エポキシ樹脂水性分散体(A)と反応性希釈剤(B)と硬化剤(C)を含む水性硬化性組成物であって、該反応性希釈剤(B)は、25℃における水との溶解度が10g/水100g以上であり、(A)と(B)と(C)の割合は、質量比で(A):(B)=70:30〜99:1の範囲であり、かつ(A)と(B)の全エポキシ基1モルに対し、(C)の活性水素基が0.7モル以上1.1モル以下の範囲であることを特徴とする水性硬化性組成物である。
エポキシ樹脂水性分散体(A)と反応性希釈剤(B)と硬化剤(C)を含む水性硬化性組成物であって、該反応性希釈剤(B)は、25℃における水との溶解度が10g/水100g以上であり、(A)と(B)と(C)の割合は、質量比で(A):(B)=70:30〜99:1の範囲であり、かつ(A)と(B)の全エポキシ基1モルに対し、(C)の活性水素基が0.7モル以上1.1モル以下の範囲であることを特徴とする水性硬化性組成物。
エポキシ樹脂水性分散体(A)は、エポキシ当量500〜10000g/eq.のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)とそれ以外のエポキシ樹脂(f)と水(g)とからなり、該オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)は、分子量1000〜10000のポリアルキレングリコール化合物(a)とポリイソシアネート化合物(b)とを、(a)の水酸基1モルに対し、(b)のイソシアネート基を1.5モル以上3.0モル以下の範囲で反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物(c)と、分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂(d)とを、(c)のイソシアネート基1モルに対し、(d)のエポキシ基を1.5モル以上5.0モル以下の範囲で反応させて得られ、(e)と(f)と(g)の割合は、質量比で(e):(f)=5:95〜50:50の範囲であり、かつ{(e)+(f)}:(g)=30:70〜75:25の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の水性硬化性組成物は、エポキシ樹脂水性分散体(A)と水性反応性希釈剤(B)と硬化剤(C)を含み、水性反応性希釈剤(B)の25℃における水との溶解度は、10g/水100g以上である。また、(B)は、(A)と(B)の合計に対し、1質量%以上30質量%以下の範囲である。さらに、(C)の活性水素基は、(A)と(B)の全エポキシ基1モルに対し、0.7モル以上1.1モル以下の範囲である。
【0015】
反応性希釈剤(B)が水性であることが重要であり、これにより塗膜の光沢性を低下させることなく、密着性を向上させることができる。25℃における水との溶解度が10g/水100g未満の場合、塗膜にした時の密着性が悪化する恐れがある。25℃における水との溶解度は20g/水100g以上が好ましく、50g/水100g以上がより好ましい。本発明での反応性希釈剤(B)の25℃における水との溶解度とは、25℃における水100gに溶解する反応性希釈剤(B)の量(g)を示す。反応性希釈剤(B)が完全水溶性の場合、無限混和が可能なため、上限値を特に定める必要はない。
【0016】
反応性希釈剤(B)は、25℃における水との溶解度が10g/水100g以上であればどのようなエポキシ樹脂でも使用できるが、1分子中に平均で1.8個以上のエポキシ基を有するポリグリシジルエーテルが好ましい。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテルや、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等のグリセリン系ポリグリシジルエーテルやソルビトール系ポリグリシジルエーテル等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの反応性希釈剤は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。これらの中では、炭素数4〜8のポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルが好ましい。
【0017】
また、反応性希釈剤のエポキシ当量は、100g/eq.以上400g/eq.以下が好ましく、110g/eq.以上300g/eq.以下がより好ましく、120g/eq.以上200g/eq.以下がさらに好ましい。25℃における粘度は、200mPa・s以下が好ましく、150mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましい。なお、粘度は低い方が希釈効果が高くなるため低いほど好ましい。
【0018】
また、エポキシ樹脂水性分散体(A)と水性反応性希釈剤(B)の配合割合も重要であり、これにより塗膜の密着性と光沢性を向上させることができる。(A)と(B)の合計に対する(B)の割合は、1質量%以上30質量%以下の範囲である。(A)と(B)の合計に対し、(B)が少ないと塗膜にした時の密着性が向上しない恐れがあり、多すぎると塗膜にした時の光沢性が悪化する恐れがある。(A)と(B)の合計に対する(B)の割合は、2質量%以上25質量%以下の範囲が好ましく、5質量%以上20質量%以下の範囲がより好ましい。
【0019】
エポキシ樹脂水性分散体(A)は特に制限はないが、エポキシ当量500〜10000g/eq.のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)とそれ以外のエポキシ樹脂(f)と水(g)とからなるエポキシ樹脂水性分散体(A1)が好ましい。その割合が質量比で(e):(f)=5〜50:50〜95であり、かつ{(e)+(f)}:(g)=30〜75:25〜70であることが好ましい。
【0020】
エポキシ樹脂水性分散体(A1)に占めるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)の割合が多いと耐水性、塗膜物性に悪影響を及ぼす恐れがあり、少ないと乳化安定性に劣る恐れがある。
【0021】
エポキシ樹脂水性分散体(A1)に用いるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)のエポキシ当量は、500〜10000g/eq.が好ましく、500〜5000g/eq.がより好ましい。エポキシ当量が小さいと乳化安定性に劣る恐れがあり、大きいと耐水性に劣る恐れがある。
【0022】
また、エポキシ樹脂水性分散体(A1)に占める水(g)の割合が少ないと粘度が高すぎて作業性が悪くなる恐れがあり、多すぎると低粘度化により安定性が悪くなりまた塗膜にしたときの乾燥性が悪くなる恐れがある。
【0023】
また、本発明に用いるエポキシ樹脂水性分散体(A)は必要に応じて有機溶剤を使用することができる。その割合はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)とそれ以外のエポキシ樹脂(f)の合計質量に対して、質量比で0〜20の範囲が好ましい。多く使用すると有機溶剤削減という水性樹脂の特徴が損なわれる。また、有機溶剤は必要に応じ減圧蒸留により除去することができる。
【0024】
本発明に用いるエポキシ樹脂水性分散体(A)を得るには、必要に応じて有機溶剤に溶解した後、撹拌しながら水を徐々に加えて乳化分散を行う。分散にはホモジナイザー等の高せん断力の撹拌機を使用してもよい。
【0025】
また、エポキシ樹脂水性分散体(A1)は、必要に応じて、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)を各種エポキシ樹脂変性剤を使用することにより分子量(エポキシ当量)等を調整したエポキシ樹脂(h)を用いても良い。その反応の際、それ以外のエポキシ樹脂(f)を併用しても良い。使用できる量は、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)及び/またはそれ以外のエポキシ樹脂(f)100質量部に対し、70質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
分子量(エポキシ当量)等を調整したエポキシ樹脂(h)を用いる場合、エポキシ樹脂水性分散体(A1)の水(g)との配合割合は、質量比で、(h):(g)=30〜75:25〜70が好ましい。
【0027】
使用できるエポキシ樹脂変性剤としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、テトラブチルビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールTMC、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシスチルベン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、スチレン化フェノールノボラック樹脂、テルペンフェノール樹脂、重質油変性フェノール樹脂等の種々のフェノール類や、種々のフェノール類と、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂や、アニリン、フェニレンジアミン、トルイジン、キシリジン、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルケトン、ジアミノジフェニルスルフィド、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノベンズアニリド、ジアミノビフェニル、ジメチルジアミノビフェニル、ビフェニルテトラアミン、ビスアミノフェニルアントラセン、ビスアミノフェノキシベンゼン、ビスアミノフェノキシフェニルエーテル、ビスアミノフェノキシビフェニル、ビスアミノフェノキシフェニルスルホン、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン、ジアミノナフタレン等のアミン化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらエポキシ樹脂変性剤は単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0028】
エポキシ樹脂水性分散体(A1)に用いるエポキシ当量500〜10000g/eq.のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)は、末端イソシアネート基含有化合物(c)と、分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂(d)とを、末端イソシアネート基含有化合物(c)のイソシアネート基1モルに対し、エポキシ樹脂(d)のエポキシ基を1.5モル以上5.0モル以下の範囲で反応させて得られる。そして、末端イソシアネート基含有化合物(c)は、分子量1000〜10000のポリアルキレングリコール化合物(a)とポリイソシアネート化合物(b)とを、ポリアルキレングリコール化合物(a)の水酸基1モルに対し、ポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基を1.5モル以上3.0モル以下の範囲で反応させて得られる。
【0029】
オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)の製造で用いられる末端イソシアネート基含有化合物(c)と、分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂(d)の使用割合は、末端イソシアネート基含有化合物(c)のイソシアネート基1モルに対し、エポキシ樹脂(d)のエポキシ基を1.5モル以上5.0モル以下が好ましい範囲である。エポキシ樹脂(d)のエポキシ基が少ないと過剰な重合が進みゲル化が起こり易くなる恐れがあり、またイソシアネート基同士の重合によりイソシアヌレート環を生成し易くなる恐れがあるため、エポキシ基とイソシアネート基の反応率を高めるためにはエポキシ基が多少過剰にある方がよい。また多いと未反応のエポキシ樹脂が多くなり過ぎて乳化力が落ちる恐れがある。末端イソシアネート基含有化合物(c)のイソシアネート基1モルに対し、エポキシ樹脂(d)のエポキシ基を1.5〜4.0モルの範囲がより好ましく、1.7〜3.5モルの範囲がさらに好ましい。
【0030】
末端イソシアネート基含有化合物(c)と分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂(d)の反応は公知の方法により行うことができる。具体的な反応方法としては、末端イソシアネート含有化合物(c)に分子内に2個以上のエポキシ基を持つエポキシ樹脂(d)と触媒類を添加して110℃〜200℃で1〜10時間反応させることにより分子鎖内にオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(e)を得ることができる。
【0031】
この反応に用いられる触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン等の3級アミン、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムイオダイド等の4級アンモニウム塩、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属酸化物等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの触媒は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。触媒量は末端イソシアネート基含有化合物(c)に対して、0.01〜10質量%であり、好ましくは0.1〜1質量%である。
【0032】
また、分子内にエポキシ基を2つ以上持つエポキシ樹脂(d)は特に限定されることはなく、公知のエポキシ樹脂を使用することができる。使用できるエポキシ樹脂(d)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、例えばエポトート(登録商標)YD−127、エポトートYD−128、エポトートYD−8125、エポトートYD−825GS、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−019、エポトートYD−901、エポトートYD−902、エポトートYD−903、エポトートYD−904、エポトートYD−907、エポトートYD−909(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、例えばエポトートYDF−170、エポトートYDF−1500、エポトートYDF−8170、エポトートYDF−870GS、エポトートYDF−175S、エポトートYDF−2001、エポトートYDF−2004(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、例えばYSLV−80XY、YSLV−70XY(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ビフェノール型エポキシ樹脂、例えばYX−4000(商品名、三菱化学株式会社製)、ZX−1251(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、例えばエポトートYDC−1312、ZX−1027(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、例えばZX−1201(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、例えばZX−1355(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、例えばTX−0710(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、エピクロン(登録商標)EXA−1515(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、ビスチオエーテル型エポキシ樹脂、例えばYSLV−120TE(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、レゾルシノール型エポキシ樹脂、例えばエポトートZX−1684(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、例えばサントート(登録商標)ST−3000、サントートST−4000(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、エピコート(登録商標)YX−8000、エピコートYX−8034(以上、商品名、三菱化学株式会社製)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、例えばエポトートYDPN−638(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、エピコート152、エピコート154(以上、商品名、三菱化学株式会社製)、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775(以上、商品名、DIC株式会社製)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、例えばエポトートYDCN−700シリーズ(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、エピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−695(以上、商品名、DIC株式会社製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、商品名、日本化薬株式会社製)、アルキルノボラック型エポキシ樹脂、例えばエポトートZX−1071T、ZX−1270、ZX−1342(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、スチレン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、例えばエポトートZX−1247、GK−5855、TX−1210(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、例えばエポトートZX−1142L(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、βナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、例えばESN−155、ESN−185V、ESN−175(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ジナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、例えばESN−300シリーズのESN−355、ESN−375(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、αナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、例えばESN−400シリーズのESN−475V、ESN−485(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、ビフェニルアラルキルフェノール型エポキシ樹脂、例えばNC−3000、NC−3000H(以上、商品名、日本化薬株式会社製)等のポリグリシジルエーテル化合物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、例えばSR−NPG(商品名、坂本薬品工業株式会社製)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばエポトートPG−207、エポトートPG−207GS(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、トリメチロールプロパントリグルシジルエーテル、例えばエポトートYH−300、エポトートZX−1658GS(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、SR−TMP(商品名、坂本薬品工業株式会社製)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、例えばSR−16H、SR−16HL(以上、商品名、坂本薬品工業株式会社製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタンテトラグリシジルエーテル、例えばエポトートYH−434、エポトートYH−434GS(以上、商品名、新日鉄住金化学株式会社製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、例えばTETRAD−X(商品名、三菱ガス化学株式会社製)等のポリグリシジルアミン化合物、ダイマー酸型エポキシ樹脂、例えばYD−171(商品名、新日鉄住金化学株式会社製)等のポリグリシジルエステル化合物、脂肪族環状エポキシ樹脂、例えばセロキサイド(登録商標)2021(商品名、ダイセル化学工業株式会社製)等の脂環式エポキシ化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらのエポキシ樹脂は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。
【0033】
末端イソシアネート基含有化合物(c)の製造で用いられるポリアルキレングリコール化合物(a)とポリイソシアネート化合物(b)の使用割合は、ポリアルキレングリコール化合物(a)の水酸基1モルに対し、ポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基は1.5モル以上3.0モル以下が好ましい範囲である。ポリイソシアネート化合物(b)のイソシアネート基が少ないと重合が進み分子量が大きくなり過ぎる恐れがあり、多いと反応に関与しないイソシアネートが多くなる恐れがある。ポリアルキレングリコール化合物(a)の水酸基1モルに対し、1.7モル以上2.5モル以下の範囲がより好ましく、1.8モル以上2.2モル以下の範囲がさらに好ましい。
【0034】
ポリアルキレングリコール化合物(a)の分子量(数平均)は、1000〜10000であり、好ましくは2000〜10000であり、より好ましくは2000〜8000である。分子量が小さいと乳化性が悪くなる恐れがあり、大きいと耐水性が損なわれる恐れがある。ポリアルキレングリコール化合物(a)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらのポリアルキレングリコール化合物は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。これらの中では、ポリエチレングリコールが好ましい。
【0035】
ポリイソシアネート化合物(b)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネ−ト等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらのポリイソシアネート化合物は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。これらの中では、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが好ましい。
【0036】
ポリアルキレングリコール化合物(a)とポリイソシアネート化合物(b)の反応は公知の方法で行うことができる。具体的な方法としては、ポリアルキレングリコール化合物(a)を溶融加熱してガスパージ、減圧により系内の水分を除去した後に、ポリイソシアネート化合物(b)とを、触媒存在下または無触媒で50℃〜150℃にて0.5〜10時間反応させることにより末端イソシアネート化合物を製造することができる。この反応に用いられる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン等の3級アミン、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの触媒は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。触媒量は用いるポリイソシアネート化合物(b)に対して0.001〜0.5質量%である。
【0037】
本発明の水性硬化性組成物に用いるエポキシ樹脂水性分散体(A)と水性反応性希釈剤(B)に対する、硬化剤(C)の配合割合も重要である。(C)の活性水素基は、(A)と(B)の全エポキシ基1モルに対し、0.7モル以上1.1モル以下の範囲である。これにより塗料の硬化性の最適化や作業性の向上、及び塗膜物性の最適化を行うことができる。(C)の活性水素基は、(A)と(B)の全エポキシ基1モルに対し、0.8モル以上1.1モル以下の範囲が好ましく、0.9モル以上1.05モル以下の範囲がより好ましい。
【0038】
本発明でいう活性水素基とは、エポキシ基と反応性の活性水素を有する官能基(加水分解等により活性水素を生ずる潜在性活性水素を有する官能基や、同等な硬化作用を示す官能基を含む。)のことであり、具体的には、酸無水物基やカルボキシル基やアミノ基やフェノール性水酸基等が挙げられる。なお、活性水素基に関して、1モルのカルボキシル基やフェノール性水酸基は1モルと、アミノ基(NH
2)は2モルと計算される。また、活性水素基が明確ではない場合は、測定によって活性水素当量を求めることができる。例えば、エポキシ当量が既知の、フェニルグリシジルエーテル等のモノエポキシ樹脂と活性水素当量が未知の硬化剤を反応させて、消費したモノエポキシ樹脂の量を測定することによって、使用した硬化剤の活性水素当量を求めることができる。
【0039】
硬化剤(C)としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、酸性ポリエステル類等の通常使用されるエポキシ樹脂用硬化剤を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用しても良いし、2種類以上併用しても良い。これらのうち、アミン系硬化剤が特に好ましい。
【0040】
使用できるアミン系硬化剤としては、ポリアミノアミド類、エポキシ樹脂アミンアダクト、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミン、第3アミン、ヒドラジド、イミダゾール等通常のエポキシ樹脂に使用される硬化剤が使用可能であるが、特にポリアミノアミド類、エポキシ樹脂アミンアダクト等が好ましい。
【0041】
本発明の水性硬化性組成物は必要に応じて、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂等の非反応性希釈剤より選ばれた1種または2種以上の樹脂を所望の目的範囲で含有することができる。また、各種用途に応じてタルク、炭酸カルシウム、シリカ、カーボン等の充填材や、ベンガラ、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化鉄等の顔料及び増粘剤、消泡剤、可塑剤等の添加剤を適量配合することができる。
【0042】
本発明の水性硬化性組成物は、水性の反応性希釈剤を含むため、反応性希釈剤を含まない水性硬化性組成物または非水性の反応性希釈剤を含む水性硬化性組成物を使用した場合のように硬化塗膜の光沢が失われることなく、外観が良好な、耐食性、耐水性に優れた硬化塗膜が得られる。また乳化安定性にも優れ、作業性にも優れたものである。
[実施例及び比較例]
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。測定方法はそれぞれ以下の方法により測定した。
【0044】
エポキシ当量:JIS K7236規格に準じた。
【0045】
粘度:JIS K7233規格、単一円筒回転粘度計法に準じた。
【0046】
平均粒径:レーザー回折・散乱法で測定した。具体的には、マイクロトラックMT−3300EXII測定機(日機装株式会社製)を使用した。
【0047】
水との溶解度:25℃の恒温水槽中で、イオン交換水100gに試料(反応性希釈剤)を0.1gずつを添加、混合して、未溶解分や分離の有無を目視で判断した。溶解度は未溶解分や分離の発生が起こる直前の量(g)とした。なお、添加量が50gを越えた場合はその時点で操作を終了した。
【0048】
密着性及び耐水性:JIS K5600−5−6規格に準じた。塗膜に100個の2mm×2mmの碁盤目を基板に至る深さでカッターナイフで切り込みを入れてからセロハンテープを貼って瞬間的に引き剥がし、基板上に残っている碁盤目数を目視で判定した。
耐水性(1)は、23℃のイオン交換水に1日浸漬した後の塗膜を対象とした。
耐水性(2)は、23℃のイオン交換水に1日浸漬し、温度23℃、湿度55RH%の恒温恒湿装置に2日保管した後の塗膜を対象とした。判定はJIS規格の分類に従った。
【0049】
光沢性:JIS K5600−4−7規格に準じた。具体的には、可変角度光沢計(有限会社 東京電色製、TC−108DP/A)と測色色差計(有限会社 東京電色製、TC−1500MC−88)を使用して、入射角度60°で測定した。
【0050】
合成例1
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入装置を備えたガラス製4ツ口の反応装置に、分子量3200のポリエチレングリコールを480部仕込み、窒素ガスを導入120℃まで加熱溶融し、脱水を行った。その後70℃まで冷却しコロネート(登録商標)T−80(製品名、三井化学株式会社製、2,4−トリレンジイソシアネート(80%)と2,6−トリレンジイソシアネート(20%)の混合物、NCO濃度48%)を55.7部仕込み、80℃で5時間保持した。次にエポトートYD−128(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量187g/eq.)を180部仕込み120℃まで昇温した後、触媒としてテトラメチルアンモニウムブロマイドを0.8部添加し、150℃で5時間反応させIR測定によるイソシアネートの消失を確認し、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e1を得た。得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e1のエポキシ当量は1120g/eq.であった。
【0051】
得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e1を55部、エポトートYD−128を495部混合し、撹拌しながら、イオン交換水450部を徐々に加えて、エポキシ樹脂水性分散体A1を得た。得られたエポキシ樹脂水性分散体A1(樹脂分55%、固形分エポキシ当量204g/eq.、平均粒径0.6μm)は、20℃で90日保管した後の目視判断では分離無く、乳化安定性は良好だった。
【0052】
合成例2
合成例1で得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e1を55部、エポトートYD−011(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、エポキシ当量470g/eq.)を495部、有機溶剤としてエチレングリコールモノブチルエーテルを100部混合し、撹拌しながら、イオン交換水350部を徐々に加えて、エポキシ樹脂水性分散体A2を得た。得られたエポキシ樹脂水性分散体A2(樹脂分55%、固形分エポキシ当量504g/eq.、均粒径0.6μm)は、20℃で90日保管した後の目視判断では分離無く、乳化安定性は良好だった。
【0053】
合成例3
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入装置を備えたガラス製4ツ口の反応装置に、分子量3200のポリエチレングリコールを256部と分子量8000のポリエチレングリコールを560部仕込み、窒素ガスを導入120℃まで加熱溶融し、脱水を行った。その後70℃まで冷却しコロネートT−80を55.7部仕込み80℃で5時間保持した。次にエポトートPG−207(新日鉄住金化学株式会社製、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量320g/eq.)を218部仕込み、120℃まで昇温した後、触媒としてテトラメチルアンモニウムブロマイドを1.2部添加し、150℃で5時間反応させIR測定によるイソシアネート消失を確認し、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e2を得た。得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e2のエポキシ当量は3210g/eq.であった。
【0054】
得られたオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂e2を55部、エポトートYD−128を385部、ビスフェノールAを110部仕込、触媒としてトリフェニルホスフィンを0.1部添加して、150℃で5時間反応させエポキシ当量495g/eq.の樹脂を得た。そこに、エチレングリコールモノブチルエーテルを100部混合し、撹拌しながら、イオン交換水350部を徐々に加えて、エポキシ樹脂水性分散体A3(樹脂分55%、固形分エポキシ当量495g/eq.、平均粒径0.6μm)を得た。得られたエポキシ樹脂水性分散体A3は、20℃で90日保管した後の目視判断では分離無く、乳化安定性は良好だった。
【0055】
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
【0056】
(エポキシ樹脂水性分散体)
エポキシ樹脂水性分散体A1:合成例1で得られたエポキシ樹脂水性分散体
エポキシ樹脂水性分散体A2:合成例2で得られたエポキシ樹脂水性分散体
エポキシ樹脂水性分散体A3:合成例3で得られたエポキシ樹脂水性分散体
【0057】
(反応性希釈剤)
反応性希釈剤B1:エチレングリコールジグリシジルエーテル(SR−EGM、坂本薬品工業株式会社製、エポキシ当量130g/eq.、粘度20mPa・s、水との溶解度50g/水100g以上)
反応性希釈剤B2:ジエチングリコールジグリシジルエーテル(SR−2EG、坂本薬品工業株式会社製、エポキシ当量150g/eq.、粘度25mPa・s、水との溶解度50g/水100g以上)
反応性希釈剤B3:1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(SR−16H、坂本薬品工業株式会社製、エポキシ当量160g/eq.、粘度25mPa・s、水との溶解度0.2g/水100g)
反応性希釈剤B4:C15〜16混合アルコールモノグリシジルエーテル(エポゴーセー(登録商標)AN、四日市合成株式会社製、エポキシ当量300g/eq.、粘度8mPa・s、水との溶解度0.1g/水100g未満)
【0058】
(硬化剤)
硬化剤C1:水溶性変性ポリアミドアミン(TXH−674−B、株式会社 T&K TOKA製、活性水素当量200g/eq.、樹脂分70%)
硬化剤C2:水溶性変性脂肪族ポリアミン(FXI−919、株式会社 T&K TOKA製、活性水素当量200g/eq.、樹脂分80%)
【0059】
実施例1〜6、比較例1〜3
表1に示す配合量(部)で配合して、樹脂分50%の水性硬化性組成物(塗料)を得た。なお、表中の「(A)/(B)比」はエポキシ樹脂水性分散体/反応性希釈剤の質量比を、「(C)/(A)モル比」はエポキシ樹脂水性分散体及び反応性希釈剤の全エポキシ基の1モルに対する硬化剤の活性水素基のモル比を、「−」は不使用をそれぞれ表す。
【0060】
得られた水性硬化性組成物を、メチルエチルケトンで拭き洗浄を行ったスレート板(FB(PS−N)、株式会社 ノザワ製)に、湿潤膜厚が150μmになるようにバーコーターで塗装し、温度23℃、湿度55RH%の恒温恒湿装置内で4日間乾燥させた。得られた塗膜で、密着性、耐水性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例7〜12、比較例4〜6
表2に示す配合量(部)で配合して、樹脂分45%の水性硬化性組成物(塗料)を得た。なお、表中の「(A)/(B)比」はエポキシ樹脂水性分散体/反応性希釈剤の質量比を、「(C)/(A)モル比」はエポキシ樹脂水性分散体及び反応性希釈剤の全エポキシ基の1モルに対する硬化剤の活性水素基のモル比を、「−」は不使用をそれぞれ表す。
【0063】
得られた水性硬化性組成物を、メチルエチルケトンで拭き洗浄を行ったスレート板(FB(PS−N)、株式会社 ノザワ製)に、湿潤膜厚が2mmになるようにバーコーターで塗装し、温度23℃、湿度55RH%の恒温恒湿装置内で7日間乾燥させた。得られた塗膜で、光沢性を評価した。評価結果を表2に示す。