特開2016-161450(P2016-161450A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016161450-冷陰極電離真空計 図000003
  • 特開2016161450-冷陰極電離真空計 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-161450(P2016-161450A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】冷陰極電離真空計
(51)【国際特許分類】
   G01L 21/34 20060101AFI20160808BHJP
【FI】
   G01L21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-41536(P2015-41536)
(22)【出願日】2015年3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中島 豊昭
(72)【発明者】
【氏名】宮下 剛
(72)【発明者】
【氏名】福原 万沙洋
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055BB08
2F055CC48
2F055FF43
2F055GG12
(57)【要約】
【課題】測定対象物に装着されてその内部の圧力を検出する冷陰極電離真空計IGを簡単な手作業でハウジング1に対して磁石ユニット2を着脱できるように構成する。
【解決手段】冷陰極電離真空計IGは、内部に放電空間15が画成され、この放電空間にアノード電極16が配置される円筒状のハウジング1と、放電空間に磁界を形成する磁石21と環状のヨーク22とを有してヨーク22を介してハウジング1に外挿される磁石ユニット2とを備える。ハウジングの外周面に雄ねじ部19aを形成し、これに螺合する雌ねじ部をヨークの内周面に形成し、磁石ユニットをハウジングから着脱自在に構成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に装着されてその内部の圧力を検出する冷陰極電離真空計であって、
内部に放電空間が画成され、この放電空間にアノード電極が配置される円筒状のハウジングと、放電空間に磁界を形成する磁石と環状のヨークとを有してこのヨークを介してハウジングに外挿される磁石ユニットとを備えるものにおいて、
ハウジングの外周面とヨークの内周面とのいずれか一方に、互いに螺合する雄ねじ部を形成すると共にハウジングの外周面とヨークの内周面とのいずれか他方に雌ねじ部を形成し、磁石ユニットをハウジングから着脱自在に構成したことを特徴とする冷陰極電離真空計。
【請求項2】
前記ハウジングの外周面に径方向外方に延出するストッパ部を設け、ハウジングの長手方向一側から前記磁石ユニットを挿入し、雄ねじ部と雌ねじ部とを螺合させながら他側に向けて磁石ユニットを送り、ストッパ部に当接するとハウジングに対して磁石ユニットが位置決めされることを特徴とする請求項1記載の冷陰極電離真空計。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器等の測定対象物に装着されてその内部の圧力を検出するための冷陰極電離真空計に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴現象を利用した画像取得装置やリニアモータカーでは、強磁場を発生させるために超伝導磁石装置が使用され、その中の超伝導コイルは、通常、真空断熱用の真空容器内に格納され、液体窒素や液体ヘリウムなどで臨界温度以下に保持されるように冷却されている。真空断熱できなくなった場合、磁場を発生させることができないばかりか、超伝導コイル自体が破損する可能性がある(例えば、特許文献1参照)。このため、真空計を用いて真空容器内の圧力(1×10−3Pa程度の圧力)を測定し、確実に真空断熱されている否かを監視しておくことが必要になる。
【0003】
上記用途に使用し得る真空計として電離真空計が一般に知られている。電離真空計としては、熱電子を利用した熱陰極電離真空計や、磁場と電場とによる放電を利用した冷陰極電離真空計が知られているものの(例えば、特許文献2,3参照)、これらの電離真空計を例えばリニアモータカーなどの強磁場が作用するだけでなく、振動も発生し得る環境で利用する場合、次のような問題がある。即ち、熱陰極電離真空計では、その構成要素たるフィラメント、グリッド並びにイオンコレクタが線径の細い金属線で構成されているため、振動で各構成要素が破損する虞がある。
【0004】
一方、冷陰極電離真空計は、内部に放電空間が画成され、この放電空間にアノード電極が配置される円筒状のハウジングと、放電空間に磁界を形成する磁石とヨークとを有してヨークを介してハウジングの外周に固定される磁石ユニットとで構成される。この場合、冷陰極電離真空計は、細い金属線を使用しないことで、熱陰極電離真空計と比較して強い耐震性を持つ構造と言える。然し、強磁場中に置かれたときに、磁石が磁化されたり、または、磁石が反発したりまたは引き寄せられたりして放電空間に対する磁石の位置や姿勢が変化したりする場合があり、正確に圧力測定できない虞がある。
【0005】
そこで、上記問題を解消するために、リニアモータカーの走行前や走行後のように超伝導コイルを励磁せず、強磁場が作用しない状態のときに冷陰極電離真空計にて圧力を測定し、リニアモータカーの走行中のように強磁場が作用するときには、ハウジングはそのままにして磁石ユニットのみを取り外す、つまり、ハウジングに対して磁石ユニットを着脱自在とすることが提案され、このとき、着脱用の工具を用いることなく、簡単な手作業でハウジングに対して磁石ユニットを着脱できるように構成することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−310811号公報
【特許文献2】特表2010−106792号公報
【特許文献3】特開平9−5198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上に基づいてなされたものであり、簡単な手作業でハウジングに対して磁石ユニットを着脱できるように構成した冷陰極電離真空計を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、測定対象物に装着されてその内部の圧力を検出する本発明の冷陰極電離真空計は、内部に放電空間が画成され、この放電空間にアノード電極が配置される円筒状のハウジングと、放電空間に磁界を形成する磁石と環状のヨークとを有してこのヨークを介してハウジングに外挿される磁石ユニットとを備え、ハウジングの外周面とヨークの内周面とのいずれか一方に、互いに螺合する雄ねじ部を形成すると共にハウジングの外周面とヨークの内周面とのいずれか他方に雌ねじ部を形成し、磁石ユニットをハウジングから着脱自在に構成したことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ハウジングの一端を測定対象物に常時取り付けておき、強磁場が作用しない状態のとき、手作業でハウジングの他端側から磁石ユニットを挿入し、ハウジングに対して磁石ユニットを相対回転させて雄ねじと雌ねじとを螺合させながら一端側への送り、磁石ユニットをハウジングの外周面の所定位置に螺着する。そして、公知の方法に従って測定対象物内の圧力を測定する。この場合、磁石ユニットをハウジングの外周面に螺着しているため、磁石ユニットやハウジングのねじ部に多少のごみが付着しているような場合でも、磁石ユニットをハウジングに取り付ける毎のクリーニングなしに、ハウジングの外周面に対して常時同一姿勢で磁石ユニットを取り付けることができ、仮に振動が発生しても、磁石ユニットが位置ずれを起こしたりすることはない。圧力測定後、上記の逆の手順で手作業でハウジングから磁石ユニットが取り外される。このように本発明では、作業スペースが狭いときでも、着脱用の工具を特段用いることなく、簡単な手作業でハウジングに対して磁石ユニットを着脱することができる。
【0010】
本発明においては、前記ハウジングの外周面に径方向外方に延出するストッパ部を設け、ハウジングの長手方向一側から前記磁石ユニットを挿入してストッパ部に当接すると、ハウジングに対して磁石ユニットが位置決めされることが好ましい。これによれば、ハウジングに対する磁石ユニットの着脱を繰り返すときでも、放電空間に対する磁石の位置を常時一定にでき、正確な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態の冷陰極電離真空計の構成を説明する断面図。
図2】ハウジングから磁石ユニットを取り外した状態で示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の冷陰極電離真空計の実施形態を説明する。以下においては、図1に示す姿勢を基準とし、「上」、「下」といった方向を示す用語を用いるものとする。
【0013】
図1及び図2を参照して、IGは、本実施形態の冷陰極電離真空計である。冷陰極電離真空計IGは、ハウジング1と磁石ユニット2とで構成される。ハウジング1は、金属製の円筒状部材11で構成され、その下端には径方向に延出するフランジ12が設けられ、このフランジ12を介して図外の測定対象物に取り付けられる。円筒状部材11内には、有底筒状のブロック体13,14が上下方向に所定間隔を存してかつその底板部13a,14aが対峙するように嵌挿され、円筒状部材11の内周面と両底板部13a,14aによって内部に放電空間15が画成されるようにしている。この場合、放電空間15は、測定対象物と同一の雰囲気となる。ブロック体13,14は、後述の磁石により発生する磁界で磁化される鉄等の高透磁率磁性材料で構成されている。
【0014】
両底板部13a,14aには円筒状部材11の孔軸上に位置させて透孔13b,14bが夫々開設されている。そして、両透孔13b,14b及び放電空間15を上下方向に貫通させて棒状のアノード電極16が設けられている。円筒状部材11の上端開口はキャップ体17で閉塞され、キャップ体17には上下方向に貫通させて高電圧端子18が設けられ、円筒状部材11の内に突出した高電圧端子18の下端にアノード電極16が接続されている。
【0015】
磁石ユニット2は、リング状の磁石21と環状のヨーク22とを備える。ヨーク22は、鉄等の高透磁率磁性材料製の円筒状部材で構成され、比較的外径の小さい上側小径部22aと、比較的外径の大きい大径部22bと、上側小径部22aと同一外径の下側小径部22cとが上下方向に連続した段付きの外形を有する。そして、大径部22b内に形成した格納空間に磁石21が格納されている。また、下側小径部22cの内周面には雌ねじ部23が所定のピッチで形成されている。
【0016】
他方、円筒状部材11の外周面の所定位置には、雌ねじ部23に螺合する雄ねじ部19aが形成されると共に雄ねじ部19aの直下に位置させて径方向外側に張り出す張出部19bが形成されている。そして、張出部19bの上面は、下側小径部22cの下面が当接することで磁石ユニット2の更なる下方への送りを制限するストッパ部として役割を果たし、ハウジング1に対して磁石ユニット2が位置決めされるようになっている。このとき、磁石21が放電空間15に対して磁界を形成し、図外の電源を介してアノード電極16とハウジング1との間に電圧を印加すると、ハウジング1の径方向に電界が発生し、電子が径方向に加速される。放電空間15には、電界とほぼ直交する方向に磁石21で発生した磁界が形成される。この磁界を受けて放電空間15内で螺旋運動に似た運動を行う電子が気体分子を電離し、放電空間15にプラズマを発生させる。そして、このプラズマで流れる電流に基づいて圧力が測定される。なお、冷陰極電離真空計IGを用いて圧力を測定する方法は公知のものが利用できるため、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0017】
上記冷陰極電離真空計IGを使用するのに際しては、ハウジング1をそのフランジ12を介して図外の測定対象物に常時取り付けておき、強磁場が作用しない状態のとき、手作業でハウジング1の上端側から磁石ユニット2を挿入し、ハウジング1に対して磁石ユニット2を相対回転させて雄ねじ部19aと雌ねじ部23とを螺合させながら下側へ送り、下側小径部22cの下面をストッパ部19bに当接させる。このとき、ハウジング1に対して磁石ユニット2が位置決めされる。そして、公知の方法に従って測定対象物内の圧力を測定する。この場合、磁石ユニット2をハウジング1の外周面に螺着しているため、ハウジング1の外周面に対して常時同一姿勢でかつ同一の位置に磁石ユニット2が取り付けられる。このため、雄ねじ部19aや雌ねじ部23に多少のごみが付着しているような場合でも、磁石ユニット2をハウジング1に取り付ける毎のクリーニングなしに、着脱を繰り返すときの放電空間15に対する磁石21の位置を常時一定にでき(言い換えると、汚れにも強い構造であり)、正確な測定が可能になる。また、仮に振動が発生しても、磁石ユニット2が位置ずれを起こしたりすることはない。そして、圧力測定後、上記の逆の手順で手作業でハウジング1から磁石ユニット2が取り外される。このように上記実施形態では、作業スペースが狭いときでも、着脱用の工具を特段用いることなく、簡単な手作業でハウジング1に対して磁石ユニット2を着脱することができる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではない。上記実施形態では、下側小径部22cの内周面に雌ねじ部23を、円筒状部材11の外周面に雄ねじ部19aを形成したが、これらを逆にすることができ、また、張出部19bの上面でストッパ部を構成するものを例に説明したが、磁石ユニット2の更なる下動を制限し、このとき、ハウジング1に対して磁石ユニット2が位置決めされるものであればその形態は問わない。
【0019】
また、上記実施形態では、ハウジング1の外周面に磁石ユニット2を着脱自在に結合するものとして、雄ねじ部19aと雌ねじ部23とを螺合するものを説明したが、強磁場が作用するときには、ハウジング1はそのままにして磁石ユニット2のみを簡単な手作業で取り外すことができ、圧力測定時には簡単な手作業でハウジング1の外周面に対して常時同一姿勢でかつ同一の位置に磁石ユニット2を取り付けることができるという本発明の思想を実現するために種々の変形が可能である。
【0020】
即ち、ハウジング1とヨーク22とのいずれか一方に、互いに着脱自在に結合する第1結合部を形成すると共にハウジング1の外面とヨーク22の内面とのいずれか他方に第2結合部が形成すればよい。第1結合部及び第2結合部の例としては、特に図示して説明しないが、下側小径部22cの内周面の所定位置に凹設した複数個の溝と、円筒状部材11の外周面の所定位置に形成した孔に付勢手段を介して突設したピン部材とが挙げられる。そして、手作業でハウジング1の上端側から磁石ユニット2を挿入し、下側小径部22cの下面をストッパ部19bに当接させる。このとき、ヨーク22の内周面によりピン部材が孔内に没入した状態となる。そして、磁石ユニット2を回転させ、ピン部材が溝に一致するように位相を一致させると、ピン部材が突出して溝に嵌合する。これにより、ハウジング1に対して磁石ユニット2が取り付けられる。ハウジング1から磁石ユニット2を取り外すときには、磁石ユニット2の回転に伴ってピン部材が溝から抜けて孔内に再度没入し、この状態でハウジング1の上端側に磁石ユニット2を引き抜く。
【符号の説明】
【0021】
IG…冷陰極電離真空計、1…ハウジング、15…放電空間、16…アノード電極、19a…雄ねじ部、19b…張出部(ストッパ部)、2…磁石ユニット、21…磁石、22…ヨーク、23…雌ねじ部。
図1
図2