【課題】複数のHD−SDI信号に音声信号を多重して伝送する際に、音声信号のチャンネル数が制限されず、また、音声信号を多重する装置及び音声信号を分離する装置を増やす必要がない。
【解決手段】多重装置1の移動部10は、グループ(1)(2)の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8を入力し、所定の移動規則に従って、HD−SDI信号1〜4からグループ(2)の音声パケットを抽出して音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動する。移動部10は、グループ(1)の音声信号のみが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ(2)の音声信号のみが多重されたHD−SDI信号5〜8を生成する。削除部11は、HD−SDI信号1〜8の補助データ領域内の所定領域を削除し、多重部12は、HD−SDI信号1〜8を多重し、多重信号を分離装置2へ送信する。
音声信号が多重されたHD−SDI信号、及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号をそれぞれ入力し、これらのHD−SDI信号に対し、補助データ領域内の所定領域を削除して多重し、多重信号を生成して送信する多重装置において、
所定の規則に従い、前記音声信号が多重されたHD−SDI信号の補助データ領域から前記音声信号の一部を抽出し、前記一部を除く音声信号が多重された第1−1のHD−SDI信号を生成すると共に、
前記音声信号の一部を、前記音声信号が多重されていないHD−SDI信号へ移動して当該HD−SDI信号の補助データ領域に格納し、前記音声信号の一部が多重された第2−1のHD−SDI信号を生成する移動部と、
前記移動部により生成された第1−1のHD−SDI信号の補助データ領域内において前記一部を除く音声信号が残るように、かつ、前記移動部により生成された第2−1のHD−SDI信号の補助データ領域内において前記音声信号の一部が残るように予め設定された前記所定領域を、前記第1−1のHD−SDI信号の補助データ領域から削除し、第1−2のHD−SDI信号を生成すると共に、前記所定領域を、第2−1のHD−SDI信号の補助データ領域から削除し、第2−2のHD−SDI信号を生成する削除部と、
前記削除部により生成された第1−2のHD−SDI信号及び第2−2のHD−SDI信号を多重し、前記多重信号を生成する多重部と、
を備えたことを特徴とする多重装置。
音声信号が多重されたHD−SDI信号、及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号をそれぞれ入力し、これらのHD−SDI信号に対し、補助データ領域内の所定領域を削除して多重し、多重信号を生成して送信する多重装置に搭載されるチップにおいて、
所定の規則に従い、前記音声信号が多重されたHD−SDI信号の補助データ領域から前記音声信号の一部を抽出し、前記一部を除く音声信号が多重された第1−1のHD−SDI信号を生成すると共に、
前記音声信号の一部を、前記音声信号が多重されていないHD−SDI信号へ移動して当該HD−SDI信号の補助データ領域に格納し、前記音声信号の一部が多重された第2−1のHD−SDI信号を生成する移動部と、
前記移動部により生成された第1−1のHD−SDI信号の補助データ領域内において前記一部を除く音声信号が残るように、かつ、前記移動部により生成された第2−1のHD−SDI信号の補助データ領域内において前記音声信号の一部が残るように予め設定された前記所定領域を、前記第1−1のHD−SDI信号の補助データ領域から削除し、第1−2のHD−SDI信号を生成すると共に、前記所定領域を、第2−1のHD−SDI信号の補助データ領域から削除し、第2−2のHD−SDI信号を生成する削除部と、
前記削除部により生成された第1−2のHD−SDI信号及び第2−2のHD−SDI信号を多重し、前記多重信号を生成する多重部と、
を備えたことを特徴とするチップ。
【背景技術】
【0002】
従来、SHVを遠隔地から生中継するために、SHVの映像信号(SHV信号)を非圧縮信号にて長距離伝送する伝送システムが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。この伝送システムでは、SHV信号は、光ファイバーを介して伝送される。
【0003】
例えば、DG方式(Dual Green方式)のSHV信号を伝送するためには、16本のHD−SDI(High Definition - Serial Digital Interface)信号が必要である。非特許文献1では、DG方式のSHV信号を伝送する16本のHD−SDI信号のうち4本のHD−SDI信号に対し、AES/EBUの規格に準じた音声信号が多重される。具体的には、4本のそれぞれのHD−SDI信号に対し、8チャンネルの音声信号が多重される。つまり、合計32チャンネルの音声信号が、DG方式のSHV信号を伝送する16本のHD−SDI信号のうち4本のHD−SDI信号に多重される。
【0004】
光ファイバー等の高いビットレートの信号を安定して伝送可能な伝送路では、16本のHD−SDI信号をそのまま伝送することができる。
【0005】
しかしながら、例えば120GHz帯無線伝送装置では、複数のHD−SDI信号を束ねた信号が、使用する部品の伝送ビットレートの上限を超えてしまうため、そのままでは伝送することができない。そこで、HD−SDI信号に含まれる補助データ領域の一部を削除してビットレートを低減し、その上限を超えないようにすることで、伝送を可能にしている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0006】
HD−SDI信号の補助データ領域には、音声信号が多重されている。このため、補助データ領域の一部を削除してビットレートを低減した場合には、映像信号に一切影響を与えることはないが、音声信号に影響を与えてしまう可能性がある。削除される補助データ領域の一部のデータ量によっては、音声信号も削除されてしまい、音声信号の品質に影響を与えてしまうことがあり得る。
【0007】
このように、使用する部品の伝送ビットレートの上限を超えないように、HD−SDI信号の補助データ領域の一部を削除する伝送システムにおいては、音声信号を伝送するチャンネル数に制約が生じる場合がある。以下、具体例を示して説明する。
【0008】
〔伝送システムの概要〕
まず、複数のHD-SDI信号を多重して伝送する伝送システムの概要について説明する。
図10は、複数のHD−SDI信号を多重して伝送する伝送システムの全体構成を示す概略図である。この伝送システムは、多重装置101及び分離装置102を備えて構成される。多重装置101により生成される多重信号は、伝送路103を介して分離装置102へ送信される。伝送路103は、例えば、光ファイバーを用いた有線伝送路または無線伝送路である。
【0009】
多重装置101は、複数のHD−SDI信号を入力し、複数のHD−SDI信号を多重して多重信号を生成し、多重信号を、伝送路103を介して分離装置102へ送信する。ここで、HD−SDI信号は、非特許文献3で規定される信号である。
【0010】
分離装置102は、多重装置101から伝送路103を介して多重信号を受信し、多重信号から元の複数のHD−SDI信号を分離し、複数のHD−SDI信号を出力する。
【0011】
ここで、多重装置101が複数のHD−SDI信号を多重した多重信号を分離装置102へ送信する際に、多重装置101に備えた出力I/Fに使用する部品につき上限ビットレートに制限があったり、伝送路103の上限ビットレートに制限があったりする。このような上限ビットレートの制限に対応するために、多重装置101は、入力したHD−SDI信号に含まれる補助データ領域の一部を削除することで、ビットレートを低減する。
【0012】
通常は、伝送システムにおける動作周波数の管理等を考慮して、多重装置101は、全系統のHD−SDI信号の補助データ領域につき、一律に同じデータサイズを削除することで、ビットレートを低減する。ある特定の系統のHD−SDI信号について、補助データ領域の一部を削除してビットレートを低減する手法もあるが、異なる動作周波数の系統に対する信号処理が煩雑になるため一般的ではない。
【0013】
図11は、HD−SDI信号において、音声信号が多重される領域を示す図である。
図11に示すように、音声信号は、HD−SDI信号におけるCb/Cr(色)データが伝送される色信号部分の補助データ領域に多重され、一部の音声信号は、Y(輝度)データが伝送される輝度信号部分の補助データ領域に多重される。したがって、HD−SDI信号の補助データ領域の一部を削除してビットレートを低減した場合、映像信号には一切影響を与えないが、音声信号に影響を与える可能性がある。
【0014】
図12は、
図10に示した伝送システムにおいて、複数の音声信号を多重する伝送システムの全体構成を示す概略図である。この伝送システムは、4台の音声多重装置111−1〜111−4、多重装置101、分離装置102及び4台の音声分離装置112−1〜112−4を備えて構成される。
図12に示すように、合計32チャンネルの音声信号が、4系統のHD−SDI信号の補助データ領域に多重される。つまり、8チャンネルの音声信号が、1系統のHD−SDI信号に多重される。
【0015】
ここで、音声信号は、AES(Audio Engineering Society:オーディオ技術者協会)音声の信号であり、すなわち、AES3−2003「AES standard for digital audio engineering - Serial transmission format for two-channel linearly represented digital audio data, 2003」の規格で規定されたデジタル音声信号である。
【0016】
音声多重装置111−1は、1系統目のHD−SDI信号を入力すると共に、8チャンネル分の音声信号(AESサブフレーム)を入力し、HD−SDI信号の補助データ領域に8チャンネル分の音声信号を多重し、音声信号を多重したHD−SDI信号を多重装置101に出力する。音声多重装置111−2,3,4は、2,3,4系統目のHD−SDI信号をそれぞれ入力し、音声多重装置111−1と同様に、音声信号を多重し、音声信号を多重したHD−SDI信号をそれぞれ多重装置101に出力する。多重装置101及び分離装置102は、
図10に示したものと同様である。
【0017】
音声分離装置112−1は、分離装置102から1系統目のHD−SDI信号を入力し、HD−SDI信号の補助データ領域から8チャンネル分の音声信号を分離し、音声信号が格納された領域にヌルデータを格納し、元のHD−SDI信号(音声信号が多重されていないHD−SDI信号)を生成する。そして、音声分離装置112−1は、8チャンネル分の音声信号を出力すると共に、元のHD−SDI信号を出力する。音声分離装置112−2,3,4は、分離装置102から2,3,4系統目のHD−SDI信号をそれぞれ入力し、音声分離装置112−1と同様に、8チャンネル分の音声信号を分離し、8チャンネル分の音声信号を出力すると共に、元のHD−SDI信号を出力する。
【0018】
尚、音声分離装置112−1〜112−4は、ユーザーの選択により、音声信号が格納された領域にヌルデータを格納することなく、音声信号が多重されたHD−SDI信号をそのまま出力する場合もある。
【0019】
図13は、音声多重装置111−1〜111−4(総称して音声多重装置111という。)、及び音声分離装置112−1〜112−4(総称して音声分離装置112という。)の処理を説明する図である。
【0020】
前述のとおり、音声多重装置111は、1系統のHD−SDI信号に8チャンネル分の音声信号を多重し、音声信号を多重したHD−SDI信号を出力する。ここで、8チャンネル分の音声信号のうち、第1チャンネルから第4チャンネルまでの音声信号をグループ(1)の音声信号とし、第5チャンネルから第8チャンネルまでの音声信号をグループ(2)の音声信号とする。
【0021】
音声多重装置111は、HD−SDI信号に対し、グループ単位に、1つのグループの音声信号を1つの音声パケットに多重する。具体的には、音声多重装置111は、グループ(1)の音声信号を音声パケットの所定領域に格納すると共に、グループ(1)である第1チャンネルから第4チャンネルまでの音声信号が格納されていることを示す(音声パケットの種類を識別するための)識別データ(DID:データID)を設定して音声パケットの所定領域に格納することで、音声パケットを生成する。また、音声多重装置111は、グループ(2)の音声信号を所定領域に格納すると共に、グループ(2)である第5チャンネルから第8チャンネルまでの音声信号が格納されていることを示す識別データを設定して所定領域に格納することで、音声パケットを生成する。
【0022】
そして、音声多重装置111は、HD−SDI信号の補助データ領域に、生成したグループ(1)の音声パケット及びグループ(2)の音声パケットをそれぞれ格納することで、HD−SDI信号に音声信号を多重する。
【0023】
このように、音声多重装置111は、HD−SDI信号に8チャンネル分の音声信号を多重する際に、4チャンネル分の音声信号毎に、当該4チャンネルの音声信号を1つの音声パケットに格納して多重する。4チャンネル分の音声信号とは、ステレオ2チャンネル分、すなわち、ステレオ1(L・R)及びステレオ2(L・R)である。
【0024】
前述のとおり、音声分離装置112は、1系統のHD−SDI信号から8チャンネル分の音声信号を分離する。具体的には、音声分離装置112は、HD−SDI信号の補助データ領域から2つの音声パケットを取り出し、音声パケットに格納された識別データ(DID)に基づいて、音声パケットに格納されている音声信号のグループ(1)(2)を特定する。
【0025】
そして、音声分離装置112は、特定したグループ(1)の音声パケットからグループ(1)(第1チャンネルから第4チャンネル)の音声信号を抽出すると共に、特定したグループ(2)の音声パケットからグループ(2)(第5チャンネルから第8チャンネル)の音声信号を抽出する。音声分離装置112は、音声パケットが格納されていた領域にヌルデータを格納し、音声信号が多重されていない元のHD−SDI信号を生成して出力する。尚、音声分離装置112は、ユーザーの選択により、音声信号が格納された領域にヌルデータを格納することなく、音声信号が多重されたHD−SDI信号をそのまま出力する場合もある。
【0026】
このように、音声分離装置112は、HD−SDI信号から8チャンネル分の音声信号を分離する際に、4チャンネル分の音声信号毎に、1つの音声パケットを取り出して分離する。
【0027】
尚、HD−SDI信号に音声信号を多重する手法及び分離する手法の詳細については、非特許文献5を参照されたい。
【0028】
図14は、
図10及び
図12に示した多重装置101により送信される多重信号のデータ構造を説明する図である。多重信号は、同期信号(sync)とHD−SDI信号のラインデータとを1組として、これらの信号が時分割で多重された構成になっている。多重信号を構成する同期信号(sync)は、多重装置101と分離装置102とが同期をとるための信号であり、各HD−SDI信号のラインデータの切り替えのタイミングで挿入される。また、多重信号を構成するHD−SDI信号のラインデータは、1ライン分の映像信号のデータである。
【0029】
ここで、
図12に示した伝送システムでは、32チャンネル分の音声信号について、8チャンネル毎の音声信号が、1系統目から4系統目までのHD−SDI信号の補助データ領域に多重される。すなわち、
図14に示すとおり、1系統目から4系統目までのHD−SDI信号(HD−SDI信号1〜4)に8チャンネル分の音声信号が含まれており、5系統目から8系統目までのHD−SDI信号(HD−SDI信号5〜8)には音声信号が含まれていない。
【0030】
図15は、HD−SDI信号に8チャンネル分の音声信号が多重された場合の、HD−SDI信号の1ライン分のデータにおける補助データ領域のデータ構造を示す図である。非特許文献5によれば、音声信号は、HD−SDI信号におけるCb/Cr(色)データが伝送される色信号部分の補助データ領域に多重され、一部の音声信号は、Y(輝度)データが伝送される輝度信号部分の補助データ領域に多重される。また、非特許文献5で規定されている1つの音声パケットのサイズは、31ワード(W)である。1ワードのデータサイズは10ビットである。
【0031】
第1チャンネルの音声信号(音声信号1)から第4チャンネルの音声信号(音声信号4)までのグループ(1)の音声信号が格納される音声パケットを音声パケット1、第5チャンネルの音声信号(音声信号5)から第8チャンネルの音声信号(音声信号8)までのグループ(2)の音声信号が格納される音声パケットを音声パケット2とする。
【0032】
図15に示すように、HD−SDI信号における映像信号の1ライン毎に用意されている補助データ領域に、1つまたは2つの音声パケット1が格納される。補助データ領域に1つの音声パケット1が格納される場合、その音声パケット1をグループ1の音声パケット1とし、補助データ領域に2つの音声パケット1が格納される場合、それぞれの音声パケット1を、グループ1の音声パケット1及びグループ1’の音声パケット1とする。音声パケット2についても同様に、補助データ領域に1つの音声パケット2が格納される場合、その音声パケット2をグループ2の音声パケット2とし、補助データ領域に2つの音声パケット2が格納される場合、それぞれの音声パケット2を、グループ2の音声パケット2及びグループ2’の音声パケット2とする。
【0033】
補助データ領域に音声パケット1,2が多重されるパターンとしては、パターン1〜4の4つがある。非特許文献4の既定により、スイッチングライン2本の直後にある2本のラインには、音声信号を多重することができない。そのため、多重されずに溜まっていた音声信号が、直後の映像信号に多重される。このタイミング前後において、音声パケット1,2が多重されるパターンが異なる。
【0034】
通常の状態では、音声信号はパターン1にて多重される。そして、非特許文献4で規定されるスイッチングライン2本の直後にある2本のラインでは、音声信号は多重されず、その後に、4つの音声パケット1,2を含むパターン4にて多重され、時間の経過と共に、3つの音声パケット1,2を含むパターン2またはパターン3にて多重され、そして、2つの音声パケット1,2を含むパターン1にて多重される。
【0035】
音声多重装置111は、パターン1の多重方式の場合、グループ1の音声信号1〜4を所定領域に格納すると共に、グループ(1)を示すDIDを所定領域に格納して音声パケット1を生成し、グループ2の音声信号5〜8を所定領域に格納すると共に、グループ(2)を示すDIDを所定箇所に格納して音声パケット2を生成する。そして、音声多重装置111は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット1及びグループ2の音声パケット2をこの順番に格納する。これにより、合計62ワードの音声パケット1,2がHD−SDI信号の補助データ領域に格納され、HD−SDI信号に音声信号が多重される。
【0036】
音声多重装置111は、パターン2の多重方式の場合、グループ1の音声信号1〜4及びグループ(1)のDIDを格納した音声パケット1を生成し、グループ2の音声信号5〜8及びグループ(2)のDIDを格納した音声パケット2を生成し、さらに、グループ1’の音声信号1〜4及びグループ(1)のDIDを格納した音声パケット1を生成する。そして、音声多重装置111は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット1、グループ2の音声パケット2及びグループ1’の音声パケット1をこの順番に格納する。これにより、合計93ワードの音声パケット1,2がHD−SDI信号の補助データ領域に格納され、HD−SDI信号に音声信号が多重される。
【0037】
音声多重装置111は、パターン3の多重方式の場合、グループ1の音声信号1〜4及びグループ(1)のDIDを格納した音声パケット1を生成し、グループ2の音声信号5〜8及びグループ(2)のDIDを格納した音声パケット2を生成し、さらに、グループ2’の音声信号5〜8及びグループ(2)のDIDを格納した音声パケット2を生成する。そして、音声多重装置111は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット1、グループ2の音声パケット2及びグループ2’の音声パケット2をこの順番に格納する。これにより、合計93ワードの音声パケット1,2がHD−SDI信号の補助データ領域に格納され、HD−SDI信号に音声信号が多重される。
【0038】
音声多重装置111は、パターン4の多重方式の場合、グループ1の音声信号1〜4及びグループ(1)のDIDを格納した音声パケット1を生成し、グループ2の音声信号5〜8及びグループ(2)のDIDを格納した音声パケット2を生成し、グループ1’の音声信号1〜4及びグループ(1)のDIDを格納した音声パケット1を生成し、さらに、グループ2’の音声信号5〜8及びグループ(2)のDIDを格納した音声パケット2を生成する。そして、音声多重装置111は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット1、グループ2の音声パケット2、グループ1’の音声パケット1及びグループ2’の音声パケット2をこの順番に格納する。これにより、合計124ワードの音声パケット1,2がHD−SDI信号の補助データ領域に格納され、HD−SDI信号に音声信号が多重される。
【0039】
多重される音声信号のデータ量が最大になるのは、パターン4の多重方式の場合である。パターン4の多重方式では、音声パケット1及び音声パケット2がそれぞれ2つ多重され、データ量は124ワードである。
【0040】
音声パケット1,2を多重する順番は、パターン1〜4に示したとおり、グループ(1)の1番目の音声パケット1(グループ1の音声パケット1)、及びグループ(2)の1番目の音声パケット2(グループ2の音声パケット2)を優先し、次に、グループ(1)の2番目の音声パケット1(グループ1’の音声パケット1)、及びグループ(2)の2番目の音声パケット2(グループ2’の音声パケット2)を優先する。
【0041】
図16は、HD−SDI信号の補助データ領域を120ワードに削減した場合のデータ構造を示す図である。
図12に示した多重装置101は、入力した各系統のHD−SDI信号の補助データ領域について、その一部を削除する。具体的には、多重装置101は、HD−SDI信号の補助データ領域内の148ワードを削除することで、268ワードを120ワードに削減し、120ワードの補助データ領域に縮小したHD−SDI信号を生成して送信する。これにより、多重装置101の出力I/Fに使用する部品の上限ビットレート、または伝送路103の上限ビットレートの制限に対応するために、HD−SDI信号のビットレートを低減することができる。
【0042】
ここで、
図15に示したパターン1〜3の多重方式の場合、多重対象の音声信号はそれぞれ62ワード、93ワード、93ワードであり、このサイズは補助データ領域のサイズである120ワード以下である。このため、多重対象の全ての音声信号、すなわち8チャンネル分の音声信号を伝送することができる。しかし、パターン4の多重方式の場合、多重対象の音声信号は124ワードであり、このサイズは補助データ領域のサイズである120ワードを超える。このため、多重対象の全ての音声信号のうち、グループ(2)の2番目の音声パケット2(グループ2’の音声パケット2)を伝送することができない。
【0043】
つまり、
図16に示すように、HD−SDI信号の補助データ領域が120ワードに削減された場合、1系統のHD−SDI信号につき、グループ(1)(2)の音声信号1〜8である8チャンネル分の音声信号を伝送することができず、グループ(1)の音声信号1〜4である4チャンネル分の音声信号しか伝送することができない。
【0044】
このように、HD−SDI信号の補助データ領域が削減されると、HD−SDI信号に多重可能な音声信号のチャンネル数が制限されてしまう。
図15及び
図16に示した例では、HD−SDI信号の補助データ領域を120ワードに削減した場合、伝送可能な音声信号のチャンネル数は、4チャンネルが最大となる。
【0045】
図17は、HD−SDI信号に32チャンネル分の音声信号を多重して伝送する伝送システムにおいて、HD−SDI信号の補助データ領域を120ワードに削減した場合の全体構成を示す概略図である。
【0046】
この伝送システムは、8台の音声多重装置113−1〜113−8(総称して音声多重装置113という。)、多重装置101、分離装置102及び8台の音声分離装置114−1〜114−8(総称して音声分離装置114という。)を備えて構成される。この伝送システムでは、
図15及び
図16に示したとおり、1系統のHD−SDI信号あたり4チャンネル分の音声信号しか伝送できない。このため、8台の音声多重装置113及び8台の音声分離装置114が必要となる。
図12に示した伝送システムは、4台の音声多重装置111及び4台の音声分離装置112を備えて構成される。
【0047】
したがって、HD−SDI信号の補助データ領域を削減する伝送システムにおいて、多重可能な音声信号のチャンネル数が制限されないように、HD−SDI信号に32チャンネル分の音声信号を多重して伝送するためには、
図17に示した伝送システムの構成のとおり、
図12に示した伝送システムよりも、2倍の台数の音声多重装置及び音声分離装置が必要となる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、複数のHD−SDI信号に音声信号を多重して伝送する際に、音声信号が多重されているHD−SDI信号の補助データ領域の削減に伴い、音声信号の一部を伝送できない場合、その音声信号の一部を、音声信号が多重されていないHD−SDI信号へ移動して伝送することを特徴とする。
【0065】
これにより、複数のHD−SDI信号に多重される全ての音声信号を伝送することができるから、音声信号のチャンネル数が制限されることがない。また、複数のHD−SDI信号に多重される全ての音声信号を伝送するために、
図17に示した伝送システムのように構成する必要がない。つまり、送信側では、音声信号を多重する装置を全系統に設ける必要がなく、受信側では、音声信号を分離する装置を全系統に設ける必要がないから、これらの装置を増やす必要がなく、コストを抑えることができる。
【0066】
〔送信側の多重システム〕
まず、送信側の多重システムについて説明する。
図1は、本発明の実施形態による多重装置を含む送信側の多重システムの構成を示すブロック図である。この多重システムは、4台の音声多重装置111−1〜111−4及び多重装置1を備えて構成され、8系統のHD−SDI信号に32チャンネルの音声信号を多重して伝送する。
【0067】
音声多重装置111−1〜111−4は、8系統のHD−SDI信号のうち、第1系統〜第4系統にそれぞれ設けられている。音声多重装置111−1〜111−4は、
図12及び
図13にて説明したとおり、HD−SDI信号をそれぞれ入力し、HD−SDI信号の補助データ領域に音声信号の音声パケットを格納することで、HD−SDI信号に音声信号を多重する。そして、音声多重装置111−1〜111−4は、音声信号を多重したHD−SDI信号を多重装置1に出力する。
【0068】
尚、音声多重装置111−1〜111−4は、
図12及び
図13にて既に説明済みであるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
多重装置1は、移動部10、削除部11及び多重部12を備えている。移動部10は、8系統のHD−SDI信号1〜8(音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8)を入力する。そして、移動部10は、所定の移動規則に従って、音声信号が多重された系統について、HD−SDI信号1〜4に多重された音声信号の一部を、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動し、音声信号が多重されていない系統について、HD−SDI信号5〜8に対し、移動してきた一部の音声信号を多重する。移動部10は、移動等の処理後のHD−SDI信号1〜8を削除部11に出力する。
【0070】
削除部11は、移動部10からHD−SDI信号1〜8を入力し、HD−SDI信号1〜8について、補助データ領域内の所定領域(多重された音声信号が残るように予め設定された領域)を削除して補助データ領域を削減する。つまり、HD−SDI信号1〜4では、多重された音声信号、すなわち音声信号の一部をHD−SDI信号5〜8へ移動した後の音声信号(移動した一部を除く音声信号)が残るように、HD−SDI信号5〜8では、多重された音声信号、すなわちHD−SDI信号1〜4から移動してきた一部の音声信号が残るように、所定領域が設定される。そして、削除部11は、HD−SDI信号1〜8の補助データ領域内の所定領域を削除したHD−SDI信号1〜8を生成し、これらのHD−SDI信号1〜8を多重部12に出力する。
【0071】
多重部12は、削除部11からHD−SDI信号1〜8を入力し、これらのHD−SDI信号1〜8を多重して多重信号を生成し、多重信号を分離装置2へ送信する。
【0072】
(移動部/多重装置)
次に、
図1に示した多重装置1の移動部10について詳細に説明する。
図2は、その移動部10の処理を説明する図である。この図は、32チャンネルの音声信号のうち1系統のHD−SDI信号では伝送不可能な第5チャンネル〜第8チャンネルの音声信号であるグループ2,2’の音声パケットを、音声信号が多重されているHD−SDI信号1から音声信号が多重されていないHD−SDI信号5へ移動する例を示している。
【0073】
移動部10が入出力するHD−SDI信号について、その補助データ領域(HANC領域)のサイズは268ワードである。そのうち、148ワードが後段の削除部11により削除されるから、多重装置1が送信するHD−SDI信号の補助データ領域のサイズは120ワードとなる。グループ1,1’,2,2’の音声パケットのサイズは、それぞれ31ワードである。
【0074】
移動部10は、HD−SDI信号1について、グループ2,2’の音声パケットをHD−SDI信号5へ移動し、その補助データ領域にグループ1,1’の音声パケットのみを格納した新たなHD−SDI信号1を生成する。そして、移動部10は、HD−SDI信号5について、その補助データ領域にグループ2,2’の音声パケットを格納した新たなHD−SDI信号5を生成する。
【0075】
同様に、移動部10は、HD−SDI信号2について、グループ2,2’の音声パケットをHD−SDI信号6へ移動し、その補助データ領域にグループ1,1’の音声パケットのみを格納した新たなHD−SDI信号2を生成する。そして、移動部10は、HD−SDI信号6について、その補助データ領域にグループ2,2’の音声パケットを格納した新たなHD−SDI信号6を生成する。
【0076】
同様に、移動部10は、HD−SDI信号3,4についても、グループ2,2’の音声パケットをHD−SDI信号7,8へ移動し、補助データ領域にグループ1,1’の音声パケットのみを格納した新たなHD−SDI信号3,4、及び補助データ領域にグループ2,2’の音声パケットを格納した新たなHD−SDI信号7,8をそれぞれ生成する。
【0077】
これにより、HD−SDI信号1〜4に32チャンネルの音声信号(グループ1,1’,2,2’の音声パケット)が多重されている場合に、グループ2,2’のパケットを、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動して伝送することができる。
【0078】
図3は、移動部10の処理を示すフローチャートであり、
図4は、移動部10の処理による音声信号の振り分け動作を説明する図である。
図4に示すように、HD−SDI信号1〜4において、ある特定の1ラインの補助データ領域には、
図15に示したパターン4の音声パケットが格納されているものとする。パターン4では、グループ1,1’,2,2’の4つの音声パケットが、268ワードの補助データ領域のうち、31×4=124ワードの領域に格納されている。
図16に示したとおり、後段の削除部11により、268ワードの補助データ領域のうち一部の領域(148ワードの領域)が削除され、補助データ領域は120ワードに縮小される。このため、合計124ワードの4つの音声パケットを全て伝送することができない。つまり、伝送可能な音声信号のチャンネル数が制限されてしまう。
【0079】
そこで、移動部10は、HD−SDI信号1〜8のうちのHD−SDI信号1〜4に32チャンネルの音声信号が多重されている場合、グループ2,2’のパケットを、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動する移動規則に従うものとする。グループ2,2’の音声パケットには、後段の削除部11により補助データ領域の一部が削除されることで伝送不可能な音声信号(音声信号5〜8である4チャンネル分の音声信号)が含まれる。移動部10は、この移動規則に従い、HD−SDI信号1〜4に含まれるグループ2,2’の2つの音声パケットを、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動する。これにより、伝送不可能な音声パケットは存在しないことになり、全ての音声パケットを伝送することができる。
【0080】
以下、
図3を参照して具体的に説明する。移動部10は、全系統のHD−SDI信号1〜8(音声信号(グループ1,1’,2,2’の音声パケット)が多重されたHD−SDI信号1〜4及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8)を入力する(ステップS301)。
【0081】
移動部10は、HD−SDI信号1〜4の各系統について、その補助データ領域から音声パケットを抽出する(ステップS302)。音声パケットには、音声パケットであることを示す識別子、及び、グループ(1)またはグループ(2)のグループを識別するための識別子(DID)が付加されている。前者の識別子に基づいて、音声パケットが特定され、後者の識別子(DID)に基づいて、音声パケットのグループが判別される。
【0082】
移動部10は、音声パケットに含まれる識別子(DID)に基づいて、音声パケットのグループを判別する(ステップS303)。これにより、音声パケット毎に、音声パケットがグループ(1)であるか、またはグループ(2)であるかが判別される。
【0083】
移動部10は、ステップS303にてグループ(2)の音声パケットであると判別した音声パケットを、音声信号が多重されていない対応するHD−SDI信号5〜8の系統へ移動し、その系統のHD−SDI信号5〜8の補助データ領域に、グループ(2)の音声パケットのみを多重する(ステップS304)。具体的には、移動部10は、
図2に示したHD−SDI信号5のように、補助データ領域について、HD−SDI信号1から移動してきたグループ2,2’の音声パケットを先頭から順番に詰めることで、隣り合って連続するように、グループ2,2’の音声パケットを格納する。これにより、対応するHD−SDI信号5〜8の系統に、グループ(2)の音声信号が多重され、グループ(2)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8が生成される。
【0084】
移動部10は、HD−SDI信号1〜4の補助データ領域について、グループ(1)の音声パケットのみを残し、グループ(2)の音声パケットを削除し(ヌルデータを格納し)、グループ(1)のみの音声パケットを詰める(ステップS305)。具体的には、移動部10は、
図2に示したHD−SDI信号1のように、補助データ領域内の全ての音声パケットを削除し(ヌルデータを格納し)、抽出したグループ1,1’の音声パケットのみを先頭から順番に詰めることで、隣り合って連続するように並べて補助データ領域に格納する。これにより、グループ(1)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4が生成される。
【0085】
移動部10は、グループ(1)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4を削除部11に出力する(ステップS306)。ステップS305及びステップS306の処理は、
図4に示すように、HD−SDI信号1〜4の系統について行われる。
【0086】
移動部10は、グループ(2)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を削除部11に出力する(ステップS307)。ステップS304の移動処理は、HD−SDI信号1〜4の系統について行われ、ステップS304の多重処理及びステップS307の処理は、
図4に示すように、HD−SDI信号5〜8の系統について行われる。
【0087】
図15を参照して、パターン1の場合を想定する。パターン1は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット及びグループ2の音声パケットが格納されている。移動部10は、当該系統のHD−SDI信号について、グループ2の音声パケットを、音声信号が多重されていない系統へ移動し、グループ1の音声パケットを残す。そして、移動部10は、音声信号が多重されていない系統のHD−SDI信号について、その補助データ領域に、移動してきたグループ2の音声パケットを格納する。これにより、グループ1の音声パケットが格納されたHD−SDI信号、及びグループ2の音声パケットが格納されたHD−SDI信号が生成される。
【0088】
パターン2の場合を想定する。パターン2は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット、グループ2の音声パケット及びグループ1’の音声パケットが格納されている。移動部10は、当該系統のHD−SDI信号について、グループ2の音声パケットを、音声信号が多重されていない系統へ移動し、グループ1,1’の音声パケットが隣り合うように、グループ1’の音声パケットをグループ1の音声パケット側へ詰めて、グループ1,1’の音声パケットを残す。そして、移動部10は、音声信号が多重されていない系統のHD−SDI信号について、その補助データ領域に、移動してきたグループ2の音声パケットを格納する。これにより、グループ1,1’の音声パケットが格納されたHD−SDI信号、及びグループ2の音声パケットが格納されたHD−SDI信号が生成される。
【0089】
パターン3の場合を想定する。パターン3は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット、グループ2の音声パケット及びグループ2’の音声パケットが格納されている。移動部10は、当該系統のHD−SDI信号について、グループ2,2’の音声パケットを、音声信号が多重されていない系統へ移動し、グループ1の音声パケットを残す。そして、移動部10は、音声信号が多重されていない系統のHD−SDI信号について、その補助データ領域に、移動してきたグループ2,2’の音声パケットを格納する。これにより、グループ1の音声パケットが格納されたHD−SDI信号、及びグループ2,2’の音声パケットが格納されたHD−SDI信号が生成される。
【0090】
パターン4の場合を想定する。パターン4は、HD−SDI信号の補助データ領域に、グループ1の音声パケット、グループ2の音声パケット、グループ1’の音声パケット及びグループ2’の音声パケットが格納されている。移動部10は、当該系統のHD−SDI信号について、グループ2,2’の音声パケットを、音声信号が多重されていない系統へ移動し、グループ1,1’の音声パケットが隣り合うように、グループ1’の音声パケットをグループ1の音声パケット側へ詰めて、グループ1,1’の音声パケットを残す。そして、移動部10は、音声信号が多重されていない系統のHD−SDI信号について、その補助データ領域に、移動してきたグループ2,2’の音声パケットを格納する。これにより、
図2に示したとおり、グループ1,1’の音声パケットが格納されたHD−SDI信号、及びグループ2,2’の音声パケットが格納されたHD−SDI信号が生成される。
【0091】
以上のように、本発明の実施形態による多重装置1によれば、移動部10は、グループ(1)(2)の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8を入力し、所定の移動規則に従って、HD−SDI信号1〜4から一部の音声信号を分離することで、補助データ領域からグループ(2)の音声パケットを抽出し、グループ(2)の音声パケットを、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動するようにした。そして、移動部10は、グループ(1)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ(2)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号5〜8を生成する。
【0092】
削除部11は、移動部10によりグループ(1)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ(2)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号5〜8について、補助データ領域内の所定領域(音声信号が多重されていない領域)を削除するようにした。そして、多重部12は、削除部11により補助データ領域内の所定領域が削除されたHD−SDI信号1〜8を多重して多重信号を生成し、多重信号を後述の分離装置2へ送信するようにした。
【0093】
このように、多重装置1に備えた出力I/Fに使用する部品につき上限ビットレートの制限等により多重信号のビットレートが制限されることに対応するため、削除部11により、HD−SDI信号1〜8に含まれる補助データ領域内の所定領域が削除される。この場合、1系統のHD−SDI信号では音声信号のチャンネル数が制限されるが、移動部10は、音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4の音声信号の一部を、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動するようにした。これにより、音声信号のチャンネル数は制限されることがなく、多重対象の全ての音声信号を伝送することができる。
【0094】
また、多重対象の全ての音声信号を伝送するために、
図17に示した伝送システムのとおり、従来技術では、全ての系統(8系統)に音声多重装置113及び音声分離装置114を設ける必要があり、
図12に示した伝送システムに比べて2倍の装置が必要であった。これに対し、本発明の実施形態では、
図12に示した従来技術と同様に、4系統のみに音声多重装置111及び音声分離装置112を設ければよいから、その台数を増やす必要がなく、コストを抑えることができる。
【0095】
〔受信側の分離システム〕
次に、受信側の分離システムについて説明する。
図5は、本発明の実施形態による分離装置を含む受信側の分離システムの構成を示すブロック図である。この分離システムは、分離装置2及び4台の音声分離装置112−1〜112−4を備えて構成され、HD−SDI信号1〜8から32チャンネルの音声信号を分離する。
【0096】
分離装置2は、分離部20、復元部21及び移動部22を備えている。分離部20は、多重装置1により送信された多重信号を受信し、多重信号からHD−SDI信号1〜8を分離する。そして、分離部20は、HD−SDI信号1〜8を復元部21に出力する。
【0097】
復元部21は、分離部20からHD−SDI信号1〜8を入力し、HD−SDI信号1〜8の補助データ領域内の所定領域を復元し、所定領域が復元したHD−SDI信号1〜8を生成して移動部22に出力する。
図2に示した例では、復元部21は、HD−SDI信号1〜8における120ワードの補助データ領域に、多重装置1の削除部11により削除された148ワードの領域を追加挿入(148ワードのヌルデータを追加挿入)する。
【0098】
移動部22は、復元部21からHD−SDI信号1〜8を入力し、所定の移動規則に従って、元々は音声信号が多重されておらず多重装置1の移動処理にて音声信号が多重されたHD−SDI信号5〜8から音声信号を抽出し、抽出した音声信号を、元々は音声信号が多重されており多重装置1にて音声信号の一部が抽出されたHD−SDI信号1〜4へ移動する。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4について、HD−SDI信号1〜4に格納された音声信号及び移動してきた音声信号を元の順番に並び替える。そして、移動部22は、多重装置1の移動部10が入力するHD−SDI信号1〜8の補助データ領域と同じデータ構造になるように、音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8を生成して出力する。
【0099】
音声分離装置112−1〜112−4は、8系統のHD−SDI信号のうち、第1系統〜第4系統にそれぞれ設けられている。音声分離装置112−1〜112−4は、
図12及び
図13にて説明したとおり、分離装置2からHD−SDI信号1〜4をそれぞれ入力し、HD−SDI信号1〜4の補助データ領域から音声信号の音声パケットを抽出することで、HD−SDI信号から音声信号を分離する。
【0100】
尚、音声分離装置112−1〜112−4は、
図12及び
図13にて既に説明済みであるから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
(移動部/分離装置)
次に、
図5に示した分離装置2の移動部22について詳細に説明する。
図6は、移動部22の処理を示すフローチャートであり、
図7は、移動部22の処理による音声信号の復元動作を説明する図であり、
図4に示した多重装置1の移動部10の処理による音声信号の振り分け動作に対応している。
【0102】
多重装置1の移動部10では、HD−SDI信号の補助データ領域の一部が削除されることに伴って伝送不可能なグループ2,2’の音声パケット(音声信号5〜8の音声パケット)を、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8へ移動する。分離装置2の移動部22は、多重装置1の移動部10に対して逆の処理を行う。つまり、移動部22は、移動部10が用いた移動規則に対して逆の移動規則に従って、音声パケットを元の系統へ移動しHD−SDI信号を元の状態に復元する。
【0103】
以下、
図6を参照して具体的に説明する。移動部22は、復元部21から、グループ(1)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ(2)の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を入力する(ステップS601)。
【0104】
移動部22は、HD−SDI信号5〜8からグループ(2)の音声パケットを抽出し(ステップS602)、抽出したグループ(2)の音声パケットを元の系統であるHD−SDI信号1〜4へ移動する(ステップS603)。
【0105】
移動部22は、元の系統であるHD−SDI信号1〜4について、そのHD−SDI信号1〜4の補助データ領域に格納されたグループ(1)の音声パケットを抽出し、グループ(1)の音声パケット及び移動してきたグループ(2)の音声パケットを元の順番に並び替え、並び替えた後のグループ(1)(2)の音声パケットを補助データ領域に格納する(ステップS604)。これにより、HD−SDI信号1〜4の補助データ領域は、元の順番のグループ(1)(2)の音声パケットが格納された状態となり、グループ(1)(2)の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4が生成される。
【0106】
移動部22は、HD−SDI信号5〜8の補助データ領域に格納されたグループ(2)の音声パケットを削除し、その領域にヌルデータを格納する。これにより、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8が生成される。
【0107】
移動部22は、音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4を音声分離装置112−1〜112−4に出力し、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8を出力する(ステップS605)。
【0108】
図15に示したパターン1の場合を想定する。移動部22は、グループ1の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ2の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を入力し、HD−SDI信号5〜8からグループ2の音声パケットを抽出してHD−SDI信号1〜4へそれぞれ移動する。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4について、その補助データ領域に格納されたグループ1の音声パケット、及び移動してきたグループ2の音声パケットを、元のグループ1,2の順番に並べる。また、移動部22は、HD−SDI信号5〜8について、補助データ領域に格納されたグループ2の音声パケットの領域にヌルデータを格納する。これにより、グループ1,2の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8が生成され、元のHD−SDI信号1〜8が復元される。
【0109】
パターン2の場合を想定する。移動部22は、グループ1,1’の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ2の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を入力し、HD−SDI信号5〜8からグループ2の音声パケットを抽出してHD−SDI信号1〜4へそれぞれ移動する。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4について、その補助データ領域に格納されたグループ1,1’の音声パケット、及び移動してきたグループ2の音声パケットを、元のグループ1,2,1’の順番に並び替える。また、移動部22は、HD−SDI信号5〜8について、補助データ領域に格納されたグループ2の音声パケットの領域にヌルデータを格納する。これにより、グループ1,2,1’の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8が生成され、元のHD−SDI信号1〜8が復元される。
【0110】
パターン3の場合を想定する。移動部22は、グループ1の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ2,2’の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を入力し、HD−SDI信号5〜8からグループ2,2’の音声パケットを抽出してHD−SDI信号1〜4へそれぞれ移動する。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4について、その補助データ領域に格納されたグループ1の音声パケット、及び移動してきたグループ2,2’の音声パケットを、元のグループ1,2,2’の順番に並び替える。また、移動部22は、HD−SDI信号5〜8について、補助データ領域に格納されたグループ2,2’の音声パケットの領域にヌルデータを格納する。これにより、グループ1,2,2’の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8が生成され、元のHD−SDI信号1〜8が復元される。
【0111】
パターン4の場合を想定する。移動部22は、グループ1,1’の音声パケットが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ2,2’の音声パケットが多重されたHD−SDI信号5〜8を入力し、HD−SDI信号5〜8からグループ2,2’の音声パケットを抽出してHD−SDI信号1〜4へそれぞれ移動する。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4について、その補助データ領域に格納されたグループ1,1’の音声パケット、及び移動してきたグループ2,2’の音声パケットを、元のグループ1,2,1’,2’の順番に並び替える。また、移動部22は、HD−SDI信号5〜8について、補助データ領域に格納されたグループ2,2’の音声パケットの領域にヌルデータを格納する。これにより、グループ1,2,1’,2’の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び、音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8が生成され、元のHD−SDI信号1〜8が復元される。
【0112】
以上のように、本発明の実施形態による分離装置2によれば、分離部20は、多重装置1により送信された多重信号を受信し、多重信号からHD−SDI信号1〜8を分離し、復元部21は、HD−SDI信号1〜8について、補助データ領域内の所定領域を復元するようにした。
【0113】
移動部22は、HD−SDI信号1〜8(グループ(1)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号1〜4及びグループ(2)の音声パケットのみが多重されたHD−SDI信号5〜8)について、所定の移動規則(多重装置1の移動部10が用いた移動規則とは逆の移動規則)に従って、HD−SDI信号5〜8からグループ(2)の音声パケットを抽出し、グループ(2)の音声パケットを、元のHD−SDI信号1〜4へ移動するようにした。そして、移動部22は、HD−SDI信号1〜4に格納されたグループ(1)の音声パケット、及び移動してきたグループ(2)の音声パケットを元の順番に並び替える。そして、移動部22は、多重装置1の移動部10が入力するHD−SDI信号1〜8の補助データ領域と同じデータ構造になるように、音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及び音声信号が多重されていないHD−SDI信号5〜8を生成して出力する。
【0114】
これにより、音声信号のチャンネル数が制限されることなく、多重対象の全ての音声信号を受信して復元することができる。また、4系統のみに音声多重装置111及び音声分離装置112を設ければよいから、音声多重装置111及び音声分離装置112の台数を増やす必要がなく、コストを抑えることができる。
【0115】
前記本発明の実施形態では、HD−SDI信号1〜8について、268ワードの補助データ領域を120ワードの補助データ領域に削減する例を挙げて説明した。多重装置1から分離装置2へ送信されるHD−SDI信号1〜8の補助データ領域のサイズは120ワードであり、このうちの57ワードの領域を用いて誤り訂正符号を伝送する仕組みの開発が進められている。この場合、音声信号を多重可能な補助データ領域のサイズは、63ワードにさらに縮小される。本発明の実施形態では、2つの音声パケットを伝送可能な31×2=62ワードの領域が確保されればよいから、この場合も音声信号を多重することができる。つまり、本発明の実施形態では、HD−SDI信号の補助データ領域を用いて、音声信号に加え、誤り訂正符号も伝送することができる。
【0116】
〔DG方式のSHV信号を伝送する伝送システム〕
次に、
図1〜
図7に示した伝送システムを、前述の非特許文献2に記載の伝送システムに適用した例について説明する。
図8は、非特許文献2に記載の伝送システムである、DG方式のSHV信号を伝送する伝送システムの全体構成を示す概略図である。この伝送システムは、多重装置3−1,3−2及び分離装置4−1,4−2を備えて構成され、16本のHD−SDI信号で構成されるDG方式のSHV信号について、8本のHD−SDI信号をそれぞれ多重した2本の多重信号を伝送する。多重装置3−1により生成される多重信号は、伝送路103を介して分離装置4−1へ送信され、多重装置3−2により生成される多重信号は、伝送路103を介して分離装置4−2へ送信される。
【0117】
図9は、
図8に示した伝送システムにおいて、複数の音声信号を多重してDG方式のSHV信号を伝送する伝送システムの全体構成を示す概略図である。この伝送システムは、4台の音声多重装置111−1〜111−4、2台の多重装置3−1,3−2、2台の分離装置4−1,4−2及び4台の音声分離装置112−1〜112−4を備えて構成される。音声信号は、HD−SDI信号1〜4の補助データ領域に多重されて伝送される。
図9に示すように、合計32チャンネルの音声信号が4系統のHD−SDI信号1〜4の補助データ領域に多重される。つまり、8チャンネルの音声信号が1系統のHD−SDI信号1〜4のそれぞれに多重される。
【0118】
音声多重装置111−1〜111−4及び音声分離装置112−1〜112−4は、前述のとおりであるから、説明を省略する。また、多重装置3−1は、
図1に示した多重装置1と同様であり、分離装置4−1は、
図5に示した分離装置2と同様であるから、説明を省略する。
【0119】
多重装置3−2は、
図1に示した多重装置1の移動部10、削除部11及び多重部12のうち、削除部11及び多重部12のみを備えている。多重装置3−2の削除部11は、HD−SDI信号9〜16を入力して補助データ領域内の所定領域を削除する。多重部12は、削除部11からHD−SDI信号9〜16を入力し、これらを多重して多重信号を生成し、多重信号を分離装置4−2へ送信する
【0120】
分離装置4−2は、
図5に示した分離装置2の分離部20、復元部21及び移動部22のうち、分離部20及び復元部21のみを備えている。分離装置4−2の分離部20は、多重装置3−2により送信された多重信号を受信してHD−SDI信号9〜16を分離する。復元部21は、分離部20からHD−SDI信号9〜16を入力し、これらの補助データ領域内の所定領域を復元する。
【0121】
以上のように、
図8及び
図9に示した、DG方式のSHV信号を伝送する伝送システムによれば、本発明の実施形態による多重装置1及び分離装置2と同様の効果を奏する。
【0122】
尚、本発明の実施形態は、高精細映像及び高品質な音声信号を有線伝送または無線伝送する場合に有用である。
【0123】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。前記実施形態において、音声信号はAES音声の信号だけでなく、圧縮された音声信号等の他の音声信号にも適用がある。
【0124】
また、前記実施形態では、HD−SDI信号1〜8のうち、HD−SDI信号1〜4にグループ(1)(2)の音声信号が多重されており、HD−SDI信号5〜8には音声信号が多重されていない場合に、多重装置1の移動部10は、HD−SDI信号1のグループ(2)の音声信号をHD−SDI信号5へ移動し、HD−SDI信号2〜4のグループ(2)の音声信号をHD−SDI信号6〜8へそれぞれ移動する移動規則に従うようにした。これに対し、移動部10は、HD−SDI信号1〜4からHD−SDI信号5,7,6,8へそれぞれ移動したり、HD−SDI信号1〜4からHD−SDI信号8,7,6,5へそれぞれ移動したり等、移動元の系統及び移動先の系統について異なる組み合わせとする移動規則に従うようにしてもよい。
【0125】
また、移動部10は、HD−SDI信号1〜4から抽出したグループ(2)(グループ2,2’)の音声信号をHD−SDI信号5〜8へ移動する移動規則ではなく、グループ1’,2’の音声信号をHD−SDI信号5〜8へ移動する移動規則に従うようにしてもよい。この場合、移動部10は、グループ1,1’の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及びグループ2,2’が多重されたHD−SDI信号5〜8を生成する代わりに、グループ1,2の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、及びグループ1’,2’が多重されたHD−SDI信号5〜8を生成する。
【0126】
また、移動部10は、
図15に示したパターン1のHD−SDI信号については移動を行わず、パターン2〜4のHD−SDI信号について、グループ(2)等の音声信号を音声信号が多重されていないHD−SDI信号へ移動する移動規則に従うようにしてもよい。
【0127】
また、移動部10は、
図15に示したパターン1〜3のHD−SDI信号については移動を行わず、パターン4のHD−SDI信号について、グループ2’の音声信号を、音声信号が多重されていないHD−SDI信号へ移動する移動規則に従うようにしてもよい。
【0128】
また、例えば、多重装置1の削除部11により補助データ領域が60ワードに削減される場合には、1系統のHD−SDI信号にて、1つの音声パケットしか伝送することができない。このような制限があり、多重装置1が入力する複数のHD−SDI信号のうち、音声信号が多重されていないHD−SDI信号が多数存在する場合、例えば
図8及び
図9に示したように、音声信号が多重されたHD−SDI信号が4系統存在し、音声信号が多重されていないHD−SDI信号が12系統存在する場合には、音声信号が多重されていないHD−SDI信号の全ての系統を利用する。
【0129】
具体的には、移動部10は、HD−SDI信号1に多重された音声信号の移動先をHD−SDI信号5〜7とし、HD−SDI信号2〜4に多重された音声信号の移動先をそれぞれHD−SDI信号8〜10,11〜13,14〜16とし、HD−SDI信号1〜4について、グループ1の音声信号のみを残し、グループ1’ の音声信号をそれぞれHD−SDI信号5,8,11,14へ移動し、グループ2の音声信号をそれぞれHD−SDI信号6,9,12,15へ移動し、グループ2’ の音声信号をそれぞれHD−SDI信号7,10,13,16へ移動する移動規則に従うようにしてもよい。移動部10は、グループ1の音声信号が多重されたHD−SDI信号1〜4、グループ1’が多重されたHD−SDI信号5,8,11,14、グループ2の音声信号が多重されたHD−SDI信号6,9,12,15、及びグループ2’の音声信号が多重されたHD−SDI信号7,10,13,16を生成する。これは、HD−SDI信号について、268ワードの補助データ領域を、32ワードから267ワードまでのいずれかのサイズの補助データ領域に削減する場合に適用がある。
【0130】
これらの場合はいずれも、分離装置2の移動部22は、多重装置1の移動部10が用いる移動規則とは逆の移動規則を用いる。多重装置1の移動部10が用いる移動規則は、音声信号が多重された系統の音声信号の一部(多重装置1の削除部11により補助データ領域の一部が削除されることにより、伝送不可能となる音声信号)を、音声信号が多重されていない系統へ移動する規則が定義されていればよい。
【0131】
また、前記実施形態では、HD−SDI信号について、268ワードの補助データ領域を120ワードの補助データ領域に削減する例を挙げて説明したが、62ワード以上123ワード以下の補助データ領域に削減する場合についても適用があり、124ワード以上267ワード以下の補助データ領域に削減する場合についても適用がある。要するに、削減後の補助データ領域のサイズは、31ワードの音声パケットを少なくとも2つまたは3つ伝送可能なサイズであればよい。
【0132】
また、前記実施形態において、
図1に示した多重装置1の移動部10、削除部11及び多重部12の各構成部の処理は、多重装置1に搭載される集積回路であるLSIのチップにより実現されるようにしてもよい。これらは、個別に1チップ化されていてもよいし、これらの一部または全部が1チップ化されていてもよい。
【0133】
また、LSIの代わりに、集積度の異なるVLSI、ULSI等のチップにより実現されるようにしてもよい。さらに、LSI等のチップに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いるようにしてもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いるようにしてもよい。
図5に示した分離装置2の分離部20、復元部21及び移動部22の各構成部の処理についても同様であり、分離装置2に搭載されるチップにより実現される。