【実施例】
【0062】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に制約されるものではなく、特にことわりのない限り各種の塗工方法、評価方法により特性を得るものである。
【0063】
[溶解性・保存安定性]
組成物の各構成成分を混合し、40〜70℃にて30分加熱後、不溶物が残存もしくは析出した場合を溶解性・保存安定性××(不良)とした。また、これら組成物が溶液となった場合でも、室温で24時間以内に結晶が析出した場合を溶解性・保存安定性×(やや不良)、室温にて24時間〜1週間静置し、結晶や沈殿が生じるか否かを目視で観察したところ、発生した場合を溶解性・保存安定性△(可)、発生しない場合を溶解性・保存安定性○(良)、1か月を超えて結晶や不溶物が発生しない場合を溶解性・保存安定性◎(優良)とした。
【0064】
[粘度]
E型粘度計(東機産業製、RE80L)を用いて23℃で測定した。実施例、比較例で得た組成物のうち、室温にて溶液となった組成物の粘度測定(初期粘度)を行った。室温にて1週間静置した後の粘度変化が10%以内の場合は、粘度安定性○(良)、結晶の析出や10%以上の粘度増加がみられた場合は、粘度安定性×(不良)とした。
【0065】
[接触角測定]
組成物の接触角評価用に以下の基板を作成した。まず、信越化学株式会社製KBM803(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.5g、含フッ素オリゴマー溶液[下記の一般式で表される、含弗素化合物を含有するメタクリル酸エステルの共重合体、40質量%溶液)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて1質量%に希釈した溶液1.25g、CPI−100P(サンアプロ製光酸発生剤、50質量%溶液)0.04g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル化学製)18.21gを混合した。次いで、1μmデプスフィルターを用いてろ過することで、下地処理剤1を調製した。
【0066】
【化1】
[式中、Rfは下記化学式で示される含弗素基を意味する]
【0067】
【化2】
【0068】
得られた下地処理剤1を、スピンコーターを用いて1000回転/10秒の条件で125mm×125mmのガラス基板の上に、プレベーク後の膜厚が0.1μmとなるように塗工し、ホットプレートを用いて70℃で3分間プレベークを行い、ガラス基板上に樹脂層を形成した。この時点で、ガラス基板上にはムラや白濁は観察されず、またタック性は無かった。次いで、樹脂層を備えたこの基板に対して、超高圧水銀ランプで露光(5000mJ/cm
2、i線基準)を行った後、150℃で60分間加熱した。加熱後の樹脂層について、光が照射されていない部分は、1―オクタノールに対する初期接触角(滴下1秒後)が38°であり、また60秒後の接触角も36°と維持された。一方、光照射部分は、初期接触角ならびに60秒後の接触角とも検出限界以下(<1°)であった。接触角の測定には、協和界面科学製高速度接触角計(OCAH−200)を使用した。
【0069】
[導通性評価]
前述の基板の導通性評価は、ロレスタGP MCP−T610(三菱化学アナリテック社製)、ASPプローブを用いて四探針法による体積抵抗率で評価した。体積抵抗率の測定は任意の数箇所で行い、その平均値を求めた。
【0070】
実施例及び比較例の銅薄膜形成組成物を作製するために使用した原料とその略号は以下のとおりである。
(A)ギ酸銅
ギ酸銅(1):ギ酸銅(II)四水和物(キシダ化学社製)
【0071】
(B)モノアミン化合物
2−エチルヘキシルアミン:沸点169℃
1−オクチルアミン:沸点176℃
1−ヘキシルアミン:沸点132℃
ジブチルアミン:沸点159℃
ジイソブチルアミン:沸点137〜139℃
1,5−ジメチルヘキシルアミン:沸点155℃
シクロヘキシルメチルアミン:沸点159〜161℃
3−(ジエチルアミノ)−1,2-プロパンジオール:沸点233〜235℃
2−アミノヘプタン:沸点142〜144℃
n−ブチルアミン:沸点77℃
【0072】
<実施例1>
(銅膜形成用組成物の調製)
ギ酸銅4水和物の粉末をオーブン中で100℃にて恒量になるまで乾燥し、これを無水ギ酸銅として使用した。30ml透明スクリュー瓶にまず表1に示した重量にて2-エチルヘキシルアミン(成分B)単独もしくは1−オクタノール(成分C)を混合し、撹拌しながら無水ギ酸銅(成分A)を徐々に加えた。溶解が進むと共に発熱が生じ、更に70℃にて30分撹拌して均一溶液を得た(組成物E1〜E7)。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。表2から、実施例1における組成物E1〜E7では、いずれも溶解性・保存安定性、粘度安定性が良好であった。
【0073】
Cu濃度が10%である組成物E3、E6及びE7の初期粘度は、それぞれ312、229及び135(単位;cps)であった。これらの初期粘度を比較すると、C成分を共存させない組成物E3に対して、1−オクタノール(C成分)を共存させた組成物E6、及び1−オクタノール(C成分)を共存させ、さらに2−エチルヘキシルアミン(B成分)を減じた組成物E7では低粘度の液状組成物となった。
【0074】
ここで、表2中の「B/Aモル比全アミン」は、銅膜形成用組成物中のギ酸銅無水物換算の1モルのCuに対する全モノアミンのモル量を表し、「Cu濃度(wt%)」は、銅膜形成用組成物中の銅含有率(計算値)を表し、「錯体濃度(wt%)」は、銅膜形成用組成物中のギ酸銅無水物が全てギ酸銅アミン錯体に変換したと仮定し、すなわち1モルのCuに対して2モルのモノアミン化合物が全て錯化反応したと仮定して求めた計算値であり、また、2種以上のモノアミン化合物を使用した場合は、モノアミン化合物の混合比及びそれぞれの分子量に応じて求めた計算値である。以下、表4中の記載も同様である。
【0075】
<実施例2>
成分Cである1-オクタノール(沸点;196℃)に換えて、2-エチルヘキサノール(沸点;185℃)あるいはベンジルアルコール(沸点;205℃)を使用し、表1に示す重量で混合した以外は実施例1と同様にして、組成物E8〜E10を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。表2から、いずれの組成物においても室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0076】
<比較例1>
成分Bである2-エチルヘキシルアミンに換えて、1-オクチルアミンを使用し、表1に示す重量で混合した以外は実施例1と同様にして、比較組成物R1〜R4を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。表4から、1−オクチルアミンを用いると、加温してのギ酸銅アミン錯体の調製時には均一溶液となるものの、組成物を室温へ冷却すると結晶が析出しやすかった。また、比較組成物R2の1−オクタノール希釈による銅元素(金属換算)濃度が6.9%の場合においても、3日目経過で結晶の析出が見られた。
【0077】
<実施例3>
成分Bとして、1−オクチルアミンと2-エチルヘキシルアミンとを表1に示す割合で混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E11〜E13を調製した。ここで、組成物E13は、無水ギ酸銅1モル量に対して、1-オクチルアミン1.875倍モル量、2-エチルヘキシルアミン0.625倍モル量の組成物である。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。表2から、比較例1の1−オクチルアミン単独の比較組成物R1〜R4において結晶が析出したのに比較して、2−エチルヘキシルアミンの添加により、組成物E11〜E13では、いずれの組成物においても室温保存時に結晶の析出は見られず、また、粘度の安定性も良好であった。さらに、組成物E11〜E13の初期粘度を比較組成物R3と比較すると、2-エチルヘキシルアミンの割合を増加させるほど低粘度の組成物が得られることがわかる。
【0078】
<比較例2>
成分Bとして、1−ヘキシルアミンを使用して表3に示す重量で混合した以外は、実施例1と同様にして比較組成物R5を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。表4から、この比較組成物R5は、加温してのギ酸銅アミン錯体の調製時には均一溶液となるものの、組成物を室温へ冷却後2日目には針状結晶が析出した。
【0079】
<実施例4>
成分Bとして、1−ヘキシルアミンと2-エチルヘキシルアミンとを表1の割合にて混合しした以外は、実施例1と同様にして、組成物E14を調製した。組成物E14は、無水ギ酸銅1モル量に対して、1−ヘキシルアミンを1.25倍モル量、2−エチルヘキシルアミンを1.25倍モル量で含有する組成物である。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。比較例2の比較組成物R5では結晶析出が見られたのに対して、本組成物E14では室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0080】
<比較例3>
成分Bとして、ジブチルアミンを使用し、表3に示す組成比で配合した以外は、実施例1と同様にして比較組成物R6を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。この比較組成物R6は、加温してのギ酸銅アミン錯体の調製時には均一溶液となるものの、組成物を室温へ冷却すると全体に結晶析出が見られ、固化してしまった。
【0081】
<実施例5>
成分Bとして、ジブチルアミンと2−エチルヘキシルアミンとを表1に示す割合にて混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E15を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。比較例3の比較組成物R6では、結晶析出が見られたのに対して、本組成物E15では、室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0082】
<比較例4>
成分Bとして、ジイソブチルアミンを単独もしくは1−オクチルアミンと混合して表3に示す組成比で配合した以外は、実施例1と同様にして、比較組成物R7およびR8を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。表4から、比較組成物R7およびR8は、いずれも組成物を室温へ冷却すると全体に結晶析出が見られた。
【0083】
<実施例6>
成分Bとして、ジイソブチルアミンと2-エチルヘキシルアミンとを表1の割合にて混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E16を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。比較例4の比較組成物R7およびR8では、結晶析出が見られたのに対して、本組成物E16では室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0084】
<比較例5>
成分Bとして、1,5−ジメチルヘキシルアミンを単独もしくは1−オクチルアミンと混合して表3に示す組成比で配合した以外は、実施例1と同様にして、比較組成物R9およびR10を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。表4から、比較組成物R9およびR10は、いずれも組成物を室温へ冷却すると全体に結晶析出が見られた。
【0085】
<実施例7>
成分Bとして、1,5−ジメチルヘキシルアミンと2-エチルヘキシルアミンとを表1の割合にて混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E17を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。比較例5の比較組成物R9およびR10では、結晶析出が見られたのに対して、本組成物E17では室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0086】
<比較例6>
成分Bとしてシクロヘキシルメチルアミンを使用して表3に示す組成比で配合した以外は、実施例1と同様にして比較組成物R11を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。この比較組成物R11は、室温へ冷却後2日目には針状結晶が析出した。
【0087】
<実施例8ならびに比較例7>
実施例1にて調製した組成物E4〜E6及び実施例2で調製した組成物E8〜E10、ならびに比較例1にて調製した比較組成物R3のそれぞれについて、接触角の測定を行った。その結果を表5に示す。なお、表5には、原料として使用した1−オクタノール(参考例1)、オクチルアミン(参考例2)、2-エチルヘキシルアミン(参考例3)、2−アミノヘプタン(参考例4)についての接触角の測定結果も併記した。表5から、成分Bとして2-エチルヘキシルアミンを用いた組成物E4〜E6ならびに組成物E8〜E10においては、いずれも撥液基板上の接触角が36°以上であり、親液基板上の接触角は60秒後にはいずれも10°を下回った(実施例8)。一方、成分Bとして1−オクチルアミンを用いた比較組成物R3では、親液基板上では接触角が10°を下回ることがなかった(比較例7)。
【0088】
<実施例9ならびに比較例8>
下地処理剤1を用い、ガラス基板上に塗布/乾燥後、フォトマスクを用いて20mm×20mm□の面積で親液部を形成した(周囲は撥液部で囲まれている)。この親液部の中央に、組成物E5を0.04mlもしくは0.08ml滴下し、その後基板をホットプレート上で130℃まで2分間程度で加温して、基板上における組成物E5の拡がり具合を観察した。青色の組成物E5は、まず80℃までの昇温過程において、0.04ml、0.08mlのいずれの滴下量においても、親液部からはみ出すことなく20mm×20mmの面積の全体に濡れ拡がった。100℃を超える温度に達すると、組成物E5は褐色から更に金属色に変化し、130℃に達する頃には、表面が金属光沢を持つ膜となった(実施例9)。
【0089】
一方、組成物E5に換えて比較組成物R3を用い、下地処理剤1で処理した基板上で同様にして濡れ拡がり性の観察を行った。滴下量0.08mlでは、20mm×20mm□全面に金属光沢膜が得られたが、滴下量0.04mlでは親液部の一部に比較組成物R3が拡がりきらなかった(比較例8)。
【0090】
<実施例10>
実施例9と同様にして、組成物E5もしくは組成物E9の0.08mlを、下地処理剤1で処理した基板の親液部20mm×20mmの領域に滴下した。該基板を窒素気流下にてホットプレート上で表6に示した所定温度まで2分間〜5分間かけて加熱し、更にその温度にて10分間保持し、銅膜を作製した。いずれの条件においても親液部の20mm×20mmの領域に銅膜が形成され、表面は金属光沢を呈していた。銅膜の状態及び銅膜の導通性評価の結果を表6に記載した。いずれの焼成温度の処理においても、体積抵抗値の平均値が、10×10
−6Ω・cmレベルと低い値の導電膜であることが分かった。
【0091】
<実施例11>
実施例9と同様にして、組成物E5の0.08mlを下地処理剤1で処理した基板の親液部20mm×20mmの領域に滴下した。該基板を窒素気流下にてホットプレート上で130℃まで2分間かけて加熱し、金属光沢が見られることを確認して、ただちに室温まで冷却した。この銅膜の体積抵抗値の平均値は1.3×10
−5Ω・cmであった。更にこの銅膜に対し、3%水素含有窒素雰囲気中で200℃まで加熱処理を行った。この銅膜を窒素雰囲気中50℃まで冷却した。得られた基板の銅膜表面は、鮮やかな銅箔色を呈しており、その体積抵抗値の平均値は6.2×10
−6Ω・cmであった。銅膜の状態及び銅膜の導通性評価の結果を表6に記載した。
【0092】
<実施例12および比較例9>
実施例9と同様にして、組成物E5の0.08mlを下地処理剤1で処理した基板の親液部20mm×20mmの領域に滴下した。該基板を窒素気流下にてホットプレート上で130℃まで2分間かけて加熱し、金属光沢が見られることを確認して、ただちに室温まで冷却した。この銅膜の体積抵抗値の平均値は8.5×10
−5Ω・cmであった。更に、この銅膜に対し、3%水素含有窒素雰囲気中で300℃まで加熱処理を行った。この銅膜を窒素雰囲気中50℃まで冷却した。得られた基板の銅膜表面は、鮮やかな銅箔色を呈しており、その体積抵抗値は4.6×10
−6Ω・cmであった。更に、基板から本銅膜を剥離すると、20mm×20mm×厚さ1.4μmの銅箔となった。銅膜の状態及び銅膜の導通性評価の結果を表6に記載した。
【0093】
比較例9においては、一段目の加熱処理を100℃にて10分間保持した以外は、実施例12と同様の処理を行った。100℃、10分間保持後の塗膜は、表面の粗い濃紺の乾燥塗膜であり、その抵抗値は測定不能であった。この塗膜を更に3%水素含有窒素雰囲気中で300℃まで加熱処理を行った。この銅膜を窒素雰囲気中、50℃まで冷却した。得られた銅膜表面は、くすんだ金属光沢を呈しており、その体積抵抗値の平均値は2.0×10
−4Ω・cmであった。銅膜の状態及び銅膜の導通性評価の結果を表6に記載した。
【0094】
<実施例13ならびに比較例10>
実施例13では、成分Bとして、2-エチルヘキシルアミンと3−(ジエチルアミノ)−1,2-プロパンジオールとを表1の割合にて混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E18を調製した。また、比較例10では、成分Bとして3−(ジエチルアミノ)−1,2-プロパンジオールのみを用いて1−オクタノールと共に比較組成物R12を調製した。組成物E18並びに比較組成物R12共に、結晶の析出は見られなかった。比較組成物R12の粘度は414cpsであって、2−エチルヘキシルアミンを用いた同様の組成である組成物E2の粘度42cpsに比較して10倍以上の高粘度なった。
【0095】
更に比較組成物R12を用いて、実施例9と同様にして下地処理剤1で処理した基板の親液部20mm×20mmの領域に0.08ml滴下し、該基板を窒素気流下にてホットプレート上で130℃まで2分で加熱し、更にその温度にて10分間保持し、銅膜を作成した。比較組成物R12は115℃程度で変色が始まり、130℃にて光沢の無い銅色の粒が目立つ表面がざらついた面を形成した。しかし、析出した粒は互いの密着ならびに基板との密着に乏しく、ASPプローブを用いて四探針を接触すると、膜は砕けて基板から脱落し、抵抗値を測定できなかった。また、比較組成物R12の焼結温度を、150℃もしくは200℃としても、得られた銅膜は光沢の無い銅色の表面のざらついた面を形成し、抵抗値の測定ができなかった。
【0096】
<実施例14>
成分Bとして、2−アミノヘプタンを単独もしくは2-エチルヘキシルアミンとを表1の割合にて混合した以外は、実施例1と同様にして、組成物E19およびE20を調製した。さらに溶媒C成分を1−ヘプタノール(沸点;176℃)もしくはメシチレン(沸点;164.7℃)に換えて、組成物E21およびE22を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表2に示す。本組成物E19〜E22では、室温保存時に結晶の析出は見られず、また粘度の安定性も良好であった。
【0097】
<実施例15>
実施例14で調製した組成物E19〜E22について、接触角の測定を行った。その結果を表5に示す。表5から、成分Bとして2-エチルヘキシルアミンを用いた組成物E19〜E21においては、いずれも撥液基板上の接触角が36°以上であり、親液基板上の接触角は60秒後にはいずれも10°を下回った(実施例15)。メシチレンを溶媒として用いた組成物E22では、接触角測定の際に、ニードル先端に形成させた液滴を基板上に転写する際、乾燥が早いゆえの液滴の変形と液濡れ拡がりの低下がみられた。
【0098】
<実施例16>
実施例9と同様にして、組成物E19の0.08mlを、下地処理剤1で処理した基板の親液部20mm×20mmの領域に滴下した。該基板を窒素気流下にてホットプレート上で表6に示した所定温度まで2分間〜5分間かけて加熱し、更にその温度にて10分間保持し、銅膜を作製した。いずれの条件においても親液部の20mm×20mmの領域に銅膜が形成され、表面は金属光沢を呈していた。銅膜の状態及び銅膜の導通性評価の結果を表6に記載した。いずれの焼成温度の処理においても、体積抵抗値の平均値が、10×10
−6Ω・cmレベルと低い値の導電膜であることが分かった。
【0099】
<実施例17>
実施例14で調製した組成物E20〜E22を用いて、実施例9と同様にして、窒素気流下150℃にて銅膜を作製した。銅膜の状態及び導通性評価の結果を表6に記載した。組成物E20およびE21においては平坦な銅膜が得られたが、組成物E22では膜厚の均一性が悪く、一部銅膜が形成されない部分が生じた。一方、電導度はいずれも良好であった。
【0100】
<比較例11>
成分Aに対して、成分Bである2-エチルヘキシルアミンを7モル倍以上とし、表3に示す重量で混合した以外は、実施例1と同様にして、比較組成物R13およびR14を調製した。得られた銅膜形成用組成物について、溶解性、保存安定性の評価を行った。その結果を表4に示す。結晶の析出は見られず、粘度の安定性も良好であった。実施例8と同様にして、親撥液処理を施した基板上にて接触角の測定を行った(表5)。ギ酸銅アミン錯体濃度が低い、もしくはB/A比が7以上の本比較例においては、親撥処理間での接触角差が実施例に比較して小さいことが判明した。さらに実施例10と同様にして銅膜を窒素気流下150℃にて形成したが、比較組成物R13では親液部から撥液部にあふれ出てしまい、親液部の一部に銅膜が形成されず、均一な銅膜を得ることが困難であった。また、比較組成物R14においても膜厚ムラが顕著であった。
【0101】
<比較例12>
成分Bとして2−エチルヘキシルアミンとn-ブチルアミンとを表3の組成比でもって混合し、比較組成物R15を調製した。評価結果を表4に示した。保存安定性ならびに粘度安定性は良好であった。一方、実施例9と同様にして、比較組成物R15を0.08ml滴下して窒素気流下での焼結試験(表6)では、110℃を超えたところで生じる金属化において親液部を全て覆うことができず、また塗布面の縮みが生じた。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
【表4】
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。