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特開2016-162535フレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-162535(P2016-162535A)
(43)【公開日】2016年9月5日
(54)【発明の名称】フレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20160808BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160808BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20160808BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20160808BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   H05B33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-38415(P2015-38415)
(22)【出願日】2015年2月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100097984
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】本村 玄一
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宜樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】都築 俊満
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC23
3K107CC25
3K107CC43
3K107CC45
3K107DD16
3K107DD17
3K107DD19
3K107EE03
3K107EE45
3K107FF05
3K107FF15
3K107GG28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フレキシブルな有機EL表示装置におけるフィルム基板を支持基材から剥離する際に、デバイスが大きなダメージを受けるのを抑制し得るフレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブルな有機EL表示装置を作製する最初の段階で、フィルム基板1を支持基材21上に形成しておきS1、この後、フィルム基板1上に有機EL発光素子10とTFT素子30からなるデバイスを一体的に形成しS2、S3、次に、このデバイスを設けたフィルム基板1を支持基材21から剥離しS4、この後、上記デバイス上に封止フィルム23を形成するS5。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルなフィルム基板上に、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成し、その上に物理的な保護膜として機能する封止フィルムを形成するフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法において、
前記有機EL表示装置を作製する最初の段階で、前記フィルム基板を支持基材上に固定しておき、この後、前記フィルム基板上に前記有機EL発光素子と前記TFT素子を一体的に形成し、次に前記フィルム基板を前記支持基材から剥離し、この後、前記有機EL発光素子と前記TFT素子の上に前記封止フィルムを形成したことを特徴とするフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム基板は、前記支持基材上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成することを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法。
【請求項3】
フレキシブルなフィルム基板上に、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成し、その上に物理的な保護膜として機能する封止フィルムを形成してなるフレキシブルな有機EL表示装置において、
前記フィルム基板は支持基材上に形成されてなり、
前記フィルム基板は、前記支持基材上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成されてなることを特徴とするフレキシブルな有機EL表示装置。
【請求項4】
前記フィルム基板の上面には、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成する場合に下地として機能する下地層が形成され、該下地層が前記フィルム基板よりも熱膨張係数の高い材料により形成されていることを特徴とする請求項3に記載のフレキシブルな有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法に関し、詳しくは、フレキシブルなフィルム基板上に、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)とを互いに近接して形成してなるフレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electroluminescence)表示装置は、情報機器等に急速にその用途を拡大し
ている。また、近年、プラスチックフィルムを基板として使用するフレキシブルディスプレイが注目されている。そのようなフレキシブルディスプレイは、丸めて収納できて持ち運びにも便利であるため、超薄型・軽量のモバイル用としてばかりではなく、大型ディスプレイ用としての利用も期待されている。
【0003】
フレキシブルディスプレイでは、基板としてガラスに替えてプラスチックフィルムが用いられる(下記特許文献1を参照)。
しかし、薄く柔軟なフィルム上に高精細なディスプレイデバイスを作製するのは難しいため、通常はプラスチックフィルムをガラス基板等の支持基材に固定した状態でデバイスを作製し、このデバイスができあがった後にこの支持基材を剥離するという方法でフレキシブルディスプレイの製造を行うようにしている。
【0004】
上記プラスチックフィルムを支持基材に固定する手法としては、プラスチックフィルムを接着剤により支持基材に貼り合せる方法と、プラスチックフィルムの材料を支持基材上に塗布して、このプラスチックフィルムを形成する手法が挙げられる。
このように支持基材に固定されたプラスチックフィルム上にデバイスを作製する場合、作製中にプラスチックフィルムが剥がれることがあってはならない。その一方、製造過程において、デバイスにダメージを与えることなく、支持基材からプラスチックフィルムを剥離することが求められる。そのため、フィルムの剥離強度を適切に調整し得る剥離方法を確立する必要がある。
【0005】
また、フレキシブルな有機EL表示装置は、空気中の水分等にさらされることで非発光の点(ダークスポット)が発生するという課題を抱えているため、作製したデバイス上にバリア性能の高い封止フィルムを貼り合せて保護する必要がある。最終的にフレキシブルな有機EL表示装置は、デバイス面を封止フィルムで保護された上で、支持基材から剥がされた状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−238863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のフレキシブルな有機EL表示装置では、デバイス作製後にその上面に封止フィルムを貼り合せて、デバイス上部を物理的に保護した後、プラスチックフィルムを支持基材から剥離させていた。
しかしながら、この剥離工程は、剥離強度の調整が難しく、デバイスに大きなダメージを与える虞がある。例えば、プラスチックフィルムを支持基材から剥離させている作業中に、プラスチックフィルムと、その上に形成されているデバイスとがデバイスの最下層の
下地層において剥離してしまう虞がある。
【0008】
このように、プラスチックフィルムを支持基材から剥離させるのを難しくしている大きな要因として、封止フィルムの存在が挙げられる。デバイス上に封止フィルムが貼り合せられていることで、封止フィルム側からデバイス面へ力が大きく作用し、この貼合せ部分にダメージが生じやすくなる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、フレキシブルな有機EL表示装置におけるフィルム基板の支持基材からの剥離を、大きなダメージを受けることなく行うことが可能なフレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法は、
フレキシブルなフィルム基板上に、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成し、その上に物理的な保護膜として機能する封止フィルムを形成するフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法において、
前記有機EL表示装置を作製する最初の段階で、前記フィルム基板を支持基材上に固定しておき、この後、前記フィルム基板上に前記有機EL発光素子と前記TFT素子を一体的に形成し、次に前記フィルム基板を前記支持基材から剥離し、この後、前記有機EL発光素子と前記TFT素子の上に前記封止フィルムを形成したことを特徴とするものである。
この場合において、前記フィルム基板は、前記支持基材上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るフレキシブルな有機EL表示装置は、
フレキシブルなフィルム基板上に、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成し、その上に物理的な保護膜として機能する封止フィルムを形成してなるフレキシブルな有機EL表示装置において、
前記フィルム基板は支持基材上に形成されてなり、
前記フィルム基板は、前記支持基材上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成されてなることを特徴とするものである。
【0012】
この場合において、前記フィルム基板の上面には、有機EL発光素子と、この有機EL発光素子を駆動するTFT素子とを一体的に形成する場合に下地として機能する下地層が形成され、該下地層が前記フィルム基板よりも熱膨張係数の高い材料により形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法において、有機EL発光素子と前記TFT素子からなるデバイスをフィルム基板上に形成した後、まず、このフィルム基板を支持基材から剥離し、しかる後、デバイス上に封止フィルムを形成するようにしている。これにより、フィルム基板を支持基材から剥離するときには、封止フィルムによるデバイスへの応力が生じないようにすることができるので、デバイスにダメージを与えることなく支持基材から剥離することができる。
【0014】
また、本発明のフレキシブルな有機EL表示装置においては、フィルム基板は、前記支持基材上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成するようにしているので、封止フィルムが形成されていない状態で支持基材から剥離しても、フレキシブル性を失うことなく、ある程度のハンドリング機能を保持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法の手順を示すものである。
図2】本実施形態に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法を示す断面図(フィルム基板部の構造)である。
図3】本実施形態に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法を示す断面図(TFT素子の画素回路の構造)である。
図4】本実施形態に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法を示す断面図(TFT素子および有機EL素子の構造)である。
図5】本実施形態に係るフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法を示す断面図(フレキシブルな有機EL表示装置の構造)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1はフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【0017】
まず、フィルム基板1を支持基材21上に形成してなるフィルム基板部を、所定の製造位置に設定する(S1)。
次に、フィルム基板1上にデバイス(有機EL素子)に係る複数の層を積層して、TFT素子(画素回路)30の構造体を形成する(S2)。
【0018】
この後、TFT素子30に隣接する位置に有機EL素子10を形成する(S3)。
次に、TFT素子30および有機EL素子10が形成されたフィルム基板1から支持基材21を剥離する(S4)。
【0019】
接着剤22を用い、TFT素子30および有機EL素子10上に封止フィルム23を形成して、フレキシブルな有機EL表示装置を形成する(S5)。
【0020】
このように、本実施形態のフレキシブルな有機EL表示装置の製造方法においては、TFT素子30および有機EL素子10からなるデバイスが形成されたフィルム基板1を、支持基材21から剥離し、しかる後に、このデバイスの上部に封止フィルム23を形成するようにしているから、デバイスへのダメージを低く抑えることが可能である。また、フィルム基板1の厚み、応力を適切に調整することで、封止フィルム23が形成されていない状態でフィルム基板1を支持基材21から剥離しても、フレキシブル性を失うことなく、ある程度のハンドリング機能を保持することが可能である。
【0021】
以下、上述した各ステップ(S1〜S5)について、詳しく説明する。なお、以下の実施例では、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を用いて行なわれる製造方法について説明する。
【0022】
まず、上記ステップ1(S1)においては、図2に示すように、支持基材21に固定されたフィルム基板1を適切な処理位置に設定する。
支持基材21としてはガラス板やシリコンウエハ等の剛性を有するものが好適に用いられ、この支持基材21の上にプラスチックからなるフィルム基板1が固定される。
【0023】
フィルム基板1の材料としては、プラスチックであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム等が好適に用いられ、特に、耐熱温度を高く
できるとの点から、ポリイミド(PI)フィルムを用いるのが好ましい。
【0024】
また、上記支持基材21から剥離した状態でも、一定のハンドリング性を確保するためにフィルム基板1としては厚めのものを用いることが好ましい。具体的には、例えばポリイミド(PI)フィルムであれば、50〜100μmの範囲であることが好ましい。50μmを下
回るとハンドリングの良好性を確保することが難しく、100μmを上回ると良好なフレキシブル性を確保することが難しくなるからである。
【0025】
支持基材21に対してフィルム基板1を固定する手法としては、接着剤を用いて支持基材21とフィルム基板1を貼り合せる方法や、支持基材21にフィルム基板1の材料を直接塗布して形成する態様がある。支持基材21とフィルム基板1の固定強度は、この作製プロセス中に剥がれてしまわない程度の接着強度を有しつつ、剥離工程が容易となるように(過度な応力が生じないように)接着強度を低く抑える必要がある。
【0026】
次に、上記ステップ2(S2)においては、図3に示すように、フィルム基板1上にTFT素子30の画素回路を形成する。
まず、フィルム基板1の上には、無機層と有機層の積層構造からなる下地層2を形成する。
【0027】
ここで、無機層は、無機酸化物や窒化物からなるもの、または金属からなる金属箔を好適に用いることができる。この無機層は、デバイスを劣化させる要因となる水分や酸素等のガスがデバイス内に浸入するのを防止するためのガスバリアとして機能する。
【0028】
一方、上記有機層は、フィルム基板1の表面にコーティングすることで、応力の緩和やデバイスの密着性の改善を図ることができる。ここで、フィルム基板1よりも下地層2の熱膨張率が高くなるように各々の材料を選択することにより、フィルム基板1を支持基材21から剥離したときにフィルム基板1の反り(カール)を抑制することができる。これにより、フィルム基板1を支持基板21から剥離した状態でも封止フィルム23をデバイス上に貼り合せる処理を行うことができる。
【0029】
この後、以下に示す方法で、下地層2上にTFT素子30の画素回路が形成される。まず、ゲート電極3が形成される。ゲート電極3は、導電性の高い金属膜を成膜し、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングする手法により、形成可能である。続いて、スパッタ法やCVD法等公知の手法を用いて、ゲート絶縁膜4を成膜する。その後、フォトリソグラフィー技術等公知の手法を用いて、画素電極5、TFTチャネルとなる半導体層6およびソースドレイン電極7が形成され、TFT素子および配線からなる画素回路が形成される。
【0030】
続いて、画素回路上を覆う層間絶縁膜(保護層)8を形成する(図4を参照)。層間絶縁膜8は、CVD法を用いて形成してもよいし、感光性を有するポリマー絶縁材料を塗布することによって形成してもよい。
【0031】
その後、プラズマエッチング等を用いて、画素電極5上に形成されている層間絶縁膜8を除去し、画素電極5を露出させる。この層間絶縁膜8として、感光性を有するポリマー絶縁材料を用いた場合には、フォトリソグラフィー技術を用いて画素電極5を露出させる。
【0032】
次に、上記ステップ3(S3)においては、図4に示すように、画素電極5上に有機EL素子10を形成する。
まず、露出している画素電極5上に、公知の手法により正孔注入層11を形成する。続
いて、真空蒸着法を用いて正孔輸送層12を形成する。さらに、正孔輸送層12上にマスク蒸着法等を用いて、例えば膜厚20〜50nmの発光層13を形成する。例えば、3原色(赤色(R)、緑色(G)、青色(B))の発光層13を有するフルカラーの表示装置を形成することが可能である。
【0033】
発光層13は、公知の種々の手法を用いて形成することができる。ホスト材料としてポリビニルカルバゾール(PVK)等の高分子材料を使用する場合には、インクジェット等の塗布方式によって発光層13を形成することができる。
【0034】
続いて、発光層13上に、蒸着法等を用いて電子輸送層14および陰極15を形成する。これにより、有機EL素子10を形成することができる。
【0035】
次に、上記ステップ4(S4)においては、上記のようにしてデバイスが形成されたフィルム基板1を支持基材21から剥離する。
この剥離工程では、機械的に引き剥がす手法を用いる。デバイスにダメージを与えることなく剥離を行うために、フィルム基板1の一方の縁部を把持し、垂直方向にゆっくりと引き上げる。このときの剥離する力は0.1N/cm以下となるように調整することが望ましい
【0036】
次に、上記ステップ5(S5)においては、図5に示すように、上記デバイスの上面に封止フィルム23を形成して、フレキシブルな有機EL表示装置を形成する。
すなわち、接着性樹脂(接着剤)22を介して、表面にバリア層が形成されている封止フィルム23を、バリア層を接着剤22側に向けた状態でデバイスの上面に貼り合せる。この時に、フィルム基板1にしわがよったり、カールしていたりすると、封止フィルム23との貼り合せが困難となるので、使用するフィルム基板1の厚みや下地層2による応力の調整を適切に行うことが必要である。
【0037】
接着剤22としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の公知のものを用いることができる。
このようにして、図5に示す構造の有機EL表示装置が完成する。
【0038】
このフレキシブルな有機EL表示装置においては、フィルム基板1として、支持基材21上に、ポリイミドを50〜100μmの厚さに塗布して形成したものを用いているので、封止フィルム23が形成されていない状態で支持基材21を剥離しても、フレキシブル性を失うことなく、ある程度のハンドリング機能を保持することが可能である。
【0039】
すなわち、フィルム基板1を形成するポリイミドを50μm以上の厚さに設定しているので、ある程度のハンドリング性を保持することができる。一方、ポリイミドを100μm以下の厚さにしているので、ある程度のフレキシブル性を確保することができ、フレキシブルな有機EL表示装置の構造を担保することができる。
【0040】
以下、本発明の実施例に係る、フレキシブルな有機EL表示装置の製造方法について、比較例と比較することにより、その効果について説明する。
【0041】
<実施例>
上述した実施形態と同様の手法により、支持基材21へのフィルム基板1の固定、フィルム基板1上への下地層2の形成、ならびにTFT素子30および有機EL素子10の形成を行う。
【0042】
続いて、デバイスが形成されたフィルム基板1を支持基材21から剥離する。この後、
接着剤22を介して、デバイス上に封止フィルム23を貼り合せる。
このようにして処理される製造方法において、フィルム基板1を支持基材21から剥離する際に、どの程度までフィルム基板1と支持基材21との固定強度を高めておくことができるか、という点について実測した。その結果、0.1N/cmまで固定強度(剥離強度)を
高めることができた。
【0043】
この場合には、上記剥離時に封止フィルム23からデバイスに対する応力が加わることがないので、デバイスがダメージを受けにくく、より強い力で剥離することが可能となった。
【0044】
<比較例>
上述した実施形態と同様の手法により、支持基材21へのフィルム基板1の固定、フィルム基板1上への下地層2の形成、ならびにTFT素子30および有機EL素子10の形成を行う。
【0045】
続いて、接着剤22を介して、デバイス上に封止フィルム23を貼り合せる。この後、デバイスが形成されたフィルム基板1を支持基材21から剥離する。
このようにして処理される製造方法において、フィルム基板1を支持基材21から剥離する際に、どの程度までフィルム基板1と支持基材21との固定強度を高めておくことができるか、という点について実測した。その結果、0.03N/cm以下まで固定強度(剥離強度)を下げることが必要であった。
【0046】
この場合には、上記剥離時に封止フィルム23からデバイスに対して応力がかかることになり、デバイスがダメージを受けやすいので、より弱い力で剥離することが必要であった。
【0047】
なお、本発明のフレキシブルな有機EL表示装置およびその製造方法としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記実施形態のものでは、フィルム基板1の材料としてポリイミドを用いているが、その他の種々のプラスチック材料を用いることもできる。
【0049】
また、上記実施形態のものでは、フィルム基板1の形成方法として、支持基材21上にフィルム基板1の形成材料を塗布して形成しているが、フィルム基板1を予め作成しておいて、これを支持基材21に貼付することにより固定処理を行ってもよい。
【0050】
また、上記実施形態において、有機EL発光素子10やTFT素子30の層構成は一例であって、これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 フィルム基板
2 下地層
3 ゲート電極
4 ゲート絶縁膜
5 画素電極
6 半導体層
7 ソースドレイン電極
8 保護層
10 有機EL素子
11 正孔注入層
12 正孔輸送層
13 発光層
14 電子輸送層
15 陰極
21 支持基材
22 接着剤(接着性樹脂)
23 封止フィルム
図1
図2
図3
図4
図5