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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203559(P2016-203559A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】水硬性材料の混練方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/42 20060101AFI20161111BHJP
   B28C 7/14 20060101ALI20161111BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B28C5/42
   B28C7/14
   B60P3/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-90775(P2015-90775)
(22)【出願日】2015年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515114809
【氏名又は名称】株式会社トウザキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】小堺 規行
(72)【発明者】
【氏名】東▲崎▼ 匡
(72)【発明者】
【氏名】山中 克洋
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CB08
4G056CC22
4G056CD31
4G056CD64
(57)【要約】
【課題】 アジテータ車のドラム内において、水硬性材料と水とを混練ムラなく均一に混練できる混練方法を提供する。
【解決手段】 アジテータ車を用いた水硬性材料の混練方法であって、前記アジテータ車は、自走可能な車両本体と該車両本体に搭載されて軸線を中心に回転可能に構成されたドラムとから構成され、該ドラムは、前記軸線を中心とする筒状の側壁部を備えるとともに、該側壁部の内側の空間と外側の空間とを連通させる孔部を前記側壁部に備えており、前記ドラム内に水を供給する第1の供給工程と、前記ドラム内に収容された水よりも上方に前記孔部を位置させ、前記孔部から前記水硬性材料を前記ドラム内に供給する第2の供給工程と、前記第2の供給工程後に前記孔部を閉塞した状態で前記ドラムを回転させて前記混練物を製造する混練工程と、を有する混練方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジテータ車を用いた水硬性材料の混練方法であって、
前記アジテータ車は、自走可能な車両本体と該車両本体に搭載されて軸線を中心に回転可能に構成されたドラムとから構成され、該ドラムは、前記軸線を中心とする筒状の側壁部を備えるとともに、該側壁部の内側の空間と外側の空間とを連通させる孔部を前記側壁部に備えており、
前記ドラム内に水を供給する第1の供給工程と、
前記ドラム内に収容された水よりも上方に前記孔部を位置させ、前記孔部から前記水硬性材料を前記ドラム内に供給する第2の供給工程と、
前記第2の供給工程後に前記孔部を閉塞した状態で前記ドラムを回転させて前記混練物を製造する混練工程と、を有する、
水硬性材料の混練方法。
【請求項2】
前記側壁部は、軸線方向の一端部から他端部側に向かってテーパ状に拡開する筒状のフロントシェルと、前記軸線方向の他端部から一端部に向かってテーパ状に拡開する筒状のリアシェルと、前記フロントシェルと前記リアシェルとの間に前記軸線に沿って形成された筒状のセンタシェルと、を備えており、
前記孔部は、前記センタシェルまたは前記フロントシェルの少なくともいずれか一方に形成される、
請求項1に記載の水硬性材料の混練方法。
【請求項3】
前記第1の供給工程では、前記ドラム内に骨材をさらに供給し、前記第2の供給工程では、前記ドラム内の水および骨材よりも上方に前記孔部を位置させた状態で、前記孔部から前記水硬性材料を前記ドラム内に供給する、
請求項1または2に記載の水硬性材料の混練方法。
【請求項4】
前記第2の供給工程では、水硬性材料と骨材との混合物を前記ドラム内に供給する、
請求項1または2に記載の水硬性材料の混練方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料の混練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水硬性材料と水と骨材とを混練する方法として種々の方法が提案されており、例えば、アジテータ車を用いた水硬性材料の混練方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1によれば、上記混練方法は、運転席の後端部から所定のスペースを空けて荷台(シャーシ)に配置される円筒形のドラムに、水硬性材料および水を供給して、前記円筒形のドラム内で行われる。具体的には、前記水硬性材料と前記水とを前記ドラムの後方に配されるホッパを用いて前記ドラム内に供給し、前記ドラムを回転させることで前記水硬性材料と前記水とを混練する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−184432号公報
【特許文献2】特許第2875983号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のように、前記ホッパから前記水硬性材料を供給する場合、前記ドラムを構成する筒状の側壁部の軸線方向に沿って前記水硬性材料が前記ドラム内に供給されることになり、前記水硬性材料が前記ドラム内の前記ホッパ側に堆積する虞がある。例えば、前記筒状の側壁部の内周面から突出する(所定の高さを有する)ように形成されて、前記側壁部の軸線方向に螺旋状に延びるブレードが前記ドラム内に形成されている場合、該ブレードがドラム内での軸線方向における水硬性材料の移動の障壁になる。その結果、前記軸線方向において、前記水硬性材料が前記ドラムの前方側にまで到達しにくくなって、前記ドラム内の前記ホッパ側に堆積することになる。このように、前記ドラム内の前記ホッパ側に前記水硬性材料が堆積すると、前記水硬性材料と前記水とが前記ドラム内で混練されるときにブレード全体が有効に利用されなくなり、前記ドラム内における前記水硬性材料と前記水との混練効率が低下し、混練ムラが生じることが懸念される。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、アジテータ車のドラム内において、水硬性材料と水とを混練ムラなく均一に混練できる混練方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る混練方法は、
アジテータ車を用いた水硬性材料の混練方法であって、
前記アジテータ車は、自走可能な車両本体と該車両本体に搭載されて軸線を中心に回転可能に構成されたドラムとから構成され、該ドラムは、前記軸線を中心とする筒状の側壁部を備えるとともに、該側壁部の内側の空間と外側の空間とを連通させる孔部を前記側壁部に備えており、
前記ドラム内に水を供給する第1の供給工程と、
前記ドラム内に収容された水よりも上方に前記孔部を位置させ、前記孔部から前記水硬性材料を前記ドラム内に供給する第2の供給工程と、
前記第2の供給工程後に前記孔部を閉塞した状態で前記ドラムを回転させて前記混練物を製造する混練工程と、を有する。
【0008】
かかる構成によれば、筒状の側壁部に形成された孔部からドラム内に水硬性材料を供給するため、すなわち、筒状の側壁部の軸線方向に対して交差する方向からドラム内に水硬性材料を供給するため、筒状の側壁部の軸線方向に沿って水硬性材料をドラム内に供給する場合よりも水硬性材料がドラム内の特定の位置に堆積しにくくなる。これにより、ドラム内において水硬性材料と水とを混練ムラなく均一に混練することができる。
【0009】
本発明に係る混練方法においては、
前記側壁部は、軸線方向の一端部から他端部側に向かってテーパ状に拡開する筒状のフロントシェルと、前記軸線方向の他端部から一端部に向かってテーパ状に拡開する筒状のリアシェルと、前記フロントシェルと前記リアシェルとの間に前記軸線に沿って形成された筒状のセンタシェルと、を備えており、
前記孔部は、前記センタシェルまたは前記フロントシェルの少なくともいずれか一方に形成されていてもよい。
【0010】
かかる構成によれば、ホッパから離間した位置から水硬性材料をドラム内に供給できるので、水硬性材料がドラム内のホッパ側の特定の位置に堆積しにくくなる。これにより、ドラム内のホッパ側に水硬性材料が堆積しにくくなった状態で、水硬性材料と水とを混練ムラなく均一に混練することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、アジテータ車のドラム内において、水硬性材料と水とを混練ムラなく均一に混練できる混練方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態で使用するアジテータ車を説明する図である。
図2】同実施形態におけるアジテータ車に用いるバーチカルスクリューコンベアを示す図である。
図3】同実施形態における混練方法を説明するフロー図である。
図4】本発明の第2の実施形態で使用するアジテータ車に用いるホッパを示す図である。
図5】同実施形態における混練方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
同実施形態に係る水硬性材料の混練方法は、水硬性材料と水とを混練して混練物を製造する際に用いられる。水硬性材料としては、セメントや石灰(生石灰や消石灰等)等が挙げられる。セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種のポルトランドセメントや、白色ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、超速硬セメント等が挙げられる。これらの水硬性材料は、単独で使用してもよく、複数を選択して使用してもよい。
また、前記混練方法において、コンクリートまたはモルタルを調製する際に添加される各種の添加剤であれば、用途に応じて使用することができる。例えば、凝結遅延剤、硬化促進剤、消泡剤、防錆剤、防凍剤、着色剤などの混和材または混和剤、耐久性を向上させるための炭素繊維、樹脂系繊維などの補強材を使用することができる。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る水硬性材料の混練方法について説明する。
【0015】
まず、本実施形態に係る水硬性材料の混練方法に用いる混練設備1について、図1および図2を参照しながら説明する。図1に示すように、混練設備1は、水硬性材料と水とを混練して混練物を形成する混練設備であって、従来公知のアジテータトラックと同様な外観形状を有するアジテータ車100とアジテータ車100に搭載されて水硬性材料をアジテータ車100へ供給する供給設備200とを備えて構成される。
【0016】
アジテータ車100は、エンジンにより自走する車両本体2と車両本体2に搭載されて軸線を中心として回転可能に構成されたドラム3とから構成される。車両本体2は、運転席4と、走行方向に所定の長さを有するシャーシ5と、複数個の車輪6とを備えている。なお、以下の説明では、「前方」とはアジテータ車100の前側を意味し、「後方」とはアジテータ車100の後側を意味する。
【0017】
また、アジテータ車100は、シャーシ5の前方に前方受部材7を備え、後方には後方受部材8を備えている。前方受部材7は、ドラム3の回転軸14(回転軸14については後述する)を軸受けする。また、後方受部材8は、その頂部に後述するリアシェル13を回転自在に受ける複数個のローラ9を備える。前方受部材7の高さは、図1に示すように、後方受部材8の高さよりも低い。このため、ドラム3は前方側が低くなるように傾斜して(換言すれば、前記軸線が傾斜するように)シャーシ5に搭載される。
また、アジテータ車100は、従来周知の水硬性材料をドラム3に投入するホッパ15と、混練後の混練物をドラム3から排出するシュート16と、を備えている。
【0018】
ドラム3は、前記軸線を中心とする筒状(具体的には、円筒状)の側壁部3aと、筒状の側壁部3aの軸線方向の一端部を閉塞する端壁部(ヘッドプレート)10とを備える。また、ドラム3は、筒状の側壁部3aの内周面から突出するように形成されて側壁部3aの軸線方向に螺旋状に延びるブレード(図示せず)を内部に備える。また、ドラム3は、軸線方向の一端部(具体的には、端壁部10)が回転軸14を介して車両本体2と連結される。
【0019】
側壁部3aは、軸線方向の一端部(端壁部10との連結部分)から他端部(すなわち、アジテータ車100の後方)に向かってテーパ状に拡開(拡径)する筒状のフロントシェル11と、軸線方向の他端部から一端部側(すなわち、アジテータ車100の前方)に向かってテーパ状に拡開(拡径)する筒状のリアシェル13と、フロントシェル11とリアシェル13との間に軸線に沿って形成された筒状(具体的には、円筒状)のセンタシェル12とを備える。また、側壁部3aは、内側の空間(以下、内部空間とも記す)と外側の空間(以下、外部空間とも記す)とを連通させる孔部19を備える。本実施形態では、側壁部3aは、フロントシェル11に孔部19を備える。孔部19は、例えば、ホールソーなどを用いて形成してもよいし、従来公知の他の穿孔工法で形成してもよい。
【0020】
フロントシェル11は、軸線方向の一端部(すなわち、前方の端部)が端壁部10の外周端部と溶接され、軸線方向の他端部(すなわち、後方の端部)がセンタシェル12の軸線方向の一端部(すなわち、前方の端部)に溶接される。リアシェル13は、一端部(すなわち、前方の端部)がセンタシェル12の他端部(すなわち、後方の端部)に溶接され、軸線方向の他端部(すなわち、後方の端部)に開口部を有する。そして、リアシェル13の開口部に対応して、ホッパ15およびシュート16が備えられる。
また、リアシェル13は、軸線方向の他端部側(すなわち、後方の端部側)に、外周に沿って環状に形成された環状部18を備える。環状部18は、後方受部材8の複数個のローラ9上に回転自在に載置される。
【0021】
端壁部10は、円錐状に形成されるとともに、運転席4の後方側に配される。回転軸14は、前記軸線と重なるように配されるとともに、一端部が端壁部10に連結されて他端部が前方受部材7により回転自在に軸受される。なお、回転軸14は、図示しない油圧モータにより正逆両方向に回転駆動される。
【0022】
供給装置200は、水硬性材料を収容するホッパ20と、ホッパ20からドラム3まで該水硬性材料を輸送する粉体輸送装置21と、粉体輸送装置21とドラム3に接続されて、粉体輸送装置21からドラム3への輸送路を形成する輸送管22と、を備える。輸送管22は、フレキシブルホースなどを用いて形成される。また、供給装置200は、アジテータ車100の運転席4とドラム3との間のシャーシ5上に配される。
なお、ホッパ20および粉体輸送装置21の寸法および配置は、道路交通法に準拠するように設計される。
【0023】
ホッパ20は、従来公知のホッパと同様の外観形状を有する。ホッパ20の上端および下端には、それぞれ第1の開口部20aおよび第2の開口部20bが形成されていて、第1の開口部20aから水硬性材料が投入され、第2の開口部20bから水硬性材料が排出される。ホッパ20への水硬性材料の投入は、第1の開口部20aの上方において、水硬性材料を内包した包袋物を破くなどして行うことができる。
【0024】
粉体輸送装置21には、例えば、バーチカルスクリューコンベア21aを用いることができる。バーチカルスクリューコンベア21aは、図2に示すように、水平方向に延びる第1の管状部21a1と鉛直方向に延びる第2の管状部21a2とから構成される。また、バーチカルスクリューコンベア21aは第1および第2の管状部21a1、21a2内に、水硬性材料の輸送方向に沿って延びる螺旋羽を備え、該螺旋羽が回転することによって、第1および第2の管状部21a1、21a2内を水硬性材料が搬送されるように構成される。
また、バーチカルスクリューコンベア21aは、第1および第2の管状部21a1、21a2内に配置される各螺旋羽を回転させる動力源となる第1および第2の動力源21a1’、21a2’を備える。
【0025】
第1の管状部21a1は、一端側に開口部(図示せず)を有し、該開口部の位置において第2の管状部21a2と連結される。具体的には、第1の管状部21a1は、第2の管状部21a2に対して直行するように配置された状態で、開口部の位置において第2の管状部21a2と連結される。また、第1の管状部21a1は、ホッパ20と連結されるホッパ連結部21a1’’を他端側に備える。該ホッパ連結部21a1’’は、長さ方向に沿って形成されて上方に開放する開口部(図示せず)を備える。該開口部は、ホッパ20の第2の開口部20bとほぼ同じ大きさの開口を形成する。そして、ホッパ連結部21a1’’の開口部は、ホッパ連結部21a1’’上に配置されたホッパ20の第2の開口部20bと連結される。これにより、ホッパ20の第2の開口部20b及びホッパ連結部21a1’’の開口部を介してホッパ20内に供給された水硬性材料を第1の管状部21a1内に供給することが可能となる。
【0026】
第2の管状部21a2は、一端側に開口部(図示せず)を有し、該開口部の位置において第1の管状部21a1と連結される。具体的には、第2の管状部21a2は、第1の管状部21a1に対して直行するように配置された状態で、開口部の位置において第1の管状部21a1(より詳しくは、一端側の開口部)と連結される。これにより、第1の管状部21a1の内部空間と第2の管状部21a2の内部空間とがそれぞれの開口部を介して連通した状態となるため、第1の管状部21a1から第2の管状部21a2へ水硬性材料の流入が可能となる。また、第2の管状部21a2は、内部空間から水硬性材料を排出する排出孔21a2’’を他端側に備える。該排出孔21a2’’は、輸送管22の一端部と接続される。なお、輸送管22の他端部は、ドラム3に形成された孔部19に接続される。これにより、第2の管状部21a2内の水硬性材料を排出孔21a2’’及び輸送管22を介してドラム3内に供給可能になる。
ところで、排出孔21a2’’からの水硬性材料の排出は、自然落下にて行われるので、排出孔21a2’’は第2の管状部21a2に対して鋭角をなすように配される。
【0027】
以下では、上記のように構成された混練設備1を用いて水硬性材料と水とを混練して混練物を製造する方法について説明する。
【0028】
上記のようなアジテータ車100では、ホッパ15からドラム3の内部空間に水硬性材料が供給されると、前述したように、ブレードは撹拌翼として機能するようにドラム3内の内方に突出して形成されるため、ドラム3の内部空間への水硬性材料の進入がブレードによって阻害される。このため、水硬性材料は、筒状の側壁部3aの軸線方向において、フロントシェル11の一端部側(運転席4側)へ供給されにくくなり、リアシェル13(ドラム3のホッパ15側)内に堆積し易くなる。これにより、水硬性材料と水とをドラム3内で混練するときにブレード全体を有効に利用できなくなり、混練ムラが生じて、水硬性材料と水とを均一に混練できなくなることが懸念される。
【0029】
そこで本実施形態では、ドラム3の側壁部3a(具体的には、フロントシェル11)に形成された孔部19からドラム3内への水硬性材料の供給を行う。
【0030】
次に、上記構成の混練設備1を用いて、水硬性材料を混練する方法について説明する。本発明では、図3または5に示すような工程フローに従って、水硬性材料と水とを混練して混練物を製造する。まず、図3の例について説明する。
【0031】
図3は、セメント以外の成分を含まない水硬性材料を用いて、混練物を製造する例を示している。このような場合は、セメントと水以外に骨材を用いる。該骨材としては、混練物としてモルタルを製造する場合には細骨材のみを用い、混練物としてコンクリートを製造する場合には細骨材および粗骨材を用いる。
【0032】
まず、ドラム3内に水と骨材とを供給する(ステップ1)。ドラム3内への水および骨材の供給は、ホッパ15から行ってもよいし、孔部19から行ってもよい。
【0033】
次に、ホッパ20に収容された水硬性材料をドラム3内に供給する(ステップ2)。ホッパ20からドラム3内への水硬化性材料の供給は、ステップ1でドラム3内に収容された水および骨材よりも上方に孔部19が位置するまで回転軸14でドラム3を回転させて、該位置で孔部19から行う。なお、ホッパ20からドラム3への水硬性材料の供給は、粉体の堆積により輸送管22が詰まらない条件で行う。
【0034】
次に、水硬性材料と水と骨材とをドラム3内で混練する(ステップ3)。具体的には、ステップ2の終了後、孔部19を蓋材で閉塞した状態でドラム3を回転させることで、水硬性材料と水と骨材とを混練する。ドラム3の運転条件は、水硬性材料および骨材の性質、量、または水硬性材料と水と骨材との混合比率などを勘案して、適宜設定する。
前記蓋材は、孔部19の径よりも大径に形成され、孔部19の周辺の側壁部3aに開閉自在または着脱自在に取り付けられている。具体的には、蓋材の一端をドラム3の側壁部3aにヒンジで固定し、蓋材の他端にオスピンを配置し、ドラム3の側壁部3aの前記オスピンに対向する位置にメスピンを配置する。あるいは、孔部19を囲むように、孔部19周辺のドラム3の側壁部3aにメスピンを配置するとともに、蓋材の前記メスピンに対応する位置にオスピンを配置する。
【0035】
上述の工程フローに従って混練された水硬性材料と水と骨材との混練物は、シュート16からドラム3の外部に排出されて、施工現場で使用される。
【0036】
図3に示すフローに従って混練物を製造する例は、施工現場で使用する混練物の量が、ドラム3内で混練される1バッチ分の混練物の量で賄える場合に有用である。このような場合、水と骨材とを混合するステップ1を施工現場到着前に予め実施しておけば、施工現場到着後にステップ2および3を容易に実施することができる。
この混練方法は、特に、混練物としてコンクリートを製造する例に適している。施工現場において、粗大な粗骨材をドラム3内に投入する手間を省けるからである。
また、この混練方法は、十数分(10〜15分)程度で硬化体となり、数時間で実用強度に達するという性質を有する超速硬セメントを用いて施工する場合にも有用である。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態について、図4および図5を参照しながら説明する。以下では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、同一の構成については同一の符号を付すこととして説明を省略する。
【0038】
第2の実施形態は、図4に示すように、ホッパ20の第1の開口部20aに突き破り装置20cが備えられる点で第1の実施形態と異なる。突き破り装置20cは、骨組20c1と突起部20c2とを備える。骨組20c1は、複数本のフレーム20c1aを備えている。複数本のフレーム20c1aはホッパ20の略中心部からホッパ20の側壁の内周面へ向けて放射状に配されている。そして、各フレーム20c1aは一端部がホッパ20の側壁の内面に接合されると共に、他端部同士がホッパ20の略中心部で接合される。突起部20c2は、複数本のフレーム20c1aの他端部が接合されたホッパ20の略中心部において、鉛直上方に延びるように配され、その先端部(複数本のフレーム20c1aが接合されていない側)は尖っている。
【0039】
本実施形態においては、ホッパ20に投入されるのは水硬性材料と骨材との混合物(例えば、プレミクスモルタル)であって、該混合物は、通常、柔軟な包袋物(いわゆるフレコンバック)に内包されている。そして、前記混合物のホッパ20への投入は、突き破り装置20cを用いて行う。具体的には、前記柔軟な包袋物を突起部20c2の先端部に当接させ、突起部20c2で前記柔軟な包袋物を破ることにより行う。このような突き破り装置20cを用いると、ホッパ20の第1の開口部20aの上方で、作業員が包袋物を破る手間を省くことができる。
【0040】
本実施形態では、図5に示すような工程フローに従って、水硬性材料と骨材との混合物と水とを混練して混練物を製造する。
【0041】
まず、ドラム3内に水を供給する(ステップ1)。ドラム3内への水の供給は、ホッパ15から行ってもよいし、孔部19から行ってもよい。
【0042】
次に、ホッパ20に収容された水硬性材料と骨材との混合物をドラム3内に供給する(ステップ2)。ホッパ20からドラム3内への前記混合物の供給は、ステップ1でドラム3内に収容された水よりも上方に孔部19が位置するまで回転軸14でドラム3を回転させて、該位置で孔部19から行う。なお、ホッパ20からドラム3への前記混合物の供給は、粉体の堆積により輸送管22が詰まらない条件で行う。
【0043】
次に、前記混合物と水とをドラム3内で混練する(ステップ3)。具体的には、ステップ2の終了後、孔部19を閉塞した状態でドラム3を回転させることで、前記混合物と水とを混練する。ドラム3の運転条件は、前記混合物の性質、量、または前記混合物と水との混合比率などを勘案して、適宜設定する。
【0044】
上述の工程フローに従って混練された前記混合物と水との混練物は、シュート16からドラム3の外部に排出されて、施工現場で使用される。
【0045】
図5に示すフローに従って混練物を製造する例は、施工現場で使用する混練物の量が多く、施工現場において混練物を連続的に製造する場合に有用である。このような場合、所望量の水硬性材料と骨材との混合物を包袋物に内包して施工現場に別途輸送しておくとともに、1バッチ目の混練物を製造するための前記混合物および水を、それぞれホッパ20およびドラム3内に収容しておく。このようにすれば、1バッチ目の混練物を施工現場で使い切った後に2バッチ目以降の混練物を製造する際に、搬送しておいた前記混合物と水とを直ちに混練することができる。
また、前記混合物が施工可能な状態のまま施工現場まで到着できる場合には、図5のステップ1〜3の全てを施工現場到着前に予め行えば、混練物を施工現場で製造する、いわゆる現場練りを1バッチ分省略できる。そのため、1バッチ目の混練物を施工現場到着後に直ちに使用でき、施工時間を短縮できる。
【0046】
なお、本発明に係る水硬性材料の混練方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0047】
例えば、第1の実施形態および第2の実施形態では、孔部19をフロントシェル11に形成する例について説明したが、孔部19を形成する位置はこれに限られない。孔部19を形成する位置はセンタシェル12であってもよいし、フロントシェル11とセンタシェル12との両方であってもよい。また、孔部19をリアシェル13に形成することも可能である。しかしながら、孔部19をリアシェル13に形成すると、ホッパ15に近い位置から水硬性材料をドラム3内に供給することになるので、ドラム3内に備えられたブレードに水硬性材料が当たり易くなって、水硬性材料がドラム3内のホッパ15側の特定の位置に堆積し易くなる。このような特定の位置に水硬性材料が堆積した状態で水硬性材料と水との混練を行うと、均一な混練が難しくなる。また、ホッパ20からの供給距離が遠くなること、孔部19の設置高さが高くなって作業安全上の問題が生じることが懸念される。したがって、フロントシェル11またはセンタシェル12の一方あるいは両方に、孔部19を形成することが望ましい。孔部19をセンタシェル12に形成する場合、ドラム3を定期清掃するためにセンタシェル12に設けてあるホール(サービスホール)を利用してもよい。ここで、サービスホールは、通常開閉の頻度が少ないので、ホールの径より大径の蓋材で該ホールを覆い、該蓋材をボルトおよびナットでドラム3の側壁部3aに固定して閉鎖されている。このような従来の構成では、水硬性材料投入前に前記蓋部を取り外すのが煩わしい。そのため、孔部19としてサービスホールを利用する場合、前記蓋材は第1および第2の実施形態と同様に、開閉自在または着脱自在にドラム3の側壁部3aに取り付けられてもよい。
【0048】
また、ホッパ20からドラム3に水硬性材料を供給する方法は、バーチカルスクリューコンベア21aを用いる例には限られない。ホッパ20とドラム3とを連結する管状部と、該管状部内に配されるスパイラルスクリューと、該スパイラルスクリューを駆動する動力源とを用いて、ホッパ20からドラム3に水硬性材料を供給してもよい。
【0049】
また、第2の実施形態で示した突き破り装置20cを、第1の実施形態のホッパ20の第1の開口部20aに備えてもよい。
【0050】
また、第1の実施形態に示した方法において、水硬性材料に代えて、第2の実施形態で用いた水硬性材料と骨材との混合物を採用してもよい。この場合は、図5に示した工程フローに従って、ホッパ20の第1の開口部20aに突き破り装置20cを備えない混練設備1で前記混合物と水とを混練して混練物を製造する。具体的には、粗骨材および水が供給されたドラム3内にセメントと細骨材との混合物を供給して混練することで、混練物としてコンクリートを製造することができる。
【0051】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態および変形が可能とされたものである。また、上述の実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0052】
1 混練設備、3 ドラム、11 フロントシェル、12 センタシェル、13 リアシェル、19 孔部、100 アジテータ車
図1
図2
図3
図4
図5