特開2016-204180(P2016-204180A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-204180坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-204180(P2016-204180A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/10 20060101AFI20161111BHJP
【FI】
   C30B15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-84685(P2015-84685)
(22)【出願日】2015年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村下 憲治
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BB01
4G077CF10
4G077EG01
4G077EG02
4G077EG25
4G077PD01
4G077PD11
4G077PD12
4G077PD15
4G077PD16
(57)【要約】
【課題】本発明は、高温下で行われる結晶育成の終了後において、坩堝の取り外しが容易な坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】モリブデンからなる坩堝10を支持するモリブデンからなる坩堝台20を有する坩堝支持構造80、85であって、
前記坩堝台の支持面21上に、タングステンからなる第1の板状部材50と、タングステンからなる第2の板状部材60とが下から順に積み重ねて設けられ、
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の少なくとも一方、又は前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との固着の解除を容易化する固着解除容易化構造70が設けられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンからなる坩堝を支持するモリブデンからなる坩堝台を有する坩堝支持構造であって、
前記坩堝台の支持面上に、タングステンからなる第1の板状部材と、タングステンからなる第2の板状部材とが下から順に積み重ねて設けられ、
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の少なくとも一方、又は前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との固着の解除を容易化する固着解除容易化構造が設けられた坩堝支持構造。
【請求項2】
前記固着解除容易化構造は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触面積を減少させる構造であり、
前記第2の板状部材は、前記第1の板状部材よりも積み重ね方向における接触面積が小さい構造を有する請求項1に記載の坩堝支持構造。
【請求項3】
前記第1の板状部材は開口を有しない板状部材であり、
前記第2の板状部材は開口を有する板状部材である請求項2に記載の坩堝支持構造。
【請求項4】
前記第1の板状部材は円板として構成され、
前記第2の板状部材は円環部材として構成された請求項3に記載の坩堝支持構造。
【請求項5】
前記固着解除容易化構造は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触面積を減少させる構造であり、
前記第2の板状部材の接触面には、接触面積を低減させる梨地加工が施された請求項1乃至4のいずれか一項に記載の坩堝支持構造。
【請求項6】
前記固着解除容易化構造は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に粒子含有被膜を介在させる構造であり、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触面に、酸化アルミニウム被膜が形成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の坩堝支持構造。
【請求項7】
前記酸化アルミニウム被膜は、酸化アルミニウムの粒子が前記接触面に固着して形成された請求項6に記載の坩堝支持構造。
【請求項8】
前記固着解除容易化構造は、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触面積を減少させる構造であり、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触面には、接触面積を低減させる凹凸構造が形成された請求項1乃至5のいずれか一項に記載の坩堝支持構造。
【請求項9】
前記凹凸構造は、突起及び/又は溝からなる請求項8に記載の坩堝支持構造。
【請求項10】
前記凹凸構造は、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の一方にのみ形成された請求項8又は9に記載の坩堝支持構造。
【請求項11】
前記凹凸構造は、前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の双方に形成された請求項8又は9に記載の坩堝支持構造。
【請求項12】
モリブデンからなる坩堝と、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載された坩堝支持構造と、
前記坩堝の周囲を取り囲んで設けられた加熱体と、
前記坩堝、前記坩堝支持構造及び前記加熱体を取り囲む保温材と、を有する結晶育成装置。
【請求項13】
モリブデンからなる坩堝を、モリブデンからなる坩堝台で支持する際に用いられる坩堝支持部材の製造方法であって、
粉末状の酸化アルミニウムを、所定のアルコールを用いてペースト状に練って酸化アルミニウムペーストを形成する工程と、
タングステンからなる円板と、タングステンからなる板状の円環部材との接触面の少なくとも一方の面に、前記酸化アルミニウムペーストを付着させる工程と、
前記円板と前記円環部材とを重ね合わせる工程と、を有する坩堝支持部材の製造方法。
【請求項14】
前記酸化アルミニウムを付着させる工程は、前記酸化アルミニウムペーストを、刷毛を使用して前記接触面の少なくとも一方の面に塗布する工程と、
前記触面の少なくとも一方の面に塗布された前記酸化アルミニウムペーストを乾燥させる工程と、を含む請求項13に記載の坩堝支持部材の製造方法。
【請求項15】
前記酸化アルミニウムペーストを形成する工程は、前記粉末状の酸化アルミニウム対前記アルコールの重量比率が、1:2〜1:3の範囲内である請求項13又は14に記載の坩堝支持部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法に関し、特に、モリブデン製の坩堝とモリブデン製の支持台の高温下(2040℃以上)における相互拡散作用による固着を解消する為の、坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抵抗加熱炉を用いたサファイア単結晶育成における坩堝支持構造が知られている。かかる坩堝支持構造においては、支持台上にモリブデン製のるつぼが載置される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1にも示されているが、図1を用いて従来の坩堝支持構造の概略を説明する。図1は、従来技術におけるモリブデン坩堝支持構造及び、坩堝を取り囲む加熱体・保温材を示した図である。サファイア結晶育成を行う際には、原料である酸化アルミニウム(Al)をモリブデン(Mo)製坩堝10内に投入し、この原料の入った坩堝10を炉体下部に固定されたモリブデン製坩堝台20の上に、炉体中心と同軸になるように載置する。坩堝10内の原料を、加熱体(ヒーター)30にて加熱溶融し、また発熱効率を上げるため、カーボンフェルト製の保温材40で周囲全体を囲む構成となっている。これにより、良好な熱効率でサファイア結晶の育成を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−1934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、原料として用いられる酸化アルミニウムの融点は2040℃程度と高く、酸化アルミニウムを溶融するためには、モリブデン製坩堝の外周部及び坩堝台との接触部は、少なくとも酸化アルミニウムの融点以上の温度となる必要がある。このためモリブデン(融点2623℃)材料を用いた部材同士においては、高温下では互いの接触面に強い相互拡散作用が働き、結晶育成終了後、坩堝と坩堝台が完全に固着してしまい、坩堝の取り外しが出来なくなってしまう場合があるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、高温下で行われる結晶育成の終了後において、坩堝の取り外しが容易な坩堝支持構造及びこれを用いた結晶育成装置、並びに坩堝支持部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る坩堝支持構造は、モリブデンからなる坩堝を支持するモリブデンからなる坩堝台を有する坩堝支持構造であって、
前記坩堝台の支持面上に、タングステンからなる第1の板状部材と、タングステンからなる第2の板状部材とが下から順に積み重ねて設けられ、
前記第1の板状部材及び前記第2の板状部材の少なくとも一方、又は前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との間に、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との固着の解除を容易化する固着解除容易化構造が設けられる。
【0008】
本発明の他の態様に係る結晶育成装置は、モリブデンからなる坩堝と、
前記坩堝支持構造と、
前記坩堝の周囲を取り囲んで設けられた加熱体と、
前記坩堝、前記坩堝支持構造及び前記加熱体を取り囲む保温材と、を有する。
【0009】
本発明の他の態様に係る坩堝支持部材の製造方法は、モリブデンからなる坩堝を、モリブデンからなる坩堝台で支持する際に用いられる坩堝支持部材の製造方法であって、
粉末状の酸化アルミニウムを、所定のアルコールを用いてペースト状に練って酸化アルミニウムペーストを形成する工程と、
タングステンからなる円板と、タングステンからなる板状の円環部材との接触面の少なくとも一方の面に、前記酸化アルミニウムペーストを付着させる工程と、
前記円板と前記円環部材とを重ね合わせる工程と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、結晶育成後、坩堝を坩堝台から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来技術におけるモリブデン坩堝支持構造及び、坩堝を取り囲む加熱体・保温材を示した図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置の一例を示した図である。
図3】円環部材の円板との接触面に凹凸構造を設けた例を示した図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置の一例を示した図である。図4(a)は、本発明の第2の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置の全体構成図である。図4(b)は、坩堝支持部材の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0013】
〔第1の実施形態〕
図2は、本発明の第1の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置の一例を示した図である。
【0014】
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る結晶育成装置は、坩堝10と、坩堝台20と、加熱体30と、保温材40と、円板50と、円環部材60と、坩堝軸90とを備える。ここで、坩堝台20と、円板50と、円環部材60とは、第1の実施形態に係る坩堝支持構造80を構成する。
【0015】
略円筒状の坩堝10が円盤状の坩堝台20上に載置され、坩堝台20を坩堝軸90が支持している。坩堝10の周囲には、坩堝10の外周面及び底面を取り囲むように加熱体30が設けられ、更に坩堝10、坩堝台20、加熱体30、円板50、円環部材60及び坩堝軸90の周囲を取り囲むように、略円筒形の保温材40が設けられている。
【0016】
坩堝10は、サファイア等の高融点材料の単結晶を育成するため、高融点材料を貯留保持する溶融炉又は融液容器である。坩堝10は、高融点材料を貯留可能で、かつ、周囲からの加熱が容易な形状を有し、例えば、上面が開放された略円筒形の形状を有する。サファイアの単結晶を育成する場合、サファイアの材料である酸化アルミニウム(Al)が坩堝10内に投入され、加熱体30により高温に加熱されるが、酸化アルミニウムの融点は2054℃と高いため、坩堝10は、2000℃以上の高温に耐え得るモリブデン(Mo)から構成される。
【0017】
坩堝台20は、坩堝10の下方に固定されて設けられ、上面上に坩堝10を支持する。安定支持の観点から、坩堝10の中心は、坩堝台20の中心と略一致するように配置されることが好ましい。また、坩堝軸90は、坩堝台20の下面に接続固定されて設けられ、坩堝台20を下方から支持する。坩堝台20は、単結晶の育成中は坩堝10と同様に高温で加熱されるため、坩堝10と同様、高温に耐え得るモリブデン(Mo)で構成される。
【0018】
加熱体30は、坩堝10を加熱するための加熱手段であり、例えば、カーボン焼結体製のヒーターや高周波加熱用のコイルを用いるようにしてもよい。単結晶を育成する際には、原料を坩堝10内に投入し、加熱体30で原料を加熱して溶融させる。
【0019】
保温材40は、発熱効率を高めるために坩堝10、坩堝台20、坩堝軸90及び加熱体30の周囲全体を覆うように設けられ、熱が逃げないように保温する役割を果たす。保温材40は、例えば、カーボンフェルト製で構成されてもよい。なお、保温材40の上面には、引上げ軸を貫通させるための貫通穴61が形成されてもよい。
【0020】
なお、本実施形態に係る結晶育成装置を用いてサファイア単結晶を製造する場合、坩堝10に酸化アルミニウム原料を入れて加熱体30で加熱し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料溶融表面に接触させ、所定の速度で上方に引上げて単結晶を成長させる溶融固化法によりサファイア単結晶を製造する。
【0021】
ここで、上述のように、坩堝10及び坩堝台20は、ともにモリブデンから構成されるが、モリブデン(融点2623℃)材料を用いた部材同士においては、高温下では互いの接触面に強い相互拡散作用が働き、結晶育成終了後、坩堝10と坩堝台20が固着するおそれがある。この現象緩和のため、本実施形態に係る坩堝支持構造80においては、坩堝台20の支持面21上にタングステン(W)からなる円板50と、タングステンからなる円環部材60とを設け、円環部材60上に坩堝10を載置している。つまり、坩堝台20は、タングステンからなる円板50及びタングステンからなる円環部材60を介して坩堝10を支持している。円板50及び円環部材60は、ともにタングステンの板状の部材であり、外周形状は互いに同一形状の円形であるが、円環部材60が中央に開口を有している点で、開口を有しない板状部材として構成された円板50と異なっている。
【0022】
タングステンの融点は3422℃であり、モリブデンよりも更に高温に耐えることができる。また、モリブデンと異なる材料からなる円板50及び円環部材60を坩堝10の下面と坩堝台20の上面との間に設けることにより、モリブデン同士の接触を無くし、上述の相互拡散作用の発生を緩和させることができる。また、円板50のみならず、中心部が切り取られ、ドーナツ形状を有する板状の円環部材60を更に設け、これを坩堝10の底面11に接触させることにより、坩堝10とタングステン部材との接触面積を減少させることができる。更に、必要に応じて、円環部材60の表面を梨地仕上げしてもよく、表面に梨地加工が施されたドーナツ形状をした平板リング状の円環部材60を設置することにより、坩堝10との接触面積を更に低減させ、高温下におけるモリブデン部材接触面に発生する、相互拡散作用による固着を軽減することができる。
【0023】
なお、このような円板50及び円環部材60をモリブデン製の坩堝10とモリブデン製の坩堝台20との間に介在させても、坩堝10の重量は原料を投入すると数10〜100kg以上に達し、更に2000℃以上の高温に晒されるため、やはり固着は生じる場合がある。そこで、円板50と円環部材60との固着の解除を容易にするような構造を更に導入してもよい。
【0024】
図3は、円環部材60の円板50との接触面に凹凸構造61を設けた例を示した図である。図3に示すように、円環部材60の円板50との接触面に、溝及び突起からなる凹凸構造61を設けることにより、円環部材60と円板50との固着からの取り外しを容易にすることができる。なお、図3においては、円環部材60のみに凹凸構造61が形成された例を示しているが、円板50の円環部材60との接触面に凹凸構造61を設けるようにしてもよい。更に、円環部材60と円板50の双方の接触面に凹凸構造61を設けるようにしてもよい。また、上述のように、円環部材60の表面に梨地加工を施し、更に図3に示すような凹凸構造61を設けるようにしてもよい。
【0025】
このように、本発明の実施形態1に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置によれば、モリブデンからなる坩堝10と坩堝台20との間に、異材質のタングステンからなる円板50及び板状の円環部材60を配置することにより、結晶育成後の坩堝10と坩堝台20との固着からの取り外しを容易にすることができる。
【0026】
なお、図2、3においては、坩堝台20の支持面21上に、円板50と円環部材60とを下から順に積み重ねて設けた例を挙げて説明したが、円板50及び円環部材60は、互いの積み重ね方向における接触面積を低減させ、円板50と円環部材60との固着の解除を容易化することができれば、種々の形状とすることができる。例えば、円環部材60は、円板50の中央に円形の開口を設けることにより、坩堝10及び円板50との接触面積を減少させている。しかしながら、開口は、中央に大きく1つ設ける態様に限定されず、例えば、複数の開口を分散させて設けるような形状としてもよい。また、開口の形状も、円形に限定されず、三角形、四角形等の多角形形状や、楕円等の曲線外形を有する形状としてもよく、用途に応じて種々の形状とすることができる。更に、円環部材60に開口を設けず、円板50と同形の板状部材として構成しても、図3に示したような凹凸構造を円板50との接触面に設けることにより、円板50との接触面積を減少させることができる。また、図2、3においては、円板50及び円環部材60は外周形状が円形の板状部材であるが、外周形状も、正方形、長方形等の四角形、その他五角形、六角形といった多角形や、楕円のような曲線の外形を有して構成されてもよく、用途に応じて種々の形状とすることができる。
【0027】
〔第2の実施形態〕
上述のように、実施形態1に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置によれば、モリブデン製の坩堝10と坩堝台20との間にタングステン製の円板50及び円環部材60を設けることにより、坩堝10と坩堝台20との固着を低減させることができる。しかしながら、実施する結晶育成のプロセスや、実施条件等により、坩堝10と坩堝台20との固着が強く、また、固着解除のためのロスタイムの軽減の観点から、更に効果的かつ確実な固着を解消する構造が求められる場合があり得る。
【0028】
本発明の第2の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置では、更に効果的に坩堝10と坩堝台20との固着を解消する構成について説明する。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置の一例を示した図である。図4(a)は、本発明の第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置の全体構成図であり、図4(b)は、坩堝支持部材の部分拡大図である。
【0030】
図4に示される通り、第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置では、坩堝10と坩堝台20との間に円板50と円環部材60が設けられている点は実施形態1に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置と同様であるが、円板50と円環部材60との間に酸化アルミニウム被膜70が設けられている点で、実施形態1に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置と異なっている。なお、円板50、円環部材60及び酸化アルミニウム被膜70とで、坩堝支持部材86を構成する。
【0031】
以下、その構成についてより詳細に説明する。
【0032】
坩堝台20の支持面21上に配置するタングステンの円板50は、5mm〜10mm程度の肉厚を有し、円板50の表面をバフ仕上げした円形のタングステン板から構成される。タングステンの円板50とモリブデンの坩堝10の底面11との間に設置するタングステンの円環部材60は、例えば、1mm〜5mm程度の肉厚を有し、円環(リング)形状はタングステンの円板50の直径以下の外径と、外径に対し50%〜70%の内径を有する。そして、円環部材60のリング両表面には、梨地加工が加えられることが好ましい。そして、タングステンの円板50とタングステンの円環部材60との接触面に、タングステン同士の接触面に発生する相互拡散作用抑制のため、酸化アルミニウム被膜70を形成する。
【0033】
酸化アルミニウム被膜70の形成方法として一例を挙げると、一般的にサファイア単結晶育成用の原料として使用される酸化アルミニウムパウダー(粉体)を、エチルアルコールを用いてペースト状にし、タングステンの円板50とタングステンの円環部材60の接触面に塗布するといった方法がある。
【0034】
使用する酸化アルミニウムパウダーは、結晶への不純物の混入を抑制するため、純度は4N以上の粉末を使用し、塗布効率を向上させるため粉体粒度は0.4μmから0.7μm程度の粒径を持った粉末を使用する。
【0035】
また、エチルアルコールによって、ペースト状に錬る場合の酸化アルミニウムとエチルアルコールの重量比率は、塗布効率及び塗布量の最適化を図るため、酸化アルミニウムパウダー:エチルアルコールの重量比率が1:2から1:3の範囲の割合の間で行うのが望ましい。
【0036】
エチルアルコールの重量比率を酸化アルミニウムパウダーの2倍以下とすると、練ったペーストの粘度が高すぎ塗布量がコントロールし難くなる上、刷毛による塗布がし難くなるという弊害が発生する。またアルコール量を規定量(酸化アルミニウムパウダーの3倍)以上に増加させると、酸化アルミナパウダーがタングステンステン部材である円板50及び円環部材60の表面に付着する量が少なくなり過ぎ、期待する効果が得難くなる。
【0037】
また、この時のタングステン表面に付着する酸化アルミニウムの単位面積当たり重量は、5mg/cmから3mg/cm程度にコントロールすることが望ましい。
【0038】
上述の方法にて作製した酸化アルミニウムペーストを、速やかにタングステンの円環部材60のタングステンの円板50との接触面、又は、タングステンの円板50のタングステンの円環部材60との接触面に、刷毛を用いて出来るだけ少量塗布するように実施する。この時、酸化アルミニウムパウダーを、エチルアルコールを用いてペースト状に練った後、出来るだけ速やかに塗布を実施することが重要であり、時間が経過してから塗布を実施すると、アルコールが揮発してしまい、期待される粘度及び酸化アルミニウム塗布量が得られなくなってしまう。なお、酸化アルミニウムペーストは、円環部材60又は円板50の一方に塗布すれば十分であるが、両方に塗布してもよく、円環部材60と円板50の接触面の少なくとも一方に塗布すればよい。
【0039】
また、塗布を行うタイミングについては、使用直前に塗布を実施すると、エチルアルコール分が完全に揮発していないために、単結晶育成炉内の雰囲気等に悪影響を与える恐れがある。よって、結晶育成装置を実際に使用する直前に行うのではなく、事前(セット一日前には実施しておく)に実施し、その後大気中にて放置し十分にアルコール分を揮発させてから使用することが重要となる。
【0040】
このようにして、坩堝支持部材86が製作される。坩堝支持部材86は、坩堝台20の支持面21上に載置され、坩堝支持構造85を構成する。そして、坩堝10が坩堝支持構造85上、つまり坩堝支持部材86を介して坩堝台20上に載置され、結晶育成が行われる。
【0041】
なお、第2の実施形態において、円板50及び円環部材60の詳細な構造についても説明したが、これらの構造は、第1の実施形態の円板50及び円環部材60にも適用可能である。
【0042】
坩堝支持部材86を用いた第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置は、第1の実施形態に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置よりも、大きな坩堝10と坩堝台20との固着防止効果が得られる。以下、第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置と、第1の実施形態に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置の実施例について説明する。
【0043】
なお、図4においては、坩堝台20の支持面21上に、円板50と円環部材60とを下から順に積み重ねて設け、円板50と円環部材60との間に酸化アルミニウム被膜70を固着させた例を挙げて説明したが、円板50及び円環部材60は、用途に応じて種々の形状の板状部材から構成することができる。例えば、円環部材60に開口を設けず、円板50と同じ形状に構成することも可能である。この場合、上下の板状部材間同士の接触面積は低減されないが、間に酸化アルミニウム被膜70が介在しているため、酸化アルミニウム被膜70が板状部材同士の固着の解除を容易化することができ、坩堝10と支持面20との間の固着を解除することが可能となる。また、図4の円環部材60のように、上側の板状部材に開口を設け、上下の板状部材の互いの積み重ね方向における接触面積を低減させる構造とすればより好ましい。また、この場合であっても、円環部材60の開口は、中央に大きく1つ設ける態様に限定されず、例えば、複数の開口を分散させて設けるような形状としてもよい。また、開口の形状も、円形に限定されず、三角形、四角形等の多角形形状や、楕円等の曲線外形を有する形状としてもよく、用途に応じて種々の形状とすることができる。更に、図4においては、円板50及び円環部材60は外周形状が円形の板状部材であるが、外周形状も、正方形、長方形等の四角形、その他五角形、六角形といった多角形や、楕円のような曲線の外形を有して構成されてもよく、用途に応じて種々の形状とすることができる。
【0044】
〔第2の実施形態の実施例〕
発明者は実施にあたり、使用1日前に肉厚2.0mm、外径200mm、内径120mmのタングステンスペーサーを用意し、表面処理として不純物(油脂類)除去のためアセトンにて表面を拭き取った。その後、相互拡散防止処理として酸化アルミニウムパウダー10.0gに対して、エチルアルコール30.0gの割合で溶かした酸化アルミニウムペーストを用意し、予め表面をアセトンにて拭取ったタングステンスペーサーの片面に、刷毛を使って全面に薄く塗った。そして、タングステンスペーサーのアルコール分を揮発させるため、一昼夜、排気設備のある簡易ドラフト内に放置しておいた。この塗布にて実際にタングステンの円環部材の表面に付着した酸化アルミニウムの量は、3mg/mであった。
【0045】
発明者は上記処理の翌日に以下の作業を開始した。直径200mmのモリブデン坩堝台表面を、不純物(油脂類)除去のためアセトンにて拭き取った後、直径200mm、肉厚5mmのタングステン円板の表面の全てを不純物(油脂類)除去のためアセトンにて拭き取り、モリブデン坩堝台上に載置した。その後、前日、酸化アルミニウムパウダーをペースト状にした酸化アルミニウムペーストを塗布したタングステンリング(円環部材)の塗布面側をタングステン円板上に置き、その上に酸化アルミニウム原料を供給したモリブデン坩堝を設置した。その後、ホットゾーン等のセッティング及び種結晶の取り付けを行い、育成準備を完了させた後、昇温を開始し、2050℃程度で原料である酸化アルミニウムを溶融させ、種付けを行い、結晶育成を開始した。
【0046】
育成開始後、約200時間前後の結晶育成を継続した後、結晶を切り離した。その後、常温まで冷却後、発明者は結晶を取り出し、その後モリブデン坩堝取外しのため、坩堝開口上端部をプラスチックハンマーにて全周に亘って20回程度叩き、タングステンスペーサーとタングステン円板間の酸化アルミニウム膜を剥離させた。その後、坩堝吊上げ治具をモリブデン坩堝に取付け、剥離しているかの確認のため、徐々に吊上げクレーンを上昇させ剥離確認を行った。その後、所定の位置までクレーンを上昇させたのちアームを旋回させ、坩堝を運搬台車上にゆっくりと降し坩堝取外し作業を終了させた。
【0047】
このように、第2の実施形態に係る坩堝支持構造及び結晶育成装置を実施した場合、20回程度ハンマーで坩堝開口上端部を叩くことにより、坩堝を剥離させることができた。
【0048】
〔第1の実施形態の実施例〕
発明者は実施にあたり、直径200mmのモリブデン坩堝台表面を、不純物(油脂類)除去のためアセトンにて拭き取った後、直径200mm、肉厚5mmのタングステン円板の表面の全てを不純物(油脂類)除去のためアセトンにて拭き取り、モリブデン坩堝台上に載置した。その後、タングステンリングの表面を不純物(油脂類)除去のためアセトンにて拭き取りタングステン円板上に載置した。その上に、酸化アルミニウム原料を供給したモリブデン坩堝を設置した。
【0049】
その後、ホットゾーン等のセッティング、種結晶の取り付けを行い、育成準備を完了させ、昇温を開始した。2050℃程度で原料である酸化アルミニウムを溶融させ、種付けを行い、結晶育成を開始した。
【0050】
育成開始後、約200時間前後の結晶育成を継続した後、結晶を切離した。常温まで冷却後、発明者は結晶を取り出し、その後モリブデン坩堝取外しのため、坩堝開口上端部をプラスチックハンマーにて全周に亘って100回程度叩き、タングステンリングとタングステン円板を剥離させようとした。
【0051】
しかし衝撃をいくら与えてもタングステン円板とタングステンリングの接触面に生じた相互拡散作用による、固着は解消されなかった。そこで、発明者は、モリブデン坩堝を取り囲む側面ヒーター及び側面保温材の分解を約1時間掛けて行い、坩堝側面からの衝撃をプラスチックハンマーにて全周に与えたが剥離しなかったため、更に坩堝底部をプラスチックハンマーにて叩いた所、剥離させることが出来た。その後、坩堝吊上げ治具をモリブデン坩堝に取り付け、剥離しているかの確認のため徐々に吊上げクレーンを上昇させて剥離確認を行った。その後、所定の位置までクレーンを上昇させてアームを旋回し、坩堝を運搬台車上にゆっくりと降し、坩堝取り外し作業を終了させた。
【0052】
発明者はその後、分解した側面ヒーター及び側面保温材を組付け作業を行い作業完了させが、剥離のためにほぼ半日以上の時間を費やした。
【0053】
このように、第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置は、第1の実施形態に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置よりも、大幅に坩堝の取り外しを容易に、短時間に行うことができる。
【0054】
なお、本発明の第1の実施形態に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置も、従来の坩堝台20の支持面21上に直接坩堝10を載置する構成と比較すれば、坩堝取り外しの効果は得られている。即ち、モリブデン素材同士の相互拡散作用と比較すると、タングステン素材を使用した場合は比較的相互拡散作用は軽度となる。これにより、結晶育成後にプラスチックハンマー等により坩堝上面により強い衝撃を相当量(100回以上)加えることによりタングステン部材同士の接触面は何とか分離出来るようになった。
【0055】
更に、第2の実施形態に係る坩堝支持構造85及び結晶育成装置によれば、相互拡散面積を大幅に減少させる事が可能となり、第1の実施形態に係る坩堝支持構造80及び結晶育成装置と比較しても、坩堝を外す際の衝撃回数は1/4以下程度に軽減させる事が可能となり、容易に坩堝取外し作業が出来るように改善できる。
【0056】
これにより、余分に坩堝台とタングステンリングが剥がれずに発生していた作業、ヒーター及び側面保温材の分解及び組付けに費やしていた時間(約4時間)が不要となり、大幅な育成準備時間の短縮が可能となり効率的なサファイア単結晶育成が可能となる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
10 坩堝
11 底面
20 坩堝台
21 支持面
30 加熱体
40 保温材
50 円板
60 円環部材
70 酸化アルミニウム被膜
80、85 坩堝支持構造
86 坩堝支持部材
90 坩堝軸
図1
図2
図3
図4