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特開2015-97263光半導体発光装置、照明器具、表示装置、及び光半導体発光装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-97263(P2015-97263A)
(43)【公開日】2015年5月21日
(54)【発明の名称】光半導体発光装置、照明器具、表示装置、及び光半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20150424BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20150424BHJP
【FI】
   H01L33/00 410
   H01L33/00 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-209267(P2014-209267)
(22)【出願日】2014年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-214246(P2013-214246)
(32)【優先日】2013年10月11日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山口 健児
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA03
5F142AA04
5F142AA23
5F142BA32
5F142CD01
5F142CG05
5F142CG25
5F142CG26
5F142CG43
5F142DA02
5F142DA12
5F142DA13
5F142DA66
5F142DA73
5F142DB16
5F142FA18
5F142GA11
5F142GA21
(57)【要約】
【課題】白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度を向上させることができる光半導体発光装置及びその製造方法、照明器具並びに表示装置を提供する。
【解決手段】光半導体発光素子10と、蛍光体粒子13と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体12と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、光散乱複合体12が蛍光体粒子13を含むことで光散乱変換層14を形成しており、光散乱変換層14における光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、光半導体発光素子10の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、
前記光散乱複合体が前記蛍光体粒子を含むことで光散乱変換層を形成しており、前記光散乱変換層における前記光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、
前記光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、前記光半導体発光素子の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置。
【請求項2】
光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、
前記蛍光体粒子を含む層により光変換層が形成され、
前記光変換層上に、前記光散乱複合体からなる光散乱層が設けられてなり、前記光散乱層における前記光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、
前記光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、前記光半導体発光素子の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置。
【請求項3】
前記光散乱粒子の少なくとも一部が会合粒子を形成しており、前記会合粒子を含む粒子の平均二次粒子径が前記平均一次粒子径より大きくかつ1000nm以下である請求項1又は2に記載の光半導体発光装置。
【請求項4】
前記光散乱複合体は、波長460nmにおける積分透過率が直線透過率よりも高く、かつその差(積分透過率−直線透過率)が25ポイント以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体発光装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体発光装置を具備してなる照明器具。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体発光装置を具備してなる表示装置。
【請求項7】
光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置の製造方法であって、
前記光散乱複合体は単分散状態の光散乱粒子とマトリックス樹脂組成物とを含有する光散乱組成物を硬化することで形成され、当該光散乱組成物の硬化時において、単分散状態の光散乱粒子の少なくとも一部を会合させて、マトリックス樹脂中で会合粒子を形成する光半導体発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記光散乱組成物は、波長460nmにおける積分透過率が40%以上かつ95%以下であり、波長550nmにおける積分透過率が50%以上である請求項7に記載の光半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体発光装置、照明器具、表示装置、及び光半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色光半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせた白色光半導体発光装置は、青色光半導体発光素子から発光された青色光と蛍光体によって波長変換された光とが合成されて白色(疑似白色)になるものである。このタイプの白色光半導体発光装置には、青色光半導体発光素子と黄色蛍光体とを組み合わせたもの;青色光半導体発光素子に緑色蛍光体と赤色蛍光体とを組み合わせたもの;があるが、光源(光半導体発光素子の発光色)が青色光のため青色成分を多く含んだ白色光となる。特に青色光半導体発光素子と黄色蛍光体とを組み合わせた白色光半導体発光装置は青色成分が非常に多く含まれている。
【0003】
青色光半導体発光素子と蛍光体とを組み合わせた白色光半導体発光装置は、青色成分が多く含まれるため、眼の青色光網膜障害、皮膚への生理的ダメージ、覚醒レベル、自律神経機能、体内時計、メラトニン分泌等への生理的影響が指摘されている。そして、近年、光半導体発光装置の照明用途の市場が拡大し、光半導体発光装置の高輝度化が進んでおり、人体が青色光に曝されることが多くなっている。
【0004】
光半導体発光装置に散乱部位を備えるものとして、白色粉末が塗布された散乱層によって導光板内に光を散乱させて表面輝度を一定とした面状光源(特許文献1)、光源を通過する光を散乱させることで集束、指向、変換させ室内照明に有用とするため白色光を放射状に分散させる方法(特許文献2)、隣り合うLEDデバイスのダークスポットをなくすために封止材に光を散乱させる拡散粒子を含有させる方法(特許文献3)、粒子径2μmから4.5μmの散乱粒子を封止材中で蛍光体と共存させて照明光の色ムラを軽減する方法(特許文献4)等が提案されている。また、ルミネッセンス変換素子の後方に多数のナノ粒子を有するフィルタ素子を配置し、不所望な放射線の少なくとも1つのスペクトル部分領域の放射線強度を吸収によって選択的に低減させる方法(特許文献5)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3116727号公報
【特許文献2】特表2003−515899号公報
【特許文献3】特開2007−317659号公報
【特許文献4】特開2011−150790号公報
【特許文献5】特表2007−507089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれも光半導体発光装置から外部に出る光の分布を均一化したり、色ムラを軽減したりすることが目的であり、外部に出る光の青色光成分を低減するものではない。また、特許文献4の粒子径では光半導体発光素子から発光された光の透光性が悪くなり、光半導体発光装置の輝度が低下する問題がある。また、特許文献5のように吸収によって不所望の放射線強度を低減させた場合、光半導体発光装置の輝度が低下することと、放射線が吸収によって熱に変換され周辺材料へのダメージ、光半導体発光素子の熱による発光効率の低下といった問題が生じる。
【0007】
以上から、本発明は、白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度を向上させることができる光半導体発光装置及びその製造方法、光半導体発光装置を具備する照明器具並びに表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、蛍光体粒子が含有されてなる光変換層に特定の光散乱組成物を含有させるか、又は、光変換層上に特定の光散乱組成物を含有する光散乱層を設けることで、白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度を向上させることができる光半導体発光装置が得られることを見出しており、既に出願を行っている(特願2012−187896)。
ここで、同出願の光散乱組成物が光散乱をおこす原因は、光散乱組成物中に含まれる光散乱粒子により生じるレイリー散乱が主要因であると推測される。このため、光散乱粒子の散乱特性、言い換えれば光散乱粒子の状態が変化しない限り、光散乱組成物における光散乱能は光散乱粒子の含有量増加に比例して増加し、よって光半導体発光装置の輝度も光散乱粒子の含有量に比例して向上すると予想される。しかしながら、本発明者等が更に研究を進めた結果、光散乱粒子の含有量を一定値以下に減らすことにより、光半導体発光装置の輝度が向上することを見出し、本発明に想到した。すなわち、本発明は下記の通りである。
なお、本発明における「積分透過率」とは「積分球で測定した透過率」のことを示し、また「直線透過率」とは「一般的な透過率測定法である直線光で測定した透過率」のことを示す。
【0009】
[1]光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、
前記光散乱複合体が前記蛍光体粒子を含むことで光散乱変換層を形成しており、前記光散乱変換層における前記光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、前記光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、前記光半導体発光素子の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置。
[2] 光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、
前記蛍光体粒子を含む層により光変換層が形成され、前記光変換層上に、前記光散乱複合体からなる光散乱層が設けられてなり、前記光散乱層における前記光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、前記光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、前記光半導体発光素子の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置。
[3] 前記光散乱粒子の少なくとも一部が会合粒子を形成しており、前記会合粒子を含む粒子の平均二次粒子径が前記平均一次粒子径より大きくかつ1000nm以下である上記[1]又は[2]に記載の光半導体発光装置。
[4] 前記光散乱複合体は、波長460nmにおける積分透過率が直線透過率よりも高く、かつその差(積分透過率−直線透過率)が25ポイント以上である上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の光半導体発光装置。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の光半導体発光装置を具備してなる照明器具。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載の光半導体発光装置を具備してなる表示装置。
[7] 光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置の製造方法であって、前記光散乱複合体は単分散状態の光散乱粒子とマトリックス樹脂組成物とを含有する光散乱組成物を硬化することで形成され、当該光散乱組成物の硬化時において、単分散状態の光散乱粒子の少なくとも一部を会合させて、マトリックス樹脂中で会合粒子を形成する光半導体発光装置の製造方法。
[8] 前記光散乱組成物は、波長460nmにおける積分透過率が40%以上かつ95%以下であり、波長550nmにおける積分透過率が50%以上である上記[7]に記載の光半導体発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度を向上させることができる光半導体発光装置及びその製造方法、光半導体発光装置を具備する照明器具並びに表示装置を提供することができる。また、青色光成分が低減されることで、演色性をも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の光半導体発光装置の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の光半導体発光装置の他の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の光半導体発光装置の他の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の光半導体発光装置の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[光半導体発光装置]
本発明の光半導体発光装置は、光半導体発光素子と、蛍光体粒子(単に、「蛍光体」ともいう)と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置であって、(A)前記光散乱複合体が前記蛍光体粒子を含むことで光散乱変換層を形成しており、前記光散乱変換層における前記光散乱粒子の含有量が10質量%以下であり、その光散乱粒子が、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料によって表面修飾され、前記光半導体発光素子の発光波長領域において光の吸収の無い材質からなり、平均一次粒子径3nm以上かつ50nm以下の粒子である光半導体発光装置(以下、「光半導体発光装置A」という)、又は、(B)前記蛍光体粒子を含む層により光変換層が形成され、前記光変換層上に、前記光散乱複合体からなる光散乱層が設けられてなり、前記光散乱層における前記光散乱粒子の含有量が10質量%以下であり、その光散乱粒子が、光半導体発光装置Aと同様の粒子である光半導体発光装置(以下、「光半導体発光装置B」という)である。
なお以下に示す本発明の説明において、単に、「光半導体発光装置」という場合は、「光半導体発光装置A」及び「光半導体発光装置B」の両者を指す。
また、本発明においては、「光半導体発光装置A」と「光半導体発光装置B」とを組み合わせた構造であってもよい。すなわち、光散乱複合体が前記蛍光体粒子を含むことで光散乱変換層を形成し、この光散乱変換層上に、光散乱複合体からなる光散乱層が設けられたものでもよい。
【0013】
本発明の光半導体発光装置における光半導体発光素子と蛍光体との組み合わせとしては、例えば、発光波長460nm前後の青色光半導体発光素子と黄色蛍光体との組み合わせ;発光波長460nm前後の青色光半導体発光素子と赤色蛍光体及び緑色蛍光体との組み合わせ;発光波長340nm以上かつ410nm以下付近の近紫外光半導体発光素子と赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体の三原色蛍光体との組み合わせ;等が挙げられる。この場合の各種光半導体発光素子及び各種蛍光体は公知のものを使用することができる。
また、各種光半導体発光素子、各種蛍光体を封止するための封止樹脂等も公知のものを使用することができる。
なお、以下の説明においては、上記光半導体発光素子と蛍光体との組み合わせにおいて使用される半導体発光素子で発光される各発光波長を有する光のことを、光半導体発光素子の「発光色成分」と称する場合がある。また、当該発光色成分が蛍光体に照射されることにより蛍光体が発する光、すなわち発光色成分が蛍光体により波長変換された光のことを、蛍光体からの「変換光成分」と称する場合がある。
【0014】
本発明の光半導体発光装置A及びBについての態様を図1図4を用いて説明する。
まず、本発明の光半導体発光装置Aの第1の態様は、図1に示すように基板の凹部に光半導体発光素子10が配置され、これを覆うように、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体12中に蛍光体粒子13を含有させた光散乱変換層14が設けられている。このとき、光散乱粒子はマトリックス樹脂中に均一に存在していてもよいが、外部空気相界面(外部空気層との界面)18側により多く存在することが好ましい。外部空気相界面18の表面形状は、特に制約はなく、平坦状、凸状、及び凹状のいずれでもよい。
【0015】
本発明の光半導体発光装置Aの第2の態様は、図2に示すように、光散乱変換層14中の蛍光体粒子13を、図1の場合よりも光半導体発光素子10の近傍に存在させることで、光散乱粒子が蛍光体粒子より外部空気相界面18側により多く存在するようにしたものである。このような態様とすることで、蛍光体粒子13の存在領域を透過した青色光成分の多くを蛍光体粒子13の存在領域へ散乱させて戻すことができるので、白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度をより向上させることができる。
【0016】
本発明の光半導体発光装置Bは、蛍光体粒子を含有する層(光変換層)と光散乱粒子を含有する層(光散乱層)を分けて配置した態様である。光半導体発光装置Bの第1の態様としては、図3に示すように、基板の凹部に光半導体発光素子10が配置され、これを覆うように、蛍光体粒子13をマトリックス材15中に含有する光変換層16が設けられ、この光変換層16上、すなわち光変換層16の外部空気相界面18側に、光散乱粒子とマトリックス樹脂とを含有する光散乱複合体12からなる光散乱層17が設けられている。
このような態様とすることで、光変換層16を透過した青色光成分の多くを、光散乱層17により散乱させて光変換層16へ戻すことができるので、白色光とともに発せられる青色光成分を低減させ、輝度をより向上させることができる。
【0017】
本発明の光半導体発光装置Bの第2の態様は、図4に示すように、光半導体発光素子10を覆うように封止樹脂からなる封止樹脂層11が設けられ、封止樹脂層11上に、光変換層16及び光散乱層17が順次積層されている。
【0018】
光半導体発光装置Bにおいて、光変換層と光散乱層との厚みについては、本発明の効果が得られれば特に制約はないが、青色成分をより低減したい場合は光散乱層の厚みをより厚くすることが好ましく、光半導体発光装置を所望の演色性に調整する場合に用いる蛍光体の波長変換効率、添加量を鑑みて光散乱層の厚さを設計すればよい。
【0019】
光散乱粒子を構成する表面修飾前の粒子(以下「非修飾粒子」という)としては、無機粒子、有機樹脂粒子、有機樹脂粒子中に無機粒子を分散複合化した粒子等が挙げられる。ここで、光散乱粒子は、マトリックス樹脂中の分散状態やマトリックス樹脂との界面親和性、さらにはマトリックス樹脂組成物中の分散状態やマトリックス樹脂組成物との界面親和性を制御する必要がある。また、光散乱粒子をマトリックス樹脂中に分散させるためには、光散乱粒子が単分散状態で分散している分散液を用いることが好ましい。このように、非修飾粒子は表面改質が容易であることが好ましいことから、無機粒子が好ましい。さらに、白色光半導体発光装置に用いられる青色光半導体発光素子の発光波長領域(波長400nm以上かつ480nm以下、特に、波長460nm)、または近紫外光半導体発光素子の発光波長領域(波長340nm以上かつ410nm以下)での光の吸収の無い材質であるZrO、TiO、ZnO、Al、SiO、CeO等の金属酸化物粒子が好ましい。特に、光半導体発光素子からの光取出効率を向上できることから、屈折率が高いZrO及びTiOが好ましい。
ここで、「光の吸収が無い」とは、非修飾粒子が有機樹脂粒子である場合には、1mm厚に成形した試料片を分光光度計で測定した際に、前記測定波長における透過率が90%以上であることを意味する。非修飾粒子が無機粒子である場合、例えば、金属酸化物の光学特性は、例えば、化学辞典、化学便覧等により確認することができる。
【0020】
光散乱粒子の平均一次粒子径は、3nm以上かつ50nm以下である。当該平均一次粒子径は、4nm以上かつ40nm以下であることが好ましく、5nm以上かつ20nm以下であることがより好ましい。平均一次粒子径が3nm未満では、散乱効果が小さいため、光半導体発光素子からの発光色成分の内、外部空気相とは異なる方向へ散乱される光が少なくなる。このため、発光色成分の多くが外部空気相に出てしまい、その結果蛍光体粒子に照射される発光色成分も増加せず蛍光体によって波長変換された光成分の光量も増加しないため、光散乱粒子を添加する効果が得られない。一方、50nmを超えると、特に後述の会合粒子が形成された場合に散乱が大きくなり過ぎるために、光半導体発光素子からの発光色成分のみならず蛍光体によって波長変換された変換光成分も外部空気相に出ず、光半導体発光装置の輝度が低下してしまう。
【0021】
本発明における光散乱粒子は、光散乱複合体が形成された状態、すなわち光散乱変換層中や光散乱層中においては、少なくとも一部が複数個の粒子が会合した会合粒子を形成していることが好ましい。この会合粒子の粒子径は単分散粒子(非会合粒子)の粒子径より大きくなるから、光に対する散乱能も高くなり、よって全粒子が非会合の単分散粒子で形成される場合に比べ、より少量の光散乱粒子で十分な散乱能を有することができるようになる。すなわち、光散乱複合体が含まれる光散乱変換層、又は光散乱複合体により構成される光散乱層中における光散乱粒子の割合を10質量%以下としても、光散乱複合体の波長460nmにおける積分透過率が同波長における直線透過率よりも高く、かつその差(積分透過率−直線透過率)を25ポイント以上とすることができる。その差が40ポイント以上であればより好ましい。
この会合粒子と非会合の単分散粒子を含む全粒子の平均粒子径、すなわち平均二次粒子径は前記平均一次粒子径より大きくかつ1000nm以下であることが好ましく、50nmより大きくかつ1000nm以下であればより好ましく、80nm以上かつ1000nm以下であればさらに好ましく、100nm以上かつ800nm以下であれば最も好ましい。平均二次粒子径が平均一次粒子径と同一では、会合粒子が形成していないことになり、会合粒子を形成させる効果が得られないことがある。また、平均二次粒子径が50nm以下では、全粒子が単分散粒子の場合との差異が少ないために、会合粒子を形成させる効果を得ることができない可能性が高い。一方、1000nmを超えると、粒子としての散乱能が強くなりすぎるために、粒子量自体が下記のように少ない状態であっても、発光色成分のみならず蛍光体によって波長変換された変換光成分も外部空気相に出ず、光半導体発光装置の輝度が低下してしまう虞がある。
【0022】
光散乱粒子の含有量は、光半導体発光装置Aにおいては、光散乱変換層全量に対して0.01質量%以上かつ10質量%以下であり、光半導体発光装置Bにおいては、光散乱層全量に対して0.01質量%以上かつ10質量%以下である。光変換層又は光散乱層中における光散乱粒子の含有量は、0.01質量%以上かつ5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上かつ1質量%以下であることがより好ましい。
各層中の光散乱粒子の含有量が10質量%を超えると、特に会合粒子が形成した場合において光散乱粒子の量が多すぎるために散乱が過大になり、光半導体発光素子からの発光色成分のみならず蛍光体からの変換光成分も外部空気相に出にくくなり、光半導体発光装置の輝度が低下してしまう。一方、各層中の光散乱粒子の含有量が0.01質量%未満では、光散乱粒子の量が少なすぎて光散乱効果が得られず、光半導体発光装置の輝度向上が図れない。すなわち、各層中の光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であることで、各層において、光半導体発光素子からの発光色成分の光散乱性と、発光色成分と変換光成分を合わせての光透過性とのバランスが良く、高輝度の光半導体発光装置とすることができる。
更に、各層中の光散乱粒子の含有量が0.01質量%以上かつ10質量%以下であることで青色光の散乱率が特に高くなる。すなわち、波長460nmの光において、積分透過率の値が、直線透過率の値よりも特に大きくなり、その差(積分透過率−直線透過率)が25ポイント以上とすることができる。これにより、光半導体発光装置における青色光の低減と輝度向上を図ることができる。
【0023】
光散乱複合体に適用されるマトリックス樹脂は、可視光域(光半導体発光素子として近紫外光半導体発光素子を用いる場合には近紫外光域〜可視光域)において透明であって、光半導体発光装置の信頼性(要求される各種性能、例えば、耐久性)を損なわないものであればよい。しかしながら、光半導体発光素子の高出力化、照明用途への適用等を想定した場合、従来から光半導体発光素子封止材として用いられている樹脂を用いることが好ましい。特に耐久性の観点から、マトリックス樹脂は、シリコーン系の封止材を用いることが好ましく、例えば、ジメチルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
これらのシリコーン樹脂は、液状の未硬化体である各シリコーン樹脂組成物を、例えば、付加型反応、縮合型反応、ラジカル重合反応等によって重合硬化させることで得ることができる。さらに、これらのシリコーン樹脂組成物は、重合硬化のための反応基として、H−Si基、アルケニル基、及びアルコキシ基の少なくとも1つを有するシリコーン系の封止材であることが好ましい。
【0024】
光散乱粒子をマトリックス樹脂中に分散させるには、光散乱粒子表面とマトリックス樹脂との界面親和性を確保する必要がある。このため、光散乱粒子を構成する非修飾粒子の表面は、マトリックス樹脂の構造と相性の良い構造の表面修飾材料によって被覆される。
具体的には、マトリックス樹脂を形成するための樹脂モノマーないしはオリゴマーであり、液状の未硬化体であるマトリックス樹脂組成物がマトリックス樹脂を形成する際に、樹脂モノマーないしはオリゴマー同士の重合に用いられる反応基を、表面修飾材料にも有させればよい。ここで、マトリックス樹脂組成物であるシリコーン系の封止材は、反応基としてH−Si基、アルケニル基、及びアルコキシ基の少なくとも1つを有することが好ましい。従って、表面修飾材料には、アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた一つ以上の官能基を有する表面修飾材料を用いる。
【0025】
また、光散乱粒子表面とマトリックス樹脂との界面親和性をより高める、非修飾粒子を表面修飾するプロセスにおいて、より効率的に上記官能基を有する表面修飾材料を修飾する、等のために、上記官能基を有する表面修飾材料以外の公知の表面修飾材料を併用することができる。
【0026】
マトリックス樹脂組成物として、H−Si基、アルケニル基、及びアルコキシ基の少なくとも1つを有するシリコーン系の封止材を用いる場合、表面修飾材料が有するアルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基は、マトリックス樹脂組成物と次のように結合する。
表面修飾材料のアルケニル基は、マトリックス樹脂組成物中のH−Si基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のH−Si基は、マトリックス樹脂組成物中のアルケニル基と反応することにより架橋する。表面修飾材料のアルコキシ基は、マトリックス樹脂組成物中のアルコキシ基と加水分解を経て縮合する。このような結合により、マトリックス樹脂と表面修飾材料とが一体化することから、光散乱変換層や光散乱層が硬化する過程で、光散乱粒子がマトリックス樹脂と相分離することなく、分散状態を維持した状態で光散乱変換層や光散乱層中に固定化でき、また、これらの層の緻密性を向上させることができる。
【0027】
アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた一つ以上の官能基を有する表面修飾材料としては、ビニルトリメトキシシラン、アルコキシ片末端ビニル片末端ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ片末端ビニル片末端フェニルシリコーン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリル酸等炭素−炭素不飽和結合含有脂肪酸、ジメチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、ジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチル、クロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルモノエトキシシラン、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーンレジン、アルコキシ基含有フェニルシリコーンレジン樹脂、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジン等が挙げられる。
【0028】
アルケニル基、H−Si基、及びアルコキシ基から選ばれた1つ以上の官能基を有する表面修飾材料の、非修飾粒子表面への表面修飾量としては、非修飾粒子として金属酸化物粒子を用いた場合、その質量に対して1質量%以上かつ50質量%以下が好ましい。表面修飾量を1質量%以上かつ50質量%の範囲とすることにより、光散乱粒子はマトリックス樹脂組成物に対しては一次粒子の状態が維持された単分散状態での均一な分散が可能となり、一方硬化後の光散乱変換層や光散乱層においては、マトリックス樹脂に対して、光散乱粒子の少なくとも一部が会合粒子を形成した状態で、かつ全体としては均一に分散することが可能となる。従って、高い散乱特性を有する光散乱変換層や光散乱層を得ることができる。
一方、表面修飾量が1質量%未満では、表面修飾材料とマトリックス樹脂組成物間での官能基の結合点が不足するために、光散乱粒子がマトリックス樹脂組成物に対して良好に分散することが難しく、たとえ分散していたとしても、光散乱変換層や光散乱層が硬化する過程で光散乱粒子がマトリックス樹脂相から分離して凝集するために、硬化体である光散乱複合体の光透過性低下、硬度低下等が発生する虞がある。
また、表面修飾量が50質量%を超えた場合、表面修飾材料とマトリックス樹脂組成物間での官能基との結合点が多いことから、光散乱粒子はマトリックス樹脂組成物に対しては一次粒子の状態が維持された単分散状態での均一な分散が可能となるだけでなく、光散乱変換層や光散乱層が硬化する過程でも光散乱粒子の単分散が維持されて部分的な会合が発生しないことがある。このため、光散乱変換層や光散乱層おける会合粒子の形成による光散乱能の向上(より少量の光散乱粒子で十分な散乱能を有する効果)が期待できなくなる。なお、表面修飾量が50質量%を超えかつ80質量%以下の範囲では、会合粒子形成による効果は期待しにくくなるものの、光散乱粒子とマトリックス樹脂間の結合状態は良好に保たれており、光散乱複合体としての特性は維持される。一方、表面修飾量が80質量%を超えると、表面修飾材料とマトリックス樹脂組成物間での官能基の結合点が多くなり過ぎ、硬化体が脆くなってクラックが発生する虞がある。
表面修飾量は、より好ましくは3質量%以上かつ50質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上かつ40質量%以下である。
【0029】
[光半導体発光装置の製造方法]
本発明の光半導体発光装置の製造方法は、光半導体発光素子と、蛍光体粒子と、光散乱粒子及びマトリックス樹脂を含有する光散乱複合体と、を有し、白色光を発する光半導体発光装置の製造方法であり、該光散乱複合体は単分散状態の光散乱粒子とマトリックス樹脂組成物とを含有する光散乱組成物を硬化することで形成され、当該光散乱組成物の硬化時において、単分散状態の光散乱粒子の少なくとも一部を会合させて、マトリックス樹脂中で会合粒子を形成することにより行なわれる。
【0030】
始めに、光散乱粒子となる非修飾粒子を用意する。この粒子の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を用いて製造すればよい。また粒子特性等の条件が合えば、市販の粒子を使用することもできる。
【0031】
次に、非修飾粒子の表面を表面修飾材料により修飾する。
非修飾粒子表面への表面修飾材料の修飾方法は、非修飾粒子に直接、表面修飾材料を混合、噴霧等する乾式方法、表面修飾材料を溶解させた水及び/又は有機溶剤に非修飾粒子を投入し、溶媒中で表面修飾する湿式方法等が挙げられる。本発明においては、表面修飾量の制御性に優れること、表面修飾の均一性が高い点等から、湿式方式を用いることが好ましい。
【0032】
光散乱複合体は、上記のようにして表面修飾された表面修飾粒子である光散乱粒子とマトリックス樹脂組成物とを混合した後、この混合物を硬化することにより得られる。散乱性の観点から、光散乱粒子は、少なくともその一部が会合粒子を形成した状態で、マトリックス樹脂中に全体としては均一に分散していることが好ましい。
【0033】
まず、光散乱粒子をマトリックス樹脂組成物中に均一に混合分散させ、光散乱組成物を得る。混合分散方法としては、光散乱粒子とマトリックス樹脂組成物とを二軸混錬機等の機械的方法によって混合して分散させる方法、光散乱粒子を有機溶媒中に分散させた分散液とマトリックス樹脂組成物を混合した後、有機溶媒を乾燥除去する方法等がある。
【0034】
このようにして得られた光散乱組成物においては、光散乱粒子は凝集や会合を起こしておらず、一次粒子の状態が維持された単分散状態であることが好ましい。その理由として、光散乱組成物中に凝集粒子や会合粒子が存在すると、光散乱組成物の硬化時に再凝集や再会合を起こしやすく、結果として光散乱粒子が大径化して青色光だけでなく白色光に対する散乱性が高くなったり、極端な場合には光散乱粒子の集合体が樹脂相と相分離をひき起こすために、光半導体発光装置の輝度向上が図れなくなる虞がある。
光散乱粒子が単分散状態を維持した光散乱組成物を得るためには、光散乱粒子を有機溶媒中に単分散させた分散液とマトリックス樹脂組成物を混合した後、有機溶媒を乾燥除去する方法を用いることが好ましい。光散乱粒子分散液とマトリックス樹脂組成物との混合であれば、液状体同士の混合であるために、両者は容易に混合し均一化することができる。
ここで、光散乱組成物及び光散乱粒子の分散液における光散乱粒子の存在状態は、その分散粒子径を測定することにより確認できる。すなわち、光散乱粒子の平均分散粒子径が平均一次粒子径と同等の3nm以上かつ50nm以下であれば、光散乱組成物や光散乱粒子の分散液における光散乱粒子は単分散状態が維持されていると判断できる。このような、液体中の分散粒子の平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いて測定すればよい。
【0035】
本発明における光散乱組成物の波長460nmにおける積分透過率は、40%以上かつ95%以下とすることが好ましい。波長460nmにおける積分透過率が40%以上であることで光全体の透光性の低下を防ぎ光半導体発光装置の輝度を向上させることができる。また、積分透過率が95%以下であれば光半導体発光素子の発光色成分の大半が外部空気相とは異なる方向に散乱されて蛍光体に照射されるため、蛍光体によって波長変換されなかった光半導体発光素子の発光色成分が外部空気相に多く出てしまうことを防ぎ、光半導体発光装置の演色性を向上させることができる。波長460nmにおける透過率は、より好ましくは45%以上かつ90%以下であり、さらに好ましくは50%以上かつ85%以下である。
【0036】
また、波長550nmにおける積分透過率は50%以上であることが好ましい。透過率が50%以上であることで光半導体発光素子の発光色成分とその発光色成分が蛍光体によって波長変換された変換光成分とが合成された白色光の透光性が低下するのを防ぎ、光半導体発光装置の輝度を向上させることができる。波長550nmにおける透過率は、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
上記のような透過率を得るには、光散乱粒子の粒子径及び/又は量を調整すればよい。
以上のようにして得られた光散乱組成物を光変換層の上に塗布又は注入し、次いで硬化して、光散乱複合体からなる光散乱層を形成することで、本発明に係る光半導体発光装置Bが作製される。あるいは、本発明の光散乱組成物中に蛍光体粒子を混合し、光半導体発光素子の上に塗布又は注入し、次いで硬化して、蛍光体を含む光散乱複合体からなる光散乱変換層を形成することで、本発明に係る光半導体発光装置Aが作製される。硬化には、例えば前記のように付加型反応、縮合型反応、ラジカル重合反応等による重合硬化反応を挙げることができる。この重合反応は、加熱、光照射等の外部エネルギーの付与、触媒(重合剤)の添加等により行うことができる。
【0037】
この硬化時において、光散乱組成物に単分散している光散乱粒子の少なくとも一部を会合させて、マトリックス樹脂中で会合粒子を形成する。
会合粒子の形成は、前記の通り、光散乱粒子における表面修飾量を50質量%以下と少なめとし、マトリックス樹脂(組成物)と光散乱粒子間の親和性を抑えることで、相対的に光散乱粒子同士の結合力を強めることで達成できる。また、光散乱組成物の硬化速度を遅くし、硬化途中の光散乱組成物中で光散乱粒子が移動できる状態を維持することにより、光散乱粒子同士の凝集力及び/又はマトリックス樹脂における他成分の排斥力を使用して、光散乱粒子の会合度を高めてもよい。
【0038】
このようにして形成された会合粒子と、非会合状態で維持された単分散粒子とを併せた全粒子の平均粒子径、すなわち平均二次粒子径は平均一次粒子径より大きくかつ1000nm以下であることが好ましく、50nmより大きくかつ1000nm以下であればより好ましく、80nm以上かつ1000nm以下であればさらに好ましく、100nm以上かつ800nm以下であれば最も好ましい。
なお、平均二次粒子径の測定方法であるが、光散乱複合体が硬化物であるために、動的光散乱法による測定は困難である。一方、光散乱粒子はマトリックス樹脂中で固定されているから、光散乱複合体を加工しても会合状態は変化しない。そこで、例えば、光散乱複合体の薄片化試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、個別に存在している光散乱粒子についてはその粒子径をそのまま二次粒子径とする。一方、複数個の光散乱粒子が重なって見える部分はその全体をもって会合粒子と判断し、会合粒子全体の粒子径を二次粒子径として、平均二次粒子径を求めることとする。
【0039】
[照明器具及び表示装置]
本発明の光半導体発光装置は、その優れた特性を生かして各用途に利用することができる。本発明の効果が特に顕著に認められるものとしては、これを具備する各種の照明器具及び表示装置である。
照明器具としては、室内灯、室外灯等の一般照明装置が挙げられる。その他、携帯電話、OA機器等の電子機器のスイッチ部の照明にも適用できる。
【0040】
表示装置としては、例えば携帯電話、携帯情報端末、電子辞書、デジタルカメラ、コンピュータ、薄型テレビ、照明機器及びこれらの周辺機器等のように、小型化、軽量化、薄型化、省電力化、及び太陽光の中でも良好な視認性が得られるような高輝度ならびに良好な演色性が特に求められる機器の表示装置、における発光装置等を挙げることができる。特にコンピュータの表示装置(ディスプレイ)、薄型テレビ等のように長時間にわたって視認する表示装置においては、人体、特に眼に対しての影響を抑えることができるので特に好適である。また、第一の発光素子と第二の発光素子の距離を3mm以下、さらには1mm以下と近づけることにより小型化が可能となることから、15インチ以下の小型表示装置においても好適である。
【実施例】
【0041】
本実施例に係る各種測定方法及び評価方法は下記の通りである。
(表面修飾粒子分散液中の表面修飾粒子における表面修飾量)
表面修飾粒子の表面修飾量は、熱重量分析による測定を基に算出した。試料粉は、表面修飾粒子分散液を遠心分離して表面修飾粒子を取り出し、エバポレータで分散媒を乾燥除去して作製した。得られた試料を熱重量分析し、115℃から500℃までの重量減少量を測定した。なお,115℃未満の重量減少は残留していた分散媒(トルエン)に起因するものとした。得られた(115℃から500℃までの)重量減少量と、表面修飾材料中の揮発成分(C、H、O、及びN)と不揮発成分(Si)の含有量を基に、表面修飾量を算出した。
【0042】
(光散乱組成物の積分透過率の測定)
光散乱組成物の透過率は、光散乱組成物を0.5mmの薄層石英セルに挟んだものを試料とし、分光光度計(V−570、日本分光社製)にて積分球を用いて測定した。波長(λ)460nmにおける透過率が40%以上かつ95%以下、波長(λ)550nmにおける透過率が80%以上を「○」、波長(λ)460nmにおける透過率が40%以上かつ95%以下、波長(λ)550nmにおける透過率が50%以上かつ80%未満を「△」とし、この範囲から外れるものを「×」とした。
なお、分光光度計の反射板の代わりにこの光散乱組成物を挟んだ薄層石英セルを設置し、積分球に戻った反射スペクトルを測定した結果、短波長側での透過率の低下が反射率の増大に対応していたことから、粒子による光の吸収は起こっておらず、粒子による後方散乱が起こっていることを確認した。
【0043】
(光散乱複合体の透過率の測定:積分透過率と直線透過率との比較)
光散乱複合体の透過率は、厚さ1mmの基板状に成形した光散乱複合体を試料とし、分光光度計(V−570、日本分光社製)にて積分球測定および直線測定を行い、波長460nmにおける各透過率の差(積分透過率−直線透過率)が40ポイント以上である場合を青色光の散乱性が良好であるとして「○」、25ポイント以上かつ40ポイント未満である場合を「△」とし、この範囲から外れるものを「×」とした。
【0044】
(光散乱粒子の平均一次粒子径の測定)
光散乱粒子の平均一次粒子径は、X線回折によって得られるシェラー径とした。
【0045】
(光散乱複合体中の光散乱粒子の平均二次粒子径の測定)
光散乱複合体中の光散乱粒子の平均二次粒子径は、光散乱複合体を薄片化したものを試料とし、電解放出型透過電子顕微鏡(JEM−2100F、日本電子社製)で観察し、粒子径を測定することで行った。
ここで、個別に(会合せずに)存在している光散乱粒子については、その粒子自体をもって二次粒子とし、その粒子径を二次粒子径とした。また、複数個の光散乱粒子が重なって見える部分はその全体をもって二次粒子(会合粒子)とし、二次粒子と判断された部分全体の粒子径を二次粒子径とした。このようにして測定した二次粒子径の内50個の粒子の値を無作為に選び出し、その平均値を光散乱複合体中の光散乱粒子の平均二次粒子径とした。
【0046】
(光半導体発光装置の発光スペクトル評価)
光半導体発光装置の発光スペクトルを、分光測光装置(PMA−12、浜松ホトニクス社製)を用いて測定した。ここでは、波長400nmから480nmの発光スペクトルピーク面積をaとし、波長480nmから波長800nmの発光スペクトルピーク面積をbとして、a/bの値により評価した。光散乱粒子を含有しない比較例1及び2を基準とし、実施例1〜4、6〜9、及び比較例3〜4においては、a/bの値が比較例1のa/bの0.9倍以上かつこれ未満のものを「○」、比較例1のa/bの0.6倍以上かつ0.9倍未満のものを「△」とし、比較例1のa/bの0.6倍未満のものを「×」とした。実施例5及び比較例5においては、比較例2のa/b値と比較した。
【0047】
(光半導体発光装置の輝度評価)
光半導体発光装置の輝度を、輝度計(LS−110、コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定した。光散乱粒子を含有しない比較例1及び2を基準とし、実施例1〜4、6〜9、及び比較例3〜4において、輝度が比較例1の輝度より大きいものを「○」、比較例1の輝度の0.8倍以上かつこれと同値のものを「△」、比較例1の輝度の0.8倍未満のものを「×」とした。実施例5及び比較例5においては、比較例2の輝度と比較した。
【0048】
<非修飾粒子の作製>
光散乱粒子を構成する非修飾粒子として、次のジルコニア粒子1〜5及びシリカ粒子を作製した。
【0049】
(ジルコニア粒子1の作製)
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40L(リットル)に溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調製した。
このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えて混合物を得た。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間乾燥させ、固形物を得た。この固形物を自動乳鉢で粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、520℃にて1時間焼成した。
次いで、この焼成物を純水中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥器にて乾燥させ、平均一次粒径5.5nmのジルコニア粒子1を得た。
【0050】
(ジルコニア粒子2の作製)
ジルコニア粒子1の作製における電気炉での焼成温度を520℃から550℃にした以外はジルコニア粒子1と同様にして平均一次粒子径が7.8nmのジルコニア粒子2を作製した。
【0051】
(ジルコニア粒子3の作製)
ジルコニア粒子1の作製における電気炉での焼成温度を520℃から500℃にした以外はジルコニア粒子1と同様にして平均一次粒子径が2.1nmのジルコニア粒子3を作製した。
【0052】
(ジルコニア粒子4の作製)
ジルコニア粒子1の作製における電気炉での焼成温度を520℃から620℃にした以外はジルコニア粒子1と同様にして平均一次粒径が21.1nmのジルコニア粒子4を作製した。
【0053】
(ジルコニア粒子5の作製)
ジルコニア粒子1の作製における電気炉での焼成温度を520℃から660℃にした以外はジルコニア粒子1と同様にして平均一次粒径が48nmのジルコニア粒子5を作製した。
【0054】
(シリカ粒子の作製)
シリカゾル(日産化学工業製 スノーテックスOS)含有のシリカ粒子をそのまま使用した。なお、X線回折測定はゾル状態ではできないこと、また単にゾルを乾燥固化したものでは測定時の取り扱いが不便なことから、実際の測定は後述のシリカ粒子含有乾燥粉体で行った。平均一次粒子径は9.5nmであった。
【0055】
[実施例1]
(表面修飾ジルコニア分散液1の作製)
10gのジルコニア粒子1に、トルエン86g、及びメトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製KR9218)2gを加えて、混合し、ビーズミルで5時間撹拌して、表面修飾処理を行った後、ビーズを除去した。次いで、アルケニル基(ビニル基)基含有修飾材料としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製KBM1003)を2g添加し、130℃にて6時間還流下で修飾及び分散を行い、表面修飾ジルコニア分散液1を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子1の質量に対して40質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液1は透明であった。
【0056】
(光散乱組成物1の作製)
10gの表面修飾ジルコニア分散液1に対して、フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)158.6g(A液31.7g、B液126.9g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物1を得た。得られた光散乱組成物1はほぼ透明であった。この光散乱組成物1の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0057】
(光散乱複合体1の作製)
光散乱組成物1を深さ1mmの凹状の型に流し込み、150℃で2時間加熱硬化させて、厚さ1mmの光散乱複合体1を作製した。得られた光散乱複合体1の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0058】
(光半導体発光装置1の作製)
15gの光散乱組成物1に、10gの黄色蛍光体(Genelite製 GLD(Y)−550A)を添加し、その後、蛍光体含有光散乱組成物1を自公転式ミキサーで混合・脱泡し、蛍光体含有光散乱組成物1を得た。次いで、未封止の青色光半導体発光素子を備えたパッケージの発光素子上に、蛍光体含有光散乱組成物1を滴下した。さらに蛍光体を含有しない光散乱組成物1を、蛍光体含有光散乱組成物1上に蛍光体含有光散乱組成物1と同量滴下した後、150℃で2時間加熱し、光散乱組成物1を硬化させた。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例1の光半導体発光装置1を作製した。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置1の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0059】
[実施例2]
(光散乱組成物2の作製)
実施例2の表面修飾ジルコニア分散液としては、実施例1の表面修飾ジルコニア分散液1をそのまま使用した。
光散乱組成物の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1の量を100g、フェニルシリコーン樹脂(OE−6330)の量を146g(A液29.2g、B液116.8g)とした他は実施例1と同様にして、光散乱組成物2を作製した。得られた光散乱組成物2はほぼ透明であった。この光散乱組成物2の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0060】
(光散乱複合体2の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物2を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体2を作製した。得られた光散乱複合体2の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0061】
(光半導体発光装置2の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物2を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置2を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例2の光半導体発光装置2を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置2の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0062】
[実施例3]
(表面修飾ジルコニア分散液3の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、ジルコニア粒子1に代えてジルコニア粒子2を用い、アルケニル基含有修飾材料に代えてH−Si基含有修飾材料であるメチルジクロロシラン(信越化学工業製 LS−50)を用いたこと、またビーズミルの撹拌時間を5時間とし、還流時間を3時間に変更した他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液3を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子2の質量に対して40質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとメチルジクロロシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液3は透明であった。
【0063】
(光散乱組成物3の作製)
光散乱組成物1の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1に代えて表面修飾ジルコニア分散液3を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱組成物3を作製した。得られた光散乱組成物3はほぼ透明であった。この光散乱組成物3の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0064】
(光散乱複合体3の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物3を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体3を作製した。得られた光散乱複合体3の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0065】
(光半導体発光装置3の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物3を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置3を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例3の光半導体発光装置3を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置3の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0066】
[実施例4]
(表面修飾ジルコニア分散液4の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、アルケニル基含有修飾材料に代えてアルコキシ基含有修飾材料であるテトラエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−04)を用い、ビーズミルの撹拌時間を5時間とし、還流時間を3時間に変更した他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液4を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子1の質量に対して40質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとテトラエトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液4は透明であった。
【0067】
(光散乱組成物4の作製)
光散乱組成物の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1に代えて表面修飾ジルコニア分散液4を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱組成物4を作製した。得られた光散乱組成物4はほぼ透明であった。この光散乱組成物4の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0068】
(光散乱複合体4の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物4を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体4を作製した。得られた光散乱複合体4の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0069】
(光半導体発光装置4の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物4を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置4を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例4の光半導体発光装置4を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置4の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0070】
[実施例5]
(表面修飾シリカ分散液の作製)
シリカゾル(日産化学工業製 スノーテックスOS)50gにヘキサン酸5gを溶解させたメタノール溶液50gを混合撹拌し、得られたスラリーをエバポレータで溶媒を乾燥除去してシリカ粒子乾燥粉体を得た。得られたシリカ粒子含有乾燥粉体10gをトルエン80gに混合した。次いで、片末端エポキシ変性シリコーン(信越化学工業製、X−22−173DX)を5gとアルケニル基(ビニル基)含有修飾材料としてビニルトリメトキシシラン(信越化学工業製 KBM1003)を5g加え、130℃にて6時間還流下で表面修飾及び分散を行った。得られたシリカ分散液100gにメタノールを100g投入し、得られた沈降物を回収し、乾燥した。この表面修飾シリカ粒子における表面修飾材料による表面修飾量は、シリカ粒子の質量に対して80質量%であり、片末端エポキシ変性シリコーンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。次いで、この表面修飾シリカ粒子を、トルエン中に18質量%(シリカ粒子として10質量%)となるよう加えて再分散させ、表面修飾シリカ分散液を作製した。
得られた表面修飾シリカ分散液は透明であった。
【0071】
(光散乱組成物5の作製)
作製した表面修飾シリカ分散液10gに対して、ジメチルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6336、屈折率1.41、A液/B液配合比=1/1)158.2g(A液79.1g、B液79.1g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾シリカ粒子とジメチルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物5を得た。得られた光散乱組成物5はほぼ透明であった。この光散乱組成物5の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0072】
(光散乱複合体5の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物5を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体5を作製した。得られた光散乱複合体5の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0073】
(光半導体発光装置5の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物5を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置5を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例5の光半導体発光装置5を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置5の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0074】
[実施例6]
(表面修飾ジルコニア分散液6の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、トルエンの使用量を89g、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンの使用量を0.5g、アルケニル基(ビニル基)含有修飾材料としてのビニルトリメトキシシランの使用量を0.5gに変更した他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液6を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子1の質量に対して10質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液6は透明であった。
【0075】
(光散乱組成物6の作製)
2gの表面修飾ジルコニア分散液6に対して、フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)159.78g(A液31.96g、B液127.82g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物6を作製した。得られた光散乱組成物1はほぼ透明であった。この光散乱組成物6の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0076】
(光散乱複合体6の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物6を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体6を作製した。得られた光散乱複合体6の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0077】
(光半導体発光装置6の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物6を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置6を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例6の光半導体発光装置3を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.1質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置6の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0078】
[実施例7]
(光散乱組成物7の作製)
実施例7の表面修飾ジルコニア分散液としては、実施例1の表面修飾ジルコニア分散液1をそのまま使用した。
10gの表面修飾ジルコニア分散液1に対して、フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)48.6g(A液9.7g、B液38.9g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物7を作製した。得られた光散乱組成物7はほぼ透明であった。この光散乱組成物7の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0079】
(光散乱複合体7の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物7を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体7を作製した。得られた光散乱複合体7の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0080】
(光半導体発光装置7の作製)
フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)15g(A液3g、B液12g)に、黄色蛍光体(Genelite製 GLD(Y)−550A)を10g加え、その後、自公転式ミキサーで混合・脱泡し、蛍光体含有組成物7を得た。
次いで、未封止の青色光半導体発光素子を備えたパッケージの発光素子上に、蛍光体含有組成物7を滴下した後、150℃で30分間加熱し、蛍光体含有組成物7を硬化した。次いで、光散乱組成物7を、硬化後の蛍光体含有組成物7上に滴下した後、150℃で90分間加熱し、光散乱組成物1を硬化させると共に、蛍光体含有組成物7を完全に硬化させた。これにより、光半導体発光素子上に、蛍光体を含有する光変換層が形成され、その上に光散乱粒子を含有する光散乱層が形成された、実施例7の光半導体発光装置7を作製した。
なお、光変換層における黄色蛍光体の含有量は20質量%であり、光散乱層における光散乱粒子の含有量は2質量%であった。また、得られた光散乱層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置7の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0081】
[実施例8]
(表面修飾ジルコニア分散液8の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、ジルコニア粒子1に代えてジルコニア粒子4を用いた他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液8を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子4の質量に対して40質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液8は、やや白濁した透明であった。
【0082】
(光散乱組成物8の作製)
光散乱組成物の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1に代えて表面修飾ジルコニア分散液8を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱組成物8を作製した。得られた光散乱組成物8は、やや白濁しており半透明であった。この光散乱組成物8の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0083】
(光散乱複合体8の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物8を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体8を作製した。得られた光散乱複合体8の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0084】
(光半導体発光装置8の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物8を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置8を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例8の光半導体発光装置8を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置8の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0085】
[実施例9]
(表面修飾ジルコニア分散液9の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、ジルコニア粒子1に代えてジルコニア粒子5を用い、トルエンの使用量を87g、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンの使用量を1.5g、アルケニル基(ビニル基)含有修飾材料としてのビニルトリメトキシシランの使用量を1.5gに変更した他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液9を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子1の質量に対して30質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液9はやや白濁した透明であった。
【0086】
(光散乱組成物9の作製)
4gの表面修飾ジルコニア分散液9に対して、フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)159.48g(A液31.90g、B液127.58g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾ジルコニア粒子とフェニルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物9を作製した。得られた光散乱組成物9はほぼ透明であった。この光散乱組成物9の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0087】
(光散乱複合体9の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物9を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体9を作製した。得られた光散乱複合体9の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0088】
(光半導体発光装置9の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物9を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置9を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、実施例9の光半導体発光装置9を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.2質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置9の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0089】
[比較例1]
(マトリックス樹脂の評価)
比較例1及び2は、マトリックス樹脂中に光散乱粒子を含有させていない。そこで、光散乱複合体に代えてマトリックス樹脂自体の透過率を、光散乱複合体と同様に測定し評価した。
比較例1では、フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)7.6g(A液1.5g、B液6.1g)を自公転式ミキサーで混合、脱泡した後、得られた組成物を、各実施例の光散乱組成物と同様に測定し評価した。また、得られた組成物を深さ1mmの凹状の型に流し込み、150℃で2時間加熱硬化させて、厚さ1mmのマトリックス樹脂硬化体を作製し、このマトリックス樹脂硬化体を、実施例の光散乱複合体と同様に測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0090】
(光半導体発光装置101の作製)
フェニルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6330、屈折率1.53、A液/B液配合比=1/4)7.6g(A液1.5g、B液6.1g)に、黄色蛍光体(Genelite製 GLD(Y)−550A)を1g加え、その後、自公転式ミキサーで混合、脱泡した。次いで未封止の青色光半導体発光素子を備えたパッケージの発光素子上に蛍光体含有フェニルシリコーン樹脂組成物を滴下し、さらに蛍光体を含有していない当該フェニルシリコーン樹脂組成物を滴下し、150℃で2時間、加熱硬化させた。これにより、光半導体発光素子上に、蛍光体を含有する光変換層が形成された、比較例1の光半導体発光装置101を作製した。
なお、光変換層における黄色蛍光体の含有量は11.3質量%であった。また、得られた光変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置101の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0091】
(マトリックス樹脂の評価)
フェニルシリコーン樹脂の代わりにジメチルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6336、屈折率1.41 A液/B液配合比=1/1)を用いた他は比較例1と同様にして、マトリックス樹脂硬化体の透過率を測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0092】
(光半導体発光装置102の作製)
[比較例2]
光半導体発光装置の作製において、フェニルシリコーン樹脂に代えてジメチルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6336、屈折率1.41 A液/B液配合比=1/1)7.6g(A液3.8g、B液3.8g)を用いた他は比較例1と同様にして、光半導体発光装置102を作製した。
なお、光変換層における黄色蛍光体の含有量は11.3質量%であった。また、得られた光変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置102の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0093】
[比較例3]
(表面修飾ジルコニア分散液103の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、ジルコニア粒子1に代えてジルコニア粒子3を用いた他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液103を作製した。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子3の質量に対して40質量%であり、メトキシ基含有メチルフェニルシリコーンレジンとビニルトリメトキシシランとの質量比は1対1であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液103は透明であった。
【0094】
(光散乱組成物103の作製)
光散乱組成物の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1に代えて表面修飾ジルコニア分散液103を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱組成物103を作製した。得られた光散乱組成物103は透明であった。この光散乱組成物103の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0095】
(光散乱複合体103の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物103を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体103を作製した。得られた光散乱複合体103の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0096】
(光半導体発光装置103の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物103を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置103を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、比較例3の光半導体発光装置103を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置103の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0097】
[比較例4]
(表面修飾ジルコニア分散液104の作製)
表面修飾ジルコニア分散液の作製において、アルケニル基含有修飾材料に代えて飽和脂肪酸であるステアリン酸を用いたこと、またビーズミルの撹拌時間を5時間に変更した他は実施例1と同様にして、表面修飾ジルコニア分散液104を作製した。なお、ステアリン酸は飽和脂肪酸であり、そのカルボキシル基はジルコニア粒子との結合に使用されてしまうから、ジルコニア粒子結合後のステアリン酸はアルキル基しか有しておらず、アルケニル基、H−Si基、アルコキシ基のいずれも有していない。
表面修飾材料による表面修飾量は、ジルコニア粒子1の質量に対して40質量%であった。また、得られた表面修飾ジルコニア分散液104は透明であった。
【0098】
(光散乱組成物104の作製)
光散乱組成物の作製において、表面修飾ジルコニア分散液1に代えて表面修飾ジルコニア分散液104を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱組成物104を作製した。得られた光散乱組成物104は、やや白濁しており半透明であった。この光散乱組成物104の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0099】
(光散乱複合体104の作製)
光散乱複合体の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物104を用いた他は実施例1と同様にして、光散乱複合体104を作製した。得られた光散乱複合体104の透過率を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0100】
(光半導体発光装置104の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物104を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置104を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、比較例4の光半導体発光装置104を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は0.5質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置104の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0101】
[比較例5]
(光散乱組成物105の作製)
比較例105の表面修飾シリカ分散液としては、実施例5の表面修飾シリカ分散液をそのまま使用した。
この表面修飾シリカ分散液200gに対して、ジメチルシリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング社製 OE−6336、屈折率1.41、A液/B液配合比=1/1)88g(A液44g、B液44g)を加え、撹拌した。その後、混合物から減圧乾燥によりトルエンを除去し、表面修飾シリカ粒子とジメチルシリコーン樹脂とを含有した光散乱組成物105を得た。得られた光散乱組成物105はほぼ透明であった。この光散乱組成物105の透過率を前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0102】
(光半導体発光装置105の作製)
光半導体発光装置の作製において、光散乱組成物1に代えて光散乱組成物105を用いた他は実施例1と同様にして、光半導体発光装置105を作製した。これにより、光半導体発光素子上に、光散乱粒子と蛍光体とを含むと共に、蛍光体粒子を光半導体発光素子の近傍に存在させた光散乱変換層が形成された、比較例5の光半導体発光装置105を得た。
なお、光散乱変換層における光散乱粒子の含有量は20質量%、黄色蛍光体の含有量は20質量%であった。また、得られた光散乱変換層は外部空気層に対して凸状であった。
得られた光半導体発光装置105の発光スペクトル及び輝度を、前記の通り測定し評価した。結果を下記表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
上記表1より、実施例1〜7、9の光半導体発光装置はすべて、発光スペクトルピーク面積比が比較例1〜4よりも優れていた。つまり、実施例1〜7の光半導体発光装置においては白色光とともに発せられる青色光成分が低減されていた。さらに、実施例1〜7、9の光半導体発光装置はすべて高輝度であり、特に実施例1〜4の光半導体発光装置は非常に高い輝度を示した。また、実施例8の各値は他の実施例に比べ低下していたが、比較例よりは良かった。これは、他の実施例に比べ平均二次粒子径が大きいためと考えられる。また、比較例5では光学的な特性は悪くなかったが、光散乱粒子の含有量が多いために、特に光散乱組成物の粘度が高くなり、ハンドリングが困難であった。
【符号の説明】
【0105】
10 光半導体発光素子
11 封止樹脂層
12 光散乱複合体
13 蛍光体粒子
14 光散乱変換層
15 マトリックス材
16 光変換層
17 光散乱層
18 外部空気相界面
図1
図2
図3
図4