【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、総務省、戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)、「実空間情報連動型ネットワークシステムの研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 実空間の起点地点において通知されたグループ化条件を用いて、実空間に所属する複数の端末装置から一部をグループとして抽出する。コストマップ作成部41は、各端末装置の地点情報及び/又は端末情報を用いて、起点地点への到達コストによるコストマップを作成する。実空間エリア抽出部43は、コストマップを用いて、到達コストにより実空間エリアを抽出する。グループ抽出部45は、実空間エリア内に存在する端末装置から、グループ化条件に合致するものを抽出してグループ化する。さらに、管理サーバと端末装置間の情報の収集及び配信について、集約を行うことにより、管理サーバの負担の軽減等を実現する。
前記端末装置は、当該端末装置の前記端末情報だけでなく、装置間通信により通信可能な他の端末装置の前記端末情報を集約して前記管理サーバに送信することができるものであり、
前記複数の端末装置には、
前記実空間の一部であるサブエリア内の他の端末装置の端末情報を集約して前記管理サーバに送信する代表ノードと、
前記代表ノードを経由せずに前記管理サーバと通信可能で、端末情報を装置間通信により前記代表ノードに送信して前記管理サーバに送信するサブエリア内ノードと、
前記代表ノードを経由せずに前記管理サーバと通信できず、端末情報を装置間通信により前記サブエリア内ノードの一つである回収ノードに送信して前記代表ノードに送信して前記管理サーバに送信するサブエリア外ノードが存在し、
前記代表ノードは、
前記サブエリア内の他の端末装置と通信可能なものであって、他の端末装置の端末情報を収集し、又は、
前記サブエリア内の端末装置のうち、前記管理サーバに近いものであって、前記サブエリア内の端末装置と通信可能な情報共有ノードを用いて前記サブエリア内の他の端末装置の通信情報の一部又は全部の端末情報を収集し、
前記管理サーバは、前記グループ抽出ステップにおいて抽出されたグループ内の各端末装置に対して、
前記代表ノードに対する情報は、前記代表ノードに配信し、
前記サブエリア内ノードに対する情報は、前記代表ノードに配信するか前記サブエリア内ノードに配信するかを選択し、
前記サブエリア外ノードに対する情報は、前記代表ノードに配信する、請求項1又は2に記載のグループ抽出方法。
【実施例】
【0018】
まず、
図1及び
図2を参照して、本願発明に係るグループ抽出システムの構成と動作の一例について説明する。
図1は、本願発明の実施の形態に係るグループ抽出システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図2は、
図1のグループ抽出システム1の動作の一例を示すフロー図である。
【0019】
グループ抽出システム1は、複数の端末装置3
1,3
2,3
3,3
4(添え字は、省略する場合がある。)と、外部サーバ7と、管理サーバ9を備える。
【0020】
端末装置3は、要求送信部11と、端末通信部13と、端末位置情報記憶部15を備える。端末装置3は、実空間上で移動可能なものであり、例えばユーザが使用するスマートフォンなどである。要求送信部11等は、スマートフォン上のアプリにより実現される。なお、例えば自動車等に搭載されたものであってもよい。
【0021】
端末位置情報記憶部15には、端末装置3のユーザ情報を記憶する。ユーザ情報は、ユーザに関する属人情報(UA(User attribute))と、ユーザが保有する端末装置3に関する端末情報(TA(Terminal attribute))が存在する。UAには、職業や嗜好等の本人が自ら決定する情報(UDA(User-defined attribute))と、行動履歴等から自動的に付与される情報(UUDA(User-undefined attribute))が含まれる。属人情報は、各属性の有無が設定されており、ある属性を指定すれば、その属性を有するか否かを判断できる。TAには、位置情報などのLA(Location attribute)とIPアドレス等のNA(Network attribute)が含まれる。全ての端末装置3が、GPS等を通じて位置情報の把握が可能とする。
【0022】
以下では、端末装置3
1が救援の要求をしたとする。端末装置3
2は、端末情報によれば実際に駆けつけることができる位置にあり、属人情報に職業として「医師」の属性が設定されているとする。端末装置3
3は、端末情報によれば実際に駆けつけることができる位置にあるが、属人情報によれば職業として医師や看護師などの属性は設定されていないとする。端末装置3
4は、端末情報によれば駆けつけることができない位置にあるとする。
【0023】
要求送信部11は、端末装置3から管理サーバ9に対して、グループ化要求を送信する。管理サーバ9では、各端末装置3のLAの位置情報により、例えば障害物や道路等の実空間を考慮した距離を算出する。これを「実空間距離」と定義する。実空間距離を用いて、グループ化要求を送信した端末装置に到達可能な端末装置群を抽出する。管理サーバ9は、端末装置3から送信されたグループ化要求を分析し、一つ又は複数の属性を指定するグループ化条件とし、当該端末装置に到達可能な端末装置群のうち、グループ化条件により指定される属性を有する端末装置群を抽出する。
【0024】
端末通信部13は、端末位置情報記憶部15に記憶されたUA及びTAを管理サーバ9に送信する。UAやTAは、変更の頻度が異なる。そのため、例えばTAは定期的に送信し、UAは、変更があった時点で送信するようにしてもよい。管理サーバ9は、各ユーザが管理する端末装置3のUA及びTAを管理することができる。
【0025】
外部サーバ7は、実空間における各地点の情報を記憶するOD(Open Data)記憶部23と、OD記憶部23に記憶された情報を管理サーバ9に送信するOD通信部21を備える。外部サーバ7には、例えば、地理情報システムや道路情報システムが存在する。管理サーバ9が用いる地図情報は、ユーザ個々の位置情報を対象とするのではなく、特定の地域をメッシュ単位で分割した地図情報とする。また、外部サーバ7は、例えばオープンデータ(GISや天候、電波強度など)を記憶するものや、高年齢者分布やSNSの受信分布などの属人情報と関連するものであってもよい。例えばSNSの受信分布により、移動の所要時間や移動頻度や親近感から,近接地域を検索することに有効であると考えられる。
【0026】
管理サーバ9は、端末情報収集部31と、端末情報記憶部33と、要求受信部35と、外部情報収集部37と、地点情報記憶部39と、コストマップ生成部41と、実空間エリア抽出部45と、アドレス付与部47と、情報配信部49を備える。
図1及び
図2を参照して、管理サーバ9の各構成と動作について説明する。
【0027】
各端末装置3の端末通信部13は、端末位置情報記憶部15に記憶されているユーザ情報を端末情報収集部31に送信する(
図2のステップST1)。UAは属人情報であることから頻繁に変更されることがないため、UAは低頻度でTAは高頻度で収集する。端末情報収集部31は、収集したユーザ情報を端末情報記憶部33に記憶する。ここで、属性数は膨大なので、グループ化条件として指定された属性を満たすユーザ情報を正確かつ効率的に探索することが重要である。本実施例では、表1にあるように、どの属性群(一つの属性又は複数の属性の組み合わせ)がどのメッシュに存在するかという対応情報を持つことで探索空間の削減を図る。この対応情報を「属性メッシュ対応データベース(DB)」と呼ぶ。また、ユーザ情報とメッシュ情報とコストのDBがある。ユーザ情報のDBは、ユーザID・属性・緯度経度・所属メッシュIDで、空間はユーザ数に比例する。メッシュ情報のDBは、メッシュIDとメッシュ緯度経度で、空間はメッシュ数に比例する。コストのDBは、メッシュID・隣接メッシュID・コスト(距離や所要時間など)で、空間はメッシュ数の二乗に比例する。
【0028】
【表1】
【0029】
要求受信部35は、端末装置3の要求送信部11から、グループ化要求を受信したか否かを判断する(ステップST2)。グループ化要求を受信していないならば、ステップST1に戻る。グループ化要求を受信したならば、ステップST3に進む。ここで、グループ化要求には、簡単のために、要求した端末装置の現在位置と属性群が指定されているとする。なお、グループ化要求は文言等によって指定されており、要求受信部35においてグループ化要求を分析して属性群を指定するようにしてもよい。
【0030】
ステップST3において、外部情報収集部37は、外部サーバ7から各メッシュの情報を収集し、地点情報記憶部39に記憶する。コストマップ生成部41は、例えば地形や天候や電波強度などを参照して、各メッシュからグループ化要求に含まれた現在位置に到達する到達コストを計算し、コストマップを生成する(ステップST4)。実空間エリア抽出部43は、到達コストが判定値よりも低いメッシュを抽出して実空間エリアを抽出する(ステップST5)。判定値は、例えば、到達するまでの時間などである。グループ抽出部45は、属性メッシュ対応DBを検索し、実空間エリア内のメッシュに存在し、グループ化条件により指定された属性群を有する端末装置3を抽出し、グループ化する(ステップST6)。例えば、実空間エリア内に端末装置3
2及び3
3が存在し、このうち、「医師」の属性を持つ端末装置3
2を抽出する。そして、端末装置3
1と3
2をグループ化する。アドレス付与部47は、グループにマルチキャストアドレスを付与する(ステップST7)。情報配信部49は、付与されたマルチキャストアドレスを使用して、生成されたグループに情報を配信する(ステップST8)。そして、ステップST1に戻る。なお、ステップST7及びST8では、マルチキャストアドレスをグループ内の端末装置3に送信し、端末装置3が送信者となって生成されたグループに情報を配信してもよい。
【0031】
このように、管理サーバ9では、各端末装置3を保有するユーザの属人情報及び位置情報を管理し、特定の属性を持つグループの生成要求に基づき、地理的制約等を考慮した実空間上の一定範囲内から指定された属性を有するユーザを抽出し、さらに、該当ユーザに対してそれらユーザ間で互いに情報配信できるよう、必要な情報を通知する。通知する情報は、例えば生成したグループを特定するマルチキャストアドレスでよい。
図3は、
図1のグループ抽出システムの概念図である。
図3(a)にあるように、管理サーバは、ユーザの情報を管理し、各ユーザの携帯端末は、無線通信で管理サーバと通信するためのアプリケーションが搭載されている。そして、以下のように管理サーバと携帯端末が連携をする。管理サーバは定期的にユーザ端末からユーザの属性情報(現在位置情報や属人情報)を収集する(情報収集)。ユーザはグループを生成する際に所望の条件(属人情報や地理的範囲を含む属性の組み合わせ)を管理サーバに送信する(グループ生成要求)。管理サーバは、収集した情報及びグループの生成要求に基づいて、地理的制約を反映した実空間上の範囲内から適切なユーザ群を抽出してグループ化し、グループ用のマルチキャストアドレスを付与する(ユーザグループ生成)。管理サーバは、マルチキャストアドレスによりグループ内通信を行い、また、グループに付与したマルチキャストアドレスをグループ構成ユーザ端末全員に通知して各ユーザ端末がマルチキャストによりグループ内で通信をする(情報配信)。
図3(b)にあるように、管理サーバ9は、あるユーザ(アプリケーション)の要求を満たすために、実空間に存在する多種多様な情報を収集・解析することで、正確かつ効率的にグループを抽出できる。よって、実空間上における特定のグループ内での情報共有として、特定の事象に関連性が高く、かつ、物理的に身近で活動をする人々を動的に結びつけ、情報共有や相互支援することを実現することができる。
【0032】
なお、背景技術において紹介した技術などは、様々な属性を考慮した実空間上におけるグループの動的な生成やグループ内での効率的な通信を実現することはできないが、本実施例内の個々の要素技術になりうるため、援用可能な技術である。例えば、現在では、2地点間の距離と所要時間を取得するためのAPIが公開されており、取得できる情報は単純な直線距離に基づく情報ではなく道路や障害物を考慮した情報となるため、2地点間の近接関係を調べるためには有用である。
【0033】
本実施例の有効性及び実現可能性を評価するために行ったシミュレーションについて説明する。比較評価をする方式は、探索対象とするメッシュをランダムで決定するランダム探索方式、送信者が存在するメッシュを起点として直線距離順に探索対象となるメッシュを選択する直線距離優先探索方式、送信者が存在するメッシュを起点として、実空間距離順に探索対象となるメッシュを選択する実空間距離優先探索方式である。直線距離及び実空間距離優先探索については、メッシュの探索空間を絞り込むための属性メッシュ対応DBでの記憶方法を2通り考える。一つは、属性群を構成する要素数が少ない属性群を優先して記憶する最少属性優先記憶である。構成する要素数が少なければ、他の属性群に部分一致する可能性があるため、探索空間を削減するためには有効だと考える。もう一つは、要求頻度の高い属性群を優先して記憶する最頻要求優先記憶である。この方式を利用するには、属性群に対する要求頻度という付加情報が必要となるが、要求頻度に関する情報は既知であると想定する。
【0034】
まず、抽出ユーザ上限数による影響の検証について説明すると、実空間距離優先探索は抽出ユーザ上限数を制限したとしても、正確に探索可能である。次に、探索ユーザ数に着目すると、要求頻度の情報があれば最頻要求優先記憶が望ましいが、簡便性のある最少属性優先記憶でも大きな効果が期待できる。
【0035】
続いて、属性メッシュ対応DBによる影響の検証について説明する。本実施例では、属性メッシュ対応DBの活用により探索ユーザ数の削減が期待できる。しかし、膨大な数の属性のうち、全ての属性を記憶することは困難であるため、記憶できる要素数が限定的な環境を想定する。これ以降の評価では、抽出ユーザ上限数は2の際の結果のみを示すが、抽出ユーザ上限数が増えた場合の結果も同様の傾向となる。まず、最頻要求優先記憶に着目する。要素数が1350に対して、ランダム探索と比較して66.93%の差となる。一方で、最少属性優先記憶については、要素数が100の際は大きな効果がない。要素数が700の際に着目すると、ランダム探索と比較して41.77%の差となる。最頻要求優先記憶の場合は、属性群の数に対してわずか10%程度を記憶すれば著しい効果があるといえる。ただし、今回は要求頻度が既知かつ正確であるため、そのような情報を入手可能かどうかが重要となる。一方で、最少属性優先記憶の場合は、50%程度を記憶すれば、40%強の削減が可能である。そのため、特に付加的な情報が必要ないことから、要求頻度を把握することが困難な環境下においては、最少属性優先記憶は簡便で有効な手段の一つと結論付ける。
【0036】
続いて、ユーザの移動による影響の検証を説明すると、ユーザの移動により、いずれの方式に対しても最適選択率への影響があることが確認できる。しかし、実空間優先探索が他の方式と逆転するほどの影響はなく、高い最適選択率を維持できる結果となった。そのため、本実施例の実現可能性が検証できたと結論付けることができる。
【0037】
続いて、端末装置からのユーザ情報収集と端末装置への配信について、一例を説明する。ユーザ情報は管理サーバ上で集約されることを想定しているが、各ユーザが広域無線網を利用してユニキャスト通信を行うと、ユーザ数の増加に応じて遅延やパケットロスが増加してしまう。さらに、例えばWiMAXにおける通信手順では,ユーザがデータをアップリンクで送信する際は、まず基地局へ帯域を要求する必要がある。ユーザ数が増加すると衝突が発生する可能性が高まる。衝突が発生すると,ユーザはCSMA/CD やCSMA/CAと同様に一定時間、帯域要求の送信を中断することとなり、その結果、送信遅延が増大してしまう。サービスの要求を満足するには、このような遅延やパケットロスは致命的なものとなり得る。そこで、定期的に、より多数のユーザ情報を管理サーバへ確実に通知するための効率的な情報収集及び配信の手法を説明する。
【0038】
広域無線網基地局(以下,基地局)へユニキャストを行うユーザ数を減らすため、周辺ノードの情報を集約するノード(以下、「代表ノード」という。)が隣接ノードのユーザ情報を集約し、基地局へまとめて通知する。この代表ノード選出アルゴリズムは、例えば以下のものである。ノード間の情報共有は、例えば無線LAN(アドホックモード)を用いて行うことができる。また、集約する範囲を一意に決定できるようにするため、代表ノードによる集約は「サブエリア」毎に行う。これは、
図6にあるように、各ノードが保持している地図上を、多角形(例えば、集約範囲を広げるために無線LANの最低伝送レートでの到達距離である150mを半径とする正六角形とし、サブエリアの中心に位置するノードはサブエリア内の全ノードと通信可能とする。)等で仮想的に区切ったものとする。各ノードは、自身のユーザ情報(位置情報,属性など)をアドホックモードの無線LANを用いて定期的にブロードキャストする。これにより、周辺ノード同士の情報共有が可能となる。
【0039】
なお、例えばセンサネットワークでは、有線通信網に接続されたシンクノードに情報を集約して,シンクノードからまとめてサーバに送信することが知られている。しかし、本実施例では、周辺ノードの情報収集に無線LANのアドホックモードを利用する。これにより、センサネットワークの様に有線ネットワークに接続されるシンクノードが不要となる。
【0040】
次に、一定時間内により多くのユーザ情報を管理サーバへ通知するために、基地局へのユーザ情報通知にかかる遅延時間の最小化を目指す。そこで、代表ノードの選出後に、代表ノードは自身が通知する場合と個別に通知する場合とで遅延時間をそれぞれ推定し、比較して、明らかにより小さい方を通信手段として選択する。その後、決定内容を隣接ノードに無線LANを用いて通知することで、各ノードの通知方法が決定される。
【0041】
代表ノードの決定手法は、ユーザ周辺の状況や広域無線網の通信品質によって異なる。通信状態が良好な場合(以下、「ケース(a)」という。)と、通信状態が劣悪な場合(以下、「ケース(b)」という。)について説明する。基地局との距離は、例えば、基地局から受けとる信号のRSSI(受信信号強度,Received Signal Strength Indicator)などから推定することができる。また、代表ノードは、例えば、ブロードキャストで受け取ったパケットから、各ノードの位置情報に基づいて選出することができる。
【0042】
まず、ケース(a)として、広域無線網の通信品質が良い(基地局に近い)サブエリアの場合を考える。通信品質は、例えば、各ノードが基地局と通信する際に得られるシグナル強度により判断することが可能である。この場合、同一サブエリア内の各ノードの通信品質に差がないため、
図4(a)に示すようにサブエリアの中心に最も近いノードを「代表ノード」に選出する。この場合、代表ノードは、全ノードの無線LANの信号を受信できることが期待できる。
【0043】
また、
図4(b)にあるように、広域網への接続ができないサブエリア近傍端末については、広域網のサブエリア端にいるノードを「回収ノード」とし、広域網エリア外のユーザ情報を収集することができる。広域無線網圏外のノードの情報も、ブロードキャストで取得した情報を再度ブロードキャストしていくことで集約することができる。
【0044】
ケース(b)として、
図4(c)にあるように、通信状態が劣悪な状況では、基地局に近いノードを代表ノード、回収ノードと代表ノード間を中継するノードを情報共有ノードとし、サブエリア近傍端末の情報を集約して基地局に代理通知する。品質が劣悪なサブエリアでは,ノードの位置の違いによって,広域無線通信網上の品質が異なると予想される。この場合,各ノードのメッセージの再送回数が異なるため,サブエリア内で最も通信品質の良い(再送回数が少なく,より基地局の近くに位置する)ノードを代表ノードとして選出する。この代表ノードは、無線LANで交換する電波強度や再送回数情報を基に判断する。この場合、同一サブエリア内に存在しても代表ノードまで無線LANの信号が届かないノードが存在しうる。そこで、中心に最も近いノードを「情報共有ノード」として選出し、サブエリア内のノードの情報共有の中継役を担わせる。
図4(c)では、サブエリア内において広域網のサブエリア端にあるノードを回収ノードとした例を示している。
【0045】
図5(a)は、代表ノードの決定処理の一例を示す。これは、例えばサブエリア内のノード間で決定することができる。まず、サブエリアの中心に近いノードを仮代表ノードとする(ステップSTD1)。そして、仮代表ノードと管理サーバとの通信状態が判定値よりも良好か否かを判断する(ステップSTD2)。良好であれば、仮代表ノードを代表ノードとする(ステップSTD3)。良好でなければ、仮代表ノードを情報共有ノードとし(ステップSTD4)、前記のケース(b)のとおり代表ノードを選出する(ステップSTD5)。
【0046】
この手法の有効性をシミュレーションによって評価する。単位時間内での基地局へのメッセージ数を評価すると、個別通知(ユニキャスト通信)では73であるのに対し、代表ノードを用いた際の通知メッセージ数は27であり、大幅に減少できた。よって、効率的にユーザ情報を収集できる。
【0047】
続いて、集約の判断について説明する。代表ノードは、集約通知するかどうかの判断を行う。具体的には、代表ノードが集約通知する場合と各ノードが個別通知する場合とで、ユーザ情報通知にかかる遅延時間の推定値をそれぞれ算出し、より小さい方を通信手段として選択する。
【0048】
図5(b)にあるように、遅延時間の算出に用いるパラメータは、以下のものである。1人分のユーザ情報のメッセージサイズをmsgSize、ノードIDをx(ただし、rは代表ノード)、サブエリア内のノード数をm、各ノードの伝送レートをdataRate_x(ただし、dataRate_rは代表ノードの伝送レート)、各ノードの送信回数(再送含む)をn
x(ただし、n
rは代表ノードの再送回数)である。ここで、各ノードが経験する再送回数及び伝送レートは、無線LAN上でユーザ情報と共にブロードキャストされることで共有できるものとする。これらの情報を基に、基地局へユーザ情報を通知する際の遅延時間について、集約通知の場合をd
r,各ノードが基地局へ個別通知した際の遅延時間の合計をd
mとしたとき,それぞれは以下の式で計算される。
図5(b)を参照して、d
rとd
m比較し、dr>dmならば集約通知を決定し、代表ノード等は決定内容を無線LAN経由で周辺ノードに通知する(ステップSTK2)。そうでなければ、個別通知を決定し、代表ノード等は無線LAN経由での周辺ノードへの通知は行わない。他のサブエリア内ノードは、
図5(c)にあるように、所定時間内に集約通知を受けたか否かを判断し(ステップSTT1)、集約通知を受けたならば集約処理をさせ(ステップSTT2)、タイムアウトによって個別通知を把握した上で、通知処理を開始する(ステップSTT3)。
【0049】
【数1】
【0050】
図4(d)及び(e)を参照して、情報配信の一例を説明する。
図4(d)は、管理サーバが、配信先端末ごとに代表ノードを管理するための表である。
図4(e)は、ノードB、C、D、Eに配信する場合の一例を示す。管理サーバは、配信先端末の代表ノードが、他の端末装置をカバーしているかを判断する。カバーしているならば、この代表ノードがカバーする端末にはすべて代表ノード宛にユニキャスト配信をする。そして、この代表端末にカバーされた端末は繰り返し候補から除外する。例えば、
図4(e)では、ノードBの代表ノードGはノードDもカバーしているため、ノードGにユニキャストし、ノードBとDを繰り返し候補から除外する。代表ノードが他のノードをカバーしていないならば、配信端末宛にユニキャスト配信する。これを配信先端末分繰り返す。
【0051】
シミュレーションにより、ケース(a)(b)全てにおいて、本実施例によりメッセージロスを約82%、及び収集時間を約71%程度、低減及び短縮できることを確認した。