(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-89857(P2015-89857A)
(43)【公開日】2015年5月11日
(54)【発明の名称】流動式仮焼炉及び流動式仮焼炉の残渣排出方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/44 20060101AFI20150414BHJP
F27B 15/09 20060101ALI20150414BHJP
【FI】
C04B7/44 101
F27B15/09
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-229434(P2013-229434)
(22)【出願日】2013年11月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100098132
【弁理士】
【氏名又は名称】守山 辰雄
(72)【発明者】
【氏名】池澤 和則
(72)【発明者】
【氏名】柘植 康裕
(72)【発明者】
【氏名】神辺 隆行
(72)【発明者】
【氏名】宇崎 能章
【テーマコード(参考)】
4G112
4K046
【Fターム(参考)】
4G112KB08
4K046HA07
4K046JC04
4K046JE01
4K046JE08
4K046KA01
4K046KA03
(57)【要約】
【課題】 仮焼炉を安定して運転することができ、仮焼炉、延いてはセメント製造工程の稼働率を向上させて、コスト低減を実現することができる流動式仮焼炉及びその残渣排出方法を提供する。
【解決手段】 炉1内に燃料及び空気を供給してセメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉において、炉内の残渣Zを外部に排出する排出口7を、当該炉内の下部に開口させて設けた。これにより、流動式仮焼炉の運転中に移動する残渣を排出口7から炉外に排出することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に燃料及び空気を供給してセメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉において、
炉内の残渣を外部に排出する排出口を、当該炉内の下部に開口させて設けたことを特徴とする流動式仮焼炉。
【請求項2】
請求項1に記載の流動式仮焼炉において、
前記排出口に接続された略鉛直方向に延在する排出管と、当該排出管の下端に連通して略水平方向に延在するシール管と、を有し、当該排出口から入った残渣が当該シール管内に滞留することによって、当該排出管を閉塞するマテリアルシール構造を設けたことを特徴とする流動式仮焼炉。
【請求項3】
請求項2に記載の流動式仮焼炉において、
前記マテリアルシール構造は、前記シール管内に滞留した残渣をシール管外へ押し出す押し出し手段を有することを特徴とする流動式仮焼炉。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の流動式仮焼炉において、
炉内の底部に、複数の孔が開口して形成された多孔板を設け、
当該複数の孔の内の一部の孔または当該複数の孔の間に新たに設けた孔を前記排出口とし、他の孔を炉内に空気を吹き込むための供給孔としたことを特徴とする流動式仮焼炉。
【請求項5】
炉内に燃料及び空気を供給することにより当該炉内の下部に流動層を形成して、セメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉の残渣排出方法において、
流動式仮焼炉の運転中に前記流動層を移動する残渣を、炉内の下部に開口させて設けた排出口から外部に排出することを特徴とする流動式仮焼炉の残渣排出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の流動式仮焼炉の残渣排出方法において、
前記排出口に接続された略鉛直方向に延在する排出管と、当該排出管の下端に連通して略水平方向に延在するシール管と、を有し、当該排出口から入った残渣が当該シール管内に滞留することによって、当該排出管を閉塞するマテリアルシール構造を設け、
流動式仮焼炉の運転中に、前記排出口から入った残渣が前記排出管を閉塞することにより、前記排出口を通した炉内から外部への気体の流出が抑止されることを特徴とする流動式仮焼炉の残渣排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造工程に用いられる流動式仮焼炉に関し、特に、燃料屑等の残渣を炉内から排出する構造を有する流動式仮焼炉及び流動式仮焼炉から残渣を排出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント製造工程の一例として、粉体状のセメント原料をプレヒーターで予熱し、予熱されたセメント原料を流動式仮焼炉において燃料及び空気等のガスを供給して仮焼成し、仮焼成されたセメント原料をロータリーキルンで焼成してセメントクリンカを生成する方法が知られている。
【0003】
特開平06−287036号公報(特許文献1)には、造粒炉から流動焼成炉に造粒物を投入するセメントクリンカの焼成装置において、造粒物を、造粒炉の底部近傍の側壁に設けられたボトムフロー排出孔より取り出し、該排出孔に接続した排出シュートを介して、焼成炉に投入するいわゆるボトムフロー排出構造を備えることが記載されている。
【0004】
特開平06−287043号公報(特許文献2)には、流動層造粒炉の分散板の下方に流動層焼成炉を設け、前者の流動層に面した落下口を通して造粒物を後者へ投入することによりセメントクリンカを焼成する装置において、分散板のノズルを通って造粒炉内に流入する流動化ガスの流速とは別の流速で上記落下口から造粒炉内にガスを吹き出すことのできる通風手段を設けることが記載されている。
【0005】
特開平08−81245号公報(特許文献3)には、予熱されたセメント原料粉を流動層造粒・焼成炉で造粒・焼成した後、造粒・焼成されたクリンカを冷却器に導入するセメントクリンカの焼成方法において、流動層造粒・焼成炉のガス分散板又はガス分散板の延長上に設けられた落下口からクリンカを排出するとともに、流動層の差圧が一定になるようにこの落下口の開口面積をゲートで調整し、この落下口に連なる排出シュートにクリンカを分級・冷却するための空気を吹き込むとともに、落下口から吹き出す空気流速が前記ガス分散板のノズルを通って流入する空気流速と異なるように吹込空気量を調節し、分級・冷却空気吹込位置より下方の気密排出手段を経てクリンカを冷却器16に導入することが記載されている。
【0006】
特開平10−259043号公報(特許文献4)には、流動層造粒・焼成炉のガス分散板上面の延長上にクリンカ落下口を設け、ガス分散板からクリンカ落下口に至る排出溝部の上側の空間を、クリンカ落下口からガス分散板上側の流動層に向かって断面を徐々に拡大して1次分級部を形成し、小粒子をガス分散板上側の流動層に吹き戻すための2次分級部を形成し、流動層冷却器の下部近傍に冷却用兼流動化空気吹込管を接続し、造粒・焼成されたクリンカを急冷するとともに、小粒子を分級し流動層造粒・焼成炉に戻すための3次分級部を形成し、この3次分級部に気密排出手段を介して冷却器26を接続することが記載されている。
【0007】
実用新案登録第2605187号公報(特許文献5)には、セメントの製造、製鉄、石炭ボイラーなどの各種プラントにおいて粉粒体を気密に排出するための装置として、上方から供給される粉粒体を所定の高さに充填してなるマテリアルシールするための供給シュートと、供給シュートの出口に接続され、供給された粉粒体を底面上に堆積させ、供給シュートの出口を封止した状態で粉粒体を保持する貯槽と、貯槽の下方に接続され、貯槽の底面への開口部が供給シュート出口の封止を保持している粉粒体から粉粒体の移動方向に間隔をあけた位置に設けられる排出シュートと、貯槽の底面上に保持された粉粒体をくずして、粉粒体に排出シュート開口部へ移動させる連続的な横移動力を与える移動機構とを含み、貯槽内で、排出シュートの開口部の上方に設けられ、該開口部を封止可能なプラグを備えたことを特徴とする気密排出装置が記載されている。
【0008】
特開2010−194457号公報(特許文献6)、特開2010−194860号公報(特許文献7)、特開2010−214677号公報(特許文献8)には、建設廃材系プラスチック廃棄物や、廃自動車シュレッダーダストの様な、多様な異物や不純物が混入している廃プラスチックを含有する混合廃棄物についても、セメント焼成設備の仮焼炉又はロータリーキルンのバーナー吹込み用燃料としてリサイクルできるようにするための処理方法及び処理装置が記載されている。
【0009】
特開2010−120778号公報(特許文献9)には、過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置と、過熱蒸気発生装置から供給される過熱蒸気を用いて廃棄物を乾燥させる乾燥装置と、乾燥処理品を対象として、可燃物と不燃物との選別処理、及びセメント焼成設備への供給場所に応じた選別処理を行う選別装置とを備え、廃棄物を処理してセメント原燃料化するセメント製造用原燃料製造設備が記載されている。
【0010】
特開2012−153889号公報(特許文献10)、国際公開2010−0016513号公報(特許文献11)には、プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を主成分とする可燃性廃棄物を1次破砕機により粗砕する工程と、可燃性廃棄物に含まれる異物を除去する工程と、異物を除去した粗砕物を2次破砕機により破砕する工程と、破砕物をバーナーに吹き込む工程とを含む、可燃性廃棄物の燃料化方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平06−287036号公報
【特許文献2】特開平06−287043号公報
【特許文献3】特開平08−81245号公報
【特許文献4】特開平10−259043号公報
【特許文献5】実用新案登録第2605187号公報
【特許文献6】特開2010−194457号公報
【特許文献7】特開2010−194860号公報
【特許文献8】特開2010−214677号公報
【特許文献9】特開2010−120778号公報
【特許文献10】特開2012−153889号公報
【特許文献11】国際公開2010−0016513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
流動式仮焼炉では、粉体状のセメント原料と燃料及び空気等のガスを供給し、炉内の下部に流動層を形成してセメント原料を仮焼成する。
このため、何らかの原因で比較的大きな塊の残渣が炉内に存在すると、炉内の流動を阻害して、正常な仮焼成に支障をきたすという課題がある。
【0013】
このような残渣が生じてしまう原因は種々考えられるが、本発明者らの研究により、廃材やプラスチックなどを燃料として用いる場合、それらに含まれている釘等の不燃性異物が炉内に残渣として滞留してしまうことが判った。
また、本発明者らの研究により、炉の耐火物やコーチング、セメント原料の大塊なども炉内に残渣として滞留してしまうことが判った。
すなわち、セメント原料の仮焼成を、廃材やプラスチックなどの燃料を用いて行う場合だけでなく、石炭などの通常の燃料を用いて行う場合にあっても、炉内に残渣が滞留してしまう。
【0014】
このような残渣が滞留してしまった場合、安定した仮燃焼処理を維持するために、仮焼炉の運転を停止して、残渣を取り除く作業を行なわなければならない。このため、仮焼炉、延いてはセメント製造工程の稼働率が低下して、コスト増大を招いてしまうという課題がある。
【0015】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、仮焼炉の運転中に、炉内の残渣を炉外に排出することができる流動式仮焼炉及び流動式仮焼炉の残渣排出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る流動式仮焼炉は、炉内に燃料及び空気を供給してセメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉において、炉内の残渣を外部に排出する排出口を、当該炉内の下部に開口させて設けたことを特徴とする。
炉内の底面や底側部といった下部に排出口を開口させたことにより、残渣が炉の下部に滞留する比較的大きな残渣の塊や比較的重い残渣を含むものであっても、炉の運転による流動に伴って移動して、炉の運転中においても開口している排出口から炉外に排出される。
【0017】
本発明に係る流動式仮焼炉は、前記排出口に接続された略鉛直方向に延在する排出管と、当該排出管の下端に連通して略水平方向に延在するシール管と、を有し、当該排出口から入った残渣が当該シール管内に滞留することによって、当該排出管を閉塞するマテリアルシール構造を設けるのが好ましい。
したがって、流動式仮焼炉の運転中に、前記排出口から入った残渣が前記排出管を閉塞することにより、前記排出口を通した炉内から外部への気体の流出が抑止される。
マテリアルシール構造は、機械式のシール構造ではないので、高温(例えば、800℃)となる仮焼炉に付設しても、特段の断熱構造を要することなく、排出管を閉塞する機能を支障なく行なうことができる。
【0018】
また、本発明に係る流動式仮焼炉では、前記マテリアルシール構造は、前記シール管内に滞留した残渣をシール管外へ押し出す押し出し手段を有するのが好ましい。
シール管内に滞留した残渣を適宜シール管外へ押し出すことにより、排出管内に入った残渣をシール管を介して炉外に排出することができる。なお、押し出し手段としては、機械式のものであってもよいが、高熱下においても安定した動作が得られるように、圧縮エアーで残渣を押し出す方式のものが好ましい。
【0019】
また、本発明に係る流動式仮焼炉は、炉内の底部に、複数の孔が開口して形成された多孔板を設け、当該複数の孔の内の一部の孔または当該複数の孔の間に新たに設けた孔を前記排出口とし、他の孔を炉内に空気を吹き込むための供給孔とするのが好ましい。
これにより、多孔板を通し吹き込む空気により炉内に効率的に流動層を形成することができるとともに、炉の底部に残渣を排出する排出口を設けることができる。
【0020】
本発明に係る流動式仮焼炉の残渣排出方法は、炉内に燃料及び空気を供給することにより当該炉内の下部に流動層を形成して、セメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉の残渣排出方法において、流動式仮焼炉の運転中に前記流動層を移動する残渣を、炉内の下部に開口させて設けた排出口から外部に排出することを特徴とする。
残渣が炉の下部に滞留する比較的大きな残渣の塊や比較的重い残渣を含むものであっても、仮焼炉の運転中に流動に伴って移動して、炉内の底面や底側部といった下部に開口している排出口から炉外に排出される。
【0021】
また、本発明に係る流動式仮焼炉の残渣排出方法は、前記排出口に接続された略鉛直方向に延在する排出管と、当該排出管の下端に連通して略水平方向に延在するシール管と、を有し、当該排出口から入った残渣が当該シール管内に滞留することによって、当該排出管を閉塞するマテリアルシール構造を設け、流動式仮焼炉の運転中に、前記排出口から入った残渣が前記排出管を閉塞することにより、前記排出口を通した炉内から外部への気体の流出が抑止するのが好ましい。
したがって、前記排出口から入った残渣が前記排出管を閉塞することにより、流動式仮焼炉の運転中に、前記排出口を通した外部への気体の流出が抑止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る流動式仮焼炉及び流動式仮焼炉の残渣排出方法よると、流動式仮焼炉の運転中に、炉内の下部に開口させた排出口から、炉内の残渣を炉外に排出することができる。これにより、仮焼炉を安定して運転することができ、仮焼炉、延いてはセメント製造工程の稼働率を向上させて、コスト低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流動式仮焼炉の全体構成を縦断面で示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る流動式仮焼炉の多孔板部分を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る流動式仮焼炉の多孔板部分を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るマテリアルシール構造を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る排出口の好ましい位置を説明する図である。
【
図6】本発明の他の一実施形態に係る流動式仮焼炉の多孔板部分を示す平面図である。
【
図7】本発明の他の一実施形態に係る流動式仮焼炉の多孔板部分を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には本発明の一実施形態に係る流動式仮焼炉を示してあり、
図2にはその要部の平面図、
図3にはその要部の縦断面を示してある。
この流動式仮焼炉は、円筒状の炉体1を備えており、炉内の底部に複数の供給孔2が貫通して設けられた多孔板3を備えている。
なお、本実施形態では、
図3に示すように、流動化を促進するため各供給孔2にはノズルプラグ4が設けられているが、
図1及び
図2においては、構造を明示するためにノズルプラグ4の図示を省略している。
【0025】
炉体1の下部には一対の流入部5が設けられており、
図1中に矢印Aで示すように、これら流入部5から、図外のAQCからの高温空気が炉内に吹き込み供給される。なお、粉体状のセメント原料及び燃料は、これら空気とは別のルート(図示省略)から炉内に供給される。
また、多孔板3の下部には図外の空気供給管が接続されており、
図1中に矢印Bで示すように、多孔板3の供給孔2を通して炉内に上方に向けて空気が吹き込み供給される。
【0026】
これらセメント原料、燃料、高温空気及び空気の吹き込みにより、炉内の下部には流動層6が形成されてセメント原料が仮焼成され、
図1中に矢印Cで示すように、仮焼成されたセメント原料が炉体1の上部開口から吹き上げ排出されて、図外のロータリーキルンへ供給される。
【0027】
ここで、上記燃料としては、種々なものを用いることができ、仮焼工程に通常用いられる燃料の他、例えば、石炭粉、廃材やプラスチック廃棄物などを用いることができる。なお、木屑やプラスチック廃棄物から、例えば慣性を利用して重量の大きい釘や金属片を予め除去しておくのが好ましい。
また、流入部5から吹き込む空気は、炉内の流動化や燃焼に必要な空気を供給するものでもあるが、AQCの排気等のように加熱されたものが好ましい。供給孔2から吹き込む空気についても同様である。
【0028】
図2及び
図3に詳示するように、多孔板3には炉内の残渣を排出するための排出口7が貫通して形成されており、多孔板3の下には排出口7に接続された略鉛直方向に延在する排出管8が設けられ、更に、排出管8の下端に連通して略水平方向に延在するシール管9と、シール管9の先端に連通して略鉛直方向に延在する第2の排出管10が設けられている。
なお、排出口7は設計に応じて1つ以上の任意の数が多孔板3に設けられ、各排出口に対して排出管8及びシール管9がそれぞれ設けられる。
【0029】
排出口7は炉内の底面に開口しており、炉内で流動或いは移動する残渣が排出口7内に落ち込む。
このように排出口7が炉内に開口していても、
図4に示すように、排出口7から入った残渣が排出管8を落下してシール管9内に滞留することによって、排出管8を閉塞するマテリアルシール構造が構成されており、これによって、流動式仮焼炉の運転中において、炉内の気体の流出を抑制して流動性を阻害することがない。
【0030】
本実施形態では、排出口7は、供給孔2の内の2つを残渣を排出するに必要な径に加工することで形成しているが、供給孔2が残渣を排出するに必要な径である場合には、このような加工をすることなく供給孔2の内から必要なものを選択して排出口7とすることができる。また、排出口7は、既存の供給孔2の一部を利用する方法の他、多孔板3を孔空け加工して既存の供給孔2の間に新たに形成してもよい。
【0031】
木屑やプラスチック廃棄物を燃料として用いた上記形式の流動式仮焼炉について、発明者らが炉内に滞留した残渣の大きさを調べたところ、炉内の付着物や耐火物の剥離物が最大外径で100mm、金属屑が最長で100mm、砂利や原料塊が最大外径で30mmであった。
この結果によると、排出口7は100mm以上の径であるのが好ましい。
【0032】
図4に示すように、マテリアルシール構造は、シール管9内に滞留した残渣Zを押し出して第2の排出管10へ落とし込んで排除する押し出し手段が設けられている。
本実施形態の押し出し手段は、シール管9の基端に接続された圧送管11と、電磁弁12及び減圧弁13を介して圧送管11に接続される圧縮エアー源14と、電磁弁12を開閉操作する操作盤15とを有している。
【0033】
排出管8から落下してきた残渣は、シール管9内でその先端部が或る安息角θを成して滞留するが、排出管8及びシール管9の中に或る程度の量の残渣Zが滞留したところで、押し出し手段によりシール管9内に滞留した残渣Zを押し出して第2の排出管10へ落とし込む。
すなわち、操作盤15を操作して常時閉じている電磁弁12を開き、圧縮エアー供給源14からの圧縮エアーを圧送管11によりシール管9内に吹き込んで、シール管9内に滞留した残渣Zを押し出して、残渣が排出管8に落ち込むスペースを確保する。
【0034】
ここで、押し出し手段による残渣の押し出し動作は、必要に応じて、任意のタイミングで任意の時間行なうことができるが、例えば、次の要領で行なうのが好ましい。
電磁弁12は開タイマーと閉タイマー(休止タイマー)とで作動させ、開タイマーは0.1秒乃至2.0秒程度、閉タイマーは30分乃至120分程度の作動時間とする。
【0035】
また、残渣の押し出し動作を行なうタイミングや時間は、燃料の種類等に応じた残渣の発生量に応じる他、残渣Zが滞留する排出管8及びシール管9の長さや内径にも応じるものであるが、本実施形態では、排出管8及びシール管9の内径を250mm、排出管8の長さを1000mm、シール管9の第2の排出管10までの長さを700mmとしている。
このように排出管8をシール管9より長くすることにより、圧損の少ないシール管9から残渣を容易に押し出すことができる。
【0036】
上記のように押し出し手段による残渣の押し出し動作を適宜行なう場合にあっても、排出管8及びシール管9の径が小さい場合には、排出管8或いはシール管9内の入った残渣Zにより配管詰まりが発生してしまう事態が生ずる。
本実施形態の排出管8及びシール管9の内径(250mm)は、上記のように排出口7を好ましい径(100mm)とした場合の2.5倍であり、発明者らの検証によって、排出管8及びシール管9の内径を2.5倍以上とすることで、配管詰まりを生じないことが確認された。
【0037】
炉内の残渣を取り込む排出口7は、流動層内の残渣は常に移動するので、炉内の下部の任意の位置に設けることができ、また、排出口7の個数は残渣の取り込み効率を上げるために複数であるのが好ましい。
排出口7を複数設ける場合には、
図5に示すように、多孔板3の中心から排出口7の中心までの長さを、多孔板3の中心から炉の内壁までの長さをRとして、r/R=0.2乃至1.0の範囲で、排出口7を対称に配置するのが好ましく、このように配置することにより、比較的大きな残渣(例えば、100mm径の排出口であれば最大径100mmの残渣)であっても排出口7に効率的に取り込むことができる。
【0038】
本発明では、炉内の残渣は移動することから、炉の底面(上記の実施形態では、炉の底面を成す多孔板3)に限らず、排出口7を炉の下部の任意の位置に設けることができる。
例えば、
図6及び
図7に示すように、流動層で移動する残渣は炉壁側に吹き寄せられる傾向があるともいえるので、炉体1の底側部を成す炉壁に排出口7を貫通して設け、この排出口7に略鉛直方向に延在する排出管8を接続し、排出管8の下端にシール管9を連通させてマテリアルシール構造を形成してもよい。
【0039】
上記のように、流動式仮焼炉の運転中において、炉内に生じた残渣は排出口7に取り込まれるため、仮焼炉の運転を停止させて残渣除去作業を行なわずとも、残渣によって流動層の生成が阻害されてしまう事態を防止することができる。
特に、炉の底面に多孔板3を設けた流動式仮焼炉においては、供給孔2が残渣によって塞がれてしまう事態を防止して、安定した流動層によりセメント原料を仮焼成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の概念に含まれる種々な変更を施して実施することができる。
本発明は、その形式にかかわらず、炉内に燃料及び空気を供給してセメント原料を仮焼成する流動式仮焼炉に広く適用することができるが、特に、金属屑等の残渣が生じやすい廃棄物を燃料として用いる流動式仮焼炉に適用して好適である。
【符号の説明】
【0041】
1・・・炉体、
2・・・供給孔、
3・・・多孔板、
6・・・流動層、
7・・・排出口、
8・・・排出管8、
9・・・シール管9、
11・・・圧送管、
12・・・電磁弁、
13・・・減圧弁、
14・・・圧縮エアー源、
15・・・操作盤、
Z・・・残渣