【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の基準電流調整回路10の構成を示すブロック図である。基準電流調整回路10は、半導体ICに形成されている。
【0015】
基準電流調整回路10は、基準電流生成部11、第1カレントミラー部12、第2カレントミラー部13、抵抗部14、第1端子15及び第2端子16を含む。
【0016】
基準電流生成部11は、基準電流Ibを生成し、これをラインL1に供給する。基準電流生成部11は、半導体IC内の他の回路ブロックから調整信号TRIMの供給を受け、これに応じて基準電流Ibの電流値を調整する。
【0017】
図2は、基準電流生成部11の回路構成を示す図である。基準電流生成部11は、可変抵抗部21、第3カレントミラー部22、第4カレントミラー部23及びトランジスタ24を含む。
【0018】
可変抵抗部21は、調整信号TRIMに応じて抵抗値を変更する。可変抵抗部21は、電源電位VDDと第3カレントミラー部22を構成するトランジスタ22aとの間に設けられている。可変抵抗部21は、調整信号TRIMに応じて抵抗値を変更する。
【0019】
可変抵抗部21は、
図3(a)に示すような、デコーダDUを含む。デコーダDUは、jビット(j:2以上の整数)の調整信号TRIMを、kビット(k:2のj乗)の信号に変換する。これにより、
図3(b)に示すように、各ビット桁の信号値が“0”又は“1”のいずれかからなるjビットの信号(図にAD[j−1:0]として示す)が、k個のビット桁のうち1つのビット桁のみが“1”の信号値を有し他の(k−1)個のビット桁の信号値は“0”であるkビットの信号(図にD[k−1:0]として示す)に変換される。
【0020】
また、可変抵抗部21は、
図4に示すように、直列接続された抵抗R1〜Rkと、並列接続されたPチャネルMOS(Metal oxide semiconductor)型のトランジスタMP1〜MPkとを含む。トランジスタMP1のゲートには、kビットに変換された調整信号TRIMの1番目のビット桁の信号値を有する信号D1が供給される。トランジスタMP2のゲートには、kビットに変換された調整信号TRIMの2番目のビット桁の信号値を有する信号D2が供給される。以下同様に、トランジスタMPx(x=1〜k)のゲートには、x番目のビット桁の信号値を有する信号Dxが供給される。
【0021】
例えば、kビットに変換された調整信号TRIMの1番目のビット桁の信号値が“1”である場合、トランジスタMP1のみがオン状態となり、R1の抵抗値が可変抵抗部21の抵抗値となる。2番目のビット桁の信号値が“1”である場合、トランジスタMP2のみがオン状態となり、R1及びR2の抵抗値の合計が可変抵抗部21の抵抗値となる。以下同様に、x番目のビット桁の信号値が“1”である場合、トランジスタMPxのみがオン状態となり、R1、・・・Rx−1及びRxの抵抗値の合計が可変抵抗部21の抵抗値となる。
【0022】
第3カレントミラー部22は、
図2に示すように、PチャネルMOS型のトランジスタ22a及び22bから構成されている。トランジスタ22bのソースは第1電位VDDに接続され、ゲート及びドレインはダイオード接続されている。トランジスタ22a及び22bのゲートは互いに接続され、ノードn2を介してゲート電圧V3をトランジスタ24のゲートに供給する。
【0023】
第4カレントミラー部23は、NチャネルMOS型のトランジスタ23a及び23bから構成されている。トランジスタ23aのゲート及びドレインはダイオード接続されている。トランジスタ23a及び23bのゲートは互いに接続され、ソースは接地電位に接続されている。トランジスタ23aのドレインはトランジスタ22aのドレインに接続され、トランジスタ23bのドレインはトランジスタ22bのドレインに接続されている。
【0024】
トランジスタ24は、PチャネルMOS型のトランジスタである。トランジスタ24は、ゲート電圧V3の印加に応じて導通状態となり、基準電流IbをラインL1に供給する。
【0025】
第1カレントミラー部12は、
図1に示すように、NチャネルMOS型のトランジスタ12a及び12bを含む。トランジスタ12aのゲート及びドレインはダイオード接続されている。トランジスタ12a及び12bのゲートは互いに接続され、ソースは接地電位に接続されている。トランジスタ12a及び12bは、電流比1:1のカレントミラー回路を構成している。すなわち、第1カレントミラー部12は、ラインL1を流れる基準電流Ibと同じ電流値の基準電流IbをラインL2に供給する。
【0026】
第2カレントミラー部13は、PチャネルMOS型のトランジスタ13a及び13bを含む。トランジスタ13aのゲート及びドレインはダイオード接続されている。トランジスタ13a及び13bのゲートは互いに接続され、ソースには電源電位VDDが印加されている。トランジスタ13a及び13bは、1:m(m>1)の電流比(例えば1:10)を有するカレントミラー回路を構成している。すなわち、第2カレントミラー部13は、ラインL2を流れる基準電流Ibのm倍(例えば、10倍)の電流値(m×Ib)(例えば、10×Ib)を有する参照電流IfをラインL3に供給する参照電流生成部である。
【0027】
抵抗部14は、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bを含む。リファレンス抵抗14aの一端は、ノードn1を介して第1端子15に接続されている。リファレンス抵抗14aの他端は、接地電位に接続されている。モニタ抵抗14bの一端は、第2端子16に接続されている。モニタ抵抗14bの他端は、接地電位に接続されている。リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bは、n:1(n>1)の抵抗比(例えば、50:1)を有する。
【0028】
リファレンス抵抗14aは、参照電流Ifの供給を受け、電圧降下分に相当する電圧値を有する第1電圧V1を参照電圧として生成する参照電圧生成部である。一方、モニタ抵抗14bは、半導体ICの外部からモニタ電流Ioの供給を受け、電圧降下分に相当する電圧値を有する第2電圧V2をモニタ電圧として生成するモニタ電圧生成部である。
【0029】
図5は、抵抗部14の構成例を示す図である。抵抗部14は、直列接続された50個の抵抗素子RE1〜RE50から構成される抵抗素子群からなるリファレンス抵抗14aと、抵抗素子REからなるモニタ抵抗14bの2種類の抵抗で構成されている。抵抗素子RE及び抵抗素子RE1〜RE50の各々は、同一の製造プロセスにより製造され、同じ抵抗値を有する。したがって、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bの抵抗比は、抵抗素子の個数比に依存する。すなわち、仮にリファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bを構成する各抵抗素子の抵抗値にばらつきが生じた場合であっても、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bの抵抗比は、n:1(例えば、50:1)のほぼ一定の値に保たれる。
【0030】
また、モニタ抵抗14bは、例えば
図5に示すように、リファレンス抵抗14aを構成する抵抗素子群の中央に位置するように配置されている。リファレンス抵抗14aを構成する抵抗素子群は、抵抗素子RE1〜RE50のうち隣接する抵抗素子同士が配線によって直列接続されて構成されており、中央部の配線はモニタ抵抗14bを跨ぐように設けられている。このような抵抗素子の構成及び配置により、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bの抵抗比がほぼ一定に保たれるため、モニタ抵抗14bの抵抗値を得ることによりリファレンス抵抗14aの抵抗値を精度よく求めることが可能となる。
【0031】
第1端子15は、
図1に示すように、リファレンス抵抗14aにおける電圧降下に対応する電圧値を有する第1電圧V1を出力する。例えば、リファレンス抵抗14aの抵抗値が10MΩで且つ基準電流Ibの電流値が10nAの場合、ラインL3にはm×10nA(例えば、10×10nA)の参照電流Ifが流れるため、第1端子15からは、m×0.1V(例えば、100nA×10MΩ=1V)の電圧値を有する第1電圧V1が出力される。
【0032】
第2端子16は、半導体ICの外部からモニタ電流Ioの入力を受け、これをモニタ抵抗14bに供給する。また、第2端子16は、モニタ抵抗14bにおける電圧降下に対応する電圧値を有する第2電圧V2を出力する。
【0033】
次に、参照電圧生成部であるリファレンス抵抗14aの抵抗値の測定及び基準電流Ibの電流値の測定処理について説明する。以下の説明では、n=50、m=10の場合を例として説明する。
【0034】
[抵抗値の測定]
まず、第2端子16にモニタ電流Ioを供給し、第2電圧V2の電圧値を測定する。これにより、モニタ抵抗14bの抵抗値を得る。例えば、5μAのモニタ電流Ioを供給して第2電圧V2の電圧値が1Vであった場合、モニタ抵抗14bの抵抗値は200kΩと求まる。
【0035】
リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bは、50:1の抵抗比を有する。そこで、モニタ抵抗14bの抵抗値に基づいて、リファレンス抵抗14aの抵抗値を算出する。例えば、モニタ抵抗14bの抵抗値が200kΩである場合、リファレンス抵抗14aの抵抗値は10MΩとなる。
【0036】
以上の処理により、リファレンス抵抗14aの抵抗値を求める。リファレンス抵抗14aの抵抗値を直接測定するのではなく、モニタ抵抗14bの抵抗値に基づいてリファレンス抵抗14aの抵抗値を求めることができるため、リファレンス抵抗14aの抵抗値が大きい場合であっても、電流値の比較的小さなモニタ電流Ioの供給により抵抗値を得ることができる。したがって、リファレンス抵抗14aの抵抗値(すなわち、参照電圧生成部の抵抗値)を簡易に且つ精度よく得ることができる。
【0037】
[電流値の測定]
次に、第1端子15から出力される第1電圧V1の電圧値を測定する。測定した電圧値とリファレンス抵抗14Aaの抵抗値とに基づいて、ラインL3を流れる電流の電流値を求める。例えば、測定された第1電圧V1の電圧値が1Vである場合、リファレンス抵抗14aの抵抗値を10MΩとすると、ラインL3を流れる参照電流Ifの電流値は100nAとなる。
【0038】
参照電流Ifの電流値は、基準電流Ibの10倍である。したがって、参照電流Ifの電流値に基づいて基準電流Ibの電流値を得る。例えば、参照電流Ifの電流値が100nAである場合、基準電流Ibの電流値は10nAとなる。
【0039】
以上の処理により、第1電圧V1の電圧値に基づいて、基準電流Ibの値を得る。第1電圧V1は基準電流Ibの10倍の電流値に対応する電圧値であるため、第1電圧V1の電圧値を測定しつつ調整信号TRIMの信号値を変化させ、基準電流生成部11内の可変抵抗21の抵抗値を変更して基準電流Ibの値を調整することが容易となる。したがって、例えばnAのオーダー等の微小な基準電流の電流値を簡易に且つ精度よく測定しつつ、調整を行うことができる。
【実施例2】
【0040】
実施例2の基準電流調整回路10は、
図6に示すように、基準電流生成部11、第1カレントミラー部12、第2カレントミラー部13、抵抗部14、コンパレータ17、モニタ用端子18及びコンパレータ出力端子19を含む。基準電流生成部11、第1カレントミラー部12、第2カレントミラー部13及び抵抗部14の構成は、実施例1と同様である。
【0041】
コンパレータ17の入力端の一方は、ノードn3を介してトランジスタ13b及びリファレンス抵抗14aに接続されている。コンパレータ17の入力端の他方は、ノードn4を介してモニタ用端子18及びモニタ抵抗14bに接続されている。コンパレータ17は、ノードn3を介して供給されたリファレンス電圧V4とノードn4を介して供給されたモニタ電圧V5との比較結果を、出力電圧V6としてコンパレータ出力端子19を介して出力する。
【0042】
モニタ用端子18は、半導体ICの外部からモニタ電流Ioの供給を受け、これをモニタ抵抗14bに供給するとともに、モニタ電圧V5を出力する。ここで、モニタ電流Ioは、基準電流Ibの目標電流値のm×n倍(例えば、m=10で且つn=50の場合は500倍)の電流値を有する電流である。
【0043】
次に、参照電圧生成部であるリファレンス抵抗14aの抵抗値の測定及び基準電流Ibの電流値の測定処理について説明する。以下の説明では、n=50、m=10の場合を例として説明する。
【0044】
[抵抗値の測定]
まず、モニタ用端子18にモニタ電流Ioを供給する。ここで、モニタ電流Ioは、基準電流Ibの目標電流値の500倍の電流値を有する電流である。例えば、基準電流Ibの目標電流値が10nAである場合、5μAの電流値を有するモニタ電流Ioを第2端子16に供給する。
【0045】
次に、モニタ用端子18から出力されたモニタ電圧V5の値から、モニタ抵抗14bの抵抗値を得る。例えば、5μAのモニタ電流Ioを供給してモニタ電圧V5の電圧値が1Vであった場合、モニタ抵抗14bの抵抗値は200kΩと求まる。
【0046】
リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bは、50:1の抵抗比を有する。したがって、例えばモニタ抵抗14bの抵抗値が200kΩである場合、リファレンス抵抗14aの抵抗値は10MΩとなる。
【0047】
[電流値の測定]
コンパレータ17には、リファレンス抵抗14aにおける電圧降下分に対応したリファレンス電圧値V4が供給される。リファレンス電圧V4の電圧値は、基準電流Ibの10倍の電流値(すなわち、10×Ib)を有する参照電流If及びリファレンス抵抗14aの抵抗値(例えば、10MΩ)の積となる。
【0048】
一方、モニタ抵抗14bにはモニタ電流Ioが流れ、電圧降下分に対応する電圧値のモニタ電圧V5がノードn4に発生し、コンパレータ17及びモニタ用端子18に供給される。ここで、モニタ電圧V5の電圧値は、リファレンス電圧V4の目標電圧値である。すなわち、リファレンス抵抗14aには基準電流Ibの10倍の電流が流れ、且つリファレンス抵抗14aの抵抗値はモニタ抵抗14bの抵抗値の50倍であるため、基準電流Ibが目標電流値と一致した場合に、リファレンス電圧V4とモニタ電圧V5の値が等しくなるのである。
【0049】
コンパレータ17は、リファレンス電圧V4の電圧値とモニタ電圧V5の電圧値との比較結果を示す出力電圧V6を出力する。
【0050】
以上の処理により出力された出力電圧V6の値を測定しつつ、これが0になるように調整信号TRIMの信号値を段階的に変化させ、基準電流生成部11内の可変抵抗21の抵抗値を変更して、基準電流Ibの電流値を目標電流値に調整する。
【0051】
本実施例の基準電流調整回路によれば、出力電圧V6の値が0になるように調整を行えばよいため、簡易に且つ精度よく基準電流の電流値の測定及び調整を行うことができる。
【0052】
以上のように、本発明の基準電流調整回路10は、リファレンス抵抗14aよりも抵抗値が小さく且つリファレンス抵抗14aと一定の抵抗比を有するモニタ抵抗14bを含む。したがって、モニタ抵抗14bにモニタ電流Ioを供給して電圧降下を測定し、その測定結果に基づいてモニタ抵抗14bの抵抗値を求めることにより、リファレンス抵抗14aの抵抗値を求めることができる。したがって、リファレンス抵抗14aの抵抗値が大きい場合であっても、参照電圧生成部の抵抗値を簡易に且つ精度よく得ることができる。
【0053】
また、本発明の基準電流調整回路10は、基準電流Ibの電流値のm倍の電流値を有する参照電流Ifを生成する参照電流生成部としての第2カレントミラー部13を含む。そして、リファレンス抵抗14aは、参照電流Ifに基づいて、第1電圧V1(すなわち、参照電圧)を生成する。これにより、例えばm>1である場合、微小な電流値の基準電流Ibが大きな電圧値として測定される。したがって、基準電流の電流値を簡易に且つ精度よく測定しつつ、電流値の調整を行うことが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bが50:1の抵抗比を有する場合を例として回路動作を説明した。しかし、これに限られず、リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bはn:1(n>1)の抵抗比を有するものであればよい。すなわち、モニタ抵抗14bは、リファレンス抵抗14aの1/nの抵抗値を有するものであればよい。
【0055】
また、上記実施例では、リファレンス抵抗14aは、モニタ抵抗14bを構成する抵抗素子REが複数直列接続されて構成されている例について説明したが、リファレンス抵抗14aの構成はこれに限られない。リファレンス抵抗14a及びモニタ抵抗14bは、同じ製造プロセスで製造される等により、一定の抵抗比を有するものであればよい。
【0056】
また、上記実施例では、第2カレントミラー部13が基準電流Ibの10倍の電流値を有する参照電流Ifを生成する場合を例として、回路動作を説明した。しかし、参照電流Ifの電流値はこれに限られない。第2カレントミラー部13は、基準電流Ibの電流値のm倍(m≧1)の電流値を有する参照電流Ifを生成するものであればよい。
【0057】
また、第1カレントミラー部12及び第2カレントミラー部13をカスコード接続により構成してもよい。これにより、各カレントミラー部を構成するトランジスタのドレイン電圧に対する電流変動を抑え、電流比の精度を向上させて、精度の高い基準電流の測定及び調整を行うことができる。
【0058】
要するに、本発明に係る基準電流調整回路(10)は、調整信号(TRIM)の供給を受け、調整信号に対応する電流値を有する基準電流(Ib)を生成する基準電流生成部(11)と、基準電流の電流値のm倍(m≧1)の電流値を有する参照電流(If)を生成する参照電流生成部(13)と、第1の抵抗を有し、参照電流の供給を受けて第1の抵抗における電圧降下分に相当する電圧値を有する参照電圧(V1)を生成する参照電圧生成部(14a)と、第1の抵抗の1/n倍(n>1)の抵抗値を有する第2の抵抗を有し、外部からモニタ電流(Io)の供給を受けて前記第2の抵抗における電圧降下分に相当する電圧値を有するモニタ電圧(V2)を生成するモニタ電圧生成部(14b)と、を含むことを特徴とするものである。