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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203035(P2016-203035A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】実験台
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20161111BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20161111BHJP
   F24F 13/072 20060101ALI20161111BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B01L1/00 A
   F24F9/00 E
   F24F13/072 A
   F24F13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-83755(P2015-83755)
(22)【出願日】2015年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】山本 仁
(72)【発明者】
【氏名】久保 信一
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AA06
(57)【要約】
【課題】高い安全性を保持するとともに、より作業効率の向上した実験台を提供する。
【解決手段】実験台1は、前面が開口した作業空間111を構成する天井板部12、左右側板部13,14、背板部15及び作業台11と、前記作業空間111内に気体を供給する給気部2と、前記作業空間111内の気体を強制的に排気する排気部3と、前記作業空間111の前面側上方で左右幅方向に沿って設けられ、前記給気部2から供給された気体を前記作業空間111に流入させる吹出部4と、を備え、前記吹出部4は、前記作業空間111の上方から下向きに気体が噴出されるスリット状の開口が形成されたスリット部41と、前記スリット部41の後側から後方下向きに延び、前記スリット部41から噴出した気体を前記作業空間111に向けて案内する案内部42と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口した作業空間を構成する天井板部、左右側板部、背板部及び作業台と、
前記作業空間内に気体を供給する給気部と、
前記作業空間内の気体を強制的に排気する排気部と、
前記作業空間の前面側上方で左右幅方向に沿って設けられ、前記給気部から供給された気体を前記作業空間に流入させる吹出部と、を備え、
前記吹出部は、
前記作業空間の上方から下向きに気体が噴出されるスリット状の開口が形成されたスリット部と、
前記スリット部の後側から後方下向きに延び、前記スリット部から噴出した気体を前記作業空間に向けて案内する案内部と、を有することを特徴とする実験台。
【請求項2】
前記吹出部は、前記作業空間の上方から下向きに延びる前板部および後板部を有し、
前記スリット部は、前記前板部および後板部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の実験台。
【請求項3】
前記前板部は、前記作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の実験台。
【請求項4】
前記後板部は、前記作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の実験台。
【請求項5】
前記案内部は、前記後板部から前記背板部方向へ下向きに連続的に延びて形成されることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の実験台。
【請求項6】
前記前板部は、その先端部が前記案内部側に回り込んだ形状に形成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の実験台。
【請求項7】
前記スリット部は、0.7m/s〜2.5m/sの速度で気体を噴出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の実験台。
【請求項8】
前記左右側板部は、前記作業空間の気体を前記作業空間の内部側へ誘導する誘導部を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の実験台。
【請求項9】
前記誘導部は、前記側板部の前縁部分が内側向きの屈曲形状あるいは湾曲形状に形成されることを特徴とする請求項8に記載の実験台。
【請求項10】
前記排気部は、前記作業空間の下方に排気口を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の実験台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験室や研究室において実験する際に使用される実験台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実験室や研究室などにおいて薬品を用いた実験などを行う際に、実験により発生した有害な物質等の室内などへの流出及び拡散を未然に防止するために、給排気設備などを有する作業空間を備えた実験台を用いることが知られている。
【0003】
特許文献1には、作業空間の前面に昇降可能に構成された扉を設け、作業空間内の有毒ガス類などを空気とともに排出除去するドラフトチャンバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5035868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような扉を設けたものでは、作業空間に実験器具などを持ち込む際や実験作業などの妨げとなる場合があり、高い安全性を保持しながらも、より作業効率の向上した実験台が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した技術背景に鑑み、高い安全性を保持するとともに、より作業効率の向上した実験台の提供を目的とする。
【0007】
即ち、本発明は下記[1]〜[10]に記載の構成を有する。
【0008】
[1] 前面が開口した作業空間を構成する天井板部、左右側板部、背板部及び作業台と、
前記作業空間内に気体を供給する給気部と、
前記作業空間内の気体を強制的に排気する排気部と、
前記作業空間の前面側上方で左右幅方向に沿って設けられ、前記給気部から供給された気体を前記作業空間に流入させる吹出部と、を備え、
前記吹出部は、
前記作業空間の上方から下向きに気体が噴出されるスリット状の開口が形成されたスリット部と、
前記スリット部の後側から後方下向きに延び、前記スリット部から噴出した気体を前記作業空間に向けて案内する案内部と、を有することを特徴とする実験台。
【0009】
[2] 前記吹出部は、前記作業空間の上方から下向きに延びる前板部および後板部を有し、
前記スリット部は、前記前板部および後板部によって形成されることを特徴とする前項1に記載の実験台。
【0010】
[3] 前記前板部は、前記作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されることを特徴とする前項2に記載の実験台。
【0011】
[4] 前記後板部は、前記作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されることを特徴とする前項2または3に記載の実験台。
【0012】
[5] 前記案内部は、前記後板部から前記背板部方向へ下向きに連続的に延びて形成されることを特徴とする前項2〜4のいずれかに記載の実験台。
【0013】
[6] 前記前板部は、その先端部が前記案内部側に回り込んだ形状に形成されることを特徴とする前項2〜5のいずれかに記載の実験台。
【0014】
[7] 前記スリット部は、0.7m/s〜2.5m/sの速度で気体を噴出することを特徴とする前項1〜6のいずれかに記載の実験台。
【0015】
[8] 前記左右側板部は、前記作業空間の気体を前記作業空間の内部側へ誘導する誘導部を有することを特徴とする前項1〜7のいずれかに記載の実験台。
【0016】
[9] 前記誘導部は、前記側板部の前縁部分が内側向きの屈曲形状あるいは湾曲形状に形成されることを特徴とする前項8に記載の実験台。
【0017】
[10] 前記排気部は、前記作業空間の下方に排気口を備えることを特徴とする前項1〜9のいずれかに記載の実験台。
【発明の効果】
【0018】
上記[1]に記載の発明によれば、前面が開口した作業空間を構成する天井板部、左右側板部、背板部及び作業台と、作業空間内に気体を供給する給気部と、作業空間内の気体を強制的に排気する排気部と、作業空間の前面側上方で左右幅方向に沿って設けられ、給気部から供給された気体を作業空間に流入させる吹出部と、を備え、吹出部は、作業空間の上方から下向きに気体が噴出されるスリット状の開口が形成されたスリット部と、スリット部の後側から後方下向きに延び、スリット部から噴出した気体を作業空間に向けて案内する案内部と、を有するので、作業空間の前面側上方に設けられたスリット部から噴出させた気体が、案内部に引き寄せられてその前側面を伝って下方の作業空間へ流入することにより、開口した前面側周辺の外気など(例えば、室内空気など)を引き込みながら、作業空間内に発生した有毒ガスなどを排気することができるため、作業空間の前面が開口した構成であっても、作業空間外に有毒ガスなどを漏らすことなくより確実な排気処理を行うことが可能となり、高い安全性を保持することができる。
【0019】
また、作業空間の前面が開口した構成であることから、作業空間における扉などによる妨げが排除され作業効率を向上させることが可能となる。
【0020】
上記[2]に記載の発明によれば、吹出部は、作業空間の上方から下向きに延びる前板部および後板部を有し、スリット部は、前板部および後板部によって形成されるので、給気部から前板部及び後板部よりなるスリット部までの流路が形成されることになり、給気部から供給される気体がより流れ易くなる。
【0021】
上記[3]に記載の発明によれば、前板部は、作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されるので、給気部から流入した気体が作業空間の上方前面側の湾曲形状に形成された前板部を経由することにより、スリット部から噴出される直前の気体がスムーズに流れてスリット部に誘導されるようになるため、前板部の作業空間の上方前面側が直角形状に形成された場合と比較して、給気部から流入した気体のみならず作業空間の外部から引き込んだ気体を含めて、作業空間における乱流の発生を抑制することができる。
【0022】
上記[4]に記載の発明によれば、後板部は、作業空間の上方前面側が湾曲形状に形成されるので、スリット部から噴出される直前の気体が、作業空間の上方前面側の湾曲形状に形成された後板部を経由することにより、スリット部へとスムーズに誘導される。
【0023】
上記[5]に記載の発明によれば、案内部は、後板部から背板部方向へ下向きに連続的に延びて形成されるので、スリット部から噴出された気体が後板部から連続的に延びた案内部へとスムーズに流れるため、気体の流動を妨げるなどすることがなく気体を作業空間へ流入させることができる。
【0024】
また、案内部は、背板部方向へ下向きに延びるので、スリット部から噴出した気体及び案内部に引き寄せられた気体を余すことなく背板部の方向へ案内することができ、作業空間外に漏らすことなくより確実に排気処理を行うことが可能となる。
【0025】
上記[6]に記載の発明によれば、前板部は、その先端部が案内部側に回り込んだ形状に形成されるので、スリット部から噴出した気体がより案内部に沿って流れ易くなり、噴出した気体が外部へ逃げることがない。
【0026】
上記[7]に記載の発明によれば、スリット部は、0.7m/s〜2.5m/sの速度で気体を噴出するので、スリット部から好適な流速で気体が噴出して、より周囲の空気を作業空間内へ引き込み易くなる。
【0027】
上記[8]に記載の発明によれば、左右側板部は、作業空間の気体を作業空間の内部側へ誘導する誘導部を有するので、左右側板部に設けられた誘導部により、左右側板部を伝って作業空間の前面から逃げようとする気体を作業空間の内部側へ誘導することができ、作業空間内の気体が前面の開口部から流れ出ることを抑制することができる。
【0028】
上記[9]に記載の発明によれば、誘導部は、側板部の前縁部分が内側向きの屈曲形状あるいは湾曲形状に形成されるので、側板部を伝って作業空間の前方方向へと流動する気体が、誘導部を経由することによって外部に漏れることなく確実に作業空間内部へと誘導させることができる。
【0029】
上記[10]に記載の発明によれば、排気部は、作業空間の下方に排気口を備えるので、実験等により発生した空気よりも比重が大きく、作業空間の底部に滞留し易い気体を、排気口を介して余すことなく強制的に排気させることができる。
【0030】
また、作業空間の下方側で流動する気体や、吹出部では引き込み難い作業空間下方周辺の外気(例えば、室内空気など)が排気口に引き込まれることにより、作業空間内で発生した有毒ガス等を漏らすことなくより確実に排気処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実験台の斜視図である。
図2】本発明の実験台の側面図である。
図3】本発明の実験台の正面図である。
図4】本発明の実験台の側板について説明するための説明図である。
図5】本発明の実験台の吹出部について説明するための説明図である。
図6】本発明の実験台の吹出部の断面図である。
図7】本発明の実験台の吹出部を説明するための縦断面図である。
図8】本発明の実験台の誘導部を説明するための横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0033】
図1は、実験台1の斜視図、図2は、実験台1の側面図、図3は、実験台1の正面図、図4は、実験台1の側板部13,14について説明するための説明図、図5は、実験台1の吹出部4について説明するための説明図、図6は、実験台1の吹出部4の断面図、図7は、実験台1の吹出部4を説明するための縦断面図、図8は、実験台1の誘導部131,132を示す横断面図である。
【0034】
図1〜8には、本発明の実施形態に係る実験台1の一例が示されている。
【0035】
実験台1は、脚部113を有する作業台11を備え、当該作業台11の左右に配置された側板部13,14、作業台11の上方及び後面にそれぞれ配置された天井板部12及び背板部15を備えている。
【0036】
以降では、実験台1の背板部15側を後面或いは奥側、背板部15の対向面側である開口部112側を前面、前面に向かって左右方向を幅方向とする。
【0037】
また、図中に示された矢印は、気体の流れを表している。
【0038】
実験台1は、天井板部12、左右側板部13,14、背板部15及び作業台11によって囲まれて構成された空間であって、前面が開口した作業空間111を備える。
【0039】
作業空間111は、例えば、高さ1120mm、左右幅寸法1150mm、奥行き750mmに設定され、作業台11の最前面よりも後面側の位置に最前面が設けられる。
【0040】
実験台1は、例えば、天井板部12、背板部15及び作業台11が、スチールなどの金属製材料からなり、作業台11の天板部には、多数の孔311が全体に設けられたパンチングメタルで形成されている。
【0041】
左右側板部13,14は、それぞれ透明のガラス板で構成されている。
【0042】
尚、左右側板部13,14が透明のガラス板で構成されていれば、側部の外側から作業空間111内部を視認することができるようになるため好ましいが、これに限定されるものではなく、他の板部と同一の素材などで構成されるのであってもよい。
【0043】
側板部13,14は、側板部13,14を伝って前面方向に流れる作業空間111の気体を作業空間111の内部側へ誘導させる誘導部131,141を有する。
【0044】
誘導部131,141は、側板部13,14の前縁部分が作業空間111の前面側、即ち、内側向きの屈曲形状或いは湾曲形状に形成される。
【0045】
この際、図8(a)に示すように、誘導部131,141は、少なくともその端部131a,141aが作業空間111の前面に対して平行或いは略平行となるように設定されることが好ましい。
【0046】
この例では、誘導部131,141は、側板部13,14の前面端部が所定の曲率を有する湾曲形状に形成されている。
【0047】
側板部13,14を伝って前面側に流れた気体は、誘導部131,141の内壁の形状に沿って流れて作業空間111内に戻るようになっている。
【0048】
誘導部131,141は、この例では、半径約50mm、中心角が約90度の円弧状に設定されている。
【0049】
左右側板部13,14は、作業空間111の気体を作業空間111の内部側へ誘導する誘導部131,141を有するので、左右側板部13,14を伝って作業空間111の前面側から外側へ逃げようとする気体を作業空間111の内部側へ誘導することができ、作業空間111内の気体が実験台1前面の開口部112から流れ出ることを抑制することができる。
【0050】
誘導部131,141は、側板部13,14の前縁部分が内側向きの屈曲形状或いは湾曲形状に形成されていることにより、側板部13,14を伝って作業空間111の前方方向へと流動する気体が、誘導部131,141を経由することにより外部に漏れることなく確実に作業空間111内部へと誘導させることができる。
【0051】
また、実験台1には、作業空間111内に気体を供給するための給気部2と、作業空間111で生じた有毒ガスなどの作業空間111内の気体を強制的に排気するための排気部3と、が備えられている。
【0052】
給気部2は、外気などを取り込んで作業空間111に気体を送り出す給気ファン21、給気ファン21を介して取り込んだ気体を一時的に貯留する給気ボックス22及び、作業空間111の前面側上方に設けられた吹出部4に連通する気体の流路となる給気路23などで構成される。
【0053】
この例では、図示するように、給気ファン21及び給気ボックス22は、天井板部12の上部に一体配置され、天井板部12の内部に設けられた給気路23とそれぞれ連結して形成されている。
【0054】
給気ファン21から取り込まれた気体は、給気ボックス22で一時的に貯留された後、給気路23と連通する吹出部4を経由して作業空間111の内部へ供給される。
【0055】
給気ファン21からの気体の取り込み量及び給気ボックス22の気体の貯留量に基づいて、吹出部4からの気体の噴出量を可変に制御することが可能となる。
【0056】
尚、給気ファン21としては、シロッコファンやプロペラファンなどが用いられる。
【0057】
排気部3は、作業空間111内の気体を排気する排気口31、排気された気体の流路である排気路32、実験台1の外部に連結された排気ダクト33などからなる。
【0058】
図示するように、排気口31は、例えば、作業台11の天板部の上面全体に形成された孔311からなり、作業台11及び背板部15の内部に設けられた排気路32と連通して形成されている。
【0059】
作業空間111内の気体は、矢印で示すように作業空間111の下方の孔311から排気されて、排気路32と連通する天井板部12上部に設けられた排気ダクト33を経由して強制的に実験台1の外部へと排気される。
【0060】
排気部3は、所定の風速に設定されて排気され、作業空間111内の気体だけでなく、排気部3周辺の空気をも引き込んで排気可能に構成されている。
【0061】
排気部3が作業空間111の下方に排気口31を備えることにより、実験等により発生した空気よりも比重が大きく、作業空間111の底部に滞留し易い気体を、排気口31を介して余すことなく強制的に排気させることができる。
【0062】
また、作業空間111の下方側で流動する気体や、吹出部4では引き込み難い作業空間111下方周辺の外気(例えば、室内空気など)が排気口31に引き込まれることにより、作業空間111内で発生した有毒ガス等を漏らすことなくより確実に排気処理することができる。
【0063】
作業空間111の前面側上方には、給気部2から供給された気体を作業空間111に流入させる吹出部4が設けられている。
【0064】
吹出部4は、気体を噴出させるスリット部41と、噴出した気体を作業空間111に向けて案内する案内部42と、を有する。
【0065】
スリット部41は、天井板部12の給気路23と連通する天井板部12の最前面に幅方向に沿って設けられ、作業台11の最前面と鉛直方向に平行に配置されている。
【0066】
この例では、スリット部41は、作業空間111の最前面よりも僅かに前面側に配置された、作業空間111の上方側で下向きに延び、前後に並んで配置される2つの板部121(前板部121a、後板部121b)により形成されている。
【0067】
具体的には、図6に示すように、スリット部41は、作業空間111の上方前面側が断面視で湾曲形状に形成されてなる前板部121a及び後板部121bによって形成され、作業空間111の左右幅方向と略同等寸法の細長い形状で下方向きに開口するように設けられている。
【0068】
前板部121a及び後板部121bは、この例では、上下に平行して天井板部12から前方に延び、天井板部12の前面側で徐々に互いに近接するように湾曲形状に垂下して、最も近接した前板部121a及び後板部121bの先端部によってスリット状の開口が形成されている。
【0069】
このように吹出部4及びスリット部41が形成されることによって、給気部2から前板部121a及び後板部121bよりなるスリット部41までの流路が形成されることになり、給気部2から供給される気体がより流れ易くなる。
【0070】
後板部121bは、前板部121aよりも長く延びて設けられており、後方下向きに延び、スリット部41から噴出した気体を作業空間に向けて案内する案内部42が延設されている。
【0071】
前板部121aは、作業空間111の上方前面側が湾曲形状に形成されるので、給気部2から流入した気体が作業空間111の上方前面側の湾曲形状に形成された前板部121aを経由することにより、スリット部41から噴出される直前の気体がスムーズに流れてスリット部41に誘導されるため、前板部121aの作業空間111の上方前面側が直下形状に形成された場合と比較して、給気部2から流入した気体のみならず作業空間111の外部から引き込んだ気体を含めて、作業空間111における乱流の発生を抑制することができる。
【0072】
また、後板部121bの作業空間111の上方前面側が湾曲形状に形成されていれば、スリット部41から噴出される直前の気体が、作業空間111の上方前面側の湾曲形状に形成された後板部121bを経由することにより、スリット部41へとスムーズに誘導される。
【0073】
スリット部41の幅寸法(前板部121a及び後板部121bの配置間隔)は、例えば、約1.0mm〜3.0mmに設定される。
【0074】
スリット部41は、スリット状に形成されていることにより、作業空間111に向かって高速で気体を噴出させることができる。
【0075】
図中において気体の流れを示す矢印で表されるように、作業空間111の上方に設けられたスリット部41から高速で噴出された気体は、スリット部41からの噴流によって案内部42に引き寄せられるとともに、天井板部12上方及び開口部112前方などのスリット部41周辺の外気(例えば、室内空気など)を引き込みながら案内部42に沿って流れ、作業空間111の内部に流入する。
【0076】
気体の流速は、給気部2の給気ファン21の回転数を変動させることによって調整することが可能であるが、所定の流速のみで気体が供給されるように構成してもよい。
【0077】
この例では、開口部112の左右幅と略同等の長さ寸法のスリット部41が形成されている。
【0078】
スリット部41は、0.7m/s〜2.5m/sの速度で気体を噴出するように設定されることが好ましく、このように構成されることにより、スリット部41から好適な流速で気体が噴出して、より周囲の空気を作業空間111内へ引き込み易くなる。
【0079】
案内部42は、スリット部41を形成する後板部121bが下向き且つ後方側へ向かって延びて形成されたものである。
【0080】
案内部42は、図7(a)に示すように、この例では、水平方向の高さ寸法Hが約80mmに設定されている。
【0081】
案内部42は、スリット部41を形成する前板部121aよりも長くなるように設定され、断面視で作業空間111の後面に向かって僅かに湾曲するよう形成されている。
【0082】
スリット部41から噴出した気体は、コアンダ効果によって当該案内部42に引き寄せられ、案内部42の前側面を伝って作業空間111の奥側へ流入するとともに、作業空間111の開口部112周辺の外気などが、スリット部41からの噴流によって案内部42側に引き込まれて作業空間111の奥側へと流入する。
【0083】
案内部42は、図2のように断面視した際に、作業空間111の奥行き方向において前面端部位置を0%、後面端部位置を100%と定義すると、スリット部41から案内部42を伝い流れた気体が、作業空間111の高さ方向中間位置付近において作業空間111の奥行き方向の20%〜80%の位置範囲で流入するように形成され、好ましくは、作業空間111の半分よりも後方位置に気体が流入するように形成される。
【0084】
更に、案内部42は、作業空間111の高さ方向中間位置付近において、作業空間111の奥行き方向の約60%の位置に気体が流入されるように形成されるとより好適である。
【0085】
尚、案内部42は、作業空間111への気体の流入位置を調整可能に可動式に構成されるのであってもよいし、無論、固定的に設けられて流入位置が固定されたものとして構成されるのであってもよい。
【0086】
案内部42の角度を調整可能にする場合は、給気路23と連通する吹出部4が作業空間111の前面側上方(実験台1の上部)に組み込まれてユニット化され、ユニット化された吹出部4が回動動作などするように構成されて角度調整可能に構成するのであってもよい。
【0087】
作業空間111内で背板部15から天井板部12を伝って流動する気体は、案内部42が作業空間111の後方側へ向かって延びて形成されることによって作業空間111の内部側へと案内される。
【0088】
具体的には、作業空間111を流動する気体は、背板部15に沿って上昇して天井板部12を伝って前面側へ流れた後、案内部42の裏側面に到達して、案内部42の裏面に沿って作業空間111の内部側へと流入する。
【0089】
案内部42は、後板部121bから背板部15方向へ下向きに連続的に延びて形成されるので、スリット部41から噴出された気体が後板部121bから連続的に延びた案内部42へとスムーズに流れるため、気体の流動を妨げるなどすることがなく気体を作業空間111へ流入させることができる。
【0090】
また、案内部42は、背板部15方向へ下向きに延びるので、スリット部41から噴出した気体及び案内部42に引き寄せられた気体を余すことなく背板部15の方向へ案内することができ、作業空間111外に漏らすことなくより確実に排気処理を行うことが可能となる。
【0091】
スリット部41は、前板部121aの端部が作業空間111の奥側へ向くように形成されたカール部43を設けている。
【0092】
図6に示すように、カール部43は、前板部121aの端部が断面視で前面側向きに凸の湾曲形状、即ち、前板部121aの端部が案内部42側に回り込んだ形状に形成されている。
【0093】
具体的には、水平位置から案内部42側方向で約10度〜30度回り込むような角度αに形成されている。
【0094】
前板部121aは、その先端部が案内部42側に回り込んだ形状に形成されるので、スリット部41から噴出した気体がより案内部42に沿って流れ易くなり、噴出した気体が外部へ逃げることがない。
【0095】
上述したように、前板部121a及び後板部121bが湾曲形状に形成され、更に前板部121aの端部が案内部42側に回り込んだ形状に形成されると、給気部2からの気体がスムーズに流れるため最も好ましいが、これに限定されるものではない。
【0096】
例えば、図7(b),(c)に示すような、少なくとも前板部121a及び後板部121bの何れもが気体を下向きに噴出可能に形成された構成であれば、前板部121a及び後板部121bが屈曲形状に形成されるなどその他の形状であってもよい。
【0097】
また、上述では、案内部42が、断面視で作業空間111の後面に向かって僅かに湾曲して形成されるよう説明したが、断面視直線状に形成されているのであってもよく、スリット部41からの気体が作業空間111に向かって案内される構成であれば、これに限定されるものではない。
【0098】
また、上述では、案内部42は水平方向の高さ寸法Hが約80mmに設定されているものとしたが、これに限定されるものではなく、作業空間111の奥行き寸法及び高さ寸法などに応じて適宜設定されるとよい。
【0099】
上述した実験台1は、作業空間111の奥側上部にR形状に形成された背面パネル151を設けるのであってもよい。
【0100】
背面パネル151は、例えば、背板部15側の上部から天井板部12にかけて配置され、上方に突出したR形状に形成される。
【0101】
このような構成により、作業空間111内が高温になることにより発生した対流などが背板部15に沿って上昇した場合に、当該気体は、背面パネル151を伝って天井板部12に沿って前方方向に流れ、案内部42の裏面側を伝って再び作業空間111の奥側方向へ流れるような気体の流れを形成することができるため、気体を排気させ易い。
【0102】
上述では、排気口31が作業台11の天板部の上面全体に形成されるように説明したが、これに限定されるものではない。
【0103】
例えば、作業空間111の奥側、具体例として、作業台11の天板部の上面の奥側(後面側)のみに設けられるのであってもよいし、背板部15の下側部にのみ、或いは作業台11の天板部の上面の奥側と背板部15の下側部の両方に設けられるなどしてもよい。
【0104】
尚、作業空間111の下方前面側にも排気口31が設けられると、作業空間111の開口部112から引き込んだ外気とともに作業空間111の気体を排気することができるため好ましい。
【0105】
排気口31は、実験等により発生した空気よりも比重の大きい気体を排気し易いため、作業空間111の下方に設けられることが最も好ましいが、作業空間111の下方以外の箇所に設けられるのであってもよい。
【0106】
上述した誘導部131,141は、所定の曲率の円弧状に形成されたものとして説明したが、その他の形状に形成されているのであってもよい。
【0107】
例えば、図8(b)に示すように、誘導部132が、屈曲形状に形成されているのであってもよく、少なくとも誘導部132の端部132aが作業空間111の前面に対して平行或いは略平行となるように設定するとよい(側板部14の誘導部についても誘導部132と同様の形状であるため図示省略)。
【0108】
上述では、吹出部4は、天井板部12の最前面に設けられ、且つ作業台11の最前面と鉛直方向に平行に配置されると説明したが、少なくとも作業空間111の前面側上方に設けられるのであれば、天井板部12の最前面或いは作業台11の最前面でなくてもよく、上述した構成に限定されるものではない。
【0109】
例えば、天井板部12の前面部が作業空間111の最前面よりも前面側に突出するように構成されている場合には、吹出部4は、天井板部12の前面部から作業空間111の最前面に相当する位置までの間で、作業空間111の上方に設けられるようにすればよい。
【0110】
吹出部4は、作業空間111の最前面よりも前面側の位置に設けられると、作業空間111の外部の気体を作業空間111の内部に引き込み易いため好ましいが、作業空間111の最前面と略同等或いはそれよりも僅かに後面側の位置に設けられるのであってもよい。
【0111】
また、吹出部4は、天井板部12の前面部の左右幅方向全域に亘ってスリット部41が設けられるように図示しており、作業空間111の左右幅方向全域から外部の気体を引き込むことができるため最も好適な構成であるが、スリット部41が左右幅方向一列で等間隔に設けられるように構成するのであってもよいし、複数列のスリット部41が平行して設けられた構成とするのであってもよい。
【0112】
また、吹出部4は、スリット部41を実験台1前面の開口部112の両端部を除く部位に形成する、即ち、開口部112の中央部にのみ設けられるのであってもよい。
【0113】
このように構成すれば、スリット状の開口端部から噴出する気体がスリット状開口の長さ方向に広がり易い傾向にある場合であっても、スリット部41の端部から噴出する気体が左右側板部13,14よりも外側に広がって拡散することなく、確実に作業空間111内部に閉じ込めることができる。
【0114】
スリット部41の左右幅方向長さは、スリット部41が設けられる位置や、案内部42の傾きなどに応じて適宜設定するとよい。
【0115】
上述したように、給気部2は、気体の流路長を短く設定して実験台1をコンパクトに設計することができることから、吹出部4の配置箇所に近接した上部側に設けられることが好ましいが、実験台1の配置条件等に応じて適宜変更可能であり設計事項である。
【0116】
給気部2の構成は、上述した構成に限定されるものではなく、給気ファン21で取り込まれた気体が直接吹出部4に送られるよう構成されるのであってもよい。
【0117】
また同様に、排気部3の構成についても、上述した構成に限定されるものではなく、排気口31から直接排気ダクト33に連通するように構成されるものであってもよい。
【0118】
以上説明したような実験台1は、前面が開口した作業空間111を構成する天井板部12、左右側板部13,14、背板部15及び作業台11と、作業空間111内に気体を供給する給気部2と、作業空間111内の気体を強制的に排気する排気部3と、作業空間111の前面側上方で左右幅方向に沿って設けられ、給気部2から供給された気体を作業空間111に流入させる吹出部4と、を備え、吹出部4は、作業空間111の上方から下向きに気体が噴出されるスリット状の開口が形成されたスリット部41と、スリット部41の後側から後方下向きに延び、スリット部41から噴出した気体を作業空間111に向けて案内する案内部42と、を有するので、作業空間111の前面側上方に設けられたスリット部41から噴出させた気体が、案内部42に引き寄せられてその前側面を伝って下方の作業空間111へ流入することにより、開口した前面側周辺の外気など(例えば、室内空気など)を引き込みながら、作業空間111内に発生した有毒ガスなどを排気することができるため、作業空間111の前面が開口した構成であっても、作業空間111外に有毒ガスなどを漏らすことなくより確実な排気処理を行うことが可能となり、高い安全性を保持することができる。
【0119】
また、作業空間111の前面が開口した構成であることから、作業空間111における扉などによる妨げが排除され作業効率を向上させることが可能となる。
【0120】
以上説明した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において具体的構成などを適宜変更設計できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、実験室や研究室において実験する際に実験台として使用される。
【符号の説明】
【0122】
1…実験台
2…給気部
3…排気部
4…吹出部
11…作業台
12…天井板部
13,14…側板部
15…背板部
41…スリット部
42…案内部
111…作業空間
112…開口部
121…板部
121a…前板部
121b…後板部
131,141…誘導部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8