【実施例】
【0029】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
産地A〜Eの異なる各ドロマイト6種を、大気中800℃にて10〜120分焼成し、その間、焼成開始から10分毎の各ドロマイト焼成物を得た。各ドロマイト焼成物を、下記条件の粉末X線回析リートベルト法にて、各ドロマイト焼成物中の残留ドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の含量を解析した。
その結果を、それぞれ下記表1〜5及び
図1〜
図5、
図6〜10に示す(産地Aは表1・
図1と
図6、産地Bは表2・
図2と
図7、産地Cは表3・
図3と
図8、産地Dは表4・
図4と
図9、産地Eは表5・
図5と
図10)。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
粉末X線回析リートベルト法による測定条件は以下の通りである。
装置名:PANalytical X’Pert Pro MPD
解析ソフト:PANalytical X’Pert HighScore Plus
測定条件
管球:Cu-Kα
管電圧:45 kV
電流:40 mA
モノクロメーター無し
Divergence Slit:1 °
Scatter Slit:1 °
SollerSlit:0.04 Rad
receiving Slit:無し
Scan Continuous:0.15 °/min
Filter:Ni
検出器:X’Celarator
Stage:MPSS
【0036】
また、上記各産地A〜Eから得られた各ドロマイト焼成物の比表面積を測定した。その結果を、それぞれ下記表6〜10及び
図1〜
図5に示す(産地Aは
図1、産地Bは
図2、産地Cは
図3、産地Dは
図4、産地Eは
図5)。
また、表6〜10には、上記各産地A〜Eから得られたドロマイト焼成物の細孔容積及び細孔半径も示す。
【0037】
なお、比表面積、細孔容積及び細孔半径は下記の方法で測定した。
・窒素吸着法
前処理方法:120℃で8時間、真空脱気を行った。
測定方法:定容法を用いて、窒素による吸着脱離等温線を測定した。
吸着温度:77K 吸着質断面積:0.162 nm
2
吸着質:窒素 平衡待ち時間:150 sec
※1
飽和蒸気圧:実測
※1:吸着平衡状態(吸脱着の際の圧力変化が所定の値以下になる状態)に達してからの待ち時間
比表面積:BET法(JIS Z 8830:2013)により算出した。
細孔容積及び細孔半径:BJH法(JIS Z 8831-2:2010)により算出した。
測定装置:BELSORP-mini(マイクロトラック・ベル(株)製)
前処理装置:BELPREP-vac II(マイクロトラック・ベル(株)製)
【0038】
なお、窒素BET法とは、吸着材に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを下記式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。
具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、吸着材に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、下記式(1)あるいは式(1)を変形した下記式(1’)に基づき[p/{Va(p0-p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから下記式(2−1)、下記式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、下記式(3)に基づき比表面積asBETを算出することで、比表面積を求めることができる。
【0039】
Va=(Vm・C・p)/[(p0-p){1+(C−1)(p/p0)}]・・・(1)
[p/{Va(p0-p)}] =[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)]・・・(1’)
Vm=1/(s+i)・・・(2−1)
C =(s/i)+1・・・(2−2)
asBET=(Vm・L・σ)/22414・・・(3)
但し、上記式中、Va:吸着量、Vm:単分子層の吸着量、p:窒素の平衡時の圧力、p0:窒素の飽和蒸気圧、L:アボガドロ数、σ:窒素の吸着断面積を示す。
【0040】
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから下記式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる。なお、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に「細孔容積」と称する。
【0041】
Vp=(V/22414)×(Mg/ρg)・・・(4)
但し、上記式中、V:相対圧での吸着量、Mg:窒素の分子量、ρg:窒素の密度を示す。
【0042】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、吸着材に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、下記式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、下記式(6)に基づき細孔容積を算出する。
【0043】
rp=t+rk・・・(5)
Vpn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj・・・(6)
但し、Rn=rpn2/(rkn−1+dtn)2・・・(7)
上記式中、rp:細孔半径、rk:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)、Vpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積、dVn:そのときの変化量、dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量、rkn:その時のコア半径、c:固定値、rpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径を示す。
また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を示す。
【0044】
【表6】
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
【0047】
【表9】
【0048】
【表10】
【0049】
下記表11に示す各試薬を用いて調製したヒ素(As)、フッ素(F)、鉛(Pb)をそれぞれ5mg/lで含む各溶液100mlに、各ドロマイト焼成物を1g添加配合して、4時間振とうして均一に混合した。
【0050】
【表11】
【0051】
その後、固液分離を行い、該各溶液中に残留する上記ヒ素及びフッ素及び鉛の残留量より、該溶液中のヒ素の吸着除去率と、前記ヒ素及びフッ素及び鉛の平均除去率とを、以下の表12に示す方法にて算出した。
なお、鉛については、mg/lオーダーの分析にはICP発光分光分析法を用い、μg/lオーダーの分析には電気加熱原子吸光法を用いて算出した。
またろ液のpH及び酸化―還元電位(ORP)を(株)堀場製作所製の卓上型pHメーター:F-73(pH電極:9615S-10D, ORP電極:9300-10D)にて測定した。
【0052】
【表12】
【0053】
その結果をそれぞれ、表13〜17及び
図6〜10に示す(産地Aは表13及び
図6、産地Bは表14及び
図7、産地Cは表15及び
図8、産地Dは表16及び
図9、産地Eは表17及び
図10)。
【0054】
【表13】
【0055】
【表14】
【0056】
【表15】
【0057】
【表16】
【0058】
【表17】
【0059】
また、上記表より、産地の違いによるドロマイト系材料の比表面積とドロマイト相残留量との関係を示す図を
図11に示す。
上記表及び図より、高比表面を有するためには、半焼成ドロマイト中に残留するドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の含量を0.4≦x≦35.4(質量%)とすることにより達成されることがわかる。また、比表面積とは別に、細孔容積を測定することにより、細孔が焼成により形成されていることがわかり、多孔質となっていることもわかる。
このような本発明の高比表面を有するドロマイト系材料は、重金属等を有効に吸着することができる。
【0060】
また、上記表11に示す試薬を用いて調整した、ヒ素(As)を5mg/l及び100mg/lでそれぞれ含む溶液100mlを調製した。これに、表1中の半焼成ドロマイト中に残留するドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の含量が2.6質量%の半焼成ドロマイトを1g添加し4時間振とうして均一に混合したものと、前記半焼成ドロマイトを0.9gと硫酸第一鉄0.1gとを添加し4時間振とうして均一に混合したものを調製した。その後各液を固液分離して、ろ液中の残留ヒ素量を上記表12に示す方法で測定して、それぞれのヒ素吸着除去率(%)を算出した。その結果を表18に示す。
またろ液のpH及び酸化―還元電位(ORP)を(株)堀場製作所製の卓上型pHメーター:F-73(pH電極:9615S-10D, ORP電極:9300-10D)にて測定した。その結果も表18に示す。
【0061】
【表18】
【0062】
上記表18より、本発明の高比表面積を有するドロマイト系材料である残留ドロマイト相(CaMg(CO
3)
2相)の含量が0.4≦x≦35.4(質量%)の半焼成ドロマイトに更に硫酸第一鉄を配合すると、より重金属等の吸着除去率が高まることがわかる。