特開2016-141727(P2016-141727A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-141727(P2016-141727A)
(43)【公開日】2016年8月8日
(54)【発明の名称】熱伝導性導電性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20160711BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20160711BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160711BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20160711BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20160711BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20160711BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20160711BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20160711BHJP
   C09J 163/04 20060101ALI20160711BHJP
【FI】
   C09J163/00
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J163/02
   C09J5/06
   C09J9/02
   C09C3/08
   C09C1/00
   C09J163/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-18139(P2015-18139)
(22)【出願日】2015年2月2日
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】古正 力亜
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛史
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝樹
【テーマコード(参考)】
4J037
4J040
【Fターム(参考)】
4J037AA04
4J037CB09
4J037EE03
4J037EE43
4J037EE44
4J037FF13
4J037FF15
4J040EC011
4J040EC061
4J040HA066
4J040HC01
4J040HC08
4J040HD16
4J040JA01
4J040JB02
4J040JB10
4J040JB11
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA03
4J040MA01
4J040MA02
4J040MB05
4J040NA19
4J040PA30
(57)【要約】
【課題】ダイボンド材として用いられ、高い放熱性と安定した導電性を有し、高い接着力を発揮する熱伝導性導電性接着剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)導電性フィラー、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)有機溶剤を含む熱伝導性導電性接着剤組成物であって、(A)導電性フィラーは、サブミクロンの銀微粉であり、かつ、(A)導電性フィラーの配合量は、(B)エポキシ樹脂の配合量との質量比で、(A)/(B)=96.0/4.0〜99.5/0.5であり、(B)エポキシ樹脂は、少なくともビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とを含み、(C)硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体であり、かつ、(C)硬化剤の配合量は、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基1mol当量に対して活性水素当量として、0.4〜2.4mol当量である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性フィラー
(B)エポキシ樹脂
(C)硬化剤
(D)有機溶剤
を含む熱伝導性導電性接着剤組成物であって、
(A)導電性フィラーは、サブミクロンの銀微粉であり、かつ、(A)導電性フィラーの配合量は、(B)エポキシ樹脂の配合量との質量比で、(A)/(B)=96.0/4.0〜99.5/0.5であり、
(B)エポキシ樹脂は、少なくともビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とを含み、
(C)硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体であり、かつ、(C)硬化剤の配合量は、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基1mol当量に対して活性水素当量として、0.4〜2.4mol当量である熱伝導性導電性接着剤組成物。
【請求項2】
(B)エポキシ樹脂に含まれるビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の質量比は、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ノボラック型エポキシ樹脂=40/60〜80/20である請求項1に記載の熱伝導性導電性接着剤組成物。
【請求項3】
(C)硬化剤は、下記の一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物である請求項1又は2に記載の熱伝導性導電性接着剤組成物。
【化1】
(式中、XはーSO−を表し、R1〜R4は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【化2】
(式中、XはーSO−を表し、R5〜R8は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【化3】
(式中、XはーSO−を表し、R9〜R12は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【請求項4】
(A)導電性フィラーに用いるサブミクロンの銀微粉は、その表面がカルボン酸を含むコーティング剤で被覆されているものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導性導電性接着剤組成物。
【請求項5】
(B) エポキシ樹脂の配合量は、熱伝導性導電性接着剤組成物の全体量に対して、0.3〜4.0質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導性導電性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性導電性接着剤組成物に関し、詳しくは、半導体素子をリードフレームや基板等に接着させる接合材料(ダイボンド材)として用いられ、高い放熱性と安定した導電性を有し、高い接着力を発揮する熱伝導性導電性接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型化・高機能化された電子部品、例えば、パワーデバイスや発光ダイオード(LED)に対する需要が急速に拡大している。パワーデバイスは電力損失を抑え、電力変換を高効率に変換できる半導体素子として、電気自動車、ハイブリッド自動車、急速充電器等の分野で普及が進んでおり、また、太陽光発電システム、メガソーラーシステム等の新エネルギー分野においても需要の高まりが期待されている。
【0003】
一方、白熱電球に比べて長寿命、小型、低消費電力であるという利点を有するLED素子は、照明、携帯電話、液晶パネル、自動車、信号機、街灯、画像表示装置等の様々な分野で普及が急速に進んでいる。
【0004】
上記のような電子部品の小型化・高機能化が進展する中、半導体素子の発熱量は増大傾向にある。ところが、電子部品は、高温環境に長時間さらされると、本来の機能を発揮することができなくなり、また、寿命が低下することになる。そのため、通常、ダイボンディング用の接合材料(ダイボンド材)には、半導体素子から発生する熱を効率的に拡散させるために、高放熱性の接合材料が使用されている。用途にもよるが、通常、接合材料は、半導体素子から発生した熱を基板、筐体へ効率よく逃がす機能を有することが必要であり、高い放熱性が求められる。
【0005】
このように、電子部品に用いられる接合材料には、高い放熱性が求められることから、従来、鉛を多く含んだ高温鉛はんだや、金を多く含んだ金錫はんだが広く用いられてきた。しかし、高温鉛はんだは、人体に有害とされる鉛を含むという問題がある。そのため、最近では、鉛フリー化の技術開発が活発化しており、鉛フリーはんだへの切替えに関する研究が盛んに進められている。一方、金錫はんだは高価な金を含むため、コストの面で問題がある。
【0006】
このような状況を受け、近年、高温鉛はんだや金錫はんだに替わる有力な代替材料として、等方性導電性接着剤(以下、単に「導電性接着剤」と表記する。)が注目されている。導電性接着剤は、導電性等の機能をもつ金属粒子(例えば、銀、ニッケル、銅、アルミニウム、金)と接着機能をもつ有機接着剤(例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂)の複合体であり、多様な金属粒子及び有機接着剤が用いられている。導電性接着剤は、室温で液体であるため使い勝手がよく、鉛フリーで低価格であることから、高温鉛はんだや金錫はんだの有力な代替材料であり、市場の大幅な拡大が予測されている。
【0007】
上述したように、はんだの代替材料としての導電性接着剤には、導電性と並んで高い放熱性が求められる。導電性接着剤の原料である有機接着剤は、基本的に金属に比べて熱伝導率が低いため、熱伝導性のフィラーを配合することで放熱性の機能を付与している。導電性接着剤の熱抵抗をいかにして小さくして、発生する熱を有効に逃がすかが、導電性接着剤の技術開発の焦点となっている。
【0008】
従来、熱伝導性を向上させた導電性接着剤については、例えば、特許文献1において、組成物中の固形分成分として、少なくとも、平均繊維径0.1〜30μm、アスペクト比2〜100、平均繊維長0.2〜200μm、真密度2.0〜2.5g/ccのピッチ系黒鉛化炭素繊維フィラー5〜80重量%と、平均粒径0.001〜30μmの金属微粒子フィラー15〜90重量%と、バインダ樹脂5〜50重量%を含んでなる高熱伝導性導電性組成物が提案されている。
【0009】
また、特許文献2では、基材樹脂としてエポキシ樹脂を、硬化剤としてフェノール系硬化剤を、可撓性付与剤としてウレタン変性エポキシ樹脂、さらに、熱伝導性充填剤として、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、窒化アルミ、アルミナ、結晶性シリカ等の粉末を含む導電性組成物が提案されている。
【0010】
また、特許文献3では、樹脂成分、高熱伝導性繊維状フィラー、及び、銀、金、白金、窒化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、及び、カーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種からなる高熱伝導性球状フィラーを含有する接着剤であって、前記樹脂成分100体積部に対し、前記高熱伝導性繊維状フィラーを0.1〜20体積部、前記高熱伝導性球状フィラーを10〜200体積部含有する接着剤が報告されている。
【0011】
また、特許文献4では、ビスフェノール型エポキシ樹脂、硬化剤として液状芳香族アミン、及び銀粉を85〜95重量%含有する無溶剤型液状銀ペースト組成物であって、半導体装置を構成するチップ等の発熱体をリートフレーム等の放熱体に接着するために用いる高熱伝導性接着剤が報告されている。
【0012】
以上述べたように、電子部品の小型化・高機能化が進展する中で、導電性接着剤に適切な放熱対策を講じることは業界にとって重要な課題であり、高い放熱性と導電性をバランス良く兼ね備えた導電性接着剤の開発が待たれていた。
そこで、本出願人は、本願より先に、(A)導電性フィラー、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤を含む熱伝導性導電性接着剤組成物であって、(A)導電性フィラーは、サブミクロンの銀微粉であり、かつ、該銀微粉の配合量は、前記熱伝導性導電性接着剤組成物の全体量に対して75〜94質量%であり、(B)エポキシ樹脂の配合量は、前記熱伝導性導電性接着剤組成物の全体量に対して5〜20質量%であり、(C)硬化剤は、一般式(I)、(II)又は(III)(省略)で表される化合物であり、かつ、該化合物の配合量は、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基1mol当量に対して活性水素当量として0.4〜2.4mol当量であり、熱硬化時の(A)導電性フィラーの焼結開始前に、前記熱伝導性導電性接着剤組成物が未硬化又は半硬化の状態であることを特徴とする熱伝導性導電性接着剤組成物を報告した(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−186590号公報
【特許文献2】特開平6−322350号公報
【特許文献3】特開2009−84510号公報
【特許文献4】特開2004−277572号公報
【特許文献5】特開2014−125596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、ダイボンド材として用いられ、高い放熱性と安定した導電性を有し、加えて高い接着力を発揮する熱伝導性導電性接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するために、導電性接着剤組成物を構成する成分や配合量を各種変更させて、様々な試行錯誤を繰り返した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(A)導電性フィラー
(B)エポキシ樹脂
(C)硬化剤
(D)有機溶剤
を含む熱伝導性導電性接着剤組成物であって、
(A)導電性フィラーは、サブミクロンの銀微粉であり、かつ、(A)導電性フィラーの配合量は、(B)エポキシ樹脂の配合量との質量比で、(A)/(B)=96.0/4.0〜99.5/0.5であり、
(B)エポキシ樹脂は、少なくともビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂とを含み、
(C)硬化剤は、ジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体であり、かつ、(C)硬化剤の配合量は、(B)エポキシ樹脂のエポキシ基1mol当量に対して活性水素当量として、0.4〜2.4mol当量である熱伝導性導電性接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い放熱性と安定した導電性を有し、加えて高い接着力を発揮する熱伝導性導電性接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱伝導性導電性接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」と表記する。)は、前述した(A)導電性フィラー、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤及び(D)有機溶剤を必須成分として含むものである。本発明の接着剤組成物が、高い放熱性を発現する理由は必ずしも明確ではないが、該接着剤組成物は硬化速度が遅延化されているために、バインダー樹脂であるエポキシ樹脂中への導電性フィラーの分散度が通常よりも上昇し、その結果、導電性フィラーのネッキングが促進され、加熱硬化中に、分散した導電性フィラー同士が融着して、熱を輸送する導電性フィラーのネットワークが十分に形成されたと推察される。また、本発明は、熱伝導率の高い導電性フィラーである銀粉を通常よりも多く含むものであるが、導電性フィラーの配合量の増大に伴って起こる接着力の低下という問題を、本発明で規定する(B)エポキシ樹脂及び(C)硬化剤を用いることによって解決している。
以下、(A)導電性フィラー、(B)エポキシ樹脂、(C)硬化剤、(D)溶剤の各成分について詳細に説明する。
【0018】
(A)導電性フィラーには、サブミクロン(すなわち、1μm未満)の銀微粉が使用される。該銀微粉の平均粒子径は、300〜900nmであることが好ましく、さらには、400〜800nmであることがより好ましい。平均粒子径が、300nm未満であると、銀微粉の凝集力が強くなり、分散性が顕著に低下して、接着剤組成物の作製後に銀微粉がすぐに凝集する場合や熱硬化時に過度に結晶が焼結してしまい十分な導電性、熱伝導性が得られなくなる恐れがある。一方、900nmを超えるとエポキシ樹脂中での銀微粉の個数が少なくなるばかりか、焼結による適度な結晶成長が得られないため十分な導電性、熱伝導性が得られなくなる恐れがある。
【0019】
本発明において、(A)導電性フィラーである銀微粉の平均粒子径は、以下の方法で求められる。すなわち、接着剤組成物の一部を抽出し、それを電界放射型走査型電子顕微鏡 (JMS−6700F, 日本電子データム社製)により撮影し、得られた投影写真を用いて、撮影された接着剤組成物の中から無作為に100個の銀粒子を抽出し、それらの投影面積円相当径(外径)を計測して、それらの平均値を銀微粉の平均粒子径とする。
【0020】
前記銀微粉の形状は特に限定されず、球状、フレーク状、箔状、樹枝状等が挙げられるが、一般的にはフレーク状又は球状が選択される。また、銀微粉には、純銀粉のほか、銀で表面被覆された金属粒子、又はこれらの混合物を用いることができる。銀微粉は、市販品を入手することができ、あるいは、公知の方法を用いて作製することができる。銀微粉を作製する方法は特に制限されず、機械的粉砕法、還元法、電解法、気相法等任意である。
【0021】
(A)導電性フィラーに用いるサブミクロンの銀微粉は、その表面がコーティング剤で被覆されており、該コーティング剤はカルボン酸を含むものであることが好ましい。カルボン酸を含むコーティング剤を用いることによって、接着剤組成物の放熱性をより一層向上させることができる。その理由としては、本発明で使用する(C)硬化剤は、前記銀微粉の表面から、前記コーティング剤を脱離させる作用があり、本発明の接着剤組成物の硬化速度の遅延性と相まって、導電性フィラー同士の融着をより一層促進するためであることが考えられる。
【0022】
前記コーティング剤に含まれるカルボン酸は特に限定されず、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
前記モノカルボン酸として、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプリル酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の炭素数1〜24の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、オレイン酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、ジホモ−γ−リノレン酸、エライジン酸、アラキドン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸等の炭素数4〜24の不飽和脂肪族カルボン酸を用いてもよい。さらには、安息香酸、ナフトエ酸等の炭素数7〜12の芳香族モノカルボン酸等を用いることもできる。
【0024】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の炭素数2〜10の脂肪族ポリカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、テトラヒドロフタル酸等の炭素数4〜14の脂肪族不飽和ポリカルボン酸;フタル酸、トリメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。
【0025】
前記オキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、グリセリン酸等の脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸;サリチル酸、オキシ安息香酸、没食子酸等の芳香族ヒドロキシモノカルボン酸;酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシポリカルボン酸等が挙げられる。
【0026】
前記銀微粉の表面を処理するためのコーティング剤には、銀微粉の凝集を低減させるため、炭素数が10以上の高級脂肪酸又はその誘導体を含めることができる。このような高級脂肪酸としては、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リグノセリン酸が例示される。高級脂肪酸の誘導体として、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミドが例示される。
【0027】
前記コーティング剤に含まれるカルボン酸は前記カルボン酸の2種以上の混合物であってもよい。また、前述したカルボン酸のうち、炭素数12〜24の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸である高級脂肪酸が好ましい。
【0028】
前記銀微粉の表面をコーティング剤で被覆するには、両者をミキサー中で撹拌、混練する方法、該銀微粉にカルボン酸の溶液を含浸して溶剤を揮発させる方法等の公知の方法を利用して行えばよい。
【0029】
本発明の接着剤組成物では、(A)導電性フィラーと(B)エポキシ樹脂の該接着剤組成物中におけるそれぞれの配合量の質量比が、(A)/(B)=96.0/4.0〜99.5/0.5の範囲となるように上記両成分の配合量を調節し、好ましくは(A)/(B)=97/3〜99/1の範囲となるようにする。(A)/(B)が96.0/4.0〜99.5/0.5の範囲外であると、安定した導電性、熱伝導性、接着力が得られなくなる恐れがある。
【0030】
また、(A)導電性フィラーの配合量は、本発明の接着剤組成物の全体量に対して、通常、80〜96質量%の範囲とする。この配合量が80質量%未満であると、安定した導電性、熱伝導性、接着力が得られなくなる恐れがあり、96質量%を超えると低粘度や十分な接着強度を維持することが困難となる恐れがある。好ましくは、83〜90質量%であり、最適には84〜88質量%である。
【0031】
本発明の接着剤組成物においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の導電性フィラーを併用することができる。そのような導電性フィラーとしては、導電性を有するものであれば特に限定はされないが、金属やカーボンナノチューブ等が好ましい。金属としては、一般的な導体として扱われる金属の粉末は全て利用することができる。例えば、ニッケル、銅、銀、金、アルミニウム、クロム、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン等の単体、これら2種以上の金属からなる合金、これら金属のコーティング品、あるいはこれら金属の化合物で良好な導電性を有するもの等が挙げられる。
【0032】
(B)エポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有する化合物であり、液状エポキシ樹脂が用いられる。このような液状エポキシ樹脂の具体例としては、エピクロルヒドリンとビスフェノール類等の多価フェノール類や多価アルコールとの縮合によって得られるもので、例えば、ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビスフェノールAD型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、ビスフェノールAノボラック型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型、テトラフェニロールエタン型等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を例示することができる。その他、エピクロルヒドリンとフタル酸誘導体や脂肪酸等のカルボン酸との縮合によって得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとアミン類、シアヌル酸類、ヒダントイン類との反応によって得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらには様々な方法で変性したエポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明においては、(B)エポキシ樹脂に少なくともビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂が含まれるようにする。ビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂を併用することにより、導電性フィラーである銀微粉の配合量の増大に伴って起こる接着力の低下を防止して、高い熱伝導性と安定した導電性をもたらすことが可能となる。ビスフェノール型エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビスフェノールAD型等のエポキシ樹脂が含まれる。なかでも、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂には、ビスフェノールAノボラック型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のエポキシ樹脂が含まれる。なかでも、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0034】
(B)エポキシ樹脂に含まれるビスフェノール型エポキシ樹脂とノボラック型エポキシ樹脂の質量比は、両エポキシ樹脂の併用による前述した効果を得るうえで、ビスフェノール型エポキシ樹脂/ノボラック型エポキシ樹脂=40/60〜80/20とすることが好ましく、50/50〜70/30とするのがさらに好ましい。
【0035】
(B)エポキシ樹脂の配合量は、本発明の接着剤組成物の全体量に対して、通常、0.3〜4.0質量%とすることが好ましい。この配合量が0.3質量%未満であると、接着力が弱くなり、接続信頼性が低下する恐れがあり、4.0質量%を超えると、導電性フィラーの焼結によるネットワーク形成が困難となり安定した導電性、熱伝導性が得られなくなる恐れがある。より好ましくは、0.4〜3.7質量%で用いられる。
【0036】
(C)硬化剤には、ジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体を用いる。これにより、適度な硬化遅延硬化が得られ、また導電性フィラーとの相互作用による導電性フィラーの焼結成長及びネットワーク形成を促進することができる。上記硬化剤としては、具体的には、下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物が挙げられ、それらのうち、特に4,4’―ジアミノジフェニルスルホン及び3,3’―ジアミノジフェニルスルホンが好ましく用いられる。一般式(I)、(II)又は(III)において、低級アルキル基には、炭素数1〜6の直鎖、分枝又は環状のアルキル基等が含まれ、それらのうち、炭素数1〜3の直鎖又は分枝のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基が特に好ましい。なお、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の公知の硬化剤を併用してもよい。
【0037】
【化1】
(式中、XはーSO−を表し、R1〜R4は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【0038】
【化2】
(式中、XはーSO−を表し、R5〜R8は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【0039】
【化3】
(式中、XはーSO−を表し、R9〜R12は各々独立して、水素原子又は低級アルキル基を表す。)
【0040】
(C)硬化剤の配合量は、(B)エポキシ樹脂中のエポキシ基1mol当量に対して、活性水素当量として0.4〜2.4mol当量、好ましくは、0.5〜2.0mol当量となるようにする。前記硬化剤の配合量が活性水素当量として0.4mol当量未満であると、硬化が不十分で耐熱性が劣ることがあり、硬化が十分な場合でも熱伝導率が低下する場合がある。2.4mol当量を超えると硬化が不十分で耐熱性が劣ることがあり、硬化が十分でも接着剤として必要な高弾性が得られない場合がある。本発明でいう活性水素当量は、硬化剤で用いる化合物中のアミノ基の窒素上の活性水素の数から算出され、該化合物は一分子中に2つのアミノ基を有することから活性水素は一分子中4つ有する。よって、本発明の硬化剤で用いる化合物の1molあたりの活性水素当量は、4mol当量となる。
【0041】
(D)有機溶剤としては、エポキシ系接着剤組成物に通常使用されるものであればよく、例えば、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、2,4−ジエチルー1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチルー1,5−ペンタンジオール、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、γ−ブチロラクトン、イソホロン、グリシジルフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等の有機溶剤が例示される。これらのうち、ブチルカルビトールアセテート、2,4−ジエチルー1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチルー1,5−ペンタンジオールが好適である。なお、有機溶剤は1種類だけ使用しても2種類以上併用してもよい。
【0042】
(D)有機溶剤の配合量は限定されるものではなく適宜決定すればよいが、一般には、本発明の接着剤組成物の全体量に対して、3〜17質量%であり、好ましくは5〜15質量%であり、最適には9〜15質量%である。
【0043】
本発明の接着剤組成物には硬化促進剤を配合することもできる。硬化促進剤としては、2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルー4―メチルー5―ヒドロキシメチルイミダゾール、2―メチルー4―メチルイミダゾール、1−シアノー2−エチルー4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、第3級アミン類、トリフェニルフォスフィン類、尿素系化合物、フェノール類、アルコール類、カルボン酸類等が例示される。硬化促進剤は1種類だけ使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0044】
硬化促進剤の配合量は限定されるものではなく適宜決定すればよいが、使用する場合は、一般には、本発明の接着剤組成物の全体量に対して、0.1〜2.0質量%である。
【0045】
本発明の接着剤組成物には、その他の添加剤として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、分散剤、カップリング剤、強靭性付与剤、エラストマー等、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0046】
本発明の接着剤組成物は、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及びその他の成分を任意の順序で混合、撹拌することにより得ることができる。分散方法としては、二本ロール、三本ロール、サンドミル、ロールミル、ボールミル、コロイドミル、ジェットミル、ビーズミル、ニーダー、ホモジナイザー、プロペラレスミキサー等の方式を採用することができる。
【0047】
本発明の接着剤組成物は、半導体素子をリードフレームや基板等の支持基材の表面に接着させる接合材料(ダイボンド材)として有用であり、通常、支持基材表面に該接着剤組成物を塗布し、その上に半導体素子を置いて加熱・硬化させることにより接着がなされる。その際の加熱・硬化は通常、180〜250℃、10〜300分間の条件で行われる。また、本発明の接着剤組成物は、例えば、銅又は銅合金材の表面に金、銀、ニッケル、パラジウムあるいはそれらの合金をめっきした支持基材など、幅広い材質からなる支持基材に適用が可能である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0049】
[実施例1〜6、比較例1〜3]
A.接着剤組成物の作製
表1に記載された各材料を三本ロールにて混練し、表1に示す組成の接着剤組成物を作製した(各材料の数値は接着剤組成物の総質量に対する質量%を表す。)。使用した材料は下記のとおりである。
[導電性フィラー]
・フレーク状銀粉(コーティング剤ステアリン酸で表面処理したもの。平均粒子径d50:500nm、田中貴金属工業社製)
[エポキシ樹脂]
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂(「EPICLON 831−S」(商品名)、大日本インキ化学工業社製、室温で液状、エポキシ当量=169g/eq)
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(「EPICLON 850−S」(商品名)、大日本インキ化学工業社製、室温で液状、エポキシ当量=188g/eq)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂(「EPALLOY 8330」(商品名)、Emerald Performance Materials社製、室温で液状、エポキシ当量=177g/eq)
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(「EPICLON N−665」(商品名)、大日本インキ化学工業社製、室温で液状、エポキシ当量=207g/eq)
[硬化剤]
・4,4’―ジアミノジフェニルスルホン(分子量248.3、東京化成工業社製)
・3,3’―ジアミノジフェニルスルホン(分子量248.3、東京化成工業社製)
[添加剤]
・2−フェニルー4−メチルー5−ヒドロキシメチルイミダゾール(「キュアゾール 2P4MHZ」(商品名)、四国化成工業社製)
[溶剤]
・ブチルカルビトールアセテート(関東化学社製)
・2,4−ジエチルー1,5−ペンタンジオール(「日香MARS」(商品名)、日本香料薬品社製)
・2,4−ジメチルー1,5−ペンタンジオール(日本香料薬品社製)
【0050】
B.接着剤組成物の物性評価
1.ダイシェア強度の測定
前記接着剤組成物の接着強度を評価するため、該接着剤組成物のダイシェア強度を測定した。銀めっきした銅リードフレームに、硬化後の膜厚が約25mmとなるように前記接着剤組成物を塗布し、この上に5×5mmのシリコンチップ(厚さ:0.625mm)をマウントし、60℃で30分間加熱処理して含有する溶剤を揮発させた後、大気雰囲気下で210℃で180分間、硬化してダイシェア強度測定用の試料を作製した。この試料について、ダイシェア強度測定器[「Dageシリーズ4000」(商品名)、ノードソン社製]を用いて、せん断速度0.2mm/sec、23℃の条件でダイシェア強度(N/5mm□)を測定した。結果を表1に示す。
2.体積抵抗値の測定
前記接着剤組成物の導電性を評価するため、該接着剤組成物の体積抵抗値を測定した。ガラス支持基材上に、5mm幅で50mmの長さで、硬化後の膜厚が約 0.03mmとなるように前記接着剤組成物を塗布し、前記と同様にして加熱、硬化を行い、体積抵抗値測定用の試料を作製した。この試料について、抵抗器[「HIOKI3540」(商品名)、日置電機社製](商品名)を用いて、体積抵抗値(μΩ・cm)を測定した。結果を表1に示す。
3.熱伝導率の測定
前記接着剤組成物の熱伝導性を評価するため、該接着剤組成物の熱伝導率を測定した。熱伝導率λ(W/m・K)は、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置 (「TC−7000」(商品名)、ULVAC-RIKO社製)を用いてASTM−E1461に準拠して熱拡散aを測定し、ピクノメーター法により室温での比重dを算出し、また、示差走査熱量測定装置 (「DSC7020」(商品名)、セイコー電子工業社製)を用いてJIS−K7123に準拠して室温での比熱Cpを測定して、以下の式により算出した。結果を表1に示す。
λ=a×d×Cp
【0051】
【表1】
【0052】
上記結果から、本発明の接着剤組成物は、高い放熱性と安定した導電性を有し、高い接着力を発揮することが確認された。