【課題】本発明は、永久磁石に生じる渦電流損をより低減し、渦電流損の分布をより均一化できるアキシャルギャップ型永久磁石式(AG型PM式)回転機用回転子およびこれを用いたAG型PM式回転機を提供する。
【解決手段】本発明のAG型PM式回転機用回転子は、その周方向に配置された複数の永久磁石それぞれは、所定の第1方向に沿って一方端から順に並ぶように分割された複数の永久磁石片を備え、前記複数の永久磁石片における各分割比は、所定の漸化式を所定の回数だけ繰り返して算出することによって求められ、前記所定の漸化式は、均等割を初期値とし、前記一方端側から数えてi番目の永久磁石片におけるn回目の分割比を当該i番目の永久磁石片の渦電流損密度で除算した除算結果を、当該i番目の永久磁石片におけるn+1回目の分割比とする式である。
周方向に配置された複数のコイルを備える固定子と、周方向に配置された複数の永久磁石を備え前記固定子から回転軸方向に間隔を空けて配置される回転子とを備えるアキシャルギャップ型永久磁石式回転機に用いられるアキシャルギャップ型永久磁石式回転機用回転子であって、
前記複数の永久磁石それぞれは、所定の第1方向に沿って一方端から他方端へ順に並ぶように分割された複数の永久磁石片を備え、
前記複数の永久磁石片における各分割比は、所定の漸化式を所定の回数だけ繰り返して算出することによって求められ、
前記所定の漸化式は、均等割を初期値とし、前記一方端側から数えてi番目の永久磁石片におけるn回目の分割比を当該i番目の永久磁石片の渦電流損密度で除算した除算結果を、当該i番目の永久磁石片におけるn+1回目の分割比とする式であること
を特徴とするアキシャルギャップ型永久磁石式回転機用回転子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0016】
図1は、実施形態におけるアキシャルギャップ型永久磁石式回転機の構成を示す分解斜視図である。実施形態におけるアキシャルギャップ型永久磁石式回転機(以下、「AG型PM式回転機」と略記する。)は、周方向に配置された複数のコイルを備える固定子と、周方向に配置された複数の永久磁石を備え前記固定子から回転軸方向に間隔を空けて配置される回転子(AG型PM式回転機用回転子)とを備える。AG型PM式回転機は、回転子を固定子の外側に配置した構造のアウターロータ型と、回転子を固定子の内側に配置した構造のインナーロータ型とに大別されるが、ここでは、インナーロータ型のAG型PM式回転機について以下に説明する。なお、アウターロータ型もインナーロータ型と同様に説明できる。
【0017】
実施形態におけるインナーロータ型のAG型PM式回転機Mは、例えば、
図1に示すように、固定子1(1A、1B)と、回転子2とを備える。
【0018】
固定子(ステータ)1は、非回転部分であり、回転子2を固定子1の内側に配置するために、1対の固定子1A、1Bを備えて構成される。これら1対の固定子1A、1Bは、互いに同形であるので、以下、固定子1Aを代表的に説明し、固定子1Bの説明は、固定子1Aの説明において、その符号を括弧内に示すことで、代える。
【0019】
固定子1A(1B)は、回転子2に対し非回転部分となり、周方向に配置された複数のコイル3A(3B)を備える。より具体的には、固定子1A(1B)は、円板状の固定子本体11A(11B)と、回転子2と対向する固定子本体11A(11B)の内側面上に周方向に沿って所定の間隔を空けて配列するように突設された複数の突部(ティース部)12A(12B)と、複数の突部12A(12B)それぞれの各端面を覆うように配設された複数の被覆板13A(13B)とを備える。固定子1A(1B)は、例えば、複数の電磁鋼板を半径方向に積層することによって形成される。また例えば、固定子1A(1B)は、軟磁性体粉末を加熱加圧成型することによって形成される。前記軟磁性体粉末は、強磁性の金属粉末であり、より具体的には、例えば、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜などの電気絶縁皮膜が形成された鉄粉(例えば直径50μm以下)等が挙げられる。これら軟磁性体粉末は、公知の手段、例えば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法や、酸化鉄等を微粉砕した後にこれを還元する方法等によって製造することができる。
【0020】
コイル3A(3B)は、長尺な導体部材を絶縁しつつ巻回した巻線である。前記長尺な導体部材は、断面丸形や正方形等の線材であって良いが、コイル3A(3B)での渦電流を低減する観点から、断面長方形の帯状の線材であることが好ましい。このような帯状の長尺な導体部材は、シート形状、リボン形状あるいはテープ形状であり、幅(幅方向の長さ、軸方向の長さ)Wに対する厚さ(前記幅方向に直交する厚さ方向の長さ、径方向の長さ)tが1未満である(0<t/W<1)。このようなコイル3A(3B)は、帯状の長尺な導体部材を、該導体部材の幅方向がコイル3A(3B)の軸方向に沿うように絶縁部材(図略)を挟んで巻回することによって構成される(フラットワイズ巻線構造)。
【0021】
このような固定子1A(1B)では、固定子本体11A(11B)および複数の突部12A(12B)が一体的に形成され、複数の突部12A(12B)それぞれに長尺な導体部材を絶縁しつつ巻回すことによって複数のコイル3A(3B)それぞれが複数の突部12A(12B)それぞれに装着され、あるいは、長尺な導体部材を絶縁しつつ巻回すことによって予め形成された複数のコイル3A(3B)それぞれがその芯部で複数の突部12A(12B)それぞれに装着され、そして、複数の突部12A(12B)における各端面および複数のコイル3A(3B)における各端面を被覆するように、複数の被覆板13A(13B)が複数の突部12A(12B)における各端面に固定される。これによって固定子1A(1B)が形成される。
【0022】
回転子(ロータ)2は、回転部分となり、周方向に配置された複数の永久磁石4を備える。より具体的には、回転子2は、一対の回転子本体2A、2Bを備え、これら1対の回転子本体2A、2Bで、磁極面を交互に入れ換えつつ周方向に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の永久磁石4を挟み込むことで形成されている。より詳しくは、次のように構成されている。ここで、これら1対の回転子本体2A、2Bは、互いに同形であるので、以下、回転子本体2Aを代表的に説明し、回転子本体2Bの説明は、回転子本体2Bの説明において、その符号を括弧内に示すことで、代える。
【0023】
回転子本体2A(2B)は、円板状の内円板部材21A(21B)と、内円板部材21A(21B)より大径な円環状の外円環部材22A(22B)と、周方向に所定の間隔を空けながらその両端で内円板部材21A(21B)と外円環部材22A(22B)とを連結する複数のスポーク部材23A(23B)とを備える。回転子本体2A(2B)は、例えば非磁性体で形成される。
【0024】
永久磁石4には、例えばアルニコ磁石、フェライト磁石およびネオジム磁石等の種々の磁石が利用できる。永久磁石4は、回転子本体2A(2B)における、周方向で互いに隣接するスポーク部材23A(23B)、内円板部材21A(21B)および外円環部材22A(22B)によって形成される空間内に配設して1対の回転子本体2A、2Bで保持するために、径方向に沿う両側縁部分の肉厚をその内側部分の肉厚よりも薄くした平面視(軸方向から見込む方向)にて扇形状に形成されている。永久磁石4の両側縁部分は、例えば、C面取りやR面取り等の面取りを施されることによって、あるいは、フランジ状に形成されることによって、薄肉に形成される。
【0025】
このような回転子2では、回転子本体2Aにおける、周方向で互いに隣接するスポーク部材23A、内円板部材21Aおよび外円環部材22Aによって形成される各空間内に、複数の永久磁石4それぞれが、周方向で互い隣接する永久磁石4間ではSNSN・・・の如く磁極が互い違いになるように配置され、そして、このように配置された複数の永久磁石4それぞれを、回転子本体2Bにおける、周方向で互いに隣接するスポーク部材23B、内円板部材21Bおよび外円環部材22Bによって形成される各空間内に配置しつつ、固定子本体2Aと協働して複数の永久磁石4それぞれを保持するように、固定子本体2Bが、互いに同軸となるように軸方向で固定子本体2Aに重ねられて連結固定される。これによって回転子2が形成される。
【0026】
そして、ロッド状の図略の回転軸を取り付けるために、本実施形態では、例えば、固定子1A、1Bにおける固定子本体11A、11Bには、それぞれ、その中心部に円形の貫通開口が前記図略の回転軸より大径で形成され、回転子2の回転子本体2A、2Bにおける内円板部材21A、21Bには、それぞれ、その中心部に円形の貫通開口が形成され、例えばベアリング等を含む軸受け部材が嵌め込まれて固定される。回転子2は、各前記軸受け部材を介して前記図略の回転軸に回転可能に取り付けられ、この回転子2の両側に、軸方向で所定の間隔をそれぞれ空けて各固定子1A、1Bが前記図略の回転軸を各前記貫通開口に挿通させつつ、配置される。これによってAG型PM式回転機Mが形成される。
【0027】
なお、コイル3A、3Bの個数と磁石4の個数とは、任意であって良い。例えば、コイル3A、3Bは、それぞれ、18個で、磁石4は、15個であって良い(18ポール15スロット)。
【0028】
このようなAG型PM式回転機Mの永久磁石4について以下にさらに説明する。
図2は、均等割された初期状態の永久磁石を説明するための図である。
図3は、分割の有無に対する永久磁石の渦電流損密度分布を示す図である。
図3(A)は、永久磁石4を5個の永久磁石片に均等な分割比で分割した場合を示し、
図3(B)は、永久磁石4を分割しない場合を示す。
図4は、繰り返し計算回数0回目(n=0)の場合における各永久磁石片の各渦電流損密度およびその逆数を示す図である。
図5は、繰り返し計算回数1回目(n=1)の場合における各永久磁石片の各渦電流損密度およびその逆数を示す図である。
図6は、繰り返し計算回数2回目(n=2)の場合における各永久磁石片の各渦電流損密度およびその逆数を示す図である。これら
図4(A)、
図5(A)および
図6(A)は、各永久磁石片の各渦電流損密度を示し、その横軸は、回転軸側(内側)から径方向外側へ順に各永久磁石片に割り振った永久磁石片の番号であり、その縦軸は、W/L(ワット/リットル)単位で表す渦電流損密度である。これら
図4(B)、
図5(B)および
図6(B)は、各永久磁石片の各渦電流損密度の逆数を示し、その横軸は、前記永久磁石片の番号であり、その縦軸は、渦電流損密度の逆数である。
図7は、繰り返し計算回数3回目(n=3)、4回目(n=4)および5回目(n=5)の各場合における各永久磁石片の各渦電流損密度を示す図である。
図7(A)は、繰り返し計算回数3回目(n=3)の場合における渦電流損密度を示し、
図7(B)は、繰り返し計算回数4回目(n=4)の場合における渦電流損密度を示し、
図7(C)は、繰り返し計算回数5回目(n=5)の場合における渦電流損密度を示す。これら
図7(A)、(B)および(C)の各図における横軸は、前記永久磁石片の番号であり、その縦軸は、W/L(ワット/リットル)単位で表す渦電流損密度である。
図8は、繰り返し計算回数5回目の場合における永久磁石の渦電流損密度分布を示す図である。
図9は、各繰り返し計算での永久磁石の各渦電流損密度の標準偏差を示す図である。
図9の横軸は、前記永久磁石片の番号であり、その縦軸は、渦電流損密度の標準偏差である。
図10は、各繰り返し計算での永久磁石の各渦電流損密度を示す図である。
図10の横軸は、前記永久磁石片の番号であり、その縦軸は、永久磁石4全体の渦電流損密度である。
【0029】
本実施形態におけるAG型PM式回転機Mに用いられる複数の永久磁石4それぞれは、所定の第1方向に沿って一方端から他方端へ順に並ぶように分割された複数の永久磁石片41を備えて構成される。これら複数の永久磁石片41は、前記一方向で互いに隣接する永久磁石片41間で必要に応じて例えば接着剤によって接着されて互いに連結される。前記第1方向は、前記図略の回転軸に沿う回転軸方向を軸回りとする周方向であってよいが、ここでは、
図2、
図3(A)および
図8に示すように、前記第1方向は、前記回転軸方向に直交する径方向である。
【0030】
ここで、まず、
図2に示すように、各永久磁石片41
i,0における第1方向(この例では径方向)の長さが互いに等しくなるように、永久磁石4を5個の第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0に均等割(等分割)すると、第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0における各渦電流損密度p
1,0〜p
5,0、は、
図4(A)のように計算され、渦電流損密度分布は、
図3(A)に示すようになる。ここで、第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0には、回転軸側(内側)から径方向外側へ順に番号が永久磁石片41
i,0の番号iとして割り振られた。この渦電流損密度の算出には、公知の三次元有限要素法の数値解析(FEA、three−dimensional Finite Element Analysis)が利用された。
図3(A)および
図4(A)に示すように、1番目の第1永久磁石片41
1,0における渦電流損密度p
1,0は、224.9W/Lであり、2番目の第2永久磁石片41
2,0における渦電流損密度p
2,0は、337.4W/Lであり、3番目の第3永久磁石片41
3,0における渦電流損密度p
3,0は、425.6W/Lであり、4番目の第4永久磁石片41
4,0における渦電流損密度p
4,0は、502.4W/Lであり、そして、5番目の第5永久磁石片41
5,0における渦電流損密度p
5,0は、462.5W/Lであった。そして、これら第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0の渦電流損、すなわち、永久磁石4全体の渦電流損は、110.1Wであった。
【0031】
一方、永久磁石4を複数の永久磁石片41
i,nに分割することなく1個の部材とした場合、その渦電流損密度は、1513.8W/Lであり、渦電流損密度分布は、
図3(B)に示すようになる。そして、永久磁石4全体の渦電流損は、406.6Wであった。
【0032】
これらを比較すると分かるように、永久磁石4を5個の永久磁石片41
1,0〜41
5,0に均等割(等分割)した場合、渦電流損密度は、1513.8W/Lから、224.9W/Lないし502.4W/Lの範囲へ低下し、永久磁石4全体の渦電流損は、406.6Wから110.1Wへ低下する。しかしながら、渦電流損密度分布は、
図3(A)に示すように、均一ではなく、
図4(A)に示すように、その最小値と最大値との比は、502.4/224.9=約2.23倍にもなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、複数iの永久磁石片41
i,nにおける各分割比a
i,nは、所定の漸化式を所定の回数nだけ繰り返して算出することによって求められた。そして、前記所定の漸化式は、本実施形態では、均等割を初期値(n=0)とし、前記一方端側(この例では回転軸側)から数えてi番目の永久磁石片41
i,nにおけるn回目の分割比a
i,nを当該i番目の永久磁石片41
i,nの渦電流損密度p
i,nで除算した除算結果を、当該i番目の永久磁石片41
i,n+1におけるn+1回目の分割比a
i,n+1とする下記の式1である。
【0035】
この漸化式において、永久磁石片41
i,nの分割比a
i,nをこの永久磁石片41
i,nのサイズとみなすと、n回目の分割比a
i,n(すなわち今回の大きさ)をその渦電流損密度p
i,nで除算した除算結果を、n+1回目の分割比a
i,n+1(すなわち、次回の大きさ)とすることは、渦電流損密度の大きな永久磁石片41
i,nを細分化し、渦電流損密度の小さな永久磁石片41
i,nを拡大化することを意味する。したがって、この漸化式は、その繰り返し計算によって渦電流損を均一化できる。
【0036】
なお、漸化式の繰り返し計算n回目におけるi番目の永久磁石片を41
i,nとし、その分割比をa
i,nとし、その渦電流損密度をp
i,nとしている(iは、2以上の整数、nは、0以上の整数)。
【0037】
一例では、漸化式の繰り返し計算における初期値(n=0)は、
図4(A)に示す、均等割の5個の第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0における渦電流損密度p
1,0〜p
5,0とされ、逆数1/p
1,0〜1/p
5,0が求められると、前記逆数1/p
1,0〜1/p
5,0は、
図4(B)に示すようになる。これらに均等割の第1ないし第5永久磁石片41
1,0〜41
5,0における分割比a
1,0〜a
5,0=0.2が乗算され、全体の分割比a
1,1〜a
5,1が1となるように規格化されると、漸化式の繰り返し計算1回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,1〜41
5,1の各分割比a
1,1〜a
5,1は、0.320:0.213:0.169:0.143:0.155となり、それらの各渦電流損密度p
1,1〜p
5,1は、
図5(A)に示すようになる。すなわち、1番目の第1永久磁石片41
1,1における渦電流損密度p
1,1は、414.2W/Lであり、2番目の第2永久磁石片41
2,1における渦電流損密度p
2,1は、426.0W/Lであり、3番目の第3永久磁石片41
3,1における渦電流損密度p
3,1は、378.7W/Lであり、4番目の第4永久磁石片41
4,1における渦電流損密度p
4,1は、327.3W/Lであり、そして、5番目の第5永久磁石片41
5,1における渦電流損密度p
5,1は、302.9W/Lであった。
【0038】
以下、同様に、5回の繰り返し計算を行うと、1回目の繰り返し計算における各渦電流損密度p
1,1〜p
5,1の逆数は、
図5(B)に示すようになり、漸化式の繰り返し計算2回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,2〜41
5,2の各渦電流損密度p
1,2〜p
5,2は、
図6(A)に示すようになる。2回目の繰り返し計算における各渦電流損密度p
1,2〜p
5,2の逆数は、
図6(B)に示すようになり、漸化式の繰り返し計算3回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,3〜41
5,3の各渦電流損密度p
1,3〜p
5,3は、
図7(A)に示すようになる。そして、漸化式の繰り返し計算4回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,4〜41
5,4の各渦電流損密度p
1,4〜p
5,4は、
図7(B)に示すようになり、漸化式の繰り返し計算5回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,5〜41
5,5の各渦電流損密度p
1,5〜p
5,5は、
図7(C)に示すようになる。
【0039】
この漸化式の繰り返し計算5回目における第1ないし第5永久磁石片41
1,5〜41
5,5の各分割比a
1,5〜a
5,5は、0.295:0.199:0.173:0.160:0.173であり、1番目の第1永久磁石片41
1,5における渦電流損密度p
1,5は、375.7W/Lであり、2番目の第2永久磁石片41
2,5における渦電流損密度p
2,5は、377.5W/Lであり、3番目の第3永久磁石片41
3,5における渦電流損密度p
3,5は、380.9W/Lであり、4番目の第4永久磁石片41
4,5における渦電流損密度p
4,5は、377.7W/Lであり、そして、5番目の第5永久磁石片41
5,5における渦電流損密度p
5,5は、363.2W/Lである。このように、この例では、5回の繰り返し計算によって、第1ないし第5永久磁石片41
1,5〜a
5,5における各渦電流損密度p
1,5〜p
5,5は、略均一化される。
【0040】
漸化式の繰り返し計算において、その均一化の程度を、第1ないし第5永久磁石片41
1,n〜41
5,nにおける各渦電流損密度p
1,n〜p
5,nに対する標準偏差によって評価すると、各回(n=0〜5)における各標準偏差は、
図9に示すようになる。すなわち、標準偏差は、0回目の99.2から、繰り返し計算ごとに低下し、5回目では、6.1となる。このように5回の繰り返し計算によって、第1ないし第5永久磁石片41
1,5〜41
5,5における各渦電流損密度p
1,5〜p
5,5は、標準偏差6.1に略均一化されている。
【0041】
そして、永久磁石4全体の渦電流損密度は、
図10に示すようになり、繰り返し計算0回目の409.9W/Lから、繰り返し計算ごとに脈動しながら収束し、5回目では、374.8W/Lとなっている。この
図10から分かるように、第1ないし第5永久磁石片41
1,n〜41
5,nにおける各分割比a
1,n〜a
5,nを等分割(均等割)から変更することによって、永久磁石4全体の渦電流損失密度も低減できる。
【0042】
なお、永久磁石4全体の渦電流損密度は、(全体の渦電流損密度)=(磁石に発生する渦電流損の総和)/(磁石体積の総和)によって求めている。
【0043】
以上説明したように、本実施形態におけるAG型PM式回転機Mの回転子2およびこれを用いた前記AG型PM式回転機Mでは、前記所定の漸化式の繰り返し計算によって、複数の永久磁石片41
i,nそれぞれの各サイズがより最適化され、この結果、本実施形態におけるAG型PM式回転機Mの回転子2およびこれを用いた前記AG型PM式回転機Mは、永久磁石4に生じる渦電流損をより低減し、渦電流損の分布をより均一化できる。
【0044】
なお、上述の実施形態では、永久磁石4それぞれは、所定の第1方向に沿って一方端から他方端へ順に並ぶように分割された複数の永久磁石片41
i,nを備えて構成されたが、前記複数の永久磁石片41
i,nそれぞれは、前記第1方向に直交する第2方向に沿う分割線でさらに分割されてもよい。すなわち、永久磁石4それぞれは、賽の目状に分割されても良い。このようなAG型PM式回転機の回転子およびこれを用いた前記AG型PM式回転機Mでは、複数の永久磁石片41
i,nそれぞれは、第1方向に直交する第2方向に沿う分割線でさらに分割されるので、より小さくなり、渦電流をより低減できる。
【0045】
また、上述の実施形態では、永久磁石4は、5個の第1ないし第5永久磁石片41
1,n〜41
5,nに分割されたが、これに限定されるものではなく、分割数は、2以上の適宜な数に設定されてよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、漸化式の繰り返し計算回数は、5回であったが、これに限定されるものではなく、漸化式の繰り返し計算回数は、適宜な数に設定されてよい。漸化式の繰り返し計算回数は、AG型PM式回転機Mの回転子2における永久磁石4の仕様等で許容されている最高温度や渦電流損等に応じて適宜な数に設定される。
【0047】
また、上述の実施形態におけるAG型PM式回転機Mは、1対の固定子1A、1Bの間に回転子2を備えて構成されたが、3個以上の固定子1nの各間それぞれに1つずつ回転子2を備えて構成されても良い。
【0048】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。