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特開2016-211040ターゲットアッセンブリ、スパッタリング装置並びにターゲット材の使用限界判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-211040(P2016-211040A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】ターゲットアッセンブリ、スパッタリング装置並びにターゲット材の使用限界判定方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20161118BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20161118BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20161118BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   C23C14/34 U
   C23C14/34 C
   H05H1/46 M
   H05H1/24
   H01L21/285 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-96191(P2015-96191)
(22)【出願日】2015年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】藤井 佳詞
(72)【発明者】
【氏名】中村 真也
【テーマコード(参考)】
2G084
4K029
4M104
【Fターム(参考)】
2G084AA04
2G084BB07
2G084BB37
2G084CC02
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC17
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD14
2G084FF22
2G084FF27
2G084FF32
2G084FF38
2G084HH07
2G084HH30
2G084HH42
2G084HH43
2G084HH54
2G084HH57
4K029CA05
4K029DA03
4K029DC21
4K029DC24
4K029DC25
4K029DC39
4M104BB14
4M104DD37
4M104DD39
4M104DD40
4M104HH20
(57)【要約】
【課題】異常放電の発生を確実に防止しつつ、ターゲットの使用限界を検出することが可能なターゲットアッセンブリ、スパッタリング装置及びターゲットの使用限界検出方法を提供する。
【解決手段】真空チャンバ1と、この真空チャンバ内に配置される、一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面2aとするターゲット材2とこのターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレート3とを有するターゲットアッセンブリTAと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備える本発明のスパッタリング装置SMは、ターゲット材とバッキングプレートとの界面に配置される窓材32と、ターゲット材の侵食に伴ってターゲット材から窓材を通して漏洩する光をバッキングプレートの外部にガイドする導光手段6と、導光手段に接続されて光量を検出する光センサ7と、検出手段で検出される光量からターゲット材の使用限界を判定する制御部Cとを更に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面とするターゲット材と、このターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレートとを備えるターゲットアッセンブリにおいて、
ターゲット材を通してバッキングプレート側に漏洩する光をこのバッキングプレートの外部にガイドする導光手段をバッキングプレートに設けることを特徴とするターゲットアッセンブリ。
【請求項2】
真空チャンバと、この真空チャンバ内に配置される、一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面とするターゲット材とこのターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレートとを有するターゲットアッセンブリと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備えるスパッタリング装置において、
ターゲット材とバッキングプレートとの界面に配置される窓材と、ターゲット材の侵食に伴ってターゲット材から窓材を通して漏洩する光をバッキングプレートの外部にガイドする導光手段と、導光手段に接続されて光量を検出する検出手段と、検出手段で検出される光量からターゲット材の使用限界を判定する判定手段とを更に備えることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項3】
前記窓材を通して漏洩する光はプラズマ光であることを特徴とする請求項2記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
スパッタリング装置に組み付けられるターゲット材の使用限界を判定する使用限界判定方法において、
真空チャンバ内にプラズマを発生させてターゲット材をスパッタリングし、ターゲット材とこのターゲット材に接合されるバッキングプレートとの界面に配置される窓材を通して漏洩する光の光量を検出する検出工程と、
検出工程で検出される光量が閾値を超えたときにターゲット材の使用限界を判定する判定工程を含むことを特徴とするターゲット材の使用限界判定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットアッセンブリ、ターゲットアッセンブリを備えるスパッタリング装置、及びターゲット材の使用限界判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板やシリコンウエハなどの処理対象物に生産性よく成膜するためにスパッタリング装置が一般に用いられている。このようなスパッタリング装置は、通常、真空チャンバと、この真空チャンバ内に配置される、一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面とする所定厚さのターゲット材とこのターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレートとを有するターゲットアッセンブリと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備えている。
【0003】
ここで、ターゲット材をスパッタリングして処理対象物に対して成膜すると、ターゲット材は侵食されていく。このとき、バッキングプレートの表面が局所的に露出するような状態までターゲット材がスパッタリングされると、異常放電が発生して良好な成膜を行うことができず、例えば成膜中の処理対象物が無駄になってしまう。他方、生産コストなどを考慮すれば、バッキングプレート表面の露出に伴う異常放電が発生する直前までターゲット材をスパッタリングし、その使用効率を高めることが望まれる。
【0004】
従来、ターゲット材の侵食領域に絶縁物層を設け、絶縁物層が露出した際に発生する異常放電を検知することでターゲット材の使用限界を検出する方法が特許文献1で知られている。然し、このものでも、異常放電が発生したときの処理対象物が無駄になってしまうという問題は解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−306369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、異常放電の発生を確実に防止しつつ、ターゲット材の使用限界を検出することが可能なターゲットアッセンブリ、スパッタリング装置及びターゲットの使用限界検出方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面とするターゲット材と、このターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレートとを備える本発明のターゲットアッセンブリは、ターゲット材を通してバッキングプレート側に漏洩する光をこのバッキングプレートの外部にガイドする導光手段をバッキングプレートに設けることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、当該ターゲットアッセンブリをスパッタリング装置に組み付けてターゲット材をスパッタリングする場合、ターゲット材の厚みが薄くなると、ターゲット材からバッキングプレート側に漏れ出す光の光量が増加する。このため、バッキングプレートの露出による異常放電が発生する前に、導光手段によりガイドされる光の光量から使用限界を判定できる。
【0009】
また、上記課題を解決するために、真空チャンバと、この真空チャンバ内に配置される、一方の面をスパッタリング時に侵食されるスパッタ面とするターゲット材とこのターゲット材の他方の面に接合されるバッキングプレートとを有するターゲットアッセンブリと、真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備える本発明のスパッタリング装置は、ターゲット材とバッキングプレートとの界面に配置される窓材と、ターゲット材の侵食に伴ってターゲット材から窓材を通して漏洩する光をバッキングプレートの外部にガイドする導光手段と、導光手段に接続されて光量を検出する検出手段と、検出手段で検出される光量からターゲット材の使用限界を判定する判定手段とを更に備えることを特徴とする
【0010】
本発明において、前記窓材を通して漏洩する光はプラズマ光であることが好ましい。これによれば、ターゲット材に対して投光する機構を別途設ける必要がなく、設備コストを抑えることができて有利である。
【0011】
スパッタリング装置に組み付けられるターゲット材の使用限界を判定する本発明の使用限界判定方法は、真空チャンバ内にプラズマを発生させてターゲット材をスパッタリングし、ターゲット材とこのターゲット材に接合されるバッキングプレートとの界面に配置される窓材を通して漏洩する光の光量を検出する検出工程と、検出工程で検出される光量が閾値を超えたときにターゲット材の使用限界を判定する判定工程を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態のスパッタリング装置の構成を示す模式図。
図2】本発明の実施形態の使用限界判定方法のルーチンを示すフローチャート。
図3】カソードアッセンブリの変形例を示す模式図。
図4】カソードアッセンブリの変形例を示す模式図。
図5】カソードアッセンブリの変形例を示す模式図。
図6】カソードアッセンブリの変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のカソードアッセンブリ及びスパッタリング装置について説明する。以下においては、図1を基準とし、真空チャンバ1の天井部側を「上」、その底部側を「下」として説明する。
【0014】
図1に示すように、スパッタリング装置SMは、処理室1aを画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の底部には、排気管を介してターボ分子ポンプやロータリーポンプなどからなる真空ポンプPが接続され、所定圧力(例えば1×10−5Pa)まで真空引きできるようにしている。真空チャンバ1の側壁には、図示省略のガス源に連通し、マスフローコントローラ11が介設されたガス管12が接続され、Arなどの希ガスからなるスパッタガスを処理室1a内に所定流量で導入できるようになっている。
【0015】
真空チャンバ1の天井部には、ターゲットアッセンブリTAが設けられている。ターゲットアッセンブリTAは、成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択されるTa、Ti等の金属またはAl等の絶縁物で作製されるターゲット材2と、ターゲット材2のスパッタ面2aと背向する面(上面)に図示省略のインジウムやスズ等のボンディング材を介して接合されるバッキングプレート3とを備える。ターゲット材2の外周端より外方に且つ水平に延出したバッキングプレート3の下側の延出部分31対向して、環状且つアース電位のシールド板4が設けられている。
【0016】
バッキングプレート3には、冷媒用通路31が形成され、この冷媒用通路31に冷媒(例えば、冷却水)を流すことで、スパッタリング時にターゲット材2を冷却出来るようになっている。ターゲット材2には、スパッタ電源Eとしての公知の構造を有する高周波電源からの出力が接続され、スパッタリング時、所定電力が投入され負の電位が発生する。なお、ターゲット材2の材質によっては、スパッタ電源Eとして公知の直流電源やパルス電源を採用してもよい。
【0017】
バッキングプレート3の上方には、図示省略の磁石ユニットが配置されており、磁石ユニットによりターゲット材2の下面(スパッタ面)の下方空間に磁場を発生させ、スパッタリング時にスパッタ面の下方で電離した電子等を捕捉してターゲット材2から飛散したスパッタ粒子を効率よくイオン化する公知の構造を有するものを用いることができるため、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0018】
バッキングプレート3の延出部分は、絶縁部材Iを介して真空チャンバ1上壁に取り付けられる。そして、シールド板4の外周縁部に設けられたフランジ部が、図示省略のビス等により真空チャンバ1上壁に固定されている。
【0019】
真空チャンバ1の底部には、ターゲット材2のスパッタ面2aに対向させてステージ5が配置され、基板Wがその成膜面を上側にして位置決め保持されるようにしている。
【0020】
このようにターゲットアッセンブリTAを真空チャンバ1に組み付け、ターゲット材2をスパッタリングして基板Wに成膜すると、ターゲット材2は侵食されていく。このとき、バッキングプレート3が局所的に露出すると、異常放電が発生して良好な成膜ができなくなる。
【0021】
本実施形態では、ターゲット材2を通してバッキングプレート3側にプラズマ光を漏洩させる窓材32をバッキングプレート3の冷媒用通路31が形成されていない中実部分に設け、この窓材32を通して漏洩する光をバッキングプレート3の外部にガイドする光ファイバ6と、光ファイバ6に接続されて光量を検出する光センサ7とを備える。光センサ7には制御部Cが接続され、光センサ7により検出される光量からターゲット材2の使用限界を判定する。制御部Cは、公知のマイクロコンピュータやシーケンサ等を備え、上記使用限界判定を行うほか、スパッタ電源Eの稼働、マスフローコントローラ11の稼働や真空ポンプPの稼働等を統括管理するようになっている。窓材32の材料は、ターゲット材2を透過する光の波長に応じて適宜選択することができ、例えば、可視光を透過させる場合には石英を用いることができる。なお、ターゲット材2の上面にボンディング材を介してバッキングプレート3を接合する場合、窓材32を通して漏洩する光をボンディング材が遮蔽しないように、窓材32が設けられる部分にマスク等の手段を用いてボンディング材が形成されないようにすることが好ましい。
【0022】
尚、光ファイバ6が本発明の「導光手段」に相当し、光センサ7が本発明の「検出手段」に相当し、制御手段Cが本発明の「判定手段」に相当する。また、真空ポンプP、スパッタ電源Eやマスフローコントローラ11が本発明の「プラズマ発生手段」に相当する。以下、図3を併せて参照して、上記スパッタリング装置SMを用いて成膜する際にターゲット材2の使用限界を判定する場合を例に、本実施形態のターゲット材の使用限界判定方法について説明する。
【0023】
先ず、真空チャンバ1内のステージ5に基板Wをセットした後、真空ポンプPを作動させて処理室1a内を所定の真空度(例えば、1×10−5Pa)まで真空引きする。処理室1a内が所定圧力に達すると、マスフローコントローラ11を制御してアルゴンガスを所定の流量で導入する(このとき、処理室1aの圧力が0.01〜30Paの範囲となる)。これと併せて、スパッタ電源EからTi製のターゲット材2に電力(例えば、10kW)を投入して真空チャンバ1内にプラズマを形成する。これにより、ターゲット材2のスパッタ面2aをスパッタリングし、飛散したスパッタ粒子を基板W表面に付着、堆積させることによりTi膜が成膜される。
【0024】
成膜中、制御手段Cにより図2に示すルーチンが実行される。このルーチンによれば、先ず、バッキングプレート3の窓材32から漏れ出す光の光量を光センサ7から取得し(ステップS1)、取得した光量が閾値よりも大きいか否かを判別する(ステップS2)。光量が閾値以下である場合には、ターゲット材2の厚みが厚く、ターゲット材2が使用限界に達していないと判断し、上記ステップS1に戻る。一方、上記ステップS2で光量が閾値よりも大きいと判別された場合には、すなわち、ターゲット材2の厚みが薄くなり、ターゲット材2からバッキングプレート3側に漏れ出す光の光量が閾値を超えた場合には、ターゲット材2が使用限界に達していると判定する(ステップS3)。この場合、ターゲット材2への電力投入を直ちに終了し、本ルーチンを終了する。なお、ステップS3で使用限界が判定された後、成膜処理を直ちに終了するのではなく、実行中の所定時間の成膜処理が終了した後に本ルーチンをしてもよい。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、ターゲット材2から漏れ出る光の光量からターゲット材2の使用限界を判定するため、バッキングプレート3が露出することを防止できる。このため、異常放電を確実に防止しつつ、ターゲット材2の使用限界を判定することができる。また、ターゲット材2から漏れ出す光をプラズマ光とすることで、ターゲット材2に投光する構成部品が不要となり、設備コストを抑制できて有利である。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、バッキングプレート3に窓材32を設けたものを例に説明したが、窓材32はターゲット材2とバッキングプレート3との界面に達していればよく、図3に示すように窓材32がターゲット材2に達していてもよい。また、上記実施形態では、ターゲットアッセンブリTAをターゲット材2とバッキングプレート3とで構成する場合を例に説明したが、図4に示すようにバッキングプレート3の上側に冷媒用通路31が形成されている場合にはバッキングプレート3の上面を覆うカバー33を設けるようにしてもよい。また、図5に示すように、窓材32と冷媒用通路31を接続し、冷媒用通路31に光ファイバ6を挿入することで、ターゲット材2から漏れ出る光をガイドするように構成してもよい。また、図6に示すように、ターゲット材2とバッキングプレート3とが同一材料で一体的に形成されていてもよく、この場合も、冷媒用通路31が形成されていない部分に窓材32を設ければ、冷媒用通路31が露出する前にターゲット材2の使用限界を判定することができる。
【0027】
また、上記実施形態では、導光手段として光ファイバ6を用いているが、導光手段はこれに限らず、ミラー等を用いて光をガイドするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
SM…スパッタリング装置、TA…ターゲットアッセンブリ、2…ターゲット材、2a…スパッタ面、32…窓材(導光手段)、6…光ファイバ(導光手段)、7…光センサ(検出手段)、C…制御部(判定手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6