特開2015-88745(P2015-88745A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015088745-静電チャック装置 図000003
  • 特開2015088745-静電チャック装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-88745(P2015-88745A)
(43)【公開日】2015年5月7日
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20150410BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20150410BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-196781(P2014-196781)
(22)【出願日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-201775(P2013-201775)
(32)【優先日】2013年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】古内 圭
(72)【発明者】
【氏名】稲妻地 浩
(72)【発明者】
【氏名】木原 宏
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA13
5F131BA19
5F131CA02
5F131CA03
5F131CA68
5F131EA03
5F131EB12
5F131EB15
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB19
5F131EB25
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
(57)【要約】
【課題】給電部分の周囲における熱伝達を向上させることができ、静電チャック部に載置される板状試料の表面の温度を均一にすることのできる静電チャック装置を提供する。
【解決手段】上面11aを板状試料Wを載置する載置面とした載置板11と、この載置板11と一体化された支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用内部電極13と、この静電吸着用内部電極13に電気的に接続されるとともに支持板12に貫通して設けられた給電部材14とを備えた静電チャック部2と、この静電チャック部2に接合一体化されたベース部3とを備えてなる静電チャック装置1において、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線22を備えた給電用端子21がベース部3に埋設され、導線22は給電部材14に電気的に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面を板状試料を載置する載置面とした載置板と、この載置板と一体化された支持板と、これら載置板と支持板との間に設けられた静電吸着用内部電極と、この静電吸着用内部電極に電気的に接続されるとともに前記支持板に貫通して設けられた給電部材とを備えた静電チャック部と、該静電チャック部に接合一体化されたベース部とを備えてなる静電チャック装置において、
直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線を備えた給電用端子が前記ベース部に埋設され、前記導線は前記給電部材に電気的に接続されていることを特徴とする静電チャック装置。
【請求項2】
前記導線の少なくとも一部を囲むように、弾性を有する熱伝達部材を設けてなることを特徴とする請求項1記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記給電部材の前記ベース部側の面に凹部が形成され、前記導線の一端部を、導電性接着剤を介して前記凹部に接着してなることを特徴とする請求項1または2記載の静電チャック装置。
【請求項4】
前記導電性接着剤は、樹脂材料と導電性フィラーとの混合物である請求項3に記載の静電チャック装置。
【請求項5】
前記給電部材は、導電性セラミックスからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記熱伝達部材と前記ベース部との間に、絶縁碍子を設けてなること特徴とする請求項2記載の静電チャック装置。
【請求項7】
前記静電チャック部と前記ベース部との間に、加熱用部材を設けてなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関し、さらに詳しくは、シリコンウエハ等の半導体基板に、物理気相成長法(PVD)や化学気相成長法(CVD)による成膜処理、プラズマエッチング等のエッチング処理、露光処理等の各種処理を施す際に用いて好適な静電チャック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンウエハ等の半導体基板を用いる半導体製造プロセスにおいては、半導体素子の高集積化及び高性能化に伴い、さらなる微細加工技術の向上が求められている。この半導体製造プロセスの中でも、高効率かつ大面積の微細加工が可能なエッチング技術として、ドライエッチング技術の一種であるプラズマエッチング技術が主として用いられている。
このプラズマエッチング技術は、加工対象となるシリコンウエハ等の半導体基板の上にレジストでマスクパターンを形成し、この半導体基板を真空中に支持した状態で、この真空中に反応性ガスを導入し、この反応性ガスに高周波の電界を印加することにより、加速された電子が反応性ガスのガス分子と衝突してプラズマ状態となり、このプラズマから発生するラジカル(フリーラジカル)とイオンを半導体基板と反応させて反応生成物として取り除くことにより、半導体基板に微細パターンを形成する技術である。
【0003】
一方、薄膜成長技術の一つとしてプラズマCVD法がある。
この方法は、薄膜の原料となる原料分子を含むガスに高周波の電界を印加することによりプラズマ放電させ、このプラズマ放電にて加速された電子により原料分子を分解させ、生成した化合物を基板の上に堆積させる成膜方法である。
このプラズマCVD法では、原料分子を含むガスがプラズマ中にて相互に衝突し活性化されラジカルとなるので、低温では熱的励起だけでは起こらなかった化学反応も可能となる。
【0004】
上記のプラズマエッチング技術や薄膜成長技術等が適用されるプラズマを用いた半導体製造装置においては、従来から、試料台に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、このウエハを所望の温度に維持する装置として静電チャック装置が使用されている。
ところで、近年におけるシリコンウエハ等の半導体基板の大径化により、成膜時における面内均一性、微細加工における面内均一性、プラズマエッチング等のエッチング処理における面内均一性に対する要求が更に高まってきており、半導体基板の表面温度を適正な温度に正確に制御し、この半導体基板の表面の温度分布を均一にすることが要求されている。
【0005】
そこで、シリコンウエハ等の半導体基板を固定するセラミックからなる静電チャックと、冷却管を内蔵したアルミニウム等の金属からなるベースプレートとを一体化し、この静電チャックのベースプレート側の表面付近及びベースプレートの静電チャック側の表面付近それぞれにヒーターエレメントを内蔵させた静電チャック装置が提案されている(特許文献1)。
この静電チャック装置では、静電チャックのベースプレート側の表面付近及びベースプレートの静電チャック側の表面付近それぞれにヒーターエレメントを内蔵させることにより、固定される半導体基板の表面温度の均一性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−317772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の静電チャック装置では、静電チャックが窒化アルミニウム等のセラミックにより構成され、一方、ベースプレートがアルミニウム等の金属により構成されていることから、ベースプレートの方が静電チャックに比べて熱膨張率が大きくなる。そこで、この静電チャック装置を用いてプラズマエッチング処理やプラズマCVDによる薄膜成長を行った場合、外周部での静電チャックとベースプレートとの間の熱膨張差が大きくなり、熱応力により給電部が破損するという問題点があった。
この問題点は、静電チャック装置を構成する静電チャック及びベースプレートをヒーターエレメントにより加熱した場合により顕著に表れる。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、給電部分の周囲における熱伝達を向上させることができ、よって、静電チャック部に載置される板状試料の表面の温度を均一にすることのできる静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、一主面を板状試料を載置する載置面とした載置板と、この載置板と一体化された支持板と、これら載置板と支持板との間に設けられた静電吸着用内部電極と、この静電吸着用内部電極に電気的に接続されるとともに前記支持板に貫通して設けられた給電部材とを備えた静電チャック部と、該静電チャック部に接合一体化されたベース部とを備えてなる静電チャック装置において、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線を備えた給電用端子を前記ベース部に埋設し、この導線を給電部材に電気的に接続することとすれば、熱応力に対する耐久性を保持するとともに、給電部分の周囲における熱伝達を向上させることができ、よって、静電チャック部に載置される板状試料の表面の温度を均一にすることができることを知見し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明の静電チャック装置は、一主面を板状試料を載置する載置面とした載置板と、この載置板と一体化された支持板と、これら載置板と支持板との間に設けられた静電吸着用内部電極と、この静電吸着用内部電極に電気的に接続されるとともに前記支持板に貫通して設けられた給電部材とを備えた静電チャック部と、該静電チャック部に接合一体化されたベース部とを備えてなる静電チャック装置において、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線を備えた給電用端子が前記ベース部に埋設され、前記導線は前記給電部材に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0011】
前記導線の少なくとも一部を囲むように、弾性を有する熱伝達部材を設けてなることが好ましい。
前記給電部材の前記ベース部側の面に凹部が形成され、前記導線の一端部を、導電性接着剤を介して前記凹部に接着してなることが好ましい。
前記導電性接着剤は、樹脂材料と導電性フィラーとの混合物であることが好ましい。
前記給電部材は、導電性セラミックスからなることが好ましい。
前記熱伝達部材と前記ベース部との間に、絶縁碍子を設けてなることが好ましい。
前記静電チャック部と前記ベース部との間に、加熱用部材を設けたこととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の静電チャック装置によれば、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線を備えた給電用端子をベース部に埋設し、この導線を給電部材に電気的に接続したので、熱応力に対する耐久性を保持するとともに、給電部分の周囲における熱伝達を向上させることができる。よって、静電チャック部に載置される板状試料の表面の温度を均一にすることができる。
【0013】
また、静電チャック部とベース部との間に加熱用部材を設けたことにより、この加熱用部材によりベース部が加熱された場合においても、熱応力に対する耐久性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の静電チャック装置を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の静電チャック装置を示す断面図であり、この静電チャック装置1は、静電チャック部2と、ベース部3とにより構成され、これら静電チャック部2とベース部3とは、絶縁性接着剤4により接合一体化されている。
【0017】
静電チャック部2は、上面11aが半導体ウエハ、金属ウエハ、ガラス基板等の板状試料Wを載置するための載置面とされた円板状の載置板11と、この載置板11の下面(他の一主面)側に対向配置されて載置板11と一体化された円板状の支持板12と、載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用内部電極13と、支持板12の貫通孔12a内に嵌め込まれて静電吸着用内部電極13に電気的に接続される給電部材14とを備えている。
【0018】
一方、ベース部3には、その厚み方向に延在する貫通孔3aが形成され、この貫通孔3aには、給電部材14と電気的に接続される給電用端子21が嵌め込まれている。
この給電用端子21は、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線22と、この導線22を囲むように設けられた円筒状の弾性を有する熱伝達部材23と、この熱伝達部材23を囲むように設けられた円筒状の絶縁碍子24とにより構成されている。
そして、この導線22の上端部(一端部)22aは、給電部材14の凹部15に接着・固定され、その下端部22bには、外部と電気的に接続する接続部品25が電気的に接続され、この接続部品25は絶縁碍子24内に嵌め込まれて固定されている。
【0019】
次に、この静電チャック装置1の各構成要素についてさらに詳しく説明する。
「載置板及び支持板」
載置板11及び支持板12は、その重ね合わせ面の形状を同じくし、ともに、アルミナ基焼結体からなるものである。
このアルミナ基焼結体としては、特に限定されるものではないが、熱膨張係数が可能な限り静電吸着用内部電極13の熱膨張係数に近似したもので、しかも焼結し易いものが好ましい。また、載置板11の上面11a側は静電吸着面となるから、特に誘電率が高い材質であって、静電吸着する板状試料Wに対して不純物とならないものを選択することが好ましい。
以上のことを考慮すれば、載置板11及び支持板12は、実質的に1質量%以上かつ15質量%以下の炭化ケイ素(SiC)を含み、残部を酸化アルミニウム(Al)とする炭化ケイ素−酸化アルミニウム(SiC−Al)複合焼結体が好ましい。
【0020】
この炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体として、酸化アルミニウム(Al)と炭化ケイ素(SiC)とからなる複合焼結体とし、炭化ケイ素(SiC)の含有率を複合焼結体全体に対して5質量%以上かつ15質量%以下とすると、室温(25℃)における体積固有抵抗は、1.0×10Ω・cm以上かつ1.0×1012Ω・cm以下となり、ジョンソン・ラーベック型の静電チャック装置の載置板として好適である。さらに、耐磨耗性に優れ、ウエハの汚染やパーティクルの発生の原因とならず、しかも、耐プラズマ性が向上したものとなっている。
【0021】
また、この炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体として、酸化アルミニウム(Al)と、表面を酸化ケイ素(SiO)で被覆した炭化ケイ素(SiC)とからなる複合焼結体とし、炭化ケイ素(SiC)の含有率を複合焼結体全体に対して5質量%以上かつ15質量%以下とすると、室温(25℃)における体積固有抵抗は、1.0×1014Ω・cm以上となり、クーロン型の静電チャック装置の載置板11として好適である。
さらに、耐磨耗性に優れ、ウエハの汚染やパーティクルの発生の原因とならず、しかも、耐プラズマ性が向上したものとなっている。
【0022】
この炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体における炭化ケイ素粒子の平均粒子径は0.2μm以下が好ましい。
炭化ケイ素粒子の平均粒子径が0.2μmを超えると、プラズマ照射時の電場が炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体中の炭化ケイ素粒子の部分に集中し、炭化ケイ素粒子の周辺が損傷を受け易くなるからである。
【0023】
また、この炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体における酸化アルミニウム粒子の平均粒子径は2μm以下が好ましい。
酸化アルミニウム粒子の平均粒子径が2μmを超えると、炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体がプラズマエッチングされ、スパッタ痕が形成され易くなり、表面粗さが粗くなるからである。
この炭化ケイ素−酸化アルミニウム複合焼結体は、焼結性、耐プラズマ性等を向上させるために、イットリア(Y)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO)から選択された1種または2種以上を合計で0.1〜10.0質量%含有するようにしてもよい。
【0024】
これら載置板11及び支持板12の厚みは0.1mm以上かつ4mm以下が好ましい。
その理由は、これら載置板11及び支持板12の厚みが0.1mmを下回ると、載置板11及び支持板12の機械的強度を確保することができず、一方、載置板11及び支持板12の厚みが4mmを上回ると、電極面と吸着面との間の距離が増加し、吸着力が低下するとともに、載置板11及び支持板12の熱容量が大きくなり、載置されるウエハWとの熱交換効率が低下し、ウエハWの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になるからである。
【0025】
「静電吸着用内部電極」
静電吸着用内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するためのもので、板状試料Wの種類や大きさ等により、その形状、大きさ等が適宜調整される。
この静電吸着用内部電極13は、アルミナ−タンタルカーバイド複合導電性焼結体、アルミナ−タングステン複合導電性焼結体、及びアルミナ−炭化ケイ素複合導電性焼結体のうちいずれかの複合導電性焼結体により構成されている。
【0026】
これらの複合導電性焼結体としては、アルミナ−タンタルカーバイド複合導電性焼結体とアルミナ−タングステン複合導電性焼結体とは、特に低い体積固有抵抗値(1×10−1〜1×10−5Ω・cm)を有し、また、アルミナ−炭化ケイ素複合導電性焼結体は、他の複合導電性焼結体よりも高い体積固有抵抗値(1×10〜1×10Ω・cm)を有する。
【0027】
上記のアルミナ−タンタルカーバイド複合導電性焼結体としては、タンタルカーバイドの含有率が54質量%以上かつ71質量%以下であることが好ましい。ここで、タンタルカーバイドの含有率を上記の範囲とした理由は、含有率が54質量%未満では、静電吸着用内部電極13の抵抗値が高くなり、静電吸着用内部電極13として機能しなくなるので好ましくなく、一方、71質量%を超えると、静電吸着用内部電極13の熱膨張率が、載置板11及び支持板12を形成するアルミナ基焼結体と大きく異なったものとなり、後工程の加圧熱処理により熱応力破壊が生じる虞があるので好ましくない。
【0028】
上記のアルミナ−タングステン複合導電性焼結体としては、タングステンの含有率が54質量%以上かつ95質量%以下であることが好ましい。ここで、タングステンの含有率を上記の範囲とした理由は、含有率が54質量%未満では、静電吸着用内部電極13の抵抗値が高くなり、静電吸着用内部電極13として機能しなくなるので好ましくなく、一方、95質量%を超えると、静電吸着用内部電極13の熱膨張率が、載置板11及び支持板12を形成するアルミナ基焼結体と大きく異なったものとなり、後工程の加圧熱処理により熱応力破壊が生じる虞があるので好ましくない。
【0029】
さらに、上記のアルミナ−炭化ケイ素複合導電性焼結体としては、炭化ケイ素の含有率が5質量%以上かつ30質量%以下であることが好ましい。ここで、炭化ケイ素の含有率を上記の範囲とした理由は、含有率が5質量%未満では、静電吸着用内部電極13の抵抗値が高くなり、静電吸着用内部電極13として機能しなくなるので好ましくなく、一方、30質量%を超えると、静電吸着用内部電極13の熱膨張率が、載置板11及び支持板12を形成するアルミナ基焼結体と大きく異なったものとなり、後工程の加圧熱処理により熱応力破壊が生じる虞があるので好ましくない。
【0030】
この静電吸着用内部電極13の厚みは、5μm以上かつ100μm以下が好ましく、特に好ましくは10μm以上かつ40μm以下である。その理由は、厚みが5μmを下回ると、充分な導電性を確保することができず、一方、厚みが100μmを越えると、載置板11及び支持板12と静電吸着用内部電極13との間の熱膨張率差に起因して、載置板11及び支持板12と静電吸着用内部電極13との接合界面にクラックが入り易くなるとともに、静電吸着用内部電極13の側面方向の絶縁性が低下するからである。
このような厚みの静電吸着用内部電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0031】
「給電部材」
給電部材14は、支持板12との熱膨張差が大きいとクラック等が生じる虞があるので、支持板12との熱膨張差が小さい酸化アルミニウム系導電性複合焼結体、例えば、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al−Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化モリブデン(Al−MoC)導電性複合焼結体等が好適に用いられる。
【0032】
「給電用端子」
(導線)
この給電用端子21の主要部である導線22は、可塑性のある金属線を使用することが好ましく、直径2mm以下の金属線または金属撚り線を用いることがより好ましい。この金属線または金属撚り線には、必要に応じてポリイミド樹脂、シリコーン樹脂等の絶縁性有機樹脂により被覆がなされていることが好ましい。
この導線22に、直径2mm以下の金属線または金属撚り線を用いることで、ベース部3と支持板12との熱膨張差による応力を導線22の変形により吸収し、導線22と給電部材14の接続部の破損を防止することができる。
【0033】
この導線22の上端部22aは、給電部材14の凹部15に導電性接着剤(図示せず)にて接着・固定されている。
この導線22に直径2mm以下の金属線または金属撚り線を用いた場合、凹部15の直径は、金属線または金属撚り線の直径以上かつ4mm以下、深さは1mm以上とすることが好ましい。
【0034】
静電チャック装置1は、使用時に加熱と冷却とを繰り返す。そのため、凹部15における給電部材14と導線22との接合面には、熱応力が加わり導線22が剥離しやすい。
【0035】
そのため、導電性接着剤としては、弾性を有する樹脂材料と導電性フィラーとの混合物を採用することが好ましい。これにより、上記熱応力を緩和し、導電性接着剤と給電部材14、または導電性接着剤と導線22との線膨張係数の違いによる剥離を防止することが可能となる。
【0036】
樹脂材料としては、静電チャック装置1の使用時の加熱温度において劣化しない、または劣化しにくい程度の耐熱性を有する、硬化性の樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、熱硬化性であってもよく光硬化性であってもよい。
【0037】
このような樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、シリコーン樹脂などを例示することができる。中でも、耐熱性が高く、加熱時に変形しやすいことから、シリコーン樹脂が好ましい。
これらの材料は、1種のみ用いることとしてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
導電性フィラーの形成材料としては、静電チャック装置1の使用時の加熱温度において劣化しない、または劣化しにくい程度の耐熱性を有する導電性材料を用いることができる。
【0039】
このような導電性材料としては、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、鉄、アルミ、チタン及びその合金等の各種金属の他、カーボン等の導電性無機材料を挙げることができる。これらの材料は、1種のみ用いることとしてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、導電性フィラーの形状としては、球状、板状、棒状、繊維状(ファイバー状)など種々の形状を挙げることができる。これらの形状を有する導電性フィラーは、1種のみ用いることとしてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
さらに、導電性フィラーとしては、樹脂製粒子や無機化合物粒子の表面に、導電性材料として挙げた金属材料をめっきして導電性を持たせた複合材料を用いてもよい。樹脂製粒子の形成材料としては、静電チャック装置1の使用時の加熱温度において劣化しない、または劣化しにくい程度の耐熱性を有するものを用いる。
【0042】
導電性接着剤は、導電性接着剤このような導電性材料としては、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、鉄、アルミ、チタン及びその合金等の各種金属の他、カーボン等の導電性無機材料を挙げることができる。これらの材料は、1種のみ用いることとしてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
導電性接着剤は、使用目的を考慮して、導電性、柔軟性、耐熱性を損なわない範囲において、重合開始剤、弾性を調整するためのゴム状フィラー、接着剤の塗布時の粘度を調整する粘度調整剤などが含まれていてもよい。
【0044】
導電性接着剤は、樹脂材料と導電性フィラーとの合計に対して、導電性フィラーの割合が1体積%以上15体積%以下であることが好ましく、2体積%以上10体積%以下であることがより好ましい。
【0045】
この導線22の上端部22aを給電部材14の凹部15に接着・固定することで、接続部の接触面積が大きくなり、接合強度を向上させることができる。また、熱膨張差による応力がかかる方向と、接触面の面内方向とが垂直となるので、接続部の耐久性を向上させることができる。
この導線22と給電部材14との接続部の接合強度をさらに高めたい場合には、導線22と給電部材14の間にネジ部や端子板を設けることができる。
【0046】
(熱伝達部材)
熱伝達部材23は、導線22を囲むように設けられた円筒状の弾性を有する部材であり、シリコーン樹脂に熱伝導性を有するフィラーを添加したフィラー添加シリコーン樹脂が好ましい。
この熱伝導性を有するフィラーとしては、直径が1μm以上かつ50μm以下の、窒化アルミニウム等からなる熱伝導性微粒子が好ましい。
【0047】
この熱伝導性を有するフィラーの添加量は、熱伝達部材23の全体量に対して15質量%以上かつ25質量%以下の範囲とすることが好ましい。ここで、このフィラーの添加量が15質量%未満であると、熱伝導が十分に高くならず、フィラー添加の効果が得られない場合があるので好ましくなく、一方、このフィラーの添加量が25質量%を超えると、硬化前の粘度が高くなりすぎてしまい、施工し難くなるので好ましくない。
【0048】
この熱伝達部材23は、ベース部3の厚み方向の2分の1以上を埋めていることが好ましい。この熱伝達部材23の埋め込み深さがベース部3の厚み方向の2分の1未満であると、この熱伝達部材23による均熱化の効果が十分に得られない場合があるので好ましくない。
【0049】
この熱伝達部材23により導線22の周囲を埋めることで、ベース部3の温度と静電吸着用内部電極13の周囲の温度とを近い値にすることができ、よって、静電吸着用内部電極13上かつ載置板11の上面11aに載置された板状試料Wの温度を均一にすることができる。
また、熱伝達部材23自体の熱膨張係数をベース部3の熱膨張係数に近づけることができるので、熱伝達部材23由来の熱応力を低減することができる。
【0050】
(絶縁碍子)
絶縁碍子24は、給電用端子21の耐電圧に対する信頼性を高くするために用いられるもので、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)等の絶縁性セラミックスからなる。
この絶縁碍子24の外径は、5mm以上かつ10mm以下であることが好ましい。
絶縁碍子24の外径を5mm以上とすることで、給電用端子21の耐電圧を確保することができる。一方、外径を10mm以下とすることで、ベース部3と静電吸着用内部電極13の周囲との熱交換を十分に行うことができ、よって、静電吸着用内部電極13上かつ載置板11の上面11aに載置された板状試料Wの温度を均一にすることができる。
【0051】
「ベース部」
ベース部3は、静電チャック部2を冷却して所望の温度パターンに調整することにより、載置される板状試料Wを冷却して温度を調整するためのもので、厚みのある円板状のものであり、その躯体は外部の高周波電源(図示略)に接続されている。このベース部3の内部には、必要に応じて、冷却用あるいは温度調節用の水、絶縁性の冷媒を循環させる流路が形成されている。
【0052】
このベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、金属−セラミックス複合材料のいずれかであれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。このベース部3の側面は、アルマイト処理、もしくはアルミナ、イットリア等の絶縁性の溶射材料にて被覆されていることが好ましい。
【0053】
「絶縁性接着剤」
絶縁性接着剤4は、静電チャック部2とベース部3とを接着・固定するもので、アクリル、エポキシ、ポリエチレン等からなるシート状またはフィルム状の有機系接着剤が好ましく、例えば、熱圧着式の有機系接着剤シートまたはフィルムであることが好ましい。
ここで、熱圧着式の有機系接着剤シートまたはフィルムが好ましい理由は、この熱圧着式の有機系接着剤シートまたはフィルムを静電チャック部2とベース部3との間に挟み込んで熱圧着することにより、静電チャック部2とベース部3との間に気泡等が生じることなく、良好に接着・固定することができるからである。
【0054】
この絶縁性接着剤4の厚みは、特に限定されるものではないが、接着強度及び取り扱い易さ等を考慮すると、40μm以上かつ100μm以下が好ましく、より好ましくは55μm以上かつ100μm以下である。
なお、この絶縁性接着剤4の厚みが40μmを下回ると、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝導性は良好となるものの、絶縁性接着剤4が薄くなりすぎて所望の接着強度を得ることができなくなる虞があるので好ましくなく、一方、厚みが100μmを超えると、静電チャック部2とベース部3との間の熱伝導性を十分確保することができなくなり、冷却効率が低下するので、好ましくない。
【0055】
次に、この静電チャック装置1の製造方法について説明する。
まず、公知の方法により、静電チャック部2と、ベース部3とを作製する。
静電チャック部2の載置板11及び支持板12を、アルミナ基焼結体、例えば、実質的に1質量%以上かつ15質量%以下の炭化ケイ素(SiC)を含み、残部を酸化アルミニウム(Al)とする炭化ケイ素−酸化アルミニウム(SiC−Al)複合焼結体に機械加工を施すことにより形成する。
【0056】
次いで、載置板11の下面の静電吸着用内部電極13を形成する領域に、アルミナ−タンタルカーバイド複合導電性材料、アルミナ−タングステン複合導電性材料、アルミナ−炭化ケイ素複合導電性材料のうちいずれかの複合導電性材料を、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により膜状に形成し、静電吸着用内部電極13とする。
【0057】
また、酸化アルミニウム系導電性複合焼結体に機械加工を施し、給電部材14を作製する。
次いで、載置板11及び静電吸着用内部電極13と支持板12とを重ね合わせ、これらを熱圧着する。
次いで、支持板12の所定位置に機械加工を施し、給電部材14を嵌め込むための貫通孔12aを形成し、この貫通孔12aに絶縁性接着剤を介して給電部材14を嵌め込み、この絶縁性接着剤を硬化させて、給電部材14を貫通孔12aに接着・固定する。
次いで、この給電部材14に機械加工を施し、導線22を接着・固定するための凹部15を形成することにより、静電チャック部2とする。
【0058】
一方、金属、金属−セラミックス複合材料のいずれかの材料に機械加工を施し、必要に応じてアルマイト処理または絶縁膜の成膜を施し、次いで、例えばアセトンを用いて脱脂、洗浄することで、ベース部3を作製する。
次いで、ベース部3の所定位置に機械加工を施し、このベース部3内に、冷却用の絶縁性冷媒を循環させる流路を形成すると共に、その厚み方向に延在する貫通孔3aを形成する。
【0059】
次いで、静電チャック部2とベース部3とを、絶縁性接着剤4を介して接着・固定する。
次いで、給電部材14の凹部15に導電性接着剤を注入し、この導電性接着剤に導線22の上端部22aを挿入し、この導電性接着剤を硬化させる。
次いで、ベース部3の貫通孔3aの内壁に接着剤を塗布し、この貫通孔3aに絶縁碍子24を挿入し、接着剤を硬化させる。
【0060】
次いで、絶縁碍子24と導線22との間に、フィラー添加シリコーン樹脂を規定量注入し、このフィラー添加シリコーン樹脂を硬化させる。
最後に、絶縁碍子24に接続部品25を嵌め込み、この接続部品25を導線22の下端部22bと電気的に接続する。
以上により、この静電チャック装置1を製造することができる。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の静電チャック装置1によれば、直径2mm以下の金属線または金属撚り線からなる導線22を備えた給電用端子21をベース部3に埋設し、この導線22を給電部材14に電気的に接続したので、熱応力に対する耐久性を保持するとともに、給電部分の周囲における熱伝達を向上させることができる。よって、静電チャック部2に載置される板状試料Wの表面の温度を均一にすることができる。
【0062】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態のヒーターエレメント(加熱用部材)付き静電チャック装置31を示す断面図であり、本実施形態のヒーターエレメント付き静電チャック装置31が第1の実施形態の静電チャック装置1と異なる点は、第1の実施形態の静電チャック装置1では、静電チャック部2とベース部3とを絶縁性接着剤4により接合一体化したのに対し、本実施形態のヒーターエレメント付き静電チャック装置31では、静電チャック部2とベース部3との間にヒーターエレメント32を設け、このヒーターエレメント32を絶縁性接着剤33により静電チャック部2に接着・固定するとともに、絶縁性接着剤34によりベース部3に接着・固定した点であり、その他の点については第1の実施形態の静電チャック装置1と全く同様であるから、説明を省略する。
【0063】
ヒーターエレメント32としては、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の高融点金属が好適に用いられる。
また、絶縁性接着剤33、34としては、第1の実施形態にて既に説明したアクリル、エポキシ、ポリエチレン等からなる有機系接着剤が好適に用いられる。
【0064】
本実施形態のヒーターエレメント付き静電チャック装置31においても、第1の実施形態の静電チャック装置1と同様の作用、効果を奏することができる。
しかも、ヒーターエレメント32を絶縁性接着剤33により静電チャック部2に接着・固定するとともに、絶縁性接着剤34によりベース部3に接着・固定したので、このヒーターエレメント32によりベース部3が加熱された場合においても、熱応力に対する耐久性を保持することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0066】
[実施例1]
「静電チャック装置の作製」
まず、載置板及び支持板を、SiCを8質量%含有するAl−SiC複合焼結体により作製した。載置板は、直径320mm、厚み4mmの円板状であり、支持板も、直径320mm、厚み4mmの円板状であった。
次いで、載置板の下面の静電吸着用内部電極を形成する領域に、スクリーン印刷法を用いて金属炭化物を含む導電ペーストを塗布し、大気圧下、200℃にて10時間焼成し、厚みが30μmの静電吸着用内部電極を形成した。
【0067】
次いで、載置板及び静電吸着用内部電極と、支持板と、を重ね合わせ、これらを熱圧着した。
次いで、支持板の所定位置に機械加工を施し、給電部材を嵌め込むための直径4mm、深さ4mmの貫通孔を形成し、この貫通孔に、シリコーン樹脂系の絶縁性接着剤を介して給電部材を嵌め込み、この絶縁性接着剤を硬化させて、給電部材を貫通孔に接着・固定した。
次いで、この給電部材に機械加工を施し、導線を接着・固定するための直径1.8mm、深さ2.5mmの凹部を形成し、静電チャック部を作製した。
【0068】
一方、アルミニウムに機械加工を施した後、アルマイト処理を施し、さらに、アセトンを用いて脱脂、洗浄し、直径350mm、厚み25mmの円板状のベース部を作製した。
次いで、このベース部の所定位置に機械加工を施し、このベース部内に冷却用の絶縁性冷媒を循環させる流路を形成すると共に、このベース部を厚み方向に貫通する直径12mmの貫通孔を形成した。
【0069】
次いで、静電チャック部とベース部とを、シリコーン樹脂系の絶縁性接着剤を介して接着・固定した。
次いで、導線として直径1.5mmのチタン線を用い、給電部材の凹部に、銀粒子を含有するエポキシ樹脂系の導電性接着剤を注入し、この導電性接着剤にチタン線の上端部を挿入し、この導電性接着剤を硬化させた。
【0070】
次いで、ベース部の貫通孔の内壁にシリコーン樹脂系の絶縁性接着剤を塗布し、この貫通孔に絶縁碍子を挿入し、この絶縁性接着剤を硬化させて貫通孔内に絶縁碍子を接着・固定した。
次いで、絶縁碍子とチタン線との間に、窒化アルミニウム添加シリコーン樹脂を注入し、この窒化アルミニウム添加シリコーン樹脂を硬化させた。
最後に、絶縁碍子に接続部品を嵌め込み、この接続部品をチタン線の下端部と電気的に接続した。
このようにして、実施例1の静電チャック装置を作製した。
【0071】
「静電チャック装置の評価」
上記の静電チャック装置の熱サイクル試験を行った。
まず、静電チャック装置を真空チャンバ内に設置し、フロン系冷媒によりベース部を20℃に一定に保った。この状態で、静電チャック装置の載置面にシリコンウエハを載置した。次いで、給電用端子に2500Vの直流電圧を印加し、シリコンウエハを吸着させた状態で、シリコンウエハの加熱と冷却とを繰り返した。シリコンウエハの冷却は、20℃に保ったベース部によりシリコンウエハが20℃に達するまで行った。シリコンウエハの加熱は、外部に設けられたヒーターエレメントによりシリコンウエハが100℃に達するまで行った。
【0072】
上記条件により、シリコンウエハの温度を20℃から100℃に加熱し、100℃から20℃に冷却させることを1回の熱サイクルとして、当該熱サイクルを計100回繰り返した。
その結果、この静電チャック装置に破損は認められなかった。
また、上記熱サイクルを計1000回繰り返したところ、給電部材と給電用端子との間に破損が生じていた。
【0073】
また、ベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定した。
その結果、載置板の表面の面内温度分布は±1.5℃の範囲で均一であり、周囲の平均温度より低い平均温度のコールドスポットは生じなかった。
【0074】
[実施例2]
「ヒーターエレメント付き静電チャック装置の作製」
実施例1に準じて、実施例2の静電チャック部及びベース部を作製した。
次いで、静電チャック部の下面に、エポキシ樹脂系の絶縁性接着剤を用いてチタン(Ti)金属からなるヒーターエレメントを接着・固定し、このヒーターエレメント及び静電チャック部を、アクリル樹脂系の絶縁性接着剤を用いてベース部の上面に接着・固定した。
【0075】
次いで、実施例1に準じて、実施例2のヒーターエレメント付き静電チャック装置を作製した。ここでは、凹部に導線の上端部を固定し、絶縁碍子とチタン線との間に窒化アルミニウム添加シリコーン樹脂を注入して硬化させ、さらに、絶縁碍子に接続部品を嵌め込み、この接続部品をチタン線と電気的に接続した。
【0076】
「ヒーターエレメント付き静電チャック装置の評価」
上記のヒーターエレメント付き静電チャック装置の熱サイクル試験を行った。
まず、ヒーターエレメント付き静電チャック装置を真空チャンバ内に設置し、フロン系冷媒によりベース部3を20℃に一定に保った。この状態で、ヒーターエレメント付き静電チャック装置の載置面にシリコンウエハを載置した。次いで、給電用端子に2500Vの直流電圧を印加し、シリコンウエハを載置面に吸着させた状態で、ヒーターエレメントによりシリコンウエハを断続的に加熱することによりシリコンウエハの加熱と冷却とを繰り返した。
【0077】
上記条件により、シリコンウエハの表面温度が20℃から100℃になるまで加熱し、100℃から20℃になるまで冷却させることを1回の熱サイクルとして、当該熱サイクルを計1000回繰り返した。
その結果、このヒーターエレメント付き静電チャック装置に破損は認められなかった。
【0078】
また、ベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定した。
その結果、載置板の表面の面内温度分布は±1.7℃の範囲で均一であり、周囲の平均温度より低い平均温度のコールドスポットは生じなかった。
【0079】
[実施例3]
「静電チャック装置の作製」
市販のシリコーン樹脂と市販のカーボンファイバーとを混合し、樹脂製の導電性接着剤を調整した。混合比率は、シリコーン樹脂とカーボンファイバーとの合計体積に対してカーボンファイバーを5体積%とした。
給電部材の凹部に注入する導電性接着剤として、上述の樹脂製の導電性接着剤を用い、導線と給電部材とを接合させたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の静電チャック装置を作製した。
【0080】
「静電チャック装置の評価」
上記実施例3の静電チャック装置について、実施例1と同様に熱サイクル試験を行った。
その結果、100回の熱サイクル後、および1000回の熱サイクル後のいずれにおいても、実施例3の静電チャック装置に破損は認められなかった。
【0081】
また、実施例1と同様にベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定した。
その結果、載置板の表面の面内温度分布は±1.7℃の範囲で均一であり、周囲の平均温度より低い平均温度のコールドスポットは生じなかった。
【0082】
[比較例1]
「静電チャック装置の作製」
絶縁碍子と導線との間に、窒化アルミニウム添加シリコーン樹脂を注入し、この窒化アルミニウム添加シリコーン樹脂を硬化させる、という作業を行わなかった以外は、実施例1の静電チャック装置の製造方法に準じて、比較例1の静電チャック装置を作製した。
【0083】
「静電チャック装置の評価」
上記の静電チャック装置に対して、実施例1に準じて100回の熱サイクルを繰り返す熱サイクル試験を行ったところ、静電チャック装置に破損は認められなかった。
しかし、ベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定したところ、載置板の表面の面内温度分布は±3.0℃の範囲であり、実施例1の静電チャック装置と比べて不均一であった。また、周囲の平均温度より2〜3℃低いコールドスポットが生じていた。
【0084】
[比較例2]
「静電チャック装置の作製」
導線として直径1.5mmのチタン線の替わりに、直径3mmのチタン線を用いた以外は、実施例1の静電チャック装置の製造方法に準じて、比較例2の静電チャック装置を作製した。
【0085】
「静電チャック装置の評価」
上記の静電チャック装置に対して、実施例1に準じて100回の熱サイクルを繰り返す熱サイクル試験を行ったところ、給電部材と給電用端子との間に破損が生じていた。
また、ベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定したところ、載置板の表面の面内温度分布は±1.5℃の範囲で均一であり、周囲の平均温度より低い平均温度のコールドスポットは生じなかった。
【0086】
[比較例3]
「静電チャック装置の作製」
導線として直径1.5mmのチタン線の替わりに、直径3mmのチタン線を用いた以外は、実施例2のヒーターエレメント付き静電チャック装置の製造方法に準じて、比較例3のヒーターエレメント付き静電チャック装置を作製した。
【0087】
「ヒーターエレメント付き静電チャック装置の評価」
上記のヒーターエレメント付き静電チャック装置に対して、実施例2に準じて熱サイクル試験を行ったところ、給電部材と給電用端子との間に破損が生じていた。
また、ベース部の流路に130℃の液状の冷媒を循環させ、載置板の表面をサーモグラフィを用いて測定したところ、載置板の表面の面内温度分布は±4.0℃の範囲であり、実施例2のヒーターエレメント付き静電チャック装置と比べて不均一であった。また、周囲の平均温度より2〜3℃低いコールドスポットが生じていた。
【符号の説明】
【0088】
1 静電チャック装置
2 静電チャック部
3 ベース部
4 絶縁性接着剤
11 載置板
11a 上面
12 支持板
13 静電吸着用内部電極
14 給電部材
15 凹部
21 給電用端子
22 導線
22a 上端部(一端部)
23 熱伝達部材
24 絶縁碍子
31 ヒーターエレメント付き静電チャック装置
32 ヒーターエレメント
W 板状試料
図1
図2