【課題】処理容器内に供給される2種類の高周波のいずれか一方のパワーにパルスで変調をかける場合に、変調をかけない連続波の高周波を出力する高周波電源側においてロードパワーを設定値に安定に維持できるようにする。
被処理体を出し入れ可能に収容する真空排気可能な処理容器内で処理ガスの高周波放電によるプラズマを生成し、前記プラズマの下で前記処理容器内の前記被処理体に所望の処理を施すプラズマ処理装置であって、
第1の高周波を出力する第1の高周波電源と、
前記第1の高周波電源より出力される前記第1の高周波を前記処理容器の中または周囲に配置される第1の電極まで伝送するための第1の高周波給電ラインと、
第2の高周波を出力する第2の高周波電源と、
前記第2の高周波電源より出力される前記第2の高周波を前記第1の電極または前記処理容器の中または周囲に配置される第2の電極まで伝送するための第2の高周波給電ラインと、
前記第2の高周波のパワーがオン状態または第1のレベルになる第1の期間とオフ状態または前記第1のレベルよりも低い第2のレベルになる第2の期間とを一定の周波数で交互に繰り返すように、前記第2の高周波電源の出力をパルスで変調する高周波パワー変調部と
を具備し、
前記第1の高周波電源が、
前記第1の高周波給電ライン上で、前記第1の高周波電源から前記第1の電極に向かって順方向に伝搬する進行波のパワーおよび前記第1の電極から前記第1の高周波電源に向かって逆方向に伝搬する反射波のパワーを検知し、前記進行波のパワーおよび前記反射波のパワーをそれぞれ表わす進行波パワー検知信号および反射波パワー検知信号を生成するRFパワーモニタと、
前記RFパワーモニタより得られる前記進行波パワー検知信号と前記反射波パワー検知信号とから、前記プラズマを含む負荷に供給されるロードパワーの測定値を求めるロードパワー測定部と、
前記ロードパワー測定部より得られる前記ロードパワーの測定値を所定のロードパワー設定値に一致または近似させるために、前記進行波のパワーに対して前記パルスの各サイクルにおける前記第1の期間と前記第2の期間とで個別にフィードバック制御をかける高周波出力制御部と
を有する、プラズマ処理装置。
前記第1の制御指令値生成部は、前記パルスの各サイクル内で前記第1の期間内に設定される第1のモニタ時間中に、前記ロードパワー測定部より得られる前記ロードパワー測定値を取り込んで、前記ロードパワー測定値と前記ロードパワー設定値との偏差に基づいて前記第1の制御指令値を生成する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
前記第2の制御指令値生成部は、前記パルスの各サイクル内で前記第2の期間内に設定される第2のモニタ時間中に、前記ロードパワー測定部より得られる前記ロードパワー測定値を取り込んで、前記ロードパワー測定値と前記ロードパワー設定値との偏差に基づいて前記第2の制御指令値を生成する、請求項2〜4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
前記第1の高周波電源が、前記第1の高周波の基本波を発生する高周波発振器と、前記高周波発振器より出力される前記基本波のパワーを可変制御可能な利得または増幅率で増幅するパワーアンプとを有し、
前記高周波出力制御部が、前記第1の高周波電源の出力を制御するために、前記パワーアンプの利得または増幅率を制御する、
請求項2〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。
[プラズマ処理装置の構成]
【0022】
図1に、本発明の一実施形態におけるプラズマ処理装置の構成を示す。このプラズマ処理装置は、下部2高周波重畳印加方式の容量結合型(平行平板型)プラズマエッチング装置として構成されており、たとえば表面がアルマイト処理(陽極酸化処理)されたアルミニウムからなる円筒形の真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は接地されている。
【0023】
チャンバ10の底部には、セラミックなどの絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上にたとえばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、この上に被処理体としてたとえば半導体ウエハWが載置される。
【0024】
サセプタ16の上面には半導体ウエハWを保持するための静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートの間に挟み込んだものであり、電極20にはスイッチ22を介して直流電源24が電気的に接続されている。直流電源24からの直流電圧により、半導体ウエハWを静電吸着力で静電チャック18に保持できるようになっている。静電チャック18の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるためのたとえばシリコンからなるフォーカスリング26が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面にはたとえば石英からなる円筒状の内壁部材28が貼り付けられている。
【0025】
サセプタ支持台14の内部には、たとえば円周方向に延びる冷媒室30が設けられている。この冷媒室30には、外付けのチラーユニット(図示せず)より配管32a,32bを介して所定温度の冷媒たとえば冷却水(cw)が循環供給される。冷媒の温度によってサセプタ16上の半導体ウエハWの処理温度を制御できるようになっている。さらに、伝熱ガス供給機構(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給ライン34を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0026】
サセプタ16には、高周波電源36,38がそれぞれ整合器40,42および共通の給電導体(たとえば給電棒)44を介して電気的に接続されている。一方の高周波電源36は、プラズマの生成に適した一定の周波数f
HF(たとえば40MHz)の高周波HFを出力する。他方の高周波電源38は、プラズマからサセプタ16上の半導体ウエハWへのイオンの引き込みに適した一定の周波数f
LF(たとえば12.88MHz)の高周波LFを出力する。
【0027】
このように、整合器40および給電棒44は、高周波電源36よりプラズマ生成用の高周波HFをサセプタ16まで伝送する高周波給電ライン(高周波伝送路)43の一部を構成する。一方、整合器42および給電棒44は、高周波電源38よりイオン引き込み用の高周波LFをサセプタ16まで伝送する高周波給電ライン(高周波伝送路)45の一部を構成している。
【0028】
チャンバ10の天井には、サセプタ16と平行に向かいあって接地電位の上部電極46が設けられている。この上部電極46は、多数のガス噴出孔48aを有するたとえばSi、SiCなどのシリコン含有材質からなる電極板48と、この電極板48を着脱可能に支持する導電材料たとえば表面がアルマイト処理されたアルミニウムからなる電極支持体50とで構成されている。この上部電極46とサセプタ16との間にプラズマ生成空間または処理空間PAが形成されている。
【0029】
電極支持体50は、その内部にガスバッファ室52を有するとともに、その下面にガスバッファ室52から電極板48のガス噴出孔48aに連通する多数のガス通気孔50aを有している。ガスバッファ室52にはガス供給管54を介して処理ガス供給源56が接続されている。処理ガス供給源56には、マスフローコントローラ(MFC)58および開閉バルブ60が設けられている。処理ガス供給源56より所定の処理ガス(エッチングガス)がガスバッファ室52に導入されると、電極板48のガス噴出孔48aよりサセプタ16上の半導体ウエハWに向けて処理空間PAに処理ガスがシャワー状に噴出されるようになっている。このように、上部電極46は、処理空間PAに処理ガスを供給するためのシャワーヘッドを兼ねている。
【0030】
また、電極支持体50の内部には冷媒たとえば冷却水を流す通路(図示せず)も設けられており、外部のチラーユニットにより冷媒を介して上部電極46の全体、特に電極板48を所定温度に温調するようになっている。さらに、上部電極46に対する温度制御をより安定化させるために、電極支持体50の内部または上面にたとえば抵抗発熱素子からなるヒータ(図示せず)を取り付ける構成も可能である。
【0031】
サセプタ16およびサセプタ支持台14とチャンバ10の側壁との間に形成される環状の空間は排気空間となっており、この排気空間の底にはチャンバ10の排気口62が設けられている。この排気口62に排気管64を介して排気装置66が接続されている。排気装置66は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10の室内、特に処理空間PAを所望の真空度まで減圧できるようになっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口68を開閉するゲートバルブ70が取り付けられている。
【0032】
主制御部72は、1つまたは複数のマイクロコンピュータを含み、外部メモリまたは内部メモリに格納されるソフトウェア(プログラム)およびレシピ情報にしたがって、装置内の各部、特に高周波電源36,38、整合器40,42、MFC58、開閉バルブ60、排気装置66等の個々の動作および装置全体の動作(シーケンス)を制御する。
【0033】
また、主制御部72は、キーボード等の入力装置や液晶ディスプレイ等の表示装置を含むマン・マシン・インタフェース用の操作パネル(図示せず)および各種プログラムやレシピ、設定値等の各種データを格納または蓄積する外部記憶装置(図示せず)等とも接続されている。この実施形態では、主制御部72が1つの制御ユニットとして示されているが、複数の制御ユニットが主制御部72の機能を並列的または階層的に分担する形態を採ってもよい。
【0034】
この容量結合型プラズマエッチング装置における枚葉ドライエッチングの基本動作は次のようにして行われる。先ず、ゲートバルブ70を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック18の上に載置する。そして、処理ガス供給源56より処理ガスつまりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量および流量比でチャンバ10内に導入し、排気装置66による真空排気でチャンバ10内の圧力を設定値にする。さらに、高周波電源36,38よりそれぞれ所定のパワーでプラズマ生成用の高周波HF(40MHz)およびイオン引き込み用の高周波LF(12.88MHz)を重畳してサセプタ16に印加する。また、直流電源24より直流電圧を静電チャック18の電極20に印加して、半導体ウエハWを静電チャック18上に固定する。上部電極46のシャワーヘッドより吐出されたエッチングガスは両電極46,16間の高周波電界の下で放電し、処理空間PA内にプラズマが生成される。このプラズマに含まれるラジカルやイオンによって半導体ウエハWの主面の被加工膜がエッチングされる。
【0035】
このプラズマエッチング装置においては、たとえば上述したようなチャージングダメージ対策として、高周波電源36より出力されるプラズマ生成用の高周波HFのパワーを、たとえば1kHz〜100kHzの範囲内で選ばれる一定の周波数f
Sおよび可変のデューティ比D
Sを有するパルスMSで変調する第1のパワー変調方式を所与のエッチングプロセスに用いることができる。
【0036】
この場合、主制御部72は、プラズマ生成系の高周波電源36に対しては、RF出力モードとしてパワー変調を指示する制御信号を与えるとともに、変調の周波数f
Sおよびデューティ比D
Sを表わす変調パルスMSを与える。高周波電源36は、
図2Aに示すように、変調パルスMSに同期して高周波HFのパワーをオン・オフする。ここで、変調パルスMSの周期、オン期間(第1の期間)、オフ期間(第2の期間)をそれぞれT
C,T
on,T
offとすると、T
C=1/f
S,T
C=T
on+T
off,D
S=T
on/(T
on+T
off)の関係式が成立する。
【0037】
一方で、第1のパワー変調方式を用いる場合、主制御部72は、イオン引き込み系の高周波電源38に対しては、RF出力モードとして連続波(CW)を指示する制御信号を与えるとともに、変調パルスMSと同一のパルスまたはそれに同期したタイミング信号を与える。
【0038】
また、このプラズマエッチング装置においては、上述したようなマイクロローディング効果対策として、高周波電源38より出力されるイオン引き込み用の高周波LFのパワーを、たとえば100Hz〜50kHzの範囲内で選ばれる一定の周波数f
Sおよび可変のデューティ比D
Sを有するパルスMSで変調する第2のパワー変調方式を所与のエッチングプロセスに用いることも可能となっている。
【0039】
この場合、主制御部72は、イオン引き込み系の高周波電源38に対しては、RF出力モードとしてパワー変調を指示する制御信号を与えるとともに、変調の周波数f
Sおよびデューティ比D
Sを表わす変調パルスMSを与える。高周波電源38は、
図2Bに示すように、変調パルスMSに同期してプラズマ生成用高周波LFのパワーをオン・オフする。この場合も、変調パルスMSの周期、オン期間(第1の期間)、オフ期間(第2の期間)をそれぞれT
C,T
on,T
offとすると、T
C=1/f
S,T
C=T
on+T
off,D
S=T
on/(T
on+T
off)の関係式が成立する。
【0040】
一方で、第2のパワー変調方式を用いる場合、主制御部72は、プラズマ生成系の高周波電源36に対しては、RF出力モードとして連続波(CW)を指示する制御信号を与えるとともに、変調パルスMSと同一のパルスまたはそれに同期したタイミング信号を与える。
[プラズマ生成系の高周波電源および整合器の構成]
【0041】
図3に、この実施形態におけるプラズマ生成系の高周波電源36および整合器40の構成を示す。
【0042】
高周波電源36は、高周波放電のプラズマ生成に適した一定周波数(たとえば40MHz)の正弦波または基本波を発生する高周波発振器80Aと、この高周波発振器80Aより出力される基本波のパワーを可変制御可能な利得または増幅率で増幅するパワーアンプ82Aと、主制御部72からの制御信号にしたがって高周波発振器80Aおよびパワーアンプ82Aを直接制御する電源制御部84Aとを備えている。主制御部72から電源制御部84Aには、RF出力のモードを指示する制御信号や変調パルスMSだけでなく、通常の電源オン・オフやパワーインターロック関係等の制御信号およびパワー設定値等のデータも与えられる。このプラズマ処理装置で第1のパワー変調方式(
図2A)が行われるときは、主制御部72の制御の下で電源制御部84Aがパワー変調部を構成する。
【0043】
高周波電源36のユニット内には、RFパワーモニタ86Aも備わっている。このRFパワーモニタ86Aは、高周波給電ライン43上に方向性結合器を設けており、高周波給電ライン43上を順方向に伝搬する進行波のパワー(PF)と逆方向に伝搬する反射波のパワー(RF)を検知し、進行波のパワー(PF)および反射波のパワー(RF)にそれぞれに対応するアナログ信号つまり進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRを生成する。
【0044】
RFパワーモニタ86Aより得られる進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRは、パワーフィードバック制御用に高周波電源36内の電源制御部84Aに与えられる。さらに、RFパワーモニタ86A内で得られる反射波パワー(RF)の測定値が、モニタ表示用に主制御部72に与えられる。
【0045】
整合器40は、高周波給電ライン43に接続されている複数たとえば2つの制御可能なリアクタンス素子(たとえば可変コンデンサあるいは可変インダクタ)X
H1,X
H2を含む整合回路88Aと、リアクタンス素子X
H1,X
H2のリアクタンスをアクチエータたとえばモータ(M)90A,92Aを介して制御するマッチングコントローラ94Aと、高周波給電ライン43上で整合回路88Aのインピーダンスを含む負荷側のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサ96Aとを有している。
【0046】
図4に、この実施形態におけるイオン引き込み用の高周波電源38および整合器42の構成を示す。
【0047】
高周波電源38は、サセプタ16上の半導体ウエハWにプラズマからイオンを引き込むのに適した一定周波数(たとえば12.88MHz)の正弦波または基本波を発生する高周波発振器80Bと、この高周波発振器80Bより出力される基本波のパワーを可変制御可能な利得または増幅率で増幅するパワーアンプ82Bと、主制御部72からの制御信号にしたがって高周波発振器80Bおよびパワーアンプ82Bを直接制御する電源制御部84Bと、RFパワーモニタ86Bとを備えている。高周波発振器80Bの周波数(12.88MHz)が高周波発振器80Aの周波数(40MHz)と異なる点を除いて、高周波電源38内の各部80B〜86Bはプラズマ生成系の高周波電源36内の各部80A〜86Aとそれぞれ同様の構成および機能を有している。このプラズマ処理装置で第2のパワー変調方式(
図2B)が行われるときは、主制御部72の制御の下で電源制御部84Bがパワー変調部を構成する。
【0048】
高周波電源38において、RFパワーモニタ86Bは、高周波給電ライン45上に方向性結合器を設けており、高周波給電ライン45上を順方向に伝搬する進行波のパワー(PF)と逆方向に伝搬する反射波のパワー(RF)を検知し、進行波のパワー(PF)および反射波のパワー(RF)にそれぞれに対応するアナログ信号つまり進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRを生成する。
【0049】
RFパワーモニタ86Bより得られる進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRは、パワーフィードバック制御用に高周波電源38内の電源制御部84Bに与えられる。さらに、RFパワーモニタ86B内で得られる反射波パワー(PR)の測定値が、モニタ表示用に主制御部72に与えられる。
【0050】
整合器42は、高周波給電ライン45に接続されている複数たとえば2つの制御可能なリアクタンス素子(たとえば可変コンデンサあるいは可変インダクタ)X
L1,X
L2を含む整合回路88Bと、リアクタンス素子X
L1,X
Lのリアクタンスをアクチエータたとえばモータ(M)90B,92Bを介して制御するマッチングコントローラ94Bと、高周波給電ライン45上で整合回路88Bのインピーダンスを含む負荷側のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサ96Bとを有している。
[電源制御部内の要部の構成]
【0051】
図5および
図6に、プラズマ生成系の高周波電源36における電源制御部84A内の要部の構成を示す。
【0052】
電源制御部84Aは、
図5に示すように、ロードパワー測定部100Aと高周波出力制御部102Aとを有している。ロードパワー測定部100Aは、RFパワーモニタ86Aより得られる進行波パワー検知信号S
PFと反射波パワー検知信号S
PRとから、負荷(主にプラズマ)に投入されるロードパワーPLの測定値M
PL(M
PL=S
PF−S
PR)を演算によって求める。
【0053】
ロードパワー測定部100Aは、アナログ演算回路またはディジタル演算回路のいずれの形態を有してもよい。すなわち、アナログの進行波パワー検知信号S
PFとアナログの反射波パワー検知信号S
PRとの差分をとってアナログ信号のロードパワー測定値M
PLを生成してもよく、あるいは進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRをそれぞれディジタル信号に変換したうえで両者の差分をとり、ディジタル信号のロードパワー測定値M
PLを生成してもよい。
【0054】
高周波出力制御部102Aは、
図6に示すように、パルス・オン期間(第1の期間)用の第1の制御指令値生成部104Aと、パルス・オフ期間(第2の期間)用の第2の制御指令値生成部106Aと、RFパワーモニタ86Aからの進行波パワー検知信号S
PFを第1の制御指令値生成部104Aからの第1の制御指令値C
onもしくは第2の制御指令値生成部104Bからの第2の制御指令値C
offと比較して、比較誤差ER
onもしくはER
offを生成する比較器108Aと、この比較器108Aからの比較誤差ER
onもしくはER
offに応じてアンプ82Aの利得または増幅率を可変に制御するアンプ制御部110Aと、高周波出力制御部102A内の各部を制御するコントローラ112Aとを有している。
【0055】
ここで、第1の制御指令値生成部104Aは、ロードパワー測定部100Aより与えられるロードパワー測定値M
PLとコントローラ112Aを介して主制御部72より与えられるロードパワー設定値PL
Sとを入力し、変調パルスMSの各サイクルにおいてパルス・オン期間T
on中に進行波のパワーPFにかけるフィードバック制御のための第1の制御指令値C
onを生成する。
【0056】
一方、第2の制御指令値生成部106Aは、ロードパワー測定部100Aからのロードパワー測定値M
PLとコントローラ112Aからのロードパワー設定値PL
Sとを入力し、変調パルスMSの各サイクルにおいてパルス・オフ期間T
off中に進行波パワーPFにかけるフィードバック制御のための第2の制御指令値C
offを生成する。
【0057】
なお、第1および第2の制御指令値生成部104A,106Aは、好ましくはディジタル回路で構成されてよい。その場合、それぞれの出力段にディジタル−アナログ(D/A)変換器を設けることで、第1および第2の制御指令値C
on,C
offをアナログ信号の形態で出力することができる。
【0058】
第1の制御指令値生成部104Aより出力される第1の制御指令値C
onと、第2の制御指令値生成部106Aより出力される第2の制御指令値C
offとは、切替回路114Aを介して交互に比較器114Aに与えられる。切替回路114Aは、コントローラ112Aの制御の下で動作し、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は第1の制御指令値生成部104Aからの第1の制御指令値C
onを選択して比較器108Aに転送し、パルス・オフ期間T
off中は第2の制御指令値生成部106Aからの第2の制御指令値C
offを選択して比較器108Aに転送するようになっている。
【0059】
したがって、比較器108Aは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は進行波パワー検知信号S
PFを第1の制御指令値C
onと比較してその比較誤差つまり第1の比較誤差ER
on(ER
on=C
on−S
PF)を生成し、パルス・オフ期間T
off中は進行波パワー検知信号S
PFを第2の制御指令値C
offと比較してその比較誤差つまり第2の比較誤差ER
off(ER
off=C
off−S
PF)を生成するようになっている。
【0060】
そして、アンプ制御部110Aは、コントローラ112Aの制御の下で動作し、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は第1の比較誤差ER
onを零に近づけるようにパワーアンプ82Aの利得または増幅率を可変制御して高周波電源36の出力を制御し、パルス・オフ期間T
off中は第2の比較誤差ER
offを零に近づけるようにパワーアンプ82Aの利得または増幅率を可変制御して高周波電源36の出力を制御するようになっている。
【0061】
なお、パワーアンプ82Aには、線形増幅器(リニアアンプ)が好適に用いられる。また、比較器108Aにはたとえば差動増幅器が用いられる。比較器108Aにおいては、入力信号の差分(C
on−S
PF)もしくは(C
off−S
PF)と、出力信号の比較誤差ER
onもしくはER
offとの間に、一定の比例関係が成立していればよい。
【0062】
図7および
図8に、イオン引き込み系の高周波電源38における電源制御部84B内の要部の構成を示す。
【0063】
電源制御部84Bは、
図7に示すように、ロードパワー測定部100Bと高周波出力制御部102Bとを有している。高周波出力制御部102Bは、
図8に示すように、第1の制御指令値生成部104B、第2の制御指令値生成部106B、比較器108B、アンプ制御部110B、コントローラ112Bおよび切替回路114Bを有している。
【0064】
電源制御部84Bには、RFパワーモニタ86Bより、高周波給電ライン45上を伝搬するイオン引き込み用の高周波LFに対応する進行波のパワーPFおよび反射波のパワーRRをそれぞれ表わすアナログ信号つまり進行波パワー検知信号S
PFおよび反射波パワー検知信号S
PRが入力される。この点が異なるだけで、電源制御部84Bにおけるロードパワー測定部100Bおよび高周波出力制御部102Bは、上述したプラズマ生成系の電源制御部84Aにおけるロードパワー測定部100Aおよび高周波出力制御部102Aとそれぞれ同様の構成を有し、同様に機能する。
[実施形態におけるPL制御の作用]
【0065】
この実施形態のプラズマ処理装置においては、高周波電源36,38のいずれも、プラズマ生成用の高周波HFまたはイオン引き込み用の高周波LFをチャンバ10内に各々供給している時は、負荷(主にプラズマ)に投入される正味の高周波パワーつまりロードパワーPLを一定に保つためのPL制御を行うようになっている。
【0066】
以下に、この実施形態におけるPL制御の作用を説明する。一例として、このプラズマ処理装置において所与のプラズマプロセスに第2のパワー変調方式が用いられるとする。
【0067】
この場合、主制御部72は、イオン引き込み系の高周波電源38の電源制御部84Bに対しては、RF出力モードとしてパワー変調を指示する制御信号やロードパワー設定値PL
Sのデータを与えるとともに、パワー変調用のタイミング信号として変調パルスMSを与える。電源制御部84Bは、第2のパワー変調方式を実施するために、変調パルスMSに同期して高周波発振器80Bをオン・オフ制御するとともに、高周波LFのパワーを設定値に一致または近似させるようにパワーアンプ82Bを制御する。
【0068】
一方、主制御部72は、プラズマ生成系の高周波電源36の電源制御部84Aに対しては、RF出力モードとして連続波(CW)を指示する制御信号やロードパワー設定値PL
Sのデータを与えるとともに、PL制御用のタイミング信号として変調パルスMSと同じパルスまたはそれに同期したパルスを与える。高周波電源36は、この電源36より出力される連続波(CW)の高周波HFに対して次のようなPL制御を行う。
【0069】
すなわち、主制御部72からのロードパワー設定値PL
Sは、高周波出力制御部102A内でコントローラ112Aにセットされる。コントローラ112Aは、第1および第2の制御指令値生成部104A,106Aに対して、ロードパワー設定値PL
Sおよび所要の制御信号、クロック信号を与える。
【0070】
第1の制御指令値生成部104Aは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、ロードパワー測定部100Aからのロードパワー測定値M
PLをパルス・オン期間T
onの間だけ取り込んでフィードバック信号に用いる。ここで、ロードパワー測定値M
PLの瞬時値または代表値をフィードバック信号に用いることも可能ではあるが、通常はロードパワー測定値M
PLの平均値(好ましくは移動平均値)をフィードバック信号に用いる。
【0071】
具体的には、パルス・オン期間T
onの間にロードパワー測定部100Aより与えられるロードパワー測定値M
PLについて変調パルスMSの複数サイクル分の移動平均値AM
PLを取得し、この移動平均値AM
PLをロードパワー設定値PL
Sと比較して比較誤差または偏差を求め、次または後続のサイクルにおいてこの偏差を適度な速度で零に近づけるようにパルス・オン期間T
on中に進行波のパワーPFにかけるフィードバック制御の目標値つまり第1の制御指令値C
onを決定する。この第1の制御指令値C
onを決定するために、フィードバック制御またはフィードフォワード制御の技術で常用されている公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0072】
一方、第2の制御指令値生成部106Aは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、ロードパワー測定部100Aより与えられるロードパワー測定値M
PLをパルス・オフ期間T
offの間だけ取り込んでフィードバック信号に用いる。やはり、ロードパワー測定値M
PLの瞬時値または代表値をフィードバック信号に用いることも可能ではあるが、通常はロードパワー測定値M
PLの平均値(好ましくは移動平均値)をフィードバック信号に用いる。
【0073】
具体的には、パルス・オフ期間T
offの間にロードパワー測定部100Aより与えられるロードパワー測定値M
PLについて1サイクル分または複数サイクル分の移動平均値BM
PLを取得し、この移動平均値BM
PLをロードパワー設定値PL
Sと比較して比較誤差または偏差を求め、次または後続のサイクルにおいてこの偏差を適度な速度で零に近づけるようにパルス・オフ期間T
off中に進行波のパワーPFにかけるフィードバック制御の目標値つまり第2の制御指令値C
offを決定する。この第2の制御指令値C
offを決定するために、フィードバック制御またはフィードフォワード制御で常用されている公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0074】
上記したように、比較器108Aは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は進行波パワー検知信号S
PFを第1の制御指令値生成部104Aからの第1の制御指令値C
onと比較してその比較誤差(第1の比較誤差)ER
onを生成し、パルス・オフ期間T
off中は進行波パワー検知信号S
PFを第2の制御指令値生成部106Aからの第2の制御指令値C
offと比較してその比較誤差(第2の比較誤差)ER
offを生成する。そして、アンプ制御部110Aは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は第1の比較誤差ER
onを零に近づけるようにパワーアンプ82Aの利得または増幅率を可変に制御し、パルス・オフ期間T
off中は第2の比較誤差ER
offを零に近づけるようにパワーアンプ82Aの利得または増幅率を可変に制御する。
【0075】
こうして、第2のパワー変調方式の下でプラズマ生成用の高周波HFを連続波(CW)で出力する高周波電源36においては、RFパワーモニタ86Aおよびロードパワー測定部100Aより得られるロードパワーPLの測定値M
PLをロードパワー設定値PL
Sに一致または近似させるために、電源36の出力つまり高周波給電ライン43上を順方向に伝播する進行波のパワーPFに対して、変調パルスMSの各サイクルにおけるパルス・オン期間T
onとパルス・オフ期間T
offとで独立したフィードバック制御がかけられる。
【0076】
通常、プラズマプロセスに第2のパワー変調方式が用いられるときは、変調をかけられるイオン引き込み用の高周波LFが変調パルスMSの周波数およびデューティでオン・オフすることにより、パルス・オン期間T
onとパルス・オフ期間T
offとの間で負荷(プラズマ)が大きく変動し、それによって反射波のパワーPRが大きく変動しやすい。
【0077】
この実施形態のPL制御法によれば、たとえば
図9に模式的に示すように、パルス・オン期間T
onとパルス・オフ期間T
offとで、制御変数の進行波パワーPFにかけるフィードバック制御の目標値つまり制御指令値が独立した値C
on,C
offに切り替えられる。これにより、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は進行波パワーPFを第1の制御指令値C
onに近づける(ひいてはロードパワーPLを設定値PL
Sに近づける)ための第1のフィードバック制御がかけられ、パルス・オフ期間T
off中は進行波パワーPFを第2の制御指令値C
offに近づける(ひいてはロードパワーPLを設定値PL
Sに近づける)ための第2のフィードバック制御がかけられる。
【0078】
このような2系統のフィードバック制御によれば、変調パルスMSに同期した反射波パワーPRないし進行波パワーPFの周期的な変動に容易かつ適確に追従することが可能であり、変調パルスMSの反転時に生じる急激な負荷変動にも難なく追いつくことができる。これによって、ロードパワーPLを設定値PL
Sに安定に保つことができる。
【0079】
なお、
図9の例では、第1および第2の制御指令値C
on,C
offを変調パルスMSの3サイクル毎に更新するようにしている。この更新の速度はフィードバック制御の応答速度を規定するものであり、任意の値に選ぶことができる。
【0080】
一方、第2のパワー変調方式の下でイオン引き込み用の高周波LFにパワー変調をかける高周波電源38においては、電源制御部84Bにより、変調パルスMSの各サイクルにおいてパルス・オン期間T
on中だけ進行波のパワーPFに対してPL制御のためのフィードバック制御がかけられる。この場合、電源制御部84B内のコントローラ112Bは、パルス・オフ期間用の第2の制御指令値生成部106Bを完全休止または非アクティブの状態に保持して、パルス・オン期間用の第1の制御指令値生成部104Bだけを動作させる。
【0081】
比較器108Bは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中にRFパワーモニタ86Bからの進行波パワー検知信号S
PFを第1の制御指令値生成部104Bからの第1の制御指令値C
onと比較してその比較誤差(第1の比較誤差)ER
onを生成し、パルス・オフ期間T
off中は実質的に休止する。そして、アンプ制御部110Bは、変調パルスMSの各サイクルにおいて、パルス・オン期間T
on中は第1の比較誤差ER
onを零に近づけるようにパワーアンプ82Bの利得または増幅率を可変に制御し、パルス・オフ期間T
off中は実質的に休止する。
【0082】
もっとも、パワー変調をかけられる高周波電源38においては、PF制御を行うことも可能である。その場合は、コントローラ112Bより比較器108Bに比較基準値として進行波パワー設定値(PF
S)を与えればよい。
【0083】
このプラズマ処理装置において所与のプラズマプロセスに第1のパワー変調方式が用いられる場合は、パワーフィードバック制御に関しては、プラズマ生成系の高周波電源36(特に電源制御部84A)における上述した動作とイオン引き込み系の高周波電源38(特に電源制御部84B)における上述した動作とが互いに逆転する。
[制御指令値生成部の構成例(実施例)]
【0084】
図10に、上述したプラズマ生成系の高周波電源36(電源制御部84A)において高周波出力制御部102Aの主たる構成要素である第1および第2の制御指令値生成部104A,106Aの具体的な構成例を示す。
図11に、制御指令値生成部104A,106A内の主な動作を説明するための各部の波形を示す。
【0085】
図10において、第1の制御指令値生成部104Aは、サイクル平均値演算回路120、移動平均値演算回路122、比較器124および制御指令値演算回路126を有している。
【0086】
ここで、サイクル平均値演算回路120は、変調パルスMSの各サイクルでパルス・オン期間T
on内に設定される第1のモニタ時間T
1中にロードパワー測定部100Aからのロードパワー測定値M
PLを所定の周波数(たとえば数10MHz)でサンプリングして1サイクル分の平均値aM
PLを演算する。コントローラ112Aは、サンプリング用のクロックACKと、第1のモニタ時間T
1を指示するオン期間モニタ信号JS
1とをサイクル平均値演算回路120に与える。サイクル平均値演算回路120は、数10MHzのサンプリングクロックACKに同期して高速かつ多量の信号処理を要求されるため、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)を好適に用いることができる。
【0087】
移動平均値演算回路122は、好適にはCPUで構成され、サイクル平均値演算回路120より変調パルスMSの各サイクル毎に出力されるロードパワー測定値M
PLの1サイクル平均値aM
PLについて、予め設定された所定の移動区間および移動ピッチで移動平均値AM
PLを演算する。たとえば、変調パルスMSの周波数が100Hzである場合に、移動区間を100msecに設定し、移動ピッチを20msecに設定したときは、20msec毎に連続する10個の1サイクル平均値aM
PLについて1個の移動平均値AM
PLを演算する。コントローラ112Aは、移動区間および移動ピッチを指示する制御信号FS
1と移動平均値演算処理のためのクロックBCKを移動平均値演算回路122に与える。
【0088】
比較器124は、移動平均値演算回路122より得られる移動平均値AM
PLをロードパワー設定値PL
Sと比較して、比較誤差EA(EA=PL
S−AM
PL)を生成する。
【0089】
制御指令値演算回路126は、比較器124より出力される比較誤差EAを入力し、この比較誤差EAを零に近づけるために、パルス・オン期間T
on中の進行波のパワーPFに対するフィードバック制御用の目標値つまり第1の制御指令値C
onを所定のアルゴリズムによって演算(生成)する。コントローラ112Aは、制御指令値演算回路126に所要の制御信号および/またはタイミング信号GS
1を与える。
【0090】
一方、第2の制御指令値生成部104Bは、サイクル平均値演算回路128、移動平均値演算回路130、比較器132および制御指令値演算回路134を有している。
【0091】
ここで、サイクル平均値演算回路128は、変調パルスMSの各サイクルでパルス・オフ期間T
off内に設定される第2の第2のモニタ時間T
2中にロードパワー測定部100Aからのロードパワー測定値M
PLを所定の周波数(たとえば数10MHz)でサンプリングして1サイクル分の平均値bM
PLを演算する。コントローラ112Aは、サンプリング用のクロックACKと、第2のモニタ時間T
2を指示するオフ期間モニタ信号JS
2とをサイクル平均値演算回路128に与える。サイクル平均値演算回路128は、数10MHzのサンプリングクロックACKに同期して高速かつ多量の信号処理を要求されるため、FPGA(フィールドプログラマブル・ゲートアレイ)を好適に用いることができる。
【0092】
移動平均値演算回路130は、好適にはCPUで構成され、サイクル平均値演算回路128より変調パルスMSの各サイクル毎に出力されるロードパワー測定値M
PLの1サイクル平均値bM
PLについて、予め設定された所定の移動区間および移動ピッチで移動平均値BM
PLを演算する。たとえば、変調パルスMSの周波数が100Hzである場合に、移動区間を100msecに設定し、移動ピッチを20msecに設定したときは、20msec毎に連続する10個の1サイクル平均値bM
PLについて1個の移動平均値BM
PLを演算する。コントローラ112Aは、移動区間および移動ピッチを指示する制御信号FS
2と移動平均値演算処理のためのクロックBCKを移動平均値演算回路130に与える。
【0093】
比較器132は、移動平均値演算回路130より得られる移動平均値BM
PLをロードパワー設定値PL
Sと比較して、比較誤差EB(EB=PL
S−BM
PL)を生成する。
【0094】
制御指令値演算回路134は、比較器132より出力される比較誤差EBを入力し、比較誤差EBを零に近づけるために、パルス・オフ期間T
off中の進行波のパワーPFに対するフィードバック制御用の目標値つまり第2の制御指令値C
offを所定のアルゴリズムによって演算(生成)する。コントローラ112Aは、制御指令値演算回路134に所要の制御信号および/またはタイミング信号GS
2を与える。
[実施形態における効果の実例]
【0095】
本発明者は、第2のパワー変調方式を用いるプラズマエッチングの実験において、上記実施形態における効果を検証した。この実験では、エッチングガスをCF
4、チャンバ内圧力を13mTorr、プラズマ生成用高周波HFの周波数f
HFを40MHz、イオン引き込み用高周波LFの周波数f
LFを12.88MHz、連続波(CW)の高周波HFのパワー(進行波パワーPF)を500W,1000W(一定)にしたうえで、プラズマの安定性に関して一般のPF制御と実施形態におけるPL制御とを比較した。
【0096】
PF制御の実験では、パワー変調をかけるイオン引き込み用高周波LFの進行波パワーPFの設定値PF
Sならびにパワー変調の周波数f
Sおよびデューティ比D
Sをパラメータとして、進行波パワーPFの設定値PF
Sを25W,100W,500W,1000W,2000Wの5通りに選び、パワー変調の周波数f
Sを0.1kHz,1.0kHz,10kHz,20kHzの4通りに選び、デューティ比DSを10%,20%,・・90%の9通りに選んだ。その結果、
図12Aおよび
図12Bに示すように、広範囲に点在して「NG」(プラズマハンチング)の結果の出る場合が少なからずあった。
【0097】
実施形態におけるPL制御の実験では、パワー変調をかけるイオン引き込み用高周波LFのロードパワーPLの設定値PL
Sならびにパワー変調の周波数f
Sおよびデューティ比D
Sをパラメータとして、ロードパワーPLの設定値PL
Sを25W,100W,500W,1000W,2000Wの5通りに選び、パワー変調の周波数f
Sを0.1kHz,1.0kHz,10kHz,20kHzの4通りに選び、デューティ比DSを10%,20%,・・90%の9通りに選んだ。その結果、
図13Aおよび
図13Bに示すように、全ての場合で「OK」(プラズマ安定)の結果が出た。
[他の実施形態または変形例]
【0098】
以上本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種種の変形が可能である。
【0099】
本発明においては、第1のパワー変調方式として、プラズマ生成用の高周波HFのパワーが第1のレベル(Hレベル)になる第1の期間と第1のレベル(Hレベル)よりも低い第2のレベル(Lレベル)になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返す形態も可能である。同様に、第2のパワー変調方式として、イオン引き込み用の高周波LFのパワーが第1のレベル(Hレベル)になる第1の期間と第1のレベル(Hレベル)よりも低い第2のレベル(Lレベル)になる第2の期間とを一定のパルス周波数で交互に繰り返す形態も可能である。
【0100】
上記実施形態(
図1)では、プラズマ生成用の高周波HFをサセプタ(下部電極)16に印加した。しかし、プラズマ生成用の高周波HFを上部電極46に印加する構成も可能である。
【0101】
本発明は、容量結合型プラズマエッチング装置に限定されず、プラズマCVD、プラズマALD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、スパッタリングなど任意のプラズマプロセスを行う容量結合型プラズマ処理装置に適用可能であり、さらにはチャンバの周囲に高周波電極(アンテナ)を設ける誘導結合型プラズマ処理装置にも適用可能である。本発明における被処理体は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ、有機EL、太陽電池用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。