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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-163918(P2016-163918A)
(43)【公開日】2016年9月8日
(54)【発明の名称】工作機械、及び被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/12 20060101AFI20160815BHJP
   G05B 19/404 20060101ALI20160815BHJP
【FI】
   B23Q15/12 A
   G05B19/404 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-44852(P2015-44852)
(22)【出願日】2015年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】深川 智史
(72)【発明者】
【氏名】石井 眞二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 祐貴
【テーマコード(参考)】
3C001
3C269
【Fターム(参考)】
3C001KA07
3C001KB09
3C001SB01
3C001TA05
3C001TA06
3C001TA09
3C269AB31
3C269BB03
3C269EF02
3C269EF30
3C269QB19
(57)【要約】
【課題】自励びびり振動を十分効果的に抑制することができる工作機械等を提供する。
【解決手段】工具を保持する主軸10と、主軸10を回転させる主軸モータ13と、送りモータ4により、ワーク9と工具12とを相対的に移動させる送り装置3と、主軸モータ13を制御する主軸モータ制御部17、並びに送りモータ4を制御する送りモータ制御部18を備える。主軸モータ制御部17は、主軸10の回転速度が、目標回転速度を基準とし、所定の振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように主軸モータ13を制御する。送りモータ制御部18は、主軸モータ13の制御に同期させて、少なくとも主軸モータ13の回転速度が極大値となる所定時間帯域、及び極小値となる所定時間帯域において、工具12とワーク9との相対的な移動速度が、主軸10の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動するように、送りモータ4を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械を用い、工具を主軸に保持して、該主軸を目標回転速度で回転させるとともに、被加工物と前記工具とを切削送り方向の目標移動位置に、目標移動速度で相対的に移動させて該被加工物を加工する加工方法において、
前記主軸の回転速度を、前記目標回転速度を基準として、予め定められた振幅を有し、周期的又は非周期的に連続して変化する波形に沿って変動させるとともに、
前記主軸の回転速度の変動に同期させ、少なくとも前記主軸の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度を、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させるようにしたことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
前記主軸の回転速度の変動波形を三角波形状とするとともに、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動を三角波形状に沿った変動としたことを特徴とする請求項1記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
前記主軸の回転速度の変動波形を正弦波形状とするとともに、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動を正弦波形状に沿った変動としたことを特徴とする請求項1記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
工作機械を用い、被加工物を主軸に保持して、該主軸を目標回転速度で回転させるとともに、工具と前記被加工物とを切削送り方向の目標移動位置に、目標移動速度で相対的に移動させて該被加工物を加工する加工方法において、
前記主軸の回転速度を、前記目標回転速度を基準として、予め定められた振幅を有し、周期的又は非周期的に連続して変化する波形に沿って変動させるとともに、
前記主軸の回転速度の変動に同期させ、少なくとも前記主軸の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具を前記主軸の軸線及び前記工具の切り込み方向の双方に直交する方向に連続的に移動させるようにしたことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項5】
工具を保持する主軸と、該主軸を回転させる主軸モータと、送りモータを有し、被加工物と前記工具とを切削送り方向に相対的に移動させる送り装置と、前記主軸モータを制御する主軸モータ制御部、並びに前記送りモータを制御する送りモータ制御部を具備する制御装置とを備えた工作機械であって、
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、工具と被加工物との相対的な目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した目標移動速度で前記工具と被加工物とが相対的に目標移動位置に移動するように、前記送りモータを制御するとともに、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させ、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度が、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動するように、前記送りモータを制御するように構成されていることを特徴とする工作機械。
【請求項6】
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の回転速度が三角波形状に沿って変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動が三角波形状に沿った変動となるように、前記送りモータを制御するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の工作機械。
【請求項7】
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の回転速度が正弦波形状に沿って変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動が正弦波形状に沿った変動となるように、前記送りモータを制御するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の工作機械。
【請求項8】
被加工物を保持する主軸と、該主軸を回転させる主軸モータと、送りモータを有し、工具と前記被加工物とを切削送り方向に相対的に移動させる送り装置と、前記工具を前記主軸の軸線及び前記工具の切り込み方向の双方に直交するシフト方向に移動させるシフト機構と、前記主軸モータを制御する主軸モータ制御部、前記送りモータを制御する送りモータ制御部、並びに前記シフト機構を制御するシフト制御部を具備する制御装置とを備えた工作機械であって、
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、工具と被加工物との相対的な目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した目標移動速度で前記工具と被加工物とが相対的に目標移動位置に移動するように、前記送りモータを制御するように構成され、
前記シフト制御部は、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させて前記シフト機構を制御し、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具を前記シフト方向に連続的に移動させるように構成されていることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を加工する際に、自励びびり振動を効果的に抑制することができる工作機械、及び当該被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械を用いて被加工物を加工する際に、びびり振動によって加工精度(特に表面精度)が悪化することは旧来より良く知られている。このようなびびり振動は、強制びびり振動と自励びびり振動に大別され、強制びびり振動は過大な外力が作用すること、或いは外力の周波数と振動系の共振周波数が同期することによって発生し、一方、自励びびり振動は、切削抵抗の周期的変動と切り取り厚さの周期的変動の相互作用が互いに強め合う切削を継続すること(所謂再生効果)によって引き起こされると考えられている。
【0003】
そして、従来、下記特許文献1〜3に開示されるように、前記自励びびり振動を抑制する加工方法として、工具の送り速度を一定にした状態で、主軸の回転速度を所定の振幅で周期的に変動させるようにした加工方法が提案されている。これら特許文献1〜3に開示される加工方法では、いずれも、切削抵抗の変動及び切り取り厚さの変動の周期性を崩すために、主軸の回転速度を所定の振幅及び周期で変動させるようにしており、主軸回転速度を周期的に変動させる態様としては、従来、主軸回転速度を三角波形状又は正弦波形状に沿って変動させる態様が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭49−105277号公報
【特許文献2】特開2000−126991号公報
【特許文献3】特開2012−91283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した特許文献1〜3に開示される従来の加工方法は、自励びびり振動に関して、一応の抑制効果を奏するものの、本発明者等が得た新たな知見によれば、必ずしも十分には、自励びびり振動を抑制することができないという問題があった。
【0006】
即ち、主軸(言い換えれば主軸モータ)の回転速度を上述の如く三角波形状に沿って変動させるべく、当該主軸モータを制御する場合、図7に示すように、制御波形の最大値である三角波の頂部Aは、主軸モータの回転速度(主軸回転速度)を増加変動から減少変動に転じさせる部分であるため、実際の主軸モータの回転速度は、このような急激な変動には追随することができず、遅れを伴って追随することになるため、破線で示す凸曲線に沿った変動となる。このことは、主軸モータの回転速度が最小値となる三角波の底部Bにおいても同じであり、底部Bにおける実際の主軸モータの回転速度(主軸回転速度)は、破線で示す凹曲線に沿った変動となる。
【0007】
斯くして、実際の主軸回転速度が最大値(破線で示す凸曲線頂部)及び最小値(破線で示す凹曲線底部)となる付近では、回転速度の変動率がごく僅かとなるため、当該最大値及び最小値付近では、上述した再生効果(即ち、切削抵抗の変動と切り取り厚さの変動の周期性)を崩す作用が弱くなる、言い換えれば、自励びびり振動の十分な抑制効果が得られなくなるのである。
【0008】
図8(a)は、立形のマシニングセンタのテーブル上に直方体状のワークを固定し、主軸にエンドミルを保持して、当該ワークの4側面を加工したときの主軸回転速度の制御波形を示したグラフであり、図8(b)は、加工時に主軸に作用する加速度を示した線図である。尚、図8(a)に示すように、主軸回転速度の制御波形は、第1側面の加工から第2側面の加工に移る前後の所定区間、並びに第3側面から第4側面に移る前後の所定区間で三角波状とし、その他の区間は一定とした。
【0009】
図8(b)に示すように、主軸回転速度を一定して加工したときには、びびり振動が発生している。また、主軸の制御回転速度を三角波状に変動させたときにも、三角波の頂部に当たるところで大きく振動しており、また、その他のところでも振幅は小さいものの振動自体は生じている。
【0010】
この図8から分かるように、主軸回転速度の制御波形を三角波状にすることで、相応の自励びびり振動抑制効果が得られるものの、その抑制効果は必ずしも十分とは言えないものである。
【0011】
このことは、主軸回転速度の制御波形を正弦波形状にした場合も同様である。即ち、図9に示すように、この場合も、主軸回転速度が最大値となる頂部C、及び最小値となる底部D付近では、当該回転速度の変動率がごく僅かとなるため、当該最大値及び最小値付近では、上述した再生効果(即ち、切削抵抗の変動と切り取り厚さの変動の周期性)を崩す作用が弱くなり、主軸回転速度を三角波形状に沿って変動させる場合と同様に、自励びびり振動を十分に抑制することができないのである。
【0012】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、従来に比べて、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができる工作機械、及び加工方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
工作機械を用い、工具を主軸に保持して、該主軸を目標回転速度で回転させるとともに、被加工物と前記工具とを切削送り方向の目標移動位置に、目標移動速度で相対的に移動させて該被加工物を加工する加工方法、即ち、回転工具を用いた、所謂ミーリング加工方法において、
前記主軸の回転速度を、前記目標回転速度を基準として、予め定められた振幅を有し、周期的又は非周期的に連続して変化する波形に沿って変動させるとともに、
前記主軸の回転速度の変動に同期させ、少なくとも前記主軸の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度を、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させるようにした被加工物の加工方法に係る。
【0014】
そして、この加工方法は、以下の構成を備えた本発明に係る工作機械によって、好適に実施することができる。
【0015】
即ち、本発明に係る工作機械は、工具を保持する主軸と、該主軸を回転させる主軸モータと、送りモータを有し、被加工物と前記工具とを切削送り方向に相対的に移動させる送り装置と、前記主軸モータを制御する主軸モータ制御部、並びに前記送りモータを制御する送りモータ制御部を具備する制御装置とを備えて構成され、
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、工具と被加工物との相対的な目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した目標移動速度で前記工具と被加工物とが相対的に目標移動位置に移動するように、前記送りモータを制御するとともに、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させ、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度が、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動するように、前記送りモータを制御する構成される。
【0016】
本発明に係る工作機械によれば、主軸に工具を保持した後、主軸モータ制御部により主軸モータを制御して主軸を回転させるとともに、送りモータ制御部により送り装置の送りモータを制御して、被加工物と回転工具とを切削送り方向に相対的に移動させることにより、当該被加工物を加工する。
【0017】
その際、前記主軸モータ制御部は、主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御する。主軸モータの回転速度を変動させる制御波形は、正弦波のような曲線波形でも、三角波のような直線的な波形(三角波の頂部が曲線となったものも含む)でも良いが、連続的に変動する波形とする。
【0018】
一方、前記送りモータ制御部は、工具と被加工物との相対的な目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した目標移動速度で前記工具と被加工物とが相対的に目標移動位置に移動するように、前記送りモータを制御するとともに、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させ、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度が、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動するように、前記送りモータを制御する。
【0019】
斯くして、この工作機械及び加工方法によれば、主軸の回転速度が、目標回転速度を基準として予め定められた振幅で、周期的又は非周期的に連続して変動するように制御されるので、主軸回転速度が極大値となるその前後の所定時間帯域、並びに極小値となるその前後の所定時間帯域を除くその他の時間帯域については、従来と同様に、自励びびり振動を十分に抑制することができる。
【0020】
即ち、自励びびり振動は、上述したように、再生効果の一要素であるところの、工具に作用する切削抵抗(言い換えれば、切削速度)の変動の周期性を崩すことによって抑制されるが、上述した各所定時間帯域を除く他の時間帯域では、主軸回転速度が十分大きく変動しているため、例え、工具の送り速度が一定でも、当該工具の刃部と被加工物との間の相対的な移動速度、言い換えれば、工具の刃部が被加工物を切削する切削速度、即ち、工具に作用する切削抵抗が大きく変動することになり、これにより上述した切削抵抗の変動の周期性が喪失され、この結果、自励びびり振動が抑制されるのである。
【0021】
また、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域では、前記工具と被加工物との相対的な移動速度を、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させており、このことによって、自励びびり振動が十分効果的に抑制される。
【0022】
上述したように、主軸モータの回転速度を変動させる制御波形が曲線波形である場合には当然のこと、三角波のような直線的な波形であっても、主軸モータの実際の回転速度は、追随遅れによって、極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域では、曲線に沿った変動となり、この時間帯域における主軸回転速度の変動率はごく僅かなものとなる。したがって、この極大値及び極小値付近では、工具の刃部が被加工物を切削する切削速度(即ち、切削抵抗)の変動が小さく、このため再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性を喪失させ難く、自励びびり振動を抑制し難いのである。
【0023】
そこで、本発明では、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具と被加工物との相対的な移動速度を、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させることによって、工具の刃部が被加工物を切削する切削速度(即ち、工具に作用する切削抵抗)が大きく変動する状況を創出した。これにより切削抵抗の変動の周期性が喪失され、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができるようになった。尚、切削抵抗が変動する状況を創出するには、工具と被加工物との相対的な移動速度を、主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させることが肝要である。
【0024】
斯くして、本発明に係る工作機械及び加工方法によれば、従来に比べて、自励びびり振動をより効果的に抑制することができる。尚、工具と被加工物との相対的な移動速度を変動させる上記所定時間帯域は、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができるように、経験的に決定することができる。
【0025】
また、本発明に係る加工方法では、前記主軸の回転速度の変動波形を三角波形状とするとともに、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動を三角波形状に沿った変動としても良い。また、このような加工方法を実施するための工作機械としては、前記主軸モータ制御部は、前記主軸の回転速度が三角波形状に沿って変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、前記送りモータ制御部は、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動が三角波形状に沿った変動となるように、前記送りモータを制御する構成されていても良い。
【0026】
また、本発明に係る加工方法では、前記主軸の回転速度の変動波形を正弦波形状とするとともに、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動を正弦波形状に沿った変動としても良い。また、このような加工方法を実施するための工作機械としては、前記主軸モータ制御部は、前記主軸の回転速度が正弦波形状に沿って変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、前記送りモータ制御部は、前記各所定時間帯域における前記工具と被加工物との相対的な移動速度の変動が正弦波形状に沿った変動となるように、前記送りモータを制御する構成されていても良い。
【0027】
また、本発明は、工作機械を用い、被加工物を主軸に保持して、該主軸を目標回転速度で回転させるとともに、工具と前記被加工物とを切削送り方向の目標移動位置に、目標移動速度で相対的に移動させて該被加工物を加工する加工方法、即ち、所謂旋削による加工方法おいて、
前記主軸の回転速度を、前記目標回転速度を基準として、予め定められた振幅を有し、周期的又は非周期的に連続して変化する波形に沿って変動させるとともに、
前記主軸の回転速度の変動に同期させ、少なくとも前記主軸の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具を前記主軸の軸線及び前記工具の切り込み方向の双方に直交する方向に連続的に移動させるようにした被加工物の加工方法に係る。
【0028】
そして、この加工方法は、以下の構成を備えた本発明に係る工作機械によって、好適に実施することができる。
【0029】
即ち、この工作機械は、被加工物を保持する主軸と、該主軸を回転させる主軸モータと、送りモータを有し、工具と前記被加工物とを切削送り方向に相対的に移動させる送り装置と、前記工具を前記主軸の軸線及び前記工具の切り込み方向の双方に直交するシフト方向に移動させるシフト機構と、前記主軸モータを制御する主軸モータ制御部、前記送りモータを制御する送りモータ制御部、並びに前記シフト機構を制御するシフト制御部を具備する制御装置とを備えた工作機械であって、
前記主軸モータ制御部は、前記主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御するように構成され、
前記送りモータ制御部は、工具と被加工物との相対的な目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した目標移動速度で前記工具と被加工物とが相対的に目標移動位置に移動するように、前記送りモータを制御するように構成され、
前記シフト制御部は、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させて前記シフト機構を制御し、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具を前記シフト方向に連続的に移動させるように構成される。
【0030】
この工作機械によれば、主軸に被加工物を保持した後、主軸モータ制御部により主軸モータを制御して主軸を回転させるとともに、送りモータ制御部により送り装置の送りモータを制御して、被加工物と工具とを切削送り方向に相対的に移動させることにより、当該被加工物を加工する。
【0031】
その際、前記主軸モータ制御部は、主軸の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で周期的又は非周期的に連続して変動するように、前記主軸モータを制御する。主軸モータの回転速度を変動させる制御波形は、正弦波のような曲線波形でも、三角波のような直線的な波形(三角波の頂部が曲線となったものも含む)でも良いが、連続的に変動する波形とする。
【0032】
一方、前記シフト制御部は、前記主軸モータ制御部による前記主軸モータの制御に同期させて前記シフト機構を制御し、少なくとも前記主軸モータの回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具を前記シフト方向に連続的に移動させる。
【0033】
斯くして、この工作機械及び加工方法によれば、上述した工作機械及び加工方法と同様に、主軸の回転速度が、目標回転速度を基準として予め定められた振幅で、周期的又は非周期的に連続して変動するように制御されるので、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定時間帯域、並びに極小値となる時点を含む所定時間帯域を除くその他の時間帯域においては、自励びびり振動を十分に抑制することができる。
【0034】
一方、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域では、主軸回転速度の変動率がごく僅かなものとなるため、この極大値及び極小値付近では、工具の刃部が被加工物を切削する切削速度(即ち、切削抵抗)の変動が小さく、再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性を喪失させ難くなっており、このため自励びびり振動を十分には抑制し難いものとなっている。
【0035】
そこで、この工作機械では、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記シフト制御部により前記シフト機構を制御して、前記工具を前記シフト方向に連続的に移動させるようにした。尚、このシフト方向は、主軸の軸線と工具の切り込み方向との双方に直交する方向であり、工具の刃部による周方向の切削方向と一致する方向である。
【0036】
斯くして、工具をシフト方向に移動させることで、工具の刃部による切削速度(即ち、工具に作用する切削抵抗)が変動し、これにより上述した再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性が喪失され、この結果、自励びびり振動が抑制されることになる。
【0037】
このように、この工作機械及び加工方法によっても、従来に比べて、自励びびり振動をより効果的に抑制することができる。尚、工具シフト方向に移動させる上記所定時間帯域は、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができるように、経験的に決定することができる。
【発明の効果】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、従来に比べて、自励びびり振動をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の一実施形態に係る工作機械の概略構成を示した説明図である。
図2】本実施形態の主軸モータ制御部及び送りモータ制御部における制御を説明するための説明図である。
図3】本実施形態の効果を確認するためのシミュレーションモデルを示したブロック図である。
図4】本実施形態の効果を説明するための線図である。
図5】主軸モータ制御部及び送りモータ制御部における他の制御態様を示した説明図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る工作機械の概略構成を示した説明図である。
図7】従来の問題点を説明するための説明図である。
図8】従来の問題点を説明するための説明図である。
図9】従来の問題点を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0041】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る工作機械の概略構成を示した説明図である。図1に示すように、本例の工作機械1は、所謂、立形のマシニングセンタであり、ベッド2、このベッド2上に設けられるX軸送り装置3、このX軸送り装置3によってX軸方向に移動するテーブル8、テーブル8の上方に設けられる主軸10、並びに制御装置15などを備えている。
【0042】
前記X軸送り装置3は、前記X軸方向に沿って配設されたボールねじ5と、このボールねじ5の両端部をそれぞれ回転自在に支持する一対の軸受7,7と、前記テーブル8を前記X軸方向に沿った方向に移動自在に支持するX軸案内部(図示せず)と、前記ボールねじ5に螺合するとともに、前記テーブル8の下面に固設されるボールナット6と、前記ボールねじ5の一方の端部に接続されるX軸送りモータ4とから構成され、このX軸送りモータ4によって駆動されるボールねじ5及びこれに螺合するボールナット6の作用によって、前記テーブル8をX軸方向に移動させる。尚、テーブル8の上面には、ワーク9が載置され、固定される。
【0043】
前記主軸10は、上下方向に沿った中心軸を中心に回転自在に主軸頭11に保持されるとともに、その上端部に接続された主軸モータ13によって前記中心軸を中心に回転され、その下端部には工具12が装着される。
【0044】
そして、この主軸頭11は、前記X軸送り装置3と同様の構成を備えたZ軸送り装置(図示せず)によって、前記X軸と直交する方向(上下方向)であるZ軸方向に移動可能であり、また、同じく前記X軸送り装置3と同様の構成を備えたY軸送り装置(図示せず)によって、前記X軸及びZ軸の双方に直交する(紙面と直交する)Y軸方向に移動可能となっている。
【0045】
前記制御装置15は、図1に示すように、プログラム解析部16、主軸モータ制御部17及び送りモータ制御部18を備えるが、図1には、その主だった構成のみ図示しており、当然のことながら、通常は、この他の構成も備えている。
【0046】
前記プログラム解析部16は、実行するNCプログラムを解析して、当該NCプログラム中に指定された主軸10の回転速度に関する指令を認識して、認識した指令を目標回転速度として前記主軸モータ制御部17に送信するとともに、前記各送り軸(X軸、Y軸及びZ軸)に関する移動位置及び送り速度に関する指令を認識して、認識した指令を目標移動位置及び目標移動速度として前記送りモータ制御部18に送信する処理を行う。
【0047】
前記主軸モータ制御部17は、前記プログラム解析部16から前記主軸10の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸10の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で、周期的に連続して変動するように、前記主軸モータ13を制御する。尚、本例では、主軸回転速度の変動波形を、図2(a)に示すように、目標回転速度Saを基準とする振幅Waの三角波形状とし、その周期Taを一定にした。
【0048】
前記送りモータ制御部18は、前記プログラム解析部16からX軸、Y軸及びZ軸に関する目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した指令に従って、対応する送り装置(X軸送り装置3、Y軸送り装置(図示せず)及びZ軸送り装置(図示せず))を制御する。
【0049】
そして、この送りモータ制御部18は、前記プログラム解析部16から入力される目標移動速度が切削送りに係る移動速度である場合には、前記主軸モータ制御部17による前記主軸モータ13の制御に同期させて、対応する送りモータを制御して、前記主軸モータ13の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記切削送りに係る移動速度を、前記主軸の回転速度と該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動させる。
【0050】
本例では、具体的には、図2(b)に示すように、前記所定時間帯域ta及びtb以外の時間帯域では、移動速度を目標移動速度Faとし、一方、主軸モータ13の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域taにおいては、移動速度を、極小値を持つ(言い換えれば、下に凸となる)三角波状に変動させ(変動幅−Fw)、主軸モータ13の回転速度が極小値となる時点を含む所定の時間帯域tbにおいては、移動速度を、極大値を持つ(言い換えれば、上に凸となる)三角波状に変動させている(変動幅Fw)。
【0051】
尚、送りモータ制御部18における制御と、前記主軸モータ制御部17における制御との同期は、例えば、主軸モータ制御部17によって実行される制御波形に係るデータを、送りモータ制御部18に記憶しておき、当該送りモータ制御部18では、記憶しているデータと、主軸モータ制御部17から入力される制御信号とを基に、主軸モータ制御部17での実行状態を認識し、その実行状態に合わせて対応する送りモータを制御することによって実現することができる。
【0052】
以上の構成を備えた本例の工作機械1によれば、主軸10に工具12を保持し、テーブル8上にワーク9を載置,固定した後、制御装置15による制御の下で、例えば、NCプログラムに従い主軸モータ13、X軸送りモータ4、Y軸送りモータ(図示せず)及びZ軸送りモータ(図示せず)を適宜駆動することにより、ワーク9が加工される。
【0053】
そして、NCプログラムに従った加工の場合には、制御装置15のプログラム解析部16によりNCプログラムが解析されて、当該NCプログラム中に指定された主軸10の回転速度に関する指令、並びに前記各送り軸(X軸、Y軸及びZ軸)に関する移動位置及び送り速度に関する指令が認識される。そして、プログラム解析部16は、認識された主軸回転速度を目標回転速度として前記主軸モータ制御部17に送信し、また、認識された各送り軸に関する移動位置及び送り速度を目標移動位置及び目標移動速度として前記送りモータ制御部18に送信する。
【0054】
そして、前記主軸モータ制御部17は、前記プログラム解析部16から主軸10の目標回転速度Saに係る指令を受信すると、主軸10の回転速度が、目標回転速度Saを基準とし、振幅Wa及び周期Taで三角波状に変動するように主軸モータ13を駆動,制御する。また、前記送りモータ制御部18は、前記プログラム解析部16から入力される目標移動速度に従って対応する送りモータを制御し、目標移動速度が切削送りに係る移動速度である場合には、前記主軸モータ制御部17による前記主軸モータ13の制御に同期させて、対応する送りモータを制御し、その移動速度を図2(b)に示すように変動させる。
【0055】
斯くして、このように、主軸モータ13及び対応する送りモータを制御することで、加工中における自励びびり振動の発生を、従来に比べ、より効果的に抑制することができる。
【0056】
即ち、まず、主軸10の回転速度を、目標回転速度Saを基準として、振幅Wa及び周期Taの三角波状に変動させているので、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域ta、並びに極小値となる時点を含む所定時間帯域tbを除くその他の時間帯域においては、主軸回転速度が十分大きく変動しており、このため、工具12の刃部がワーク9を切削する切削速度(即ち、工具12に作用する切削抵抗)が大きく変動することになり、これにより再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性が喪失され、従来と同様、自励びびり振動が抑制される。
【0057】
一方、前記時間帯域ta及びtbにおいては、前記主軸10の回転速度は、追随遅れにより曲線に沿った変動となるため、当該主軸回転速度の変動率はごく僅かなものとなるが、前記工具12とワーク9との相対的な移動速度を、時間帯域taにおいては、極小値を持つ(言い換えれば、下に凸となる)三角波状に変動させ、時間帯域tbにおいては、極大値を持つ(言い換えれば、上に凸となる)三角波状に変動させるようにしているので、工具12の刃部がワーク9を切削する切削速度(即ち、工具に作用する切削抵抗)が大きく変動するようになり、これにより再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性が喪失され、結果、自励びびり振動が効果的に抑制されるようになる。
【0058】
このように、本例の工作機械1、及びこの工作機械1による加工方法によれば、従来に比べて、自励びびり振動をより効果的に抑制することができる。因みに、図3に示したモデル(図1の工作機械1をモデル化したもの)を用いて、加工シミュレーションを行い、そのときに得られた主軸の変位を図4に示す。
【0059】
尚、図3に示したモデルのうち、h(s)は設定切り取り厚さ、h(s)は瞬間切り取り厚さ、y(s)は現在の振動変位であり、h(s)は下式によって表される。
h(s)=h(s)+y(s)・e−τs−y(s)
但し、τは主軸の回転周期である。
また、aは切削幅、Kは比切削抵抗、F(s)は切削力の背分力成分であり、Mは動質量、Bは機械インピーダンス、Kは動剛性であり、上記シミュレーションでは、切削幅aを5[mm]、比切削抵抗Kを300[MPa]、動質量Mを10Ns/m、機械インピーダンスBを200Ns/m、動剛性Kを5×10N/mとした。
【0060】
また、上記加工シミュレーションは、1)主軸の回転速度のみを変動させ、工具とワークとの相対的な移動速度(即ち、送り速度)を一定にした場合と、2)主軸の回転速度を変動させるとともに、この主軸回転速度の変動に同期させて前記送り速度を変動させた場合の2通りについて行った。
【0061】
主軸回転速度は、図2(a)に従って変動させるものとし、前記目標回転速度Saを262[rad/s]、周期Taを0.171[s]、振幅Waを78.6[rad/s]とした。尚、一般的に、主軸の回転速度の変動を速度変動比RVA及び速度変動周期比RVFで評価するが、これらの値は以下となる。
RVA=Wa/Sa=78.6/262=0.3
RVF=2π/(Sa・T)=2π/(262×0.171)=0.14
【0062】
また、前記送り速度は、一定の場合には、2[mm/s]とし、主軸回転速度の変動に同期させて変動させる場合には、図2(b)に従って変動させるものとし、目標移動速度(送り速度)Faを2[mm/s]とし、変動幅Fwを±0.2[mm/s]とし、前記時間帯域ta及びtbをそれぞれ0.0342[s」とした。
【0063】
図4には、主軸回転速度のみを変動させ、送り速度を一定にした場合の主軸変位を破線で示し、主軸の回転速度を変動させるとともに、この主軸回転速度の変動に同期させて送り速度を変動させた場合の主軸の変位を実線で示している。この図4から、主軸回転速度及び送り速度の双方を、図2(b)に示すように変動させることによって、主軸回転速度のみを変動させる従来の態様に比べて、より主軸の変位を減少させることができる、即ち、主軸の振動をより抑制し得ることが分かる。
【0064】
また、この第1の実施形態において、前記主軸モータ制御部17は、主軸10の回転速度を、図2(a)に示した三角波形状ではなく、図5(a)に示すような、目標回転速度Saを基準とする、振幅Wa及び周期Taの正弦波形状に沿って変動させるように構成されていても良く、或いは、三角波及び正弦波以外の曲線波形、又は直線と曲線を組み合わせた波形に沿って変動させるように構成されていても良く、更には、これらの波形で非周期的に変動させるように構成されていても良い。このようにしても、上例と同様に、主軸10の自励びびり振動を抑制することができる。
【0065】
また、前記送りモータ制御部18が、前記主軸モータ制御部17による前記主軸モータ13の制御に同期させて、工具12とワーク9との相対的な移動速度を変動させる態様としては、図2(b)に示した態様に限られるものではなく、図5(b)に示すような変動態様としても良い。この図5(b)に示した態様は、工具12とワーク9との相対的な移動速度の変動を、目標移動速度Sbを基準とし、振幅Wb及び主軸回転速度の変動周期と同じ周期Taの正弦波に沿ったものとし、この正弦波の位相を、主軸回転速度の変動周期に対して、φだけずらしたものである。
【0066】
工具12とワーク9との相対的な移動速度の変動を、このような正弦波形状に沿ったものとしても、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定時間帯域ta、及び極小値となる時点を含む所定時間帯域tbにおいて、工具12の刃部がワーク9を切削する切削速度を大きく変動させることができ、これによって、再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性を喪失させることができるので、上記と同様に、自励びびり振動を効果的に抑制することができる。
【0067】
尚、このような工具12とワーク9との相対的な移動速度の変動は、図2(b)及び図5(b)に示した例に限られるものではなく、他の変動態様であっても良く、要は、前記時間帯域ta及びtbにおいて、工具12とワーク9との相対的な移動速度が、主軸の回転速度と当該移動速度との比が一定とならない状態で連続的に変動していれば良い。
【0068】
また、工具12とワーク9との相対的な移動速度を変動させる上記時間帯域ta,tbは、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができるように、経験的に決定することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係る工作機械の概略構成を示した説明図である。
【0070】
図6に示すように、実施形態に係る工作機械20は、所謂、旋盤であり、ベッド21、このベッド21上の図示左側に設けられる主軸台22、ベッド21上の図示右側に設けられるZ軸送り装置25、このZ軸送り装置25によってZ軸方向に移動する往復台30、この往復台30上に順次設けられるX軸送り装置31,刃物台32,シフト機構34及びタレット33、並びに制御装置40などを備えている。
【0071】
前記主軸台22は、主軸23をその中心軸回りに回転自在に保持しており、主軸23は図示しない主軸モータによって中心軸回りに回転される。また、この主軸23には適宜ワーク24が装着される。
【0072】
前記Z軸送り装置25は、前記主軸23の中心軸と平行なZ軸に沿って配設されたボールねじ27と、このボールねじ27の両端部をそれぞれ回転自在に支持する一対の軸受29,29と、前記往復台30を前記Z軸方向に沿った方向に移動自在に支持するZ軸案内部(図示せず)と、前記ボーねじ27に螺合するとともに、前記往復台30の下面に固設されるボールナット28と、前記ボールねじ27の一方の端部に接続されるZ軸送りモータ26とから構成され、このZ軸送りモータ26によって駆動されるボールねじ27及びこれに螺合するボールナット28の作用により、前記往復台30をZ軸方向に移動させる。
【0073】
前記X軸送り装置31は、前記Z軸送り装置25と同様の構成を備えており、前記Z軸と直交する方向(紙面と直交する方向)であるX軸方向に前記刃物台32を移動させる。前記タレット33は、工具35を保持し、シフト機構34を介して前記刃物台32上に配設される。また、前記シフト機構34は、適宜アクチュエータを備えており、前記タレット33を、前記Z軸及びX軸の双方に直交する方向、即ち、矢示E方向(上下方向)に、予め設定された距離だけ上下動させる。
【0074】
前記制御装置40は、図6に示すように、プログラム解析部41、主軸モータ制御部42、シフト制御部43及び送りモータ制御部44を備えるが、図6には、その主だった構成のみ図示しており、当然のことながら、通常は、この他の構成も備えている。
【0075】
前記プログラム解析部41は、実行するNCプログラムを解析して、当該NCプログラム中に指定された主軸23の回転速度に関する指令を認識して、認識した指令を目標回転速度として前記主軸モータ制御部42に送信するとともに、前記各送り軸(X軸及びZ軸)に関する移動位置及び送り速度に関する指令を認識して、認識した指令を目標移動位置及び目標移動速度として前記送りモータ制御部44に送信する処理を行う。
【0076】
前記主軸モータ制御部42は、前記プログラム解析部41から前記主軸23の目標回転速度に係る指令を受信し、前記主軸23の回転速度が、該目標回転速度を基準として予め定められた振幅で、連続して変動するように、前記主軸モータ(図示せず)を制御する。尚、本例においても、主軸回転速度の変動は、図2(a)に示した三角波形状、図5(a)に示した正弦波形状、或いはその他の曲線波形、又は直線と曲線を組み合わせた波形に沿ったもので良く、周期的又は非周期的な変動であっても良い。
【0077】
前記送りモータ制御部44は、前記プログラム解析部41からX軸及びZ軸に関する目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信して、受信した指令に従って、対応する送り装置(X軸送り装置31及びZ軸送り装置25)を制御する。
【0078】
また、前記シフト制御部43は、前記送りモータ制御部44から制御信号を受信し、送りモータ制御部44が切削送りに係る制御を実行している場合には、前記主軸モータ制御部42による前記主軸モータ(図示せず)の制御に同期させて前記シフト機構34を制御し、少なくとも前記主軸モータ(図示せず)の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域(例えば、図2(a)及び図5(a)における時間帯域ta)、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域(例えば、図2(a)及び図5(a)における時間帯域tb)において、前記工具35を含むタレット33を前記シフト方向に移動させる。この具体的な動作態様としては、前記時間帯域taでは、所定速度で連続的に上昇するとともに、前記時間帯域tbでは、所定速度で連続的に降下するといった態様や、前記時間帯域ta及びtbにおいて、双方とも、所定速度で連続的に上下動するように動作させる態様が考えられる。
【0079】
尚、この例においても、シフト制御部43における制御と、前記主軸モータ制御部42における制御との同期は、例えば、主軸モータ制御部42によって実行される制御波形に係るデータを、シフト制御部43に記憶させておき、当該シフト制御部43では、記憶しているデータと、主軸モータ制御部42から入力される制御信号とを基に、主軸モータ制御部42での実行状態を認識し、その実行状態に合わせて前記シフト機構34を制御することによって実現することができる。
【0080】
以上の構成を備えた本例の工作機械20によれば、主軸23にワーク24を保持し、タレット33に工具35を装着した後、制御装置40による制御の下で、例えば、NCプログラムに従い主軸モータ(図示せず)、X軸送りモータ(図示せず)及びZ軸送りモータ26を適宜駆動することにより、ワーク24が加工される。
【0081】
そして、第1の実施形態と同様に、NCプログラムに従った加工の場合には、制御装置40のプログラム解析部41によりNCプログラムが解析されて、当該NCプログラム中に指定された主軸23の回転速度に関する指令、並びに前記各送り軸(X軸及びZ軸)に関する移動位置及び送り速度に関する指令が認識される。そして、プログラム解析部41は、認識された主軸回転速度を目標回転速度として前記主軸モータ制御部42に送信し、また、認識された各送り軸に関する移動位置及び送り速度を目標移動位置及び目標移動速度として前記送りモータ制御部44に送信する。
【0082】
前記主軸モータ制御部42は、前記プログラム解析部41から主軸23の目標回転速度に係る指令を受信すると、主軸23の回転速度が、上述した変動波形に沿って変動するように、主軸モータ(図示せず)を駆動,制御する。
【0083】
一方、前記送りモータ制御部44は、各送り軸に関する目標移動位置及び目標移動速度に係る指令を受信すると、受信した目標移動速度で前記工具35とワーク24とが相対的に目標移動位置に移動するように、対応する送り装置の送りモータを制御する。
【0084】
そして、前記送りモータ制御部44が切削送りに係る制御を実行している場合には、前記シフト制御部43は、前記主軸モータ制御部42による前記主軸モータ(図示せず)の制御に同期させて前記シフト機構34を制御し、前記主軸モータ(図示せず)の回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、及び極小値となる時点を含む所定の時間帯域において、前記工具35を含むタレット33を前記シフト方向(矢示E方向)に移動させる。
【0085】
斯くして、以上のように、主軸モータ(図示せず)及びシフト機構34を制御することで、加工中における自励びびり振動の発生を、従来に比べ、より効果的に抑制することができる。
【0086】
即ち、まず、主軸23の回転速度を、目標回転速度を基準として、所定の振幅で、周期的又は非周期的に連続的に変動させているので、主軸回転速度が極大値となる時点を含む所定の時間帯域、並びに極小値となる時点を含む所定時間帯域を除くその他の時間帯域においては、主軸回転速度が十分大きく変動しており、このため、工具35の刃部がワーク24を切削する切削速度(即ち、工具35に作用する切削抵抗)が大きく変動することになり、これにより再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性が喪失され、従来と同様に、自励びびり振動が抑制される。
【0087】
一方、前記所定の時間帯域においては、前記主軸23の回転速度は、曲線に沿った変動となるため、当該主軸回転速度の変動率はごく僅かなものとなるが、この時間帯域においては、前記工具35を主軸23の軸線と工具35の切り込み方向との双方に直交する方向(矢示E方向)、即ち、工具35の刃部による周方向の切削方向と一致する方向に、移動させるようにしたので、この移動によって、工具35の刃部による切削速度(即ち、工具に作用する切削抵抗)を変動させることができ、これにより再生効果の一要素である切削抵抗の変動の周期性が喪失され、この結果、自励びびり振動が抑制されることになる。
【0088】
斯くして、この工作機械及び加工方法によっても、従来に比べて、自励びびり振動をより効果的に抑制することができる。尚、工具35を矢示E方向に移動させる前記所定の時間帯域は、自励びびり振動を十分効果的に抑制することができるように、経験的に決定することができる。
【0089】
以上、本発明の具田的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら、これに限定され、制限されるものではない。
【符号の説明】
【0090】
1 工作機械
2 ベッド
3 X軸送り装置
4 X軸送りモータ
8 テーブル
9 ワーク
10 主軸
12 工具
13 主軸モータ
15 制御装置
17 主軸モータ制御部
18 送りモータ制御部
20 工作機械
21 ベッド
23 主軸
24 ワーク
25 Z軸送り装置
26 Z軸送りモータ
34 シフト機構
35 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9