(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-212427(P2016-212427A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】光ファイバ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20161118BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20161118BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
G02B6/26
H01S3/067
G02B6/036
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-137352(P2016-137352)
(22)【出願日】2016年7月12日
(62)【分割の表示】特願2014-172809(P2014-172809)の分割
【原出願日】2014年8月27日
(71)【出願人】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】村上 政直
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】服部 聡史
(72)【発明者】
【氏名】林 尚久
(72)【発明者】
【氏名】清水 政二
(72)【発明者】
【氏名】時田 茂樹
【テーマコード(参考)】
2H137
2H150
5F172
【Fターム(参考)】
2H137AA13
2H137AB01
2H137AB06
2H137BA02
2H137BA04
2H137BA07
2H137BA20
2H137BB02
2H137BC02
2H137BC51
2H137CA12A
2H137CA26A
2H137CC01
2H137CC02
2H137CC03
2H137CC11
2H137DB11
2H137DB12
2H137HA05
2H150AB10
2H150AB32
2H150AD03
2H150AH33
5F172AE15
5F172AF03
5F172AM08
5F172DD02
5F172EE13
5F172NN06
5F172NQ49
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光ファイバの側面に別の光ファイバを接合した構成の光ファイバ装置において、接合部が高温になるのを抑える。
【解決手段】光ファイバ装置1は、第1フッ化物ファイバ3と、第2フッ化物ファイバ4と、サファイア6と、を備えている。第1フッ化物ファイバ3は、コアと、第1クラッドと、第1クラッドより小さい屈折率を有し紫外線硬化樹脂により形成された第2クラッドと、を有し、光を導光する。第2フッ化物ファイバ4は、第1端から光が入射又は出射されるとともに、第2端の端面が第1フッ化物ファイバ3の側面に斜めに接合されている。サファイア6は、第1フッ化物ファイバ3と第2フッ化物ファイバ4との接合部の全周を覆うように配置され、熱伝導性が第1及び第2ファイバ3,4と同等又はより高くかつファイバで導光される光に対して光透過性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと、前記コアの外周面を覆う第1クラッドと、前記第1クラッドより小さい屈折率を有し前記第1クラッドの外周面を覆う紫外線硬化樹脂により形成された第2クラッドと、を有し、光を導光する第1ファイバと、
第1端から光が入射又は出射されるとともに、第2端の端面が前記第1ファイバの側面に斜めに接合された第2ファイバと、
前記第1ファイバと前記第2ファイバとの接合部の全周を覆うように配置され、熱伝導性が前記第1及び第2ファイバと同等又はより高くかつ前記第1ファイバ及び前記第2ファイバで導光される前記光に対して光透過性を有するサファイアと、
を備えた光ファイバ装置。
【請求項2】
前記第1ファイバの少なくとも一端に接続され、レーザ活性物質が添加されたコアを有する第3ファイバをさらに備え、
前記第2ファイバには前記レーザ活性物質に対応する励起光が入射される、
請求項1に記載の光ファイバ装置。
【請求項3】
前記サファイアは、前記第1ファイバと前記第2ファイバとの接合部とともに、前記第1ファイバと前記第3ファイバとの接合部を覆っている、請求項2に記載の光ファイバ装置。
【請求項4】
前記サファイアは、前記第1ファイバと前記第2ファイバとの接合部を挟むようにして配置された第1放熱板及び第2放熱板を有する、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバ装置。
【請求項5】
前記第2ファイバは前記第1ファイバの側面に融着により接合されており、
前記第1ファイバの第2クラッドは、前記第2ファイバを前記第1ファイバに融着した後に形成されるものである、
請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバ装置。
【請求項6】
前記第1ファイバ及び前記第2ファイバは、フッ化物ファイバである、請求項1から5のいずれかに記載の光ファイバ装置。
【請求項7】
前記第1ファイバ及び前記第2ファイバは、ZBLANガラスにより形成されている、請求項6に記載の光ファイバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ活性物質を添加したファイバ(アクティブファイバ)が、レーザ発振器や光増幅器に用いられている。例えばフッ化物製のアクティブファイバを利用したレーザ発振器や光増幅器では、レーザ発振させるために、励起光がファイバ端面から導入される。励起光がアクティブファイバに導光されると、励起光はレーザ活性物質が添加されたコア部分で吸収され、これにより出力光が発光される。このとき、励起光がコアに吸収されることにより、コアが発熱する。
【0003】
特に、フッ化物ファイバは、一般的な石英製ファイバと比較して耐熱性に乏しいため、励起光が強い場合、発熱によって変形あるいは損傷が生じ、レーザ発振や増幅ができなくなる。このため、ファイバ端面から励起光を導入する構成では、レーザ出力が制限される。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるような光結合器を利用することが考えられる。特許文献1の装置は、利得ファイバと、利得ファイバの側面に接続された励起光ファイバと、を有している。そして、励起光ファイバは、励起光源からの励起光を利得ファイバに導く。このように、利得ファイバの側面に励起光ファイバを接続した複数のユニットを接続してレーザ発振器を構成すれば、複数個所から励起光を導入することができる。このため、導入できる励起光のパワーを増加でき、利得ファイバの発熱を抑えつつ、レーザ出力を高くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−129940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、光ファイバの側面に他の光ファイバを接続する場合、接合部の界面において、光が漏れたり、乱反射によって光が散乱したりすることによって、接合部の近辺が高温になる場合がある。
【0007】
前述のように、特に、フッ化物ファイバは耐熱性が低いので、接合部近辺が高温になると、ファイバが損傷するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、光ファイバの側面に別の光ファイバを接合した構成の光ファイバ装置において、接合部が高温になるのを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る光ファイバ装置は、第1ファイバと、第2ファイバと、サファイアと、を備えている。第1ファイバは、コアと、コアの外周面を覆う第1クラッドと、第1クラッドより小さい屈折率を有し第1クラッドの外周面を覆う紫外線硬化樹脂により形成された第2クラッドと、を有し、光を導光する。第2ファイバは、第1端から光が入射又は出射されるとともに、第2端の端面が第1ファイバの側面に斜めに接合されている。サファイアは、第1ファイバと第2ファイバとの接合部の全周を覆うように配置され、熱伝導性が第1及び第2ファイバと同等又はより高くかつ第1ファイバ及び第2ファイバで導光される光に対して光透過性を有する。
【0010】
この装置を光結合器として使用した場合は、励起光源からの励起光は、第2ファイバを通して第1ファイバに導入される。このような第1ファイバ及び第2ファイバからなるユニットを複数接続することによって、複数個所から励起光を導入することができる。したがって、励起光の導入による発熱を抑えつつ、高出力のレーザ光を得ることができる。
【0011】
また、この装置を光分配器として使用することもでき、この場合は、第1ファイバ内で導光される光は分配されて、第2ファイバの第1端から出射される。
【0012】
このような構成において、2つのファイバの接合部には、接合部の全周を覆うようにサファイアが設けられている。このサファイアは、熱伝導性が良好で、しかも励起光に対して光透過性を有する。このため、2つのファイバの接合部近辺で発生した熱を放出することができ、しかもサファイアが励起光を吸収して発熱するのを抑えることができる。
【0013】
なお、ここで「励起光に対して光透過性を有する」とは、励起光の吸収率が1%以下の場合を意味し、励起光がほとんど吸収されずに透過するためサファイアが励起光を吸収してもファイバを損傷させるほどの発熱が生じない。例えば波長0.3〜4.0μmの励起光に対してはサファイアによって放熱することが可能である。
【0014】
本発明の別の側面に係る光ファイバ装置では、第1ファイバの少なくとも一端に接続され、レーザ活性物質が添加されたコアを有する第3ファイバをさらに備えている。そして、第2ファイバにはレーザ活性物質に対応する励起光が入射される。
【0015】
ここでは、第1ファイバに第3ファイバを接続することにより、第3ファイバ内に励起光を導くことができる。また、この場合は、第1ファイバのコアにはレーザ活性物質をドープする必要がないので、第1ファイバにおいて、励起光の吸収による発熱を避けることができる。
【0016】
本発明のさらに別の側面に係る光ファイバ装置では、サファイアは、第1ファイバと第2ファイバとの接合部とともに、第1ファイバと第3ファイバとの接合部を覆っている。
【0017】
第1ファイバの端面に第3ファイバを接合した構成では、これらの接合部の界面においても、第1ファイバと第2ファイバとの接合部界面と同様に発熱するおそれがある。
【0018】
そこで、この発明では、第1ファイバと第2ファイバとの接合部を覆うサファイアによって、第1ファイバと第3ファイバとの接合部をも覆うようにしている。これにより、各接合部で発生した熱を、1つの部材によって放出することができる。
【0019】
本発明のさらに別の側面に係る光ファイバ装置では、サファイアは、第1ファイバと第2ファイバとの接合部を挟むようにして配置された第1放熱板及び第2放熱板を有する。この場合は、サファイアの構成及び光ファイバ装置全体の製造が容易になる。
【0020】
本発明のさらに別の側面に係る光ファイバ装置では、第2ファイバは第1ファイバの側面に融着により接合されている。そして、第1ファイバの第2クラッドは、第2ファイバを第1ファイバに融着した後に形成されるものである。
【0021】
第1ファイバが第1クラッド及び第2クラッドを有するダブルクラッド構造の場合、一般的に第2クラッドは樹脂で形成される。樹脂製クラッドは耐熱性に乏しいために、第1ファイバに第2ファイバを融着により接合する際には、樹脂製の第2クラッドを除去する必要がある。
【0022】
そこで、この発明では、両ファイバを融着した後に、融着時に除去された第2クラッドを再度形成するようにしている。
【0023】
本発明のさらに別の側面に係る光ファイバ装置では、第1ファイバ及び第2ファイバはフッ化物ファイバである。
【0024】
本発明のさらに別の側面に係る光ファイバ装置では、第1ファイバ及び第2ファイバは、ZBLANガラスにより形成されている。
【発明の効果】
【0025】
以上のような本発明では、光ファイバの側面に別の光ファイバを接合した構成の光ファイバ装置において、接合部が高温になるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による光ファイバ装置の構成図。
【
図4】
図1の装置を接続して得られるレーザ発振器の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の一実施形態による光ファイバ装置を示している。光ファイバ装置1は、レーザ発振器を構成する1つのユニットであり、励起光源2と、第1フッ化物ファイバ3と、第2フッ化物ファイバ4と、第3フッ化物ファイバ5と、放熱部材6と、を有している。この光ファイバ装置1に、反射鏡及び出力鏡等を追加することによって、ファイバレーザ発振器を構成することができる。
【0028】
励起光源2は、レーザ活性物質を励起する波長の励起光を発振するものであり、例えば半導体レーザなどによって構成することができる。励起光源2にて発振された励起光は、第2フッ化物ファイバ4及び第1フッ化物ファイバ3を介して第3フッ化物ファイバ5に導入される。
【0029】
第1フッ化物ファイバ3は、ダブルクラッドファイバであり、
図2に示すように、コア30と、第1クラッド31と、第2クラッド32と、を有している。
図2は、放熱部材6及び第1フッ化物ファイバ3の一部を分解して示したものである。第1クラッド31はコア30の外周面を覆うように形成されている。第2クラッド32は第1クラッド31の外周面を覆うように形成されている。
【0030】
第1フッ化物ファイバ3のコア30は、レーザ活性物質がドープされていないフッ化物ガラスから形成されており、好ましくはZBLAN(ZrF
4-BaF
2-LaF
3-AlF
3-NaF)ガラスによって形成されている。コア30にレーザ活性物質がドープされていないことにより、このコア30においてレーザ光は生成されないが、励起光吸収による発熱を避けることができる。第1クラッド31は、フッ化物ガラスから形成されており、好ましくはZBLANガラスによって形成されている。第2クラッド32は、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂によって形成されている。第1クラッド31はコア30よりも屈折率が小さく、第2クラッド32は第1クラッド31よりも屈折率が小さい。また、第1クラッド31及び第2クラッド32には、レーザ活性物質がドープされていない。
【0031】
第2フッ化物ファイバ4は、マルチモードファイバであり、
図1に示すように、太い径のコア40と、コア40の外周面を覆うように形成された反射クラッド層41と、を有している。コア40及び反射クラッド層41はフッ化物ガラスから形成されており、好ましくはZBLANガラスによって形成されている。反射クラッド層41はコア40よりも屈折率が小さい。また、コア40の屈折率は、好ましくは第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31の屈折率以下とし、より好ましくは第1フッ化物ファイバ3の第1クラッドの屈折率と同じにする。
【0032】
第2フッ化物ファイバ4の一端には、励起光源2からの励起光がレンズ7を介して入射される。また、第2フッ化物ファイバ4の先端(第1フッ化物ファイバ3の側面に接続する側の端部)は、所定の角度を有するように斜めに研磨されている。なお、第2フッ化物ファイバ4を第1フッ化物ファイバ3の側面に接合する方法については後述する。
【0033】
第3フッ化物ファイバ5は第1フッ化物ファイバ3の一方の端面に融着されて接続されている。第3フッ化物ファイバ5は、ダブルクラッドファイバであり、第1フッ化物ファイバ3と同様に、コア50と、第1クラッド51と、第2クラッド(図示せず)と、を有する。第3フッ化物ファイバ5の第1フッ化物ファイバ3と異なる点は、コア50の具体的構成のみである。すなわち、第3フッ化物ファイバ5のコア50は、フッ化物ガラスから構成され、このフッ化物ガラスにはレーザ活性物質として希土類元素がドープされている。具体的には、コア50は、エルビウムがドープされたZBLANガラスによって形成されている。
【0034】
放熱部材6は、
図2及び
図3に示すように、第1放熱板61及び第2放熱板62を有している。第1及び第2放熱板61,62は同様の構成である。すなわち、第1及び第2放熱板61,62は、熱導電性が良好で、光透過性を有する矩形状のサファイアで形成されている。各放熱板61,62には、第1フッ化物ファイバ3、第2フッ化物ファイバ4、及びその接合部を含む部分を収納可能な半円形状の溝61a、62aが形成されている。そして、両放熱板61,62によって第1及び第2フッ化物ファイバ3,4の接合部を含む部分を挟み込み、両ファイバ3,4の接合部の全周及びその近傍の部分が、第1及び第2放熱板61,62によって覆われている。
【0035】
なお、図示していないが、第1及び第2放熱板61,62の両方又は一方には、ヒートシンクが接触して設けられている。
【0036】
以上のような構成の光ファイバ装置1では、励起光源2からの励起光はレンズ7を通して第2フッ化物ファイバ4に入射される。第2フッ化物ファイバ4は、コア40内で励起光を導光し、接合部を介して第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31に励起光を導入することができる。このとき、コア40の屈折率を第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31の屈折率以下にしておくことにより、コア40と第1クラッド31との界面における励起光の反射が抑制できる。
【0037】
第1フッ化物ファイバ3及び第3フッ化物ファイバ5は、それぞれ第1クラッド31,51で励起光を導光する。そして、第3フッ化物ファイバ5では、励起光は第1クラッド51を導光されながらコア50のレーザ活性物質を励起し、レーザ活性物質からレーザ光が放出される。レーザ活性物質をエルビウムとし、波長975nmの励起光を導入した場合、波長約2.8μmのレーザ光が得られる。レーザ活性物質から放出されたレーザ光は、第3フッ化物ファイバ5のコア50及び第1フッ化物ファイバ3のコア30内で導光される。
【0038】
[接合方法]
第1フッ化物ファイバ3の側面に第2フッ化物ファイバ4を接合する方法について説明する。
【0039】
まず、第1フッ化物ファイバ3の接合部を含む一部の第2クラッド32を除去する。これは、第2クラッド32は樹脂製であって耐熱性に乏しく、融着の際に損傷するからである。一方で、第2フッ化物ファイバ4の先端面を斜めに研磨する。このとき、第2フッ化物ファイバ4の表面に保護用の樹脂層が形成されている場合は、第1フッ化物ファイバ3と接合する先端部の樹脂層を除去する。そして、第2フッ化物ファイバ4の先端を第1フッ化物ファイバ3の側面に押し当て、例えばレーザ光を照射することによって両者を融着する。
【0040】
以上のようにして第1フッ化物ファイバ3及び第2フッ化物ファイバ4を融着した後に、第1フッ化物ファイバ3の第2クラッド32を除去した部分に、再度樹脂製の第2クラッド32を形成する。
【0041】
この第2クラッド32は、紫外線硬化樹脂又は熱硬化性樹脂で形成されている。紫外線硬化樹脂の場合は、第1及び第2放熱板61,62の溝61a,62a又は第1及び第2フッ化物ファイバ3,4の両放熱板61,62で覆われる部分に紫外線硬化樹脂を塗布した状態で、両放熱板61,62で第1及び第2フッ化物ファイバ3,4を挟み込み、透明のサファイア(放熱部材6を通して)の外部から紫外線を照射して硬化し、接着することができる。また、熱硬化性樹脂の場合は、熱伝導性の良好な放熱部材6を介して加熱することによって樹脂を硬化させ、接着することができる。
【0042】
以上のようにして第1フッ化物ファイバ3に第2フッ化物ファイバ4を融着し、また第1フッ化物ファイバ3に樹脂製の第2クラッド32を形成すると、融着部分での欠陥や樹脂の経時変化による剥がれ等によって、励起光散乱が起こり、発熱する。しかし、接合部分は放熱部材6によって覆われているために、接合部が高温になるのを抑えることができる。また、第1フッ化物ファイバ3と第2フッ化物ファイバ4の接合部が放熱部材6によって補強される。
【0043】
以上のようにして得られた光ファイバ装置1を、
図4に示すように、複数個直列に接続し、一端側に反射鏡10を、他端側にレンズ11及び出力鏡12を配置することによって、レーザ発振器を構成することができる。ここでは、励起光を、ファイバの端面以外の複数個所から導入することができるため、ZBLANファイバが熱損傷しない範囲で、出力の高いレーザ発振器を得ることができる。
【0044】
[参考例]
前記実施形態では、第1フッ化物ファイバ3において、接合部の樹脂製第2クラッド32を除去し、接合後に再度第2クラッドを形成するようにした。しかし、この例では、第1フッ化物ファイバ3と第2フッ化物ファイバ4とを接合した後に、第1フッ化物ファイバ3の第1及び第2放熱板で覆われた部分に第2クラッドを形成していない。
【0045】
第1フッ化物ファイバ3の第2クラッド32を除去すると、励起光が第1フッ化物ファイバ3から外側に漏れ出すために、励起光の導入効率が悪くなる。また、漏れ出した励起光が周囲の部材やホコリ等に照射されると発熱する。
【0046】
そこで、両フッ化物ファイバ3,4の接合後に第2クラッドを形成しない場合は、第2クラッドが除去された接合部及びその近傍を、第1クラッド31より屈折率が小さい部材で覆って、励起光を外部に漏らさないようにする必要がある。
【0047】
これを実現するために、この例では、第1及び第2放熱板を、ZBLANよりも屈折率の小さいCaF
2基板によって形成している。ここでは、両放熱板が第1フッ化物ファイバの第2クラッドとして機能し、励起光をファイバ内で導光させることができる。また、第1及び第2放熱板を励起光に対して透過性を有する部材で形成することにより、励起光の散乱光がファイバ外に放出されたとしても、両放熱板は散乱光を吸収せず、発熱を避けることができる。CaF
2は、透過可能な光の波長の範囲がZBLANよりも広いので、ZBLANファイバで導光可能な光に対して透過性を有する。さらに、CaF
2基板は、ZBLANや樹脂クラッドよりも熱伝導率が高いために、CaF
2基板にヒートシンクを装着することで、効果的に冷却することができる。
【0048】
なお、この例では、第1フッ化物ファイバ3と放熱部材とを融着し、両者を隙間なく接合することにより、放熱効率がさらに良好になる。この場合、第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31を第1放熱板及び第2放熱板によって挟んだ状態において、第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31を加熱することにより、第1フッ化物ファイバ3と第1放熱板及び第2放熱板とを融着できる。例えば、放熱部材を介して、第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31をヒータやレーザ照射などによって加熱する。このときの加熱温度は、第1フッ化物ファイバ3の第1クラッド31の軟化点以上となる程度とすることが好ましく、結晶化開始温度未満となる程度とするのが好ましい。また、第1フッ化物ファイバ3と放熱部材とを融着する際に、同時に第2フッ化物ファイバ4の第1放熱板及び第2放熱板で覆われる部分を放熱部材と融着することとしてもよい。
【0049】
なお、この例の第1及び第2放熱板は、材質が異なるだけで、他の構成は前記の実施形態と同様である。
【0050】
この例によっても、前記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0052】
(a)本発明では、放熱部材をサファイアで形成したが、熱伝導性がファイバと同等かそれ以上で、励起光に対して光透過性を有する材質であれば、放熱部材として使用することができる。
【0053】
(b)参考例において、励起光を外部に漏らさないために、第1及び第2放熱板を屈折率が小さいCaF
2基板で形成したが、励起光を外部に漏らさないための構成はこれに限定されない。例えば、ファイバ側面に反射層をコーティングしてもよい。
【0054】
(c)前記実施形態では、第1フッ化物ファイバとして、レーザ活性物質がドープされていないZBLANファイバを用いたが、レーザ活性物質がドープされたZBLANファイバを用いてもよい。この場合は、第3フッ化物ファイバが不要になる。
【0055】
また、第1フッ化物ファイバ及び第3フッ化物ファイバの両方を、レーザ活性物質がドープされたファイバにする場合は、両ファイバを融着する必要がない。
【0056】
(d)放熱部材は、第1フッ化物ファイバ3と第2フッ化物ファイバ4の接合部だけではなく、
図5に示す放熱部材6’のように、第1フッ化物ファイバ3と第3フッ化物ファイバ5との接合部をも覆うように形成してもよい。この場合は、1つの放熱部材6’で2つの接合部に発生した熱を放出することができる。
【0057】
(e)前記実施形態では、本発明をレーザ発振器として利用したが、他の装置にも適用することができる。
【0058】
(f)前記実施形態では、本発明の第2ファイバとして、コアを有する第2フッ化物ファイバを用いたが、第2ファイバとしては、コアのない第2フッ化物ファイバを用いてもよい。
【0059】
(g)本発明は、第1及び第3フッ化物ファイバ内で導光される光を第2フッ化物ファイバに分配して出射する光分配器として使用することもできる。
【0060】
(h)前記実施形態では、断面が円形のファイバを例にとって説明したが、断面が矩形のファイバを用いてもよい。この場合は、第1ファイバへの第2ファイバの接合が容易になる。
【0061】
(i)前記実施形態では、レーザ活性物質をエルビウムとして説明したが、ツリウムやホルミウムなど他のレーザ活性物質を用いることとしてもよい。レーザ活性物質と励起光の波長の組み合わせにより、さまざまな波長のレーザ光を発生させることができる。
【0062】
(j)前記実施形態では、第1フッ化物ファイバ3と第2フッ化物ファイバ4とを融着して接合することとしたが、接着剤等、他の方法を用いて接合することとしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 光ファイバ装置
2 励起光源
3 第1フッ化物ファイバ
30 コア
31 第1クラッド
32 第2クラッド
4 第2フッ化物ファイバ
5 第3フッ化物ファイバ
6,6’ 放熱部材
61 第1放熱板
62 第2放熱板