【解決手段】式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂(A)、エチレン性不飽和結合を1分子中に1つ以上含む不飽和化合物(B)、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、及びエポキシ樹脂(D)を含有する感光性樹脂組成物。
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)と前記ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)との質量比が、1:0.01〜1:10の範囲内である請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)に不飽和基含有カルボン酸(a2)を反応させて中間体を調製し、前記中間体に酸二無水物(a3)と酸無水物(a4)とを反応させて得られる樹脂である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
前記不飽和基含有カルボン酸(a2)がアクリル酸を含有し、前記酸二無水物(a3)がビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有し、前記酸無水物(a4)がテトラヒドロフタル酸無水物を含有する請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の半硬化物からなるドライフィルムと、前記ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について説明する。尚、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」のうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとのうち少なくとも一方を意味する。
【0015】
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂(A)、エチレン性不飽和結合を1分子中に1つ以上含む不飽和化合物(B)、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、及びエポキシ樹脂(D)を含有する。
【0017】
式(1)中、R
1〜R
8は各々独立に水素、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンである。
【0018】
感光性樹脂組成物が上記組成を有するため、感光性組成物は、ビスフェノールフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂(A)を含有するにもかかわらず、優れた感光性を有する。このため、この感光性組成物を露光硬化させることでプリント配線板のソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジスト、層間絶縁層等を作製する際の効率が高い。更に、ビスフェノールフルオレン骨格を備えるカルボキシル基含有樹脂(A)は、感光性樹脂組成物の硬化物に高い電気絶縁性を付与することができ、しかもアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は硬化物の電気絶縁性を阻害しにくい。このため、感光性樹脂組成物を露光硬化することで、電気的絶縁性に優れた硬化物が得られ、この硬化物はソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジスト、層間絶縁層等として好適である。
【0019】
以下、本実施形態に係る感光性樹脂組成物について、更に詳細に説明する。
【0020】
上述の通り、カルボキシル基含有樹脂(A)は、式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を備える。式(1)におけるR
1〜R
8の各々は、水素でもよいが、炭素数1〜5のアルキル基又はハロゲンでもよい。芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A)の物性に悪影響は与えられず、むしろ置換されることでカルボキシル基含有樹脂(A)を含む感光性樹脂組成物の硬化物の耐熱性或いは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0021】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基を有することが好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂(A)が光反応性を有することで、感光性樹脂組成物の感光性が向上する。
【0022】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、例えばビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a1)に不飽和基含有カルボン酸(a2)を反応させて中間体を調製し、中間体に酸二無水物(a3)と酸無水物(a4)とを反応させることで得られる。
【0023】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(2)に示す構造を有する。式(2)中のnは、例えば0〜20の範囲内の数である。
【0025】
不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、不飽和基含有カルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。好ましくは、不飽和基含有カルボン酸(a2)がアクリル酸を含有する。
【0026】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)との反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)の溶剤溶液に不飽和基含有カルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、中間体を得ることができる。溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノンもしくはハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としてベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。
【0027】
エポキシ化合物(a1)と不飽和基含有カルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)1当量に対する不飽和基含有カルボン酸(a2)の量は、0.8〜1.2モルの範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の優れた感光性と保存安定性が得られる。
【0028】
このようにして得られる中間体は、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基と不飽和基含有カルボン酸(a2)におけるカルボキシル基とが反応することで生成した水酸基を備える。
【0029】
酸二無水物(a3)は、例えば1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に酸二無水物(a3)が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。
【0030】
酸無水物(a4)は、ジカルボン酸の無水物である。酸無水物(a4)は、例えばフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に酸無水物(a4)がテトラヒドロフタル酸無水物を含有することが好ましい。
【0031】
中間体と酸二無水物(a3)及び酸無水物(a4)との反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えば中間体の溶剤溶液に酸二無水物(a3)及び酸無水物(a4)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A)を得ることができる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、中間体の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0032】
中間体と酸二無水物(a3)及び酸無水物(a4)とが反応する際は、酸二無水物(a3)及び酸無水物(a4)の各々における酸無水物基と中間体における水酸基と反応することで、カルボキシル基が生成する。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A)にカルボキシル基が付与される。更に、酸二無水物(a3)は、エポキシ化合物(a1)を架橋させることでカルボキシル基含有樹脂(A)の分子量を増大させることができる。これにより、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A)が得られる。すなわち、酸二無水物(a3)及び酸無水物(a4)の量、並びに酸二無水物(a3)に対する酸無水物(a4)の量を制御することで、カルボキシル基含有樹脂(A)の分子量及び酸価を容易に調整することができる。
【0033】
エポキシ化合物(a1)1当量に対する酸二無水物(a3)の量は、0.05〜0.4モルの範囲内であることが好ましい。また、エポキシ化合物(a1)1当量に対する酸無水物(a4)の量は、0.1〜0.8モルの範囲内であることが好ましい。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、800〜10000の範囲内であることが好ましく、1000〜5000の範囲内であれば更に好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の良好なアルカリ現像性と感光性樹脂組成物の硬化物の良好な物性(例えば無電解ニッケル/金メッキ処理時の白化耐性)の両立が可能となる。尚、カルボキシル基含有樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる次の条件での分子量の測定結果に基づいて導出することができる。
【0035】
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF−800P,KF−005,KF−003,KF−001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0036】
また、カルボキシル基含有樹脂(A)の酸価は60〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、80〜130mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
【0037】
エチレン性不飽和結合を1分子中に1つ以上含む不飽和化合物(B)は、感光性樹脂組成物に光硬化性を付与することができる。
【0038】
不飽和化合物(B)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0039】
不飽和化合物(B)が、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0040】
不飽和化合物(B)が、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー;エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類等が挙げられる。
【0041】
本実施形態では、感光性樹脂組成物は光重合開始剤(C)を含有し、光重合開始剤(C)はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。すなわち、感光性樹脂組成物は光重合開始剤(C)はアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)を含有する。このため、感光性樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂(A)を含有するにもかかわらず、感光性樹脂組成物を紫外線で露光する場合に感光性樹脂組成物に高い感光性を付与することができる。
【0042】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)は、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。特にアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドを含有することが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)が2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドのみを含有することも好ましい。
【0043】
光重合開始剤(C)がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に加えてヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。すなわち感光性樹脂組成物がヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有することが好ましい。この場合、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)を含有しない場合と比べて、感光性樹脂組成物に更に高い感光性を付与することができる。これにより、感光性樹脂組成物から形成される塗膜に紫外線を照射して硬化させる場合、塗膜をその表面から深部に亘って十分に硬化させることが可能となる。ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)としては、例えば1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)ーフェニル]ー2ーヒドロキシー2−メチルー1ープロパンー1ーオン、2−ヒドロキシー1ー{4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)ーベンジル]フェニル}ー2ーメチループロパンー1−オン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンが挙げられる。
【0044】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)とヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)との質量比は、1:0.01〜1:10の範囲内であることが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜の表面付近における硬化性と深部における硬化性とを、バランス良く向上させることができる。
【0045】
光重合開始剤(C)がビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。すなわち、感光性樹脂組成物がアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有し、或いはアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(C2)及びビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合、露光されない部分の硬化が抑制されることで、解像性が特に高くなる。このため感光性樹脂組成物の硬化物で非常に微細なパターンを形成することが可能となる。特に、感光性樹脂組成物から多層プリント配線板の層間絶縁層を作製すると共にこの層間絶縁層にスルーホールのための小径の穴をフォトリソグラフィー法で設ける場合(
図1参照)、小径の穴を精密且つ容易に形成することが可能となる。
【0046】
ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(C1)に対して0.5〜20質量%の範囲内であることが好ましい。ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が0.5質量%以上であると、解像性が特に高くなる。また、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が20質量%以下であると、感光性樹脂組成物の硬化物の電気絶縁性をビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(C3)が阻害しにくい。
【0047】
感光性樹脂組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えば感光性樹脂組成物は、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等を含有してもよい。
【0048】
エポキシ樹脂(D)は、感光性樹脂組成物に熱硬化性を付与することができる。エポキシ樹脂(D)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂(D)は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ樹脂(D)はフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ハイドロキノン型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学社製の品番YDC−1312)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE)、並びに特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
【0049】
エポキシ樹脂(D)がトリグリシジルイソシアヌレートを含有することも好ましい。トリグリシジルイソシアヌレートとしては、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体が好ましく、或いはこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物が好ましい。
【0050】
エポキシ樹脂(D)がリン含有エポキシ樹脂を含有することも好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
【0051】
エポキシ樹脂(D)がビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。すなわち、感光性樹脂組成物がビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂を含有しないことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を部分的に露光してから現像する場合に、塗膜の露光されていない部分が特に容易に除去されうる。
【0052】
感光性樹脂組成物はメラミン(E)を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物と銅などの金属との間の密着性が高くなる。このため、感光性樹脂組成物が、プリント配線板用の絶縁材料として特に適する。また、感光性樹脂組成物の硬化物の、無電解ニッケル/金メッキ処理時の白化耐性が向上する。
【0053】
感光性樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、感光性樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0054】
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0055】
感光性樹脂組成物中の成分の量は、感光性樹脂組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0056】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、感光性樹脂組成物の固形分量に対して5〜85質量%の範囲内であれば好ましく、10〜75質量%の範囲内であればより好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0057】
不飽和化合物(B)は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して1〜45質量%の範囲内であれば好ましく、5〜40質量%の範囲内であればより好ましく、10〜30質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0058】
光重合開始剤(C)の総量は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜30質量%の範囲内であることが好ましく、1〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0059】
エポキシ樹脂(D)は、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して2〜85質量%の範囲内であることが好ましく、5〜80質量%の範囲内であればより好ましく、10〜70質量%の範囲内であれば更に好ましく、20〜60質量%の範囲内であれば特に好ましい。
【0060】
感光性樹脂組成物がメラミン(E)を含有する場合、メラミン(E)はカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0061】
感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、感光性樹脂組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に速やかに有機溶剤が揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、感光性樹脂組成物全体に対して、有機溶剤が0〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であれば更に好ましい。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0062】
尚、固形分量とは、感光性樹脂組成物から溶剤などの揮発性成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0063】
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、感光性樹脂組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0064】
例えば、感光性樹脂組成物が無機充填材を含有してもよい。この場合、感光性樹脂組成物から形成される膜の硬化収縮が低減する。無機充填材は、例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び酸化チタンからなる群から選択される一種以上の材料を含有することができる。無機充填材に酸化チタン、酸化亜鉛等の白色の材料を含有させることで、感光性樹脂組成物及びその硬化物を白色化してもよい。感光性樹脂組成物中の無機充填材の割合は適宜設定されるが、カルボキシル基含有樹脂(A)に対して0〜300質量%の範囲内であることが好ましい。
【0065】
感光性樹脂組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。
【0066】
感光性樹脂組成物は、エポキシ樹脂(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0067】
感光性樹脂組成物は、メラミン(F)以外の密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、並びに2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体が、挙げられる。
【0068】
感光性樹脂組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。
【0069】
感光性樹脂組成物中のアミン化合物の含有量はできるだけ少ないことが好ましい。この場合、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層の電気絶縁性が損なわれにくい。特にカルボキシル基含有樹脂(A)に対してアミン化合物が6質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であれば更に好ましい。
【0070】
上記のような感光性樹脂組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、感光性樹脂組成物が調製され得る。
【0071】
保存安定性等を考慮して、感光性樹脂組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。すなわち、感光性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。例えば、原料のうち不飽和化合物(B)及び有機溶剤の一部及び熱硬化性成分を予め混合して分散させることで第一剤を調製し、原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合して混合液を調製し、この混合液を硬化させて硬化物を得ることができる。
【0072】
本実施形態による感光性樹脂組成物は、プリント配線板用の電気絶縁性材料として適している。特に感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト、メッキレジスト、エッチングレジスト、層間絶縁層等の、電気絶縁性の層を形成するために適している。
【0073】
以下に、本実施形態による感光性樹脂組成物を用いて層間絶縁層を形成する方法の一例を、
図1A乃至
図1Eを参照して説明する。本方法では、層間絶縁層にフォトリソグラフィー法でスルーホールを形成する。
【0074】
まず、
図1Aに示すようにコア材1を用意する。コア材1は、例えば少なくとも一つの絶縁層2と少なくとも一つの導体配線3とを備えるプリント配線板である。このコア材1の一面上に設けられている導体配線3を、以下、第一の導体配線3という。
図1Bに示すように、コア材1の第一の導体配線3が設けられている面上に、感光性樹脂組成物から被膜4を形成する。被膜4の形成方法として、塗布法とドライフィルム法が挙げられる。
【0075】
塗布法では、例えばコア材1上に感光性樹脂組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性樹脂組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60〜120℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させて、被膜4を得ることができる。
【0076】
ドライフィルム法では、まずポリエステル製などの適宜の支持体上に感光性樹脂組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上にドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムをコア材1に重ねてから、ドライフィルムとコア材1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上からコア材1上へ転写する。これにより、コア材1上に、ドライフィルムからなる被膜4が設けられる。
【0077】
被膜4を露光することで
図1Cに示すように部分的に光硬化させる。そのために、例えばネガマスクを被膜4に当てがってから、ネガマスクを介して被膜4に紫外線を照射する。ネガマスクは、紫外線を透過させる露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを備え、非露光部はスルーホール10の位置と合致する位置に設けられる。ネガマスクとして、例えばマスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
【0078】
続いて、被膜4に現像処理を施すことで、
図1Cに示す被膜4の露光されていない部分5を除去し、これにより、
図1Dに示すようにスルーホール10が形成される位置に穴6を設ける。現像処理では、感光性樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ性溶液が挙げられる。現像液として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することもできる。これらの現像液のうち、一種のみが用いられても、複数種が併用されてもよい。現像液がアルカリ性溶液である場合、その溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
【0079】
続いて、被膜4を加熱することで熱硬化させる。加熱の条件は、例えば加熱温度120〜180℃の範囲内、加熱時間30〜90分間の範囲内である。このようにして被膜4を熱硬化させると、層間絶縁層7の強度、硬度、耐薬品性等の性能が向上する。
【0080】
必要により、加熱前と加熱後のうちの一方又は両方で、被膜4に更に紫外線を照射してもよい。この場合、被膜4の光硬化を更に進行させることができる。
【0081】
以上により、コア材1上に、感光性樹脂組成物の硬化物からなる層間絶縁層7が設けられる。この層間絶縁層7上に、アディティブ法などの公知の方法で、第二の導体配線8及びホールめっき9を設けることができる。これにより、
図1Eに示すように、第一の導体配線3、第二の導体配線8、第一の導体配線3と第二の導体配線8との間に介在する層間絶縁層7、並びに第一の導体配線3と第二の導体配線8とを電気的に接続するスルーホール10を備える多層プリント配線板11が得られる。
【実施例】
【0082】
[合成例A−1]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、R
1〜R
8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート140質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で115℃で12時間加熱した。
【0083】
続いて、フラスコ内の混合物に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38.7質量部を投入し、115℃で6時間加熱した後、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(A−1)の重量平均分子量は3096、酸価は105mgKOH/gであった。
【0084】
[合成例A−2]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、R
1〜R
8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂250質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート200質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で115℃で12時間加熱した。
【0085】
続いて、フラスコ内の混合物に3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物64.4質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート39.4質量部を投入し、115℃で6時間加熱した後、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A−2)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(A−2)の重量平均分子量は2908、酸価は106mgKOH/gであった。
【0086】
[合成例A−3]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、R
1〜R
8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂250質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート200質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で115℃で12時間加熱した。
【0087】
続いて、フラスコ内の混合物に1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物43.6質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート30.5質量部を投入し、115℃で6時間加熱した後、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A−3)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(A−3)の重量平均分子量は2832、酸価は104mgKOH/gであった。
【0088】
[合成例A−4]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、R
1〜R
8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で115℃で12時間加熱した。
【0089】
続いて、フラスコ内の混合物に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート38.7質量部を投入し、115℃で6時間加熱した後、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A−4)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(A−4)の重量平均分子量は2974、酸価は105mgKOH/gであった。
【0090】
[合成例A−5]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(2)で示され、R
1〜R
8がすべて水素であるエポキシ当量250のビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂250質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート60質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート140質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルフォスフィン1.5質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で115℃で12時間加熱した。
【0091】
続いて、フラスコ内の混合物に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.4質量部、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート22.9質量部を投入し、115℃で6時間加熱した後、80℃で1時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(A−1)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(A−6)の重量平均分子量は1324、酸価は83mgKOH/gであった。
【0092】
[合成例B−1]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、式(1)で示されるエポキシ当量203のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC−700−5)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160.1質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72.7質量部、及びジメチルベンジルアミン0.6質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で110℃で10時間加熱した。
【0093】
続いて、フラスコ内の混合物にテトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を投入し、115℃で3時間加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂(B−1)の65質量%溶液を得た。カルボキシル基含有樹脂(B−1)の重量平均分子量は6850、酸価は67mgKOH/gであった。
【0094】
[実施例1〜7、比較例1〜3]
後掲の表に示す成分を配合して得られる混合物を3本ロールで混練することで、感光性樹脂組成物を得た。尚、表に示される成分の詳細は次の通りである。
・不飽和化合物(TMPTA):トリメチロールプロパントリアクリレート。
・不飽和化合物(DPHA):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
・光重合開始剤(TPO):2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure TPO。
・光重合開始剤(IC819):ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製、品番Irgacure 819。
・光重合開始剤(IC184):1−ヒドロキシ-シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番Irgacure 184。
・光重合開始剤(IC1173):2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure 1173。
・光重合開始剤(EAB):4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン。
・光重合開始剤(IC907):2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、品番Irgacure 907。
・光重合開始剤(DETX):2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン。
・エポキシ樹脂(YX4000):ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学社製、品番YX4000。
エポキシ樹脂(カネエースMX−130):ゴム粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂、カネカ製、品番カネエースMX−130
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン。
・酸化防止剤:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製、品番IRGANOX 1010。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB31。
・消泡剤:信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・界面活性剤:DIC製、品番メガファックF−470。
・溶剤(EDGAC):ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
・溶剤(MEK):メチルエチルケトン。
【0095】
厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板(FR−4タイプ)を用意した。このガラスエポキシ銅張積層板にサブトラクティブ法で導体配線としてライン幅/スペース幅が50μm/50μmであるくし型電極を形成し、これによりプリント配線基板を得た。このプリント配線板の導体配線における厚み1μm程度の表層部分を、メック株式会社製の品番CZ−8100で溶解除去することにより、導体配線を粗化した。このプリント配線板の一面全面に感光性樹脂組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で30分加熱して予備乾燥することで、膜厚25μmの被膜を形成した。この被膜に、直径50μmの円形状の非露光部を有するネガマスクを直接当てがった状態で、ネガマスクを介して被膜に500mJ/cm
2の条件で紫外線を照射した。露光後の被膜に炭酸ナトリウム水溶液で現像処理を施すことで、被膜における露光されていない部分を除去し、これにより穴を形成した。この被膜に更に1000mJ/cm
2の紫外線を照射してから、150℃で60分間加熱した。これにより、プリント配線板上に感光性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成した。これによりテストピースを得た。
【0096】
[実施例8]
後掲の表に示す成分を配合して得られる混合物を3本ロールで混練することで、感光性樹脂組成物を得た。
【0097】
この感光性樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム上にアプリケータで塗布してから、80〜110℃で加熱することで乾燥させることにより、フィルム上に厚み25μmのドライフィルムを形成した。
【0098】
実施例1〜7及び比較例1〜3の場合と同様のプリント配線板にドライフィルムを加熱ラミネートした。加熱ラミネートは、真空ラミネーターで0.5MPa、80℃、1分の条件でおこなった。これにより、プリント配線板上に厚み25μmの被膜を形成した。この被膜に、実施例1〜7及び比較例1〜3の場合と同じ処理を施すことで、プリント配線板上に感光性樹脂組成物の硬化物からなる層を形成した。尚、ポリエチレンテレフタレート製のフィルムは現像工程の前に被膜から剥した。これによりテストピースを得た。
【0099】
[評価]
(1)タック性
各実施例及び比較例のテストピースの作製時に、被膜の露光後に被膜からネガマスクを取り外す際の被膜の粘着性の程度を、次に示すように評価した。
A:被膜からネガマスクを取り外す際に抵抗が感じられず、ネガマスクを取り外した後の被膜には貼付痕が認められない。
B:被膜からネガマスクを取り外す際に抵抗が感じられ、ネガマスクを取り外した後の被膜には貼付痕が認められた。
C:被膜からネガマスクを取り外すことが困難であり、無理にネガマスクを取り外すと被膜が破損した。
【0100】
尚、タック性評価がCである比較例3については、以下のタック性以外の評価を行っていない。また、実施例8については、ドライフィルムから被膜を形成したため、タック性の評価を行っていない。
【0101】
(2)解像性
各実施例及び比較例のテストピースにおける硬化物からなる層に形成された穴を観察し、その結果を次のように評価した。
A:穴の底の直径が40μm以上である。
B:穴の底の直径が25μm以上40μm未満である。
C:穴の底の直径が25μm未満であり、或いは明確な穴が形成されない。
【0102】
(3)耐メッキ性
各実施例及び比較例のテストピースにおける硬化物からなる層の上に、市販の無電解ニッケルメッキ浴を用いてニッケルメッキ層を形成してから、市販の無電解金メッキ浴を用いて金メッキ層を形成した。これにより、硬化物からなる層の上に、ニッケルメッキ層及び金メッキ層からなる金属層を形成した。硬化物からなる層及び金属層を目視で観察した。また、金属層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次のように評価した。
A:硬化物からなる層及び金属層の外観に異常は認められず、セロハン粘着テープ剥離試験による金属層の剥離は生じなかった。
B:硬化物からなる層に変色が認められるが、セロハン粘着テープ剥離試験による金属層の剥離は生じなかった。
C:硬化物からなる層の浮き上がりが認められ、セロハン粘着テープ剥離試験による金属層の剥離が生じた。
【0103】
(4)線間絶縁性
各実施例及び比較例のテストピースにおける導体配線(くし型電極)にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に100時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層のくし型電極間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から100時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に10
6Ω以上を維持した。
B:試験開始時から80時間経過するまでは電気抵抗値が常に10
6Ω以上を維持したが、試験開始時から100時間経過する前に電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
C:試験開始時から80時間経過する前に電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
【0104】
(5)層間絶縁性
各実施例及び比較例のテストピースにおける硬化物からなる層の上に導電テープを貼り付けた。この導電テープにDC100Vのバイアス電圧を印加しながら、テストピースを121℃、97%R.H.の試験環境下に50時間曝露した。この試験環境下における硬化物からなる層の導体配線と導電テープとの間の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準により評価した。
A:試験開始時から50時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に10
6Ω以上を維持した。
B:試験開始時から35時間経過するまでは電気抵抗値が常に10
6Ω以上を維持したが、試験開始時から50時間経過する前に電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
C:試験開始時から35時間経過する前に電気抵抗値が10
6Ω未満となった。
【0105】
(6)ガラス転移温度
テフロン(登録商標)製の部材の上に硬化物からなる層を形成した。硬化物からなる層の形成方法は、テストピースにおける硬化物からなる層を形成する場合と同じとした。部材から硬化物からなる層を剥がしてから、この層のガラス転移温度をTMAで測定した。
【0106】
以上の評価試験の結果を下記表1及び表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】