(XはH又は不飽和ポリシロキサン基;Yは脂環式炭化水素環を有するC3〜10の2価の基;Zは(メタ)アクリロイル基;R1はメチル基;R2はC1〜4の脂肪族炭化水素基又はフェニル基;R3はH又はC1〜4の脂肪族炭化水素基;lとmは0を含む整数;nは2〜100の整数;10≦l+m+n≦100)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、より詳細に説明する。
【0014】
本発明のシリコーン樹脂は、上記一般式(1)で表され、脂環式炭化水素環を有する2価の基を介して(メタ)アクリロイル基がシリコーン主鎖に結合している。
一般式(1)において、Yは、脂環式炭化水素環を有する炭素数3〜10の2価の基であり、脂環式炭化水素環としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、デカリン、ノルボナン、アダマンタン、ジシクロペンタジエン等が挙げられるが、反応のし易さ、入手のし易さの観点からシクロヘキサン骨格が推奨される。
Xは、水素原子または一般式(2)で表される1価の基である。すなわち、原料としての一般式(3)で表されるSiH基含有シロキサン樹脂の未反応のSiHの一部がSiOHに変換されたのち脱水縮合に関与しなかった場合には、水素原子となり、そのSiOHが、未反応のSiHと反応して二量体、三量体などの多量体を形成していく場合には、一般式(2)で表される1価の基となる。l、mが0(ゼロ)、すなわちSiHのすべてが脂環式炭化水素環を有する2価の基を介した(メタ)アクリロイル基に変換され、SiH、SiOXを含む構造単位はなくてもよい。なお、一般式(2)において、m−1となっているのは、一般式(1)との対比から明らかなとおり、m構造単位の一つが架橋に使われたことを意味する。また、m−1が0のとき、すなわちSiOHが無い場合は末端の構造を表す。
l、m、nはそれぞれ構造単位の数(平均値)を示し、 lは0〜30、好ましくは0〜25、mは0〜80、好ましくは0〜50、nは2〜100、好ましくは10〜100であり、lとmとnの和が10〜10である。
一般式(2)において、oは構造単位の数(平均値)を示し、0〜10である。
【0015】
本発明のシリコーン樹脂は、下記反応式に示すように、SiH基含有シロキサン樹脂(3)に塩基性触媒、好ましくはヒドロキシルアミン化合物(5)を加え、続いてアルコール性水酸基及び脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマー(4)を混合し反応させることにより、製造される。
【化5】
(ここで、R
5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
なお、一般式(1)〜(4)において、特に断りがない限り、同一の記号は同じ意味を有する。
【0016】
一般式(3)において、R2は、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である場合、その水素原子の一部または全部をハロゲン原子やシアノ基等で置換した基であってもよいが、後述するように副生するR
52NOHを除去することを考慮すると、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基であるのがよい。
【0017】
R4は、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、その水素原子の一部または全部をハロゲン原子やシアノ基等で置換した基であってもよいが、後述するように副生するR
52NOHを除去することを考慮すると、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜4のアルキル基であるのがよい。
【0018】
そして、p個あるR4のうちの少なくとも2つは水素原子である。水素原子の数が1以下であると、硬化物の硬度が低下してしまう。特にp個あるR4中の水素原子の割合(モル比)は、0.33〜1であることが好ましい。すなわち、R4の33〜100%は、水素原子であることが好ましい。
【0019】
一般式(3)で表されるSiH基含有シロキサン樹脂は、公知の方法により製造することができる。例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン又はテトラメチルシクロテトラシロキサンあるいはこれらの両方と、末端基となり得るトリオルガノシリル基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の酸触媒の存在下で、−10〜40℃程度の温度で反応させることによって容易に得ることができる。トリオルガノシリル基を含む化合物としては、例えばヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0020】
また、本発明のシリコーン樹脂を得る際に使用する塩基性触媒としては、ヒドロキシルアミン等があり、ヒドロシルアミンとしては、上記一般式(5)で示すものを用いることができる。
【0021】
ヒドロキシルアミン化合物は、式(3)で表されるSiH基含有シロキサン樹脂と式(4)で表される脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートモノマーとの反応において触媒として機能し、最終的には系外に除去される。したがって、以下においては一般式(3)で表されるSiH基含有シロキサン樹脂のSiH基を基準にして配合割合および反応条件を示す。
【0022】
SiH基含有シロキサン樹脂(3)に、まず、触媒としてのヒドロキシルアミン化合物(5)を混合させる際の割合は、SiH基含有シロキサン樹脂(3)のSiH基に対するヒドロキシアミン化合物の比率(k)が0.1以上1以下となる範囲が好ましい。比率kが1を超えるとヒドロキシルアミン化合物が反応系中に過剰に残存し、経時での安定性に問題が残る。この混合は、0〜110℃、好ましくは80〜110℃で1〜10分程度攪拌反応させることが好適である。より高温または長時間で攪拌させると、ゲル化が進行してしまう。なお、反応終了後のヒドロキシルアミン化合物は中和及び水洗することで系外に除去される。
【0023】
SiH基含有シロキサン樹脂(3)に、触媒としてのヒドロキシルアミン化合物(5)を混合させた溶液に、上記一般式(4)で示される脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートモノマーを添加することで、上記一般式(1)で表される本発明の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート基を有するシリコーン樹脂を得ることができる。
【0024】
直鎖炭化水素基より剛直な脂環式炭化水素基で(メタ)アクリル基とシリコーン主鎖を連結することで、硬度を維持しつつ柔軟性および靭性に優れた硬化皮膜を得ることができる。脂環式炭化水素基の骨格構造の例としてはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、デカリン、ノルボナン、アダマンタン、ジシクロペンタジエン等が挙げられるが、反応のし易さ、入手のし易さの観点からシクロヘキサン骨格が推奨される。
ここで、一般式(4)で表されるアルコール性水酸基及び脂環式炭化水素基を含有する(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル−(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート(CHDMMMA)等が挙げられる。
【0025】
SiH基含有シロキサン樹脂(3)とアルコール性水酸基を有する脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートモノマー(4)とを混合させる際の割合は、特に制限されるものではないが、仕込み段階におけるSiH基含有シロキサン樹脂(3)のSiH基と(メタ)アクリレートモノマー(4)の水酸基との比率(モル比)が0.2以上、特に0.3以上1以下となる範囲が好ましい。
【0026】
上記の反応は、GPCによって脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートモノマー(4)の量の減少を確認しながら、0〜110℃、好ましくは80〜110℃で1〜5時間程度反応させることが好適である。より高温または長時間で攪拌反応させると、ゲル化してしまう。一方、より低温または短時間で攪拌反応させると、反応の進行が不十分であり硬化した樹脂組成物の硬度が低下する懸念がある。
【0027】
このようにして、一般式(1)で表されるシリコーン樹脂を得ることができる。得られたシリコーン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは3000〜50000の範囲、より好ましくは4000〜42000である。より低い分子量になると硬化した樹脂組成物の硬度が低下する傾向があり、より高いと粘度が高くなりすぎて取り扱いに支障がでるため好ましくない。
【0028】
上記の反応は、トルエン、ベンゼン、ヘキサンなどの活性水素を有さない有機溶媒中で行うことが好ましい。アルコールなどの活性水素を有する溶剤を使用すると、SiH基含有シロキサン樹脂(3)と副反応を生じてしまうので好ましくない。
【0029】
得られたシリコーン樹脂(1)、すなわち(メタ)アクリレート基が脂環式炭化水素を介してシリコーン主鎖に導入されたシリコーン樹脂は、耐熱性、耐候性等に優れるシリコーン樹脂の特性と、速硬化性に優れるアクリレート樹脂の特性とを兼ね備えるため、以下に説明するように光によりラジカルを発生させるラジカル重合開始剤を配合したシリコーン樹脂組成物とすることで、短時間で硬化が可能な本発明の硬化型樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
光によりラジカルを発生させる光重合開始剤には、例えば、ビアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイルイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、(1-ヒドロキシシクロヘキシル)フェニルケトン、(1-ヒドロキシ−1-メチルエチル)フェニルケトン、(α-ヒドロキシイソプロピル)(p-イソプロピルフェニル)ケトン、ジエチルチオキサントン、エチルアンスラキノン、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0031】
ラジカル重合開始剤の配合量については、ラジカル重合効果を発揮できる有効量であればよく、特に制限されないが、重合性成分の総量100重量部に対して、通常、0.01〜20.0重量部、好ましくは0.1〜10.0重量部程度であるのがよい。ここで、重合性成分には、上記で説明した本発明のシリコーン樹脂のほか、以下で説明するように必要に応じて添加されるシリコーン樹脂と共重合可能な成分、すなわち末端に重合性不飽和基を有した化合物も含まれる。
【0032】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、末端に重合性不飽和基を有する化合物として、 (メタ)アクリル酸エステル系単量体、例えばメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のモノエステルや、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のジエステルや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリエステルや、ウレタンアクリレート類等を併用して硬化型樹脂組成物を得てもよい。
【0033】
本発明の効果を阻害しない限りにおいて、シリコーン樹脂以外の樹脂、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、アクリルゴム、シリコーンゴム等のその他の樹脂や、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、スチレン系ポリマー粒子、ジビニルベンゼン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子等の充填剤を配合してもよく、更にまた、重合開始助剤、老化防止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤等の改質剤を添加してもよい。
【0034】
シリコーン樹脂組成物の粘度を調整する目的で溶媒を使用してもよい。具体例としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。
【0035】
本発明のシリコーン樹脂組成物を硬化被膜とするには、まず本発明の硬化型樹脂組成物を基材に塗付し、硬化する。また、基材にプライマー層を設けた後、そのプライマー層上に本発明のシリコーン樹脂組成物を塗付して硬化してもよい。
【0036】
基材としては、特に限定されるものではないが、具体例としてはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂成形体が挙げられる。
【0037】
プライマー層に用いられる材料は、通常の硬化型樹脂でよく、特に限定されるものではないが、具体例としてはラジカル重合性(メタ)アクリレートが挙げられる。本発明のシリコーン樹脂組成物の(メタ)アクリレートがプライマーとしての(メタ)アクリレートともラジカル反応をすることにより、より密着性が向上する。
【0038】
本発明のシリコーン樹脂組成物を基材やプライマー層上に塗布する方法は、公知の塗布方法の中から適宜選択することができる。例えば、キャスト法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法等が挙げられる。
【0039】
次いで、基材またはプライマー層上に塗布した本発明のシリコーン樹脂組成物に、波長10〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射し、硬化させることでシリコーン樹脂被膜品を得ることができる。なお、この工程の前に、風乾、又は短時間加熱乾燥することにより塗布被膜から溶液などの揮発性成分を除去する工程を加えても良い。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、パルスキセノンランプ、無電極放電ランプ等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光開始剤の種類に応じて選定すればよい。
【0040】
得られた本発明のシリコーン樹脂被膜は、耐擦傷性、耐クラック性および耐候性に優れる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例等により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0042】
実施例1
反応容器に、トルエン28.2 gと下記構造式(i)
【化6】
(式中、Rはメチル基であり、q= 30、r = 0である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン14.8 gを投入した。一方、滴下ロートにトルエン28.2 gと1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)15.6 gの混合液を準備した。
反応容器を110℃まで昇温し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン89gを加えた後、滴下ロートからCHDMMAとトルエン混合液を30分かけて滴下した。滴下終了後、110℃で5時間攪拌した。攪拌が終了したら室温まで冷却し、クエン酸水溶液および水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムを用いて脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別除去し、濃縮することによって、脂環式炭化水素基を介してアクリレートがシリコーン主鎖に結合したシリコーン樹脂27g(回収率91%)を得た。なお、得られた樹脂をシリコーン樹脂Aとする。
【0043】
得られたシリコーン樹脂Aは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に可溶な無色の粘性液体であった。シリコーン樹脂AのGPCチャートから原料であるCHDMMAのピークは反応前と比べて97%消費されており、重量平均分子量(M
W)が40513の樹脂が得られていることがわかった。またシリコーン樹脂AのIR解析からアクリル基由来のピークが確認された。表1に、合成に用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンの式(i)における繰り返し数(q, r)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに対してCHDMMAを加えたモル当量、および反応後におけるCHDMMAの消費率を示す。また、得られたシリコーン樹脂Aの推定される構造を、下記構造式(ii)で表す。なお、式(ii)においては、一般式(2)におけるoは9であり、8個が繰り返し構造であり、1個がm−1が0である末端構造である。
【0044】
【化7】
(式中Meはメチル基を示す。以下同じ。)
【0045】
実施例2
反応容器に、トルエン28.2 gと上記構造式(i)(式中、Rはメチル基であり、q = 30、r = 0である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン14.8 gを投入した。一方、滴下ロートにトルエン28.2 gとCHDMMA7.8 gの混合液を準備した。
反応容器を110℃まで昇温し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン89gを加えた後、滴下ロートからCHDMMAとトルエン混合液を15分かけて滴下した。以下実施例1と同様にして脂環式炭化水素基を介してアクリレートがシリコーン主鎖に結合したシリコーン樹脂20g(回収率93%)を得た。なお、得られた樹脂をシリコーン樹脂Bとする。
【0046】
得られたシリコーン樹脂Bは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に可溶な無色の粘性液体であった。シリコーン樹脂BのGPCチャートから原料であるCHDMMAのピークは反応前と比べて99%消費されており、重量平均分子量(M
W)が30503の樹脂が得られていることがわかった。またシリコーン樹脂BのIR解析からアクリル基由来のピークが確認された。表1に、用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンの式(i)における繰り返し数(q, r)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに対してCHDMMAを加えたモル当量および、反応後におけるCHDMMAの消費率を示す。また、得られたシリコーン樹脂Bの推定される構造を下記構造式(iii)で表す。なお、式(iii)においては、一般式(2)におけるoは9であり、8個が繰り返し構造であり、1個がm−1が0である末端構造である。
【0047】
【化8】
【0048】
実施例3
反応容器に、トルエン28.2 gと上記構造式(i) (式中、Rはメチル基であり、q = 10、r=20である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン14.7 gを投入した。一方、滴下ロートにトルエン28.2 gとCHDMMA15.6 gの混合液を準備した。
反応容器を110℃まで昇温し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン89gを加えた後、滴下ロートからCHDMMAとトルエン混合液を30分かけて滴下した。以下実施例1と同様にして脂環式炭化水素基を介してアクリレートがシリコーン主鎖に結合したシリコーン樹脂26g(回収率96%)を得た。なお、得られた樹脂をシリコーン樹脂Cとする。
【0049】
得られたシリコーン樹脂Cは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に可溶な無色の粘性液体であった。シリコーン樹脂CのGPCチャートから原料であるCHDMMAのピークは反応前と比べて96%消費されており、重量平均分子量(M
W)が4250の樹脂が得られていることがわかった。またシリコーン樹脂CのIR解析からアクリル基由来のピークが確認された。表1に、用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンの式(i)における繰り返し数(m, n)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに対してCHDMMAを加えたモル当量、および反応後におけるCHDMMAの消費率を示す。また、得られたシリコーン樹脂Cの推定される構造を下記構造式(iv)で表す。
【0050】
【化9】
【0051】
比較例1
反応容器に、トルエン28.2 gと上記構造式(i) (式中、Rはメチル基であり、q = 30、r = 0である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン14.8 gを投入した。一方、滴下ロートにトルエン28.2 gとメタクリル酸2-ヒドロキシエチル11.4 gを準備した。反応容器を110℃まで昇温し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン89gを加えた後、滴下ロートにあるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとトルエン混合液を30分かけて滴下した。以下実施例1と同様にして、アクリレートが結合したシリコーン樹脂22.3g(回収率97%)を得た。なお、得られた樹脂をシリコーン樹脂Dとする。
【0052】
得られたシリコーン樹脂Dは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に可溶な無色の粘性液体であった。シリコーン樹脂DのGPCチャートから原料であるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルのピークは反応前と比べて99%消費されており、重量平均分子量(M
W)が33512の樹脂が得られていることがわかった。またシリコーン樹脂DのIR解析からアクリル基由来のピークが確認された。表1に、用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造単位の繰り返し数(m, n)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに対してメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを加えたモル当量、および反応後におけるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの消費率を示す。
【0053】
比較例2
反応容器に、トルエン28.2 gと上記構造式(i) (式中、Rはメチル基であり、q = 30、r = 0である。)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン14.8 gを投入した。一方、滴下ロートにトルエン28.2 gとメタクリル酸2-ヒドロキシエチル 5.7gを準備した。反応容器を110℃まで昇温し、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン89gを加えた後、滴下ロートにあるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとトルエン混合液を30分かけて滴下した。以下実施例1と同様にしてアクリレートが結合したシリコーン樹脂17.4g(回収率95%)を得た。なお、得られた樹脂をシリコーン樹脂Eとする。
【0054】
得られたシリコーン樹脂Eは、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶媒に可溶な無色の粘性液体であった。シリコーン樹脂EのGPCチャートから原料であるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルのピークは反応前と比べて97%消費されており、分子量(MW)が24500の樹脂が得られていることがわかった。またシリコーン樹脂EのIR解析からアクリル基由来のピークが確認された。表1に、用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造単位の繰り返し数(m, n)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサンに対してメタクリル酸2-ヒドロキシエチルを加えたモル当量と、反応後におけるメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの消費率を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
上記実施例1〜3および比較例1, 2で得られたシリコーン樹脂硬化被膜の物性値を表1に示した。シリコーン樹脂の硬化処理に関しては、基材として幅10cm×長10cm×厚さ3mmのポリカーボネート(PC)樹脂板(カーボグラスポリシュクリア、旭ガラス製)の片面にラジカル重合性(メタ)アクリル化合物からなるプライマー層を設け、そのプライマー層上に、シリコーン樹脂A〜Eに光重合開始剤(シリコーン樹脂に対し5wt%)及び溶媒(シリコーン樹脂に対し400wt%)を配合したシリコーン樹脂組成物をフローコート法で塗布した。続いて80℃の雰囲気下で加熱し溶媒を除去し、紫外線硬化処理することでシリコーン樹脂硬化被膜を形成した。紫外線硬化はランプ強度230 mw、2700 mJの条件で行った。
【0057】
(耐擦傷性)
テーバー摩耗試験JIS R 3212(テーパー摩耗試験機:安田精機製作所、摩耗輪:CS10-F、500 g、100回転)後の硬化膜のヘイズ(%)をヘイズメーターで測定し、初期の膜のヘイズとの差により以下の基準に従って測定した。
○:10以下
×:10以上
【0058】
(耐クラック性)
硬化膜を120℃の雰囲気下で40分加熱し冷却した後、クラックの有無を目視で判定した。
○:クラックなし
×:クラックあり
【0059】
(耐候性)
メタリングウェザーメーター促進耐候性試験において40サイクル繰り返した後の、クラックと剥離の有無を目視にて確認した。
○:クラックまたは剥離なし
×:クラックまたは剥離あり
【0060】
表1の結果から、比較例1及び2は、実施例1〜3と比べると、そのシリコーン樹脂硬化被膜はクラック及び剥離が生じていることから、シリコーン樹脂硬化被膜としての靱性が不足していると推察される。