【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、番組全体の平均ラウドネス値を、予め設定されたターゲットラウドネス値に近づけるための補助的なラウドネス指標(以下、補助指標という。)を、現在時点の平均ラウドネス値、及び測定開始時点から測定終了時点までの間の測定時間長等に基づいて算出することを特徴とする。例えば、本発明は、補助指標として、残時間目標平均ラウドネス値、残時間目標平均ラウドネス値の許容上限値、残時間目標平均ラウドネス値の許容下限値、並びに、超過ラウドネス値及び不足ラウドネス値のうちの少なくとも一つを算出する。これらの補助指標は、番組制作等に用いられる。
【0021】
〔残時間目標平均ラウドネス値〕
まず、補助指標として、残時間目標平均ラウドネス値を算出する手法について説明する。番組制作者は、従来のラウドネスメータを使用した場合、測定開始時点(番組開始時点)から現在時点までの間のラウドネス値の平均値である平均ラウドネス値(現在時点までの平均ラウドネス値、以下、「現在時点の平均ラウドネス値」という。)を指標として参照し、測定終了時点(番組終了時点)の平均ラウドネス値(番組全体の平均ラウドネス値)がターゲットラウドネス値に近づくように、現在時点において番組の音声レベルを調整する。
【0022】
しかしながら、現在時点以降の平均ラウドネス値の調整は、番組終了までの残時間に依存し、瞬時的なラウドネス値が番組全体の平均ラウドネス値へ影響する度合いが異なることから、現在時点の平均ラウドネス値のみを指標として音声レベルを調整したとしても、番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値に近づけることが困難である。
【0023】
そこで、本発明では、ターゲットラウドネス値に対し、現在時点の平均ラウドネス値の超過分または不足分を補うための補助指標であって、現在時点から測定終了時点までの間の残り時間にて目標となり得る平均ラウドネス値を、残時間目標平均ラウドネス値として算出する。これにより、番組制作者は、測定終了時点の番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値に近づけるための補助指標として、残時間目標平均ラウドネス値を利用することができ、番組全体を考慮した音声レベルの調整が容易となる。
【0024】
図1は、残時間目標平均ラウドネス値を算出する際の、ブロック毎の二乗平均値の推移イメージを示す図である。横軸は、経過時間(入力音声を切り出したブロックの数)を示し、縦軸は、K特性フィルタ処理が施された入力音声のブロック内の二乗平均値を示す。
【0025】
番組全体のブロック数を示す測定時間長をN
all、現在時点のブロック数(ブロック番号)をk、現在時点までの絶対ゲーティング処理及び相対ゲーティング処理の後における有効ブロック数をm、残時間目標二乗平均値を
とする。N
allは正の整数であり、k,mは0以上の整数であり、k≧mである。現在時点における番組全体の見込み有効ブロック数Nは、以下の式で表される。
[数1]
N=N
all−k+m ・・・(1)
【0026】
また、測定開始時点から現在時点までの音声信号の二乗平均値(現在時点の二乗平均値)を
、ターゲットラウドネス値をL
t(=−24LKFS)、ターゲットラウドネス値L
tに対応する二乗平均値(ターゲット二乗平均値)をZ
tとする。現在時点から測定終了時点までの間の残時間において、番組全体の二乗平均値(測定終了時点の二乗平均値)に対応する番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに一致させるために、目標とすべき二乗平均値(残時間目標二乗平均値)は、以下の式で表される。
[数2]
【0027】
これをラウドネス換算することにより、残時間目標平均ラウドネス値L
0が算出される。つまり、残時間において、番組全体の二乗平均値(測定終了時点の二乗平均値)に対応する番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに一致させるために、目標とすべきラウドネス値(残時間目標平均ラウドネス値:残時間にて目標となり得る値)L
0は、以下の式で表される。
[数3]
この式(3)は、二乗平均値とラウドネス値との間の関係を定義した数式である。
【0028】
尚、前述のとおり、非特許文献2のARIB TR−B32の運用規定では、番組全体の平均ラウドネス値は、ターゲットラウドネス値L
t(=−24LKFS)に対して±1LKFSの許容値(許容上限ラウドネス値L
u(=−23LKFS)及び許容下限ラウドネス値L
l(=−25LKFS))が規定されている。許容上限ラウドネス値L
uは、番組全体の平均ラウドネス値の許容上限の値を示し、許容下限ラウドネス値L
lは、番組全体の平均ラウドネス値の許容下限の値を示す。そこで、残時間目標平均ラウドネス値L
0を補助指標とすることに加え、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び/または許容下限値を補助指標とするようにしてもよい。また、残時間目標平均ラウドネス値L
0を補助指標とすることに代えて、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び/または許容下限値を補助指標とするようにしてもよい。残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値は、残時間における平均ラウドネス値の許容上限となり得る値であり、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値は、残時間における平均ラウドネス値の許容下限となり得る値である。
【0029】
残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値は、残時間目標平均ラウドネス値L
0と同様に、前記式(2)及び前記式(3)を用いて算出される。残時間目標二乗平均値の許容上限値は、前記式(2)により、ターゲットラウドネス値L
tに対応する二乗平均値(ターゲット二乗平均値)Z
tの代わりに、許容上限ラウドネス値L
uに対応する二乗平均値を用いて算出され、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値は、二乗平均値と平均ラウドネス値との間の関係が定義された前記式(3)により、残時間目標二乗平均値の許容上限値が変換されることで算出される。また、残時間目標二乗平均値の許容下限値は、前記式(2)により、ターゲットラウドネス値L
tに対応するターゲット二乗平均値Z
tの代わりに、許容下限ラウドネス値L
lに対応する二乗平均値を用いて算出され、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値は、前記式(3)により、残時間目標二乗平均値の許容下限値が変換されることで算出される。
【0030】
これにより、補助指標に許容幅を持たせることができることから、番組制作者は、測定終了時点の番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに近づけるための許容幅を有する補助指標として利用することができ、番組全体を考慮した音声レベルの調整が一層容易となる。
【0031】
〔超過ラウドネス値・不足ラウドネス値〕
次に、補助指標として、超過ラウドネス値及び不足ラウドネス値を算出する手法について説明する。前述のとおり、前記非特許文献2のARIB TR−B32の運用規定によれば、番組全体の平均ラウドネス値について、ターゲットラウドネス値L
tに対し±1LKFSの許容上限値及び許容下限値(許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
l)が定められている。許容上限ラウドネス値L
uと番組の時間長との積の値は、現在時点の平均ラウドネス値L
k(測定開始時点から現在時点までの間のターゲットラウドネス値L
tに対する平均ラウドネス値L
k)の総和の上限の許容値であると捉えることができる。また、許容下限ラウドネス値L
lと番組の時間長との積の値は、現在時点の平均ラウドネス値L
kの総和の下限の許容値であると捉えることができる。
【0032】
そこで、本発明では、現在時点において、ターゲットラウドネス値L
tに対する平均ラウドネス値L
kの超過分の総和及び不足分の総和をそれぞれ算出すると共に、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lと番組の時間長との積を算出し、これらの比(超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLL)を補助指標として算出する。
【0033】
すなわち、本発明では、測定開始時点から測定終了時点までの間の測定時間長における、ターゲットラウドネス値L
t及び許容上限ラウドネス値L
uの差分を示す超過の許容限量と、測定開始時点から現在時点までの間の時間長における、平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
t以上である場合の平均ラウドネス値L
k及びターゲットラウドネス値L
tの差分を示す超過量との間の比を、超過ラウドネス値ELLとして算出する。また、本発明では、測定開始時点から測定終了時点までの間の測定時間長における、ターゲットラウドネス値L
t及び許容下限ラウドネス値L
lの差分を示す不足の許容限量と、測定開始時点から現在時点までの間の時間長における、平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
t以下である場合の平均ラウドネス値L
k及びターゲットラウドネス値L
tの差分を示す不足量との間の比を、不足ラウドネス値SLLとして算出する。
【0034】
これにより、番組制作者は、番組全体でのラウドネス値許容限に対する、現在時点における平均ラウドネス値L
kの超過及び不足の程度を知ることができる。したがって、番組制作者は、測定終了時点の番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに近づけるための補助指標として利用することができ、番組全体を考慮した音声レベルの調整が容易となる。
【0035】
図2は、超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを算出する際の、ブロック毎の二乗平均値の推移イメージを示す図である。横軸、縦軸、番組全体のブロック数を示す測定時間長N
all、現在時点のブロック数k及び有効ブロック数mは、
図1と同様である。ターゲットラウドネス値L
tに対応するターゲット二乗平均値をZ
t、許容上限ラウドネス値L
uに対応する二乗平均値(許容上限二乗平均値)をZ
u、許容下限ラウドネス値L
lに対応する二乗平均値(許容下限二乗平均値)をZ
l、現在時点の二乗平均値(測定二乗平均値)をZ
iとする。
【0036】
ターゲット二乗平均値Z
tを基準とした二乗平均値Z
iの超過分を、測定開始時点から現在時点のブロック数iまでの各ブロックにて加算した総和と、許容される最大の超過分との間の比(超過許容上限比)は、以下の式で表される。
[数4]
【0037】
また、ターゲット二乗平均値Z
tを基準とした二乗平均値Z
iの不足分を、測定開始時点から現在時点のブロック数iまでの各ブロックにて加算した総和と、許容される最大の不足分との間の比(不足許容下限比)は、以下の式で表される。
[数5]
【0038】
また、前記式(4)は、以下のように書き換えることができる。
[数6]
【0039】
また、前記式(5)は、以下のように書き換えることができる。
[数7]
【0040】
前記式(6)を対数尺度で表し、これを超過ラウドネス値ELL(Excess Loudness Level)と呼ぶ。
[数8]
【0041】
また、前記式(7)を対数尺度で表し、これを不足ラウドネス値SLL(Shortage Loudness Level)と呼ぶ。
[数9]
【0042】
これらの超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLは、番組制作者により調整される音声レベルに対し、経過時間に依存することなく同じ度合いで変動する値であり、ゲーティング処理の影響を除けばリニアに変動する。これに対し、現在時点の平均ラウドネス値L
kは、測定開始に近い時点で算出された場合と測定終了に近い時点で算出された場合とを比較すると、音声レベルに対する変動の度合いが異なる。つまり、測定開始に近い時点で平均ラウドネス値L
kが算出されると、音声レベルの変動に伴い、平均ラウドネス値L
kも連動して変動するが、測定終了に近い時点で平均ラウドネス値L
kが算出された場合、音声レベルが変動しても、平均ラウドネス値L
kはさほど変動しない。つまり、現在時点の平均ラウドネス値L
kは、番組制作者により調整される音声レベルに対し、経過時間に依存した異なる度合いで変動する値であり、リニアに変動しない。
【0043】
したがって、番組制作者は、超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを補助指標として参照することにより、現在時点の平均ラウドネス値L
kを指標として参照する場合に比べ、音声レベルの調整が容易となる。
【0044】
このように、本発明では、番組制作時において、残時間目標平均ラウドネス値L
0、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値、並びに、超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLのうちの少なくとも一つを補助指標として算出する。これにより、番組制作者は、この補助指標を参照することで、測定される番組全体の平均ラウドネス値を、予め設定されたターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。つまり、番組制作者は、現在時点までの平均ラウドネス値L
kだけでは得られない、番組の時間長全体を考慮した音声レベルの調整が可能となる。
【0045】
〔音声レベル監視装置〕
次に、本発明の実施形態による音声レベル監視装置について説明する。
図3は、音声レベル監視装置の構成を示すブロック図である。この音声レベル監視装置1は、番組制作者等のユーザにより、測定したい時間長である測定時間長N
all及び目標とするラウドネス値であるターゲットラウドネス値L
t等が予め設定される場合において、番組の音声レベルを監視し、番組の音声レベルを調整するための補助指標を算出し画面表示する装置である。
【0046】
音声レベル監視装置1は、平均ラウドネス値算出手段10、平均ラウドネス値表示手段11、見込み有効ブロック数算出手段12、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14、超過・不足ラウドネス値算出手段15及び超過・不足ラウドネス値表示手段16を備えている。残時間目標平均ラウドネス値算出手段13及び超過・不足ラウドネス値算出手段15により、補助指標算出手段が構成される。
【0047】
音声レベル監視装置1には、入力音声の音声信号(所定チャンネル数の音声信号)、ターゲットラウドネス値L
t、測定時間長N
all、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lが入力される。そして、音声レベル監視装置1により、現在時点の平均ラウドネス値L
kが算出され、補助指標として、残時間目標平均ラウドネス値L
0、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値、残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値、並びに、超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLのうちの少なくとも一つが算出され、画面表示される。
【0048】
ターゲットラウドネス値L
t、測定時間長N
all、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lは、予め設定された値として音声レベル監視装置1に入力される。
【0049】
〔平均ラウドネス値算出手段10〕
平均ラウドネス値算出手段10は、入力音声の音声信号を入力し、前記非特許文献1の勧告ITU−R BS.1770−3の規定に従い、測定開始時点から現在時点までの間の平均ラウドネス値L
k(現在時点の平均ラウドネス値L
k)を算出すると共に、後述する有効ブロック数m等を算出する。
【0050】
具体的には、平均ラウドネス値算出手段10は、所定時間長のブロックを単位としたブロック毎に、音声信号の二乗平均値Z
kを算出する(ブロック毎の二乗平均値算出処理を行う)。
【0051】
次に、平均ラウドネス値算出手段10は、ブロック毎に算出した二乗平均値Z
kを用いて、閾値処理により所定の大きさ以下の無音とみなせるブロックの二乗平均値Z
kを破棄する(絶対ゲーティング処理を行う)。
【0052】
次に、平均ラウドネス値算出手段10は、絶対ゲーティング処理にて破棄されなかったブロックの二乗平均値Z
iを用いて、閾値処理により所定の大きさ以下の小音とみなせるブロックの二乗平均値Z
iを破棄し、破棄されなかったブロックの二乗平均値Z
iを用いて、測定開始時点から現在時点までの間の二乗平均値(現在時点の二乗平均値)
、現在時点の平均ラウドネス値L
k及び有効ブロック数mを算出する(相対ゲーティング処理を行う)。
【0053】
平均ラウドネス値算出手段10により算出された有効ブロック数mは、見込み有効ブロック数算出手段12、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13及び超過・不足ラウドネス値算出手段15に出力される。また、平均ラウドネス値算出手段10により算出された現在時点の平均ラウドネス値L
kに対応する二乗平均値
は、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13及び超過・不足ラウドネス値算出手段15に出力される。また、平均ラウドネス値算出手段10により算出された現在時点の平均ラウドネス値L
kは、平均ラウドネス値表示手段11に出力される。
【0054】
図4は、平均ラウドネス値算出手段10によるブロック毎の二乗平均値算出処理の一例を示すフローチャートであり、5チャンネルの入力音声の例を示している。平均ラウドネス値算出手段10は、5チャンネルの入力音声の音声信号を入力し(ステップS401)、チャンネル毎に、400msの時間長をブロックとして、ブロックの音声信号を切り出す(ステップS402)。
【0055】
平均ラウドネス値算出手段10は、チャンネル毎のブロックの音声信号に対し、K特性フィルタ処理を施し(ステップS403)、二乗平均値を算出し(ステップS404)、二乗平均値に対し、予め設定されたチャンネル毎の重み係数を乗算し(ステップS405)、チャンネル毎の乗算結果を全チャンネルにおいて加算する(ステップS406)。そして、平均ラウドネス値算出手段10は、現在時点に対応するブロック数kをインクリメントし(ステップS407)、ステップS406の加算結果を現在時点のブロックの二乗平均値Z
kとして生成する(ステップS408)。
【0056】
尚、前記非特許文献1の勧告ITU−R BS.1770−3の規定によれば、入力音声のブロックは、100ms毎にシフトする。したがって、ブロック毎の二乗平均値算出処理では、現在時点の前後において、重なりをもったブロックの音声信号にて処理される。ブロック数kは、測定開始時点に0が設定され、それ以降逐次カウントアップする。
【0057】
このように、平均ラウドネス値算出手段10は、ブロック毎の二乗平均値算出処理により、所定時間長のブロックを単位としたブロック毎に、音声信号の二乗平均値(k番目のブロックの二乗平均値)Z
kを算出する。そして、k番目のブロックの二乗平均値Z
kを用いて、後述する
図5に示す絶対ゲーティング処理及び後述する
図6に示す相対ゲーティング処理が行われる。
【0058】
図5は、平均ラウドネス値算出手段10による絶対ゲーティング処理を示すフローチャートである。平均ラウドネス値算出手段10は、以下の式により、ブロック毎の二乗平均値算出処理により算出されたk番目のブロックの二乗平均値Z
kを、k番目のブロックのラウドネス値(モメンタリーラウドネス値)LL
kに変換する(ステップS501,ステップS502)。
[数10]
LL
k=−0.691+10log
10Z
k ・・・(10)
前記式(10)は、二乗平均値Z
kとラウドネス値LL
kとの間の関係を定義する式であり、前記式(3)と同様である。
【0059】
平均ラウドネス値算出手段10は、k番目のブロックのラウドネス値LL
kが−70LKFSよりも大きいか否かを判定し(ステップS503)、ラウドネス値LL
kが−70LKFSよりも大きくないと判定した場合(ステップS503:N)、k番目のブロックの二乗平均値Z
kを破棄する(ステップS504)。これにより、k番目のブロックの音声信号は、−70LKFS以下の無音とみなされ、聴感上番組全体の音の大きさに寄与しないとして、その二乗平均値Z
kが破棄される。
【0060】
一方、平均ラウドネス値算出手段10は、ラウドネス値LL
kが−70LKFSよりも大きいと判定した場合(ステップS503:Y)、k番目のブロックの二乗平均値Z
kを、
図3には図示していないメモリに保存すると共に(ステップS505)、有効ブロック数nをインクリメントする(ステップS506)。これにより、k番目のブロックの音声信号は、無音でないとみなされ、聴感上番組全体の音の大きさに寄与するとして、その二乗平均値Z
kがメモリに保存される。尚、有効ブロック数nは、処理の開始において0に設定され、ステップS506においてカウントアップされる。
【0061】
平均ラウドネス値算出手段10は、k番目のブロックにおける有効ブロック数nの二乗平均値
を算出し(ステップS507)、
図3には図示していないメモリに保存する(ステップS508)。
【0062】
具体的には、平均ラウドネス値算出手段10は、
図3には図示していないメモリから、ステップS508にて保存した有効ブロック数(n−1)の二乗平均値
を読み出し、これにk番目のブロックの二乗平均値Z
kを加算し、加算結果を有効ブロック数nで除算し、除算結果をk番目のブロックにおける有効ブロック数nの二乗平均値
として求める。
【0063】
このように、平均ラウドネス値算出手段10は、絶対ゲーティング処理により、ブロック毎に算出した二乗平均値Z
kを用いて、閾値処理にて所定の大きさ以下の無音とみなすことができる二乗平均値Z
kを破棄する。
【0064】
図6は、平均ラウドネス値算出手段10による相対ゲーティング処理を示すフローチャートである。平均ラウドネス値算出手段10は、前記式(10)を用いて、絶対ゲーティング処理により算出されたk番目のブロックにおける有効ブロック数nの二乗平均値
を、ラウドネス値L
aに変換する(ステップS601,ステップS602)。
【0065】
平均ラウドネス値算出手段10は、インデックスiに0を設定すると共に、有効ブロック数mに0を設定する(ステップS603)。そして、平均ラウドネス値算出手段10は、インデックスiがブロック数kよりも小さいか否かを判定し(ステップS604)、インデックスiがブロック数kよりも小さいと判定した場合(ステップS604:Y)、ステップS606へ移行する。
【0066】
平均ラウドネス値算出手段10は、
図5のステップS505の処理により保存されたi番目のブロックの二乗平均値Z
iをメモリから読み出し、前記式(10)を用いて、i番目のブロックの二乗平均値Z
iをラウドネス値LL
iに変換する(ステップS605)。
【0067】
平均ラウドネス値算出手段10は、ステップS604及びステップS605から移行して、ラウドネス値L
aから10LKFSを減算し、i番目のブロックのラウドネス値LL
iがその減算結果よりも大きいか否かを判定し(ステップS606)、ラウドネス値LL
iが減算結果よりも大きくないと判定した場合(ステップS606:N)、i番目のブロックの二乗平均値Z
iを破棄する(ステップS607)。これにより、i番目のブロックの音声信号は小音であるとみなされ、その二乗平均値Z
iが破棄される。
【0068】
一方、平均ラウドネス値算出手段10は、ラウドネス値LL
iが減算結果よりも大きいと判定した場合(ステップS606:Y)、有効ブロック数mをインクリメントする(ステップS608)。これにより、i番目のブロックの音声信号は、無音でなくかつ小音でないとみなされる。
【0069】
平均ラウドネス値算出手段10は、i番目のブロックにおける有効ブロック数mの二乗平均値
を算出し(ステップS609)、
図3には図示していないメモリに保存する(ステップS610)。
【0070】
具体的には、平均ラウドネス値算出手段10は、
図3には図示していないメモリから、ステップS610にて保存した有効ブロック数(m−1)の二乗平均値
を読み出し、読み出した二乗平均値にi番目のブロックの二乗平均値Z
iを加算し、加算結果を有効ブロック数mで除算し、除算結果をi番目のブロックにおける有効ブロック数mの二乗平均値
として求める。
【0071】
平均ラウドネス値算出手段10は、インデックスiをインクリメントし(ステップS611)、ステップS604へ移行する。
【0072】
一方、平均ラウドネス値算出手段10は、ステップS604において、インデックスiがブロック数kよりも小さくないと判定した場合(ステップS604:N)、
図3には図示していないメモリからk番目のブロックにおける有効ブロック数mの二乗平均値
を読み出し、これを
とし、前記式(10)を用いて、これを現在時点の平均ラウドネス値L
kに変換する(ステップS612)。
【0073】
このように、平均ラウドネス値算出手段10は、相対ゲーティング処理により、絶対ゲーティング処理にて破棄されなかった二乗平均値Z
iを用いて、閾値処理により所定の大きさ以下の小音とみなせる二乗平均値Z
iを破棄し、破棄されなかった二乗平均値Z
iを用いて、現在時点の二乗平均値
、現在時点の平均ラウドネス値L
k及び有効ブロック数mを算出する。
【0074】
図3に戻って、平均ラウドネス値表示手段11は、平均ラウドネス値算出手段10から現在時点の平均ラウドネス値L
kを入力し、現在時点の平均ラウドネス値L
kを画面表示する。
【0075】
〔見込み有効ブロック数算出手段12〕
見込み有効ブロック数算出手段12は、予め設定された測定時間長N
allを入力すると共に、平均ラウドネス値算出手段10から有効ブロック数mを入力し、前記式(1)により、現在時点における番組全体の見込み有効ブロック数Nを算出する。この見込み有効ブロック数Nは、残時間における全てのブロックが
図5に示した絶対ゲーティング処理及び
図6に示した相対ゲーティング処理によって有効であると仮定した場合に、有効ブロック数mを含むブロック数を示す。見込み有効ブロック数算出手段12により算出された見込み有効ブロック数Nは、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13及び超過・不足ラウドネス値算出手段15に出力される。
【0076】
〔残時間目標平均ラウドネス値算出手段13〕
残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
tを入力すると共に、平均ラウドネス値算出手段10から現在時点の二乗平均値
及び有効ブロック数mを、見込み有効ブロック数算出手段12から見込み有効ブロック数Nをそれぞれ入力する。そして、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、これらの値に基づいて、補助指標である残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出する。残時間目標平均ラウドネス値算出手段13により算出された残時間目標平均ラウドネス値L
0は、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14に出力される。
【0077】
尚、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、
図3に示していないが、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lを入力し、許容上限ラウドネス値L
uに対する残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値、及び、許容下限ラウドネス値L
lに対する残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値も算出する。残時間目標平均ラウドネス値算出手段13により算出された残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値は、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14に出力される。
【0078】
図7は、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13の構成を示すブロック図であり、
図8は、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13の処理を示すフローチャートである。この残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、ラウドネス値/二乗平均値変換段20、メモリ21、残時間目標二乗平均値算出段22及び二乗平均値/ラウドネス値変換段23を備えている。
【0079】
ラウドネス値/二乗平均値変換段20は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
tを入力し(ステップS801)、前記式(10)を用いて、ターゲットラウドネス値L
tをターゲット二乗平均値Z
tに変換し(ステップS802)、メモリ21に保存する。
【0080】
尚、ラウドネス値/二乗平均値変換段20は、前記式(10)を用いて、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lも許容上限二乗平均値及び許容下限二乗平均値にそれぞれ変換し、メモリ21に保存する。
【0081】
残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、平均ラウドネス値算出手段10から現在時点の二乗平均値
及び有効ブロック数mを、見込み有効ブロック数算出手段12から見込み有効ブロック数Nを入力し(ステップS803)、これらの値をメモリ21に保存する。
【0082】
残時間目標二乗平均値算出段22は、メモリ21からターゲット二乗平均値Z
t、現在時点の二乗平均値
、有効ブロック数m及び見込み有効ブロック数Nを読み出し、前記式(2)により、残時間目標二乗平均値
を算出する(ステップS804)。残時間目標二乗平均値算出段22により算出された残時間目標二乗平均値
は、二乗平均値/ラウドネス値変換段23に出力される。
【0083】
尚、残時間目標二乗平均値算出段22は、メモリ21から許容上限二乗平均値及び許容下限二乗平均値も読み出し、前記式(2)により、残時間目標二乗平均値の許容上限値及び許容下限値を算出する。残時間目標二乗平均値算出段22により算出された残時間目標二乗平均値の許容上限値及び許容下限値も、二乗平均値/ラウドネス値変換段23に出力される。
【0084】
二乗平均値/ラウドネス値変換段23は、残時間目標二乗平均値算出段22から残時間目標二乗平均値
を入力し、前記式(10)を用いて、これを残時間目標平均ラウドネス値L
0に変換する(ステップS805)。二乗平均値/ラウドネス値変換段23により変換された残時間目標平均ラウドネス値L
0は、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14に出力される(ステップS806)。
【0085】
尚、二乗平均値/ラウドネス値変換段23は、残時間目標二乗平均値算出段22から残時間目標二乗平均値の許容上限値及び許容下限値も入力し、前記式(10)を用いて、これらを残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値に変換する。二乗平均値/ラウドネス値変換段23により変換された残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値も、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14に出力される。
【0086】
図3に戻って、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14は、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13から残時間目標平均ラウドネス値L
0、並びに残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値入力し、これらを補助指標として画面表示する。
【0087】
このように、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13により、現在時点において、残時間で目標とすべきラウドネス値である残時間目標平均ラウドネス値L
0が算出され、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14により補助指標として画面表示される。この残時間目標平均ラウドネス値L
0は、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値を当該残時間目標平均ラウドネス値L
0に一致させることで、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに近づけることを可能とする値である。しかし、実際には、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値は、現在時点以降の未来の値であるため、瞬時的なラウドネス値の変動から予測するしかない。
【0088】
したがって、番組制作者は、画面表示された残時間目標平均ラウドネス値L
0を参照し、現在時点以降において、瞬時的なラウドネス値の平均的な値を残時間目標平均ラウドネス値L
0に一致させるように、音声レベルを調整することにより、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0089】
また、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13により、現在時点において、残時間で、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lを目標とした場合の残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値が算出され、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14により補助指標として画面表示される。この残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値は、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値を当該残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値以下にすることで、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値を許容上限ラウドネス値L
u以下にすることを可能とする値である。また、この残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値は、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値を当該残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値以上にすることで、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値を許容下限ラウドネス値L
l以上にすることを可能とする値である。しかし、実際には、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値は、現在時点以降の未来の値であるため、瞬時的なラウドネス値の変動から予測するしかない。
【0090】
したがって、番組制作者は、画面表示された残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値を参照し、現在時点以降において、瞬時的なラウドネス値の平均的な値が残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値以下であってかつ許容下限値以上になるように、音声レベルを調整することにより、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0091】
〔超過・不足ラウドネス値算出手段15〕
図3に戻って、超過・不足ラウドネス値算出手段15は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
t、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lを入力すると共に、平均ラウドネス値算出手段10から二乗平均値
及び有効ブロック数mを、見込み有効ブロック数算出手段12から見込み有効ブロック数Nをそれぞれ入力する。そして、超過・不足ラウドネス値算出手段15は、これらの値に基づいて、補助指標である超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを算出する。超過・不足ラウドネス値算出手段15により算出された超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLは、超過・不足ラウドネス値表示手段16に出力される。
【0092】
図9は、超過・不足ラウドネス値算出手段15の構成を示すブロック図であり、
図10は、超過・不足ラウドネス値算出手段15の処理を示すフローチャートである。この超過・不足ラウドネス値算出手段15は、ラウドネス値/二乗平均値変換段30、メモリ31及び超過・不足ラウドネス値算出段32を備えている。
【0093】
ラウドネス値/二乗平均値変換段30は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
t、許容上限ラウドネス値L
u及び許容下限ラウドネス値L
lを入力し(ステップS1001)、前記式(10)を用いて、これらの値を、ターゲット二乗平均値Z
t、許容上限二乗平均値Z
u及び許容下限二乗平均値Z
lにそれぞれ変換し(ステップS1002)、メモリ31に保存する。
【0094】
超過・不足ラウドネス値算出手段15は、平均ラウドネス値算出手段10から二乗平均値
及び有効ブロック数mを、見込み有効ブロック数算出手段12から見込み有効ブロック数Nを入力し(ステップS1003)、これらの値をメモリ31に保存する。
【0095】
超過・不足ラウドネス値算出段32は、メモリ31からターゲット二乗平均値Z
t、許容上限二乗平均値Z
u、許容下限二乗平均値Z
l、二乗平均値
、有効ブロック数m及び見込み有効ブロック数Nを読み出し、二乗平均値
とターゲット二乗平均値Z
tとを比較する(ステップS1004)。
【0096】
超過・不足ラウドネス値算出段32は、ステップS1004において、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
t以上であると判定した場合、前記式(8)により、超過ラウドネス値ELLを算出し(ステップS1005)、前記式(9)により、不足ラウドネス値SLLに−∞を設定する(ステップS1006)。
【0097】
一方、超過・不足ラウドネス値算出段32は、ステップS1004において、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
tよりも小さいと判定した場合、前記式(8)により、超過ラウドネス値ELLに−∞を設定し(ステップS1007)、前記式(9)により、不足ラウドネス値SLLを算出する(ステップS1008)。
【0098】
超過・不足ラウドネス値算出段32により算出または設定された超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLは、超過・不足ラウドネス値表示手段16に出力される(ステップS1009)。
【0099】
〔超過・不足ラウドネス値表示手段16〕
図3に戻って、超過・不足ラウドネス値表示手段16は、超過・不足ラウドネス値算出手段15から超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを入力し、これらの値を画面表示する。
【0100】
図11は、超過・不足ラウドネス値表示手段16により画面表示された超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLの表示形態の一例を示す図である。超過ラウドネス値ELLは、現在時点の平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tよりも大きい場合にのみ、有限値を持つように定義され、また、不足ラウドネス値SLLは、現在時点の平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tよりも小さい場合にのみ、有限値を持つように定義される。超過ラウドネス値ELLまたは不足ラウドネス値SLLの一方が値を持つ場合、他方は−∞(dB)となる。
【0101】
図11に示す超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLの表示形態は、これらのレベルを、1本のレベルメータ内に表示したものである。超過ラウドネス値ELLのレベルは、レベルメータの中心から上端までの間の上部(超過していることを示す側)に表示され、不足ラウドネス値SLLのレベルは、レベルメータの中心から下端までの間の下部(不足していることを示す側)に表示される。レベルメータの中心は−∞(dB)であり、現在時点の平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tに一致している場合、レベルはレベルメータの中心の位置に表示される。また、平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tよりも大きい場合、レベルは中心の位置よりも上側へ振れ、逆に不足している場合、レベルは中心の位置よりも下側へ振れる。
【0102】
平均ラウドネス値L
kが許容上限ラウドネス値L
uよりも大きい場合、レベルメータは上部の0(dB)の位置よりも上側へ振れる。この超過部分を赤色等で表示する(平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tよりも大きく、かつ許容上限ラウドネス値L
u以下の場合とは異なる表示形態で表示する)ことにより、番組制作者に対し、注意を喚起することができる。また、平均ラウドネス値L
kが許容下限ラウドネス値L
lよりも小さい場合、レベルメータは下部の0(dB)の位置よりも下側へ振れる。この不足部分を赤色等で表示する(平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tよりも小さく、かつ許容下限ラウドネス値L
l以上の場合とは異なる表示形態で表示する)ことにより、番組制作者に対し、注意を喚起することができる。
【0103】
図11(a)は、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
t以上であり、超過ラウドネス値ELLが−∞より大きく、かつ0より小さい場合の表示形態を示している。番組制作者は、
図11(a)に示す画面表示により、超過ラウドネス値ELLの程度を知ることができ、平均ラウドネス値L
kが許容上限ラウドネス値L
uに達するまで余裕があることを認識することができる。
【0104】
図11(b)は、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
t以上であり、超過ラウドネス値ELLが0以上である場合の表示形態を示している。番組制作者は、
図11(b)に示す画面表示により、超過ラウドネス値ELLの程度を知ることができ、平均ラウドネス値L
kが許容上限ラウドネス値L
uに達しており、超過していることを認識することができる。
【0105】
図11(c)は、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
tより小さく、不足ラウドネス値SLLが−∞より大きく、かつ0より小さい場合の表示形態を示している。番組制作者は、
図11(c)に示す画面表示により、不足ラウドネス値SLLの程度を知ることができ、平均ラウドネス値L
kが許容下限ラウドネス値L
lに達するまで余裕があることを認識することができる。
【0106】
図11(d)は、二乗平均値
がターゲット二乗平均値Z
tより小さく、不足ラウドネス値SLLが0以上である場合の表示形態を示している。番組制作者は、
図11(d)に示す画面表示により、不足ラウドネス値SLLの程度を知ることができ、平均ラウドネス値L
kが許容下限ラウドネス値L
lに達しており、不足していることを認識することができる。
【0107】
このように、
図11(a)〜(d)に示した表示形態により、番組制作者は、直感的に超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを知ることができ、平均ラウドネス値L
kの超過、不足及び余裕の程度を認識することができる。したがって、番組制作者は、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに一層簡便に近づけることができる。
【0108】
以上のように、本発明の実施形態の音声レベル監視装置1によれば、平均ラウドネス値算出手段10は、ブロック毎の二乗平均値算出処理により、ブロック毎に音声信号の二乗平均値Z
kを算出し、絶対ゲーティング処理により、二乗平均値Z
kを用いて、閾値処理により所定の大きさ以下の無音とみなせる二乗平均値Z
kを破棄し、相対ゲーティング処理により、絶対ゲーティング処理にて破棄されなかった二乗平均値Z
iを用いて、閾値処理により所定の大きさ以下の小音とみなせる二乗平均値Z
iを破棄し、破棄されなかった二乗平均値Z
iを用いて、現在時点の二乗平均値
、現在時点の平均ラウドネス値L
k、及び破棄されなかった二乗平均値Z
iの数である有効ブロック数mを算出するようにした。
【0109】
そして、見込み有効ブロック数算出手段12は、予め設定された測定時間長N
all及び有効ブロック数mを用いて、前記式(1)により、現在時点における番組全体の見込み有効ブロック数Nを算出するようにした。また、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
tに対応するターゲット二乗平均値Z
t、現在時点の二乗平均値
、有効ブロック数m及び見込み有効ブロック数Nを用いて、前記(2)及び前記(3)により、補助指標である残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出する。同様に、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、許容上限ラウドネス値L
uに対する残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値、及び、許容下限ラウドネス値L
lに対する残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容下限値を補助指標として算出する。
【0110】
補助指標である残時間目標平均ラウドネス値L
0は、残時間を考慮した指標であって、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値をこの値に一致させることで、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに近づけることを可能とする値である。しかし、実際には、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値は、現在時点以降の未来の値であるため、瞬時的なラウドネス値の変動から予測するしかない。したがって、番組制作者は、この残時間目標平均ラウドネス値L
0を参照し、瞬時的なラウドネス値の平均的な値が残時間目標平均ラウドネス値L
0に一致するように音声レベルを調整することで、測定開始時点からの経過時間に関わることなく、番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0111】
補助指標である残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値は、残時間を考慮した指標であって、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値を、許容上限値以下であってかつ許容下限値以上の値とすることで、測定終了時点における番組全体の平均ラウドネス値を、許容上限ラウドネス値L
u以下であってかつ許容下限ラウドネス値L
l以上の値に近づけることを可能とする値である。しかし、実際には、現在時点から測定終了時点までの平均ラウドネス値は、現在時点以降の未来の値であるため、瞬時的なラウドネス値の変動から予測するしかない。したがって、番組制作者は、これらの残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値及び許容下限値を参照し、瞬時的なラウドネス値の平均的な値が残時間目標平均ラウドネス値L
0の許容上限値以下であってかつ許容下限値以上になるように音声レベルを調整することで、測定開始時点からの経過時間に関わることなく、番組全体の平均ラウドネス値をターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0112】
さらに、超過・不足ラウドネス値算出手段15は、予め設定されたターゲットラウドネス値L
tに対応するターゲット二乗平均値Z
t、予め設定された許容上限ラウドネス値L
uに対応する許容上限二乗平均値Z
u、予め設定された許容下限ラウドネス値L
lに対応する許容下限ラウドネス値L
l、現在時点の二乗平均値
、有効ブロック数m及び見込み有効ブロック数Nを用いて、前記(8)及び前記(9)により、補助指標である超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを算出するようにした。
【0113】
補助指標である超過ラウドネス値ELLは、残時間を考慮した指標であって、現在時点における平均ラウドネス値L
kの超過及び余裕の程度を表す値であり、補助指標である不足ラウドネス値SLLは、残時間を考慮した指標であって、現在時点における平均ラウドネス値L
kの不足及び余裕の程度を表す値である。したがって、番組制作者は、これらの超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを参照することで、測定開始時点からの経過時間に関わることなく、測定される番組全体の平均ラウドネス値L
kをターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0114】
尚、本発明の実施形態による音声レベル監視装置1のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。音声レベル監視装置1は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。音声レベル監視装置1に備えた平均ラウドネス値算出手段10、平均ラウドネス値表示手段11、見込み有効ブロック数算出手段12、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13、残時間目標平均ラウドネス値表示手段14、超過・不足ラウドネス値算出手段15及び超過・不足ラウドネス値表示手段16の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【0115】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、前記実施形態では、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、見込み有効ブロック数N、及び番組全体のブロック数である測定時間長N
all等を用いて、残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出するようにした。この例は、番組の時間長が固定であり、全体のブロック数である測定時間長N
allが固定の時間長に設定されている場合を示している。
【0116】
これに対し、番組の時間長が固定でなく可変であり、全体のブロック数である測定時間長N
allが設定されない場合も、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13により残時間目標平均ラウドネス値L
0が算出される。具体的には、番組全体のブロック数である測定時間長N
allを想定した場合に、測定時間長N
allに対して十分短い時間長の固定ブロック数が予め設定されるものとする。残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、現在時点を基準にして、現在時点よりも固定ブロック数後の時刻(時間経過と共にシフトする)における平均ラウドネス値L
kをターゲットラウドネス値L
tに一致させるように、前記式(2)及び前記式(3)により、残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出するようにしてもよい。この場合、前記式(1)において、見込み有効ブロック数Nは、測定時間長N
allが、測定開始時点から現在時点よりも固定ブロック数後の時点までの間のブロック数であるとして算出される。また、算出処理の途中で番組の終了が設定された場合、固定ブロック数は、現在時点から番組の終了である測定終了時点までの間の残りブロック数が固定ブロック数より小さくなったタイミングから、または予め設定されたタイミングから、時間の経過と共にカウントダウンするようにしてもよい。
【0117】
これにより、番組の時間長が固定でなく可変であり、番組の終了が予め設定されない場合であっても、補助指標である残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出することができる。
【0118】
また、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、測定開始時点において、測定終了時点を、測定開始時点から測定終了時点までの間の番組全体のブロック数である測定時間長N
all後の時点に設定する。これにより、測定時間長を固定の時間長とすることができる。そして、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、オペレータの操作に従って切り替え信号を入力すると、測定終了時点を、現在時点よりも所定時間後の時点に設定することで、測定終了時点を変更する。これにより、測定時間長を可変の時間長とすることができる。また、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、オペレータの操作に従って終了信号を入力すると、測定終了時点を現在時点よりも所定時間後の時点に設定する処理を止め、既に設定済みの測定終了時点を固定にする。
【0119】
また、番組の構成が予め決定されている場合には、番組途中の複数の時点において目標とする番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’をそれぞれ設定しておき、それぞれの時点を測定終了時点とみなすようにしてもよい。番組途中の複数の時点における番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’は、番組全体の平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
tに一致するように、設定される。番組前半の音声レベルを低くし、番組後半の音声レベルを高くするように番組が構成された場合、番組全体の平均ラウドネス値L
kがターゲットラウドネス値L
t=−24LKFSに一致することを前提に、例えば、番組前半の番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’=−24.5LKFS、及び番組後半の番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’=−23.5LKFSが予め設定される。
【0120】
この場合、見込み有効ブロック数算出手段12は、前記式(1)において、測定時間長N
allを、測定開始時点から番組途中に設定されたそれぞれの時点までの間のブロック数の時間長とし、見込み有効ブロック数Nを算出する。そして、残時間目標平均ラウドネス値算出手段13は、現在時点において、番組途中に設定された複数の時点のうち直近の時点における番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’を用いて、残時間目標平均ラウドネス値L
0を算出する。
【0121】
これにより、番組制作者は、番組途中に設定された複数の時点のうち直近の時点を測定終了時点として、その番組構成上のターゲットラウドネス値L
t’に対応した残時間目標平均ラウドネス値L
0を補助指標として参照することができ、番組の構成に応じて、番組全体の平均ラウドネス値L
kをターゲットラウドネス値L
tに簡便に近づけることができる。
【0122】
また、前記実施形態では、平均ラウドネス値算出手段10は、相対ゲーティング処理により、絶対ゲーティング処理にて算出したラウドネス値L
aを基準にして閾値処理を行うようにしたが、ラウドネス値L
aの代わりにターゲットラウドネス値L
tを基準にして閾値処理を行うようにしてもよい。これにより、絶対ゲーティング処理にてラウドネス値L
aを算出する必要がなく、相対ゲーティング処理を絶対ゲーティング処理と同様の計算フローで算出することができるため、処理負荷を低減することができる。
【0123】
また、前記実施形態では、超過・不足ラウドネス値表示手段16は、
図11(a)〜(d)に示した表示形態にて、超過ラウドネス値ELL及び不足ラウドネス値SLLを画面表示するようにしたが、この表示形態は一例である。本発明は、この表示形態に限定されるものではなく、番組制作者等のユーザに対し、ラウドネス値の超過、不足及び余裕の程度を直感的に認識させる表示形態であればよい。