特開2016-203151(P2016-203151A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧
特開2016-203151重金属含有廃棄物に含まれる重金属類の不溶化処理方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203151(P2016-203151A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】重金属含有廃棄物に含まれる重金属類の不溶化処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20161111BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20161111BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20161111BHJP
   C02F 1/62 20060101ALI20161111BHJP
   A62D 3/33 20070101ALI20161111BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20161111BHJP
   A62D 101/08 20070101ALN20161111BHJP
   A62D 101/43 20070101ALN20161111BHJP
【FI】
   B09B3/00 304G
   B09B3/00 304K
   C02F1/62 ZZAB
   A62D3/33
   C09K3/00 S
   A62D101:08
   A62D101:43
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-92063(P2015-92063)
(22)【出願日】2015年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長井 康行
(72)【発明者】
【氏名】疋田 英樹
【テーマコード(参考)】
4D004
4D038
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AA41
4D004AB03
4D004CA15
4D004CA34
4D004CC11
4D004DA03
4D004DA20
4D038AA08
4D038AB74
4D038AB90
(57)【要約】
【課題】 重金属含有廃棄物に含まれる重金属類をハンドリング良く、有害ガスの発生が無く、効率的に不溶化処理する方法を提供する。
【解決手段】 重金属含有廃棄物に、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を別々に特定の割合で添加する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属含有廃棄物に、鉄塩水溶液及び硫化物水溶液を、鉄/硫黄のモル比が0.8〜1.5となるように別々に添加することを特徴とする重金属処理方法。
【請求項2】
鉄塩水溶液が2価または3価の塩化鉄の水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の重金属処理方法。
【請求項3】
硫化物水溶液が硫化ナトリウムまたは水硫化ナトリウムの水溶液であることを特徴とする請求項1〜2に記載の重金属処理方法。
【請求項4】
重金属含有廃棄物が飛灰であることを特徴とする請求項1〜3に記載の重金属処理方法。
【請求項5】
重金属が鉛であることを特徴とする請求項1〜4に記載の重金属処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛灰、土壌、排水などの重金属含有廃棄物に含まれる重金属類を不溶化処理する方法である。
【背景技術】
【0002】
飛灰、土壌、排水などの重金属含有廃棄物に含まれる重金属類を不溶化処理する方法としては、アルカリ凝集法、硫化物法、フェライト法、キレート樹脂吸着法などが知られている。
【0003】
アルカリ凝集法は、重金属含有廃棄物にアルカリを添加することにより、重金属を水酸化物化する方法であるが、特に処理対象の重金属が複数存在する場合にはpHの調整が難しく、処理操作が煩雑化するという課題があった。
【0004】
硫化物法は、重金属含有廃棄物に硫化物を添加することにより、重金属を溶解性の低い硫化物とする方法であるが、硫化物は有毒な硫化水素ガスを発生するため、pHを強アルカリ性に保つ必要がある。また、局所排気設備やガス検知器の設置が必須であり、安全性が低く、設備投資費がかかることが課題であった(例えば、引用文献1参照)。
【0005】
フェライト法は、重金属含有廃棄物に鉄粉や鉄塩などの鉄化合物を添加し、酸化することにより重金属を含むマグネタイトであるフェライトを形成する方法であるが、多量の鉄を添加する必要があり、かつ、強酸性に調整した上、高温で反応させるため、処理効率が悪く、設備への腐食性が高く、処理物の量が増加するという課題があった(例えば、引用文献2参照)。
【0006】
キレート樹脂吸着法は、重金属含有廃棄物から抽出した重金属含有水溶液をキレート樹脂に通液することで重金属イオンを除去する方法であるが、キレート樹脂が高価であること、固形廃棄物においては重金属の抽出工程が必要であること、水溶液に浮遊する粒径2mm以下の不溶解性物質の混入により重金属の吸着量が大幅に低下することなどが課題であった。
【0007】
また、硫化物法とフェライト法とを組み合わせた硫化鉄法が知られている(例えば、引用文献3参照)。硫化鉄法は鉄イオンを含んだ溶液と硫黄イオンを含んだ溶液を混合して調製したマキワナイト構造の硫化鉄を重金属処理に用いるものであるが、硫化鉄は安定性が低く、酸化により経時的に粘度が上昇し、ハンドリングが悪化する上、重金属処理能力が低下し、硫化水素ガスの発生も抑制できなかった。
【0008】
そのため、重金属含有廃棄物に含まれる重金属を効率的に不溶化処理でき、硫化水素ガスの発生が無く、かつハンドリング性に優れた重金属の不溶化処理方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−024355号公報
【特許文献2】特開2004−089850公報
【特許文献3】特開2001−121130公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、重金属含有廃棄物に含まれる重金属の不溶化方法において、重金属を効率的に不溶化処理でき、硫化水素ガスの発生が無く、かつハンドリング性に優れた重金属の不溶化処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を別々に特定の割合で添加することにより、重金属を効率的に不溶化処理でき、硫化水素ガスの発生が無く、かつハンドリング性に優れた重金属の不溶化処理方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、重金属含有廃棄物に、鉄塩水溶液及び硫化物水溶液を、鉄/硫黄のモル比が0.8〜1.5となるように別々に添加することを特徴とする重金属処理方法に関するものである。
【0013】
<鉄塩>
本発明に用いる鉄塩は、水溶性の鉄塩であれば特に制限は無く、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄などを例示することができる。特に鉄の高濃度化が可能で、添加量を減らすことができることから、塩化第一鉄または塩化第二鉄が好ましい。
【0014】
<鉄の濃度>
本発明に用いる鉄塩水溶液の濃度は特に制限は無いが、鉄を高濃度で含む方が廃棄物に対する添加量が少なくて済むため好ましく、鉄として1〜20wt%の範囲を例示でき、特に5〜15wt%の範囲であることが好ましい。鉄塩が固形状の場合は、溶解水を添加して水溶液として使用する。
【0015】
廃棄物へ少量を添加する場合や、鉄の廃棄物への分散性を向上させるために、適宜希釈して用いても構わない。
【0016】
<硫化物>
本発明に用いる硫化物は、硫黄イオンを含むものであれば特に制限は無く、硫化金属塩化合物、水硫化金属塩化合物、多硫化金属塩化合物などを例示することができる。特に硫黄濃度の高濃度化が可能、かつ安価に入手が可能な水硫化アルカリ金属塩化合物が好ましく、水硫化ナトリウムが最適である。
【0017】
<硫化物の濃度>
本発明に用いる硫化物水溶液の濃度は特に制限は無いが、硫化物を高濃度で含む方が廃棄物に対する添加量が少なくて済むため好ましく、硫黄の濃度として1〜20wt%の範囲を例示できるが、濃度が高すぎる場合、低温で結晶が析出し、ハンドリングが悪化するため、特に3〜15wt%の範囲であることが好ましい。硫化物が固形状の場合は、溶解水を添加して水溶液として使用する。
【0018】
廃棄物へ少量を添加する場合や、硫化物の廃棄物への分散性を向上させるために、適宜希釈して用いても構わない。
【0019】
<鉄と硫化物の比率>
本発明に用いる鉄及び硫化物の添加比率は、鉄/硫黄のモル比として0.8〜1.5であることが好ましい。
【0020】
鉄/硫黄のモル比が0.8より低い場合、硫化水素の抑制効果が不十分になることがあり、鉄/硫黄のモル比が1.5より高い場合、重金属不溶化効果が不十分になることがある。
【0021】
<添加量>
本発明に用いる鉄及び硫化物の廃棄物に対する添加量は、廃棄物中の重金属の含有量の多少により異なるが、鉄塩水溶液と硫化物水溶液の合計量として、廃棄物に対し0.1〜50wt%の範囲を例示できる。添加量が少なすぎる場合、重金属不溶化効果が不十分になることがあり、添加量が多すぎる場合、処理物の量が増加することがあるため、特に好ましくは0.5〜30wt%の範囲である。
【0022】
<加湿水の量>
本発明の重金属処理方法において、飛灰や土壌などの固形廃棄物に対しては、鉄塩及び硫化物の他に、混合分散性を高めるために、適宜、加湿水、希釈水などを添加することができる。加湿水、希釈水などの添加量は、廃棄物の含水率などにより適宜調整でき、特に廃棄物に対し1〜40wt%の範囲で加えることが好ましい。
【0023】
加湿水、希釈水などの添加量が少なすぎると、鉄塩及び硫化物の分散性が悪くなり、重金属不溶化効果が不十分になることがあり、添加量が多すぎる場合、処理物の量が増加することがある。
【発明の効果】
【0024】
重金属含有廃棄物に、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を別々に一定の割合で添加することにより、重金属を効率的に、硫化水素ガスの発生が無く、かつハンドリング良く重金属を不溶化処理できる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
(重金属の不溶化性能・ガス発生量の評価)
実施例1
Pbを570mg/kg含有する飛灰100重量部に、水25重量部、鉄濃度10wt%の塩化第一鉄水溶液12重量部、硫黄濃度14wt%の水硫化ナトリウム水溶液6.0重量部を3Lのテドラーバッグに採取し、密閉した。テドラーバッグ内の飛灰を混練後、空気1Lを注入し、30分後の硫化水素濃度を硫化水素ガス検知管(ガステック(株)製No.4LK)で測定した。薬剤処理した飛灰は、環境省告示13号試験を実施し、Pb濃度をICP−AES(パーキンエルマー社製)で分析した。結果を表1に示す。
【0027】
実施例2
実施例1で使用した飛灰を、Pbを2400mg/kg含有する飛灰に変更し、塩化第一鉄水溶液の添加量を16重量部、水硫化ナトリウム水溶液の添加量を7.5重量部とした以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0028】
実施例3
実施例2の鉄塩水溶液の鉄濃度を5wt%、鉄塩水溶液の添加量を30重量部、硫化物水溶液の硫黄濃度を5wt%、硫化物水溶液の添加量を15重量部とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0029】
実施例4
実施例2の鉄塩水溶液の成分を鉄濃度が10wt%の塩化第二鉄水溶液とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0030】
実施例5
実施例2の鉄塩水溶液の成分を鉄濃度が10wt%の硫酸第一鉄水溶液とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例6
実施例2の硫化物水溶液の成分を硫黄濃度が3wt%の硫化ナトリウム水溶液、硫化物水溶液の添加量を30重量部とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0032】
実施例7
実施例6の鉄塩水溶液の成分を鉄濃度が10wt%の塩化第二鉄水溶液とした以外は実施例6と同様に行った。結果を表1に示す。
【0033】
実施例8
実施例2で使用した飛灰を、Pbを5700mg/kg含有する飛灰に変更した以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0034】
実施例9
実施例8の硫化物水溶液の硫黄濃度を7wt%、硫化物水溶液の添加量を9.0重量部とした以外は実施例8と同様に行った。結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
実施例1において、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を添加しなかった以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
実施例2において、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を添加しなかった以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
実施例2の鉄塩水溶液の添加量を7.0重量部とし、硫化物水溶液を添加しなかった以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0038】
比較例4
比較例3の鉄塩水溶液の添加量を16重量部とした以外は比較例3と同様に行った。結果を表1に示す。
【0039】
比較例5
比較例3の鉄塩水溶液の添加量を30重量部とした以外は比較例3と同様に行った。結果を表1に示す。
【0040】
比較例6
実施例2の鉄塩水溶液を添加せず、硫化物水溶液の添加量を2.5重量部とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0041】
比較例7
実施例2の鉄塩水溶液を添加しなかった以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0042】
比較例8
実施例2の鉄塩水溶液の添加量を8.0重量部とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0043】
比較例9
比較例8の硫化物水溶液の添加量を2.0重量部とした以外は比較例8と同様に行った。結果を表1に示す。
【0044】
比較例10
実施例4の硫化物水溶液を添加しなかった以外は実施例4と同様に行った。結果を表1に示す。
【0045】
比較例11
実施例8において、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を添加しなかった以外は実施例8と同様に行った。結果を表1に示す。
【0046】
比較例12
比較例8で使用した飛灰を、Pbを5700mg/kg含有する飛灰に変更した以外は比較例8と同様に行った。結果を表1に示す。
【0047】
比較例13
実施例2の硫化物水溶液の成分を硫黄濃度が3wt%のチオ硫酸ナトリウム水溶液、硫化物水溶液の添加量を30重量部とした以外は実施例2と同様に行った。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、重金属含有廃棄物に、鉄塩水溶液と硫化物水溶液を別々に特定の割合で添加することにより、有害ガスの発生が無く、重金属を効率的に不溶化処理できる処理方法として有用である。