【実施例】
【0078】
以下、製造例及び試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0079】
〔製造例1〕ガンカオニンRの製造
乾燥した甘草葉部92.7gに10倍量の70容量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱抽出し、ろ過してろ液を得た。さらに、抽出残渣に同量の70容量%エタノールを加え、80℃で2時間加熱抽出し、ろ過してろ液を得た。得られた抽出ろ液を合わせ、溶媒留去および凍結乾燥を行い、甘草葉部抽出物(28.6g,原料からの収率:30.9%)を得た。得られた甘草葉部抽出物28.6gに水1Lを加え懸濁し、多孔性樹脂(ダイヤイオンHP−20,三菱化学社製)500g上に付し、水5L、80容量%メタノール5L、アセトン5Lの順で溶出させた。次いで、80容量%メタノール5Lで溶出させた画分について溶媒留去および凍結乾燥を行い、甘草葉部抽出物80%メタノール溶出画分(6.9g,原料からの収率:7.4%)を得た。
【0080】
得られた80%メタノール溶出画分6.9gを、クロロホルム:メタノール=95:5(容量比)の混合溶媒に溶解し、シリカゲル(シリカゲル60,メルク社製)を充填したガラス製のカラム上部から注入して、シリカゲルに吸着させた。次いで、移動相としてクロロホルム:メタノール=95:5(容量比)を流し、その溶出液を800mLごとに分画し、3番目の画分を脱溶媒して、粗精製画分1(2.32g)を得た。得られた粗精製画分を40容量%アセトニトリルに溶解し、ODS(クロマトレックスODS DM1020T,富士シリシア化学社製)を充填したガラス製のカラム上部から注入して、ODSに吸着させた。次いで、移動相として40容量%アセトニトリルを流し、その溶出液を100mLごとに分画し、2番目の画分を脱溶媒して、粗精製画分2(1.16g)を得た。次に1.16gの粗精製画分2を下記の高速液体クロマトグラフィー条件にて分画し、精製物(994mg,原料からの収率:1.1%,試料1)を単離した。
【0081】
<高速液体クロマトグラフィー条件>
使用機器:LC−908(日本分析工業社製)
固定相:JAIGEL−GS310(日本分析工業社製) 2本連結
カラム径:20mm
カラム長:500mm
移動相:メタノール
移動相流速:5mL/min
【0082】
上記のようにして精製して得られた精製物について、
1H−NMR分析及び
13C−NMR分析を行った。かかる分析結果を下記に示す。
【0083】
<
1H−NMR(acetone-d
6)δ>
1.64(6H, br s, H
3-10, 15),1.74(6H, br s, H
3-11, 16),2.63(2H, m, H
2-β),2.79(2H, m, H
2-α),3.35(4H, br d, J=8.0Hz, H
2-7, 12),5.12(1H, m, H-8, 13),6.36(1H, s, H-4),6.60(1H, dd, J=2.4, 8.3Hz, H-6'),6.77(2H, m, H-2', 5')
【0084】
<
13C−NMR(acetone-d
6)δ
C>
18.2(C-10, 15),25.7(C-7, 12),25.8(C-11, 16),32.8(C-α),37.3(C-β),101.7(C-4),116.1(C-2', 5'),118.7(C-2, 6),120.3(C-6'),126.2(C-8, 13),130.1(C-9, 14),135.2(C-1'),141.3(C-1),144.0(C-4'),145.9(C-3'),154.5(C-3, 5)
【0085】
以上の分析結果から、甘草葉部抽出物から得られた化合物が、下記式(I)で表されるガンカオニンR(Gancaonin R)であることが確認された。
【0086】
【化2】
【0087】
〔試験例1〕ラジカル消去作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
【0088】
150μmol/L DPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表1を参照)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。ブランクとして、エタノールに試料溶液3mLを加えた後、直ちに波長520nmの吸光度を測定した。また、コントロールとして、試料溶液に代えて試料の溶解に使用した溶媒のみを加えて同様の操作を行い、波長520nmの吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
【0089】
ラジカル消去率(%)={C−(St−Sb)}/C×100
式中、Cは「コントロールの吸光度」を表し、Stは「試料溶液添加時の吸光度」を表し、Sbは「ブランクの吸光度」を表す。
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたラジカル消去作用を有していると認められた。また、ラジカル消去作用の程度は、ガンカオニンRの濃度によって調節できることが確認された。
【0092】
〔試験例2〕グルタチオン産生促進作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてグルタチオン産生促進作用を試験した。
【0093】
ヒト正常皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×10
5cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
【0094】
培養後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)が溶解した1%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加の1%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
【0095】
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lリン酸緩衝液50μL、2mmol/L NADPH25μL及びグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え37℃で10分間加温した後、10mmol/L 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
【0096】
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
上記式において、Aは「試料無添加の細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量(対照)」を表し、Bは「被験試料を添加した細胞中における総タンパク量当たりのグルタチオン量」を表す。
結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
表2に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたグルタチオン産生促進作用を有していると認められた。
【0099】
〔試験例3〕ケラチノサイトに対するSDSダメージ抑制作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてケラチノサイトに対するSDSダメージ抑制作用を試験した。
【0100】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト新生児表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10×10
4cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種(2.0×10
4cells/ウェル)し、一晩培養した。
【0101】
培養終了後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表3を参照)を溶解したKGM培地を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、SDS(終濃度25μg/mL)が溶解したKGM培地を各ウェルに200μL添加し、3時間培養した。培養終了後、MTTアッセイによりSDSダメージ抑制作用を測定した。すなわち、培地を除去し、PBS緩衝液にて洗浄した後、0.4mg/mLのMTTが溶解したPBS緩衝液を各ウェルに200μLずつ添加し、さらに2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。また、同様に細胞播種した後、SDSを処理しない細胞およびSDSを処理し被験試料を添加しない細胞についても同様に測定し、それぞれ非処理群と処理群とした。測定結果から、下記式に基づいて、SDSダメージ抑制率(%)を算出した。
【0102】
SDSダメージ抑制率(%)={(Nt−C)−(Nt−Sa)}/(Nt−C)×100
式中、Ntは「SDSを処理しない細胞での吸光度」を表し、Cは「SDSを処理し試料無添加の細胞での吸光度」を表し、Saは「SDSを処理し被験試料を添加した細胞での吸光度」を表す。
結果を表3に示す。
【0103】
【表3】
【0104】
表3に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたSDSダメージ抑制作用を有していると認められた。
【0105】
〔試験例4〕チロシナーゼ活性阻害作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてチロシナーゼ活性阻害作用を試験した。
【0106】
48ウェルプレートに、Mcllvaine緩衝液(pH6.8)0.2mL、0.3mg/mLチロシン溶液0.06mL、被験試料(試料1,試料濃度は下記表4を参照)の25%DMSO溶液0.18mLを加え、37℃で10分間静置した。これに、800units/mLチロシナーゼ溶液0.02mLを加え、引き続き37℃で15分間反応させた。反応終了後、波長475nmにおける吸光度を測定した。また、同様の方法で空試験を行った。得られた測定結果から、下記式によりチロシナーゼ活性阻害率(%)を算出した。
【0107】
チロシナーゼ活性阻害率(%)={1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100
式中、Stは「酵素添加・被験試料添加での吸光度」を、Sbは「酵素無添加・被験試料添加での吸光度」を、Ctは「酵素添加・被験試料無添加での吸光度」を、Cbは「酵素無添加・被験試料無添加での吸光度」を示す。
結果を表4に示す。
【0108】
【表4】
【0109】
表4に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたチロシナーゼ活性阻害作用を有していると認められた。
【0110】
〔試験例5〕B16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてB16メラノーマ細胞に対するメラニン産生抑制作用を試験した。
【0111】
B16メラノーマ細胞を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を24.0×10
4cells/mLの細胞密度になるように10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェルあたり300μLずつ播種し、6時間培養した。
【0112】
培養終了後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表5を参照)を添加した10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の10%FBSおよび1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕機により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定した。測定した吸光度の値から、合成メラニン(SIGMA社製)を用いて作成した検量線をもとにメラニン量を算出した。
【0113】
また、細胞生存率を測定するために、上記と同様にして培養した後、培地を除去し400μLのPBS緩衝液で洗浄して、終濃度0.05mg/mLで10%FBS含有ダルベッコMEMに溶解したニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加し、2.5時間培養した。培養後、ニュートラルレッド溶液を除去し、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式により細胞生存率により補正したメラニン産生抑制率(%)を算出した。
【0114】
メラニン産生抑制率(%)={1−(B/D)/(A/C)}×100
式中、Aは「試料無添加のサンプルにおけるメラニン量」を表し、Bは「被験試料を添加したサンプルにおけるメラニン量」を表し、Cは「試料無添加のサンプルにおける540nmにおける吸光度」を表し、Dは「被験試料添加のサンプルにおける540nmにおける吸光度」を表す。
結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
表5に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたメラニン産生抑制作用を有していると認められた。
【0117】
〔試験例6〕MMP−1活性阻害作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてMMP−1活性阻害作用を試験した。
【0118】
蓋付試験管にて、20mmol/Lの塩化カルシウムを含有する0.1mol/L Tris−HCl緩衝液(pH7.1)に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表6を参照)50μL、MMP−1溶液(Sigma社製,COLLAGENASE Type IV from Clostridium histolyticum)50μL、及びPzペプチド溶液(BACHEM Feinchemikalien AG社製,Pz-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-OH)400μLを混合し、37℃にて30分反応させた後、25mmol/Lのクエン酸溶液1mLを加え反応を停止した。
【0119】
その後、酢酸エチル5mLを加え、激しく振とうした。これを遠心(1600×g,10分)し、酢酸エチル層の波長320nmにおける吸光度を測定した。また、同様にして空試験を行い補正した。得られた結果から、下記式によりMMP−1活性阻害率(%)を算出した。
【0120】
MMP−1活性阻害率(%)={1−(C−D)/(A−B)}×100
式中、Aは「試料無添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Bは「試料無添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Cは「試料添加、酵素添加での波長320nmにおける吸光度」を表し、Dは、「試料添加、酵素無添加での波長320nmにおける吸光度」を表す。
結果を表6に示す。
【0121】
【表6】
【0122】
表6に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたMMP−1活性阻害作用を有していると認められた。また、MMP−1活性阻害作用の程度は、ガンカオニンRの濃度によって調節できることが確認された。
【0123】
〔試験例7〕表皮ヒアルロン酸産生促進作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにして表皮ヒアルロン酸産生促進作用を試験した。
【0124】
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常表皮角化細胞長期培養用増殖培地(EpiLife-KG2)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5cells/mLの細胞密度になるようにEpilife-KG2培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、24時間培養した。
【0125】
培養終了後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を添加したEpilife-KG2培地を各ウェルに100μLずつ添加し、7日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のEpilife-KG2培地を用いて同様に培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。測定結果から、下記式によりヒアルロン酸産生促進率(%)を算出した。
【0126】
表皮ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加時のヒアルロン酸量」を表し、Bは「試料無添加時のヒアルロン酸量」を表す。
結果を表7に示す。
【0127】
【表7】
【0128】
表7に示すように、ガンカオニンR(試料1)は優れた表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有していると認められた。
【0129】
〔試験例8〕トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を試験した。
【0130】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト新生児表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、2日間培養した。
【0131】
培養終了後、被験試料(試料1,試料濃度は下記表8を参照)を添加したKGM培地を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量を、モノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体(Biomedical Technologies Inc.社製)を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりトランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)を算出した。
【0132】
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100
上記式において、Aは「被験試料添加での吸光度」を表し、Bは「試料無添加での吸光度」を表す。
試験結果を表8に示す。
【0133】
【表8】
【0134】
表8に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有していると認められた。
【0135】
〔試験例9〕メイラード反応阻害作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてメイラード反応阻害作用を試験した。
【0136】
被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表9を参照)50μL、100mmol/L D(−)−リボース200μL、25mg/mLリゾチーム200μL、100mmol/Lリン酸水素ナトリウム水溶液(pH7.4)500μL、滅菌蒸留水50μLを混合し(全量:1000μL)、37℃で静置した。なお、コントロールとして、被験試料溶液に替えて蒸留水としたものを同様に試験し、ブランクとして、被験試料溶液に替えて蒸留水としたものを4℃で同じく静置した。
【0137】
7日後、ボルテックスで攪拌し、反応液40μLにSDS−PAGE用サンプルバッファー40μLを混合した後、沸騰浴中で3分間加熱し、分析サンプルとした。アクリルアミド濃度を分離ゲル15%、濃縮ゲル4%に調製したポリアクリルアミドゲルに、分析サンプル12μLをアプライし、電気泳動を行った。泳動したゲルをクマシーブリリアントブルー染色後脱色し、画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus(Bio-Rad Laboratories社製)を用いて検出し、バンドをImage Lab Software version 2.0(Bio-Rad Laboratories社製)にて定量的に測定した。得られた結果から、各バンドのNet intensity(バンド強度)を用いて、リゾチームの二量体、三量体の形成阻害率を計算し、下記式にてメイラード反応阻害率(%)を算出した。
【0138】
メイラード反応阻害率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中、Aは「被験試料添加での二量体と三量体のNet intensityの和」を表し、Bは「試料無添加(コントロール)での二量体と三量体のNet intensityの和」を表し、Cは「ブランクでの二量体と三量体のNet intensityの和」を表す。
結果を表9に示す。
【0139】
【表9】
【0140】
表9に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたメイラード反応阻害作用を有していると認められた。
【0141】
〔試験例10〕SIRT1産生促進作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにしてSIRT1産生促進作用試験を試験した。
【0142】
ヒト正常線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10
5cells/mLの細胞密度になるように0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、一晩培養した。
【0143】
培養終了後、培地を除去し、被験試料(試料1,試料濃度は表10を参照)が溶解した0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに100μL添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、4%ホルマリン液で細胞を固定し、0.5%Triton−Xにて細胞膜を可溶化させた後、細胞内に発現したSIRT1の量を、マウスモノクローナル抗ヒトSIRT1抗体(SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社製)を用いたELISA法により測定した。また、その後に0.05%メチレンブルー溶液で核を染色することにより細胞数を測定し、SIRT1量/細胞数の比を求め、単位細胞当りのSIRT1量を算出した。得られた結果より、下記式にてSIRT1産生促進率(%)を算出した。
【0144】
SIRT1産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「被験試料添加でのSIRT1量/細胞数」を表し、Bは「試料無添加でのSIRT1量/細胞数」を表す。
結果を表10に示す。
【0145】
【表10】
【0146】
表10に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れたSIRT1産生促進作用を有していると認められた。
【0147】
〔試験例11〕毛乳頭細胞増殖促進作用試験
製造例1により得られたガンカオニンR(試料1)について、以下のようにして毛乳頭細胞増殖促進作用を試験した。
【0148】
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(HFDPC,男性頭頂部由来)を、1%FCS及び増殖添加剤を含有する毛乳頭細胞増殖培地(PCGM,東洋紡績社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10%FBS含有DMEM培地を用いて1.0×10
4cells/mLの細胞密度になるように希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり200μLずつ播種し、3日間培養した。
【0149】
その後、培地を除去し、無血清DMEM培地に溶解させた被験試料(試料1,試料濃度は表11を参照)含有培地200μLを各ウェルに添加し、さらに4日間培養した。培養終了後、MTTアッセイにより毛乳頭細胞増殖促進作用を測定した。すなわち、培地を除去し、0.4mg/mLのMTTを含む無血清DMEM培地に交換し、さらに2時間培養した後、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。この抽出液について、ブルーホルマザンの吸収極大点がある570nmの吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。なお、コントロールとして、被験試料含有培地に代えて無血清DMEM培地で培養した場合についても、同様の測定を行った。測定結果から、下記式に基づいて、毛乳頭細胞増殖促進率(%)を算出した。
【0150】
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「被験試料添加でのブルーホルマザン生成量」を表し、Bは「試料無添加でのブルーホルマザン生成量」を表す。
結果を表11に示す。
【0151】
【表11】
【0152】
表11に示すように、ガンカオニンR(試料1)は、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を有していると認められた。
【0153】
〔配合例1〕
下記組成に従い、乳液を常法により製造した。
ガンカオニンR(製造例1) 0.01g
ホホバオイル 4.00g
1,3−ブチレングリコール 3.00g
アルブチン 3.00g
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.50g
オリーブオイル 2.00g
スクワラン 2.00g
セタノール 2.00g
モノステアリン酸グリセリル 2.00g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 2.00g
パラオキシ安息香酸メチル 0.15g
グリチルリチン酸ステアリル 0.10g
黄杞エキス 0.10g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10g
イチョウ葉エキス 0.10g
コンキオリン 0.10g
オウバクエキス 0.10g
カミツレエキス 0.10g
香料 0.05g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0154】
〔配合例2〕
下記組成のクリームを常法により製造した。
ガンカオニンR(製造例1) 0.05g
クジンエキス 0.1g
オウゴンエキス 0.1g
流動パラフィン 5.0g
サラシミツロウ 4.0g
スクワラン 10.0g
セタノール 3.0g
ラノリン 2.0g
ステアリン酸 1.0g
オレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 1.5g
モノステアリン酸グリセリル 3.0g
油溶性甘草エキス 0.1g
1,3−ブチレングリコール 6.0g
パラオキシ安息香酸メチル 1.5g
香料 0.1g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0155】
〔配合例3〕
下記組成の美容液を常法により製造した。
ガンカオニンR(製造例1) 0.01g
カミツレエキス 0.1g
ニンジンエキス 0.1g
キサンタンガム 0.3g
ヒドロキシエチルセルロース 0.1g
カルボキシビニルポリマー 0.1g
1,3−ブチレングリコール 4.0g
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1g
グリセリン 2.0g
水酸化カリウム 0.25g
香料 0.01g
防腐剤(パラオキシ安息香酸メチル) 0.15g
エタノール 2.0g
精製水 残部(全量を100gとする)
【0156】
〔配合例4〕
下記組成のヘアトニックを常法により製造した。
ガンカオニンR(製造例1) 0.4g
酢酸トコフェロール 適量
セファラチン 0.002g
イソプロピルメチルフェノール 0.1g
ヒアルロン酸ナトリウム 0.15g
グリセリン 15.0g
エタノール 15.0g
香料 適量
キレート剤(エデト酸ナトリウム) 適量
防腐剤(ヒノキチオール) 適量
可溶化剤(ポリオキシエチレンセチルエーテル) 適量
精製水 残部(全量を100gとする)
【0157】
〔配合例5〕
下記組成のシャンプーを常法により製造した。
ガンカオニンR(製造例1) 0.5g
マジョラム抽出物 1.0g
ウメ果実部抽出物 0.2g
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0g
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.0g
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0g
プロピレングリコール 2.0g
香料 適量
精製水 残部(全量を100gとする)