【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のアルカリ可溶性樹脂について詳細に説明する。
本発明の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂は、後述するように、(メタ)アクリル基を有する多価アルコール化合物に由来する光重合性不飽和基を有するためにラジカル重合性を有するほか、酸一無水物に由来する酸性基を含有するためアルカリ可溶性を有する。
【0016】
一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、エポキシシリコーン化合物が有するエポキシ基に(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、または両方を示す)を反応させ、得られた重合性不飽和基を有する多価アルコール化合物にジカルボン酸類又はその酸一無水物を反応させて得られたシリコーン構造を有するアルカリ可溶性樹脂である。一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、重合性不飽和基とカルボキシル基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、及びパターニング特性を与える。
【0017】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。先ず、一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(6)で表される両末端Si-H含有環状オルガノシロキサンに、両末端ビニル基含有化合物を理論量未満で反応させ、ついで残存するSi-H基を、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ以上有し、かつSi-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するエポキシ樹脂と反応させて一般式(7)で表される多官能エポキシシリコーン化合物を得る。
【化11】
【化12】
(但し、R
1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。R
2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、内部にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。Xは内部にヘテロ原子を含んでいてもよい2価の有機基を示す。Gはイソシアヌル環骨格に、エポキシ基を含んだ基が結合した1価の有機基を示す。l、mは独立に0〜3の数を表し、1≦l+m≦4を満たす。nは0〜100の数を表す。)
【0018】
R
1は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。これらの炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基等の直鎖状炭化水素基、シクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくはメチル基である。R
2は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を示し、内部にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。これらの炭化水素基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基又は下記一般式(8)で表される2価の有機基等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくはプロピレン基である。
【化13】
(但し、R
8は炭素数1〜17の2価の炭化水素基又は単結合である。)
【0019】
一般式(7)におけるGはイソシアヌル環骨格に、エポキシ基を含んだ基が結合した1価の有機基を示し、たとえば−R
9−R
10−(R
11−E)
kで表すことができる。ここで、R
10はイソシアヌル環骨格からなる基であり、R
9及びR
11は、直結合又は鎖状の2価の炭化水素基であることが好ましいが、ヘテロ原子を含んでいてもよい。Eはエポキシ基であり、kは1〜3、好ましくは2である。好ましいGの具体例としては下記一般式(9)で表される置換基である。
【化14】
【0020】
一般式(7)におけるXは内部にヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数2〜20の2価の有機基を示す。これらの有機基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、へキシレン基、デシレン基、ドデシレン基等の脂肪族炭化水素基、下記一般式(10)で表されるような芳香族炭化水素基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくはエチレン基又は下記一般式(10)で表される置換基である。
【化15】
【0021】
Xは、内部にSiを含む有機基であることも好ましく、具体的には下記一般式(11)〜(15)で表わされる有機基が挙げられる。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(但し、R
12、R
14、R
17、R
20、R
21は炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、内部に芳香族環を有していてもよい。R
13、R
16、R
19は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を表す。R
15はフェニレン基またはナフチレン基を表す。R
18は炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表し、内部に芳香族環を有していてもよく、エーテル結合性酸素原子を有していてもよい。R
3およびhは一般式(2)と同義であり、R
4、i、jは一般式(3)と同義である。)
【0022】
上記両末端ビニル基含有化合物としては、好ましくは一般式(16)または一般式(17)で表される両末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化21】
【化22】
(但し、R
3、R
4は独立にメチル基またはフェニル基を示し、各々同一でも異なっていてもよい。hは0〜100の数を表す。i、jは独立に0〜3の数であり、1≦i+j≦4である。)
【0023】
一般式(6)で表される両末端Si-H含有環状オルガノシロキサンと両末端ビニル基含有化合物との反応においては、先ず、両末端Si-H基含有ポリオルガノシロキサンを先に仕込み、次いで必ず未反応のSi-H基が残存するように両末端ビニル基含有化合物を逐次添加し、反応が完結したことを確認した後、残存するSi-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するエポキシ樹脂を反応させることが特に好ましい。両末端ビニル基含有化合物の使用量は、一般式(7)で表される多官能エポキシシリコーン化合物のエポキシ当量が200〜2000g/eqとなるように仕込むことが好ましく、そのためには両末端Si-H基含有ポリオルガノシロキサンと両末端ビニル基含有化合物との反応終了後、両末端Si-H基含有ポリオルガノシロキサンのSi-H基が20〜80%残存していることが好ましい。また、一般式(7)において、Gは一般式(9)で表されるエポキシイソシアヌル基、R
1はメチル基、R
2がプロピレン基、l=1、m=1となる原料を使用することが好ましい。また、Xが一般式(2)又は一般式(3)であることがよく、一般式(2)中のR
3がメチル基、0≦h≦20、一般式(3)中のR
4がメチル基、i=1、j=1となる原料を使用することが好ましい。また、一般式(16)または一般式(17)で表される両末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサンは、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記Si-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を少なくとも1つ以上有し、かつSi-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するものである。例えば、o−アリルフェニルグリシジルエーテル、2−アリル−4−メチルフェニルグリシジルエーテル、2−アリル−5−メチルフェニルグリシジルエーテル、2−アリル−6−メチルフェニルグリシジルエーテルなどの単環型エポキシ樹脂およびその核水素化エポキシ樹脂、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンオキシド、1,4−ジメチルー4−ビニルシクロヘキセンオキシド、4−ビニル−1−シクロヘキセン−1,2−オキシド、ビニルノルボルネンモノオキシド、ジシクロペンタジエンモノオキシドなどの環状構造を含むオレフィン化合物から誘導されるエポキシ樹脂、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどの環構造中にヘテロ原子を含むエポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのエポキシ樹脂は2種以上を併用して反応に用いても良い。この中で、特に好ましいSi-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を1分子中に1つ有するエポキシ樹脂は、上記一般式(9)で表わされる有機基を与えるモノアリルジグリシジルイソシアヌレートである。
【0025】
上記以外の方法、例えば、両末端Si-H基含有環状オルガノシロキサン、両末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートを一括で仕込んでヒドロシリル化反応を行ったり、Si-H基と反応性を有する炭素―炭素2重結合を有する成分である両末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートを混合して仕込み、ついで両末端Si-H基含有ポリオルガノシロキサンを仕込んでヒドロシリル化反応を行った場合は、ヒドロシリル化反応の反応速度がモノアリルジグリシジルイソシアヌレートに対して両末端ビニル基含有ポリオルガノシロキサンの方が著しく早いため、反応系内にエポキシ基を有さないシロキサン樹脂が選択的に生成しやすくなる。このため、得られるエポキシシリコーン樹脂が相分離を起こし白濁し、透明性が失われること、また白濁を生じなくとも、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物の効果が得られないため好ましくない。
【0026】
ヒドロシリル付加反応は、貴金属触媒の存在下で進行することが広く知られている。触媒としては、公知のものであれば種々の貴金属又はその錯体化合物を使用することができる。貴金属触媒としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム又はイリジウムなどが挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上用いても良い。また、これらの金属を微粒子状担体材料、例えばカーボン、活性炭、酸化アルミニウム、シリカなどに固定化されたものを用いても良い。
【0027】
貴金属の錯体化合物としては、白金ハロゲン化合物(PtCl
4、H
2PtCl
6・6H
2O、Na
2PtCl
6・4H
2O等)、白金―オレフィン錯体、白金―アルコール錯体、白金―アルコラート錯体、白金―エーテル錯体、白金―カルボニル錯体、白金―ケトン錯体、白金―1,3−ジビニルー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどの白金―ビニルシロキサン錯体、ビス(γ―ピコリン)―白金ジクロライド、トリメチレンジピリジン−白金ジクロライド、ジシクロペンタジエン−白金ジクロライド、シクロオクタジエン−白金ジクロライド、シクロペンタジエン−白金ジクロライド、ビス(アルキニル)ビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体、ビス(アルキニル)(シクロオクタジエン)白金錯体、塩化ロジウム、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロライド、テトラキスアンモニウムーロジウムクロライド錯体などが挙げられるが特に限定されず、必要に応じて2種以上使用してもよい。
【0028】
上記貴金属触媒はそれぞれ単独で、あるいは溶解する溶媒にあらかじめ溶解させた後、仕込んでもよい。貴金属触媒の使用割合は特に限定されないが、通常反応に用いた原料の合計重量に対して、0.1ppm〜100000ppm、好ましくは1ppmから10000ppmの範囲である。
【0029】
ヒドロシリル付加反応は、無溶媒でも反応を行うことができるが、必要に応じて有機溶媒にて反応系を希釈してもよく、反応に悪影響を与える化合物でなければ特に制限されない。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの脂肪族ケトン類、ベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸−n−ブチルなどのエステル類が挙げられる。これらの有機溶媒は、2種以上を選択して混合溶媒として使用してもよい。
【0030】
ヒドロシリル付加反応における温度条件については、特に限定されないが、通常0℃〜200℃、好ましくは30℃〜180℃である。0℃以下では反応の進行に時間を要し経済的ではない。200℃以上で反応を行うとエポキシ基とヒドロシリル部位との付加反応が進行し、反応をコントロールすることが困難となる。
【0031】
次に、一般式(7)で表される多官能エポキシシリコーン化合物と重合性不飽和基を少なくとも1つ以上含有するカルボン酸との反応について説明する。上記の多官能エポキシシリコーン化合物と重合性不飽和基を少なくとも1つ以上含有するカルボン酸との反応は、公知の方法を使用することができ、例えばエポキシ基1モルに対し、等モルのアクリル酸を使用して行う。この反応で得られる反応物は、重合性不飽和基と水酸基とを有するエポキシアクリレート化合物である。また、この場合の重合性不飽和基を少なくとも1つ以上含有するカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸、下記一般式(18)に示すようなアクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸又はその酸一無水物との反応で得られる重合性不飽和基を有するモノエステル類が挙げられる。
【化23】
(但し、R
22は水素原子又はメチル基を示し、R
23は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、内部にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。M
2は2価のカルボン酸残基を示す。)
【0032】
次に、重合性不飽和基と水酸基とを有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物と、ジカルボン酸又はその酸一無水物の反応による一般式(1)で表される本発明のアルカリ可溶性樹脂の製造方法を説明する。
【0033】
前述のエポキシシリコーン化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られた重合性不飽和基及び水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物と酸成分とを反応させて、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得る。この際使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等であるのがよい。また、使用する触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等の公知のものを使用することができる。これらについては特開平9-325494号公報に詳細に記載されている。また、酸成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中の水酸基と反応し得る酸一無水物を使用するのがよい。ここで、酸一無水物としては、飽和直鎖炭化水素ジカルボン酸の酸無水物、飽和環状炭化水素ジカルボン酸の酸無水物、芳香族ジカルボン酸の酸無水物等を使用することができる。このうち、飽和直鎖炭化水素ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の無水物を挙げることができ、更には炭化水素基が置換された直鎖炭化水素ジカルボン酸無水物でもよい。また、飽和環状炭化水素ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸無水物を挙げることができ、更には飽和炭化水素基が置換された脂環式ジカルボン酸の酸無水物でもよい。また、不飽和ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸の酸無水物挙げることができる。これらのなかで、酸一無水物として好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸の無水物であり、さらに好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸の無水物である。
【0034】
重合性不飽和基及び水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物と酸成分とを反応させて、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成する際の反応温度としては、20〜140℃の範囲が好ましく、より好ましくは40〜130℃である。一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成する際の酸一無水物のモル比は、前記重合性不飽和基及び水酸基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物中の水酸基に対して10〜100モル%であるのがよい。酸一無水物のモル比は前記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価を調整する目的で、上述の範囲で任意に変更できる。
【0035】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂を樹脂成分の主成分として含有する。ここで、樹脂成分とは、重合又は硬化させることにより樹脂となる成分をいい、光又は熱によって重合又は硬化するエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、樹脂成分には、樹脂の他、オリゴマー、モノマーを含む。更に、主成分として含有するとは、一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂が樹脂成分中に30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含まれることをいう。本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を必須成分として含めばよく、一般式(1)の樹脂以外の成分は樹脂成分であってもよく、溶剤や充填材や着色剤等の非樹脂成分であってもよい。
【0036】
感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(i)、(ii)及び(iii)成分を必須の成分として含有する。すなわち、(i)一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂、(ii)少なくとも1個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマー、(iii)光重合開始剤を必須の成分として含む。
【0037】
このうち、(ii)成分である少なくとも1個以上の重合性不飽和基を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができる。これらの化合物は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0038】
これら(ii)成分と一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂〔(i)成分〕との配合割合(質量比)[(i)/(ii)]については、20/80〜90/10であるのがよく、好ましくは40/60〜80/20であるのがよい。アルカリ可溶性樹脂の配合割合が少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる。反対に、アルカリ可溶性樹脂の配合割合が上記範囲より多くなると、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、また、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細くなったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じるおそれがある。
【0039】
また、成分(iii)の光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0040】
(iii)成分の光重合開始剤の使用量は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂〔(i)成分〕及び光重合性モノマー〔(ii)成分〕の合計100質量部を基準として2〜50質量部であるのがよく、好ましくは15〜40質量部であるのがよい。(ii)成分に対する光重合開始剤の配合割合が少ないと、光重合の速度が遅くなって感度が低下する。反対に多過ぎると、感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太くなった状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又はパターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じるおそれがある。なお、(iii)の光重合開始剤には光増感作用を併せ持つものも含まれるが、別途光増感剤を添加してもなんらさしつかえない。
【0041】
(i)成分の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(ii)成分の光重合性モノマー、及び(iii)成分の光重合開始剤を必須成分として含む感光性樹脂組成物は、必要により溶剤に溶解させたり、各種添加剤を配合して用いることもできる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター用等に使用する場合においては、上記必須成分の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。溶剤は1種類でも2種類以上を使用してもよい。
【0042】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。このうち、熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができる。カップリング剤としてはシランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができる。また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(i)の一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、(ii)の光重合性モノマー、及び(iii)光重合開始剤が合計で70質量%以上、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、全体量に対して20〜80質量%の範囲が望ましい。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂以外の樹脂成分として、光又は熱によって重合又は硬化するその他の樹脂成分を併用してもよい。その他の樹脂成分としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシシリコーン樹脂等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシアクリレート、エポキシシリコーン樹脂のエポキシアクリレート等のアクリル樹脂、ポリ(ジアリルフタレート)、ポリ(ジビニルベンゼン)等のアリル基又はビニル基含有樹脂等が挙げられる。耐候性、耐光性、耐熱性与えるためには、エポキシシリコーン樹脂、エポキシシリコーン樹脂のエポキシアクリレート等のシリコーン化合物が好ましい。
【0045】
また、本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、上記感光性樹脂組成物の溶液を所定の基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0046】
次に、感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法について説明する。まず、基板等の表面上に、感光性樹脂組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、パターンを形成する。
【0047】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、塗膜が形成される。プレベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜20分間行われる。
【0048】
パターン形成する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が250〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液等の水酸化アンモニウム類、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等の水酸化アンモニウム類、ジエチルアミン、ジエタノールアミン等のアミン類を0.05〜10質量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で10〜300秒が好ましい。
【0049】
このようにして現像した後、180〜250℃の温度及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプレベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた塗膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0050】
パターンを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)等が挙げられる。また、これら基板には、必要に応じて、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【実施例】
【0051】
以下に、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂、およびそれを用いた感光性樹脂組成物の実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によりその範囲を限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0052】
[固形分濃度]
実施例(及び比較例)中で得られた樹脂溶液(反応生成物やアルカリ可溶性樹脂の場合を含む)1gをガラスフィルター〔質量:W
0(g)〕に含浸させて秤量し〔W
1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の質量〔W
2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(質量%)=100×(W
2―W
0)/(W
1―W
0)
【0053】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置(平沼製作所(株)製 商品名COM-1600)を用いて1/10N−過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0054】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置(平沼製作所(株)製 商品名COM-1600)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0055】
[分子量]
テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)にて標準ポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
【0056】
また、実施例及び比較例で使用する略号は次のとおりである。
FHPA:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物と、アクリル酸との等当量反応物(固形分濃度50wt%のPGMEA溶液)
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0057】
[実施例1]
窒素導入管及び還流管付き2000ml四つ口フラスコ中に、分子内にSi-H基を2個含有する環状ポリジメチルシロキサン(Si-H基として1.0当量)134g、ジオキサン350g、及びカーボン粉末に担持された白金触媒(白金濃度3%)0.70gを仕込み、撹拌しながら内温を100℃まで昇温した後、両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン135g(ビニル基として0.56当量)を1時間かけて投入した。GPCにより分子量の増大が停止したことを確認後、N−アリル−N',N"−ジグリシジルイソシアヌレート124g(ビニル基として0.44当量)をジオキサン124gに溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、N−アリル−N',N"−ジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認し、残存する白金触媒をセライトにてろ過した。エバポレーターにてろ液の溶媒を留去することで、一般式(7)のエポキシシリコーン樹脂(ES1)347gを得た。得られたエポキシシリコーン樹脂は、一般式(7)におけるl、mが共に1であり、nの平均値が1.3であり、R
1がメチル基、R
2がプロピレン基である内部に直鎖シロキサン結合と環状シロキサン結合を有し、かつ末端にエポキシ基を有する。また、得られたエポキシシリコーン樹脂のエポキシ当量は439g/eq、粘度は25℃で30Pa・sであった。
【0058】
次いで、還流管付き500ml四つ口フラスコ中に上記エポキシシリコーン樹脂150gにアクリル酸24.62g(0.34mol)、PGMEAを184.98g、及びTPPを0.90g仕込み、100〜105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。更に、フラスコ内にTHPAを39.00g(0.26mol)仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)-1を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂溶液の固形分は53.7wt%、酸価(固形分換算)は74.7mgKOH/g、GPCによるMwは2740であった。また、得られたアルカリ可溶性樹脂のIR測定から、1732cm
-1(エステル結合)、1409 cm
-1(ビニル基)、1186 cm
-1(カルボキシル基)にピークが観測された。これより、重合性不飽和基とカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂であることを確認した。
【0059】
[実施例2]
窒素導入管及び還流管付き500ml四つ口フラスコ中に、分子内にSi-H基を2個含有する環状ポリジメチルシロキサン(Si-H基として0.50当量)66g、ジオキサン300g、及びカーボン粉末に担持された白金触媒(白金濃度3%)0.64gを仕込み、撹拌しながら内温を100℃まで昇温した後、両末端がビニル基であるポリジメチルシロキサン46g(ビニル基として0.20当量)を1時間かけて投入した。GPCにより分子量の増大が停止したことを確認後、N−アリル−N',N"−ジグリシジルイソシアヌレート88g(ビニル基として0.32当量)をジオキサン88gに溶解させた溶液を1時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら反応を行った。GPCにて反応追跡を行い、N−アリル−N',N"−ジグリシジルイソシアヌレートのピークが消失したこと、0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認し、残存する白金触媒をセライトにてろ過した。エバポレーターにてろ液の溶媒を留去することで、一般式(7)のエポキシシリコーン樹脂(ES2)182gを得た。得られたエポキシシリコーン樹脂は、一般式(7)におけるl、mが共に1であり、nの平均値が0.7であり、R
1がメチル基、R
2がプロピレン基である内部に直鎖シロキサン結合と環状シロキサン結合を有し、かつ末端にエポキシ基を有する。また、得られたエポキシシリコーン樹脂のエポキシ当量は313g/eq、粘度は25℃で200Pa・sであった。
【0060】
次いで、還流管付き500ml四つ口フラスコ中に上記エポキシシリコーン樹脂150gにアクリル酸34.53g(0.48mol)、PGMEAを209.90g、及びTPPを1.27g仕込み、100〜105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。更に、フラスコ内にTHPAを54.69g(0.36mol)仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)-2を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂溶液の固形分は53.4wt%、酸価(固形分換算)は91.6mgKOH/g、GPC分析によるMwは2430であった。また、得られたアルカリ可溶性樹脂のIR測定から、1731cm
-1(エステル結合)、1410 cm
-1(ビニル基)、1187 cm
-1(カルボキシル基)にピークが観測された。これより、重合性不飽和基とカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂であることを確認した。
【0061】
[比較例1]
窒素導入管及び還流管付き1000ml四つ口フラスコ中に両末端がSi-H基であるポリジメチルシロキサン(Si-H当量215g/eq)152g、ジオキサン152g、及びカーボン粉末に担持された白金触媒(白金濃度5%)0.36gを仕込み、内温を90℃まで昇温した後、N−アリル−N',N"−ジグリシジルイソシアヌレート200gを3時間かけて投入した。投入終了後、内温を110℃まで昇温し、ジオキサンを還流させながら加熱撹拌を行った。0.1Nの水酸化カリウム/メタノール溶液に反応液を滴下し、水素ガスの発生がなくなったことを確認し、残存する白金触媒をセライトにてろ過した。エバポレーターにてろ液の溶媒を留去することで、下記一般式(19)のエポキシシリコーン樹脂(ES3)324gを得た。得られたエポキシシリコーン樹脂は、一般式(19)におけるR
24がメチル基であり、aが4であって内部に直鎖シロキサン結合とイソシアヌル環骨格を有し、かつ末端にエポキシ基を有する。また、得られたエポキシシリコーン樹脂のエポキシ当量は237g/eq、粘度は25℃で20Pa・sであった。
【化24】
【0062】
次いで、還流管付き1000ml四つ口フラスコ中に上記エポキシシリコーン樹脂150gにアクリル酸45.61g(0.63mol)、PGMEAを224.29g、及びTPPを0.83g仕込み、100〜105℃で加熱下に20hr撹拌して反応させた。更に、フラスコ内にTHPAを72.22g(0.47mol)仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)-3を得た。得られたアルカリ可溶性樹脂溶液の固形分は54.7wt%、酸価(固形分換算)は101.1mgKOH/g、GPCによるMwは1800であった。また、得られたアルカリ可溶性樹脂のIR測定から、1730cm
-1(エステル結合)、1410 cm
-1(ビニル基)、1188 cm
-1(カルボキシル基)にピークが観測された。これより、重合性不飽和基とカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂であることを確認した。
【0063】
[比較例2]
還留冷却器付き1000ml四つ口フラスコ中にFHPAの50%PGMEA溶液を412.52g(0.34mol)、BPDAを50.02g(0.17mol)、THPAを25.87g(0.17mol)、PGMEAを52.0g及びTPPを0.90g仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)-4を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は103.0mgKOH/g、GPCによるMwは2600であった。また、得られたアルカリ可溶性樹脂のIR測定から、1731cm
-1(エステル結合)、1407 cm
-1(ビニル基)、1181 cm
-1(カルボキシル基)にピークが観測された。これより、重合性不飽和基とカルボキシル基を有するアルカリ可溶性樹脂であることを確認した。
【0064】
次に、本発明のアルカリ可溶性樹脂を用いた感光性樹脂組成物及びその硬化物の製造に係る実施例及び比較例を示す。ここで、以降の実施例及び比較例の感光性樹脂組成物及びその硬化物の製造で用いた原料及び略号は以下の通りである。
【0065】
(i)-1成分:上記実施例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(i)-2成分:上記実施例2で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(i)-3成分:上記比較例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(i)-4成分:上記比較例2で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(ii)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii)-1成分:光重合開始剤(チバスペシャリティケミカルズ製、イルガキュア907)
(iii)-2成分:4,4'ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(光増感剤)
(iv)-1成分:テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂
(iv)-2成分:実施例2で得られたエポキシシリコーン樹脂(ES2)
溶剤-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
溶剤-2:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
添加剤-1:シランカップリング剤(東レダウコーニング製SH-6040)
添加剤-2:界面活性剤(住友3M社製FC-430)
【0066】
上記の配合成分を表1に示す割合で配合して、実施例3〜5及び比較例3〜4の感光性樹脂組成物を調製した。尚、表1中の数値はすべて質量部を表す。
【0067】
【表1】
【0068】
[アルカリ現像性]
表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が3.8〜4.2μmとなるように塗布し、80℃で3分間プレベークして塗布板を作成した。その後、出力3.5kW/cm
2、波長365nmの照度32mW/cm
2の高圧水銀ランプで250mJ/cm
2(i線基準)の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗布板を23℃の0.8wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中、又は23℃の0.35wt%ジエタノールアミン水溶液中、ディップ現像にて現像を行い、さらに水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて180℃、90分間加熱硬化処理を行って、実施例3〜5、及び比較例3〜4に係るパターンを得た。
【0069】
上記で得られた実施例3〜5、及び比較例3〜4の感光性樹脂組成物からなるパターンについて、現像性及び現像マージン等を評価した結果を表2に示す。これらの評価方法は以下の通りに行った。
【0070】
膜厚:
触針式段差形状測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製 商品名P-10)を用いて測定した。
【0071】
現像時間:
アルカリ現像時、塗膜の未露光部が全て溶解するのに要した時間を記録し、現像時間が300秒を超えてもパターンが見えない場合は×とした。
【0072】
テーパー形状:
現像後のパターンを、走査型電子顕微鏡((株)KEYENCE製 商品名VE-7800)を用いて観察し、パターンの断面形状が滑らかな順テーパーを維持している場合は○、逆テーパーや剥がれが生じた場合は×とした。
【0073】
ライン形状:
現像後の10μm線について測長顕微鏡((株)ニコン製 商品名XD-20)でパターン部の直線性やフリンジなどの有無を評価した。そこで、直線性がよく、フリンジなどが発生していないものに関しては○<良好>とし、フリンジなどが発生し、直線性の悪いものを×<不良>と評価した。各項目とも非常に良好な場合に限り◎と評価した。
【0074】
【表2】
【0075】
[透過率]
また、表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が3.8〜4.2μmとなるように塗布し、90℃で3分間プレベークして塗布板を作成した。その後、出力3.5
kW/cm
2、波長365nmの照度32mW/cm
2の高圧水銀ランプで250mJ/cm
2(i線基準)の紫外線を照射して光硬化反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間加熱硬化処理を行って、実施例3〜5、及び比較例3〜4に係る硬化膜を得た。そして、得られた塗布板を透過率計(日本電色工業製 商品名SPECTRO PHOTOMETER SD5000)を用いて透過率を測定し、波長380nmでの透過率が90%以上の場合に○、90%未満の場合に×と評価した。
【0076】
[耐光性]
また、透過率を測定した硬化膜に、110W/cm
2の低圧水銀ランプで波長254nmの照度12mW/cm
2の紫外線をガラス面から4時間照射した。そして、照射後の塗布板を透過率計(日本電色工業製 商品名SPECTRO PHOTOMETER SD5000)を用いて透過率を測定し、波長380nmでの透過率が90%以上の場合に○、90%未満の場合に×と評価した。
【0077】
[機械的物性]
更には、表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmの離型剤を塗布したアルミニウム基板上にポストベーク後の膜厚が28〜32μmとなるように塗布し、110℃で10分間プレベークして塗布板を作成した。その後、出力3.5kW/cm
2、波長365nmの照度32mW/cm
2の高圧水銀ランプで250mJ/cm
2(i線基準)の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗布板を25℃の0.8wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中、ディップ現像にて現像を行い、さらに水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて180℃、90分間加熱硬化処理を行った。更に、加熱硬化処理後の塗布板を80℃の熱水に浸漬し、塗膜をアルミニウム基板から剥離して実施例3〜5、及び比較例3〜4に係る硬化フィルムを得た。そして、上記の硬化フィルムのガラス転移点及び線膨張係数を熱機械的分析装置(SII(株)製 EXSTAR 6000)を用いて測定した。ガラス転移点が140℃以上の場合に○、140℃未満の場合に×とした。線膨張係数が150ppm未満の場合に○、150ppm以上の場合に×とした。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
上記表2及び表3の結果から明らかなように、実施例3〜5に係る硬化物は各性能に優れており、特に、実施例3〜5の硬化物は、比較例3〜4と同等の現像性及び密着性を維持し、更に、比較例3に対しては高耐熱性、比較例4に対しては高い透過率を有する硬化物を形成できる。すなわち、アルカリ現像性を維持したまま、耐候性、耐光性、耐熱性を有する硬化膜を提供できることが分かった。