特開2016-171143(P2016-171143A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-171143(P2016-171143A)
(43)【公開日】2016年9月23日
(54)【発明の名称】電子部品封止用キャップ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20160826BHJP
【FI】
   H01L23/02 B
   H01L23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-48786(P2015-48786)
(22)【出願日】2015年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】園田 定敏
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 拓成
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 兼一
(57)【要約】
【課題】パッケージ封止用のキャップであって、ろう材を融着する際の濡れ性が良好であり、封止作業時に再融解したろう材の過度の濡れ広がりを抑制できるものを提供する。
【解決手段】本発明は、ベースと接合することで封止領域を有するパッケージを製造するための電子部品用のキャップにおいて、ろう材を融着するろう材融着面と、前記封止領域に対応する封止面とを有し、 前記ろう材融着面は、塑性加工により形成された平坦ではない被加工面を有し、前記ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)が、1<Sc/Sf≦1.6であることを特徴とする電子部品用のキャップである。被加工面の断面形状としては、溝形状・略V字形状・円弧形状等、各種形状にすることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと接合することで、封止領域を有するパッケージを製造するための電子部品用のキャップにおいて、
ろう材を融着するろう材融着面と、前記封止領域に対応する封止面とを有し、
前記ろう材融着面は、塑性加工により形成された平坦ではない被加工面を有し、
前記ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)が、1<Sc/Sf≦1.6であることを特徴とする電子部品用のキャップ。
【請求項2】
被加工面の断面形状が、平坦面から突出した溝を有する形状となっている請求項1記載の電子部品用のキャップ。
【請求項3】
被加工面の断面形状が、両端から中央に向けて下方に下がる略V字形状となっている請求項1記載の電子部品用のキャップ。
【請求項4】
被加工面の断面形状が、両端から中央に向けて下方に張り出した円弧形状となっている請求項1記載の電子部品用のキャップ。
【請求項5】
被加工面として、上方に突出する凸部又は下方に突出する凹部の少なくともいずれかが1以上形成されている請求項1記載の電子部品用のキャップ。
【請求項6】
ろう材融着面にAu系ろう材を融着してなる請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子部品用のキャップ。
【請求項7】
平板形状を有し、その4辺に沿って枠状のろう材融着面が設定されている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子部品用のキャップ。
【請求項8】
キャビティが形成された箱形状を有し、その端面に沿って枠状のろう材融着面が設定されている請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子部品用のキャップ。
【請求項9】
キャビティを形成するキャップ本体と、その端部に形成されたフランジ部とからなり、前記フランジの端面に沿って枠状のろう材融着面が設定されている請求項8記載の電子部品用のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品のパッケージ製造に用いられるキャップ(蓋体)に関する。特に、封止時にろう材の過度の濡れ広がりを抑制することができ、また、ろう材を融着固定する際の金メッキ量を低減することを可能とした封止用キャップを提供する。
【背景技術】
【0002】
SAWフィルタ、FBARフィルタ、水晶振動子等の電子デバイスの多くは、素子機能部保護のため気密封止されたパッケージの形態で供給される。この封止パッケージの構成としては、素子を載置・固定するベースに蓋体となるキャップを被せて封止構造を形成したものが一般的である。
【0003】
封止パッケージのベース及びキャップの形状については、キャビティを有する容器状のベースに平板状のキャップを組み合わせたものが多い。最近では、これとは逆にキャップの方にキャビティを形成し、平板状のベースに素子を固定しキャップを接合する構造も報告されている。このキャップにキャビティを形成する構成は、ベースへの素子固定のプロセスを効率的にして、デバイスのコスト低減に寄与することができることから、近年注目されている形態である。
【0004】
キャップとベースとの接合は、パッケージ内部の気密性確保のためろう材による接合が有用である。このろう材としては、信頼性、耐食性等の理由からAu系ろう材(例えば、Au−Sn系ろう材)が使用されることが多い。ろう材を適用するパッケージ封止においては、キャップに予めろう材を融着して固定し、封止作業時にベースにキャップを被せ、ろう材を再度融解して接合を行う。図1は、キャップとベースを適用するパッケージの製造工程を説明するものである。
【0005】
図2は、パッケージ封止の前に、ろう材をキャップに融着・固定する工程を説明するものである。平板キャップもキャビティ付キャップも、パッケージの仕様を考慮したろう材融着面が設定されている。通常、平板キャップであればその四辺に沿って枠状のろう材融着面が設定される(図2(a))。また、キャビティ付キャップはその端面に枠状のろう材融着面が設定される(図2(b))。キャビティ付キャップは、キャビティを形成するキャップ本体の端面が曲げられ鍔状のフランジ部が形成されているが、このフランジ面をろう材融着面とする。
【0006】
これらのろう材融着面に枠状のろう材(Au系ろう材)を融着して固定するが、その前に、キャップ表面にAuメッキを施すのが一般的である。これは、キャップの材質(コバール(Fe−Ni−Co系合金)、42アロイ(Fe−Ni系合金)等が使用される)を考慮したものである。即ち、溶融したAu系ろう材は、濡れ性が悪く融解したときに枠形状が崩れる可能性が有るため、キャップ表面の濡れ性を確保するためにAuメッキを施している。また、コバールの酸化を防ぐため、Auメッキの前にNiメッキを施すこともある。そして、このようにしてメッキ処理を行った上でろう材を融着している。
【0007】
ところで、以上のようにして用意された封止用キャップを用いてパッケージ封止を行う際に注視すべき点として、封止領域へのろう材の流れ込みの抑制が挙げられる。封止時にはろう材は再度融解するが、その際、ろう材が濡れ広がりベースの素子載置面に流れ込むことがある。ろう材が流れ込んで素子に接触することは、素子のダメージに繋がることから好ましいものではない。
【0008】
封止時のろう材の濡れ広がりを考慮した封止用のキャップとしては、例えば、特許文献1記載のキャップ(リッド)がある。このキャップは、平板のキャップに関するものであるが、Niメッキ及びAuメッキを行い枠状のろう材を融着したキャップを研磨媒体と共に容器に収容し、容器を揺動して研磨を行って製造される。この研磨によりキャップの内側のAuメッキの大部分が剥離し、残留する微量のAuとNiメッキとが合金化する。Ni合金に対してはAu系ろう材は濡れ性が良くないので、ろう材の流れ広がりを制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−226064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようなキャップ表面のAuメッキの剥離は、ろう材の濡れ広がりの問題に対して一応の効果はある。しかし、この手法は板状のキャップには有用と思われるが、深さのあるキャビティ付のキャップには有効ではない。キャビティの側面部分のような段差には十分な研磨がなされないと予測されるからである。
【0011】
また、上記のような一旦メッキしたAuを剥離するのは、資源節約の観点から好ましい手法とは言い難い。ここで、Auメッキについては、この資源節約という別の観点からの課題が指摘されている。Auは貴金属であり高価な金属である。近年のコストダウンの要請からすれば、Auメッキの量はできるだけ少量で済ませたいところである。しかし、融解したろう材に対して濡れ性を発揮させるためには、キャップ表面に一定量以上のAuが必要である。従って、安易にメッキ量を減らすことはできない。
【0012】
本発明は、上記のような背景の下になされたものであり、パッケージ封止用のキャップについて、Au系ろう材を融着する際には好適な濡れ性を発揮することができる一方、封止作業時に再融解したろう材の濡れ広がりを抑制することができるものを提供する。この効果はキャップの形態を問わずに発揮されるものである。また、これと同時に、Auメッキを行う場合のメッキ量を従来よりも低減することができるキャップを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、ベースと接合することで、封止領域を有するパッケージを製造するための電子部品用のキャップにおいて、ろう材を融着するろう材融着面と、前記封止領域に対応する封止面とを有し、前記ろう材融着面は、塑性加工により形成された平坦ではない被加工面を有し、前記ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)が、1<Sc/Sf≦1.6であることを特徴とする電子部品用のキャップである。
【0014】
本発明に係る電子部品用のキャップは、ろう材を融着する面(ろう材融着面)を平坦面から立体的なものへと変化させている。このようなろう材融着面に立体的な加工面を付与することで、融着されたろう材が再融解したときの流れを制御して封止面まで濡れ広がることが防止される。
【0015】
また、本発明は、ろう材融着面に立体的な被加工面を付与することで、当該領域の表面積を封止領域の表面積よりも大きくしている。表面積の増大は、Auメッキしたときに付着するAu質量の増加に繋がる。つまり、ろう材融着面のAu質量が封止面のAu質量よりも多い状態を形成することとなる。この点、従来の封止用キャップでは全面的に等しいAu量のメッキがなされていたが、本来、Auは必要な箇所(ろう材融着面)に必要な量がメッキされていれば足りる。本発明では、表面積に勾配をつけてろう材融着面にAuメッキ量を増加させることで、他の箇所に対して優先的にろう材濡れ性が充足されるようにしている。これにより、従来よりも早いタイミングでAuメッキ処理を完遂することができ、Au使用量の低減を図っている。
【0016】
この表面積の勾配について、本発明では、ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)について、1<Sc/Sf≦1.6とする。この単位面積とは、ろう材融着面及び封止領域についての水平投影面積を基準とする。そして、本発明では両部位の表面積比(Sc/Sf)を1より大きい値とする。これにより上記したろう材の濡れ広がり抑制作用やAuメッキ量の勾配が有効に機能する。一方、微小な部材であるキャップについて、Sc/Sfが1.6を超えるような加工を加えるのは困難である。尚、Sc/Sfは、1.005≦Sc/Sf≦1.5が好ましく、1.01≦Sc/Sf≦1.45がより好ましく、1.04≦Sc/Sf≦1.4が更に好ましい。
【0017】
本発明に係る封止用キャップの加工面の具体的態様について説明すると図3図6のような例が挙げられる。まず、ろう材融着面に少なくとも1連の溝を形成するものが挙げられる(図3)。このとき、被加工面の断面形状としては、平坦面から突出した溝を有する形状となっている。この溝は、図3のような先端が丸いものでも良く、鋭角の溝でも良い。また、溝は複数形成されていても良い。
【0018】
加工面の態様としてはろう材融着面を傾斜させるようなものであっても良い。図4のように、端部から中央に向けて直線的な傾斜を有するものがある。このときの断面形状は略V字形状となっている。
【0019】
また、加工面の傾斜は湾曲していても良く、図5のように、両端から中央に向けて下方に張り出した円弧形状となるように加工されていても良い。この断面が円弧形状となる加工面は、場合によっては特に好適なものである。パッケージのベースには、AuSnろう材の濡れ性を確保するため、メタライズ加工(材質:タングステン)とAuメッキ/Niめっき処理を施して、表面を円弧形状とすることがある。本発明のようにキャップに円弧形状の加工面を設定することで、ベースのメタライズ面への追従性が良好となり、ろう材量の削減や密着性向上に寄与することができる(図9参照)。
【0020】
更に、上記した溝加工や面に傾斜を付与する加工の他、部分的な凹凸を形成しても良い。即ち、被加工面について、上方に突出する凸部又は下方に突出する凹部の少なくともいずれかを1以上形成しても良い。図6はその一例であり、ろう材融着面に角錐状の凸部を複数形成している。
【0021】
上記の各種の加工面を有するろう材融着面においては、溝や傾斜部分の先端で融解したろう材の湯溜りとして作用し、また、凸部はろう材の障害として作用するので、ろう材の不要な濡れ広がりを阻止する。尚、以上の加工面の上下方向の高さ・深さは、ろう材融着目の両端部を基準として3μm以上15μm以下にするのが好ましい。
【0022】
本発明に係る封止用キャップの構成材料は、従来のキャップと同様とすることができる。一般にキャップの構成材料としては、コバール合金(Fe−Ni−Co系合金)や42アロイ(Fe−Ni系合金)が適用されるが、本発明もそれらを適用できる。これらの材質は加工性を有するので、加工面の形成も容易である。
【0023】
そして、本発明に係るキャップは、そのろう材融着面にAu系ろう材を融着した状態で使用される。Au系ろう材としては、Au−Sn系ろう材(例えば、Au−18〜25%Sn)、Au−Ge系ろう材(Au−10〜15wt%Ge)、Au−Si系ろう材(Au−2〜5wt%Si)、Au−Sb系ろう材(Au−30〜40wt%Sb)が適用できる。融着後のAu系ろう材の厚さは、5μm以上30μm以下とするのが一般的である。
【0024】
尚、上記したように、Au系ろう材の融着に際しては、ろう材の密着性確保のためのNiめっき層があるものが好ましい。更に、ろう材融着時の濡れ性確保のためにAuメッキがなされたものが好ましい。尚、ろう材融着面で形成されたAuメッキは、その後のAu系ろう材の融着の際にろう材に一体化されてしまう。従って、ろう材融着後の断面においては、キャップ/Niメッキ層/ろう材の層構成が見られ、明瞭なAuメッキ層が観察されることは無い。
【0025】
本発明のキャップの形状については、平板形状のものでも良い。このとき、その4辺に沿って枠状のろう材融着面が設定されているのが一般的な形態となる。
【0026】
また、本発明はキャビティ付のキャップにも対応でき、好ましい効果を発揮する。このキャップは、キャビティが形成された箱形状を有する。ろう材融着面は、その端面に沿って枠状のものが設定できる。このキャビティ付のキャップは、キャビティを形成するキャップ本体と、その端部に形成された鍔状のフランジ部とからなるモノであっても良い。このとき、フランジの端面に沿って枠状のろう材融着面が設定できる。
【0027】
以上説明した本発明に係るキャップの製造方法については、加工面の形成に特徴がある。加工面の形成は、キャップを各種形状に成形した後に行うことができる。また、キャップの成形工程に並行させて行うことができる。
【0028】
つまり、各種形状に成形した後のキャップに対しては、ろう材融着面に対して、加工面に対応する型を使用したプレス加工を行うことで加工面を形成できる。
【0029】
また、キャップの成形工程で並行させる場合、例えば、平板状のキャップについては、シート状の素材をせん断加工することでキャップを製造できる。このときのせん断加工時に同時に型プレスを行うことでキャップの成形と加工面の形成とを同時に行うことができる。
【0030】
キャビティ付のキャップについては、成形と加工面形成とを同時に遂行できる。特に、フランジを備えるキャビティ付のキャップの製造にとってはこの方法が有用である。キャビティ付のキャップは、平板の絞り加工又は成型加工により成形・製造できる。いわゆる絞り加工又は成型加工は、平板素材を冶具固定して、その端部を抑えつつ素材に工具を押圧することでキャビティを有する箱状体を成形する。このときの押さえ部分がフランジとなる。そこで、押さえ冶具に加工面に対応する型を形成することで、フランジ面に所望の加工面を形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明に係る封止用キャップは、所定の加工面をろう材融着面に付与することで、パッケージの封止の際に融解したろう材の濡れ広がりを制御することができる。また、本発明はろう材(Au系ろう材)融着のためのAuメッキのメッキ量を制限しつつ、必要な箇所に十分な量のAuをメッキすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】キャップとベースとの接合によるパッケージ製造工程を説明する図。
図2】キャップの製造工程(Auメッキ及びろう材融着)を説明する図。
図3】本発明に係る封止用キャップにおけるろう材融着面(被加工面)の具体的形状(溝形成)を説明する図。
図4】本発明に係る封止用キャップにおけるろう材融着面(被加工面)の具体的形状(断面V字状)を説明する図。
図5】本発明に係る封止用キャップにおけるろう材融着面(被加工面)の具体的形状(円弧状断面)を説明する図。
図6】本発明に係る封止用キャップにおけるろう材融着面(被加工面)の具体的形状(角錐状凹部)を説明する図。
図7】第1実施形態で評価した封止用キャップの成形加工工程を説明する図。
図8】第3実施形態で評価した封止用キャップの成形加工工程を説明する図。
図9】断面を円弧状にしたときの封止工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
第1実施形態:以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、フランジを有するキャビティ付の封止用キャップであって、フランジ面に溝加工がなされたものを製造した。
【0034】
キャップ製造の素材として、コバールからなるフープ材(寸法:14mm×1000m、厚さ40mm)を用意した。このフープ材を順送型の金型を用いて絞り加工してキャビティを形成した後、個片化して封止用キャップを製造した。絞り加工は、フープ材を金型に送入し、その四辺を箱型の冶具で拘束し、中央部を加工冶具にてプレスした。以上の工程で箱状のキャビティを有するキャップが製造される。このとき、拘束冶具により拘束されていた部位がフランジになるが、拘束冶具の表面には線状凸部が形成されており、これがフランジ面に溝を有する被加工面(図3参照)を形成する。
【0035】
成形加工後のキャップの寸法は、例えばキャビティの寸法が1.4mm×1.0mm、深さ0.2mmであり、フランジ面の幅が0.1mmとなる。本実施形態では、拘束冶具の線状凸部の大きさを変更し、フランジ面に溝の幅又は深さが相違するキャップを5種と溝の無いキャップを、それぞれ100個製造した。
【0036】
キャップ製造後、フランジ面、封止面を含む面に対してNiメッキ、Auメッキを行った。メッキ処理は電解バレルメッキにより行い、平坦部分での厚さ測定で、Niメッキ1μm以上とし、Auメッキは0.02μm以下とした。
【0037】
次に、キャップのろう材融着面となるフランジ面にろう材を融着した。ろう材は、枠形状の80wt%Au−20wt%Snろう材(寸法:外寸1.6mm×1.4mm、内寸1.44mm×1.24mm、厚さ13μm)を融着した。融着は、ろう材をキャップ上に位置決めして載置した後、電気炉に挿入し280℃で180秒加熱してろう材を融着させることにより行なった。
【0038】
製造した封止用キャップ(5種×100固)について、封止試験を行い、ろう材の濡れ広がり性を確認した。封止試験は、平板状のベース(寸法:1.65mm×1.25mm、厚さ0.15mm、セラミック製)に、製造したキャップを接合して(接合温度340℃)、擬似的な封止パッケージを製造した。そして、作製したパッケージについての外観観察を行いろう材のはみ出しの有無を確認した。そして、リークテストを行った。リークテストはパッケージをヘリウムリークディテクタにかけ、パッケージ外部の真空引き後のヘリウム分子が漏出をカウントして、気密封止の良否を判定した。その後、パッケージからキャップを取り外し、封止面へのろう材侵入の有無を確認した。これらの評価は100個のキャップについて行った。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から、比較例のろう材融着面に加工を行わないキャップでは、わずかな確率(8%)であるが、濡れ広がったろう材が封止面へ侵入した形跡があった。各実施例にはほとんどそれがなかった。今回の実施例の範囲内での加工により、ろう材の好ましくない濡れ広がりを抑制できると思われる。尚、気密封止の効果に関しては各実施例、比較例には問題は無く、リークは全く見られなかった。
【0041】
第2実施形態:ここでは、キャップのろう材融着面に付与する被加工面について、角錐状の凹部が複数形成されたものを製造し(図6参照)。キャップの基本的製造工程は、第1実施形態と同様であるが、絞り加工の際の拘束冶具の表面形態として、角錐状の微小突起が複数形成されたものを用いてキャップを加工した。本実施形態で製造したキャップについて、ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)は、およそ1.4であった。
【0042】
キャップ製造後は第1実施形態と同様に、Niメッキ及びAuメッキを行った後、Au−Snろう材を融着した。但し、本実施形態では、Auメッキについて、0.02μm(第1実施形態と同じ厚さ)のものと、それよりも薄い0.01μmのAuメッキを行ったものの2種を用意した。そして、ろう材融着後は第1実施形態と同じく擬似パッケージを作製し、評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
ろう材融着面を加工することは、ろう材を融着する際の安定性にも有用といえる。比較例2は、ろう材融着面に被加工面を形成することなく、更に、Auメッキ量を低減させたものであるが、このキャップはパッケージを作製した際にリークが見られたものがあった。リークの発生したキャップについては、融着後のろう材の形状が整った矩形の枠状ではなくやや歪んだ枠形状のものが数点みられた。そのような不定形のろう材付のキャップを使用したために、パッケージの気密封止が不十分であったと思われる。そして、そのようなろう材を有するキャップでは、濡れ広がりも安定せず封止面へのろう材侵入も発生しやすくなる。
【0045】
第3実施形態:ここでは被加工面を断面円弧状(図5参照)とした封止用キャップを製造した。キャップの基本的製造工程は、第1実施形態と同様であり、図8のように絞り加工の際の拘束冶具が円弧状のものを用いてキャップを加工した。本実施形態で製造したキャップについて、ろう材融着面の単位面積当たりの表面積(Sc)と、前記封止面の単位面積当たりの表面積(Sf)との比(Sc/Sf)は、およそ1.01であった。
【0046】
キャップ製造後、Niメッキ及びAuメッキを行った後、Au−Snろう材(0.01μm)を融着した。そして、擬似パッケージを作製したが、ここではベース端部にメタライズをした後に封止作業を行った。図9は、この封止工程を説明するものであるが、ろう材融着後のキャップの被加工面がメタライズの形状にフィットした好適な接合状態を得ることができる。本実施形態でも100個の擬似パッケージを製造したが、比較的薄い(0.01μm)ろう材厚さであっても、リークやろう材侵入は全く見られなかった。
【0047】
以上の第1〜第3実施形態から、キャップのろう材融着面に対して適切な加工を加え、そこにろう材を融着することで、より安定したパッケージ製造か可能となることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、封止パッケージの製造について、従来よりも安定して高品質のものを製造することができる。本発明は、SAWフィルタ、FBARフィルタ、水晶振動子等の各種の半導体素子デバイスの製造に有用であり、それらの低コスト化にも有効である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9