特開2016-210741(P2016-210741A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-210741有機白金化合物からなる化学蒸着用原料及び該化学蒸着用原料を用いた化学蒸着法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-210741(P2016-210741A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】有機白金化合物からなる化学蒸着用原料及び該化学蒸着用原料を用いた化学蒸着法
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20161118BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   C07F15/00 FCSP
   C23C16/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-96976(P2015-96976)
(22)【出願日】2015年5月12日
(11)【特許番号】特許第5952460号(P5952460)
(45)【特許公報発行日】2016年7月13日
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】原田 了輔
(72)【発明者】
【氏名】重冨 利幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和治
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 俊一
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】青山 達貴
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝之
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H050AA03
4H050AB90
4H050WB11
4H050WB14
4K030AA11
4K030AA17
4K030BA01
4K030CA04
4K030FA10
4K030LA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温で成膜可能で、保管時や気化段階での十分な熱安定性を有するCVD用白金化合物の提供。
【解決手段】下式で表される2価の白金に、2つのイミンを含むジイミンと、アルキルアニオンとが配位した、蒸気圧が高く、分解温度が低いCVD用白金化合物。

[R〜RはH、C5以下のアルキル基、シアノ基等;アルキルアニオンR及びRは各々独立にC1〜3のアルキル基]
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蒸着法により白金薄膜又は白金化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、
次式で示される、2価の白金に、2つのイミンを含むジイミンと、アルキルアニオンとが配位した有機白金化合物からなる化学蒸着用原料。
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、イソシアノ基のいずれか1種であり、且つ、いずれも炭素数5以下である。R及びRは、それぞれ、炭素数1以上3以下のアルキル基である。)
【請求項2】
及びRは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれか1種である請求項1に記載の化学蒸着用原料。
【請求項3】
及びRは、それぞれ、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基のいずれか1種である請求項1又は請求項2に記載の化学蒸着用原料。
【請求項4】
及びRは、それぞれ、水素原子又はメチル基である請求項1〜3のいずれかに記載の化学蒸着用原料。
【請求項5】
〜Rは、全ての置換基の総炭素数が12以下である請求項1〜4のいずれかに記載の化学蒸着用原料。
【請求項6】
及びRは、それぞれ、メチル基、エチル基、n−プロピル基のいずれか1種である請求項1〜5のいずれかに記載された化学蒸着用原料。
【請求項7】
有機白金化合物からなる原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを基板表面に導入しつつ加熱する白金薄膜又は白金化合物薄膜の化学蒸着法において、
前記原料として請求項1〜請求項6のいずれかに記載された化学蒸着用原料を用いる化学蒸着法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD法、ALD法の化学蒸着法により白金薄膜又は白金化合物薄膜を製造するための、有機白金化合物からなる化学蒸着用原料に関する。詳しくは、適度な熱安定性を有しつつ、200℃程度の低温でも白金薄膜等を形成できる化学蒸着用原料に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路に組み込まれる電界効果トランジスタ(FET)の電極材料として、3次元構造を有する立体型Ni−Ptシリサイド電極が知られている。このNi−Ptシリサイド電極の製造にあっては、予め製造した立体構造を有するSiの上にPt薄膜及びNi薄膜を形成する際、CVD法等の化学蒸着法が利用されている。また、FETのゲート電極においても小型化・高性能化に際し、低温で成膜可能であるCVD法等の化学蒸着法が好適である。
【0003】
かかるCVD法により白金薄膜又は白金化合物薄膜を製造する原料としては、従来から多くの化合物が知られている。例えば、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)錯体(特許文献1)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV))錯体(特許文献2)等が挙げられる。これらCVD用原料の要求性能としては、一般に、蒸気圧が高く、かつ、分解温度が低いことにより、低温で成膜可能であることが挙げられる。
【化1】
【0004】
かかる要請のもと、低温でも熱分解しやすいCVD用原料を提供すべく、2価の白金にヘキサジエン(誘導体)及びアルキルアニオンが配位した化合物として、(1,5−ヘキサジエン)ジメチル白金(II)等が提案されている(特許文献3)。
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2001−504159号公報
【特許文献2】特開平11−292889号公報
【特許文献3】国際公開第2012/144455号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上説明した従来の原料は、CVD化合物に対する要求特性の一部を強化できるものの、すべての要求特性をバランスよく具備するものではなかった。例えば、特許文献1及び特許文献2の白金化合物は、高い熱安定性を有するものの、低温では成膜しにくい。特許文献3の白金化合物は、熱分解しやすく低温成膜性に優れるものの、保管時や成膜前の気化段階等において、稀に化合物が分解することがあり、熱安定性につき改善の余地があった。このように、成膜段階における低温成膜性と、保管時等の成膜段階前における熱安定性とは、一方を具備すると、他方が実現しにくく、両特性をバランスよく具備する化合物は提供しにくい傾向がある。
【0007】
このような背景のもと、本発明は、CVD化合物に対する要求特性をバランスよく具備する原料、すなわち、低温で成膜可能としつつ、気化段階では熱分解することなく、十分な熱安定性を有する化学蒸着用原料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、化学蒸着法により白金薄膜又は白金化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、次式で示される、2価の白金に、2つのイミンを含むジイミンと、アルキルアニオンとが配位した有機白金化合物からなる化学蒸着用原料に関する。
【化3】
(式中、R〜Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、イソシアノ基のいずれか1種であり、且つ、いずれも炭素数5以下である。R及びRは、それぞれ、炭素数1以上3以下のアルキル基である。)
【0009】
本発明に係る化学蒸着用原料は、以下に示すように、2価の白金の配位子として、ジイミン、及び、2つのアルキルアニオンを配位させた有機白金化合物からなる。本発明者等が、この原料に想到したのは、中心金属とそれに配位する配位子の各構成につき、以下の理由に基づくものである。
【化4】
【0010】
本発明において「ジイミン」は、炭素−窒素二重結合を持つ第二級アミン(イミン)を有し、炭素−炭素結合として2つの共役二重結合からなる共役ジエンを備える配位子をいう。以下に示すように、このように2つの第二級アミンを有する配位子は、中心金属とイミンの窒素が強く結合するため、窒素を有しないジエンよりも、錯体の熱安定性が高くなりやすい。また、ジイミンは、中心金属の種類と価数によって、共役系を有しないジアミン化合物よりも安定な錯体を形成できる。さらに、ジイミンは、分子量が小さく、沸点が低い傾向があり、分解後に蒸発しやすく、不純物として金属膜内に残留しにくい。このようなジイミンを配位子とする錯体は、蒸気圧が高くなりやすい。
【0011】
もう一方の配位子である2つのアルキルアニオンは、分子量を適宜に設定することで錯体の蒸気圧を高くすることができる。また、還元性雰囲気、水素ガス雰囲気中で成膜を実施し錯体を分解させることで沸点の低い炭化水素として放出される。このため、析出した金属膜内の残留不純物になりにくく、純粋な金属を放出させるための配位子として適している。
【0012】
そして、中心金属となる白金について、白金錯体の多くは2価又は4価の正電荷を持つ白金を中心金属とするものが安定であるが、本発明者等は、合成・精製・保存の過程における原料の取り扱いが容易であることも重要であることから適度な安定性を持つ2価の白金錯体が好ましいとする。以上の理由に基づき、本発明に係る原料は、2価の白金に配位子としてジイミンと、アルキルアニオンを配位させたものとしている。
【0013】
以上で述べた白金配位子について、好適な置換基等の詳細を説明する。
【0014】
ジイミンは、置換基R〜Rとして、それぞれ、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、イソシアノ基のいずれか1種であり、且つ、いずれも炭素数5以下であるものを備える。置換基として、炭素数5以下の比較的小さなアルキル基(又は水素原子等)を適用することにより、分子量の増加に伴う蒸気圧の低下を抑えられる。炭素数が大きすぎると蒸気圧が低下する傾向があり、炭素数6以上のアルキル基とすると、成膜時の蒸気量を確保し難くなり、白金錯体により低温成膜しにくくなる。
【0015】
置換基R〜Rの炭素数を全て合計した総炭素数は12以下であることが好ましい。各置換基につき比較的小さい炭素数であることに加え、総炭素数も小さいことにより、より蒸気圧の低下を抑制できる。置換基R〜Rの総炭素数は2〜10が好ましく、4〜8が特に好ましい。
【0016】
置換基R及びRとして、具体例には、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれか1種が好ましく、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。また、炭素数3以上のアルキル基を用いる場合、直鎖(n−)、分岐鎖(iso−、sec−、tert−)のいずれとしてもよい。特に好ましくは、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0017】
置換基R及びRの具体例としては、それぞれ、水素原子、炭素数3以下のアルキル基のいずれか1種が好ましい。アルキル基としてはメチル基が好適である。また、R及びRが、いずれも水素原子であることが特に好ましい。
【0018】
2つのアルキルアニオンである置換基R、Rとしては、それぞれ、メチル基、エチル基、プロピル基のいずれか1種を適用する。プロピル基は、直鎖(n−)のものが好適である。これらのアルキルアニオンは分子量が小さいために錯体を形成した際にも分子量の増加に伴う蒸気圧の低下を抑えることが可能である。また、アルキル基の炭素鎖が長くなるにつれて、白金錯体の安定性が減少する傾向にあり、長鎖アルキル基を配位子とすると錯体の合成・取り扱いが困難になる。アルキル基の中でも特に好ましいのはメチル基である。メチル基は、錯体分解後に沸点の低いメタン(沸点:−162℃)となるため、形成される金属薄膜中に不純物を残さずに放出できるからである。
【0019】
本発明の化学蒸着用原料について、具体的に好適である有機白金化合物の種類を以下に例示列挙する。
【化5】
【0020】
以上説明した本発明の化学蒸着用原料は、白金塩を出発原料として、ジイミンと、出発原料である白金塩とを添加して反応させることで製造可能である。尚、白金塩としては、例えば、(1,5−ヘキサジエン)ジメチル白金等を使用できる。
【0021】
本発明に係る化学蒸着用原料は、CVD法による白金薄膜形成に有用である。この薄膜形成方法は、有機白金化合物からなる原料を気化して反応ガスとし、前記反応ガスを基板表面に導入し、前記有機白金化合物を分解して白金を析出させるものであり、原料として本発明に係る化学蒸着用原料を用いるものである。
【0022】
白金形成時の反応雰囲気としては、還元性雰囲気が好ましい。本発明の原料は、特に還元性雰囲気において、良好な低温成膜性を示す傾向がある。また、還元性雰囲気とすると、FETの立体電極において、白金と共に形成されるニッケル薄膜について、その酸化を抑制することにもなる。還元性雰囲気としては、水素又はアンモニアを反応ガスとして導入するのが好ましく、水素が特に好ましい。
【0023】
本発明の目的は、成膜温度を低温側にすることである。この観点から、成膜反応のための加熱温度は、200℃〜350℃とするのが好ましい。200℃未満では、成膜反応が進行し難く必要な膜厚が得られ難いためである。また、350℃を超えると、立体化した電極へ均一な薄膜を形成し難くなるばかりかFET素子の性能を維持するのが困難となるからである。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る化学蒸着用原料の白金錯体は、蒸気圧が高く、分解温度が低いことから、低温で白金薄膜の製造が可能である。尚、本発明に係る原料は、CVD法以外にも、原子層堆積法(ALD法)等の化学蒸着法にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一実施形態における白金錯体のTG−DTA曲線。
図2】第一実施形態における白金薄膜の断面写真。
図3】第二実施形態における白金薄膜の断面写真。
図4】第三実施形態における白金錯体のTG曲線。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明における最良の実施形態について説明する。
【0027】
[第一実施形態]
本実施形態では、下記3種類の白金錯体を合成した。合成した白金錯体について物性を評価し、化学蒸着用原料として成膜試験を行った。
【化6】
【0028】
実施例1:化学蒸着用原料として、2つのイミンに2つのiso−プロピルが結合したジアザブタジエンと、アルキルアニオンとして2つのメチル基とを配位させた白金錯体(置換基R及びRは、いずれもiso−プロピル基、R及びRは、いずれも水素原子、R及びRは、いずれもメチル基である白金錯体:(N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン)ジメチル白金)を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化7】
【0029】
ヘキサン75mlを入れたフラスコに、N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン1.4g(10mmol)、(1,4−ヘキサジエン)ジメチル白金1.55g(5.0mmol)の順でそれぞれ加えた後、室温で18時間攪拌させた。反応終了後、濃縮して赤紫色固体を得た。得られた固体について昇華精製を行うことで目的物である(N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン)ジメチル白金1.45g(4.0mmol)を得た(収率79%、融点110℃)。
【0030】
実施例2:化学蒸着用原料として、2つのイミンに2つのsec−ブチルが結合したジアザブタジエンと、アルキルアニオンとして2つのメチル基とを配位させた白金錯体(置換基R及びRは、いずれもsec−ブチル基、R及びRは、いずれも水素原子、R及びRは、いずれもメチル基である白金錯体:(N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−ジアザブタジエン)ジメチル白金)を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化8】
【0031】
ヘキサン75mlを入れたフラスコに、N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−ジアザブタジエン1.7g(10mmol)、(1,4−ヘキサジエン)ジメチル白金1.55g(5.0mmol)の順でそれぞれ加えた後、室温で18時間攪拌させた。反応終了後、濃縮して赤紫色の液体を得た。得られた液体について蒸留精製を行うことで目的物である(N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−ジアザブタジエン)ジメチル白金1.77g(4.5mmol)を得た(収率89%)。
【0032】
実施例3:化学蒸着用原料として、2つのイミンに2つのiso−プロピルが結合したジアザブタジエンと、アルキルアニオンとしてメチル基及びn−プロピル基を1つずつ配位させた白金錯体(置換基R及びRは、いずれもiso−プロピル基、R及びRは、いずれも水素原子、Rはメチル基、Rはn−プロピル基である白金錯体:(N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン)(メチル)(プロピル)白金を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化9】
【0033】
ヘキサン75mlを入れたフラスコに、N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン1.4g(10mmol)、(1,5−シクロオクタジエン)(メチル)(プロピル)白金1.81g(5.0mmol)の順でそれぞれ加えた後、18時間還流させた。反応終了後、濃縮、精製して赤紫色液体の目的物である(N,N’−ジイソプロピル−1,4−ジアザブタジエン)(メチル)(プロピル)白金0.2g(0.5mmol)を得た(収率10%)。
【0034】
白金錯体の物性評価:実施例1、2の白金錯体について、TG−DTAによる物性評価を行った。分析は、BRUKER社製TG‐DTA2000SAにて、窒素雰囲気下、白金錯体試料(5mg)を昇温速度5℃/minにて、測定温度範囲の室温〜450℃加熱した際の試料の熱量及び重量変化を観察した。結果を図1(a)に示す。また、比較例として、共役ジエンを有しない、ジメチル(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)白金を用いて、上記と同様にTG−DTA分析した結果を示した(図1(b))。
【0035】
図1のDTAの結果から、ジイミンが配位した実施例1、2の錯体では、(a)より、160℃付近で、上に凸の発熱ピークの立ち上がりがみられた。これに対し、ジアミンが配位した錯体では、(b)より、125℃付近より発熱ピークの立ち上がりがみられた。この発熱ピークは、化合物の分解が生じたことを示唆している。よって、実施例1、2の錯体(ジイミン配位)は、ジアミンの配位した錯体よりも、分解温度が35℃程度高く、熱安定性が高かった。この点、比較例の化合物は、昇華実験(30Pa、110〜120℃)をすると、分解してしまい精製できないのに対し、実施例1の化合物は、分解することなく精製することができる。尚、昇華実験とTG−DTAの評価では、測定温度の昇温有無等の条件が異なるため、両者の結果には相違が生じる。
【0036】
成膜試験:次に、実施例1〜3の白金錯体を原料化合物とし、CVD法にて白金薄膜の成膜試験を行った。
【0037】
シリコン基板(15mm×15mm)に白金薄膜を成膜した。成膜装置は、ホットウォールタイプの熱CVD装置を用いた。反応ガス(水素)はマスフローコントローラーを用いて一定流量で流した。成膜条件は、次の通りである。また、薄膜の比抵抗の測定を四探針法により測定した。図2に、形成した白金薄膜のSEM観察結果を示す。
【0038】
基板:Si
成膜温度250℃
試料温度:105℃
成膜圧力:5torr
反応ガス(水素)流量:10sccm
成膜時間:10分
【0039】
以上の成膜試験の結果、実施例1〜3について、いずれの錯体を原料とした場合にも、白金薄膜を成膜することができ、形成した薄膜は表面が平滑で均一であった。実施例1で形成した白金薄膜について、膜厚及び比抵抗を測定したところ、Pt膜厚6.5nmで十分な膜厚であり、比抵抗も77.2μΩ・cmと低いものであった。さらに、図2のSEM写真によっても、表面が平滑で均一な白金薄膜の形成が確認できた。
【0040】
[第二実施形態]
本実施形態では、第一実施形態におけるSi基板上への成膜試験を、成膜温度200℃、225℃で行い、低温成膜性を評価した。その他の成膜条件は、第一実施形態と同様である。結果を下記表に示す。下記表には、第一実施形態の成膜結果を併せて示す。また、図3に形成した白金薄膜のSEM観察結果を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
図2のSEM写真より、成膜温度を200℃及び225℃として形成した白金薄膜も、表面が平滑で均一であった。また、上記表のとおり、成膜温度250℃で形成した場合と同程度のPt膜厚及び比抵抗であった。
【0043】
[第三実施形態]
本実施形態では、実施例に対し、ジメチル(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)白金を比較例として、熱安定性及び成膜特性を評価した。
【0044】
減圧TG測定(気化特性):BRUKER社製TG‐DTA2000SAにて、窒素雰囲気下、白金錯体試料(5mg)を圧力5torr、昇温速度5℃/minにて、測定温度範囲の室温〜450℃加熱して分析した。結果を図4に示す。
【0045】
TG測定の結果、図4より、ジアミンを有する比較例の錯体は、約15%の残渣が生じていたのに対し、ジイミンを有する実施例1の錯体は、気化開始温度が高いにもかかわらず、残渣は10%程度であり熱安定性が高く、昇華効率が高いことが示された。ジアミンを有する比較例の錯体は、蒸気圧が低く、昇温の過程で気化前に熱分解が生じたと考えられる。
【0046】
成膜試験:実施例及び比較例の白金錯体を化学蒸着用原料として、基板Si上に、成膜温度200℃で、Pt薄膜を形成した。比較例は、試料温度を110℃とした。その他の成膜条件は、第一実施形態と同様とした。
【0047】
成膜試験の結果、実施例1の錯体によれば、成膜温度200℃でも白金薄膜が形成できたのに対し、比較例の錯体は、サンプル気化時に化合物の分解が生じて成膜できなかった。
【0048】
以上より、実施例1の錯体は、白金薄膜の形成に好適な気化特性及び成膜特性を兼ね備えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る原料は、蒸気圧が高く、低温で高精度の白金薄膜を形成できるとともに、適度な熱安定性も有し、取扱い性に優れる。このため、立体構造への成膜に有効であり、電界効果トランジスタ(FET)の3次元構造を有する立体電極等に適用できる。

図1
図4
図2
図3