特開2016-117923(P2016-117923A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特開2016117923-スパッタリング装置 図000003
  • 特開2016117923-スパッタリング装置 図000004
  • 特開2016117923-スパッタリング装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-117923(P2016-117923A)
(43)【公開日】2016年6月30日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20160603BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20160603BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20160603BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20160603BHJP
【FI】
   C23C14/35 Z
   H01L21/88 B
   H01L21/285 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-256798(P2014-256798)
(22)【出願日】2014年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】小風 豊
(72)【発明者】
【氏名】濱口 純一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徳康
(72)【発明者】
【氏名】湯瀬 琢巳
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 寿浩
【テーマコード(参考)】
4K029
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K029AA06
4K029AA24
4K029AA29
4K029BA08
4K029BC03
4K029BD01
4K029CA05
4K029CA13
4K029DA00
4K029DC03
4K029DC20
4K029DC35
4K029DC45
4K029EA07
4M104AA01
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB08
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104DD37
4M104DD40
4M104HH14
5F033JJ11
5F033PP15
5F033XX34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板エッジ部へのスパッタ粒子の斜入射を防止するという機能を損なうことなく、規制板におけるイオンの失活を抑制してイオンの指向性を向上させることができるスパッタリング装置の提供。
【解決手段】処理すべき基板Wとターゲット21とが対向配置される真空チャンバ1および基板Wとターゲット21との間にスパッタ粒子の基板Wへの入射角度を所定範囲の角度に規制する複数の透孔61を有する規制板6を備え、ターゲット21と規制板6との間に、規制板6の透孔の孔軸61aと同じ孔軸81aを有する透孔81が複数開設された電極板8と、電極板8の電位を規制板6の電位よりも高く保持する保持手段E3とを更に備えるスパッタリング装置SM。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバを備え、真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入して基板とターゲットとの間にプラズマを形成し、ターゲットをスパッタリングして飛散したスパッタ粒子を基板に付着、堆積させるスパッタリング装置であって、
基板とターゲットとの間に、スパッタ粒子の基板への入射角度を所定の角度範囲に規制する複数の透孔を有する規制板を備えるものにおいて、
ターゲットと規制板との間に、規制板の透孔の孔軸と同じ孔軸を有する透孔が複数開設された電極板と、電極板の電位を規制板の電位よりも高く保持する保持手段とを更に備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記電極板の板厚は、前記規制板の板厚よりも薄いことを特徴とする請求項1記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記電極板の板厚は5〜15mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記保持手段は、電極板と規制板との間の電位差が70V以上160V以下になるように前記電極板の電位を保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、より詳しくは、高アスペクト比を有する微細なホールの内面にカバレッジよく薄膜を成膜することに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程には、所定のアスペクト比を有するビアホールやコンタクトホールの内面(内壁面及び底面)にCu膜からなるシード層を成膜する工程があり、このようなCu膜の成膜に用いる成膜装置として、スパッタリング装置が例えば特許文献1で知られている。このものでは、処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバを備え、真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入して基板とターゲットとの間にプラズマを形成し、ターゲットをスパッタリングして飛散したスパッタ粒子(CuラジカルやCuイオン)を基板に付着、堆積することでCu膜が成膜される。
【0003】
近年の半導体デバイスの更なる高集積化や微細化に伴い、Cu膜が成膜されるホールにはアスペクト比が3以上である高アスペクト比のものがある。高アスペクト比のホールの内面にCu膜を成膜する場合、基板のエッジ部ではターゲット中央部から飛散したスパッタ粒子が斜入射し、エッジ部のホール内面にカバレッジ(被覆性)よく成膜することができない。上記従来例のものでは、基板とターゲットとの間に、スパッタ粒子の基板への入射角度を所定範囲の角度に規制する複数の透孔を有する規制板を配置し、エッジ部でのスパッタ粒子の斜入射を防止している。
【0004】
しかしながら、上記従来例のように規制板を配置すると、成膜レートが著しく低下することが判明した。そこで、本願発明の発明者は、鋭意研究を重ね、規制板がアース電位に保持されていると、規制板でCuイオンが失活し、Cuイオンの指向性が低下することに起因するとの知見を得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−60391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、基板エッジ部へのスパッタ粒子の斜入射を防止するという機能を損なうことなく、規制板におけるイオンの失活を抑制してイオンの指向性を向上させることができるスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、処理すべき基板とターゲットとが対向配置される真空チャンバを備え、真空チャンバ内にスパッタガスを導入し、ターゲットに電力投入して基板とターゲットとの間にプラズマを形成し、ターゲットをスパッタリングして飛散したスパッタ粒子を基板に付着、堆積させる本発明のスパッタリング装置は、基板とターゲットとの間に、スパッタ粒子の基板への入射角度を所定範囲の角度に規制する複数の透孔を有する規制板を備え、ターゲットと規制板との間に、規制板の透孔の孔軸と同じ孔軸を有する透孔が複数開設された電極板と、電極板の電位を規制板の電位よりも高く保持する保持手段とを更に備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、ターゲットと規制板との間に配置した電極板の電位を規制板の電位よりも高く保持することで、電極板と規制板との間に電位差が形成される。この電位差により、ターゲットから飛散したスパッタ粒子を構成するイオンが加速され、規制板の透孔を通過してホール内面を含む基板表面に到達するため、イオンが規制板において失活することを抑制でき、イオンの指向性を向上させることができる。しかも、電極板と規制板に夫々開設された透孔を通過したスパッタ粒子は、基板への入射角度が所定の角度範囲に規制されるため、基板エッジ部へのスパッタ粒子の斜入射を防止できるという機能は損なわれない。
【0009】
本発明において、前記電極板の板厚は、前記規制板の板厚よりも薄いことが好ましく、前記電極板の板厚は5〜15mmの範囲内であることが好ましい。また、前記保持手段は、電極板と規制板との間の電位差が70V以上160V以下になるように前記電極板の電位を保持することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置を示す模式的断面図。
図2】本発明の実験結果を示すグラフ。
図3】本発明の実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、処理すべき基板Wを、シリコンウェハの表面にシリコン酸化物膜を所定の膜厚で形成し、このシリコン酸化物膜にアスペクト比が3以上である微細なホールを形成したものとし、このホールの内面にCu膜を形成する場合に用いられるものを例として、本発明の実施形態のスパッタリング装置について説明する。
【0012】
図1を参照して、SMは、マグネトロン方式のスパッタ装置であり、このスパッタ装置SMは、処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の天井部にはカソードユニットCが取付けられている。以下においては、図1中、真空チャンバ1の天井部側を向く方向を「上」とし、その底部側を向く方向を「下」として説明する。
【0013】
カソードユニットCは、ターゲットアッセンブリ2と、ターゲットアッセンブリ2の上方に配置された磁石ユニット3とから構成されている。ターゲットアッセンブリ2は、基板Wの輪郭に応じて、公知の方法で平面視円形の板状に形成されたCu製のターゲット21と、ターゲット21の上面にインジウム等のボンディング材(図示省略)を介して接合されるバッキングプレート22とで構成され、スパッタによる成膜中、バッキングプレート22の内部に冷媒(冷却水)を流すことでターゲット21を冷却できるようになっている。ターゲット21を装着した状態でバッキングプレート22下面の周縁部が、絶縁体I1を介して真空チャンバ1の上部に取り付けられる。ターゲット21にはDC電源や高周波電源等のスパッタ電源E1からの出力が接続され、成膜時、ターゲット21に負の電位を持った電力が投入される。
【0014】
磁石ユニット3は、ターゲット21の下面をスパッタ面21aとし、スパッタ面21aの下方空間に磁場を発生させ、スパッタ時にスパッタ面21aの下方で電離した電子等を捕捉してターゲット21から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の構造を有するものであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0015】
真空チャンバ1内には、ターゲット2の周囲を覆って下方に延びる筒状のシールド部材4が配置され、スパッタ粒子のイオンが基板Wへと放出されることをアシストしている。
【0016】
真空チャンバ1の底部には、ターゲット21のスパッタ面21aに対向させてステージ5が配置され、基板Wがその成膜面を上側にして位置決め保持されるようにしている。ステージ5は高周波電源E2に接続され、ステージ5ひいては基板Wにバイアス電位が印加され、スパッタ粒子のイオンを基板Wに引き込む役割を果たす。尚、ターゲット21と基板Wとの間の間隔は、生産性や散乱回数等を考慮して45〜800mmの範囲に設定することができる。
【0017】
真空チャンバ1の底部には、ターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空排気手段Pに通じる排気管11が接続されている。また、真空チャンバ1の側壁には、アルゴン等の希ガスたるスパッタガスを導入するガス管12が接続され、ガス管12にはマスフローコントローラ12aが介設され、図示省略のガス源に連通している。これにより、流量制御されたスパッタガスが、後述する真空排気手段Pにより一定の排気速度で真空引きされている処理室1a内に導入でき、成膜中、処理室1aの圧力(全圧)が略一定に保持されるようにしている。
【0018】
また、基板Wとターゲット21との間には、スパッタ粒子の通過を許容する透孔61が複数開設された規制板6が配置され、スパッタ粒子の基板Wへの入射角度を所定の角度範囲に規制し、これにより、基板Wのエッジ部へのスパッタ粒子の斜入射を防止している。規制板6の板厚は、30mm〜200mmの範囲に設定することができる。規制板6は、真空チャンバ1の側壁内側に配置された防着板7aの内面に支持部材62を介して固定されている。防着板7aを接地することにより、規制板6は接地電位に保持される。尚、防着板7aの下方には、他の防着板7b,7cが配置されている。
【0019】
ここで、規制板6を配置することで基板Wのエッジ部へのスパッタ粒子の斜入射を防止できるものの、規制板6が接地電位に保持されると、規制板6にてCuイオンが失活してCuイオンの指向性が低下する。本実施形態では、ターゲット21と規制板6との間に、規制板6の透孔61の孔軸61aと同じ孔軸81aを有する透孔81が複数開設された電極板8を配置した。電極板8は、シールド部材4の内面に固定され、シールド部材4に直流電源E3から正の電位を印加することで、電極板8の電位を規制板6の電位よりも高く保持している。直流電源E3が本発明の「保持手段」を構成する。電極板8と規制板6との間の電位差は、例えば20V〜160Vの範囲に設定することができる。電極板8の板厚は、規制板6の板厚よりも薄くすることが好ましく、例えば、3mm〜50mmの範囲に設定することができる。電極板8は、その上面が処理室1aでプラズマが形成される領域よりも下方に位置するように配置することが好ましい。電極板8と規制板6との間の隙間dは、例えば、5mm〜45mmの範囲に設定することが好ましく、10mm〜20mmの範囲に設定することがより好ましい。隙間dが5mmより短いと規制板6に堆積したCuにより、Cuイオンの透過特性の変動が顕著になるという不具合がある一方で、45mmより長いとCuイオンが規制板6で失活するという不具合がある。
【0020】
尚、透孔61,81の平面視の形状は、任意であり、例えば円で構成したり、また六角形で構成してハニカム構造とすることができる。また、規制板6は、その中央部の透孔61の深さがエッジ部の透孔61の深さよりも深くなるように構成して、成膜レートの面内分布を向上させてもよい。
【0021】
上記スパッタリング装置SMは、特に図示しないが、マイクロコンピュータやシーケンサ等を備えた公知の制御手段9を有し、制御手段9により電源E1,E2,E3の稼働、マスフローコントローラ12aの稼働や真空排気手段Pの稼働等を統括管理するようになっている。
【0022】
次に、処理すべき基板Wをアスペクト比が3以上のホールが形成されたシリコンウェハとし、上記スパッタリング装置SMを用いて上記ホールの内面を含む基板W表面にCu膜を成膜する場合を例に成膜方法について説明する。
【0023】
先ず、ターゲット21が組み付けられた真空チャンバ1内のステージ5に基板Wをセットし、その後、真空排気手段Pを作動させて処理室1a内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きする。処理室1a内が所定圧力に達すると、マスフローコントローラ12aを制御してアルゴンガスを所定の流量で導入する。アルゴンガスの流量は0〜20sccmの範囲に設定することができる(このとき、処理室1aの圧力は約1×10−5Pa〜0.4Paの範囲となる)。これと併せて、スパッタ電源E1からターゲット21に負の電位を持つ直流電力を例えば10〜30kW投入して処理室1a内にプラズマを形成する。これにより、ターゲット21のスパッタ面21aをスパッタし、飛散したスパッタ粒子が基板Wに向かって飛行する。
【0024】
本実施形態によれば、電極板8の電位を規制板6の電位よりも高く保持することで、両者の間に電位差が形成され、この電位差によりターゲット21からのスパッタ粒子を構成するCuイオンが加速され、規制板6の透孔61を通過してホール内面を含む基板W表面に到達する。このため、Cuイオンが規制板6において失活することを抑制でき、Cuイオンの指向性を向上させることができる。しかも、電極板8の透孔81と規制板6の透孔61とを通過したスパッタ粒子(Cu粒子)は基板Wへの入射角度が所定の角度範囲に規制されるため、基板エッジ部への斜入射を防止できるという機能は損なわれない。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態においては、Cuターゲット21をスパッタしてCu膜を成膜する場合について説明したが、スパッタ粒子にイオンが多く含まれるようなターゲット、例えば、Ti、Al、Ta、Ag、Cr、Mo及びWから選択される金属または合金からなるターゲットを用いる場合にも本発明を適用することができる。
【0026】
次に、上記効果を確認するために、上記スパッタリング装置SMを用いて次の実験を行った。本実験では、上記スパッタリング装置SMを用いてCu膜をスパッタリング法により成膜する場合において、規制板6におけるCuイオンの透過率と、規制板6の透孔61からのCuイオンの吹き出し角度(発散角、つまり、基板Wへの入射角度)との電位差依存性をシミュレーションにより求めた。ここで、規制板6の板厚を45mm、電極板8の板厚を15mmとし、両者の隙間dを15mmとし、透孔61,81の径を13mmとし、アルゴンガスの流量を20sccm(このときの処理室1a内の圧力は0.4Pa)、ターゲット21に投入する直流電力を20kW、基板Wに投入するバイアス電力を13.56MHz、400Wに設定した。そして、規制板6と電極板8との間の電位差を40〜160Vで変化させて求めたCuイオンの透過率及び吹き出し角度を図2に示す。これによれば、電位差を70V〜100V程度に設定すれば、75%以上の透過率と1°前後の吹き出し角度を実現できることが判った。電極板8の板厚を15mmから5mmに変更した点を除き、上記と同様にシミュレーションを行った結果を図3に示す。これによれば、電位差を70V以上に設定すれば100%の透過率を実現できる、すなわち、規制板6でのCuイオンの失活を防止できることが判った。また、電位差を70〜160Vに設定すれば、2°以下の吹き出し角度を実現でき、90V〜110Vに設定すれば、0.5°以下の吹き出し角度を実現できることが判った。
【符号の説明】
【0027】
SM…スパッタリング装置、W…基板、1…真空チャンバ、6…規制板、61…規制板6の透孔、61a…透孔61の孔軸、8…電極板、81…電極板8の透孔、81a…透孔81の孔軸、E3…保持手段。
図1
図2
図3