【解決手段】半導体装置は、N型半導体層の表層部に設けられたP型ベース領域と、P型ベース領域の内側に設けられたN型エミッタ領域と、N型半導体層の表層部にP型ベース領域と離間して設けられたP型コレクタ領域と、N型半導体層の表面に設けられ、P型ベース領域およびN型エミッタ領域に接するゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜の上に設けられたゲート電極と、N型半導体層の内部の、P型ベース領域とP型コレクタ領域との間に設けられ、一端がN型半導体層の表層部に延在するN型半導体に接続され、且つN型半導体層の深さ方向に伸びる絶縁体を有する柱状構造物と、を含む。
前記柱状構造物は、前記P型ベース領域と前記P型コレクタ領域とが並ぶ方向であるゲート長方向に沿って分割されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記柱状構造物は、前記P型ベース領域と前記P型コレクタ領域とが並ぶ方向と交差する方向であるゲート幅方向に沿って分割されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記P型ベース領域と前記P型コレクタ領域とが並ぶ方向であるゲート長方向における前記柱状構造物の幅は、前記絶縁体領域の前記ゲート長方向における長さの6.7%以上29.2%以下であることを特徴とする請求項2または請求項6に記載の半導体装置。
前記P型ベース領域と前記P型コレクタ領域とが並ぶ方向であるゲート長方向における前記柱状構造物の幅は、4μm以上17.5μm以下であることを特徴とする請求項2または6に記載の半導体装置。
前記柱状構造物と前記P型ベース領域との距離は、前記柱状構造物と前記P型コレクタ領域との距離よりも短いことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置。
前記柱状構造物との間に前記N型半導体を挟むように、前記N型半導体層の表層部に絶縁体領域を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
前記トレンチの内部の前記柱状構造物の上部を前記N型半導体で埋める工程は、前記トレンチの側壁から前記N型半導体の結晶を成長させる工程を含むことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の製造方法。
前記トレンチの内部の前記柱状構造物の上部を前記N型半導体で埋めた後に、前記N型半導体層の表面を平坦化する工程を更に含むことを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置1の構成を示す断面図である。半導体装置1は、基板層11、絶縁体層12およびN型半導体層13が積層されて構成されるSOI(Silicon on Insulator)基板10を含んで構成されている。
【0013】
基板層11は、例えばシリコン等の半導体材料により構成される。絶縁体層12は、例えば、厚さ4μm程度のSiO
2等の絶縁体によって構成される。N型半導体層13は、例えば、厚さ20μm程度のN型シリコンによって構成されている。
【0014】
半導体装置1は、N型半導体層13の表層部にそれぞれ設けられたP型ベース領域43、N型エミッタ領域44およびP型コレクタ領域45を含む所謂横型のIGBTを構成するものである。半導体装置1は、SiO
2等の絶縁体からなる素子分離領域31、フィールド酸化膜32およびSOI基板10の絶縁体層12によって隣接する他の半導体装置と電気的に分離されている。
【0015】
P型ベース領域43とP型コレクタ領域45とは、N型半導体層13の表層部に設けられたフィールド酸化膜33によって隔てられている。すなわち、フィールド酸化膜33は、互いに離間して設けられたP型ベース領域43とP型コレクタ領域45との間に延在しており、P型ベース領域43は、フィールド酸化膜33の一端側においてフィールド酸化膜33に隣接して設けられ、P型コレクタ領域45は、フィールド酸化膜33の他端側においてフィールド酸化膜33に隣接して設けられている。N型エミッタ領域44は、P型ベース領域43の内側のフィールド酸化膜33から離間した位置に設けられている。なお、フィールド酸化膜33は、本発明における絶縁体領域の一例である。
【0016】
ゲート絶縁膜41は、例えば、厚さ0.1μm程度のSiO
2等の絶縁体からなり、フィールド酸化膜33に隣接し、且つP型ベース領域43とN型エミッタ領域44との界面を跨ぐようにN型半導体層13の表面に設けられている。すなわち、ゲート絶縁膜41は、P型ベース領域43およびN型エミッタ領域44の双方に接している。
【0017】
ゲート電極42は、例えば、リンを含む多結晶シリコン等からなり、ゲート絶縁膜41の全体およびフィールド酸化膜33の一部を覆うように設けられている。
【0018】
中間絶縁膜50は、SiO
2等の絶縁体からなり、ゲート電極42、P型ベース領域43、N型エミッタ領域44、P型コレクタ領域45を覆っている。コンタクト51は、タングステン等の導電体からなり、中間絶縁膜50を貫通し、P型ベース領域43およびN型エミッタ領域44の双方に接続されている。コンタクト52は、タングステン等の導電体からなり、中間絶縁膜50を貫通してP型コレクタ領域45に接続されている。中間絶縁膜50の表面には、コンタクト51および52にそれぞれ接続されたアルミニウム等の導電体からなる配線53および54が設けられている。
【0019】
半導体装置1は、N型半導体層13の内部のP型ベース領域43とP型コレクタ領域45との間に、N型半導体層13の深さ方向に伸びる柱状構造を有する絶縁体ピラー20を有する。絶縁体ピラー20は、SiO
2等の絶縁体を含んで構成されている。絶縁体ピラー20は、一端がN型半導体層13の表層部に延在するN型半導体に接続され、他端が絶縁体層12に接続されている。絶縁体ピラー20の上方には、フィールド酸化膜33が延在しており、絶縁体ピラー20は、フィールド酸化膜33との間にN型半導体を挟んでフィールド酸化膜33から離間している。絶縁体ピラー20は、N型半導体層13の表層部にスリットを形成して、キャリアの移動経路を狭窄するように作用する。絶縁体ピラー20は、後述するように、N型エミッタ領域44およびP型コレクタ領域45からN型半導体層13に注入されるキャリアの流れを規制する。
【0020】
本実施形態において、絶縁体ピラー20は、P型ベース領域43およびP型コレクタ領域45が並ぶ方向であるゲート長方向において、P型ベース領域43により近い位置に配置されている。すなわち、絶縁体ピラー20とP型ベース領域43との距離は、絶縁体ピラー20とP型コレクタ領域45との距離よりも短い。また、絶縁体ピラー20の先端は、P型ベース領域43の底部よりも上方に位置している。なお、絶縁体ピラー20は、本発明における柱状構造物の一例である。
【0021】
以下に、半導体装置1の製造方法について説明する。
図2〜
図4は、半導体装置1の製造方法を示す断面図である。
【0022】
はじめに、基板層11、絶縁体層12およびN型半導体層13を含むSOI基板10を用意する(
図2(a))。N型半導体層13は、例えば、不純物として3×10
14cm
−3程度のリンを含有する厚さ20μm程度のシリコンによって構成されている。
【0023】
次に、公知の熱酸化法により、N型半導体層13の表面に厚さ0.1μm程度のシリコン酸化膜101を形成し、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、絶縁体ピラー20の形成位置にSOI基板10の絶縁体層12に達するトレンチ102を形成する(
図2(b))。絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wに対応するトレンチ102の幅は、例えば5μm程度とすることができる。
【0024】
次に、公知の熱酸化法によりトレンチ102の内壁をシリコン酸化膜で覆った後、公知のCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、トレンチ102の内部に、SiO
2等の絶縁体20Aを埋め込む。その後、公知のエッチバック法により、N型半導体層13の表面に形成されたシリコン酸化膜101を除去するとともに、トレンチ102の内部に埋め込まれた絶縁体20Aのうち、上部1.5μm程度を除去する。これにより、SOI基板10の絶縁体層12に接続された絶縁体ピラー20が形成される(
図2(c))。なお、絶縁体ピラー20は、少なくともN型半導体層13との界面が絶縁体であればよく、トレンチ102の内壁を絶縁体で覆ったのち、トレンチ102内部の残りの部分に導電体または半導体を埋め込んでもよい。また、トレンチ102内部に絶縁体を形成する処理を省略してもよい。すなわち、絶縁体ピラー20を空隙によって構成してもよい。
【0025】
次に、公知のエピタキシャル法により、N型半導体層13の不純物濃度と同程度の3×10
14cm
−3程度のリンを含有するシリコン結晶を成長させる。絶縁体ピラー20の上部においては、露出したトレンチ102の側壁からシリコン結晶が横方向に成長し、トレンチ102内部の絶縁体ピラー20の上部が、N型半導体層13と同程度の濃度のリンを含有するN型シリコン13Aで塞がれる。また、N型半導体層13の表面にもシリコン結晶が成長する。その後、公知のCMP((Chemical Mechanical Polishing)法により、当初のN型半導体層13の表面に合わせて平坦化処理を行う(
図3(a))。
【0026】
次に、N型半導体層13の素子分離領域31の形成位置に絶縁体層12に達するトレンチを形成し、このトレンチに熱酸化法およびCVD法を用いて、SiO
2等の絶縁体を埋め込んで素子分離領域31を形成する。その後、N型半導体層13の表層部に公知のLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により、厚さ0.8μm程度のSiO
2等の絶縁体からなるフィールド酸化膜32および33を形成する(
図3(b))。フィールド酸化膜33は、絶縁体ピラー20の上方に延在するように設けられる。先の工程において絶縁体ピラー20の上部に形成されたN型シリコン13Aは、フィールド酸化膜33と絶縁体ピラー20との間に配置される。フィールド酸化膜33と絶縁体ピラー20との距離d1は、例えば、1.2μm程度とすることができる。また、フィールド酸化膜33のゲート長方向における長さLは、例えば、60μm程度とすることができる。
【0027】
次に、公知の熱酸化法により、N型半導体層13の表面のフィールド酸化膜33の一端側においてフィールド酸化膜33に隣接するように、厚さ0.1μm程度のSiO
2等の絶縁体からなるゲート絶縁膜41を形成する。続いて、公知のCVD法により、リンを含む多結晶シリコン等からなるゲート電極42を形成する。ゲート電極42は、ゲート絶縁膜41の全体およびフィールド酸化膜33の一部を覆うように形成される。続いて、公知のイオン注入法とそれに続く熱処理により、N型半導体層13の表層部に、P型ベース領域43、N型エミッタ領域44およびP型コレクタ領域45を形成する(
図3(c))。P型ベース領域43およびP型コレクタ領域45は、それぞれ、不純物として例えばボロンを含み、N型エミッタ領域44は、不純物として例えばヒ素を含む。P型ベース領域43は、N型半導体層13の表層部の、ゲート電極42が形成されたフィールド酸化膜33の一端側に形成される。N型エミッタ領域44は、P型ベース領域43の内側のフィールド酸化膜33から離間した位置に形成される。P型コレクタ領域45は、N型半導体層13の表層部の、フィールド酸化膜33の他端側に形成される。P型ベース領域43と絶縁体ピラー20との間の距離d2は、例えば、0.15μmとすることができる。
【0028】
次に、公知のCVD法により、N型半導体層13の全体を覆うようにSiO
2等の絶縁体からなる中間絶縁膜50を形成する。続いて、中間絶縁膜50を貫通し、N型半導体層13の表面に達するトレンチ(図示ぜず)を形成する。続いて、上記のトレンチの内壁に窒化チタン等のバリアメタルを形成した後、トレンチ内部にタングステン等の導電体を埋め込むことにより、コンタクト51および52を形成する。コンタクト51は、P型ベース領域43およびN型エミッタ領域44の双方に接続され、コンタクト52は、P型コレクタ領域45に接続される。続いて、公知のスパッタ法により、中間絶縁膜50の表面にアルミニウム等の配線材料を堆積させる。その後、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術により、配線材料をパターニングすることにより、コンタクト51および52にそれぞれ接続された配線53および54を形成する。
【0029】
半導体装置1は、基板層11、P型ベース領域43、N型エミッタ領域44をゼロ電位とし、P型コレクタ領域45に正電位を印加した状態で、ゲート電極42に閾値電圧以上の正電位(例えば15V)を印加することによりゲート絶縁膜41直下のシリコン表面にチャネルが形成され、P型コレクタ領域45からN型エミッタ領域44に向けて電流が流れる。飽和状態におけるコレクタ・エミッタ間の電圧をコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)と称する。コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)は、低い程、損失が小さく、高性能であるといえる。
【0030】
一方、ゲート電極42を他の電極同様ゼロ電位とした場合には、P型コレクタ領域45に正電位を印加しても、チャネルは形成されず、電流はほとんど流れない。しかしながら、この状態においても、P型コレクタ領域45の電位を増大させると、降伏現象により急激に電流が流れ、最終的に半導体装置1は破壊に至る。この急激に電流が増加し、一定電流に達する時のコレクタ・エミッタ間の電圧を耐圧(BVces)と称する。耐圧BVcesは高い程、高圧での用途に用いることが可能となり、同一用途においては破壊に至るマージンを稼ぐことが可能であることから、望ましいとされる。
【0031】
一般的に、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)と耐圧BVcesとはトレードオフの関係にある。例えば、N型半導体層13の不純物濃度を高くすることにより、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を低くすることができるが、耐圧BVcesは低下する。
【0032】
本発明の実施形態に係る半導体装置1と、
図12に示す比較例に係る半導体装置2との特性比較をTCAD(Technology CAD)によるシミュレーションにより行った。以下にその結果について説明する。
図12に示すように、比較例に係る半導体装置2は、絶縁体ピラー20を有していない点において、本発明の実施形態に係る半導体装置1と異なる。その他の構造および各部の寸法については、本発明の実施形態に係る半導体装置1と同一である。なお、半導体装置1および2の奥行きを1μmとして各シミュレーションを行った。
【0033】
図5(a)は、ゲート電圧を15Vとした場合における、コレクタ電圧とコレクタ電流の関係、すなわち出力特性を示すグラフであり、実線が本発明の実施形態に係る半導体装置1に対応し、破線が比較例に係る半導体装置2に対応する。10μAのコレクタ電流を流したときのコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)は、比較例に係る半導体装置2が2.2Vであったのに対し、本発明の実施形態に係る半導体装置1は、1.3Vであった。
【0034】
また、コレクタ電圧を30Vとした場合のコレクタ電流は、比較例に係る半導体装置2が38μAであったのに対し、本発明の実施形態に係る半導体装置1は、59μAであった。
【0035】
図5(b)は、ゲート電圧をゼロ電位とした状態におけるコレクタ電圧とコレクタ電流の関係、すなわち耐圧特性を示すグラフであり、実線が本発明の実施形態に係る半導体装置1に対応し、破線が比較例に係る半導体装置2に対応する。コレクタ電流が1nAに至るコレクタ電圧(VBces)は、比較例に係る半導体装置2が532Vであったのに対し、本発明の実施形態に係る半導体装置1は、530.5Vであった。
【0036】
以上のように、本発明の実施形態に係る半導体装置1によれば、比較例に係る半導体装置2と略同等の耐圧特性を維持しつつ、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を比較例に係る半導体装置2に対して40%程度低減させることができた。これはパワー素子として最も重要な指標の1つである導通損失を40%削減できることを意味している。また、本発明の実施形態に係る半導体装置1の電流駆動能力を、比較例に係る半導体装置2の1.5以上とすることができた。このように、本発明の実施形態に係る半導体装置1によれば、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)と耐圧BVcesとの間のトレードオフ関係を大幅に改善することができる。
【0037】
本発明の実施形態に係る半導体装置1において、耐圧特性を損なうことなく出力特性が改善されるメカニズムについて以下に考察する。
【0038】
図6(a)および
図6(b)は本発明の実施形態に係る半導体装置1における、電子密度分布および正孔密度分布のシミュレーション結果を示す図である。
図7(a)および
図7(b)は、比較例に係る半導体装置2における、電子密度分布および正孔密度分布のシミュレーション結果を示す図である。いずれの場合においても、エミッタ電圧を0V、ゲート電圧を15V、コレクタ電圧を2Vとした。
【0039】
N型エミッタ領域44およびP型コレクタ領域45の間に延在するドリフト領域における電子密度および正孔密度は、本発明の実施形態に係る半導体装置1の方が、比較例に係る半導体装置2よりも高くなった。これは、以下のプロセスを含むキャリア注入の正帰還によって、ドリフト領域となるN型半導体層13内のキャリア密度が増大したものと推測される。すなわち、(1)IGBT特有の伝導度変調効果によりP型コレクタ領域45からN型半導体層13(ドリフト領域)に注入された正孔が、絶縁体ピラー20によりせき止められ、N型半導体層13(ドリフト領域)に滞留する。(2)N型半導体層13(ドリフト領域)に滞留する正孔に引き寄せられ、過剰な電子がN型エミッタ領域44からN型半導体層13(ドリフト領域)に注入される。(3)これにより、正孔がP型コレクタ領域45からN型半導体層13(ドリフト領域)に更に注入される。
【0040】
本発明の実施形態に係る半導体装置1によれば、N型半導体層13(ドリフト領域)における電子密度および正孔密度が高まることで、
図5(a)に示すように、比較例よりも高い出力特性が得られたものと考えられる。一方、耐圧BVcesは、主にドリフト領域の長さ、厚さ、およびドリフト領域内の不純物濃度で決まる。絶縁体ピラー20の存在によって、これらのパラメータは変化しないので、本発明の実施形態に係る半導体装置1と比較例に係る半導体装置2とで、同等の耐圧特性が得られたものと考えられる。
【0041】
以下に、絶縁体ピラー20に関する最適構造を検討した結果について説明する。
【0042】
図8(a)は、絶縁体ピラー20とフィールド酸化膜33との距離d1を変化させた場合の、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)および耐圧BVcesの変化をシミュレーションにより取得した結果を示すグラフである。なお、絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wを5μmとし、絶縁体ピラー20とP型ベース領域との距離d2を0.15μmとした。コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)の値は、ゲート電圧を15Vとし、10μAのコレクタ電流を流したときの値である。耐圧BVcesの値は、コレクタ電流が1nAに至るときの値である。絶縁体ピラー20とフィールド酸化膜33との距離d1を0.1μm以上2μm以下とした場合に、耐圧BVcesの低下を伴うことなく、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を、比較例に係る半導体装置2における値(2.2V)よりも小さくすることができた。
【0043】
図8(b)は、絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wを変化させた場合の、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)および耐圧BVcesの変化をシミュレーションにより取得した結果を示すグラフである。なお、絶縁体ピラー20とフィールド酸化膜33との距離d1を1.2μmとし、絶縁体ピラー20とP型ベース領域43との距離d2を0.15μmとした。コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)の値は、ゲート電圧を15Vとし、10μAのコレクタ電流を流したときの値である。耐圧BVcesの値は、コレクタ電流が1nAに至るときの値である。絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wをおよそ4μm以上17.5μm以下(すなわち、フィールド酸化膜33のゲート長方向における長さ(60μm)の6.7%以上29.2%以下)とした場合に、耐圧BVcesの低下を伴うことなく、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を、比較例に係る半導体装置2における値(2.2V)よりも小さくすることができた。また、絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wを10μm以上15μm以下(すなわち、フィールド酸化膜33のゲート長方向における長さ(60μm)の16.7%以上25.0%以下)とした場合には、比較例に係る半導体装置2よりもコレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)が小さくなるとともに、比較例に係る半導体装置2よりも耐圧BVcesが高くなった。
【0044】
図8(c)は、絶縁体ピラー20とP型ベース領域43との距離d2を変化させた場合の、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)および耐圧BVcesの変化をシミュレーションにより取得した結果を示すグラフである。なお、絶縁体ピラー20とフィールド酸化膜33との距離d1を1.2μmとし、絶縁体ピラー20のゲート長方向における幅wを5μmとした。コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)の値は、ゲート電圧を15Vとし、10μAのコレクタ電流を流したときの値である。耐圧BVcesの値は、コレクタ電流が1nAに至るときの値である。絶縁体ピラー20とP型ベース領域43との距離d2をおよそ−0.5μm以上4μm以下とした場合に、耐圧BVcesの低下を伴うことなく、コレクタ・エミッタ間飽和電圧Vce(sat)を、比較例に係る半導体装置2における値(2.2V)よりも小さくすることができた。なお、絶縁体ピラー20とP型ベース領域43との距離d2が負の値であることは、絶縁体ピラー20がP型ベース領域43内に侵入し、これらが重なっていることを意味する。
【0045】
[第2の実施形態]
以下に、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0046】
はじめに、基板層11、絶縁体層12およびN型半導体層13を含むSOI基板10を用意する。次に、公知の熱酸化法によりN型半導体層13の表面に厚さ0.1μm程度のシリコン酸化膜101を形成し、その後、公知のCVD法により、シリコン酸化膜101の表面に厚さ0.1μm程度のシリコン窒化膜103を形成する。続いて、公知のフォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、絶縁体ピラー20の形成位置に絶縁体層12に達するトレンチ102を形成する(
図9(a))。
【0047】
次に、公知の熱酸化法によりトレンチ102の内壁をシリコン酸化膜で覆った後、公知のCVD法により、トレンチ102の内部に、絶縁体ピラー20を構成するSiO
2等の絶縁体20Aを埋め込む。その後、公知のエッチバック法により、シリコン窒化膜103上に堆積した絶縁体を除去するとともに、トレンチ102の内部に埋め込まれた絶縁体20Aのうち、上部1.5μm程度を除去する。これにより、絶縁体層12に接続された絶縁体ピラー20が形成される(
図9(b))。
【0048】
次に、公知のエピタキシャル法により、N型半導体層13の不純物濃度と同程度の3×10
14cm
−3程度のリンを含有するシリコン結晶を成長させる。絶縁体ピラー20の上部においては、露出したトレンチ102の側壁からシリコン結晶が横方向に成長し、トレンチ102内部の絶縁体ピラー20の上部が、N型半導体層13の不純物濃度と同程度の濃度のリンを含有するN型シリコン13Aで塞がれる。一方、N型半導体層13の表面に形成されたシリコン窒化膜103上には、シリコン結晶は成長しない。次に、シリコン酸化膜101およびシリコン窒化膜103をエッチングにより除去して、N型半導体層13の表面を露出させる。その後、公知のCMP((Chemical Mechanical Polishing)法により、当初のN型半導体層13の表面に合わせて平坦化処理を行う(
図9(c))。
【0049】
以降の工程は、上記した第1の実施形態に係る製造方法と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0050】
第2の実施形態に係る製造方法によれば、N型半導体層13の表面にシリコン窒化膜103を形成したことにより、トレンチ102内部の絶縁体ピラー20の上部をN型シリコン13Aで埋めるための結晶成長工程において、N型半導体層13上には、シリコン結晶は成長しない。これにより、その後の平坦化処理における制御性を高めることが可能となる。
【0051】
[変形例]
図10(a)〜
図10(d)は、絶縁体ピラーの形態のバリエーションを示す図であり、ゲート長方向およびゲート幅方向に平行な平面における絶縁体ピラーの構成を示す。
【0052】
図10(a)〜
図10(d)に示すように、絶縁体ピラー20を複数のセグメント20aに分割することにより、絶縁体ピラー20を形成するためのトレンチのサイズを小さくすることができる。これにより、トレンチ内部への絶縁体の埋め込みと、トレンチ内部に埋め込まれた絶縁体上部におけるN型シリコンの埋め込みが容易となる。
【0053】
図10(a)は、絶縁体ピラー20をゲート幅方向に沿って分割した複数のセグメント20aで構成した場合の例である。この構成によれば、絶縁体ピラーを含むIGBTと、絶縁体ピラーを含まないIGBTとを、交互に並列接続した場合と等価となる。この構造においても耐圧特性を維持しつつ出力特性を改善することができる。
【0054】
図10(b)は、ゲート幅方向に沿って分割された絶縁体ピラー20のセグメント20aを、ゲート長方向に並置した場合の例である。
図10(b)に示す例では、一方の列に配置されたセグメント20aが、他方の列に配置されたセグメント20aの間隙に対応する位置に配置されている。このように、複数の列をなすように配置されたセグメント20aを互い違いに配置することで、ゲート長方向に流れるキャリアがセグメント20aの間隙を通り抜けてしまうことを防止でき、上記したドリフト領域内のキャリア密度を高める効果を維持できる。従って、耐圧特性を維持しつつ出力特性を改善することができる。
【0055】
図10(c)は、絶縁体ピラー20のセグメント20aをゲート長方向に沿って分割した場合の例である。
図10(d)は、絶縁体ピラー20のセグメント20aを、千鳥状に配置した場合の例である。絶縁体ピラー20のセグメント20aをこのように配置した場合においても、ゲート長方向に流れるキャリアがセグメント20aの間隙を通り抜けてしまうことを防止でき、上記したドリフト領域内のキャリア密度を高める効果を維持できる。従って、耐圧特性を維持しつつ出力特性を改善することができる。
【0056】
なお、上記の各実施形態においては、SOI基板10を用いる場合について説明したが、絶縁体層12を備えていないSOI基板以外の半導体基板を使用する場合にも、本発明を適用することは可能である。
【0057】
また、上記の実施形態においては、フィールド酸化膜33をP型ベース領域43とP型コレクタ領域45との間の全域に亘って延在させる場合を例示したが、フィールド酸化膜33は、
図11に示すように、P型ベース領域43とP型コレクタ領域45との間の一部の領域に延在させてもよい。この場合、絶縁体ピラー20は、フィールド酸化膜33の直下に配置されていなくてもよく、絶縁体ピラー20は、N型半導体層13の表面から離間して設けられる。換言すれば、絶縁体ピラー20は、N型半導体層13の表面から間隙を隔てて設けられる。