【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度総務省「次世代衛星放送システムのための周波数有効利用促進技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】本発明に係る衛星放送システム1は、位相変調された放送波を中継し放射する放送衛星20と、放送衛星の放射パターンを制御する送信機12と、放送波を受信する受信アンテナ31の受信信号から基準信号を生成し、生成した基準信号の位相に基づき受信信号を復調する受信機32と、を備え、送信機12は、放送衛星の放射パターンを切り替える場合、切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを作成し、受信機32は、送信機12が作成した位相情報および切替予告信号を取得し、取得した切替予告信号に示されるタイミングで、取得した位相情報に基づき、受信アンテナ31の受信信号または基準信号の位相を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、デジタル衛星放送波の変調には位相変調が用いられる。位相変調された信号の復調には、位相の基準となる信号(基準信号)が必要であり、基準信号は、受信した放送波から生成される。この技術は、キャリア再生と称され、現行の12GHz帯衛星放送システムなどでも実用化されている。ただし、基準信号の生成は、放送波または放送波に含まれるTMCC(Transmission Multiplexing Configuration Control)が正しく復調されていることが前提となる。
【0008】
上述したように、21GHz帯衛星放送システムでは、放射パターンを切り替えることが検討されている。ここで、放射パターンの切り替えの際に、受信機の受信信号の位相が変化することがある。
【0009】
図6は、放送衛星の放射パターンの一例を示す図であり、
図6(a)は全国に均一に電力が放射される放射パターン(全国均一パターン)を示し、
図6(b)は大阪に向けて増力ビームが形成される放射パターン(大阪増力パターン)を示す。また、
図7は、各受信地域で受信される放送波(受信信号)の位相分布を示す図であり、
図7(a)は全国均一パターンにおける位相分布を示し、
図7(b)は大阪増力パターンにおける位相分布を示す。
【0010】
放射パターンが全国均一パターンから大阪増力パターンに切り替えられると、
図7に示すように、東京では、受信信号の位相が、約158.7度から167.2度に約8.5度変化している。このように、放送衛星の放射パターンが切り替えられると、受信地域によっては、受信信号の位相が離散的に変化してしまう。受信信号の位相が離散的に変化すると、受信機において放送波またはTMCCを正しく復調できず、キャリア再生を行うことができない。そのため、受信エラーが発生してしまうという問題がある。
【0011】
特許文献1に開示されている技術は、増力ビームの形成による過入力を防ぐための技術であり、放射パターンの切り替えによる受信信号の位相の変化に対応するものではない。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、放送衛星の放射パターンの制御による受信エラーの発生を低減することができる衛星放送システム、受信機、送信機、受信方法および送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る衛星放送システムは、位相変調された放送波を中継し放射する放送衛星と、前記放送衛星の放射パターンを制御する送信機と、前記放送衛星から放射された放送波を受信する受信アンテナの受信信号から基準信号を生成し、該生成した基準信号の位相に基づき前記受信信号を復調する受信機と、を備え、前記送信機は、前記放送衛星の放射パターンを切り替える場合、該切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、前記放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを作成し、前記受信機は、前記送信機が作成した前記位相情報および前記切替予告信号を取得し、該取得した切替予告信号に示されるタイミングで、前記取得した位相情報に基づき、前記受信アンテナの受信信号または前記基準信号の位相を制御する。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る受信機は、放送衛星から放射された放送波を受信する受信アンテナの受信信号から得られる基準信号の位相に基づき前記受信信号を復調する受信機であって、前記放送衛星の放射パターンを制御する送信機が生成した、切り替え後の放射パターンに対応する、放送波の受信地域における受信信号の位相に関する位相情報と、前記放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを取得し、該取得した切替予告信号に示されるタイミングで、前記取得した位相情報に基づき、前記受信アンテナの受信信号または前記基準信号の位相を制御する位相制御部を有する。
【0015】
また、本発明に係る受信機において、前記受信アンテナの受信信号に対して前記基準信号を用いて直交復調を行う直交復調回路と、前記直交復調回路による直交復調により生成されたIQ信号に基づき、前記基準信号を生成するキャリア再生回路と、を有し、前記位相制御部は、前記位相情報に基づき、前記キャリア再生回路に前記基準信号の位相を制御させることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る受信機において、前記受信アンテナの受信信号を増幅する高周波増幅部と、選択された放送局に対応する周波数の局部発振信号を出力する局部発振器と、前記高周波増幅部により増幅された信号と前記局部発振信号とを合成するミキサとを有し、前記高周波増幅部には、前記受信信号の位相をシフトさせる移相器が設けられ、前記位相制御部は、前記位相情報に基づき、前記移相器による前記受信信号の位相のシフト量を制御することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る受信機において、前記受信アンテナの受信信号を増幅する高周波増幅部と、選択された放送局に対応する周波数の局部発振信号を出力する局部発振器と、前記局部発振器から出力された局部発振信号の位相をシフトさせる移相器と、前記高周波増幅部により増幅された信号と前記移相器によりシフトされた局部発振信号とを合成するミキサとを有し、前記位相制御部は、前記位相情報に基づき、前記移相器による前記局部発振信号の位相のシフト量を制御することが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る受信機において、前記切替予告信号および前記位相情報をそれぞれ、前記放送衛星を経由して、または、前記放送衛星を経由しない、所定の通信路を介して取得することが好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る送信機は、位相変調された放送波を中継し放射する放送衛星の放射パターンを制御する送信機であって、前記放送衛星の放射パターンを切り替える場合、該切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、前記放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを作成する制御部と、前記制御部が作成した位相情報および切替予告信号をそれぞれ、前記放送衛星に送信し、または、前記放送衛星を経由しない所定の通信路を介して、前記放送波を復調する受信機に送信する通信部と、を有する。
【0020】
また、本発明に係る送信機において、前記制御部は、前記放送衛星の放射パターンを切り替えるよりも規定時間だけ前に前記切替予告情報を前記通信部に送信させることが好ましい。
【0021】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る受信方法は、放送衛星から放射された放送波を受信する受信アンテナの受信信号から得られる基準信号の位相に基づき前記受信信号を復調する受信機における受信方法であって、前記放送衛星の放射パターンを制御する送信機が生成した、切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、前記放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを取得するステップと、前記取得した切替予告信号に示されるタイミングで、前記取得した位相情報に基づき、前記受信アンテナの受信信号または前記基準信号の位相を制御するステップと、を含む。
【0022】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る送信方法は、位相変調された放送波を中継し放射する放送衛星の放射パターンを制御する送信機における送信方法であって、前記放送衛星の放射パターンを切り替える場合、該切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、前記放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを作成するステップと、前記作成した位相情報および切替予告信号をそれぞれ、前記放送衛星に送信し、または、前記放送衛星を経由しない所定の通信路を介して前記放送波を復調する受信機に送信するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る衛星放送システム、受信機、送信機、受信方法および送信方法によれば、上述した課題を解決し、放送衛星の放射パターンの制御による受信エラーの発生を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る衛星放送システム1の構成を示す図である。
【0027】
図1に示す衛星放送システム1は、送信システム10と、放送衛星20と、受信システム30とを備える。
【0028】
送信システム10は、放送衛星20の動作を制御するコマンド信号を放送衛星20に送信する。また、送信システム10は、映像信号、音声信号、受信システム30に対する制御信号などを多重して変調し、放送波として放送衛星20に送信する。放送波の変調には、BPSK(Binary Phase Shift Keying),QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),8PSKなどの位相変調が用いられる。
【0029】
放送衛星20は、送信システム10から送信されてきたコマンド信号に従い動作する。また、放送衛星20は、送信システム10から送信されてきた映像信号、音声信号、制御信号などを含む放送波を受信し、周波数変換及び増幅を行い、地球(サービスエリア)に向けて放射する。
【0030】
放送衛星20は、例えば、上述したアレー給電イメージングリフレクタアンテナを備えており、放射パターンを切り替え可能である。
【0031】
図2は、アレー給電イメージングリフレクタアンテナ21の概略構成を示す図である。
図2に示すアレー給電イメージングリフレクタアンテナ21は、配列された複数の(
図2では31個の)ホーンアンテナ22と、給電回路23と、副反射鏡24と、主反射鏡25とを有する。なお、ホーンアンテナ22の数は一例である。
【0032】
複数のホーンアンテナ22はそれぞれ、給電回路23から給電されて、電波を放射する。各ホーンアンテナ22から放射された電波は空間で合成され、例えば、開口径が0.24mの副反射鏡24で反射される。副反射鏡24で反射された電波は、例えば、開口径が1.8mの主反射鏡25で反射されてサービスエリアに放射される。
図2に示すアレー給電イメージングリフレクタアンテナ21において、各ホーンアンテナ22の出力の位相を制御することで、放射パターンを切り替えることができる。
【0033】
図1を再び参照すると、受信システム30は、放送衛星20から放射された放送波を受信し、キャリア再生を行って、映像信号および音声信号を再生する。また、受信システム30は、受信信号に含まれる制御信号に従い動作する。
【0034】
次に、送信システム10および受信システム30の構成について説明する。なお、放送衛星20は、送信システム10の制御に従い、放送波を放射するための構成を有し、そのような構成は当業者によく知られているため、説明を省略する。
【0035】
まず、送信システム10の構成について説明する。
【0036】
図1に示す送信システム10は、送信アンテナ11と、送信機12とを有する。
【0037】
送信アンテナ11は、コマンド信号と放送波とを放送衛星20に送信する。放送波は、映像信号、音声信号、受信システム30に対する制御信号などを多重し変調したものである。
【0038】
送信機12は、通常、衛星事業者により管理される地上送信機である。送信機12は、送信アンテナ11を介して放送衛星20と通信可能である。また、送信機12は、後述する受信システム30の受信機32と、放送衛星20を経由しない通信を介して、通信可能であってもよい。送信機12は、通信部13と、制御部14とを有する。
【0039】
通信部13は、送信アンテナ11を介して、放送衛星20と通信可能であり、コマンド信号、映像信号、音声信号、受信システム30に対する制御信号などを放送衛星20に送信する。また、通信部13は、放送衛星20を経由しない、インターネットなどの所定の通信路を介して、受信システム30と通信可能であってもよい。
【0040】
制御部14は、送信機12全体の動作を制御する。例えば、制御部14は、コマンド信号、映像信号、音声信号、受信システム30に対する制御信号など生成する。そして、制御部14は、生成したコマンド信号、映像信号、音声信号などを、通信部13に放送衛星20へ送信させる。また、制御部14は、通信部13に、生成した制御信号を放送衛星20へ送信させ、あるいは、放送衛星20を経由しない所定の通信路を介して受信システム30へ送信させる。コマンド信号としては、例えば、放射パターンの切り替えを指示する信号がある。また、本実施形態においては、切り替え後の放射パターンに対応する、放送波の受信地域における受信信号の位相に関する位相情報や、放送衛星20の放射パターンの切り替えタイミングを示す切替予告信号などが、受信システム30に対する制御信号として受信システム30に送信される。
【0041】
次に、受信システム30の構成について説明する。
【0042】
図1に示す受信システム30は、受信アンテナ31と、受信機32とを有する。
【0043】
受信アンテナ31は、放送衛星20から放射された放送波を受信する。
【0044】
受信機32は、受信アンテナ31の受信信号(放送波)から基準信号を生成し(キャリア再生)、生成した基準信号の位相を基準として、受信信号を復調し、映像信号、音声信号などを復号可能とする。また、受信機32は、放送衛星20を介して、あるいは、放送衛星20を経由しない通信路を介して、位相情報および切替予告信号を取得する。そして、受信機32は、取得した切替予告信号に示される放射パターンの切り替えタイミングで、取得した位相情報に基づき、受信アンテナ31の受信信号または基準信号の位相を制御する。
【0045】
次に、本実施形態に係る衛星放送システム1の動作について説明する。
【0046】
まず、送信システム10では、制御部14は、放送衛星20の放射パターンを切り替える場合、切り替え後の放射パターンに対応する、放送波の受信地域における受信信号の位相を計算する。なお、このような計算には、既存のシミュレーション方法を用いることができる。制御部14は、計算結果に基づき、切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報を生成する。また、制御部14は、放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号を生成する。
【0047】
次に、制御部14は、生成した位相情報を放送波に多重して、通信部13に放送衛星20へ送信させ、あるいは、通信部13に、放送衛星20を経由しない所定の通信路を介して生成した位相情報を受信システム30へ送信させる。放送衛星20を介して位相情報が送信される場合には、その位相情報は日本全国に均一に送信される。一方、放送衛星20を介さない、所定の通信路を介して位相情報が送信される場合には、制御部14は、地域単位で位相情報を送信するようにしてもよい。
【0048】
また、制御部14は、生成した切替予告信号を制御信号として放送波に多重し、通信部13に放送衛星20へ送信させる。ここで、制御部14は、実際の放射パターンの切り替えよりも規定時間(規定フレーム数分)だけ前に切替予告信号が放送衛星20により送信されるようにする。なお、制御部14は、放送衛星20を経由しない所定の通信路を介して、切替予告信号を通信部13に受信機32へ送信させてもよい。
【0049】
次に、制御部14は、放射パターンの切り替えを指示する信号をコマンド信号として通信部13に放送衛星20へ送信させる。
【0050】
受信システム30では、受信アンテナ31は、放送衛星20から放射された放送波を受信する。
【0051】
受信機32は、受信アンテナ31の受信信号(放送波)に含まれる切替予告信号を取得する。また、受信機32は、受信信号に含まれる、あるいは、所定の通信路を介して送信機12から送信されてきた位相情報を取得する。
【0052】
そして、受信機32は、取得した切替予告信号に示されるタイミングで、取得した位相情報に基づき、受信アンテナ31の受信信号または基準信号の位相を制御する。具体的には、受信機32は、位相情報に示される、受信機32の設置地域に対応する位相に基づき、受信信号または基準信号の位相を制御する。こうすることで、放送衛星の放射パターンの変更後も、受信信号と基準信号とで位相同期を保つことができる。そのため、受信機32は、放射パターンの切り替え後も、受信信号の復調(映像データ、音声データの復号)が可能となり、受信エラーが発生する可能性を低減することができる。なお、位相情報として全国の地域別位相を一律に全受信機32に送信した場合においても、受信機32は、受信機32の設置時の郵便番号登録などにより、設置地域を把握して、当該地域の位置を認識することができる。また、所定の通信路を介して、受信機32別にそれぞれの設置地域の位相情報を送信してもよい。
【0053】
次に、受信機32の具体的な回路構成例について説明する。
【0054】
図3は、受信機32の回路構成の一例を示す図である。
【0055】
図3に示す受信機32は、高周波回路301と、ミキサ302,303と、A/D変換器304,305と、ルートロールオフフィルタ306,307と、信号処理部308と、クロック生成回路309と、キャリア再生回路310と、90°移相器311と、メモリ312と、位相制御部313とを有する。
【0056】
受信アンテナ31の受信信号は、高周波回路301に入力される。
【0057】
高周波回路301は、受信アンテナ31の受信信号から、選択された放送局に対応する周波数の信号を増幅してミキサ302,303に出力する。
【0058】
ミキサ302は、高周波回路301の出力信号と後述するキャリア再生回路310から出力された基準信号とを混合してA/D変換器304に出力する。
【0059】
ミキサ303は、高周波回路301の出力信号とキャリア再生回路310から出力された基準信号の位相が90°移相器311により90°シフトされた信号とを混合してA/D変換器305に出力する。
【0060】
ミキサ302,303および90°移相器311は、変調信号(高周波回路301の出力信号)を、直交する2つの信号(基準信号および基準信号の位相が90°シフトされた信号)それぞれと混合して、I成分(同相成分)の信号およびQ成分(直交成分)の信号を生成する直交変調を行う直交復調回路314を構成する。
【0061】
A/D変換器304は、ミキサ302から出力されたアナログ信号(I信号)をデジタル信号に変換して、ルートロールオフフィルタ306に出力する。
【0062】
A/D変換器305は、ミキサ303から出力されたアナログ信号(Q信号)をデジタル信号に変換して、ルートロールオフフィルタ307に出力する。
【0063】
ルートロールオフフィルタ306は、A/D変換器304の出力信号に対してフィルタリング処理を行い、フィルタリング処理後の信号を、信号処理部308、クロック生成回路309およびキャリア再生回路310に出力する。
【0064】
ルートロールオフフィルタ307は、A/D変換器305の出力信号に対してフィルタリング処理を行い、フィルタリング処理後の信号を、信号処理部308、クロック生成回路309およびキャリア再生回路310に出力する。
【0065】
信号処理部308は、ルートロールオフフィルタ306,307の出力信号(IQ信号)のシンボル判定を行い、その判定値に基づき信号処理を行う。信号処理部308は、放送波に切替予告信号が含まれていた場合には、切替予告信号を位相制御部313に出力する。また、信号処理部308は、放送波に位相情報が含まれていた場合には、位相情報をメモリ312に記憶させる。
【0066】
クロック生成回路309は、ルートロールオフフィルタ307,308の出力信号(IQ信号)から、A/D変換器304,305のサンプリング周期を規定するクロック信号を生成し、A/D変換器304,305に出力する。
【0067】
キャリア再生回路310は、ルートロールオフフィルタ307,308の出力信号から、直交復調回路314が直交復調を行うための基準信号を生成し、ミキサ302および90°移相器311に出力する。
【0068】
90°移相器311は、キャリア再生回路310から出力された基準信号の位相を90°シフトさせて、ミキサ303に出力する。
【0069】
メモリ312は、信号処理部308から位相情報が出力された場合には、その位相情報を記憶する。また、メモリ312は、放送衛星20を経由しない通信路で送信機12から位相情報が送信されてきた場合には、その位相情報を記憶する。
【0070】
位相制御部313は、信号処理部308から切替予告信号が出力されると、メモリ312に記憶されている位相情報を読み出す。そして、位相制御部313は、切替予告信号に示されるタイミングで、メモリ312から読み出した位相情報に基づき、放射パターンの切り替えに伴う受信信号の位相の変化に基準信号の位相が追従するように、キャリア再生回路310に基準信号の位相を制御させる。こうすることで、放送衛星20の放射パターンが切り替えられても、受信信号と基準信号との位相同期を確保することができる。
【0071】
図3においては、キャリア再生回路310を制御することで、受信信号と基準信号との位相同期を確保する例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、受信アンテナ31と直交復調回路314との間に設けられた高周波回路301に、受信信号と基準信号との位相同期を確保するための構成を設けてもよい。
【0072】
図4は、受信機32の構成の他の一例を示す図である。なお、
図4は、
図3における高周波回路301に対応する構成をより具体的に示したものである。
【0073】
図4に示す受信機32は、アンプ401,403,406,407と、移相器402と、局部発振器404と、ミキサ405と、復調回路408と、メモリ409と、位相制御部410とを有する。
【0074】
受信アンテナ31の受信信号は、アンプ401に入力される。
【0075】
アンプ401は、受信アンテナ31の受信信号を増幅して、移相器402に出力する。
【0076】
移相器402は、アンプ401の出力信号(受信アンテナ31の受信信号)の位相をシフトして、アンプ403に出力する。移相器402による位相のシフト量は可変であり、後述する位相制御部410により制御される。
【0077】
アンプ403は、移相器402の出力信号を増幅して、ミキサ405に出力する。
【0078】
アンプ401、移相器402およびアンプ403は、受信アンテナ31の受信信号(放送波)を増幅する高周波増幅部411を構成する。
【0079】
局部発振器404は、選択された局に対応する周波数の局部発振信号をミキサ405に出力する。
【0080】
ミキサ405は、アンプ403の出力信号と局部発振器404から出力された局部発振信号とを混合して、アンプ406に出力する。
【0081】
局部発振器404およびミキサ405は、高周波増幅部411から出力された高周波を、所望の中間周波数に変換する選局部412を構成する。
【0082】
アンプ406は、ミキサ405の出力信号を増幅して、アンプ407に出力する。アンプ407は、アンプ406の出力信号を増幅して、復調回路408に出力する。
【0083】
復調回路408は、
図3における直交復調回路314から後段の構成に対応するものである。ただし、
図4においては、高周波回路に受信信号と基準信号との位相同期を確保するための構成を設けた場合を例として説明している。この場合、復調回路408は、
図3におけるメモリ312および位相制御部313を含んでいなくてもよい。
【0084】
復調回路408は、受信した放送波に切替予告信号が含まれていた場合には、その切替予告信号を位相制御部410に出力する。また、復調回路408は、放送波に位相情報が含まれていた場合には、その位相情報をメモリ409に記憶させる。
【0085】
メモリ409は、復調回路408から位相情報が出力された場合には、その位相情報を記憶する。また、メモリ409は、放送衛星20を経由しない通信路で送信機12から位相情報が送信されてきた場合には、その位相情報を記憶する。
【0086】
位相制御部410は、復調回路408から切替予告信号が出力されると、メモリ409に記憶されている位相情報を読み出す。そして、位相制御部410は、切替予告信号に示されるタイミングで、メモリ409から読み出した位相情報に基づき、移相器402による受信信号の位相のシフト量を制御する。具体的には、位相制御部410は、放射パターンの切り替えによる受信信号の位相の変化量を相殺するように、移相器402による受信信号の位相のシフト量を制御する。こうすることで、受信信号と基準信号との位相同期を確保することができる。
【0087】
図4においては、アンプ401とアンプ403との間に移相器402を設ける例を用いて説明したが、これに限られるものではない。移相器402を設ける位置は、受信アンテナ31からの受信信号の入力端から復調回路408までの間であればよい。
【0088】
図5は、受信機32の構成のさらに別の一例を示す図である。なお、
図5において、
図4と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0089】
図5に示す受信機32は、
図4に示す受信機32と比較して、移相器402を削除した点と、移相器501を追加した点と、位相制御部410を位相制御部502に変更した点とが異なる。
【0090】
移相器501は、局部発振器404とミキサ405との間に設けられており、局部発振器404から出力された局部発振信号の位相をシフトして、ミキサ405に出力する。移相器501による位相のシフト量は可変である。移相器501により位相がシフトされた局部発振信号とアンプ403の出力信号とがミキサ405で混合されることにより、受信信号の位相がシフトされたことになる。すなわち、局部発振信号の位相をシフトさせることは、受信信号の位相をシフトさせることに対応する。
【0091】
位相制御部502は、復調回路408から切替予告信号が出力されると、メモリ409に記憶されている位相情報を読み出す。そして、位相制御部502は、切替予告信号に示されるタイミングで、メモリ409から読み出した位相情報に基づき、移相器501による局部発振信号の位相のシフト量を制御する。具体的には、位相制御部502は、ミキサ405による局部発振信号との合成後の信号の位相が基準信号の位相と一致するように、局部発振信号の位相のシフト量を制御する。こうすることで、受信信号と基準信号との位相同期を確保することができる。
【0092】
なお、局部発振器404から出力される局部発振信号は無変調信号である。一般に、無変調信号の位相のシフトは、周波数帯域幅を持つ変調信号(受信アンテナ31の受信信号)の位相をシフトさせる(
図4)よりも容易である。そのため、
図5に示す受信機32においては、
図4に示す受信機32よりも回路規模を低減することができる。
【0093】
このように本実施形態によれば、送信機12は、放送衛星20の放射パターンを切り替える場合、切り替え後の放射パターンに対応する、受信地域で受信される放送波の位相に関する位相情報と、放射パターンを切り替えるタイミングを示す切替予告信号とを作成する。受信システム30は、送信機12が生成した位相情報および切替予告信号を取得し、取得した切替予告信号に示されるタイミングで、取得した位相情報に基づき、受信アンテナ31の受信信号または基準信号の位相を制御する。
【0094】
こうすることで、放射パターンが切り替えられても、受信アンテナ31の受信信号と基準信号との位相同期を確保することができるので、受信エラーの発生を低減することができる。
【0095】
また、本実施形態によれば、受信機32は、受信アンテナ31の受信信号に対して基準信号を用いて直交復調を行う直交復調回路314と、直交復調回路314による直交復調により生成されたIQ信号に基づき、基準信号を生成するキャリア再生回路310とを有し、切替予告信号に示されるタイミングで、位相情報に基づき、キャリア再生回路310に基準信号の位相を制御させる。
【0096】
こうすることで、放送衛星20の放射パターンが切り替えられても、基準信号の位相を受信信号の位相に追従させることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、受信機32は、受信アンテナ31の受信信号を増幅する高周波増幅部411と、選択された放送局に対応する周波数の局部発振信号を出力する局部発振器404と、高周波増幅部411により増幅された信号と局部発振信号とを合成するミキサ405とを有する。また、本実施形態によれば、高周波増幅部411には、受信信号の位相をシフトさせる移相器402が設けられ、移相器402による受信信号の位相のシフト量を制御する。
【0098】
こうすることで、放送衛星20の放射パターンが切り替えられても、受信信号の位相を基準信号の位相に追従させることができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、受信機32は、受信アンテナ31の受信信号を増幅する高周波増幅部411と、選択された放送局に対応する周波数の局部発振信号を出力する局部発振器404と、局部発振器404から出力された局部発振信号の位相をシフトさせる移相器501と、高周波増幅部411により増幅された信号と移相器501により位相がシフトされた局部発振信号とを合成するミキサ405とを有し、移相器501による局部発振信号の位相のシフト量を制御する。
【0100】
こうすることで、放送衛星20の放射パターンが切り替えられても、受信信号の位相を基準信号の位相に追従させることができる。さらに、局部発振信号は無変調信号であり、このような無変調信号の位相のシフトは比較的容易である。そのため、受信機32の回路規模の増大を抑制することができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、送信機12は、放送衛星の放射パターンを切り替えるよりも規定時間だけ前に切替予告信号を送信する。
【0102】
こうすることで、放送衛星20の放射パターンの切り替え時に確実に、受信信号と基準信号との位相同期を確保することができる。
【0103】
なお、現状では、放送地域の気象情報などに基づき、管理者が放送衛星の運用を判断するのが通常である。しかし、制御部14が、放送地域の気象情報などを取得し、取得した情報に基づき、自動的に放射パターンの制御の要否を判定するようにしてもよい。
【0104】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。