特開2016-204722(P2016-204722A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-204722(P2016-204722A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】ペースト用銅粉末
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20060101AFI20161111BHJP
   G01N 27/48 20060101ALI20161111BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20161111BHJP
   C22C 9/06 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B22F1/00 L
   G01N27/48 Z
   H01B5/00 F
   C22C9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-90243(P2015-90243)
(22)【出願日】2015年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】須藤 真悟
(72)【発明者】
【氏名】富樫 亮
【テーマコード(参考)】
4K018
5G307
【Fターム(参考)】
4K018BA02
4K018BD04
4K018KA37
5G307AA08
(57)【要約】
【課題】銅の酸化を抑制し、一方で還元されやすく低温でも焼成できる焼成電極用のペースト用銅粉末を提供する。
【解決手段】本発明に係るペースト用銅粉末は、銅を主成分とし、ニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下含有され、その他の不純物元素の含有量が0.01質量%未満であることを特徴とする。ここで、電気化学測定での対極としてPt、参照電極として銀/塩化銀、及び作用電極として当該銅粉末からなる銅合金の3電極を用い、それぞれの電極を電解液であるホウ酸ナトリウム系緩衝溶液に浸漬させて電圧を印加したときのクロノポテンショメトリーによる電位変化曲線において、その銅合金における酸化膜の還元時間の長さが、無酸素銅を作用電極とした場合における酸化膜の還元時間よりも短い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主成分とし、ニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下含有され、その他の不純物元素の含有量が0.01質量%未満であることを特徴とするペースト用銅粉末。
【請求項2】
電気化学測定での対極としてPt、参照電極として銀/塩化銀、及び作用電極として当該銅粉末からなる銅合金の3電極を用い、それぞれの電極を電解液であるホウ酸ナトリウム系緩衝溶液に浸漬させて電圧を印加したときのクロノポテンショメトリーによる電位変化曲線において、該銅合金における酸化膜の還元時間の長さが、無酸素銅を作用電極とした場合における酸化膜の還元時間よりも短いことを特徴とする請求項1に記載のペースト用銅粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト用銅粉末に関し、より詳しくは、例えばチップ型電子部品の内部電極や外部電極等に用いられる焼成電極に使用される導電銅ペーストを形成するための銅粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品の内部電極や外部電極等の電極を形成するにあたっては、銀ペーストやニッケルペーストの代わりに銅ペーストを使用して安価に形成したいという要求がある。ニッケルの比抵抗率は銀や銅よりも高く、また銀の価格はニッケルや銅よりも高いため、電気的特性が良好であって安価な銅を使用したいというのがこの要求の理由である。
【0003】
電極として銅を使用して内部電極や外部電極を形成する技術は、例えば特許文献1や特許文献2に記載があるように古くから存在するが、銅は酸化しやすいため、銀粉を使用する銀ペーストやニッケル粉を使用するニッケルペーストが一般に使用されてきた。
【0004】
そのため、上述した要求を満たすためには、酸化しやすい銅粉を使用するにあたり、酸化防止剤あるいは還元剤等の有機物を添加しなければならず、銅粒子表面の酸化が進行しやすい場合には、その有機物の添加量を増やす、あるいは焼成温度を低くすることにより、銅の酸化を抑制することが必要となる。
【0005】
しかしながら、有機物を添加すると、粒子間にその有機物の残渣が炭素として残留したりし、焼結が効率的に進まなくなり、比抵抗が高くなるという新たな問題が生じてしまう。そのため、酸化防止あるいは還元効果の高い有機物を使用して添加量を削減することが考えられるが、環境負荷の少ない有機物の開発は現状では難しく、有効な解決策がないというのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−184511号公報
【特許文献2】特開昭61−2425号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】豊田中央研究所R&D レビュー,p.63,Vol.31 No.4(1996.12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような実情に鑑みてなされたものであり、銅の酸化を抑制し、一方で還元されやすく低温でも焼成できる焼成電極用のペースト用銅粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、銅を主成分とする銅粉において、所定の割合でニッケルを含有させることによって、酸化を抑制することができ、また優れた還元特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の発明は、銅を主成分とし、ニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下含有され、その他の不純物元素の含有量が0.01質量%未満であることを特徴とするペースト用銅粉末である。
【0011】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、電気化学測定での対極としてPt、参照電極として銀/塩化銀、及び作用電極として当該銅粉末からなる銅合金の3電極を用い、それぞれの電極を電解液であるホウ酸ナトリウム系緩衝溶液に浸漬させて電圧を印加したときのクロノポテンショメトリーによる電位変化曲線において、該銅合金における酸化膜の還元時間の長さが、無酸素銅を作用電極とした場合における酸化膜の還元時間よりも短いことを特徴とするペースト用銅粉末である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るペースト用銅粉末は、0.01質量%以上0.8質量%以下の割合でニッケルを含有し、その他の不純物元素の含有量が0.01質量%未満であることにより、銀よりも安価であって、無酸素銅よりも酸化膜厚が薄く、酸化しにくく還元しやすいという優れた特徴を有する。また、還元しやすいために酸素が放出しやすく、ペースト中の有機物を分解除去しやすいという特長も示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】クロノポテンショメトリーによる銅合金の酸化膜の電位変化曲線を示す図である。
図2】クロノポテンショメトリーでの電位変化曲線から酸化膜の還元時間を求めた一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るペースト用銅粉の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
【0015】
≪1.ペースト用銅粉≫
本実施の形態に係るペースト用銅粉は、銅を主成分として構成される銅合金であり、ニッケルを所定の割合で添加成分として含有する。具体的に、この銅ペースト用銅粉は、銅を主成分として、ニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下の割合で含有され、その他の不純物元素の含有量が0.1質量%未満であることを特徴としている。なお、主成分とは、その含有割合が51質量%以上であることをいう。
【0016】
一般的に、銅は大気中で酸化して表面にCuOやCuOの酸化銅層(以下、「酸化膜」ともいう)を形成する。CuO層の形成が無く、またCuO層の膜厚が厚ければ還元しにくくなり、一方でその膜厚が薄ければ還元しやすくなる。
【0017】
本実施の形態に係るペースト用銅粉では、上述したように、主成分である銅に所定の割合でニッケルが含有されてなり、その他の不純物元素の含有量がほとんど存在しないことにより、その合金の酸化層としてはCuOが主となり、またその厚みは薄くなり、容易に還元することができる。
【0018】
具体的に、このペースト用銅粉では、上述したように、ニッケルを0.01質量%以上0.8質量%以下の範囲の割合で含有することによって、銅粉自体の表面酸化が抑制されるため、ペースト中に添加すべき酸化防止剤や還元剤の量を低減させることができ、また焼成温度を降温しなくとも焼結が進みやすいため、良好な銅粉ペーストとなる。
【0019】
ニッケルの含有量に関して、ペースト用銅粉中のニッケルの含有量が0.01質量%未満であると、酸化膜厚が厚くなって還元しにくい銅粉となってしまう。また、酸化膜厚が無酸素銅並となり、ペースト中の酸化防止剤や還元剤の量を有効に低減させることができず、また還元されにくくなるため焼結が進みにくい。
【0020】
一方で、ニッケルの含有量が0.8質量%を超えても、酸化膜厚が厚くなって還元しにくい銅粉となってしまうばかりか、合金として電気比抵抗が上昇する。また、酸化膜厚が無酸素銅並かそれ以上となり、ペースト中の酸化防止剤や還元剤の量を有効に低減させることができず、また還元されにくいために焼結もし難く、焼成後の合金自体の電気比抵抗も上昇することから高抵抗の電極膜となってしまう。
【0021】
また、本実施の形態に係るペースト用銅粉は、ニッケル以外の不純物元素の含有量が0.01質量%未満である。このように、不純物元素の含有量が0.01質量%未満であることにより、上述した所定量のニッケルの添加による表面酸化が抑制作用を効果的に発揮させることができ、また焼結が進みやすくなり、良好な銅粉ペーストとなる。
【0022】
ここで、図1に、表面に形成された酸化物の還元されやすさや酸化物層厚さを見積もることが可能なクロノポテンショメトリーによる電位変化曲線の一例を示す。この方法は、非特許文献1に記載された電気化学的還元電位測定を応用したものである。具体的には、酸化の加速試験として純度99.99%の銅板を大気中150℃で30分間加熱し、電解液としてホウ酸−ホウ酸ナトリウム系緩衝溶液(pH9.3)を、対極にPtを用いて、還元方向に定電流50μAを印加したときの銅板と参照電極(銀/塩化銀電極)間の電位の経時変化を測定したクロノポテンショメトリーの結果である。
【0023】
図1に示されるように、定電流を還元方向に印加したときに−0.7Vに電位のプラトー領域が観察される。このプラトー領域は、還元され得る酸化物が試料表面に存在し、それが還元されるのに要した時間を示す。
【0024】
酸化膜が還元される時間は、プラトー領域を経て電位が減少していく傾きと、還元が終了して電位が一定に収束する傾きとの交点から求めることができる。図2に、無酸素銅のクロノポテンショメトリーを測定して酸化膜が還元される時間を求めた例を示す。図2中の交点Pに相当する時間が、酸化膜が還元される時間である。このように、純度99.99%の銅に対して種々の元素を添加した合金試料を作製し、クロノポテンショメトリーによる酸化膜の還元時間を比較することによって、酸化物層の厚みと還元しやすさとを推察することが可能となる。
【0025】
図1に示す例は、無酸素銅(Cu)、0.11質量%の割合でニッケルを含有する銅合金(Cu−0.11Ni)、0.46質量%の割合でニッケルを含有する銅合金(Cu−0.11Ni)の3つの試料のクロノポテンショメトリーの測定結果である。この図1の結果に示されるように、主成分の銅にニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれることで、クロノポテンショメトリーによる酸化膜の還元時間の長さが無酸素銅よりも短くなり、無酸素銅により生成される酸化膜よりも還元しやすい酸化膜となることが分かる。
【0026】
このように、本実施の形態に係るペースト用銅粉では、銅粉自体の表面酸化が抑制されるため、ペースト中に添加すべき酸化防止剤や還元剤の量を低減させることができ、また焼成温度を降温しなくとも還元されやすいために焼結が進みやすく、抵抗の低い電極を得ることができる良好な銅粉ペーストとなる。
【0027】
≪2.ペースト用銅粉の製造方法≫
本実施の形態に係るペースト用銅粉の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。
【0028】
具体的には、例えば、上述したような所定の組成の銅合金を、真空あるいは不活性雰囲気で溶解した後、溶湯を非酸化性雰囲気中に小径ノズルから流し、その溶湯流を高速のガス流によって粉化し凝固させるガスアトマイズ法により製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
≪実施例及び比較例≫
<銅合金の製造>
実施例及び比較例において、下記表1に示すような成分組成となるようにして銅合金溶湯を調製して銅合金試料を製造した。なお、表1に示すように、成分として各種の元素をそれぞれ所定の割合で含有する。
【0031】
具体的には、日新技研(株)製のアーク溶解炉を用いて、チャンバー内を0.005Pa以下まで真空引きした後、アルゴンガスを40000Paまで導入し、下記表1に示される成分組成を有する銅合金溶湯を銅製ハース鋳型内に流し込んで、直径約30mm、厚さ約6mmのボタン状鋳塊を作製した。添加元素を均一に分散させるために、溶解鋳造後に試料を反転させて再溶解するという方法で計5回の溶解鋳造を行い、鋳塊とした。そして、作製した鋳塊を、幅5mm、厚さ0.3mm、長さ15mmの短冊状に切り出して銅合金板試料とし、以下に示す評価に供した。
【0032】
<評価(酸化還元評価)及び評価結果>
試料における酸化膜の評価は、緩衝液としてホウ酸ナトリウム溶液を用いたクロノポテンショメトリーによって行った。測定においては、試料の5mm×5mmの面を露出させて緩衝液に浸漬させた。また、定電流印加と電位経時変化の測定は、Princeton Applied Reserch社製のポテンショガルバノスタットVersastat3を用いて行った。
【0033】
また、試料の酸化を加速させるために、大気中150℃で30分間の酸化処理を行った。そして、還元時間が、無酸素銅の比較試料よりも短い場合を『良』とし、無酸素銅の比較試料と同等又はそれより長い場合を『不良』と評価した。
【0034】
下記表1に、評価結果を示す。なお、表1には、上述したように、実施例1〜5、及び比較例1〜14における銅合金の成分組成についても併せて示す。また、金属価格として銅を700円/kg、銀を65円/g、ニッケルを1750円/kg、パラジウムを3,000円/g、アルミニウムを200円/kg、錫を2,300円/kg、亜鉛を250円/kg、マグネシウムを300円/kgとして計算し、1円単位に切り上げた1kgあたりの合金価格を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果に示すように、実施例1、2、3、4、5にて製造した銅合金については、その酸化膜の還元時間が無酸素銅の酸化膜の還元時間より短い結果を示し、評価結果は良を示した。すなわち、酸化しにくく還元しやすいと性質を示した。また、その合金価格は708円/kg以下であった。
【0037】
一方で、比較例では、比較例2〜14の合金組成の酸化膜の還元時間は、基準の比較例1(無酸素銅)よりも長くなり、無酸素銅よりも還元しにくいことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本実施の形態に係る銅ペースト用銅粉は、銅を主成分とし、ニッケルが0.01質量%以上0.8質量%以下含有されている。このような銅粉によれば、同じ条件下で発生する酸化膜が無酸素銅の酸化膜よりも容易に還元されるため、ペーストにした場合に酸化防止剤や還元剤の添加量を効果的に低減できる。そのため、焼成後の銅粒子間の残留炭素を低減でき、また銅粉表面の酸化膜が除去されやすいために焼結性が高まり、焼成後の電気抵抗が低い電極を形成することができる。
【0039】
また、焼成時には還元されやすいためにペースト中の有機物を分解除去しやすく、銅粒子間の有機物残渣を減少できる。さらに、銀やニッケルよりも金属価格が安価であり、電子部品業界での利用価値は極めて大きい。
図1
図2