【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度独立行政法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの
【解決手段】コンクリート床版上に、コンクリート床版の耐久性を向上させる高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルからなる高耐久性層を形成した床版構造体の施工方法であって、コンクリート床版を形成するコンクリートを敷きならす下層スクリード31と、コンクリート上に高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならす上層スクリード32と、を有するコンクリート仕上げ装置3を用いて施工する。
コンクリート床版上に、該コンクリート床版の耐久性を向上させる高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルからなる高耐久性層を形成した床版構造体の施工方法であって、
前記コンクリート床版を形成するコンクリートを敷きならすとともに、当該コンクリート上に前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならし、両者を同時に打設する、ことを特徴とする床版構造体の施工方法。
鋼床版または鉄筋コンクリート床版上に、繊維補強コンクリート層および鋼床版または鉄筋コンクリート床版の耐久性を向上させる高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルからなる高耐久性層を形成した床版構造体の施工方法であって、
前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートを敷きならすとともに、当該コンクリート上に前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならし、両者を同時に打設する、ことを特徴とする床版構造体の施工方法。
前記高耐久性材料に、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、短繊維、膨張材およびポリマーの少なくとも1つを含むものを用いる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の床版構造体の施工方法。
前記第1のスクリードの後方に爪および防振ゴムを設置して、前記防振ゴムによりスクリード振動を遮断した爪が、敷きならした前記コンクリート床版を形成するコンクリートまたは前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートに干渉して進行方向に対して左右に搖動することで、敷きならした前記コンクリート床版または前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートの上面を粗面に仕上げる、ことを特徴とする請求項4に記載の床版構造体の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、社会インフラの一斉老朽化が社会問題となっており、そのうち最も維持管理費用がかかるのが橋梁とされている。この中でコンクリート床版において、上面の舗装端部や施工目地から侵入した降雨水や融雪剤がコンクリート床版中に侵入し、凍害、アルカリシリカ反応、塩害などによる鉄筋発錆、走行車両の荷重疲労作用により水平ひび割れや砂利化等が発生し、床版の耐久性が著しく損なわれる例が多発している。この対策として高性能防水や排水設備等、様々な対策がとられているが、水の浸透を防ぐことはできず、床版の耐久性向上は大きな課題となっている。一方、このような問題に対処するため、単にコンクリート強度を上げるだけでなく耐久性に配慮した高耐久なコンクリートを施工する動きが広がりつつある。しかしながら、こうしたコンクリートは従来のコンクリートと比べて高価であり採用され難い状況にある。また、施工上の現実的な課題としてコンクリートの打設方法が、20cm程度の床版厚に対して棒状バイブレータを垂直方向に差し込んで振動締固めを行うため、コンクリート床版上面に耐久性が劣る脆弱なブリーディング層が形成されやすいといえる。
【0005】
一方、橋梁等の舗装構造体として、床版上に防水層を形成した後、アスファルト舗装を形成した構造体がある。このような構造体では、10年程度の供用でアスファルト舗装の打ち換え補修が必要となる。その際、既設コンクリート床版上面を損傷させる例がある。
【0006】
また、コンクリート床版または鋼床版上に鋼繊維補強コンクリート層を形成し、その上面にアスファルト舗装を形成することで床版耐久性と防水性を高める工法がある。しかし、長期の供用により、後の補修による切削時に、鋼繊維補強コンクリート層の切削面から鋼繊維が露出してしまい、アスファルト舗装との接着性を阻害するという問題がある。
【0007】
さらに、既設コンクリート床版上に鋼繊維補強コンクリート層を形成し、床版の押し抜きせん断抵抗性を高める上面増厚工法がある。しかし、既設コンクリートの界面を研掃処理して新旧コンクリート面を良好な付着状態にしても、長期間の供用で既設床版と鋼繊維補強コンクリート層の界面で層間剥離する例が多く報告されている。上記問題はいずれも構築されるコンクリート上面における課題であり、コンクリート上面だけを高耐久化することで解決するものである。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、床版の耐久性を向上かつ経済的に構築することができる床版構造体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる床版構造体の施工方法は、
コンクリート床版上に、該コンクリート床版の耐久性を向上させる高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルからなる高耐久性層を形成した床版構造体の施工方法であって、
前記コンクリート床版を形成するコンクリートを敷きならすとともに、当該コンクリート上に前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならし、両者を同時に打設する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の観点にかかる床版構造体の施工方法は、
鋼床版または鉄筋コンクリート床版上に、繊維補強コンクリート層および鋼床版または鉄筋コンクリート床版の耐久性を向上させる高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルからなる高耐久性層を形成した床版構造体の施工方法であって、
前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートを敷きならすとともに、当該コンクリート上に前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならし、両者を同時に打設する、ことを特徴とする。
【0011】
前記高耐久性材料に、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、短繊維、膨張材およびポリマーの少なくとも1つを含むものを用いることが好ましい。
【0012】
前記コンクリート床版を形成するコンクリートまたは前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートを敷きならす第1のスクリードと、
前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを敷きならす第2のスクリードと、を有する装置を用いて施工し、
前記高耐久性層を形成するコンクリートまたはモルタルを、供給装置を用いて第1のスクリードと第2のスクリードの間に供給する、ことが好ましい。
【0013】
前記第1のスクリードの後方に爪および防振ゴムを設置して、前記防振ゴムによりスクリード振動を遮断した爪が、敷きならした前記コンクリート床版を形成するコンクリートまたは前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートに干渉して進行方向に対して左右に搖動することで、敷きならした前記コンクリート床版または前記繊維補強コンクリート層を形成するコンクリートの上面を粗面に仕上げる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、床版の耐久性を向上させることができる床版構造体の施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の床版構造体の施工方法について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態の床版構造体の施工方法により施工される床版構造体1の一例を示す図である。まず、本実施の形態の床版構造体1について簡単に説明する。
【0018】
図1に示すように、床版構造体1は、コンクリート床版11上に高耐久性層12が形成されている。
【0019】
本発明に用いられるコンクリート床版11としては、橋梁や高速道路などに一般的に使用されるコンクリート床版等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いられる高耐久性層12は、高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルから形成されている。例えば、セメント、骨材(砂)、高耐久性材料および水を含むコンクリート(モルタル)をコンクリート床版11上に被覆施工することにより、コンクリート床版11上に高耐久性層12を形成することができる。
【0021】
本発明に用いられるセメントとしては、通常用いられるセメント、例えば、気硬性セメント、水硬性セメント等のセメント類が使用可能である。特に、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ジェットセメント、混合セメント等、一般に広く用いられているセメントを使用することができる。
【0022】
本発明に用いられる骨材としては、細骨材および粗骨材がある。細骨材としては、川砂、山砂などの天然砂と、砕砂および高炉スラグ細骨材などの人工砂を用いることができる。粗骨材としては、砂利および砕石などを用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる高耐久性材料としては、施工される床版構造体1の防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応抵抗性等の耐久性がコンクリートまたはモルタルよりも優れた材料をいい、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、短繊維、膨張材、ポリマーの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0024】
例えば、高耐久性材料として、高炉スラグ微粉末をコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0025】
また、高耐久性材料として、フライアッシュをコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0026】
さらに、高耐久性材料として、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュを1.5〜2.5:1の割合で混合したものをコンクリート(モルタル)の1.0〜25質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0027】
さらに、高耐久性材料として、短繊維をコンクリート(モルタル)の0.1〜2.0質量%添加することで、引張力に強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、塩分浸透抵抗性が向上する。短繊維としては、例えば、鋼繊維、ガラス繊維、有機系繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0028】
また、高耐久性材料として、ポリマーをコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、引張力が強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、塩分浸透抵抗性が向上する。ポリマーとしては、例えば、SBR、EVA、PAEなどが挙げられる。
【0029】
さらに、高耐久性材料として、膨張材をコンクリート(モルタル)の0.1〜15質量%添加することで、引張力が強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性が向上する。膨張材としては、例えば、生石灰−石膏系膨張材、石膏系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材などが挙げられる。
【0030】
高耐久性層12は、1mm〜50mmの厚さに形成され、耐久性を向上させる床版構造体1の表層を構築する。高耐久性層12の厚さが1mmより薄いと床版構造体1の耐久性を向上させることが困難となり、高耐久性層12の厚さが50mmより厚いと、コンクリート床版11と同時に打設することが困難となるためである。
【0031】
また、高耐久性層12の乾燥収縮率は、コンクリート床版11の乾燥収縮率と大きく異ならないことが好ましい。高耐久性層12の乾燥収縮率とコンクリート床版11の乾燥収縮率とが大きく異なると、収縮率の差異からひび割れが発生する恐れが生じるためである。
【0032】
このように、高耐久性層12に防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応抵抗性などの耐久性を付与し、かつ、表面に構築することで床版構造体1の耐久性を向上させることができる。
【0033】
次に、本実施の形態の床版構造体の施工方法について説明する。
【0034】
まず、新設の場合、設置式コンクリートプラントにて、セメント、骨材および水などを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより一般的なコンクリート床版11を施工するためのコンクリートを製造する。さらに、同様の設置式コンクリートプラント、あるいは、移動式コンクリート製造装置を用いて、セメント、骨材(砂)水および高耐久性材料などを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)を製造する。
【0035】
次に、コンクリート仕上げ装置を用いて、製造されたコンクリート床版11を施工するためのコンクリートを所定の位置に敷きならすとともに、敷きならされたコンクリート上に、製造された高耐久性層12を施工するためのコンクリート(または)モルタルを、その厚さが1mm〜50mmとなるように敷きならす。
【0036】
既設のコンクリート床版上に施工する場合は、移動式コンクリート製造装置を用いて、セメント、骨材(砂)水および高耐久性材料などを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)を製造する。既設のコンクリート床版上面を切削し、切削面に接着剤を塗布し、コンクリート仕上げ装置を用いて、製造された高耐久性層12を施工するためのコンクリート(または)モルタルを、その厚さが1mm〜50mmとなるように敷きならす。
【0037】
図3にコンクリート仕上げ装置の主要部の構造を示す。例えば、
図3に示すように、供給されたコンクリート床版11を施工するためのコンクリート111がコンクリート仕上げ装置3の下層スクリード31により敷きならされるとともに、供給された高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121がコンクリート仕上げ装置3の上層スクリード32により敷きならされる。これにより、コンクリート床版11を施工するためのコンクリート111上に高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121が敷きならされる。
【0038】
続いて、コンクリート仕上げ装置3の上層スクリード32によって高周波振動を与えることにより、コンクリート床版11を施工するためのコンクリート111と、高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121とが同時に打設される(締め固められる)。なお、高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121は、供給装置を用いて下層スクリード31と上層スクリード32の間から敷きならされたコンクリート111上に供給される。
【0039】
このように、コンクリート床版11を打設後、時間を置かずに高耐久性層12を打設することにより両者を一体化させることができるので、床版構造体1の耐久性を向上させることができる。また、耐久性を向上させることができる高耐久性層12を薄層で経済的に提供することができる。
【0040】
なお、
図4のように、下層スクリード31の後方に爪41をコンクリート111の上面に干渉するように設置し、爪41を進行方向に対し左右に搖動させることが好ましい。これにより、コンクリート床版11の表面が粗面に仕上がり、高耐久性層12との接着性を向上させることができる。また、爪41に防振ゴム42を設置することで、下層スクリード31の振動が爪41に伝わりコンクリート111の粗面が平滑になることを防止することができる。
【0041】
爪41がコンクリート111に干渉する深さは、コンクリート111の表面から10〜30mmが好ましい。
また、
図4のように、上層スクリード32の後方に、敷きならされた高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121を仕上げるための仕上げスクリードを備えることが好ましい。
【0042】
供給装置としては、
図4のように、コンクリートホッパ43を用いるか、
図5のように、ベルトコンベア44を用いることが好ましい。これらを用いてコンクリートをコンクリート運搬車または移動式コンクリート製造装置から供給する。
【0043】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第1の実施の形態の床版構造体の施工方法により施工される床版構造体2の一例を示す図である。まず、本実施の形態の床版構造体2について簡単に説明する。
【0044】
図2に示すように、床版構造体2は、床版21上に、繊維補強コンクリート層22、高耐久性層23、アスファルト混合物層24が形成されている。
【0045】
本発明に用いられる床版21としては、橋梁や高速道路などに使用される鉄筋コンクリート床版(RC床版)や鋼床版などが挙げられる。
【0046】
本発明に用いられる繊維補強コンクリート層22は、セメント、骨材、繊維および水を含むコンクリートを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより形成することができる。そして、この繊維補強コンクリートを床版21上に被覆施工することにより、床版21上に繊維補強コンクリート層22を形成することができる。
【0047】
本発明に用いられるセメントとしては、通常用いられるセメント、例えば、気硬性セメント、水硬性セメント等のセメント類が使用可能である。特に、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ジェットセメント、混合セメント等、一般に広く用いられているセメントを使用することができる。
本発明に用いられる骨材としては、細骨材および粗骨材がある。細骨材としては、川砂、山砂などの天然砂と、砕砂および高炉スラグ細骨材などの人工砂を用いることができる。粗骨材としては、砂利および砕石などを用いることができる。
本発明に用いられる繊維としては、鋼繊維、ガラス繊維、有機系繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる高耐久性層23は、高耐久性材料を含み、コンクリートまたはモルタルから形成されている。例えば、セメント、骨材(砂)、高耐久性材料および水を含むコンクリート(モルタル)を繊維補強コンクリート層22上に被覆施工することにより、繊維補強コンクリート層22上に高耐久性層23を形成することができる。高耐久性層23で用いられるセメントおよび骨材は、第1の実施の形態の高耐久性層12で用いられるセメントおよび骨材と同様である。
【0049】
本発明に用いられる高耐久性材料としては、施工される床版構造体2の防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応抵抗性等の耐久性がコンクリートまたはモルタルよりも優れた材料をいい、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、短繊維、膨張材、ポリマーの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0050】
例えば、高耐久性材料として、高炉スラグ微粉末をコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0051】
また、高耐久性材料として、フライアッシュをコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0052】
さらに、高耐久性材料として、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュをコンクリート(モルタル)の1.5〜2.5:1の割合で混合したものを1.0〜25質量%添加することで、硬化後の空気孔径が小さくなり緻密となる。これにより、防水性、水密性、塩分浸透抵抗性およびアルカリシリカ反応抵抗性が向上する。
【0053】
さらに、高耐久性材料として、短繊維をコンクリート(モルタル)の0.1〜2.0質量%添加することで、引張力に強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、塩分浸透抵抗性が向上する。短繊維としては、例えば、鋼繊維、ガラス繊維、有機系繊維、炭素繊維などが挙げられる。
【0054】
また、高耐久性材料として、ポリマーをコンクリート(モルタル)の1.0〜20質量%添加することで、引張力が強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、塩分浸透抵抗性が向上する。ポリマーとしては、例えば、SBR、EVA、PAEなどが挙げられる。
【0055】
さらに、高耐久性材料として、膨張材をコンクリート(モルタル)の0.1〜15質量%添加することで、引張力が強くなり、引張力によるひび割れを抑制することができる。これにより、ひび割れからの水分および塩分の侵入を防ぎ、防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性が向上する。膨張材としては、例えば、生石灰−石膏系膨張材、石膏系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材などが挙げられる。
【0056】
高耐久性層23は、1mm〜30mmの厚さに形成されている。高耐久性層23の厚さが1mmより薄いと床版構造体2の耐久性を向上させることが困難となり、高耐久性層23の厚さが30mmより厚いと、繊維補強コンクリート層22と同時に打設することが困難となるためである。
【0057】
また、高耐久性層23の乾燥収縮率は、繊維補強コンクリート層22の乾燥収縮率と大きく異ならないことが好ましい。高耐久性層23の乾燥収縮率と繊維補強コンクリート層22の乾燥収縮率とが大きく異なると、収縮率の差異からひび割れが発生する恐れが生じるためである。
【0058】
このように、高耐久性層23に防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応抵抗性などの耐久性を付与し、かつ、表面に構築することで床版構造体2の耐久性を向上させることができる。
【0059】
本発明に用いられるアスファルト混合物層24は、アスファルト混合物を被覆施工することにより形成される。本発明に用いられるアスファルト混合物としては、通常用いられるアスファルト混合物、例えば、密粒度アスファルト混合物、密粒度ギャップアスファルト混合物、細粒度ギャップアスファルト混合物、ポーラスアスファルト混合物などの各種のアスファルト混合物が挙げられる。
【0060】
次に、本実施の形態の床版構造体の施工方法について説明する。
【0061】
まず、新規の鋼床版上に施工する場合、移動式コンクリート製造装置を用いて、セメント、骨材、繊維および水などを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより一般的な繊維補強コンクリート22を施工するためのコンクリートを製造する。また、移動式コンクリート製造装置を用いて、セメント、骨材(砂)水および高耐久性材料などを所定の撹拌速度、撹拌時間で混練することにより高耐久性層23を施工するためのコンクリート(またはモルタル)を製造する。
【0062】
次に、コンクリート仕上げ装置を用いて、床版21上の所定の位置に、製造された繊維補強コンクリート22を施工するためのコンクリートを敷きならすとともに、敷きならされたコンクリート上に、製造された高耐久性層23を施工するためのコンクリート(またはモルタル)を、その厚さが1mm〜30mmとなるように敷きならす。
【0063】
また、既設のコンクリート床版上に施工する場合は、既設のコンクリート床版の上面を切削し、接着剤を塗布し、コンクリート仕上げ装置を用いて、床版21上の所定の位置に、製造された繊維補強コンクリート22を施工するためのコンクリートを敷きならすとともに、敷きならされたコンクリート上に、製造された高耐久性層23を施工するためのコンクリート(またはモルタル)を、その厚さが1mm〜30mmとなるように敷きならす。
【0064】
ここで、第1の実施の形態と同様に、
図3に示すコンクリート仕上げ装置3を用い、供給された繊維補強コンクリート22を施工するためのコンクリート111が下層スクリード31により敷きならされるとともに、供給された高耐久性層23を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121が上層スクリード32により敷きならされる。
【0065】
続いて、コンクリート仕上げ装置3の上層スクリード32によって高周波振動を与えることにより、繊維補強コンクリート22を施工するためのコンクリート111と、高耐久性層23を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121とが同時に打設され、締め固められる。なお、高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121は、供給装置を用いて下層スクリード31と上層スクリード32の間から敷きならされたコンクリート111上に供給される。
【0066】
供給装置としては、第1の実施の形態と同様に、
図4のように、コンクリートホッパ43を用いるか、
図5のように、ベルトコンベア44を用いることが好ましい。これらを用いてコンクリートをコンクリート運搬車または移動式コンクリート製造装置から供給する。
【0067】
なお、第1の実施の形態と同様に、
図4に示す下層スクリード31の後方に爪41をコンクリート111の上面に干渉するように設置し、爪41を進行方向に対し左右に搖動させることが好ましい。これにより、繊維補強コンクリート22の表面が粗面に仕上がり、高耐久性層23との接着性を向上させることができる。また、爪41に防振ゴム42を設置することで、下層スクリード31の振動が爪41に伝わりコンクリート111の粗面が平滑になることを防止することができる。
【0068】
爪41がコンクリート111に干渉する深さは、コンクリート111の表面から10〜30mmが好ましい。
また、
図4のように上層スクリード32の後方に、敷きならされた高耐久性層12を施工するためのコンクリート(またはモルタル)121を仕上げるための仕上げスクリードを備えることが好ましい。
【0069】
最後に、アスファルトフィニッシャを用いて、アスファルト混合物を高耐久性層23上に被覆施工することにより、床版21上に繊維補強コンクリート22、高耐久性層23およびアスファルト混合物層24が形成された床版構造体2が施工される。
【0070】
このように、繊維補強コンクリート22を打設後、時間を置かずに高耐久性層23を打設することにより両者を一体化させることができるので、床版構造体2の耐久性を向上させることができる。また、耐久性を向上させることができる高耐久性層23を薄層で経済的に提供することができる。
【0071】
また、舗装打ち換え時には、高耐久性層23の上部のみを切削すればよく、繊維補強コンクリート層22を切削することがなくなる。
【0072】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。例えば、上記実施の形態では、例えば、上記実施の形態では、高耐久性材料として、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、短繊維、膨張材、ポリマーを例に本発明を説明したが、施工される床版構造体の防水性、水密性、凍害抵抗性、塩分浸透抵抗性、アルカリシリカ反応抵抗性等の耐久性に優れた材料であればよく、これら以外の材料であってもよい。
【実施例】
【0073】
高耐久性材料である高炉スラグ微粉末およびフライアッシュの塩分浸透抵抗性を検証した。表1に示す配合で40×40×160mmの角柱モルタル供試体を作成した。浸積面を除く5面をエポキシ被覆し、3%NaCl水溶液中に垂直に設置し、下面から塩分を1年間浸透させた。なお、3%NaCl水溶液の水位は浸せき面から70mmで一定とした。ディスクグラインダで表層6mmまでは1mmごと、以降は3mmごとに研削して粉体を採取し、電位差滴定装置で全塩分量を測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
各供試体の全塩分量測定結果を
図5に示す。普通モルタルである供試体1は浸漬3ヶ月で表面から21mm、浸漬1年で33mm、浸漬2年ではさらに深くまで塩分が浸透して行くことが確認される。それに対し、高炉スラグ微粉末を配合した供試体2は浸漬1年で表面から21mmと普通モルタルより塩化物の浸透深さが浅く、浸漬2年でも21mmで浸透が止まることが確認され、供試体1よりも塩分浸透抵抗性が高いといえる。また、フライアッシュを配合した供試体3は浸漬3ヶ月で表面から15mm、浸漬1年でも18mmで浸透が止まることが確認され、供試体1より塩分浸透抵抗性が優れることを示す。さらに、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュを配合した供試体4は浸漬3ヶ月で表面から18mm、浸漬1年でも18mmで浸透が止まることが確認され、供試体1より塩分浸透抵抗性が優れることが確認できた。
【0076】
以上のことから、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュが高耐久性材料として有効であることを確認した。