層12を設けて負極54とした点、さらに、第1の実施形態の透明電極33と、この透明電極33上に形成された導電性金属酸化物膜61とにより透明電極62を構成して正極63とした点であり、これ以外の構成要素については、第1の実施形態の色素増感型太陽電池1と全く同様である。
【0082】
すなわち、この透明電極53は、第1の実施形態の透明電極11上に導電性金属酸化物膜52が設けられたことにより、この導電性金属酸化物膜52、被覆膜24及び金属メッシュ25が重なった透光性を有しない部分と、この導電性金属酸化物膜52及び被覆膜24のみが形成された開口部26の透光性を有する部分とにより構成されている。
また、透明電極62は、第1の実施形態の透明電極33上に導電性金属酸化物膜61が設けられたものであって、この透明電極33は負極2における透明基材21と同様の透明基材31と、負極2における透明導電体膜22と同様の透明導電体膜32とから構成されることが好ましい。
【0083】
また、
図6においては、透明電極53は、導電性金属酸化物膜52、被覆膜24及び金属メッシュ25が重なった部分が厚く、かつ、導電性金属酸化物膜52及び被覆膜24のみの部分が薄くなるように形成されているが、金属メッシュ25上の導電性金属酸化物膜52及び被覆膜24のいずれか一方または双方を薄く、かつ、導電性金属酸化物膜52及び被覆膜24のみの部分を厚くすることにより、導電性金属酸化物膜52の表面をほぼ平坦面としてもよい。
また、開口部26に金属メッシュ25の高さとほぼ同等の厚みの透光性を有する平坦化層を形成し、これら金属メッシュ25及び平坦化層上に被覆膜24、導電性金属酸化物膜52を順次形成することによっても、導電性金属酸化物膜52の表面をほぼ平坦面とすることができる。
【0084】
この導電性金属酸化物膜52としては、透明性及び導電性を有し、透明導電体膜11を構成する被覆膜22上に容易に形成が可能であり、かつ被覆膜22との密着性や整合性を有するものであればよく、特段の制限はないが、インジウムドープ酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO:Fuluorine Tin Oxide)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化亜鉛(FZO:Fuluorine Zinc Oxide)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO:Aiuminium Zinc Oxide)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO:Gallium Zinc Oxide)、ホウ素ドープ酸化亜鉛(BZO:Boron Zinc Oxide)等を用いることができる。特に、インジウムドープ酸化スズ(ITO)またはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)からなる膜が好ましい。
【0085】
この導電性金属酸化物膜52の厚みには特に制限はないが、導電性、電解液3に対する耐腐食性及び膜強度等を考慮すると、10nm〜500nm程度であることが好ましい。
ここで、導電性金属酸化物膜52の厚みが10nm未満であると、導電性金属酸化物膜52を設けることによる効果である電解液3に対する耐腐食性向上や、透明電極53における導電性向上がほとんど得られなくなり、導電性金属酸化物膜52をわざわざ設ける意味がほとんど無くなる虞がある。また、従来の色素増感型太陽電池に電極として用いられているITO膜やFTO膜の厚みが数100nmないしはそれ以上であることから、導電性金属酸化物膜52の厚みが500nmを超えるほど厚くした場合、透明導電体膜11を設ける意味がなくなってしまうので好ましくない。
【0086】
この導電性金属酸化物膜52を形成するには、第1の実施形態の透明電極11と同様、透明基材21上に透明導電体膜22を形成した後、さらに透明導電体膜22上に、この導電性金属酸化物膜52を形成すればよい。
この導電性金属酸化物膜52の形成方法としては、下地となる被覆膜24との接合性が良好であり、かつ、この被覆膜24、及びその下部の導電性膜23及び透明基材21を劣化させない方法であればよく、特に制限はない。
このような形成方法としては、通常はスパッタ法等の成膜方法が用いられるが、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法)により成膜してもよい。この場合の成膜条件は、導電性金属酸化物膜52の材質、透明基材21、導電性膜23、被覆膜24の材質や成膜条件を考慮して決定される。
【0087】
ところで、スパッタ法及びPVD法は枚葉式であるから、導電性金属酸化物膜52を連続して形成することができない。そこで、連続形成が可能な技術として、導電性金属酸化物微粒子を含む塗料を塗布した後に硬化する塗布−硬化法を用いることもできる。
例えば、ITO微粒子を含む導電性金属酸化物膜52を形成する場合、ITO微粒子を分散させた分散液に、紫外線硬化型樹脂あるいは熱硬化型樹脂を添加して導電性金属酸化物膜形成用塗料を作製し、この塗料を被覆膜24上に塗布した後、紫外線を照射あるいは加熱して添加した樹脂を硬化させることにより、ITO微粒子を含む導電性金属酸化物膜52を形成することができる。また、FTO微粒子を含む導電性金属酸化物膜を形成する場合も、ITO微粒子を含む導電性金属酸化物膜52と全く同様にして形成することができる。この塗布−硬化法では、導電性金属酸化物膜52の形成工程を連続して行うことができ、しかも、スパッタ法やPVD法と比べて製造コストを低く抑えることができる。
【0088】
また、正極63に設けられた導電性金属酸化物膜61も、負極54に設けられた導電性金属酸化物膜52と同様の構成であるから、この導電性金属酸化物膜61については説明を省略する。
なお、この正極63が必ずしも光透過性を有する必要がない場合には、第1の実施形態の正極4と全く同様に、
図4に示すように、光透過性の無い基材41上に高耐蝕性金属電極42が設けられた、光透過性の無い金属電極43により構成することとしてもよい。
【0089】
この色素増感型太陽電池51では、導電性金属酸化物膜52を透明電極11の透明導電体膜22上に設けることにより、この透明電極53の電解液3に対する耐腐食性をより向上させることができる。さらに、透明電極53の導電性、特に透明導電体膜22を構成する導電性膜23における開口部26の部分の導電性を向上させることができる。
以上により、透明電極53の内部抵抗を低減し、よって光電効率の損失を低減することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
「透明基材上への導電性膜の形成」
透明基材として、厚みが125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用した。
このPETフィルムの表面に、アルミナ及びエチルセルロースを主成分とする厚み2μmの下地層を形成した。次いで、パラジウム微粒子を担持させたγ−アルミナ微粒子とエチルセルロースを主たる固形成分とする触媒インクを、上記の下地層上に、グラビア印刷法によりメッシュ状に印刷し、その後乾燥して、下地層上に触媒インク層を形成した。
次いで、触媒インク層が形成されたPETフィルムを無電解銅メッキ液に含浸し、メッシュ状の触媒インク層上に銅を析出させることにより、金属メッシュ形状の導電性膜を作製した。
【0092】
得られた導電性膜は、金属メッシュ25の線幅Lが20μm、線間隔Sが290μmであった。また、この導電性膜の表面抵抗をロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定した結果、0.04Ω/口であった。また、この導電性膜の開口率をCCD画像解析ソフト(キーエンス社製)を用いて算出した結果、80%であった。
【0093】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
シリコンアルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)を、有機変性シリコンアルコキシドとして3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−5103(信越化学社製)を、それぞれ選択した。次いで、このテトラメトキシシラン(TMOS)が40質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが60質量%となるように、これらのアルコキシドを秤量して混合し、アルコキシドの混合液を調整した。
次いで、この混合液に水及び触媒としての塩酸を加えて加水分解を行い、テトラメトキシシランの加水分解物と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物が混合したゾル状の加水分解生成物である水性ゾルを得た。
【0094】
次いで、得られた水性ゾルに、導電性高分子として、ポリチオフェン系導電性高分子の水−エタノール分散液OC−X(信越ポリマー社製)を添加して混合し、実施例1の被覆膜形成用塗料を作製した。
ここでは、導電性高分子の添加量は、分散液OC−X中のポリチオフェン系導電性高分子量と、水性ゾルから形成されるSiO
x(OH)
yR
4−x−y(ただし、Rは有機官能基であり、0≦x≦2、0≦y≦4かつ0<(2x+y)≦4である。)にて表される有機ケイ素化合物の質量を基準として、ポリチオフェン系導電性高分子の全質量を、有機ケイ素化合物の全質量に対して5質量%となるようにした。なお、水性ゾルから形成される有機ケイ素化合物の全質量は、水性ゾル中の加水分解生成物のみを被覆膜形成と同一の条件で処理することで求めた。
【0095】
次いで、実施例1の被覆膜形成用塗料を導電性膜上にマイクログラビア印刷法を用いて塗布した後、120℃にて加熱硬化して、厚み5.0μmの被覆膜を形成した。
さらに、この被覆膜上に、スパッタ法により、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、実施例1の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
【0096】
「評価」
この透明電極について、以下の評価を行った。評価方法は次のとおりである。
(1)透明性
透明電極の全光線透過率を、ヘーズメーターNDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、その測定結果を4段階で評価した。
ここでは、全光線透過率75%以上のものを「◎」、70%以上かつ75%未満のものを「○」、65%以上かつ70%未満のものを「△」、65%未満のものを「×」とした。
【0097】
(2)導電性
透明電極の表面抵抗を、抵抗率計ロレスタ(三菱化学社製)を用いて測定し、その測定結果を4段階で評価した。
ここでは、表面抵抗が0.1Ω/□未満のものを「◎」、0.1Ω/□以上かつ1.0Ω/□未満のものを「○」、1.0Ω/□以上かつ10Ω/□未満のものを「△」、10Ω/□以上のものを「×」とした。
【0098】
(3)耐電解液性
アセトニトリルと2−プロパノールを質量比1:1で混合した後、この混合溶液に、ヨウ素を、濃度が1.5質量%になるように溶解して、耐電解液性試験用溶液とした。
次いで、実施例1の透明電極を、この耐電解液性試験用溶液に室温下(25℃)にて1カ月間浸漬し、この浸漬前後における表面抵抗の変化を測定することで、耐電解液性を4段階で評価した。
ここでは、1カ月間浸漬後の表面抵抗が、初期の表面抵抗の2倍未満のものを「◎」、2倍以上かつ5倍未満のものを「○」、5倍以上かつ10倍未満のものを「△」、10倍以上のものを「×」とした。
これらの評価結果を表3に示す。
【0099】
[実施例2]
テトラメトキシシラン(TMOS)が30質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが70質量%となるように、アルコキシドの混合液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0100】
[実施例3]
テトラメトキシシラン(TMOS)が20質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが80質量%となるように、アルコキシドの混合液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0101】
[実施例4]
テトラメトキシシラン(TMOS)が45質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが55質量%となるように、アルコキシドの混合液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0102】
[実施例5]
テトラメトキシシラン(TMOS)が15質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが85質量%となるように、アルコキシドの混合液を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0103】
[実施例6]
アルコキシドの混合液を調整する際に、テトラメトキシシラン(TMOS)のみを用い、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0104】
[実施例7]
アルコキシドの混合液を調整する際に、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランのみを用い、テトラメトキシシラン(TMOS)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0105】
[実施例8]
被覆膜上に、厚み150nmのITO膜の替わりに、厚み150nmのFTO膜を成膜した以外は、実施例2と同様にして、実施例8の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0106】
[実施例9]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0107】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
テトラメトキシシラン(TMOS)が30質量%、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが70質量%となるように、これらのアルコキシドを秤量して混合し、アルコキシドの混合液を調整した。
次いで、この混合液に水及び触媒としての塩酸を加えて加水分解を行い、テトラメトキシシランの加水分解物と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物が混合したゾル状の加水分解生成物である水性ゾルを得た。
【0108】
次いで、得られた水性ゾルに、導電性高分子として、ポリチオフェン系導電性高分子の水−エタノール分散液OC−X(信越ポリマー社製)を添加して混合し、混合液Aを作製した。
ここでは、導電性高分子の添加量は、分散液OC−X中のポリチオフェン系導電性高分子量と、水性ゾルから形成されるSiO
x(OH)
yR
4−x−y(ただし、Rは有機官能基であり、0≦x≦2、0≦y≦4かつ0<(2x+y)≦4である。)にて表される有機ケイ素化合物の質量を基準として、ポリチオフェン系導電性高分子の全質量を、有機ケイ素化合物の全質量に対して5質量%となるようにした。なお、水性ゾルから形成される有機ケイ素化合物の全質量は、水性ゾル中の加水分解生成物のみを被覆膜形成と同一の条件で処理することで求めた。
【0109】
次いで、平均一次粒子径20nmのAl
2O
3微粉体を、分散剤を含む2−プロパノール中にビーズミルを用いて分散させ、Al
2O
3微粉体を20質量%含むAl
2O
3分散液を作製した。
次いで、このAl
2O
3分散液と上記の混合液Aを混合し、実施例9の被覆膜形成用塗料を作製した。
ここでは、Al
2O
3微粉体の添加量を、上記の混合液Aの固形分、すなわち加水分解生成物から形成される有機ケイ素化合物の全質量とポリチオフェン系導電性高分子の全質量との合計質量に対して10質量%となるようにした。
【0110】
次いで、実施例9の被覆膜形成用塗料を導電性膜上にマイクログラビア印刷法を用いて塗布した後、120℃にて加熱硬化して、厚み5.0μmの被覆膜を形成した。
さらに、この被覆膜上に、スパッタ法により、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、実施例9の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0111】
[実施例10]
Al
2O
3微粉体の添加量を、加水分解生成物から形成される有機ケイ素化合物の全質量とポリチオフェン系導電性高分子の全質量との合計質量に対して20質量%となるようにした以外は、実施例9と同様にして、実施例10の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0112】
[実施例11]
Al
2O
3微粉体の添加量を、加水分解生成物から形成される有機ケイ素化合物の全質量とポリチオフェン系導電性高分子の全質量との合計質量に対して30質量%となるようにした以外は、実施例9と同様にして、実施例11の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0113】
[実施例12]
Al
2O
3微粉体の替わりに平均一次粒子径20nmのZrO
2微粉体を用い、ZrO
2微粉体を20質量%含むZrO
2分散液を作製した以外は、実施例9と同様にして、実施例12の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0114】
[実施例13]
被覆膜形成用塗料を作製する際に、ポリチオフェン系導電性高分子の全質量を、有機ケイ素化合物の全質量に対して10質量%となるようにした以外は、実施例2と同様にして、実施例13の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0115】
[実施例14]
被覆膜形成用塗料を作製する際に、ポリチオフェン系導電性高分子の全質量を、有機ケイ素化合物の全質量に対して15質量%となるようにした以外は、実施例2と同様にして、実施例14の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0116】
[実施例15]
アルコキシドの混合液を調整する際に、有機変性シリコンアルコキシドとして、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−5103(信越化学社製)の替わりに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン KBM−403(信越化学社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例15の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表1に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0117】
[実施例16]
アルコキシドの混合液を調整する際に、有機変性シリコンアルコキシドとして、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−5103(信越化学社製)の替わりにジフェニルジメトキシシラン KBM−202SS(信越化学社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例16の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0118】
[実施例17]
アルコキシドの混合液を調整する際に、有機変性シリコンアルコキシドとして、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−5103(信越化学社製)の替わりに3−アミノプロピルトリメトキシシラン KBM−903(信越化学社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例17の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0119】
[実施例18]
アルコキシドの混合液を調整する際に、有機変性シリコンアルコキシドとして、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−5103(信越化学社製)の替わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM−503(信越化学社製)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例18の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0120】
[実施例19]
被覆膜上に、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、実施例19の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0121】
[実施例20]
アルコキシドの混合液を調整する際に、テトラメトキシシラン(TMOS)の替わりにテトラエトキシシラン(TEOS)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例20の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0122】
[比較例1]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0123】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
導電性膜上に被覆膜を形成することなく、この導電性膜上にスパッタ法により直接、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、比較例1の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0124】
[比較例2]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0125】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
導電性膜上に被覆膜を形成することなく、この導電性膜上にスパッタ法により直接、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのFTO膜を成膜し、比較例2の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0126】
[比較例3]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0127】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
平均一次粒子径20nmのAl
2O
3微粉体を、分散剤を含む2−プロパノール中にビーズミルを用いて分散させ、Al
2O
3微粉体を20質量%含むAl
2O
3分散液を作製し、比較例3の被覆膜形成用塗料とした。
次いで、この被覆膜形成用塗料を、導電性膜上に塗布した後に乾燥させ、Al
2O
3からなる厚み5.0μmの被覆膜を形成した。
【0128】
さらに、この被覆膜上に、スパッタ法により、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、比較例3の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0129】
[比較例4]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0130】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
ポリチオフェン系導電性高分子の水−エタノール分散液OC−X(信越ポリマー社製)を、そのまま比較例4の被覆膜形成用塗料とした。
次いで、この被覆膜形成用塗料を、導電性膜上に塗布した後に乾燥させ、ポリチオフェン系導電性高分子からなる厚み5.0μmの被覆膜を形成した。
【0131】
さらに、この被覆膜上に、スパッタ法により、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、比較例4の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0132】
[比較例5]
「透明基材上への導電性膜の形成」
実施例1と同様にして、透明基材上に金属メッシュ形状の導電性膜を形成した。
【0133】
「被覆膜及び導電性金属酸化物膜の形成」
平均一次粒子径20nmのAl
2O
3微粉体を、分散剤を含む2−プロパノール中にビーズミルを用いて分散させ、Al
2O
3微粉体を20質量%含むAl
2O
3分散液を作製した。
次いで、このAl
2O
3分散液を、ポリチオフェン系導電性高分子の水−エタノール分散液OC−X(信越ポリマー社製)に、固形分比率、すなわちポリチオフェン系導電性高分子の全質量に対するAl
2O
3微粉体の全質量の比率が20質量%となるように添加して混合し、比較例5の被覆膜形成用塗料とした。
次いで、この被覆膜形成用塗料を、導電性膜上に塗布した後に乾燥させ、厚み5.0μmの被覆膜を形成した。
【0134】
さらに、この被覆膜上に、スパッタ法により、導電性金属酸化物膜である厚み150nmのITO膜を成膜し、比較例5の透明電極を作製した。この透明電極の材質等を表2に示す。
この透明電極の透明性、導電性及び耐電解液性の評価を、実施例1に準じて行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
表1〜表3によれば、実施例1〜20の透明電極では、透明性、導電性、耐電解液性共に良好な値を示しており、色素増感型太陽電池の透明電極として使用しても問題が無いことが分かった。
一方、比較例1、2、4、5の透明電極では、透明性及び導電性については問題が無かったものの、対電解液性が劣っており、色素増感型太陽電池の透明電極へ適用した場合に信頼性を損ねる虞があった。
さらに、比較例3の透明電極では、透明性が劣っている上に導電性も劣っており、透明電極としての特性自体にも問題があり、色素増感型太陽電池の透明電極への適用が難しいことが分かった。