【解決手段】ポリイミド絶縁層(A)と、該ポリイミド絶縁層(A)の少なくとも一方の面に設けられた銅箔(B)とを備えたフレキシブル銅張積層板であって、a)当該フレキシブル銅張積層板の厚みが15〜38μmの範囲内である;b)前記ポリイミド絶縁層(A)の厚みが5〜30μmの範囲内であり、かつ、引張弾性率が4〜10GPaの範囲内である;c)前記銅箔(B)の厚みが5〜20μm範囲内であり、かつ、引張弾性率が10〜35GPaの範囲内である;d)当該フレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性が0.005〜0.03N・m
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<フレキシブル銅張積層板>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板は、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)とから構成される。銅箔(B)はポリイミド絶縁層(A)の片面又は両面に設けられている。このフレキシブル銅張積層板は、銅箔(B)をエッチングするなどして配線回路加工して銅配線を形成し、フレキシブル回路基板として使用される。なお、本実施の形態のフレキシブル銅張積層板において、ポリイミド絶縁層の両面に銅箔が設けられている場合は、配線回路加工して銅配線を形成し、当該銅配線が折り曲げ部位に該当する銅箔を銅箔(B)と定義する。従って、ポリイミド絶縁層の両面に銅箔が設けられている場合であっても、配線回路加工して銅配線を形成し、当該銅配線が折り曲げ部位に該当しない銅箔は、銅箔(B)ではないものとする。
【0016】
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板は、その厚み[つまり、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との合計の厚み]が15〜38μmの範囲内、好ましくは15〜35μmの範囲内がよい。フレキシブル銅張積層板の厚みが15μmに満たないと、フレキシブル銅張積層板の銅箔を配線回路加工してなるフレキシブルプリント配線板の剛性が低下し、折り曲げによる弾塑性変形が生じやすい傾向になる。一方、フレキシブル銅張積層板の厚みが38μmを超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性を著しく低下させてしまう。
【0017】
<ポリイミド絶縁層>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板においては、ポリイミド絶縁層(A)の厚みは、5〜30μmの範囲内とする必要があるが、銅箔(B)の厚みや剛性などによって、所定の範囲内の厚さに設定することができる。例えば、銅箔(B)が圧延銅箔である場合、ポリイミド絶縁層(A)の厚みが10〜25μmの範囲内にあることが好ましく、10〜20μmの範囲内にあることがより好ましく、10〜15μmの範囲内にあることが特に好ましい。また、例えば、銅箔(B)が電解銅箔である場合、ポリイミド絶縁層(A)の厚みは5〜30μmの範囲内にあることが好ましく、8〜15μmの範囲内にあることがより好ましく、9〜12μmの範囲内にあることが特に好ましい。ポリイミド絶縁層(A)の厚みが上記下限値に満たないと、電気絶縁性が担保出来ないことや、ハンドリング性の低下により製造工程にて取扱いが困難になるなどの問題が生じる、一方、ポリイミド絶縁層(A)の厚みが上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性を著しく低下させてしまう。
【0018】
また、ポリイミド絶縁層(A)の引張弾性率は4〜10GPaの範囲内であることが必要であり、好ましくは6〜10GPaの範囲内であるのがよい。ポリイミド絶縁層(A)の引張弾性率が4GPaに満たないとポリイミド自体の強度が低下することによって、フレキシブル銅張積層板を回路基板へ加工する際にフィルムの裂けなどのハンドリング上の問題が生じることがある。反対に、ポリイミド絶縁層(A)の引張弾性率が10GPaを超えるとフレキシブル銅張積層板の折り曲げに対する剛性が上昇する結果、フレキシブル銅張積層板を折り曲げた際に銅配線に加わる曲げ応力が上昇し、耐折り曲げ耐性が低下してしまう。
【0019】
ポリイミド絶縁層(A)は、市販のポリイミドフィルムをそのまま使用することも可能であるが、絶縁層の厚さや物性のコントロールのしやすさから、ポリアミド酸溶液を銅箔上に直接塗布した後、熱処理により乾燥、硬化する所謂キャスト(塗布)法によるものが好ましい。また、ポリイミド絶縁層(A)は、単層のみから形成されるものでもよいが、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との接着性等を考慮すると複数層からなるものが好ましい。ポリイミド絶縁層(A)を複数層とする場合、異なる構成成分からなるポリアミド酸溶液の上に他のポリアミド酸溶液を順次塗布して形成することができる。ポリイミド絶縁層(A)が複数層からなる場合、同一の構成のポリイミド前駆体樹脂を2回以上使用してもよい。
【0020】
ポリイミド絶縁層(A)について、より詳しく説明する。上述の通り、ポリイミド絶縁層(A)は複数層とすることが好ましいが、その具体例としては、ポリイミド絶縁層(A)を、熱膨張係数30×10
−6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層(i)と、熱膨張係数30×10
−6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)と、を含む積層構造とすることが好ましい。より好ましくは、ポリイミド絶縁層(A)は、低熱膨張性のポリイミド層(i)の少なくとも一方、好ましくはその両側に、高熱膨張性のポリイミド層(ii)を有する積層構造とし、高熱膨張性のポリイミド層(ii)が直接銅箔(B)と接するようにすることがよい。ここで、「低熱膨張性のポリイミド層(i)」とは、熱膨張係数30×10
−6/K未満、好ましくは1×10
−6〜25×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは3×10
−6〜20×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。また、「高熱膨張性のポリイミド層(ii)」とは、熱膨張係数30×10
−6/K以上のポリイミド層を言い、好ましくは30×10
−6〜80×10
−6/Kの範囲内、特に好ましくは30×10
−6〜70×10
−6/Kの範囲内のポリイミド層をいう。このようなポリイミド層は、使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望の熱膨張係数を有するポリイミド層とすることができる。
【0021】
上記ポリイミド絶縁層(A)を与えるポリアミド酸溶液は、公知のジアミンと酸無水物とを溶媒の存在下で重合して製造することができる。この際、重合される樹脂粘度は、例えば、500cps以上35,000cps以下の範囲内とすることが好ましい。
【0022】
ポリイミドの原料として用いられるジアミンとしては、例えば、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2,6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジン、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノジベンゾフラン、1,5-ジアミノフルオレン、ジベンゾ-p-ジオキシン-2,7-ジアミン、4,4'-ジアミノベンジルなどが挙げられる。
【0023】
また、ポリイミドの原料として用いられる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0024】
上記ジアミン及び酸無水物は、それぞれ1種のみを使用してもよく2種以上を併用することもできる。また、重合に使用される溶媒は、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、2-ブタノン、ジグライム、キシレン等が挙げられ、1種又は2種以上併用して使用することもできる。
【0025】
本実施の形態において、熱膨張係数30×10
−6/K未満の低熱膨張性のポリイミド層(i)とするには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、2-メトキシ-4,4’-ジアミノベンズアニリドを用いることがよく、特に好ましくは、ピロメリット酸二無水物及び2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニルを原料各成分の主成分とするものがよい。
【0026】
また、熱膨張係数30×10
−6/K以上の高熱膨張性のポリイミド層(ii)とするには、原料の酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分としては、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることがよく、特に好ましくはピロメリット酸二無水物及び2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを原料各成分の主成分とするものがよい。なお、このようにして得られる高熱膨張性のポリイミド層(ii)の好ましいガラス転移温度は、300〜400℃の範囲内である。
【0027】
また、ポリイミド絶縁層(A)を低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)との積層構造とした場合、好ましくは、低熱膨張性のポリイミド層(i)と高熱膨張性のポリイミド層(ii)との厚み比(低熱膨張性のポリイミド層(i)/高熱膨張性のポリイミド層(ii))が2〜15の範囲内であるのがよい。この比の値が、2に満たないとポリイミド絶縁層(A)全体に対する低熱膨張性のポリイミド層(i)が薄くなるため、ポリイミドフィルムの寸法特性の制御が困難となり、銅箔(B)をエッチングした際の寸法変化率が大きくなり、15を超えると高熱膨張性のポリイミド層(ii)が薄くなるため、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との接着信頼性が低下する。
【0028】
<銅箔>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板において、銅箔(B)の厚みは5〜20μmの範囲内であり、好ましくは8〜15μmの範囲内がよい。銅箔(B)の厚みが5μmに満たないと、フレキシブル銅張積層板の製造時、例えば、銅箔(B)上にポリイミド絶縁層(A)を形成する工程において銅箔(B)自体の剛性が低下し、その結果、フレキシブル銅張積層板上にシワ等が発生する問題が生じる。また、20μmを超えると、フレキシブル銅張積層板(又はFPC)を折り曲げた際の銅箔(又は銅配線)に加わる曲げ応力が大きくなることにより耐折り曲げ性が低下することとなる。銅箔の種類によっては、所定の熱処理によってアニールされて、銅箔の柔軟性が向上する傾向にある。このような銅箔としては、圧延銅箔が挙げられる。このような観点から、銅箔(B)が圧延銅箔である場合には、銅箔(B)の厚みは8〜20μmの範囲内であることが好ましく、10〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0029】
また、銅箔(B)の引張弾性率は、10〜35GPaの範囲内であるが、例えば、銅箔(B)が圧延銅箔である場合には、10〜20GPaの範囲内であることが好ましく、銅箔(B)が電解銅箔である場合には、25〜35GPaの範囲内がより好ましい。銅箔(B)の引張弾性率が上記下限値に満たないと、フレキシブル銅張積層板の製造時、例えば、銅箔(B)上にポリイミド絶縁層(A)を形成する工程において、加熱によって銅箔(B)自体の剛性が低下してしまう。その結果、フレキシブル銅張積層板上にシワ等が発生するという問題が生じる。一方、引張弾性率が上記上限値を超えるとFPCを折り曲げた際に銅配線により大きな曲げ応力が加わることとなり、その耐折り曲げ性が著しく低下する。
【0030】
銅箔(B)の表面は、粗化処理されていてもよく、銅箔(B)の剛性との関係を考慮すれば、銅箔(B)が圧延銅箔である場合、好ましくは、ポリイミド絶縁層(A)と接する銅箔(B)の表面の表面粗さ(十点平均粗さ;Rz)は0.5〜1.5μmの範囲内であるのがよい。銅箔(B)が電解銅箔である場合、好ましくは、ポリイミド絶縁層(A)と接する銅箔(B)の表面の表面粗さ(Rz)は0.7〜2.2μmの範囲内、より好ましくは0.8〜1.6μmの範囲内がよい。表面粗さ(Rz)の値が、上記下限値に満たないとポリイミド絶縁層(A)との接着信頼性の担保が困難となり、上記上限値を超えるとフレキシブル銅張積層板(又はFPC)を繰り返し折り曲げた際に、その粗化表面の凹凸がクラック発生の起点となりやすく、その結果、フレキシブル銅張積層板(又はFPC)の耐折り曲げ性を低下させることとなる。なお、表面粗さRzはJIS B0601の規定に準じて測定される値である。
【0031】
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板に使用する銅箔(B)は、上記特性を充足するものであれば特に限定されるものではなく、市販されている銅箔を用いることができる。その具体例としては、圧延銅箔としてはJX日鉱日石金属株式会社製のHA箔や、TP箔が挙げられ、電解銅箔としては、古河電気工業株式会社製WS箔、日本電解株式会社製HL箔、三井金属鉱業株式会社製HTE箔などが挙げられる。また、これらの市販品を含めて、それ以外のものを使用した場合であっても、前述した銅箔(B)上へのポリイミド絶縁層(A)を形成する際の熱処理条件やポリイミド絶縁層(A)を形成した後の銅箔(B)のアニール処理などにより、銅箔(B)の引張弾性率は変化し得るので、本発明では結果として得られたフレキシブル銅張積層板がこれら所定の範囲になればよい。
【0032】
<ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との厚みの比>
本実施の形態では、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との厚みの比[銅箔(B)の厚み/ポリイミド絶縁層(A)の厚み]が0.48〜1.5の範囲内にあることが好ましい。この厚み比が0.48未満、あるいは1.5より大きくなると、折り曲げ時に塑性変形した部分が伸ばされる際の最大引張りひずみが大きくなることにより、耐折り曲げ性が低下することとなる。
【0033】
<フレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性が0.005〜0.03N・m
2の範囲内、好ましくは0.006〜0.03N・m
2の範囲内がよい。フレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性が上記範囲から外れると耐折り曲げ性が低下する。
【0034】
以下、本実施の形態のフレキシブル銅張積層板(以下、積層板ともいう。)の等価曲げ剛性について説明する。まず、積層板の中立面位置の計算方法について、
図7を参照して詳しく説明する。
図7は、中立面位置の計算方法の説明に使用する積層板のモデルの断面図である。
図7には、便宜上、積層板が2層であるモデルを示しているが、以下の説明は、積層板が2層以上である場合の全般に当てはまる。ここで、積層板の層の数をn(nは2以上の整数)とする。また、この積層を構成する各層のうち下から数えてi番目(i=1,2,・・・,n)の層を第i番目と呼ぶ。
図7において、符号Bは、積層板の幅を表している。なお、ここでいう幅とは、第1層の下面に平行で、積層板の長手方向に垂直な方向の寸法である。
【0035】
本実施の形態における積層板は、上記のポリイミド絶縁層(A)と上記銅箔(B)により構成されるが、この積層板の銅箔を配線回路加工して銅配線を形成した任意のフレキシブル回路基板では、銅配線51が例えば
図1に示したようにパターニングされた場合、積層板を上から見たときに、積層板には、銅配線51が存在する部分と、銅配線51が存在しない部分とがある。ここで、銅配線51が存在する部分を配線部(Line)と呼び、銅配線51が存在しない部分をスペース部(Space)と呼ぶ。配線部とスペース部では、構成が異なる。そのため、必要に応じて、配線部とスペース部とを分けて考える。なお、以下で説明する中立面位置の計算及び等価曲げ剛性の計算では、積層板の銅箔を配線回路加工していない場合でも適用可能で、この場合、積層板は配線部のみで構成されるので、スペース部は無視できる。
【0036】
[中立面位置の計算]
ここで、第1層の下面を基準面SPとする。以下、基準面SPが
図7おける下側に凸形状になるように積層板を屈曲させる場合について考える。
図7において、符号NPは積層板の中立面を表している。ここで、中立面NPと基準面SPとの距離を中立面位置[NP]とし、この中立面位置[NP]を、配線部とスペース部とで別々に計算する。中立面位置[NP]は、次の式(1)によって算出される。
【0037】
[NP]=Σ
i=1nE
iB
ih
it
i/Σ
i=1nE
iB
it
i …(1)
【0038】
ここで、E
iは、第i層を構成する材料の弾性率である。この弾性率E
iは、本実施の形態における「各層における応力とひずみの関係」に対応する。B
iは、第i層の幅であり、
図7に示した幅Bに相当する。配線部の中立面位置[NP]を求める場合には、B
iとして線幅LWの値を用い、スペース部の中立面位置[NP]を求める場合には、B
iとして線間幅SWの値を用いる。h
iは、第i層の中央面と基準面SPとの距離である。なお、第i層の中央面とは、第i層の厚み方向の中央に位置する仮想の面である。t
iは、第i層の厚みである。また、記号“Σ
i=1n”は、iが1からnまでの総和を表す。以下、配線部の中立面位置を[NP]
Lineと記す。
【0039】
[等価曲げ剛性の計算]
積層板全体の曲げ剛性である等価曲げ剛性[BR]は、次の式(2)によって算出される。
【0040】
[BR]=B
Line{Σ
i=1nE
i(a
i3−b
i3)/3}
Line
+B
Space{Σ
i=1nE
i(a
i3−b
i3)/3}
Space …(2)
【0041】
ここで、式(2)において、B
Lineは線幅LWの総和であり、B
Spaceは線間隔SWの総和である。また、
図7に示したように、a
iは第i層の上面と中立面NPとの距離、b
iは第i層の下面と中立面NPとの距離である。{Σ
i=1nE
i(a
i3−b
i3)/3}
Lineは、配線部におけるE
i(a
i3−b
i3)/3の値の、iが1からnまでの総和である。{Σ
i=1nE
i(a
i3−b
i3)/3}
Spaceは、スペース部におけるE
i(a
i3−b
i3)/3の値の、iが1からnまでの総和である。なお、式(2)に関連するが、第i層に関して、B
i(a
i3−b
i3)/3は、一般に断面二次モーメントと呼ばれる断面の幾何学的な特性を表すパラメータである。この第i層の断面二次モーメントに第i層の弾性率を掛けた値が第i層の曲げ剛性である。
【0042】
このようにして、積層板の等価曲げ剛性を算出することができる。また、積層板を所定のギャップで折り曲げた場合、積層板が有する厚みと等価曲げ剛性の違いによって、屈曲部の先端の曲率に違いが生じる。このような観点から、積層板の銅箔(B)を配線回路加工して銅配線を形成することによって作製したフレキシブル回路基板を折り曲げ試験に供した場合において、以下の式(3)によって計算される屈曲部の先端の曲率(κ)が、好ましくは10×10
3〜60×10
3m
−1の範囲内、より好ましくは10×10
3〜55×10
3m
−1の範囲内がよい。
【0043】
κ=[BR]/(α×H
2) … (3)
【0044】
ここで、式(3)において、[BR]は等価曲げ剛性[単位;N・m
2]であり、αは折り曲げ試験に供した際に実測される反発力より決定されるモーメントに相当する定数[単位;N・m]であり、Hはギャップ[単位;m]である。
【0045】
<作用>
本実施の形態では、上記構成a〜dを満たすことによって、折り曲げた際の歪みを1箇所に集中させず、2箇所以上に分散させやすくすることが可能となる。その結果、フレキシブル回路基板の耐折り曲げ性を向上させ、銅配線の破断や導通不良などを低減してフレキシブル回路基板の信頼性を高めることができる。このような優れた効果が得られる理由として、以下のように考えれば合理的な説明が可能になる。
すなわち、上記構成a〜dを満たすフレキシブル回路基板は、1回目に折り曲げた際の塑性変形量を比較的大きくすることが可能になり、いわゆる「折り癖」が適度についた状態を作り出すことができる。このような適度な折り癖を有する状態では、2回目以降に折り曲げた際に、折り曲げ部位に加わる応力が大幅に緩和されるため、折り曲げ部位におけるひずみの増大が抑制され、フレキシブル回路基板の耐折り曲げ性が大幅に向上するものと推測される。ここで、フレキシブル回路基板に適度な折り癖をつけるためには、構成a〜cを具備することを前提に、さらに、折り癖の形成に深く関与する因子として、構成dの等価曲げ剛性を考慮に入れることが重要である。本実施の形態では、等価曲げ剛性を0.005〜0.03N・m
2の範囲内、好ましくは0.006〜0.03N・m
2の範囲内に制御することによって、フレキシブル回路基板に優れた耐折り曲げ性を与えることができる。
【0046】
また、本実施の形態では、さらに構成eとして、ポリイミド絶縁層(A)と銅箔(B)との厚みの比[銅箔(B)の厚み/ポリイミド絶縁層(A)の厚み]を0.48〜1.5の範囲内に制御することが好ましい。このような範囲内に制御することで、フレキシブル回路基板の耐折り曲げ性をより一層向上させることができる。
【0047】
<フレキシブル銅張積層板の製造>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板は、例えば、銅箔(B)の表面にポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリアミド酸溶液ともいう。)を塗工し、次いで、乾燥、硬化させる熱処理工程を経て製造することができる。熱処理工程における熱処理は、塗工されたポリアミド酸溶液を160℃未満の温度でポリアミド酸中の溶媒を乾燥除去した後、更に、150℃から400℃の温度範囲で段階的に昇温し、硬化させることで行なわれる。このようにして得られた片面フレキシブル銅張積層板を両面銅張積層板とするには、前記片面フレキシブル銅張積層板と、これとは別に準備した銅箔(B)とを300〜400℃にて熱圧着する方法が挙げられる。
【0048】
<FPC>
本実施の形態のフレキシブル銅張積層板は、主にFPC材料として有用である。すなわち、本実施の形態のフレキシブル銅張積層板の金属箔を常法によってパターン状に加工して配線層を形成することによって、本発明の一実施の形態であるFPCを製造できる。
【0049】
<FPCの使用方法>
本実施の形態のFPCは、例えば0.1〜0.5mmの狭いギャップでの屈曲性能の要求が厳しい折り曲げの用途において特に効果を発揮する。すなわち、FPCの厚み(t)とギャップ(H)との関係が、2t/H≦0.3となるように、電子機器の筐体内に折り畳んで収納されて使用することが好適である。このような厳しい条件での使用であっても、折り曲げた際の歪みを1箇所に集中させず、2箇所以上に分散させやすくすることが可能となり、FPCの耐折り曲げ性を向上させ、銅配線の破断や導通不良などを低減してFPCの信頼性を高めることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明する。なお、下記の実施例における各特性評価は、以下の方法により行った。
【0051】
[引張弾性率の測定]
引張弾性率の測定にあたり銅箔に関しては、真空オーブンを用いてフレキシブル銅張積層板の処理工程と同等の熱処理を与えた銅箔を用いた。また、ポリイミド層に関しては、フレキシブル銅張積層板をエッチングして銅箔を完全に除去したポリイミドフィルムを用いた。このようにして得られた材料を、株式会社東洋精機製作所製ストログラフR−1を用いて、温度23℃、相対湿度50%の環境下で引張弾性率の値を測定した。
【0052】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
セイコーインスツルメンツ製のサーモメカニカルアナライザーを使用し、250℃まで昇温し、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、240℃から100℃までの平均熱膨張係数(線熱膨張係数)を求めた。
【0053】
[表面粗さ(Rz)の測定]
接触式表面粗さ測定機((株)小坂研究所製SE1700)を用いて、銅箔のポリイミド絶縁層との接触面側の表面粗さを測定した。
【0054】
[はぜ折りの測定(折り曲げ試験)]
銅張積層板の銅箔をエッチング加工し、その長手方向に沿ってライン幅100μm、スペース幅100μmにて長さが40mmの10列の銅配線51を形成した試験片(試験回路基板片)40を作製した(
図1)。試験片40における銅配線51のみを表した
図1に示したように、その試験片40における10列の銅配線51は、U字部52を介して全て連続して繋がっており、その両端には抵抗値測定用の電極部分(図示外)を設けている。
【0055】
試験片40を、二つ折りが可能な試料ステージ20及び21上に固定し、抵抗値測定用の配線を接続して、抵抗値のモニタリングを開始した(
図2)。折り曲げ試験は、10列の銅配線51に対して、長手方向のちょうど中央部分にて、銅配線51が内側になって向き合うように折り曲げて行った。この際、ウレタン製のローラー22を用いて、折り曲げ箇所40CのギャップHが0.3mmとなるように制御しながら、折り曲げた線と並行にローラー22を移動させ、10列の銅配線51を全て折り曲げた後(
図3及び
図4)、折り曲げ部分を開いて試験片40を平らな状態に戻し(
図5)、折り目がついている部分を再度ローラー22にて抑えたまま移動させ(
図6)、この一連の工程をもってはぜ折り回数1回とカウントするようにした。このような手順で折り曲げ試験を繰り返し行う間、常時、銅配線51の抵抗値をモニタリングし、所定の抵抗(3000Ω)になった時点を銅配線51の破断と判断し、その時までに繰り返した折り曲げ回数をはぜ折り測定値とした。このはぜ折り測定値が50回以上である場合を「良好」、50回未満である場合を「不良」と評価した。
【0056】
なお、折り曲げ試験において、最初から折り曲げられた状態の試験片40を用いる場合は、一旦展開して折り曲げを解消させた状態を折り曲げ回数ゼロとし、上記手順で折り曲げ回数をカウントする。
【0057】
実施例、比較例に記載のフレキシブル銅張積層板の製造方法について次に示す。
【0058】
[ポリアミド酸溶液の合成]
(合成例1)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を投入して容器中で撹拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が12wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸aの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸aから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、55×10
−6/Kであった。
【0059】
(合成例2)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)を投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)およびピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が15wt%、各酸無水物のモル比率(BPDA:PMDA)が20:80となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸bの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸bから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10
−6/Kであった。
【0060】
(合成例3)
熱電対及び攪拌機を備えると共に窒素導入が可能な反応容器に、N,N−ジメチルアセトアミドを入れ、さらに、この反応容器に2,2'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル(m-TB)および4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(DAPE)を各ジアミンのモル比率(m-TB:DAPE)が60:40となるように投入して容器中で攪拌しながら溶解させた。次に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)をモノマーの投入総量が16wt%となるように投入した。その後、3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸cの樹脂溶液を得た。ポリアミド酸cから形成された厚み25μmのポリイミドフィルムの熱膨張係数(CTE)は、22×10
−6/Kであった。
【0061】
(実施例1)
厚さ12μmで長尺状の圧延銅箔の片面(表面粗さRz=0.8μm)に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.2μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが7.6μmとなるように均一に塗布し、135℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.2μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計6分程度の時間をかけて熱処理し、ポリイミド層の厚みが12μmの片面フレキシブル銅張積層板を得た。
【0062】
得られたフレキシブル銅張積層板を構成する銅箔の引張弾性率、ポリイミド層の引張弾性率等の物性値、フレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表1及び表2に示す。なお、ポリイミド層の評価は製造されたフレキシブル銅張積層板から銅箔をエッチング除去したものを用いた。
【0063】
ここで、実施例で使用したフレキシブル銅張積層板の等価曲げ剛性[BR]及び屈曲部の先端の曲率(κ)の算出について、実施例1を例に具体的な計算手順を説明する。
【0064】
銅配線が存在する配線部について
図7に示すような2層構成を考え、第1層および第2層を構成する材料をそれぞれポリイミドおよび銅とする。表1(実施例1)に示した通り、各層の弾性率はE
1=7.2GPa、E
2=14GPa、厚みはt
1=t
2=12μmである。また、各層における厚さ方向での中央面と基準面SPとの距離はそれぞれh
1=6μm、h
2=18μmである。これらの値を式(1)に代入すると、先ず、銅配線が存在する配線部での中立面位置(基準面SPと中立面NPとの距離)は[NP]=13.9μmと計算される。次に、各層の上面と中立面NPとの距離がa
1=1.925μm、a
2=10.075μm、各層の下面と中立面NPとの距離がb
1=13.925μm、b
2=1.925μmとそれぞれ計算される。また、幅Bについては銅配線の単位幅に着目して考え、B
Line=1、B
Space=0とし、これらの値と弾性率E
1、E
2を式(2)に代入すると等価曲げ剛性は[BR]=0.011N・m
2と計算される。さらに、実施例1での試験の際に実測される反発力よりモーメントに相当する定数αは、α=6.1N・mと決定し、ギャップHは、H=0.3mmであるから、これらの値と先に求めた[BR]の値を式(3)に代入すると屈曲部の先端の曲率κはκ=20.0×10
3m
−1と計算される。なお、本実施例においては、スペース部はポリイミド層のみから構成されていることから[NP]を求める操作は必要とせず、表2中の他の実施例、比較例の等価曲げ剛性[BR]及び屈曲部の先端の曲率(κ)も以上の手順で計算された値である。
【0065】
(実施例2)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ12μmの市販の電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0066】
(実施例3)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
【0067】
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μm、その上に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが5.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μmとなるようにした。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0068】
(実施例4)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ9μmの市販の電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を用いた以外は実施例3と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0069】
(実施例5)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ18μmの市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=0.8μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0070】
(実施例6)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmで長尺状の市販の電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)上に、合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが20.0μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.5μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計6分程度の時間をかけて熱処理し、ポリイミド樹脂層厚み25μmの片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0071】
(比較例1)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmの電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を使用し、ポリイミド層の厚み構成を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。
【0072】
ここで、ポリイミド層の厚み構成は、銅箔上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μm、その上に合成例2で調製したポリアミド酸bの樹脂溶液を硬化後の厚みが16.0μm、更にその上に合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが2.0μmとなるようにした。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0073】
(比較例2)
表1に示した特性を有し、厚さ12μmで長尺状の市販の電解銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)上に、合成例1で調製したポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μmとなるように均一に塗布した後、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次に、この塗布面側に合成例3で調製したポリアミド酸cの樹脂溶液を硬化後の厚みが42.0μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、この塗布面側に第1層目で塗布したものと同じポリアミド酸aの樹脂溶液を硬化後の厚みが4.0μmとなるように均一に塗布し、130℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。この長尺状の積層体を130℃から開始して300℃まで段階的に温度が上がるように設定した連続硬化炉にて、合計10分程度の時間をかけて熱処理し、ポリイミド樹脂層厚み50μmの片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0074】
(比較例3)
銅箔として、表1に示した特性を有する厚さ18μmの市販の圧延銅箔(塗布面の表面粗さRz=1.1μm)を用いた以外は比較例2と同様にして、片面フレキシブル銅張積層板を得た。得られた片面フレキシブル銅張積層板についての等価曲げ剛性、屈曲部の先端の曲率および耐折り曲げ性の評価結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1及び表2から、実施例1〜6のフレキシブル銅張積層板は、いずれも上記構成a〜dを具備することによって、はぜ折り測定値が50回以上と良好な値を示し、耐折り曲げ性が満足できる結果であった。一方、等価曲げ剛性が0.03N・m
2を超えており、構成dを具備しない比較例1〜3では、いずれも、はぜ折り回数が少なく、耐折り曲げ性が不良であった。
【0078】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。