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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-204181(P2016-204181A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】距離計測方法及び距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 15/26 20060101AFI20161111BHJP
   C30B 29/20 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   C30B15/26
   C30B29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-84686(P2015-84686)
(22)【出願日】2015年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】新田 希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健司
(72)【発明者】
【氏名】中尾 慶彦
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BB01
4G077CF10
4G077EH10
4G077PF04
4G077PF09
4G077PF15
4G077PF52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原料融液表面と種結晶との間の距離を計測可能な距離計測方法及び距離計測装置の提供ことを目的とする。
【解決手段】種結晶80を所定位置に配置する種結晶配置工程と、前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するように前記レーザー光を照射するレーザー光照射工程と、前記レーザー光照射工程における前記レーザー光の反射光を受光し、前記種結晶の下端の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の第2の輝点を撮像する撮像工程と、前記種結晶を鉛直方向に移動させ、前記所定位置と異なる1以上の移動位置に配置し、各移動位置で前記レーザー光照射工程及び前記撮像工程を行うデータ取得工程と、前記所定位置における第1の輝点間距離と、前記各移動位置における各輝点間距離と、前記所定位置及び前記各移動位置間の移動距離との関係に基づいて前記種結晶と前記原料溶融面との間の距離を計測する距離計測工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶育成を行う際、種結晶と原料溶融液面との間の距離を、レーザー光を用いて計測する距離計測方法であって、
前記種結晶を前記原料溶融液面より上方の所定位置に配置する種結晶配置工程と、
前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するように前記レーザー光を照射するレーザー光照射工程と、
前記レーザー光照射工程における前記レーザー光の反射光を受光し、前記種結晶の下端の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の第2の輝点を撮像する撮像工程と、
前記種結晶を鉛直方向に移動させ、前記所定位置と異なる1以上の移動位置に配置し、各移動位置で前記レーザー光照射工程及び前記撮像工程を行うデータ取得工程と、
前記所定位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の第1の輝点間距離と、前記各移動位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の各輝点間距離と、前記所定位置及び前記各移動位置間の移動距離との関係に基づいて、前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の輝点間距離がゼロとなる位置を算出することにより、前記種結晶と前記原料溶融面との間の距離を計測する距離計測工程と、を有する距離計測方法。
【請求項2】
前記種結晶は角柱状であり、
前記種結晶の下端の一点は、前記種結晶の下端の一辺上の一点である請求項1に記載の距離計測方法。
【請求項3】
前記レーザー光は青色レーザー光であり、
前記撮像工程では、前記青色レーザー光のみを選択的に透過させるフィルターを介して前記第1及び第2の輝点を各々撮像する請求項1又は2に記載の距離計測方法。
【請求項4】
前記所定位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の第1の輝点間距離と、前記各移動位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の各輝点間距離と、前記所定位置及び前記各移動位置間の移動距離との関係は、前記移動距離に対する前記第1の輝点間距離及び前記各輝点間距離との間の変化率である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項5】
前記第1の輝点間距離及び前記各輝点間処理は、各々前記撮像工程における撮像ピクセルを用いて測定される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項6】
前記レーザー光が含まれる第1の面と、前記レーザー光の反射光が含まれる第2の面とは異なる面である請求項2乃至5のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項7】
前記レーザー光は、前記種結晶の下端の一辺に対して、上面視して斜めに照射される請求項6に記載の距離計測方法。
【請求項8】
前記レーザー光は、最初に前記種結晶の下端の一点に照射され、前記種結晶の下端からの一点の反射光が前記原料溶融面上の一点に照射される請求項1乃至7のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項9】
前記レーザー光は、最初に前記原料溶融面上の一点に照射され、前記原料溶融面上の一点からの反射光が前記種結晶の下端に照射される請求項1乃至7のいずれか一項に記載の距離計測方法。
【請求項10】
結晶育成を行う際、種結晶と原料溶融液面との間の距離を、レーザー光を用いて計測する距離計測装置であって、
前記原料融液を貯留可能な坩堝と、
該坩堝上で前記種結晶を保持可能であり、保持した前記種結晶を昇降可能な引き上げ軸と、
前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するようにレーザー光を照射可能なレーザー光源と、
前記レーザー光の反射光を受光し、前記種結晶の下端の一点の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の一点の第2の輝点とを撮像可能な撮像手段と、
前記引き上げ軸を制御して前記種結晶を所定位置で停止させ、前記レーザー光源に前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するようにレーザー光を照射させ、前記撮像手段に、前記レーザー光の反射光を受光することにより前記種結晶の下端の一点の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の一点の第2の輝点とを撮像させる処理を、前記種結晶を複数の位置で停止させて行う制御手段と、
該複数の位置の間の移動距離と、該複数の位置の各々で測定した前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の輝点間距離との関係を用いて、前記輝点間距離がゼロとなる位置を算出することにより、前記種結晶と前記原料溶融液面との距離を計測する演算処理手段と、を有する距離計測装置。
【請求項11】
前記レーザー光源は、青色レーザー光を青色レーザー光源であり、
前記レーザー光の反射光の経路中に、前記青色レーザー光のみを透過させるフィルターを更に備えた請求項10に記載の距離計測装置。
【請求項12】
前記レーザー光源は、照射方向が調整可能に構成されている請求項10又は11に記載の距離計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離計測方法及び距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サファイアなどの単結晶を製造する方法としては、坩堝内に収納された単結晶原料を溶融させ、この原料融液から単結晶を引き上げ成長させるチョクラルスキー法(CZ法)が一般的に採用されている。この方法では、単結晶の育成を開始させるために種結晶を原料融液表面に接触させるシーディングを行うが、その際に原料融液表面の位置が不明であると適切なシーディングができないという問題がある。
【0003】
そこで、かかる問題を解決すべく、原料融液表面の位置を測定する技術としては、シリコン単結晶育成時に原料融液表面の位置を一定に保つために、原料融液表面にレーザー光を照射して三角測量の原理で液面変位を測定する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−264779号公報
【特許文献2】特開2000−313691号
【特許文献3】特許第4733900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1〜3に記載の方法により、単結晶育成時に原料融液表面の変位を検知することは可能となるが、原料融液表面と種結晶と相対的な距離を測定することはできないため、シーディングの安定化を図ることはできないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、サファイア結晶育成等に用いられるチョクラルスキー法による単結晶育成において、原料融液表面位置を検知し、原料融液表面と種結晶との間の距離を計測することができる距離計測方法及び距離計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る距離計測方法は、結晶育成を行う際、種結晶と原料溶融液面との間の距離を、レーザー光を用いて計測する距離計測方法であって、
前記種結晶を前記原料溶融液面より上方の所定位置に配置する種結晶配置工程と、
前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するように前記レーザー光を照射するレーザー光照射工程と、
前記レーザー光照射工程における前記レーザー光の反射光を受光し、前記種結晶の下端の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の第2の輝点を撮像する撮像工程と、
前記種結晶を鉛直方向に移動させ、前記所定位置と異なる1以上の移動位置に配置し、各移動位置で前記レーザー光照射工程及び前記撮像工程を行うデータ取得工程と、
前記所定位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の第1の輝点間距離と、前記各移動位置における前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の各輝点間距離と、前記所定位置及び前記各移動位置間の移動距離との関係に基づいて、前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の輝点間距離がゼロとなる位置を算出することにより、前記種結晶と前記原料溶融面との間の距離を計測する距離計測工程と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様に係る距離計測装置は、結晶育成を行う際、種結晶と原料溶融液面との間の距離を、レーザー光を用いて計測する距離計測装置であって、
前記原料融液を貯留可能な坩堝と、
該坩堝上で前記種結晶を保持可能であり、保持した前記種結晶を昇降可能な引き上げ軸と、
前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するようにレーザー光を照射可能なレーザー光源と、
前記レーザー光の反射光を受光し、前記種結晶の下端の一点の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の一点の第2の輝点とを撮像可能な撮像手段と、
前記引き上げ軸を制御して前記種結晶を所定位置で停止させ、前記レーザー光源に前記種結晶の下端の一点と、前記原料溶融液面上の一点とで反射するようにレーザー光を照射させ、前記撮像手段に、前記レーザー光の反射光を受光することにより前記種結晶の下端の一点の第1の輝点と、前記原料溶融液面上の一点の第2の輝点とを撮像させる処理を、前記種結晶を複数の位置で停止させて行う制御手段と、
該複数の位置の間の移動距離と、該複数の位置の各々で測定した前記第1の輝点と前記第2の輝点との間の輝点間距離との関係を用いて、前記輝点間距離がゼロとなる位置を算出することにより、前記種結晶と前記原料溶融液面との距離を計測する演算処理手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、結晶育成炉内が高温で明るく発光し、シーディング部を目視で観察し難い場合でも、原料融液表面と種結晶との距離を正確に把握することができるため、容易にシーディングすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例を示した全体構成図である。図1(a)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の側面図である。図1(b)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の動作中の状態の一例を示した図である。
図2】2地点間の種結晶の鉛直方向の移動距離と、各地点で撮像した輝点間の輝点間距離との関係の一例を示した図である。
図3】本発明の一実施形態に係る距離計測装置及び距離計測方法の一例を模式的に示した図である。図3(a)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の斜視図である。図3(b)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の上面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る距離測定方法のレーザー光の照射方法の一例を模式的に示した図である。図4(a)は、斜視図である。図4(b)は、上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る距離測定方法のレーザー光の照射方法の一例を模式的に示した図である。図5(a)は、斜視図である。図5(b)は、上面図である。
図6】種結晶の高さを変化させることにより、原料融液の表面に写ったレーザー光の反射光と種結晶の高さの距離が比例して変わることを模式的に表した図である。図6(a)は、結晶種の高さを高くした状態を示した図である。図6(b)は、種結晶の高さを低くした状態を示した図である。
図7】単結晶育成炉内の波長分布の一例を示した図である。
図8】青色レーザー光を透過させるバンドパスフィルターの波長特性の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例を示した全体構成図である。図1(a)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の側面図であり、図1(b)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の動作中の状態の一例を示した図である。
【0013】
図1(a)に示されるように、本発明の実施形態に係る距離測定装置は、レーザー光源10と、カメラ20と、減光フィルター30と、引き上げ軸40と、制御部50と、演算処理部60とを有する。また、関連構成要素として、結晶育成を行う結晶育成装置の坩堝10が設けられる。更に、図1(a)において、結晶育成の際、距離の測定対象となる種結晶80と原料融液90が示されている。より正確には、測定対象となる距離は、種結晶80と原料融液90との間の距離であり、種結晶80の下端面又は底面と、原料融液90の表面との間の距離である。
【0014】
レーザー光源10は、種結晶80及び原料融液90にレーザー光L1を照射するための手段である。レーザー光源10は、坩堝70の遥か上方、具体的には結晶育成装置の外部に設けられ、遠方から種結晶80及び原料融液90にレーザー光L1を照射する。なお、結晶育成装置は、一般的に、保温材等からなるチャンバーにより周囲が囲まれるが、その場合には、チャンバーの所定箇所に観察窓を設け、観察窓を介してレーザー光L1を結晶育成装置内に導入可能に構成する。
【0015】
レーザー光源10は、レーザー光L1の照射方向が調整可能なように、照射方向、照射角度等が調整可能に構成される。これにより、異なる位置に配置された種結晶80にレーザー光L1を照射することができる。なお、図1(a)に示されるように、レーザー光源10は、例えば、種結晶80の下端の一点をかすめる、又は種結晶80の下端の一点に接するような状態で、種結晶80及び原料融液90に照射されてもよい。図1(a)、(b)に示されるように、種結晶80が角柱状の形状を有する場合には、種結晶80の下端の一辺上の一点をかすめるようにレーザー光L1が照射される。
【0016】
また、本発明の実施形態に係る距離測定方法では、最初、種結晶80を所定位置に停止させ、レーザー光L1を照射した後、種結晶80を鉛直方向に移動させ、各移動地点において、レーザー光L1が種結晶80の一点をかすめるような照射を行うため、かかる観点からも、レーザー光源10は、照射方向を調整可能に構成される。なお、レーザー光源10の照射方向の調整により、理論的には種結晶80及び原料融液90への入射角度が変化するが、レーザー光源10は、種結晶80及び原料融液90から十分離れた位置に設置されるため、照射方向の調整のためにレーザー光源10の角度等が異なっても、実質的には無視できる誤差の範疇で、入射角度は一定とみなすことができる。
【0017】
図1(a)、(b)に示されるように、カメラ20は、レーザー光L1の反射光L2を受光し、種結晶80の下端の一点に発生する輝点S1及び原料融液90の表面上の一点の輝点S2を撮像するための撮像手段である。レーザー光L1が照射した箇所において、レーザー光L1が反射し、反射光L2がカメラ20に入射する。反射点は、カメラ20で撮像すると、輝点S1、S2として認識することができる。よって、レーザー光L1の照射により発生した種結晶80上の輝点S1及び原料融液90上の輝点S2を検出すべく、カメラ20は設けられる。
【0018】
カメラ20は、レーザー光L1の反射光L2を受光可能な坩堝70よりも上方の位置に設けられる。上述のように、保温材等からなるチャンバーに結晶育成装置が囲まれる場合には、チャンバーの反射光L2の経路上にも観察窓が設けられ、観察窓を介してカメラ20は反射光L2を受光し、輝点S1、S2を撮像する。なお、図1(a)、(b)においては、カメラ20は、レーザー光源10の反対側に設けられているが、レーザー光L1の照射方向と、種結晶80の下端の辺の向きとの関係により、種々の角度に反射することが考えられる。カメラ20は、そのようなレーザー光L1の照射方向と、種結晶80の向きとの関係を考慮し、反射光L2を受光可能な適切な位置に配置される。
【0019】
減光フィルター30は、光を減衰させるためのフィルターである。例えば、レーザー光源10が、レーザー光L1として青色レーザー光を発射するレーザー高原10である場合には、減光フィルターには、青色レーザー光のみを透過させるための青色レーザー光用バンドパスフィルターを用いるようにしてもよい。なお、減光フィルター30は、反射光L2の経路上であって、カメラ20の撮像面(受光面)21と、原料融液90との間の所定箇所に設けられる。例えば、カメラ20の撮像面21を覆うようにして設けられてもよい。
【0020】
引き上げ軸40は、種結晶80を保持した状態で、種結晶80を昇降させるための昇降手段である。本実施形態に係る距離測定装置においては、単結晶の引き上げ時ではなく、種結晶80を原料融液90の表面に接触させるシーディングを行う際に用いられるので、引き上げ軸40の下降機能が主に用いられる。
【0021】
制御部50は、結晶育成装置及び距離測定装置を制御するための制御手段である。具体的には、制御部50は、引き上げ軸40の下降動作や、レーザー光源10の照射方向の設定を含むレーザー光源10の動作、カメラ20の撮像動作等を制御する。制御部50は、例えば、レーザー光源10、カメラ20、引き上げ軸40等のアクチュエータに動作指令を出して、これらの動作を制御する。
【0022】
また、制御部50は、坩堝70の加熱や成長した単結晶の引き上げ軸40による引き上げ動作等、結晶育成動作の全体を制御してもよい。よって、制御部50は、距離測定装置及び結晶育成装置と電気的に接続される。また、ここでは、距離測定装置と結晶育成装置の制御を制御部50に統合した例を挙げて説明しているが、距離測定装置と結晶育成装置の制御部50は、個別に構成されていてもよい。
【0023】
制御部80は、演算処理機能を有すれば、種々の構成としてよいが、例えば、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)及びROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶手段を備え、プログラムにより動作するマイクロコンピュータや、特定の用途向けの集積回路として形成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。
【0024】
演算処理部60は、鉛直方向の複数位置に種結晶80を移動させ、各位置で輝点S1、S2を撮像したときに、種結晶80の移動距離と、輝点S1、S2間の距離との関係から、輝点S1、S2間の距離がゼロとなる時、つまり種結晶80が原料融液90の表面に接触した位置を算出するための演算処理を行うための演算処理手段である。演算処理の具体的な内容については後述するが、演算処理部60も、制御部50と同様、マイクロコンピュータやAISC等の集積回路からなる演算処理手段として構成されてもよい。また、図1(a)においては、制御部50と演算処理部60が別個に設けられた例を示しているが、演算処理部60は、制御部50内に統合されて設けられ、制御部50が演算処理部60の演算処理機能を実行するような構成としてもよい。
【0025】
坩堝70は、原料融液90を貯留するために結晶育成装置内に設けられている。坩堝70は、例えばサファイアの単結晶を育成する場合、2000℃以上の温度に加熱されるため、耐熱性の高い金属材料で構成される。例えば、坩堝70は、モリブデン(Mo)や、タングステン(W)で構成されてもよい。
【0026】
種結晶80は、坩堝70内で育成された単結晶を引き上げるための結晶であり、例えば、直方体等の四角柱として構成される。
【0027】
原料融液90は、単結晶を育成するための原料となる材料である。例えば、サファイアの単結晶を育成する場合には、酸化アルミニウムが原料となり、原料融液90は、酸化アルミニウムを溶融することにより形成される。
【0028】
次に、図1に示した距離測定装置の動作及び機能について説明する。
【0029】
図1(a)に示すように、レーザー光源10から発せられた十分大きな強度のレーザービーム(レーザー光L1)を角度θで種結晶および原料融液に向けて照射し、種結晶、原料融液からの反射光(散乱光)をカメラ(受光部)20で撮影する。
【0030】
本実施形態に係る距離測定装置を用いて種結晶80と原料融液90との間の距離の測定を行う際には、レーザー光L1が種結晶80の先端(下端)をかすめるように入射角度θを調節する。レーザー光L1が種結晶80の下端の角部をかすめた際に生じた散乱光(反射光L2)はカメラ20の撮像面21に入射し、図1(b)に示すように、輝点S1として観察される。また、種結晶80の下端の角部で反射し、さらに原料融液90の表面で反射されたレーザー光の反射光L2もカメラ20の撮像面21に入り、輝点S2として観察される。これらの2つの輝点S1、S2を同じ画像内に撮像し、画像内における輝点S1、S2間の距離を測定すると、種結晶80の下端と原料融液90の表面との間の距離がゼロ、つまり種結晶80の下端と原料融液90の表面が接触したときに、2つの輝点S1、S2が一致することになる。
【0031】
図2は、2地点間の種結晶80の鉛直方向の移動距離と、各地点で撮像した輝点S1、S2間の輝点間距離D1、D2との関係の一例を示した図である。図2に示されるように、種結晶80の高さを変更しながら少なくとも2枚以上の画像を撮像し、画像として撮り込まれた2つの輝点S1、S2間の距離と、種結晶80の鉛直方向における移動距離との関係を示すグラフを外掃し、2つの輝点S1、S2間の距離がゼロなる箇所を求めれば、そこが種結晶80の下端と原料融液90の表面とが接触する位置となり、そこから画像を撮り込んだときの原料融液表面から種結晶までの距離を計測することが可能となる。
【0032】
図2において、種結晶80が、位置A1から位置A2に移動した場合、移動距離は(A1−A2)となる。移動距離は、引き上げ軸40により制御可能であり、正確な計測が可能な数値である。位置A1における種結晶80の輝点S1と、原料融液90の表面上の輝点S2との距離がD1、位置A2における種結晶80の輝点S1と、原料融液90の表面上の輝点S2との距離がD2の場合、各々の輝点間距離D1、D2をプロットし、種結晶移動距離(A1−A2)に対する変化率(傾き)を算出する。そうすると、正確な移動距離(A1−A2)に対する輝点間距離D1、D2の変化率を取得できることになる。そして、輝点間距離Dがゼロとなる位置A0を算出すれば、種結晶80の下端と原料融液90の表面との間の距離を計測(算出)することができる。即ち、A0点と、現在の地点との移動距離を正確に算出することができるので、その移動距離分、種結晶80を下降させれば、原料融液90の表面に種結晶80の底面を接触させることができ、適切にシーディングを行うことができる。
【0033】
かかる距離算出のための演算処理は、演算処理部60で行うが、上述のように、演算処理部60が制御部50に組み込まれ、制御部50で行うようにしてもよい。
【0034】
なお、図2では、理解の容易のため、2地点のみで輝点S1、S2間距離D1、D2及び2地点間の移動距離(A1−A2)を用いて演算処理を行った例を挙げているが、測定データ点数が多い程正確性は増すので、2地点のみならず、3地点以上の複数点でレーザー光L1の照射及び輝点S1、S2の撮像を行い、それらの3個以上のデータから変化率を算出し、種結晶80と原料融液90との間の距離を計測してもよい。また、鉛直線上の各位置に種結晶80を移動させる度に、レーザー光L1の照射方向の調整が必要となるが、上述のように、レーザー光源10は、種結晶80及び原料融液90から十分離れた位置に配置されているので、調整による変更は無視できる誤差の範囲にあり、レーザー光L1の入射角度は一定とみなして演算処理を行うことができる。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態に係る距離計測装置及び距離計測方法の一例を模式的に示した図である。図3(a)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の斜視図であり、図3(b)は、本発明の実施形態に係る距離測定装置の一例の上面図である。
【0036】
図3(a)、(b)に示されるように、本実施形態に係る距離計測装置は、レーザー光源10と、カメラ(1次元カメラまたは2次元カメラ)20を有する点は、図1と同様である。種結晶80は直方体で、坩堝70の中心の上方に配置されている。図1と同様、カメラ20の手前には、減光フィルター30が設置されている。また、これらのレーザー光源10及び受光器たるカメラ20は、単結晶育成炉の所定の位置に配置されるが、上述のように、単結晶育成炉(全体は図示せず)のチャンバー(図示せず)内は高温となるので、チャンバー外に配置し、チャンバーに設けた観察窓を介してレーザー光L1を照射し、画像を撮り込むのが好ましい。
【0037】
本実施形態においては、坩堝70の半径方向にほぼ鉛直な仮想面a内に、レーザー光源10の光学中心軸と種結晶80の中心軸とが配置されている。レーザー光源10が仮想面a内で回転する機構を設けることにより、レーザー光L1は投射角度を変えて、坩堝70の半径方向に沿った原料融液90の表面上の任意の位置に照射される。同様に種結晶80の中心軸とカメラ20の光学中心軸も、坩堝70の半径方向にほぼ鉛直な仮想面b内に配置されている。
【0038】
ここで、上述の特許文献1〜3では、レーザー光源10と測定点と受光器は同一仮想面上にあることを前提に三角測量の原理で融液面の変位測定を行っていたが、本発明の実施形態においては、レーザー光L1を原料融液90の表面または種結晶80に一回反射させて輝点S1、S2を観測するため、レーザー光源10とカメラ20は、必ずしも半径方向に鉛直な同一仮想面にする必要はない。よって、レーザー光源10とカメラ20は、用途に応じて多様な配置とすることが可能であり、工場の種々のレイアウトに適合させることができる。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態に係る距離測定方法のレーザー光の照射方法の一例を模式的に示した図である。図4(a)は斜視図であり、図4(b)は上面図である。
【0040】
上述のように、レーザー光L1が原料融液90の表面に当たった輝点S2の位置を知るには、原料融液90の表面に照射されたレーザー光L1が、原料融液90の表面で反射し、カメラ20に入射することが必要である。
【0041】
図4(a)、(b)を用いて、レーザー光源と受光器が必ずしも半径方向に鉛直な同一平面にない場合の測定方法について、より詳細に説明する。図4(a)、(b)では、レーザー光源10とカメラ20が、炉の上から見て、90度の角度をもっている。このように、レーザー光源10とカメラ20とが同一平面にない場合でも、種結晶80の回転角度を適切な角度に設定することにより、レーザー光L1を種結晶80の先端(下端)の角部(一辺上)で反射させた光を、原料融液90の表面で正反射させて、反射光L2をカメラ20の方向に進行させることが可能である。これにより、カメラ20は、レーザー光源10と同一平面内には無いが、輝点S1、S2がカメラ20の視野内にある状態となり、カメラ20で輝点S1、S2を同一画面内に撮像することが可能となる。
【0042】
図5は、本発明の一実施形態に係る距離測定方法のレーザー光の照射方法の一例を模式的に示した図である。図5(a)は斜視図であり、図5(b)は上面図である。
【0043】
図5に係る実施形態では、図4に係る実施形態とは異なり、最初に原料融液90の表面上にレーザー光L1を入射させ、原料融液90の表面で反射させたレーザー光を種結晶80の下端に照射させ、種結晶80の下端からの反射光L2がカメラ20に入射する状態に設定している。図5(b)に示されるように、この場合でも、輝点S1、S2はカメラ20の視野内に存在するため、同一の画像内に輝点S1、S2の双方を撮像できる状態とすることができる。例えば、このようにして輝点S1、S2を観察し、種結晶80と原料融液90との間の距離を測定してもよい。但し、図4に係る実施形態の方は、図5に係る実施形態よりも輝点S1、S2を鮮明に観察することができ、コントラスト、S/N比の観点からは、図4に係る実施形態の方が図5に係る実施形態よりも優れている。
【0044】
このように、種結晶80の輝点S1及び原料融液90の表面の輝点S2がカメラ20の視野内にあり、同一画像内で輝点S1、S2の双方を撮像できる限り、レーザー光源10及びカメラ20は、用途に応じて種々の配置とすることができる。また、レーザー光L1の照射の順序も、種結晶80、原料融液90の順序であってもよいし、その逆であってもよく、これも用途に応じて適宜適切な設定とすることができる。
【0045】
図6は、種結晶80の高さを変化させることにより、原料融液90の表面に写ったレーザー光L1の反射光L2と種結晶80の高さの距離が比例して変わることを模式的に表した図である。図6(a)は、結晶種80の高さを高くした状態を示した図であり、図6(b)は、種結晶80の高さを低くした状態を示した図である。
【0046】
図6(a)、(b)に示されるように、種結晶80の底面基準での高さをA1としたときには、輝点S1、S2間の距離はD1となるが、種結晶80の底面基準での高さをA1よりも低くA2としたときには、輝点S1、S2間の距離D2も距離D1より小さくなる。よって、種結晶80の底面の高さは、輝点S1、S2間距離と比例関係にあり、輝点S1、S2間の距離Dをゼロとすることにより、原料融液90の表面の位置A0を計測することができる。なお、これは、図2の説明と合致している。
【0047】
図7は、単結晶育成炉内の波長分布の一例を示した図である。炉内は、例えばサファイア結晶を育成する場合、2000℃以上の高温となっているので、原料が融けて、白色に発光している状態である。レーザー光L1の反射を確認する場合、その画像は全体的に白く発光してレーザー光L1による輝点S1、S2が見え難いため、減光フィルター30を設置し、減光フィルター30越しに画像を取得するのが好ましい。カメラ20で輝点を確認するには、減光フィルター30をつけて、例えば1万分の1以下に光量を落とす必要があり、減光フィルター30をつけた状態で輝点を確認するためには、出力波長が633nmの赤色レーザーの場合、数100mWの出力のレーザー光L1を照射する必要がある。
【0048】
しかし、図7の単結晶育成炉内の波長分布から分かるように、400nm近辺の波長強度は弱く、波長405nmの青色レーザーを照射した場合は、赤色レーザーよりも容易に輝点を観察することができる。
【0049】
図8は、青色レーザー光を透過させるバンドパスフィルターの波長特性の一例を示した図である。例えば、1mW程度の低出力の青色レーザーを照射した場合、1万分の1に減衰する減衰フィルター越しでは輝点S1、S2を見ることはできないが、減衰フィルター30として405nmの波長の光のみを通すバンドパスフィルターを設置することで、低出力の青色レーザーでも輝点の観察ができるため、レーザー光の危険性の低減及び装置の低コスト化が図れ、より好ましい。
【0050】
なお、本発明の実施形態に係る距離計測方法及び距離計測装置は、サファイア結晶のシーディングのみならず、種々の結晶のシーディングに用いることができる。結晶育成を行う際、殆どの結晶の原料融液90の表面は鏡面状態であり、レーザー光L1の照射により、輝点S1、S2を撮像することが可能であるので、結晶の種類によらず、種々の結晶育成のシーディングに適用可能である。
【実施例】
【0051】
次に、本発明に係る距離計測方法及び距離計測装置を実施した実施例について説明する。
【0052】
〔実施例1〕
融液および種結晶を酸化アルミニウムとし、レーザー光源には最大出力が500mWの波長が633nmの赤色レーザーを使用し、減光フィルターとして減衰率が1万分の1のNDフィルターを、カメラには2次元CCDカメラを使用して、単結晶育成炉内の原料融液表面から種結晶までの距離を計測したところ、測定可能であった。
【0053】
〔実施例2〕
レーザー光源に出力が1mWの波長が405nmの青色レーザーを用い、減光フィルターとして透過中心が405nmであり、透過率が55%以上で半値幅10nmのバンドパスフィルターを用いた以外は、実施例1と同様にして単結晶育成炉内の原料融液表面から種結晶までの距離を計測したところ、測定可能であった。
【0054】
このように、実施例1、2から、本実施例に係る距離計測方法及び距離計測装置により、適切に種結晶と原料融液表面との間の距離を適切に測定可能であることが示された。
【0055】
本発明の実施形態及び実施例に係る距離計測方法及び距離計測装置によれば、結晶育成炉内が高温で明るく発光し、シーディング部を目視で観察し難い場合でも、原料融液表面と種結晶との距離を把握することができるため、容易にシーディングすることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施形態及び実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10 レーザー光源
20 カメラ
30 減光フィルター
40 引き上げ軸
50 制御部
60 演算処理部
70 坩堝
80 種結晶
90 原料融液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8