特開2016-211049(P2016-211049A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-211049異種複核錯体からなる化学蒸着用原料及び該化学蒸着用原料を用いた化学蒸着法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-211049(P2016-211049A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】異種複核錯体からなる化学蒸着用原料及び該化学蒸着用原料を用いた化学蒸着法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/06 20060101AFI20161118BHJP
   C07F 19/00 20060101ALI20161118BHJP
   C07F 15/00 20060101ALI20161118BHJP
   C07F 13/00 20060101ALI20161118BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20161118BHJP
   C07F 17/00 20060101ALI20161118BHJP
   C07F 15/06 20060101ALI20161118BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   C23C16/06
   C07F19/00
   C07F15/00 A
   C07F13/00 A
   C07F15/02
   C07F17/00
   C07F15/06
   C23C16/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-96981(P2015-96981)
(22)【出願日】2015年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】特許業務法人田中・岡崎アンドアソシエイツ
(72)【発明者】
【氏名】原田 了輔
(72)【発明者】
【氏名】重冨 利幸
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 俊一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和治
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】青山 達貴
(72)【発明者】
【氏名】曽根 孝之
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H050AA03
4H050AB81
4H050AB93
4H050WB21
4K030AA11
4K030AA12
4K030BA01
4K030BA05
4K030BA06
4K030BA07
4K030BA14
4K030BA19
4K030CA04
4K030FA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温(200℃程度)で、一度の成膜で複合金属からなる薄膜形成が可能な化学蒸着原料を提供する。
【解決手段】中心金属である第1遷移金属及び第2の遷移金属に、シクロペンタジエニル及びカルボニルが配位した異種複核錯体からなる、下式で表される化学蒸着用原料を提供する。第1遷移金属(M)と第2の遷移金属(M)は相互に異なる。シクロペンタジエニル(L)は、1又は2であり、置換基R〜Rとして、各々独立にH又はC1〜5のアルキル基が配位する。

【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蒸着法により複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、
次式で示される、中心金属である第1の遷移金属(M)及び第2の遷移金属(M)に、シクロペンタジエニル(L)及びカルボニルが配位した異種複核錯体からなる化学蒸着用原料。
【化1】
(M及びMは、相互に異なる遷移金属。xは1以上2以下、yは1以上9以下であり、x、yはいずれも整数である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種である。)
【請求項2】
x=1、y=n+2であり、次式で示される異種複核錯体からなる請求項1に記載された化学蒸着用原料。
【化2】
(MはRu、Mn、Feのいずれか1種であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niのいずれか1種であり、MとMは異なる。nは3以上5以下である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種である。)
【請求項3】
遷移金属は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Ir、Ptのいずれかである請求項1に記載された化学蒸着用原料。
【請求項4】
はRu、Mn、Feのいずれか1種であり、MはMn、Fe、Co、Niのいずれか1種であり、MとMは異なる請求項1に記載された化学蒸着用原料。
【請求項5】
〜Rは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれか1種である請求項1〜4のいずれかに記載された化学蒸着用原料。
【請求項6】
〜Rは、全ての置換基の総炭素数が1以上4以下である請求項1〜5のいずれかに記載された化学蒸着用原料。
【請求項7】
異種複核錯体からなる原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを基板表面に導入しつつ加熱する複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜の化学蒸着法において、
前記原料として請求項1〜請求項6のいずれかに記載された化学蒸着用原料を用いる化学蒸着法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD法やALD法といった化学蒸着法により、種類の異なる金属からなる複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜を製造するための、異種複核錯体からなる化学蒸着用原料に関する。詳しくは、一度の成膜で複合金属からなる薄膜を形成可能であり、適度な熱安定性を有しつつ、低温(200℃程度)で成膜可能な化学蒸着用原料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の各種デバイスにおいて、デバイスの要求特性を満たすべく、各種の金属薄膜が用いられている。これら金属薄膜の形成方法としては、成膜速度が速く、デバイスの立体形状等にも追従し、均一且つ均質な膜を形成可能なCVD法等の化学蒸着法が利用されている。
【0003】
上記化学蒸着法で金属薄膜を形成する場合の原料である金属錯体としては、下記化1に示されるように、1つの金属を中心金属(核)として、シクロペンタジエニル等の配位子を複数備えてなる錯体(以下、単核錯体という。)が知られている。また、下記化2に示されるように、中心金属として、同一種類の金属を複数備えてなる錯体も知られている(以下、同種複核錯体という)。
【化1】
【化2】
【0004】
これら単核錯体や同種複核錯体を化学蒸着用原料とし、半導体等のデバイス用途の金属薄膜を形成するに際し、複数種類の金属からなる薄膜を適用することが多い。半導体等の小型化、軽量化したデバイスでは、各種要求特性を具備すべく、複数の金属薄膜を適用し、これらを積層させることで、要求特性を具備しつつ緻密化・高集積化を図っている。例えば、半導体の配線材料として銅を用いる場合、銅の拡散を防止するバリア層としてMnOやMnSiO等の薄膜とともに、バリア層を導入する下地であるルテニウム等の薄膜を、ともに積層した構造体が用いられている。
【0005】
これら複数の金属からなる薄膜を形成している例として、特許文献1や特許文献2等が挙げられる。特許文献1は、単核錯体等を複数用いて、順次、各錯体により金属薄膜を積層することで、単一金属からなる金属層を複数層形成するものである。特許文献2は、予め複数の単核錯体を混合し、溶解又は乳化した不活性液として、複数の金属を含む複合金属薄膜を形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−1568号公報
【特許文献2】特開2002−60944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、複数の錯体を用いて、順次、複数の薄膜を形成する場合、成膜に要する工程数が多く、条件設定の煩雑さや、原料の品質管理に手間を要し、複数の原料を用いる分コストも高い。また、特許文献2のように、予め複数の金属錯体を混合した場合、錯体同士の気化特性が異なるため、薄膜中の金属比率が変動しやすく、均質な膜形成が困難となる。また、成膜前に原料同士が反応し、変質を生じることもある。
【0008】
本発明は、上記のような背景のもとになされたものであり、簡易プロセスにより複数種類の金属薄膜を形成可能な化学蒸着用原料であり、均質な薄膜を形成することができるとともに、原料の品質管理も容易なものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する方策として、本発明者等は、従来のような金属種の異なる複数の錯体の適用に替えて、1つの錯体中に中心金属として複数種類の金属を備える錯体(以下、異種複核錯体という。)を合成し、化学蒸着用原料として適用すべく、以下のように検討を行った。
【0010】
異種複核錯体を化学蒸着用原料として適用する場合、その要求特性として、まず、化学蒸着法により金属薄膜を形成した際、中心金属とした複数種類の金属が、双方とも析出することである。複数金属の析出比率も、ほぼ一定であることが好ましい。また、化学蒸着法で薄膜を形成する際、低温で成膜可能な分解特性を有しつつ、気化段階では熱分解することなく、十分な熱安定性を有する、との化学蒸着用原料の一般的な要求特性も具備する必要がある。以上の特性を兼ね備えた錯体について、鋭意検討したところ、本発明者等は、下記の構成を備えた異種複核錯体からなる本発明の化学蒸着用原料に想到した。
【0011】
すなわち本発明は、化学蒸着法により複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、次式で示される、中心金属である第1の遷移金属(M)及び第2の遷移金属(M)に、シクロペンタジエニル(L)及びカルボニルが配位した異種複核錯体からなる化学蒸着用原料に関する。
【0012】
【化3】
(M及びMは、相互に異なる遷移金属。xは1以上2以下、yは1以上9以下であり、x、yはいずれも整数である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種である。)
【0013】
上記の通り、本発明における錯体は、錯体の中心金属として、第1遷移金属(M)及び第2遷移金属(M)という複数種類の遷移金属を備える異種複核錯体であり、これらの中心金属に、配位子として、シクロペンタジエニル(L)及びカルボニル(−CO)が配位してなる。かかる錯体は、化学蒸着法により薄膜を形成した場合、中心金属である複数の金属が双方とも析出する。
【0014】
また、本発明の錯体では、配位子であるシクロペンタジエニルは遷移金属との結合力が比較的強く、配位子であるカルボニルは、遷移金属との結合力が比較的弱いため、適度な熱安定性を具備する錯体となる。さらに、置換基R〜Rのアルキル基の炭素数の任意設計により、蒸気圧と融点の調整が可能となる。
【0015】
以下、本発明に係る化学蒸着用原料を構成する異種複核錯体について詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の原料において、シクロペンタジエニル(L)及びカルボニル(−CO)の数を示すx、yについて説明する。xは1以上2以下、yは1以上9以下であり、x、yはいずれも整数である。好ましくは、xは1以上2以下、yは2以上7以下である。
【0017】
以上のx、yとしてとり得る整数は、遷移金属の種類(価数)や、xの数等に応じた相関関係により、好適範囲が存在する。例えば、x及びyについて、x=1のときy=5〜7、x=2のときy=2〜4であることが好ましい。また、M又はMの少なくともいずれかがMn、Reのとき、y=3〜7が好ましく、M又はMの少なくともいずれかがCo、Rh、Irのときy=2〜6が好ましい。
【0018】
x、yとして、特に好適な組み合わせは、x=1、y=n+2であり、次式で示される異種複核錯体からなる化学蒸着用原料である。
【化4】
(MはRu、Mn、Feのいずれか1種であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niのいずれか1種であり、MとMは異なる。nは3以上5以下である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種である。)
【0019】
及びMは、相互に異なる遷移金属である。遷移金属としては、例えば、チタンTi、バナジウムV、クロムCr、マンガンMn、鉄Fe、コバルトCo、ニッケルNi、銅Cu、ニオブNb、モリブデンMo、ルテニウムRu、ロジウムRh、パラジウムPd、銀Ag、タンタルTa、タングステンW、レニウムRe、オスミウムOs、イリジウムIr、白金Pt、金Auが挙げられる。遷移金属は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Ir、Ptが好ましく、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、W、Ptが特に好ましい。Mとして特に好ましい遷移金属は、Ru、Mn、Feであり、Mとして特に好ましい遷移金属は、Mn、Fe、Co、Niである。
【0020】
次に、中心金属に配位する各配位子につき説明する。本発明の原料は、2種の遷移金属からなる中心金属に、シクロペンタジエニル(L)及びカルボニルが配位してなるものである。本発明者等が、この原料に想到したのは、中心金属とそれに配位する配位子の各構成につき、以下の理由に基づくものである。
【0021】
配位子である「シクロペンタジエニル(L)」は、カルボニルとともに遷移金属に配位した場合、分子量が小さく、化学蒸着用原料として、気化しやすい化合物になるとともに、成膜前の気化段階では熱分解しにくく安定的な気化を実現しやすいものとなる。
【0022】
ここで、各配位子と中心金属との分離しやすさを比較すると、カルボニル(−CO)の方がシクロペンタジエニル(L)よりも、中心金属と分離しやすい傾向がある。このため、化学蒸着法で複合金属薄膜を形成した場合において、薄膜中に析出する各遷移金属の析出量は、各遷移金属に配位する配位子の種類に左右されやすい。すなわち、2つの遷移金属のうち、配位子として、カルボニルが多く、シクロペンタジエニルが少ない遷移金属の方が、形成した複合金属薄膜中に多く析出しやすい傾向がある。例えば、本発明の好適例として挙げられる下記化合物の場合、シクロペンタジエニルが配位した第1の遷移金属Mよりも、カルボニルのみ配位した第2の遷移金属Mの方が、複合金属薄膜中に多く析出しやすい。
【化5】
(MはRu、Mn、Feのいずれか1種であり、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niのいずれか1種であり、MとMは異なる。nは3以上5以下である。R〜Rは、水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基である。)
【0023】
シクロペンタジエニルの置換基R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種であり、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基のいずれか1種が好ましい。炭素鎖が長くなりすぎると、錯体の蒸気圧が低下する傾向があり、炭素数5を超える長鎖アルキル基とすると、錯体の気化が困難になる。また、R〜Rは、全ての置換基の総炭素数が1以上4以下であることが好ましい。1つの置換基の炭素数の制限に加え、全ての置換基の総和についても制限することにより、錯体の熱安定性が、より維持しやすい。尚、置換基R〜Rとしては、直鎖又は分岐鎖いずれのアルキル基も適用できる。例えば、プロピル基又はブチル基を適用する場合、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、又はtert−ブチル基等を適用できる。
【0024】
本発明の錯体において、カルボニル(CO)の総数は、1以上9以下であり、第1遷移金属(M)の配位子として2又は3のカルボニルを有することが好ましい。他方、第2遷移金属(M)の配位子としてのカルボニルの配位数(n)は3以上5以下が好ましく、4又は5が特に好ましい。MがMn、Reであるときはn=5、MがCo、Rh、Irであるときはn=4が、特に好ましい。
【0025】
本発明の化学蒸着用原料について、具体的に好適である異種複核錯体の種類を以下に例示列挙する。
【化6】
【0026】
以上説明した本発明の化学蒸着用原料は、第1の遷移金属(M)を中心金属としたシクロペンタジエニル誘導体を出発原料として、第2の遷移金属(M)を中心金属として複数のカルボニルが配位した錯体と反応させることで製造可能である。
【0027】
本発明に係る化学蒸着用原料は、CVD法による複合金属薄膜の形成に有用である。この薄膜形成方法は、異種複核錯体からなる原料を気化して反応ガスとし、前記反応ガスを基板表面に導入し、前記錯体を分解して複数の金属を析出させるものであり、原料として本発明に係る異種複核錯体を用いるものである。
【0028】
薄膜形成時の反応雰囲気としては、還元性雰囲気が好ましく、このため水素又はアンモニアを反応ガスとして導入するのが好ましい。また、成膜時の加熱温度は、150℃〜350℃が好ましい。150℃未満では、成膜反応が進行し難く必要な膜厚が得られ難いためである。また、350℃を超えると、均一な薄膜を形成し難くなる。
【発明の効果】
【0029】
以上で説明したように、本発明に係る化学蒸着用原料によれば、単一原料により、複数の金属を含む複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜を形成できる。また、本発明の原料は、蒸気圧が高く、低温で薄膜の製造が可能であるとともに、適度な熱安定性も兼ね備えており、化学蒸着法による成膜に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施形態で製造した金属錯体のTG曲線。
図2】実施形態で成膜した金属薄膜の断面写真。
図3】実施形態で成膜した金属薄膜におけるRu/Mn比率。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明における最良の実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態では、下記5種類の錯体を合成した。合成した錯体について物性を評価し、化学蒸着用原料として成膜試験を行った。
【化7】
【0033】
実施例1:第1の遷移金属がルテニウム、第2の遷移金属がマンガンである異種複核錯体(ペンタカルボニル[ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム]マンガン(Mn−Ru))を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化8】
【0034】
テトラヒドロフラン250mlを入れたフラスコに、デカカルボニルジマンガン1.95g(5mmol)と金属ナトリウム0.23g(10mmol)を加えた。その溶液を室温で24時間攪拌させた後、テトラヒドロフラン250mlに溶解させたジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ヨードルテニウム3.49g(10mmol)を加え、55℃で加熱して18時間攪拌させた。反応終了後室温まで冷却し、濃縮して泥状の反応混合物を得た。ヘキサンで抽出を行い、シリカゲルを担体、ヘキサン:ジクロロメタンの混合溶媒を溶離液としたカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに昇華精製を行うことで目的物であるペンタカルボニル[ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ルテニウム]マンガン(Mn−Ru)2.94g(7.0mmol)を得た(収率70%)。
【0035】
実施例2:第1の遷移金属が鉄、第2の遷移金属がマンガンである異種複核錯体(ペンタカルボニル[ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)鉄]マンガン(Fe−Mn))を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化9】
【0036】
テトラヒドロフラン250mlを入れたフラスコに、デカカルボニルジマンガン1.95g(5mmol)と金属ナトリウム0.23g(10mmol)を加えた。その溶液を室温で24時間攪拌させた後、テトラヒドロフラン250mlに溶解させたジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ヨード鉄3.04g(10mmol)を加え、室温で2日間攪拌させた。反応終了後室温まで冷却し、濃縮して泥状の反応混合物を得た。ヘキサンで抽出を行い、シリカゲルを担体、ヘキサンを溶離液としたカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに昇華精製を行うことで目的物であるペンタカルボニル[ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)鉄]マンガン(Fe−Mn)1.86g(5.0mmol)を得た(収率50%)。
【0037】
実施例3:第1の遷移金属がルテニウム、第2の遷移金属がコバルトである異種複核錯体(ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)(テトラカルボニルコバルト)ルテニウム(Co−Ru))を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化10】
【0038】
テトラヒドロフラン250mlを入れたフラスコに、オクタカルボニルジコバルト1.71g(5mmol)と金属ナトリウム0.23g(10mmol)を加えた。その溶液を室温で24時間攪拌させた後、テトラヒドロフラン250mlに溶解させたジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ヨードルテニウム3.49g(10mmol)を加え、室温で18時間攪拌させた。反応終了後室温まで冷却し、濃縮して泥状の反応混合物を得た。ヘキサンで抽出を行い、アルミナを担体、ヘキサン:ジクロロメタンの混合溶媒を溶離液としたカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに昇華精製を行うことで目的物であるペンタカルボニルジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)(テトラカルボニルコバルト)ルテニウム(Co−Ru)2.56g(6.5mmol)を得た(収率65%)。
【0039】
実施例4:第1の遷移金属が鉄、第2の遷移金属がコバルトである異種複核錯体(ジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)(テトラカルボニルコバルト)鉄(Co−Fe))を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化11】
【0040】
テトラヒドロフラン250mlを入れたフラスコに、オクタカルボニルジコバルト1.71g(5mmol)と金属ナトリウム0.23g(10mmol)を加えた。その溶液を室温で24時間攪拌させた後、テトラヒドロフラン250mlに溶解させたジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)ヨード鉄3.04g(10mmol)を加え、室温で2日間攪拌させた。反応終了後室温まで冷却し、濃縮して泥状の反応混合物を得た。ヘキサンで抽出を行い、シリカゲルを担体、ヘキサンを溶離液としたカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに昇華精製を行うことで目的物であるジカルボニル(η−シクロペンタジエニル)(テトラカルボニルコバルト)鉄(Co−Fe)2.44g(7.0mmol)を得た(収率70%)。
【0041】
実施例5:置換基として1つのメチル基を有するシクロペンタジエニル誘導体を配位させた異種複核錯体(ペンタカルボニル[ジカルボニル(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム]マンガン(Mn−Ru))を製造した。合成反応式は、次の通りである。以下、製造工程について詳しく説明する。
【化12】
【0042】
テトラヒドロフラン250mlを入れたフラスコに、デカカルボニルジマンガン1.95g(5mmol)と金属ナトリウム0.23g(10mmol)を加えた。その溶液を室温で24時間攪拌させた後、テトラヒドロフラン250mlに溶解させたジカルボニル(η−メチルシクロペンタジエニル)ヨードルテニウム3.65g(10mmol)を加え、55℃で加熱して18時間攪拌させた。反応終了後室温まで冷却し、濃縮して泥状の反応混合物を得た。ヘキサンで抽出を行い、シリカゲルを担体、ヘキサン:ジクロロメタンの混合溶媒を溶離液としたカラムクロマトグラフィーで精製を行った。さらに昇華精製を行うことで目的物であるペンタカルボニル[ジカルボニル(η−メチルシクロペンタジエニル)ルテニウム]マンガン(Mn−Ru)2.59g(6.0mmol)を得た(収率60%)。
【0043】
異種複核錯体の物性評価:実施例1及び実施例5で製造した異種複核錯体について、TGによる物性評価を行った。分析は、BRUKER社製TG‐DTA2000SAにて、窒素雰囲気下、錯体試料(5mg)を昇温速度5℃/minにて、測定温度範囲の室温〜450℃加熱した際の試料の重量変化を観察した。結果を図1に示す。
【0044】
図1について、TGの結果より、実施例1及び実施例5の錯体は、約150℃程度の加熱で錯体の気化と分解が開始しており、分解温度が低く低温成膜可能であることが示された。さらに、約200℃付近まで昇温後は、重量減少が一定になっており、原料のほぼすべてが気化したことが示され、良好な気化特性を有していることが分かった。
【0045】
成膜試験:次に、実施例5で製造した錯体を原料化合物とし、CVD法にて複合金属薄膜の成膜試験を行った。
【0046】
金属薄膜は、シリコン基板上にテトラエトキシシラン(TEOS)を用いて酸化ケイ素膜を堆積させた基板(15mm×15mm)に成膜した。成膜装置は、ホットウォールタイプの熱CVD装置を用いた。反応ガス(水素)はマスフローコントローラーを用いて一定流量で流した。成膜条件は、次の通りである。図2に、金属薄膜の断面をSEM観察した結果を示す。
【0047】
基板:SiO
成膜温度250℃
試料温度:70℃
成膜圧力:5torr
反応ガス(水素)流量:10sccm
成膜時間:20分
【0048】
以上により形成された金属薄膜は、光沢のある銀白色であり、膜厚は74.9nmであった。また、図2より、SiO上に形成した金属薄膜は、表面が平滑かつ均一なものであった。
【0049】
/M比率:上記で形成した金属薄膜について、X線光電子分光(XPS)法により、金属元素の存在量として、Ru/Mn比率を分析した。測定装置には、(株)島津製作所製、KRATOS Axis Novaを用いた。この測定は、薄膜(膜厚74.9nm)について、表面付近からSiO膜との界面付近の手前まで、深さ方向に分析を行った。SiO膜との界面付近は、SiやOの影響により正確なRu/Mn比率を分析しにくいため、その影響が少ない範囲まで分析した。結果を図3に示す。図3の横軸は、上記の通り、薄膜表面からSiO膜との界面付近の手前までの、およそ膜厚(74.9nm)に相当する。
【0050】
図3より、上記金属薄膜中には、RuとMnの双方が析出していることが示された。Ru/Mn比率は、膜の深さによらず、約0.15〜0.2で一定であり、金属構成比率がほぼ一定の薄膜を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る原料は、化学蒸着法により単一の原料からの複合金属薄膜形成を実現することができ、薄膜の均質化や、原料の品質管理が容易となる。このため、半導体デバイスの銅拡散層等、複数の金属層を積層した構造を採用する用途に適用できる。

図1
図3
図2
【手続補正書】
【提出日】2016年9月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学蒸着法により複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜を製造するための化学蒸着用原料において、
化1で示される、中心金属である第1の遷移金属(M)にシクロペンタジエニル(L)及びカルボニルが配位し、中心金属である第2の遷移金属(M)にカルボニルが配位した異種複核錯体からなる化学蒸着用原料。
【化1】
(MはRuであり、MはMn、Coのいずれかである。nは3以上5以下である。R〜Rは、それぞれ、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基のいずれか1種である。)
【請求項2】
〜Rは、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基のいずれか1種である請求項1に記載された化学蒸着用原料。
【請求項3】
〜Rは、全ての置換基の総炭素数が1以上4以下である請求項1又は請求項2に記載された化学蒸着用原料。
【請求項4】
異種複核錯体からなる原料を気化して原料ガスとし、前記原料ガスを基板表面に導入しつつ加熱する複合金属薄膜又は複合金属化合物薄膜の化学蒸着法において、
前記原料として請求項1〜請求項3のいずれかに記載された化学蒸着用原料を用いる化学蒸着法。