特開2016-193400(P2016-193400A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193400(P2016-193400A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】光触媒セル
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20161021BHJP
【FI】
   B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-74096(P2015-74096)
(22)【出願日】2015年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】河野 充
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA48A
4G169DA06
4G169EA08
4G169HA01
4G169HC32
4G169HF05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光触媒反応の効率が向上した光触媒セルを提供する。
【解決手段】金属基板2、金属基板2上の光入射側に接して設けられる光触媒膜3、金属基板2の光触媒膜3側とは反対側に、金属基板2と離間して設けられる正極6、光触媒膜3の金属基板2側とは反対側に、光触媒膜3と離間して設けられる負極7、及び正極6と負極7とを電気的に接続した外部電源9を備えており、光触媒セル10が、光触媒膜3の光入射側の面積に対する、負極7による被覆率が10〜90%の範囲内である光触媒セル10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板、前記金属基板上の光入射側に接して設けられる光触媒膜、前記金属基板の該光触媒膜側とは反対側に、前記金属基板と離間して設けられる正極、前記光触媒膜の該金属基板側とは反対側に、前記光触媒膜と離間して設けられる負極、及び前記正極と前記負極とを電気的に接続した外部電源を備えている光触媒セルであって、前記光触媒膜の光入射側の面積に対する、前記負極による被覆率が10%以上90%以下の範囲内であることを特徴とする光触媒セル。
【請求項2】
前記正極の前記金属基板側の面に接して設けられる第一の絶縁体、及び前記負極の前記光触媒膜側の面に接して設けられる第二の絶縁体と、を備えることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒セル。
【請求項3】
前記負極が連続構造であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光触媒セル。
【請求項4】
前記第一の絶縁体の膜厚及び第二の絶縁体の膜厚が、いずれも0.1μm以上1000μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源を用いて光触媒膜の光励起時の電荷分離を促進させることにより、光触媒反応の効率が向上し、かつ低消費電力の光触媒セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素製造技術及び有害物質浄化技術の一つとして、光触媒を用いた水分解技術及び光浄化技術が期待されている。水分解技術は、光エネルギー及び光触媒を利用し、水を分解して水素及び酸素を生成する技術である。具体的には、光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを照射することで、光触媒の価電子帯の電子が伝導帯に励起され、伝導帯に電子が、価電子帯に正孔が生成する。前記正孔により水が酸化されて酸素とプロトンが生成し(「酸素生成系」という。反応式1)、一方で、前記電子によりプロトンが還元されて水素が生成する(「水素生成系」という。反応式2)。
2HO → O + 4H + 4e (1)
4H + 4e → 2H (2)
また、光浄化技術は、前記正孔により酸化反応が起き、一方で、前記電子により還元反応が起き、有害物質を酸化又は還元により浄化する技術である。
【0003】
これらの技術を実用化するためには、光エネルギーを反応のエネルギーに変換する変換効率の向上が不可欠である。この変換効率に関する主要な問題の一つは、光触媒上の電荷再結合である。光触媒は光照射により、正電荷を有する正孔と、負電荷を有する励起電子とに電荷分離するが、一部正孔と励起電子が再結合することで失活する。そのため、光エネルギーに対する、反応に消費される正孔および励起電子の割合、すなわち量子効率が低下する。これまで、電荷再結合を防止して電荷分離を促進させるための検討が行われている。
【0004】
特許文献1では、還元反応に対する触媒活性成分と、酸化反応に対する触媒活性成分を別々の担体に担持することで、酸化反応の活性点と還元反応の活性点を離間させ、再結合を防止している。
【0005】
特許文献2では、酸化反応の活性点を有する光触媒電極と還元反応の活性点を有する対極を離間させ、互いを導線で接続し、励起電子を光触媒電極から対極に移動させることで、再結合を防止している。
【0006】
特許文献3では、酸化反応の活性点を有する光触媒電極と還元反応の活性点を有する対極を離間させ、外部電源を介して互いを導線で接続している。光励起と同時に電圧を印加することで電荷分離を促進させて再結合を防止し、励起電子の光触媒電極から対極への移動の効率を高めている。
しかし、上記特許文献における技術は、いずれも、電荷分離が不十分であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−45853号公報
【特許文献2】特開平4−63115号公報
【特許文献3】特開平11−128750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、電荷再結合を防止して電荷分離を促進させる効率をさらに高めることで、光触媒反応の効率が向上する、光触媒セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光触媒セルは、金属基板、前記金属基板上の光入射側に接して設けられる光触媒膜、前記金属基板の該光触媒膜側とは反対側に、前記金属基板と離間して設けられる正極、前記光触媒膜の該金属基板側とは反対側に、前記光触媒膜と離間して設けられる負極、及び前記正極と前記負極とを電気的に接続した外部電源を備えている光触媒セルであって、前記光触媒膜の光入射側の面積に対する、前記負極による被覆率が10%以上90%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光触媒セルは、好ましくは、前記正極の前記金属基板側の面に接して設けられる第一の絶縁体、及び前記負極の前記光触媒膜側の面に接して設けられる第二の絶縁体と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の光触媒セルは、好ましくは、前記負極が連続構造であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の光触媒セルは、好ましくは、前記第一の絶縁体の膜厚及び第二の絶縁体の膜厚が、いずれも0.1μm以上1000μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光触媒セルは、光触媒膜の表層を負極側に向けて正極と負極の間に配置しているため、外部電源の電圧を印加することで正極から負極の向きに電場が発生すると、光触媒膜の光励起時の電荷分離を促進させることができる。その結果、光触媒反応の効率が向上する。
また、本発明の光触媒セルは、正極と光触媒膜が離間しているため、光触媒膜から外部回路に電子を移動させる必要がないことにより、外部電力の消費を抑えながら、電荷分離効率を向上させることができる。つまり、低消費電力である。
さらに、本発明の光触媒セルは、製造が簡便であり、強度が高く、小型化や軽量化が可能である、といった特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の形態例に係る光触媒セルの断面の概略図である。
図2】本発明の形態例に係る光触媒セルを負極側の面から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る光触媒セル及びその製造方法の好適な実施の形態の例について、図面を参照して以下に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る光触媒セル10の断面の概略図であり、図2は、光触媒セル10を負極側の面から見た概略図である。本実施形態の光触媒セル10は、金属基板2と、前記金属基板2上の光入射側に接して設けられる光触媒膜3と、前記金属基板2の該光触媒膜3側とは反対側に、前記金属基板2と離間して設けられる正極6と、前記光触媒膜3の該金属基板2側とは反対側に、前記光触媒膜3と離間して設けられる負極7と、前記正極6と前記負極7とを電気的に接続した外部電源9を備えており、前記光触媒膜3の光入射側の面積に対する、前記負極7による被覆率が10%以上90%以下の範囲内である。ここで、金属基板2及び光触媒膜3の積層体を光触媒電極1という。
【0017】
ここで、金属基板2の材料は、導電性を有するものであれば特に限定するものではないが、導電性及び電解液に対する耐腐食性に優れることから、例えば、チタン、鉄、ステンレス等が好ましい。より好ましくは、チタンおよびステンレスである。また、金属基板2の形状は限定しないが、好ましくは、箔、粒子の焼結体、スパッタ膜である。これらの中でも、基材としての強度、加工性、柔軟性の点から、箔がより好ましい。また、金属基板2上に光触媒膜3を、スラリーの噴霧やコールドスプレー法等のスプレー法により形成する際、ガス流による圧力を適当に分散させる点や、金属基板2−光触媒膜3間の密着力が高い点から、粒子の焼結体が好ましい。
【0018】
また、金属基板2の厚みは、特に限定するものではないが、例えば10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。金属基板2の厚みが10μm未満であると、光触媒電極としての加工性や耐久性が損なわれる傾向にある。一方、金属基板2の厚みが1000μmを超えると、厚みや重量が大きくなるため、光触媒セルとしての取扱い性が損なわれる傾向にある。
【0019】
また、光触媒膜3を構成する光触媒は、その材料を特に限定するものではない。例えば、光触媒活性の高い、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(Fe)、酸化スズ(SnO)が好ましい。より好ましくは、酸化タングステンである。
また、光触媒膜3は、表面積が大きい方が、触媒活性点が多くなるため、多孔質であることが好ましい。
【0020】
また、光触媒膜3の厚みは、特に限定するものではないが、例えば1μm以上50μm以下の範囲内が好ましく、1μm以上10μm以下の範囲内であることがより好ましい。光触媒膜3の厚みが1μm未満では、光触媒の量が少なくなるため、触媒反応の効率が低くなる傾向にあり、50μmを超えると、強度が低くなる傾向にあり、加えて光触媒膜3−金属基板2間の電子移動が困難になる傾向にある。ここで、光触媒膜3の厚みは、触針法で5点を計測してその平均値を出すという条件で測定した膜厚をいう。
【0021】
また、前記光触媒膜3の空隙率は特に限定しないが、例えば15%以上70%以下であることが好ましい。光触媒膜3の空隙率が15%未満では反応基質との接触面積が小さいため、触媒反応の効率が低くなる傾向にあり、70%を超えると強度が低くなる傾向になる。ここで、空隙率は、窒素ガス吸着法で測定した空隙率をいう。
【0022】
また、前記光触媒膜3の空孔径は特に限定しないが、光触媒用途においては、平均空孔径は、例えば0.01μm以上0.5μm以下の範囲内であることが好ましく、0.05μm以上0.25μm以下の範囲内であることがより好ましい。平均空孔径が0.01μm未満では空孔内における反応基質の移動及び拡散が困難となるため、触媒反応の効率が低くなる傾向にあり、0.5μmを超えると光触媒膜3の表面積が小さくなり、触媒反応の効率が低くなる傾向になる。また、光触媒膜3の強度が低下する傾向にある。ここで、平均空孔径は、窒素ガス吸着法で測定した平均空孔径である。
【0023】
また、第一の絶縁体4は、正極6の金属基板2側の面に接して設けられる。第一の絶縁体4は、金属基板2と正極6との接触を防ぐことができればよい。また、第一の絶縁体4の厚み、材料及び製造方法は特に限定するものでなはい。
第一の絶縁体4の厚みとしては、特に限定するものではないが、例えば0.1μm以上1000μm以下の範囲内が好ましい。第一の絶縁体4の厚みが0.1μm未満では、金属基板2と正極6との接触を十分防ぐことができなくなる傾向にある。一方、第一の絶縁体4が1000μmを超えて厚くなると、電極間の距離が遠くなるため、電場の効果が弱くなる。その結果、光触媒の電荷分離促進が弱くなり、光触媒上での電荷再結合が支配的に進む。以上の理由から、量子効率が低下する。
また、第一の絶縁体4の製造方法としては、公知の方法を使用できるが、金属基板2上に所定の厚みの第一の絶縁体4を接着する方法が挙げられる。
また、第一の絶縁体4の材料としては、熱可塑性樹脂シートや、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を用いることができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂、硬化アクリル樹脂、硬化エポキシ樹脂、硬化シリコーン樹脂等が好適に挙げられる。
【0024】
また、第二の絶縁体5は、負極7の光触媒膜3側の面に接して設けられる。第二の絶縁体5は、光触媒電極1と負極7の接触による短絡を防ぐことができればよい。つまり、光触媒膜3と負極7が離間していればよい。また、第二の絶縁体5の厚み、材料及び製造方法は特に限定するものでなはい。
第二の絶縁体5の厚みとしては、特に限定するものではないが、例えば0.1μm以上1000μm以下の範囲内が好ましい。第二の絶縁体5の厚みが0.1μm未満では、光触媒電極1と負極7との接触を十分防ぐことができなくなる傾向にある。一方、第二の絶縁体5が1000μmを超えて厚くなると、電極間の距離が遠くなるため、電場の効果が弱くなる。その結果、光触媒の電荷分離促進が弱くなり、光触媒上での電荷再結合が支配的に進む。以上の理由から、量子効率が低下する。
また、第二の絶縁体5の材料としては、公知のものを使用できるが、絶縁性及び加工性の観点から、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムが好ましい。
また、第二の絶縁体5の製造方法としては、公知の方法を使用できるが、厚みが小さく平滑な膜を形成できることから、スパッタ法で作製することが好ましい。つまり第二の絶縁体5は、スパッタ膜であることが好ましい。例えば、光触媒電極1の該金属基板2側とは反対側に、負極7の形状、大きさにほぼ等しい形状(例えば、櫛歯型)の開口を有するマスクを置き、二酸化ケイ素又は酸化アルミニウムをスパッタ法により製膜する。第二の絶縁体5の別な製造方法としては、光触媒電極1の該金属基板2側とは反対側に、負極7の形状、大きさにほぼ等しい形状(例えば、櫛歯型)に加工した第二の絶縁体5を接着する方法でも良い。
【0025】
また、前記光触媒膜3の光入射側の面積に対する、第二の絶縁体5による被覆率は10%以上90%以下の範囲内であることが好ましい。第二の絶縁体5による被覆率が10%未満であると、第二の絶縁体5上に積層される負極7の面積が小さいため、外部電源9による電場の効果が弱くなり、光触媒反応効率が低下する傾向にある。第二の絶縁体5による被覆率が90%を超えると、光触媒膜3に対し十分に光が入射せず、光触媒反応が十分に起こらない傾向にある。
【0026】
また、正極6の材料は、導電性を有するものであれば特に限定するものではないが、導電性及び電解液に対する耐腐食性に優れることから、例えば、チタン、鉄、ステンレス等が好ましい。より好ましくは、チタンおよびステンレスである。また、正極6の形状は限定しないが、好ましくは、箔、粒子の焼結体、スパッタ膜である。基材としての強度、加工性、柔軟性の点から、箔がより好ましい。
【0027】
また、正極6の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。正極6の厚みが10μm未満であると、正極6としての加工性や耐久性が損なわれる傾向にある。一方、正極6の厚みが1000μmを超えると、厚みや重量が大きくなるため、光触媒セルとしての取扱い性が損なわれる傾向にある。
【0028】
また、負極7の材料は、導電性を有している公知の物を使用できるが、導電性及び電解液に対する耐腐食性に優れることから、例えば、チタン、タングステン、白金又はパラジウムである。
負極7の厚みは、特に限定するものではないが、例えば、1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。負極7の厚みが1nm未満では、導電性及び耐久性が低下する傾向にある。一方、負極7の厚みが100nmを超えると、製造コストが高くなる傾向にある。
負極7の製造方法としては、公知の方法を使用できるが、厚みが小さく平滑な膜を形成できることから、スパッタ法で作製することが好ましい。つまり負極7は、スパッタ膜であることが好ましい。例えば、第二の絶縁体5上に、第二の絶縁体5形成時に使用したものと同じ形のマスクを置き、チタンや白金等をスパッタ法により製膜する。前記スパッタ法の代わりに、加熱還元によって負極7を製造することもできる。例えば、負極7の材質が白金である場合、第二の絶縁体5上に塩化白金酸水溶液を塗布し、その後焼成することで白金薄膜を作製してもよい。
【0029】
また、前記光触媒膜3の光入射側の面積に対する、負極7による被覆率は10%以上90%以下の範囲内であることが好ましい。負極7による被覆率が10%未満であると、第二の絶縁体5上に積層される負極7の面積が小さいため、外部電源9による電場の効果が弱くなり、光触媒反応効率が低下する傾向にある。負極7による被覆率が90%を超えると、光触媒膜3に対し十分に光が入射せず、光触媒反応が十分に起こらない傾向にある。
ここで、前記「被覆率」とは、光触媒膜3の光入射側の面積における、負極7により入射光が遮断される面積の割合を意味する。
負極7は、光入射面とは反対側の面の全ての面積が、第二の絶縁体5に接していることが、耐久性の点で好ましいが、一部が接していなくても良い。また、負極7は、その形状は限定しないが、第二の絶縁体5上でその全てが電気的に接続されていること、つまり連続構造であることが好ましい。連続構造であれば、後述する導線8と負極7との接合箇所が1カ所で済むため、簡便に製造できるからである。
【0030】
また、正極6と負極7とを導線8で電気的に接続し、接続経路上に外部電源9を設ける。正極6側の導線8を外部電源9の正極に接続し、負極7側の導線8を外部電源9の負極に接続する。外部電源9及び導線8は、公知の材料を使用できる。例えば、鉄、銅、チタンが挙げられる。また、その形状は、箔状、ワイヤー状が挙げられる。
【0031】
以下に、本発明の光触媒セル10の製造方法を例示する。
金属基板2(鉄箔、面積30mm×50mm)上に、光触媒膜3として、酸化タングステン粉末をコールドスプレー法で製膜(製膜面積20mm×40mm、厚み10μm)する。これを450℃で30分焼成して光触媒電極1を作製する。
【0032】
次に、前記光触媒電極1の金属基板2側の面に、金属基板2の4辺のうち、対向する2辺について、その2辺にそって2mmの幅で、第一の絶縁体4としてアイオノマー樹脂[ハイミラン(登録商標)、三井・デュポンポリケミカル製、厚み50μm]を接着する。さらに、前記アイオノマー樹脂上に正極6としてチタン基板(面積35mm×55mm)を接着した。なお、正極6は、前記光触媒電極1の金属基板2側の面の全面を覆っている。
【0033】
次に、前記光触媒電極1の光触媒膜3側の面に、櫛歯型の開口を有するマスクを置き、第二の絶縁体5として、二酸化ケイ素をスパッタ法により製膜する(厚み1μm)。引き続き、前記櫛歯型のマスクを置いた状態で、第二の絶縁体5上に、負極7としてチタン膜をスパッタ法で製膜する(厚み10nm)。なお、前記負極7は、前記第二の絶縁体5上で連続構造を有している。
【0034】
次に、導線8としてチタン箔(幅1mm、厚み50μm)を用い、前記正極6にスポット溶接により接合した。さらに、別のチタン箔(幅1mm、厚み50μm)を、前記負極7に導電性銀ペーストで接合した。さらに、これら2つのチタン箔を、前記外部電源9を介して接合し、光触媒セル10を作製する。
【0035】
以上のとおり説明した、光触媒セル10は、外部電源9の電圧を印加すると、正極6から負極7の向きに電場が発生する。一方、光触媒膜3は光照射により、正電荷を有する正孔と、負電荷を有する励起電子とに電荷分離する。光触媒膜3は、正極6と負極7との間に配置しているため、光照射及び外部電源9の電圧印加を同時に行うことで、励起電子は正極6に引き寄せられるため、励起電子は金属基板2表層へ移動しやすくなり、正孔は負極7側に引き寄せられるため、正孔は光照射面である光触媒膜3の表層に移動しやすくなる。即ち、光触媒膜3の光励起時の電荷分離を促進させ、電荷再結合を抑制することができる。特に、光触媒電極1と正極6との距離が1000μm以下であること、及び光触媒電極1と負極7との距離が1000μm以下であることで、より電荷分離が促進し、電荷再結合が抑制される。
【0036】
また、光触媒膜3の光入射側の面積に対する、負極7による被覆率が10%以上90%以下の範囲であることにより、負極7に起因する光触媒膜3の遮光を抑え、より多くの光を光触媒膜3に入射することができる。
【0037】
以上の特徴により、光触媒膜3の表層での酸化反応の効率、及び金属基板2表層での還元反応の効率が向上する。
【0038】
さらに、正極6と光触媒膜3が離間しているため、外部電力の消費を抑えながら、電荷分離効率を向上させることができる。また、製造が簡便、強度が高い、小型化や軽量化が可能であるという特長を有する。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。
【符号の説明】
【0040】
1…光触媒電極
2…金属基板
3…光触媒膜
4…第一の絶縁体
5…第二の絶縁体
6…正極
7…負極
8…導線
9…外部電源
10…光触媒セル
図1
図2