【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【解決手段】 増幅用光ファイバは、内側コア11iと、内側コア11iの外周面を囲む外側コア11oとを有するコアを備える。内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差Δ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記非特許文献2に記載の増幅用光ファイバであっても、LP
01モードの光とLP
11モードの光とで利得が変わる場合がある。この様にそれぞれのモードの光で利得が異なることは、エルビウムが添加されている領域において、エルビウムの励起度が一定ではないことが原因となっている。エルビウムを励起する励起光は、増幅用光ファイバにおいて多数モードの光としてコアを伝搬する。このため、コアにおけるエルビウムが添加されている領域において、励起光のパワーは一定に分布しない。従って、エルビウムが添加されている領域において、エルビウムの反転分布は一定では無い。このように励起状態とされたエルビウムの分布が偏在することで、エルビウムが添加された領域を伝搬する信号光のLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーとが同じであっても、上記のようにLP
01モードの光とLP
11モードの光とで利得が変わるのである。
【0007】
したがって、増幅用光ファイバを伝搬する励起光のそれぞれのモードの光のパワーを調整する、すなわち励起光におけるそれぞれのモードの励振比を調整することが重要となる。しかし、励振比を調整するには複雑な光学系が必要であることが知られており、モードの数が多いとより複雑な光学系が必要となる。このため、励起光のモードの数を減らして、信号光のLP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を容易に抑制したいという要請がある。
【0008】
そこで、本発明は、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を容易に抑制することができる増幅用光ファイバ及びそれを用いた光ファイバ増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、内側コアと、前記内側コアの外周面を囲む外側コアとを有するコアを備える増幅用光ファイバであり、以下を特徴とする。
【0010】
すなわち、前記内側コアのクラッドに対する比屈折率差は、前記外側コアの前記クラッドに対する比屈折率差よりも小さく、前記外側コアの全体にエルビウムが添加され、LP
11モードの光の理論カットオフ波長は1565nm以上とされ、LP
21モードの光の理論カットオフ波長が1530nm以下とされ、LP
02モードの光の理論カットオフ波長が980nm以下とされる。
【0011】
以上を特徴とする本発明の増幅用光ファイバによれば、波長1530nmから1565nmにおける帯域、すなわちCバンド帯において、LP
01モードの光及びLP
11モードの光を増幅することができる。従って、本増幅用光ファイバは信号光がCバンド帯であるフューモード通信用の光ファイバ増幅器に用いることができる。
【0012】
また、内側コアのクラッドに対する比屈折率差が外側コアのクラッドに対する比屈折率差よりも小さいため、LP
01モードの光のパワーを外側コアよりに偏在させることができる。しかも、外側コアにエルビウムが添加されているため、コアを信号光が伝搬する場合に、コアのエルビウムが添加されている領域を伝搬するLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーの差を小さくすることができる。また、LP
02モードの理論カットオフ波長が980nm以下であるため、エルビウムを励起する励起光がコアを伝搬する場合に、当該励起光のモードをLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード及びLP
31モードに限定することができる。上記非特許文献2の励起光のモードは6モード存在することと比べると、励起光のモード数を少なくすることができる。従って、信号光におけるLP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得とが等しくなるように、上記4つのモードの光の励振比を制御すれば良い。従って、本発明の増幅用光ファイバによれば、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を容易に抑制することができる。
【0013】
また、前記内側コアの直径をD
1とし、前記外側コアの外径をD
2とする場合にD
1/D
2が0.5以上とされ、前記内側コアの前記クラッドに対する比屈折率差をΔ
nciとし、前記外側コアの前記クラッドに対する比屈折率差をΔ
ncoとする場合に、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下とされることが好ましい。
【0014】
コアがこのように構成されることで、適宜LP
21モードの光のカットオフ波長が所定の範囲において、外側コアを伝搬するLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーとを概ね揃えることができる。また、LP
02モードの光の理論カットオフ波長をより適切に980nm以下とすることができる。なお、内側コア、外側コアの定義よりD
1/D
2が1より小さいことは自明である。
【0015】
この場合、D
1/D
2が0.6以上とされることがより好ましい。
【0016】
D
1/D
2が0.6以上とされることで、外側コアを伝搬するLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーの差を略ゼロとすることができる。
【0017】
またこれらの場合、D
1/D
2が0.8以下とされることが好ましい。
【0018】
D
1/D
2が0.8より大きな領域では、信号光のLP
01モードの光のうち外側コアを伝搬するパワーの総和と、信号光のLP
11モードの光のうち外側コアを伝搬するパワーの総和との差は、0.8以下と比べて大きく変化することが無い。一方、D
1/D
2が0.8以下であれば、信号光におけるLP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得が低減することを抑制することができる。
【0019】
またこれらの場合に、Δ
nci/Δ
ncoが0以上とされることが好ましい。
【0020】
LP
21モードの光の理論カットオフ波長が1430nm以上とされることが好ましく、当該カットオフ波長が1450nm以上とされることがより好ましい。
【0021】
また、本発明の光ファイバ増幅器は、上記に記載のいずれかの増幅用光ファイバと、前記コアに入射する波長980nm帯の励起光を出射する励起光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
この光ファイバ増幅器は、Cバンド帯において、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を抑えることができる。従って、Cバンド帯でのフューモード通信をより適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を容易に抑制することができる増幅用光ファイバ及びそれを用いた光ファイバ増幅器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る増幅用光ファイバ、及び、それを用いた光ファイバ増幅器の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0026】
<増幅用光ファイバについての説明>
図1は、本発明の実施形態に係る増幅用光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
図1に示すように増幅用光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12を被覆する被覆層14とを主な構成として備える。コア11の直径は、例えば10μmとされる。また、クラッド12の外径は例えば125μmとされる。
【0027】
また、本実施形態の増幅用光ファイバ10は、Cバンド帯において、LP
01モードの光及びLP
02モードの光を伝搬するフューモードファイバとされる。つまり、増幅用光ファイバ10は、LP
11モードの光の理論カットオフ波長は1565nm以上とされ、LP
21モードの光の理論カットオフ波長が1530nm以下とされる。
【0028】
図2は、
図1の増幅用光ファイバ10のコア11とその周囲における様子を示した図である。具体的には、
図2(A)は
図1の点線で示される領域でのコア11とクラッド12とを示し、
図2(B)は
図2(A)に示す領域での屈折率分布を示し、
図2(C)はコアに添加されるエルビウムの濃度分布を示し、
図2(D)はコア11を伝搬するLP
01モードの光とLP
02モードの光のパワー分布を示す。
【0029】
図2(A)に示すように、コア11は、中心軸を含む内側コア11iと、内側コア11iの外周面を隙間なく囲む外側コア11oとからなる。
【0030】
また、
図2(B)に示すように、内側コア11iの屈折率は外側コア11oの屈折率よりも低くされている。本実施形態では、内側コア11iの屈折率がクラッド12の屈折率と同等とされている。外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差は、例えば1%とされる。このような屈折率分布を有するため、例えば、外側コア11oはゲルマニウム(Ge)等の屈折率を高くするドーパントが添加された石英から成り、内側コア11i及びクラッド12は何らドーパントが添加されない石英から成る。なお、外側コア11oが何らドーパントが添加されない石英から成る場合には、内側コア11i及びクラッド12はフッ素等の屈折率を低くするドーパントが添加された石英から成る。
【0031】
また、
図2(C)に示すように、外側コア11oにはエルビウムが添加されている。本実施形態では、外側コア11oの全体にエルビウムが添加されており、内側コア11iにはエルビウムが非添加とされている。
【0032】
この増幅用光ファイバ10は、Cバンド帯において、LP
01モード及びLP
11モードのフューモードで光を伝搬する。コア11の屈折率が径方向に一定である場合には、LP
01モードの光のパワーのピークは本来コアの中心に位置する。しかし、本実施形態の増幅用光ファイバ10のコア11は、
図2(B)のような屈折率分布を有するため、コアを伝搬する光は外周側にずれる。従って、
図2(D)に示すように、LP
01モードの光も外周側にずれ、当該光のパワーのピークは中心から外周側にずれて位置する。また、LP
11モードの光も外周側にずれる。そして、本実施形態では、コア11を伝搬するCバンド帯の光のうち、LP
01モードの光のうち外側コア11oを伝搬するパワーの総和と、LP
11モードの光のうち外側コア11oを伝搬するパワーの総和とが概ね等しくされている。
【0033】
次に、このように外側コア11oにおいて、LP
01モードの光のパワーの総和とLP
11モードの光のパワーの総和とが概ね等しくされる構成について説明する。
【0034】
図3は、内側コア11iの直径D
1と外側コア11oの外径(コア11の直径)D
2との比と、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワー及びLP
11モードの光のパワーとの関係を示す図である。
図3では、LP
01モードの光のうち外側コア11oを伝搬するパワーの総和をΓ
01で示しており、LP
11モードの光のうち外側コア11oを伝搬するパワーの総和をΓ
11で示している。また、Γ
01とΓ
11の差をΔΓで示している。縦軸は、これら、Γ
01、Γ
11、ΔΓの大きさを示しており、横軸は、内側コア11iの直径D
1と外側コア11oの外径D
2との比D
1/D
2を示している。なお、
図3では、LP
21モードの光のカットオフ波長を1450nmとして、外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差を1%とし、内側コア11iの屈折率をクラッドと同等とする条件において、D
2を定めている。
図3に示すように、D
1/D
2が0.5以上において、Γ
01とΓ
11との大きさに概ね差が無く、ΔΓの絶対値が0.01以下となっている。また、D
1/D
2が0.6以上では、Γ
01とΓ
11との大きさの差ΔΓが略ゼロとなっている。なお、Γ
01及びΓ
11が小さくなりすぎることで、LP
01モードの光の利得及びLP
11モードの光の利得が小さくなり過ぎぬように、D
1/D
2の上限は0.8とされることが好ましい。なお、
図3ではコア11を伝搬する光の波長を1550nmとしているが、
図3のようになる傾向は、他の波長でも概ね変わらない。また、上記のようにLP
21モードの光のカットオフ波長を1450nmとしているため、少なくともLP
21モードの光のカットオフ波長が1450nmでは、D
1/D
2の上記傾向が言える。ただし、後述のようにLP
21モードの光のカットオフ波長が
図3から20nm程度変化しても、
図3と傾向が然程変わらない。従って、LP
21モードの光のカットオフ波長が1430nmであれば、
図3と傾向は然程変わらない。
【0035】
次に、D
1/D
2が0.5である場合において、内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差Δ
nciと外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差Δ
ncoとの比Δ
nci/Δ
ncoを変化させる。
図4は、当該比Δ
nci/Δ
ncoと、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーΓ
01及びLP
11モードの光のパワーΓ
11との関係を示す図である。
図4に示すように比Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下において、Γ
01とΓ
11との大きさに差が無くなっている。なお、
図4におけるコア11を伝搬する波長の条件は
図3におけるコア11を伝搬する波長の条件と同様とされるが、他の波長でも
図4の傾向は概ね変わらない。また、
図4におけるLP
21モードの光のカットオフ波長の条件は
図3におけるLP
21モードの光のカットオフ波長の条件と同様とされる。従って、少なくともLP
21モードの光のカットオフ波長が1450nmでは、Δ
nci/Δ
ncoの上記傾向が言える。また、LP
21モードの光のカットオフ波長が
図4から20nm程度変化しても、
図4と傾向が然程変わらない。従って、LP
21モードの光のカットオフ波長が1430nmであれば、
図4と傾向は然程変わらない。
【0036】
図5は、外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差Δ
ncoと外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーΓ
01及びLP
11モードの光のパワーΓ
11との関係を示す図である。
図5では、内側コア11iの直径D
1と外側コア11oの外径D
2との比D
1/D
2が0.4であり、内側コア11iのクラッドに対する比屈折率差Δ
nciがゼロであり、LP
21モードの光のカットオフ波長が1450nmとなる外側コア11oの外径D
2とされる。このような条件において、横軸は、外側コア11oのクラッドに対する比屈折率差Δ
ncoを示し、縦軸は、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーΓ
01及びLP
11モードの光のパワーΓ
11を示す。
図6より、Γ
01とΓ
11との差ΔΓは、Δ
ncoによらず一定とされる。つまり、外側コア11oの屈折率が変化する場合であっても、当該変化はΔΓに影響しない。
【0037】
以上
図3〜
図5より、D
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下であれば、外側コア11oにおいて、LP
01モードの光のパワーΓ
01とLP
11モードの光のパワーΓ
11とが概ね等しくされる。
【0038】
次に、モード間利得差(DMG)とカットオフ波長との関係について
図6から
図10を用いて説明する。
【0039】
図6は、波長1550nmの光が伝搬するモードと、内側コア11iの半径R
i及び外側コア11oの外周の半径R
oとの関係を示す図である。
図6では、コア11を伝搬する光の波長を1550nmとし、内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差Δ
nciを0%とし、外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差Δ
ncoを1%とした。
図6では、上記のようにそれぞれの比屈折率差を固定して、内側コア11iの半径R
i及び外側コア11oの外周の半径R
oを変化させているため、
図6内においてLP
21モードの光のカットオフ波長は一定では無い。
【0040】
図6において、領域AR
Nは内側コア11iの直径が外側コア11oの外径よりも大きく、物理的にあり得ない領域である。また、領域AR
0はどのモードの光も伝搬しない領域である。領域AR
1はLP
01モードの光のみが伝搬する領域である。領域AR
2はLP
01モードの光及びLP
11モードの光のみが伝搬する領域である。領域AR
3はLP
01モードの光、LP
11モードの光、及び、LP
21モードの光のみが伝搬する領域である。領域AR
4はLP
01モードの光、LP
11モードの光、LP
21モードの光、及び、LP
02モードの光のみが伝搬する領域である。従って、本実施形態の増幅用光ファイバ10の内側コア11iの半径R
i及び外側コア11oの外周の半径R
oとの関係は領域AR
2に入る必要がある。
【0041】
次に、この領域AR
2における各点におけるモード間利得差について、説明する。
図7は、
図6の領域AR
2の各点A〜OにおけるLP
01モードの光とLP
11モードの光とのモード間利得差を示す図である。また、
図8は、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーΓ
01及びLP
11モードの光のパワーΓ
11の差(Γ
01−Γ
11)と、LP
01モードの光とLP
11モードの光とのモード間利得差との関係を示す図であり、
図9は、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーΓ
01及びLP
11モードの光のパワーΓ
11の比(Γ
11/Γ
01)と、LP
01モードの光とLP
11モードの光とのモード間利得差との関係を示す図である。
図7〜
図9では、コア11を伝搬する光の波長や、内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差Δ
nci、外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差Δ
ncoを
図6の条件と同様とした。また、
図7〜
図9では、LP
01モードの励起光による利得のモード間利得差と、LP
11モードの励起光による利得のモード間利得差と、LP
21モードの励起光による利得のモード間利得差とを、それぞれ個別に示している。
【0042】
図7に示すように、点E、点Fでは、モード間利得差が非常に小さいことが分かる。この点E、点Fは、
図8におけるΓ
01−Γ
11(=ΔΓ)が概ね0上にプロットされている点であり、
図9におけるΓ
11/Γ
01が概ね1上にプロットされている点である。点E、点Fは、
図6より、D
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下を満たし(上記のように
図6では、比屈折率差Δ
nciを0%で比屈折率差Δ
ncoを1%)、
図7〜
図9より、Γ
01−Γ
11(=ΔΓ)が概ね0で、モード間利得差が非常に小さいことが分かる。一方、
図6において、D
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下を満たすものの点H等のようにモード間利得差が然程小さくならない点がある。このような点は、LP
21モードの光のカットオフ波長が
図3、
図4でのカットオフ波長(1450nm)と比べて非常に小さい状態であると言える。
【0043】
図10は、LP
01モードの光のパワーΓ
01とLP
11モードの光のパワーΓ
11との差ΔΓと、LP
21モードの光のカットオフ波長λc(LP
21)と関係を示す図である。なお、
図10では、D
1/D
2を0.5とし、Δ
nciを0%とし、Δ
ncoを1%とした。そして、D
2を6.2μmから9.4μmまで変化させてLP
21モードの光のカットオフ波長を
図10のように変化させた。
【0044】
図10に示すように、LP
21モードの光のカットオフ波長が長波長となるにつれ、ΔΓが小さくなることが分かる。つまり、
図3、
図4では、LP
21モードの光のカットオフ波長が1450nmとされたが、当該カットオフ波長が1450nmより長波長であればΔΓがより小さくなることが分かる。また、
図10より、LP
21モードの光のカットオフ波長が1430nm以上であれば、ΔΓが0.01以下となることが分かる。従って、
図3、
図4の説明のように、LP
21モードの光のカットオフ波長が1430nmであれば、
図3、
図4と傾向は然程変わらない。つまり、LP
21モードの光のカットオフ波長が1430nmであり、D
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下を満たすことにより、ΔΓを0.01以下とすることができる。
【0045】
次に、コア11を伝搬するLP
02モードの光のカットオフ波長が980nmより小さくされる構成について説明する。
【0046】
図11は、内側コア11iの直径D
1と外側コア11oの外径D
2との比D
1/D
2と、カットオフ波長λcとの関係を示す図である。なお、
図11では、LP
21モードの光のカットオフ波長を1500nmとして、外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差を1%とし、内側コア11iの屈折率をクラッドと同等とする条件において、D
2を定めている。また、
図11では、LP
11モードの光、LP
21モードの光、LP
02モードの光、LP
31モードの光、LP
12モードの光について、上記関係を示している。
図11より、D
1/D
2が0.5以上であれば、LP
02モードの光のカットオフ波長と、LP
12モードのカットオフ波長とが980nmより小さくなることが分かる。そのため、D
1/D
2が0.5以上であれば、波長980nmの励起光のモードをLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード、LP
31モードとすることができる。
【0047】
次に、D
1/D
2が0.5である場合において、内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差Δ
nciと外側コア11oのクラッド12に対する比屈折率差Δ
ncoとの比Δ
nci/Δ
ncoを変化させる。
図12は、当該比Δ
nci/Δ
ncoと、カットオフ波長λcとの関係を示す図である。
図12に示すように、比Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下において、LP
02モードの光のカットオフ波長と、LP
12モードのカットオフ波長とが980nmより小さくなることが分かる。そのため、比Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下であれば、波長980nmの励起光のモードをLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード、LP
31モードとすることができる。
【0048】
つまり、
図11、
図12より、D
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下であれば、外側コア11oに添加されるエルビウムを励起する波長980nmの励起光のモードをLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード、LP
31モードとすることができる。
【0049】
ところで、上記のように増幅用光ファイバ10は、LP
11モードの光の理論カットオフ波長は1565nm以上とされ、LP
21モードの光の理論カットオフ波長が1530nm以下とされる。例えば、D
1/D
2が0.5で、Δ
nci/Δ
ncoが0で、Δ
ncoが1.0%とされる条件で、上記のような理論カットオフ波長となるためには、6.2μm≦D
2≦9.4μmとされれば良い。
【0050】
以上説明したように本実施形態の増幅用光ファイバ10によれば、Cバンド帯において、LP
01モードの光及びLP
11モードの光を伝搬しながら増幅することができる。また、外側コア11oを伝搬するLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーの差を小さくすることができ、この外側コア11oには、エルビウムが添加されているため、エルビウムが添加されている領域を伝搬するLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーの差を小さくすることができる。従って、エルビウムの反転分布が適切に調整されることで、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の増幅用光ファイバ10では、LP
02モードの理論カットオフ波長が980nm以下であるため、エルビウムを励起する励起光がコアを伝搬する場合に、当該励起光のモードをLP
01モード、LP
11モード、LP
21モード及びLP
31モードに限定することができる。従って、信号光におけるLP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得とが等しくなるように、上記4つのモードの光の励振比を制御すれば良い。このため、本実施形態の増幅用光ファイバ10によれば、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差を容易に抑制することができる。
【0052】
<光ファイバ増幅器についての説明>
次に上記の増幅用光ファイバ10を用いた光ファイバ増幅器について
図13を参照して説明する。
【0053】
図13は、本実施形態の光ファイバ増幅器を示す図である。
図13に示すように、本実施形態における光ファイバ増幅器1は、増幅される信号光を伝搬する光ファイバ21と、光ファイバ21の途中に設けられる光アイソレータ30aと、光ファイバ21に接続されるWDMカプラ40aと、WDMカプラ40aに一端が接続される光ファイバ22と、光ファイバ22の他端に一端が接続される増幅用光ファイバ10と、増幅用光ファイバ10の他端に一端が接続される光ファイバ24と、光ファイバ24の他端に接続されるWDMカプラ40bと、WDMカプラ40bに接続される光ファイバ25と、光ファイバ25の途中に設けられる光アイソレータ30bと、励起光源50とを主な構成として備える。
【0054】
光ファイバ21は、Cバンド帯において、信号光であるLP
01モードの光およびLP
11モードの光を伝搬するフューモードファイバとされ、LP
01モードの光およびLP
11モードの光のそれぞれに信号が重畳される。これらの光は、光ファイバ21をWDMカプラ40a側に向かって伝搬する。
【0055】
この光ファイバ21の途中に設けられる光アイソレータ30aは、光ファイバ21側からWDMカプラ40a側に向かって伝搬する信号光を透過し、逆側に向かって伝搬する光の透過を抑制する。従って、光ファイバ増幅器1内で不要に生じる反射等により、上記信号光の進行方向と逆の方向に進行する光が光アイソレータ30aから光ファイバ21に入射することを抑制している。
【0056】
励起光源50は、波長980nmの励起光を出射する。励起光源50が出射する励起光は、LP
01モードの光、LP
11モードの光、LP
21モードの光、LP
31モードの光をそれぞれ個別に出射する。例えば、LP
01モードの光以外については、LP
11モードの光、LP
21モードの光、LP
31モードの光の基となるLP
01モードの光を個別に出射して、この光から、LP
11モードの光、LP
21モードの光、LP
31モードの光をそれぞれ個別に励振する。励振に波位相板を用いればよい。そして、励振したそれぞれのモードの光を個別に出射して、それぞれのモードの光を個別にWDMカプラ40aに入射する構成とする。それぞれのモードの光のパワーを調整するには、それぞれのモードの光の基となるLP
01モードの光のパワーを個別に調整すれば良い。
【0057】
WDMカプラ40aには光ファイバ21から信号光が入射し励起光源50から励起光が入射する。WDMカプラ40aは、入射した信号光及び励起光を合波して、光ファイバ22に入射する。光ファイバ22は光ファイバ21と同様の構成とされる。
【0058】
光ファイバ22に接続される増幅用光ファイバ10は、コア11がD
1/D
2が0.5以上で、Δ
nci/Δ
ncoが0.1以下を満たす。増幅用光ファイバ10には、光ファイバ21から伝搬するCバンド帯のLP
01モードの光およびLP
11モードの光、及び、励起光源から出射する波長980nmの励起光が入射する。増幅用光ファイバ10に入射しコア11を伝搬する信号光は、上記コア11が満たす条件より、外側コア11oにおいて、LP
01モードの光のパワーΓ
01とLP
11モードの光のパワーΓ
11とが概ね等しくされる。一方、増幅用光ファイバ10に入射しコア11を伝搬する励起光のモードは、上記コア11が満たす条件より、LP
01モード、LP
11モード、LP
21モード、LP
31モードとされる。そして、外側コア11oに添加されているエルビウムを励起する。そして、励起状態とされたエルビウムが信号光により誘導放出を起こして信号光が増幅する。
【0059】
このとき、上記のように、外側コア11oにおいて、LP
01モードの光のパワーΓ
01とLP
11モードの光のパワーΓ
11とが概ね等しくされ、励起光の4つのモードの励振がそれぞれ調整されるため、信号光におけるLP
01モードの光とLP
11モードの光はそれぞれ同程度の利得とされる。このような利得とするためには、例えば、励起光の4つのモードの光のパワーを増幅用光ファイバ10から出射する信号光のLP
01モードの光のパワーとLP
11モードの光のパワーとを比較して、信号光のLP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得とが同程度となるように、励起光の4つのモードの光のパワーを調整する。
【0060】
こうして、LP
01モードの光とLP
11モードの光とが同程度に増幅された信号光は増幅用光ファイバ10から出射する。
【0061】
増幅用光ファイバ10に接続される光ファイバ24は光ファイバ22と同様の構成とされる。増幅用光ファイバ10から出射する信号光及び余剰励起光は光ファイバ24に入射して、光ファイバ24を伝搬する。
【0062】
光ファイバ24からWDMカプラ40bに入射する信号光及び余剰励起光は、WDMカプラ40bで分離される。分離された余剰励起光は終端装置Eで消滅され、信号光は光ファイバ25に入射して光ファイバ25を伝搬する。
【0063】
光ファイバ25の途中に設けられる光アイソレータ30bは、光ファイバ25をWDMカプラ40b側から伝搬する信号光を透過し、WDMカプラ40bに向かって伝搬する光の透過を抑制する。このため信号光は光アイソレータ30bを透過して出射する。
【0064】
本実施形態の光ファイバ増幅器1によれば、増幅用光ファイバ10において、LP
01モードの光の利得とLP
11モードの光の利得との差が抑制されるため、利得差の少ないフューモードの光を出射することができる。
【0065】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
例えば、
図2において、内側コア11iのクラッド12に対する比屈折率差は0%とされたが、LP
02モードの光の理論カットオフ波長が980nm以下とされれば、比屈折率差は0%に限らない。ただし、上記のようにΔ
nci/Δ
ncoが0.1以下とされることが好ましい。