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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-154301(P2016-154301A)
(43)【公開日】2016年8月25日
(54)【発明の名称】A/D変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/18 20060101AFI20160729BHJP
【FI】
   H03M1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-31916(P2015-31916)
(22)【出願日】2015年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】渡部 五常
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA01
5J022CB01
5J022CB06
5J022CC01
5J022CF08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】A/D変換の精度低下を招くことなくA/D変換器の入力レンジよりも大なる電圧範囲の入力信号をディジタル値に変換することが可能なA/D変換装置を提供する。
【解決手段】基準電圧から入力信号の電圧値を減算して得た電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成する減算回路30と、レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換するA/D変換器40と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧から入力信号の電圧値を減算して得た電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成する減算回路と、
前記レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換するA/D変換器と、を有することを特徴とするA/D変換装置。
【請求項2】
前記基準電圧は、前記入力信号の電圧値として取り得る電圧範囲を夫々の幅が前記A/D変換器の入力レンジ以下となるように分割した複数の電圧領域のうちで、前記入力信号の電圧値を含む電圧領域における最大の電圧値に設定されることを特徴とする請求項1記載のA/D変換装置。
【請求項3】
前記入力信号の電圧値が前記複数の電圧領域のうちのいずれの電圧領域内にあるのかを判定する領域判定部と、
前記複数の電圧領域の各々での最大の電圧値のうちから、前記領域判定部において判定された前記電圧領域に対応した電圧値を選択し当該選択した電圧値を有する前記基準電圧を前記減算回路に供給するセレクタと、を有することを特徴とする請求項2記載のA/D変換装置。
【請求項4】
第1〜第n(nは2以上の整数)の入力信号を順次択一的に選択し、前記選択した入力信号を出力ラインを介して出力する第1のセレクタと、
前記セレクタから出力された前記入力信号の電圧値を基準電圧から減算して得た電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成する減算回路と、
前記レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換するA/D変換器と、を有することを特徴とするA/D変換装置。
【請求項5】
前記基準電圧は、前記入力信号の電圧値として取り得る電圧範囲を夫々の幅が前記A/D変換器の入力レンジ以下となるように分割した複数の電圧領域のうちで、前記入力信号の電圧値を含む電圧領域における最大の電圧値に設定されることを特徴とする請求項4記載のA/D変換装置。
【請求項6】
前記入力信号の電圧値が前記複数の電圧領域のうちのいずれの電圧領域内にあるのかを判定する領域判定部と、
前記複数の電圧領域の各々での最大の電圧値のうちから、前記領域判定部において判定された前記電圧領域に対応した電圧値を選択し当該選択した電圧値を有する前記基準電圧を前記減算回路に供給する第2のセレクタと、を有することを特徴とする請求項5記載のA/D変換装置。
【請求項7】
前記A/D変換器は、前記第1のセレクタによる前記第1〜第nの入力信号の切替周期と同一周期のA/D変換タイミングで前記レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換することを特徴とする請求項4〜6のいずれか1に記載のA/D変換装置。
【請求項8】
前記第1のセレクタは、前記第1〜第nの入力信号を択一的に前記出力ラインに印加するMOS(metal-oxide semiconductor)型のトランスミッションゲートを有し、
前記第1のセレクタによる前記第1〜第nの入力信号の切替時点から前記A/D変換タイミングまでの期間よりも、前記切替時点で発生するリンギングの収束期間が短くなるように、前記トランスミッションゲートのゲート長が設定されていることを特徴とする請求項7記載のA/D変換装置。
【請求項9】
前記第1〜第nの入力信号は夫々第1〜第nの抵抗を介して前記第1のセレクタに供給されることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1に記載のA/D変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
A/D変換器の入力レンジ、つまり当該A/D変換器に入力することが可能な電圧範囲は、そのA/D変換器の仕様によって決まっている。よって、当該入力レンジよりも電圧範囲が大なる入力信号を当該A/D変換によってA/D変換する場合には、入力信号の電圧値をA/D変換器の入力レンジ内に低下させる必要がある。
【0003】
そこで、入力信号の電圧値として取り得る電圧範囲をA/D変換器の入力レンジに圧縮させる為に、入力信号の電圧値を2つの抵抗によって分圧することによりその電圧値を低下させる抵抗分圧回路を当該A/D変換器の前段に設けたA/D変換装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−83365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抵抗分圧によって入力信号の電圧値を低下させると、入力信号のダイナミックレンジが圧縮されてしまうのでA/D変換の精度が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、A/D変換の精度低下を招くことなくA/D変換器の入力レンジよりも大なる電圧範囲の入力信号をディジタル値に変換することが可能なA/D変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るA/D変換装置は、基準電圧から入力信号の電圧値を減算して得た電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成する減算回路と、前記レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換するA/D変換器と、を有する。
【0008】
また、本発明に係る他のA/D変換装置は、第1〜第n(nは2以上の整数)の入力信号を順次択一的に選択し、前記選択した入力信号を出力ラインを介して出力する第1のセレクタと、前記セレクタから出力された前記入力信号の電圧値を基準電圧から減算して得た電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成する減算回路と、前記レベルシフト入力信号の電圧値をディジタル値に変換するA/D変換器と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、入力信号をA/D変換器にてA/D変換するにあたり、A/D変換器の前段に設けた減算回路により、基準電圧から入力信号を減算して得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号を生成し、当該レベルシフト入力信号をA/D変換器に供給する。これにより、入力信号として取り得る電圧値の電圧範囲がA/D変換器の入力レンジより大であっても、入力信号の電圧値を圧縮することなく、その電圧値をA/D変換器の入力レンジに収めることが可能となる。
【0010】
よって、本発明によれば、A/D変換の精度低下を招くことなくA/D変換器の入力レンジよりも大なる電圧範囲の入力信号をディジタル値に変換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るA/D変換装置100の構成を示す回路図である。
図2】入力信号VPI及びVPOの電圧値として取り得る電圧範囲と、電圧領域Ea、Eb、Ec及びEdとを示す図である。
図3】入力信号VPOの電圧値が電圧領域Eaの範囲内にある場合における、減算回路30でのレベルシフトの形態を表す図である。
図4】入力信号VPOの電圧値が電圧領域Ebの範囲内にある場合における、減算回路30でのレベルシフトの形態を表す図である。
図5】入力信号VPOの電圧値が電圧領域Ecの範囲内にある場合における、減算回路30でのレベルシフトの形態を表す図である。
図6】入力信号VPOの電圧値が電圧領域Edの範囲内にある場合における、減算回路30でのレベルシフトの形態を表す図である。
図7】本発明に係るA/D変換装置100の他の一例を示す回路図である。
図8図7に示すA/D変換装置100の内部動作を示すタイムチャートである。
図9】入力信号切替時に生じるリンギングの一例を示す入力信号VPOの波形図である。
図10図7に示すA/D変換装置100の変形例を示す回路図である。
図11図7に示すA/D変換装置100の他の変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明に係るA/D変換装置100の一例を示す回路図である。A/D変換装置100は半導体チップに形成されており、図1に示すように、オペアンプ10、領域判定部20、セレクタ21、22、加算器23、減算回路30及びA/D変換器40を含む。
【0014】
オペアンプ10は、出力端子及び反転入力端子同士が接続されている、いわゆるボルテージフォロワである。オペアンプ10は、非反転入力端子に供給された入力信号VPIを利得1にて増幅して得た入力信号VPOを領域判定部20及び減算回路30に供給する。尚、入力信号VPI及びVPO各々の電圧値として取り得る電圧範囲(以下、入力電圧範囲と称する)は、例えば図2に示すように0ボルト〜電圧値VBd(例えば20ボルト)である。
【0015】
領域判定部20は、入力信号VPOの電圧値が、当該入力電圧範囲を複数に分割した電圧領域各々のうちのいずれの電圧領域内にあるのかを判定する。各電圧領域は、夫々の幅がA/D変換器40の入力レンジ以下となるように、入力電圧範囲を複数に分割して得られたものである。尚、A/D変換精度を最大とする為には、複数の電圧領域各々の幅を、A/D変換器40の入力レンジと同一にすることが望ましい。
【0016】
例えば、図2に示すように、入力電圧範囲の最大の電圧値VBdが20ボルトであり、且つA/D変換器40の入力レンジにおける最大の電圧値VBaが5ボルトである場合には、当該電圧範囲を5ボルト毎に4分割した電圧領域Ea、Eb、Ec及びEdを設定する。よって、この際、領域判定部20は、入力信号VPOの電圧値が、これら電圧領域Ea、Eb、Ec及びEdのうちのいずれの電圧領域内にあるのかを判定する。尚、電圧領域Eaにおける最大の電圧値は、図2に示す電圧値VBa(例えば5ボルト)となり、電圧領域Ebにおける最大の電圧値は、図2に示す電圧値VBb(例えば10ボルト)となる。また、電圧領域Ecにおける最大の電圧値は、図2に示す電圧値VBc(例えば15ボルト)となり、電圧領域Edにおける最大の電圧値は、図2に示す電圧値VBd(例えば20ボルト)となる。
【0017】
領域判定部20は、当該判定された電圧領域を示す領域判定信号SAを、セレクタ21及び22に供給する。
【0018】
セレクタ21は、図2に示すように電圧領域Ea〜Edの各電圧領域内での最大の電圧値VBa、VBb、VBc、及びVBdのうちから、領域判定信号SAにて示される電圧領域に対応した電圧値VBを選択し、これを基準電圧VBSEとして減算回路30に供給する。
【0019】
すなわち、セレクタ21は、図2に示す電圧領域Eaを示す領域判定信号SAが供給された場合には電圧値VBa(5ボルト)を選択し、当該電圧値VBaを有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。また、セレクタ21は、図2に示す電圧領域Ebを示す領域判定信号SAが供給された場合には電圧値VBb(10ボルト)を選択し、当該電圧値VBbを有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。また、セレクタ21は、図2に示す電圧領域Ecを示す領域判定信号SAが供給された場合には電圧値VBc(15ボルト)を選択し、当該電圧値VBcを有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。また、セレクタ21は、図2に示す電圧領域Edを示す領域判定信号SAが供給された場合には電圧値VBd(20ボルト)を選択し、当該電圧値VBdを有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。
【0020】
セレクタ22は、電圧領域Ea〜Edの各電圧領域内での最小の電圧値を夫々Nビット(Nは2以上の整数)で表すデータDDa、DDb、DDc、及びDDdのうちから、領域判定信号SAにて示される電圧領域に対応したデータDDを選択し、これをシフトデータDSFTとして加算器23に供給する。尚、例えば1ボルトの電圧値を1ビットの精度で表す場合には、図2に示すように、シフトデータDDa、DDb、DDc及びDDdは、
DDa:[00000]
DDb:[00101]
DDc:[01010]
DDd:[01111]
のような5ビットのデータとなる。
【0021】
減算回路30は、図1に示すように、抵抗R1〜R4及びオペアンプOPを有する。オペアンプOPの反転入力端子には抵抗R1の一端が接続されており、抵抗R1の他端には上記した入力信号VPOが印加されている。更にオペアンプOPの反転入力端子には抵抗R2の一端が接続されており、この抵抗R2の他端にはオペアンプOPの出力端子が接続されている。オペアンプOPの非反転入力端子には抵抗R3の一端が接続されており、当該抵抗R3の他端には基準電圧VBSEが印加されている。更にオペアンプOPの非反転入力端子には、抵抗R4の一端が接続されており、当該抵抗R4の他端には接地電位GNDが印加されている。尚、抵抗R1〜R4各々の抵抗値は同一である。
【0022】
上記した構成により、減算回路30は、基準電圧VBSEから入力信号VPOを減算することにより、入力信号VPOの電圧値を低下させる方向にレベルシフトする。減算回路30は、当該減算によって得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号VADIをA/D変換器40に供給する。
【0023】
A/D変換器40は、レベルシフト入力信号VADIの電圧値をディジタル値に変換して得たNビットのディジタルデータDTを加算器23に供給する。
【0024】
加算器23は、ディジタルデータDTに上記したシフトデータDSFTを加算して得られたNビットのディジタルデータDATを出力する。すなわち、加算器23は、減算回路30によって電圧値を低下させる方向にレベルシフトされた分を相殺する為に、そのレベルシフト分に対応したディジタル値を示すシフトデータDSFTをディジタルデータDTに加算するのである。
【0025】
以下に、図1に示す構成を有するA/D変換装置100の動作について、図2図6を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、入力信号VPOの電圧値が、図2に示す電圧領域Ea(0〜5ボルト)の範囲内にある場合、セレクタ21は、電圧値VBa(5ボルト)を有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。更に、セレクタ22が、シフトデータDDa(00000)を加算器23に供給する。この際、減算回路30は、当該電圧値VBa(5ボルト)を有する基準電圧VBSEから入力信号VPOを減算して得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号VADIを、A/D変換器40に供給する。尚、入力信号VPOの電圧値は電圧領域Eaの範囲内であるので、電圧値VBa(5ボルト)から入力信号VPOを減算すると、図3に示すように、電圧領域Ea(0〜5ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOが、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIに変換される。ここでの電圧値のレベルシフトはゼロである。すなわち、入力信号VPOの電圧値が、A/D変換器40の入力レンジである電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にある場合には、減算回路30での電圧値のレベルシフトはゼロである。A/D変換器40は、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲のレベルシフト入力信号VADIをディジタル値に変換して得られたNビット、例えば5ビットのディジタルデータDTを加算器23に供給する。この際、加算器23は、ディジタルデータDTにシフトデータDDa(00000)を加算して得られた加算結果を、最終的なディジタルデータDATとして出力する。つまり、減算回路30における電圧値のレベルシフトがゼロであるので、そのレベルシフトした分をディジタルデータの段階で相殺する量もゼロとなる。そこで、この際、レベルシフト量ゼロを表すシフトデータDDa(00000)をディジタルデータDTに加算するのである。
【0027】
また、入力信号VPOの電圧値が、図2に示す電圧領域Eb(5〜10ボルト)の範囲内にある場合、セレクタ21は、電圧値VBb(10ボルト)を有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。更に、セレクタ22が、シフトデータDDb(00101)を加算器23に供給する。この際、減算回路30は、当該電圧値VBb(10ボルト)を有する基準電圧VBSEから入力信号VPOを減算して得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号VADIを、A/D変換器40に供給する。尚、入力信号VPOの電圧値は電圧領域Ebの範囲内であるので、電圧値VBb(10ボルト)から入力信号VPOを減算すると、図4に示すように、電圧領域Eb(5〜10ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOが、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIに変換される。つまり、この際、減算回路30は、電圧領域Eb(5〜10ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOを、図4に示すように、A/D変換器40の入力レンジである電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトするのである。ここでの電圧値のレベルシフト量は電圧値VBaである。A/D変換器40は、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIをディジタル値に変換して得られたNビット、例えば5ビットのディジタルデータDTを加算器23に供給する。この際、加算器23は、ディジタルデータDTにシフトデータDDb(00101)を加算して得られた加算結果を、最終的なディジタルデータDATとして出力する。つまり、減算回路30における電圧値のレベルシフト量が電圧値VBa(5ボルト)であるので、そのレベルシフト分をディジタルデータの段階で相殺する為に、電圧値VBa(5ボルト)をディジタル値で表すシフトデータDDb(00101)を、ディジタルデータDTに加算するのである。
【0028】
また、入力信号VPOの電圧値が、図2に示す電圧領域Ec(10〜15ボルト)の範囲内にある場合、セレクタ21は、電圧値VBc(15ボルト)を有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。更に、セレクタ22が、シフトデータDDc(01010)を加算器23に供給する。この際、減算回路30は、当該電圧値VBc(15ボルト)を有する基準電圧VBSEから入力信号VPOを減算して得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号VADIを、A/D変換器40に供給する。尚、入力信号VPOの電圧値は電圧領域Ecの範囲内であるので、電圧値VBc(15ボルト)から入力信号VPOを減算すると、図5に示すように、電圧領域Ec(10〜15ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOが、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIに変換される。つまり、この際、減算回路30は、電圧領域Ec(10〜15ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOを、図5に示すように、A/D変換器40の入力レンジである電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトするのである。ここでの電圧値のレベルシフト量は電圧値VBbである。A/D変換器40は、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIをディジタル値に変換して得られたNビット、例えば5ビットのディジタルデータDTを加算器23に供給する。この際、加算器23は、ディジタルデータDTにシフトデータDDc(01010)を加算して得られた加算結果を、最終的なディジタルデータDATとして出力する。つまり、減算回路30における電圧値のレベルシフト量が電圧値VBb(10ボルト)であるので、そのレベルシフトした分をディジタルデータの段階で相殺する為に、電圧値VBb(5ボルト)をディジタル値で表すシフトデータDDc(01010)を、ディジタルデータDTに加算するのである。
【0029】
また、入力信号VPOの電圧値が、図2に示す電圧領域Ed(15〜20ボルト)の範囲内にある場合、セレクタ21は、電圧値VBd(20ボルト)を有する基準電圧VBSEを減算回路30に供給する。更に、セレクタ22が、シフトデータDDd(01111)を加算器23に供給する。この際、減算回路30は、当該電圧値VBd(20ボルト)を有する基準電圧VBSEから入力信号VPOを減算して得られた電圧値を有するレベルシフト入力信号VADIを、A/D変換器40に供給する。尚、入力信号VPOの電圧値は電圧領域Edの範囲内であるので、電圧値VBd(20ボルト)から入力信号VPOを減算すると、図6に示すように、電圧領域Ed(15〜20ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOが、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIに変換される。つまり、この際、減算回路30は、電圧領域Ed(15〜20ボルト)の電圧値を有する入力信号VPOを、図6に示すように、A/D変換器40の入力レンジである電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトするのである。ここでの電圧値のレベルシフト量は電圧値VBcである。A/D変換器40は、電圧値VBa(5ボルト)〜0ボルトの電圧範囲にレベルシフトされたレベルシフト入力信号VADIをディジタル値に変換して得られたNビット、例えば5ビットのディジタルデータDTを加算器23に供給する。この際、加算器23は、ディジタルデータDTにシフトデータDDd(01111)を加算して得られた加算結果を、最終的なディジタルデータDATとして出力する。つまり、減算回路30における電圧値のレベルシフト量が電圧値VBc(15ボルト)であるので、そのレベルシフトした分をディジタルデータの段階で相殺する為に、電圧値VBc(15ボルト)をディジタル値で表すシフトデータDDd(01111)を、ディジタルデータDTに加算するのである。
【0030】
上記した動作により、A/D変換装置100は、入力信号VPI(15〜20ボルト)の電圧値をNビットで表すディジタルデータDATを生成する。
【0031】
以上のように、A/D変換装置100では、入力信号(VPI、VPO)をA/D変換器40にてA/D変換するにあたり、A/D変換器40の前段に設けた減算回路30が、基準電圧VBSEから入力信号を減算することにより、入力信号の電圧値をレベルシフトしたレベルシフト入力信号VADIを生成し、これをA/D変換器40に供給するようにしている。よって、減算回路30によれば、例え入力電圧範囲がA/D変換器40の入力レンジより大であっても、入力信号の電圧値を圧縮することなく、その電圧値をA/D変換器40の入力レンジに収めることが可能となる。
【0032】
ここで、基準電圧VBSEを以下のような電圧値に設定する。つまり、図3図6に示すように、夫々の幅がA/D変換器40の入力レンジ以下となるように入力電圧範囲を複数に分割した電圧領域各々のうちで、入力信号VPOの電圧値を含む電圧領域における最大の電圧値に設定するのである。これにより、入力信号の電圧値が圧縮されることなく、A/D変換器40の入力レンジに収まるレベルシフトが為される。
【0033】
よって、A/D変換装置100によれば、A/D変換器40の入力レンジよりも大なる電圧範囲の入力信号をA/D変換するにあたり、当該入力信号の電圧値を抵抗分圧によって圧縮してA/D変換器に供給するようにした従来の構成に比して、A/D変換精度の低下を抑えることが可能となる。
【0034】
尚、図1にす構成では、1系統分の入力信号VPIをディジタル変換の対象として受け付けているが、A/D変換装置100としては、2系統以上の複数の入力信号を受け付け、これら複数の入力信号を1つずつ順次選択してA/D変換器40に供給する構成を採用しても良い。
【0035】
図7は、かかる点に鑑みて為されたA/D変換装置100の他の一例を示す回路図である。尚、図7に示す構成では、1系統分のオペアンプ10に代えて3系統分のオペアンプ11〜13を採用すると共に、選択制御部50及びセレクタ60を新たに追加した点を除く他の構成及び動作は、図1に示すものと同一である。この際、図7に示す構成によるA/D変換装置100は、3系統分の入力信号VPI1、VPI2及びVPI3をディジタル変換対象として受け付け、これら入力信号VPI1、VPI2及びVPI3のうちの1つを選択的に順次ディジタル値に変換する。
【0036】
図7において、オペアンプ11〜13の各々は、夫々自身の出力端子が自身の反転入力端子に接続されている、いわゆるボルテージフォロワである。
【0037】
オペアンプ11は、非反転入力端子に供給された第1の入力信号VPI1を利得1にて増幅して得た入力信号VPO1をセレクタ60に供給する。
【0038】
オペアンプ12は、非反転入力端子に供給された第2の入力信号VPI2を利得1にて増幅して得た入力信号VPO2をセレクタ60に供給する。
【0039】
オペアンプ13は、非反転入力端子に供給された第3の入力信号VPI3を利得1にて増幅して得た入力信号VPO3をセレクタ60に供給する。
【0040】
選択制御部50は、図8に示すように、所定期間の間だけ[選択]を示す論理レベル1となり、他の期間は[非選択]を示す論理レベル0となる選択信号S1をセレクタ60に供給する。また、選択制御部50は、選択信号S1が論理レベル0の状態にある間において所定期間の間だけ[選択]を示す論理レベル1となり、他の期間は[非選択]を示す論理レベル0となる選択信号S2をセレクタ60に供給する。更に、選択制御部50は、選択信号S1及びS2が共に論理レベル0の状態にある間において所定期間の間だけ[選択]を示す論理レベル1となり、他の期間は[非選択]を示す論理レベル0となる選択信号S3をセレクタ60に供給する。尚、上記した所定期間とは、後述するA/D変換周期TADと同一の期間である。
【0041】
セレクタ60は、インバータV1〜V3、及びCMOS(complementary metal-oxide semiconductor)型のトランスミッションゲート(以下、TGゲートと称する)T1〜T3を有する。
【0042】
インバータV1は、選択信号S1の論理レベルを反転させた信号をトランスミッションゲートT1のpチャネル側のゲート端子に供給する。TGゲートT1のnチャネル側のゲート端子には選択信号S1が供給されている。TGゲートT1の信号入力端子にはオペアンプ11の出力端子が接続されており、TGゲートT1の信号出力端子は出力ラインLLに接続されている。TGゲートT1は、選択信号S1が論理レベル1の状態にある場合にだけオン状態となって入力信号VPO1を出力ラインLLに印加する。
【0043】
インバータV2は、選択信号S2の論理レベルを反転させた信号をTGゲートT2のpチャネル側のゲート端子に供給する。TGゲートT2のnチャネル側のゲート端子には選択信号S2が供給されている。TGゲートT2の信号入力端子にはオペアンプ12の出力端子が接続されており、TGゲートT2の信号出力端子は出力ラインLLに接続されている。TGゲートT2は、選択信号S2が論理レベル1の状態にある場合にだけオン状態となって入力信号VPO2を出力ラインLLに印加する。
【0044】
インバータV3は、選択信号S3の論理レベルを反転させた信号をTGゲートT3のpチャネル側のゲート端子に供給する。TGゲートT3のnチャネル側のゲート端子には選択信号S3が供給されている。TGゲートT3の信号入力端子にはオペアンプ13の出力端子が接続されており、TGゲートT3の信号出力端子は出力ラインLLに接続されている。TGゲートT3は、選択信号S3が論理レベル1の状態にある場合にだけオン状態となって入力信号VPO3を出力ラインLLに印加する。
【0045】
上記した構成により、セレクタ60は、選択信号S1〜S3に基づき3系統分の入力信号VPO1〜VPO3のうちから1の入力信号を選択し、この選択した入力信号を出力ラインLLに印加する。この際、出力ラインLLに印加された電圧が入力信号VPOとして領域判定部20及び減算回路30に供給される。
【0046】
すなわち、セレクタ60は、図8に示すように、論理レベル1の選択信号S1、及び論理レベル0の選択信号S2及びS3に応じて、入力信号VPO1を選択し、この入力信号VPO1にて表される電圧値V1を有する入力信号VPOを減算回路30に供給する。次に、セレクタ60は、論理レベル0の選択信号S1及びS3、及び論理レベル1の選択信号S2に応じて入力信号VPO2を選択し、この入力信号VPO2にて表される電圧値V2を有する入力信号VPOを減算回路30に供給する。次に、セレクタ60は、論理レベル0の選択信号S1及びS2、及び論理レベル1の選択信号S3に応じて、入力信号VPO3を選択し、この入力信号VPO3にて表される電圧値V3を有する入力信号VPOを減算回路30に供給する。
【0047】
これにより、減算回路30は、図8に示すように時間経過につれて電圧値V1、V2、V3へと変化する入力信号VPOの各電圧値をレベルシフトして、電圧値VS1、VS2、VS3へと変化するレベルシフト入力信号VADIを生成し、A/D変換器40に供給する。A/D変換器40は、図8において一点鎖線にて示すタイミングの各々でA/D変換処理を開始し、レベルシフト入力信号VADIの電圧値をディジタル値に変換する。つまり、A/D変換器40は、図8に示すA/D変換周期TAD毎に、レベルシフト入力信号VADIに対してA/D変換を行うのである。これにより、A/D変換器40は、図8に示す電圧値VS1、VS2、及びVS3を順次ディジタル値に変換して得られたディジタルデータDTを出力する。
【0048】
したがって、図7に示す構成によれば、単一のA/D変換器40を用いて、2系統以上の複数の入力信号をA/D変換対象として受け付けることが可能となる。よって、入力信号毎にA/D変換器を設けた場合に比して、回路規模を縮小化することが可能となる。
【0049】
ここで、上記したセレクタ60による入力信号の切替時、例えば図9に示す時点t1では、入力信号VPOに電圧の振動、いわゆるリンギングが生じる。この際、図9に示すように、セレクタ60における入力信号の切替の時点t1からリンギングRGが収束するまでのリンギング収束期間TRGが、当該時点t1から次のA/D変換処理が開始される時点t2までの安定待機期間TSWよりも大となる場合、つまりリンギングRGが収束していない場合には、A/D変換結果に誤差が生じる。
【0050】
図10は、このようなリンギングRGに伴うA/D変換誤差を抑えるために為された、図7に示すA/D変換装置100の変形例を示す回路図である。
【0051】
尚、図10に示す構成では、TGゲートT1〜T3に代えてTGゲートTU1〜TU3を採用した点を除く他の構成は図7に示すものと同一である。
【0052】
図10において、TGゲートTU1〜TU3各々の動作は、上記したTGゲートT1〜T3と同一である。ただし、TGゲートTU1〜TU3各々のゲート長、つまり各TGゲートを構成するpチャネル側のMOSトランジスタのゲート長及びnチャネル側のMOSトランジスタ各々のゲート長は、TGゲートT1〜T3各々のゲート長よりも長く設定されている。すなわち、TGゲートのゲート長は、これを長くするほどTGゲート自体のオン抵抗が増加し、リンギング収束期間TRGが短くなる。
【0053】
そこで、図10に示すTGゲートTU1〜TU3では、そのゲート長を、安定待機期間TSWよりも、リンギング収束期間TRGが短くなるような長さに設定しているのである。
【0054】
よって、図10に示す構成によれば、セレクタ60における入力信号の切替時に生じるリンキングの影響に起因するA/D変換誤差を抑制することが可能となる。
【0055】
尚、リンキングの影響に起因するA/D変換誤差を抑制する構成としては、図10に示す構成に限定されない。
【0056】
図11は、かかる点に鑑みて為された、図7に示すA/D変換装置100に対する他の変形例を示す回路図である。尚、図11に示す構成では、セレクタ60とオペアンプ11〜13の各々との間に夫々抵抗R5a〜R5cを設けると共に、減算回路30に代えて減算回路31を採用した点を除く他の構成は図7に示すものと同一である。
【0057】
すなわち、図11に示す構成では、オペアンプ11から出力された入力信号VPO1は、抵抗R5aを介してセレクタ60のTGゲートT1に供給される。オペアンプ12から出力された入力信号VPO2は、抵抗R5bを介してセレクタ60のTGゲートT2に供給される。オペアンプ13から出力された入力信号VPO3は、抵抗R5cを介してセレクタ60のTGゲートT3に供給される。
【0058】
また、図11に示される減算回路31において、図7に示される抵抗R1に代えて抵抗R6を採用した点を除く他の構成は、図7に示される減算回路30と同一である。尚、抵抗R5a〜R5c各々の抵抗値は同一である。抵抗R6の抵抗値は、抵抗R5aの抵抗値から図7に示される抵抗R1の抵抗値を減算した抵抗値に設定されている。つまり、図11に示す構成では、オペアンプ11〜13とセレクタ60との間に抵抗R5a〜R5cを挿入したものの、オペアンプ11〜13各々の出力端子からオペアンプOPの反転入力端子までの電流路全体の抵抗値に関しては、図7に示される構成と同一である。
【0059】
図11に示される構成によると、オペアンプ11〜13各々の出力端子とセレクタ60との間の電流路に夫々設けた抵抗R5a〜5cにより、図7に示される構成に比して、各電流路の抵抗値が高くなるのでリンギングの発生を抑制することが可能となる。更に、図11に示す構成によれば、抵抗R5a〜5cが付加されているものの、TGゲートT1〜T3よりもゲート長が長いTGゲートTU1〜TU3を採用した、図10に示す構成に比べてレイアウト面積を小さくすることができる。
【0060】
尚、図7図10又は図11では、3系統の入力信号(VPI1〜VPI3)を時分割にてA/D変換する構成を一例にとってその動作を説明したが、A/D変換対象として受け付ける入力信号の数は3系統に限らない。要するに、第1〜第n(nは2以上の整数)の入力信号を、セレクタによって順次択一的に選択してA/D変換器に供給するような構成であれば良いのである。
【0061】
また、図10に示す一例では、セレクタ60による入力信号の切り替え時におけるリンギング収束期間TRGを短縮させる為に、TGゲートのゲート長を増やしてTGゲートのオン抵抗を増加させている。しかしながら、オン抵抗を増加させることができるのであれば、TGゲート各々のゲート幅を小さくする、或いは各TGゲートとして、サリサイド(SALICIDE:Self-Aligned siLICIDE)技術を用いずに製造した、いわゆる非サリサイド構造を有するTGゲートを採用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
10〜13 オペアンプ
20 領域判定部
30 減算回路
40 A/D変換器
60 セレクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11