【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1 ポリスチレン内包シリカ中空粒子−1
1.512gのTween85をヘキサンに溶かして液総量72mLとした溶液に、水ガラス3号29.88gにイオン交換水を加えて液総量36mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(IKA・T25T、ジェネレータS25N−25F)を用いて回転数3200rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2M塩化アンモニウム水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールで洗浄後、自然乾燥した。
【0023】
上記の方法で合成したシリカ中空粒子1.02gに、0.5%のAIBNを含んだスチレンモノマー2.58gを一晩冷蔵庫中で含浸させた。その後、シリカ中空粒子上部に浸かっていないスチレンモノマー(約1.44g)を取り除き、窒素雰囲気下80℃に3時間加熱して重合させた。重合終了後、1Lのトルエンを加え、一晩静置した。ろ別後、シクロヘキサン100mLで洗浄した。この作業をもう一度繰り返した後、60℃で乾燥した。こうして得られたポリスチレン内包シリカマイクロカプセルの赤外線スペクトルは
図3のように、重合直後と上記のトルエン・シクロヘキサン洗浄後の赤外線スペクトルとでは、800cm
-1のシリカ由来の吸収と共にポリスチレン由来の700cm
-1の吸収が観測され、その強度に変化はなかった。すなわち、シリカ中空粒子内で重合したポリスチレンは、シリカ中空粒子殻中の細孔サイズより大きくなったため、細孔外部へ放出されなくなったものと考えられる。この試料の熱分析測定より、200から600℃までの重量減少は20%であり、このシリカ中空粒子材料中のポリスチレンの含有量は約20%である。
【0024】
実施例2 ポリスチレン内包シリカ中空粒子−2
1.512gのTween85をヘキサンに溶かして液総量72mLとした溶液に、水ガラス3号29.88gにイオン交換水を加えて液総量36mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(IKA・T25T、ジェネレータS25N−25F)を用いて回転数3200rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2M炭酸水素アンモニウム水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールで洗浄後、自然乾燥した。
【0025】
上記の方法で合成したシリカ中空粒子1.01gに、0.5%のAIBNを含んだスチレンモノマー5.25gを一晩冷蔵庫中で含浸させた。その後、窒素雰囲気下80℃に3時間加熱して重合させた。重合終了後、1Lのトルエンを加え、一晩静置した。ろ別後、シクロヘキサン100mLで洗浄した。この作業をもう一度繰り返した後、60℃で乾燥した。この試料の重合直後と上記のトルエン・シクロヘキサン洗浄後の赤外線スペクトルとでは、800cm
-1のシリカ由来の吸収と比べポリスチレン由来の700cm
-1の吸収が洗浄後に減少していることが観測された。すなわち、シリカ中空粒子内で重合したポリスチレンはサイズは大きくなったが、シリカ中空粒子殻中の細孔よりも小さいために細孔外部へ放出されたものと考えられる。この洗浄後の試料の熱分析測定より、200から600℃までの重量減少は7%であり、このシリカマイクロカプセル材料中のポリスチレンの含有量は約7%である。
【0026】
実施例3 ポリスチレン内包シリカ中空粒子−3
1.512gのTween85をヘキサンに溶かして液総量72mLとした溶液に、水ガラス3号29.88gにイオン交換水を加えて液総量36mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(IKA・T25T、ジェネレータS25N−25F)を用いて回転数3200rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2Mの塩化アンモニウム90%と炭酸水素アンモニウム10%の混合水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールで洗浄後、自然乾燥した。
【0027】
上記の方法で合成したシリカ中空粒子1.02gに、0.5%のAIBNを含んだスチレンモノマー2.71gを一晩冷蔵庫中で含浸させた。その後、シリカ中空粒子上部に浸かっていないスチレンモノマー(約1.00g)を取り除き、窒素雰囲気下80℃に3時間加熱して重合させた。重合終了後、1Lのトルエンを加え、一晩静置した。ろ別後、シクロヘキサン100mLで洗浄した。この作業をもう一度繰り返した後、60℃で乾燥した。
【0028】
重合直後と上記のトルエン・シクロヘキサン洗浄後の赤外線スペクトルとでは、800cm
-1のシリカ由来の吸収と共にポリスチレン由来の700cm
-1の吸収が観測され、その強度に特段の変化はなかった。すなわち、この試料の場合も実施例1と同様に、シリカ中空粒子内で重合したポリスチレンは、シリカ中空粒子殻中の細孔サイズより大きくなったため、細孔外部へ放出されなくなったものと考えられる。この試料の熱分析測定より、200から600℃までの重量減少は25%であり、このシリカマイクロカプセル材料中のポリスチレンの含有量は約25%である。表1には、シリカ中空粒子の調製条件、殻中細孔サイズとポリスチレンの含有量の関係をまとめた。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例4 粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセル−1
4.536gのTween85をヘキサンに溶かして液総量72mLとした溶液に、水ガラス3号10.5g、塩化ナトリウム1.4gにイオン交換水で液総量20mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(ヒスコトロン、NS30U)を用いて回転数600〜700rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2M炭酸水素アンモニウム水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールを用い洗浄後、自然乾燥した。こうして得られたシリカナノ粒子で殻が構成されたシリカ中空粒子は、
図4に示すような形態である。窒素吸着法による細孔分布測定では、ピーク細孔径は約200nmであった。
【0031】
この中空粒子を16マイクロの篩を用いて、その上部に残った粒径16ミクロン以上の中空粒子に篩分けした。この中空粒子1gを二口フラスコに入れ、次いでメタクリル酸ラウリル5gを加え、一晩冷蔵庫中で十分に染みこませた。その後、窒素雰囲気下、120℃で約25時間加熱して重合させた。室温に放冷後、ヘキサン50mLで2回洗浄し、得られた粉体は自然乾燥した。こうして得られた中空粒子中の粘着性のあるポリメタクリル酸ラウリルの量は、熱分析での200〜600℃の重量減少の結果より、52.33%であった。
図5左に示す赤外線スペクトルより、このマイクロカプセルは粘着剤ポリマー由来の約1732cm
-1のカルボニルの吸収とシリカ由来の1090cm
-1を持ち、シリカ中空粒子と粘着剤ポリマーの複合体であることがわかった。また、
図5右の電子顕微鏡像より、一部は壊れているものの、球状粒子が維持されていることも確認できた。
【0032】
こうして得られた粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセルの粘着性能を、下記の方法により測定した。第一に、各サンプルのタックの発現性について評価を実施した。
(1)コピー用紙短冊(KB39N:コクヨ製、297mm×50mm、約1g)に上記の方法で作製した粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセルを3mgセットした。
(2)こうしてセットしたサンプルの上から同様のコピー用紙短冊を被せ、さらに接触面積が1cm
2の試験冶具(約200g)を3秒間置いて加圧し、被せた短冊を持ち上げることにより、低加重時のタックの発現を確認した。この際、下の短冊が同時に持ち上がれば「タック有」とみなすこととした。
(3)(2)と同様の試験体にて、錘(重さ約5kg)を、接触面積1cm
2の上に3秒間置いて加圧し、被せた短冊を持ち上げることにより、高加重時のタックの発現を確認した。上記手順で測定を実施した結果、200g加圧時はタックが発現しなかったが、5kg加圧時にはタックの発現が確認された。
【0033】
第二に、粘着力の測定を実施した。
(1)上記の方法で作製した粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセル0.1gを、規定のコピー用紙短冊(KB39N:コクヨ製、297mm×50mm、約1g)に塗布面積10mm幅×100cmとなる様に塗り広げた。
(2)こうしてセットしたサンプルの上から同様のコピー用紙短冊を被せ、その上から重量5kgのゴムローラーを50mm/secの速度で2往復転がして加圧した。
(3)加圧後、常態(温度23℃、湿度50%)で40分養生し、オートグラフ(AGS-X、島津製)を用いて、300mm/minの速度にて引き剥がし抵抗力を測定した。測定回数は5回にて実施し、測定チャートの最大凸点5点の平均値を測定値とした。
【0034】
サンプルの引き剥がし抵抗力は約0.3N/cmであった。以上の結果によって、シリカ中空粒子内で重合されたこの粘着剤エマルジョンは、低荷重では粘着性を持たないが、5kg以上の加圧によって潰されて内部の粘着剤がはみ出すことで粘着性が発現される粘着剤であることが確認された。
【0035】
実施例5 粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセル−2
2.016gのTween85をヘキサンに溶かして液総量96mLとした溶液に、水ガラス3号9.96gにイオン交換水で液総量12mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(ヒスコトロン、NS30U)を用いて回転数1000rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2M炭酸水素アンモニウム水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールで洗浄後、自然乾燥した。窒素吸着法による細孔分布測定では、ピーク細孔径は約12nmであった。
図6に、こうして得られたシリカ中空粒子の電子顕微鏡像を示す。
【0036】
この中空粒子を16マイクロの篩を用いて、その上部に残った粒径16ミクロン以上のシリカ中空粒子に篩分けした。この中空粒子0.7gを二口フラスコに入れ、次いでメタクリル酸ラウリル3.15g、メシチレン0.35g、AIBN3.5mgを加え、一晩冷蔵庫中で十分に染みこませた。その後、窒素雰囲気下、120℃で約25時間加熱して重合させた。室温に放冷後、ヘキサン50mLで2回洗浄し、得られた粉体は自然乾燥した。こうして得られた中空粒子中の粘着性のあるポリメタクリル酸ラウリルの量は、熱分析での200〜600℃の重量減少の結果より、52.43%であった。
図7左に示す赤外線スペクトルより、この微粒子(マイクロカプセル)は粘着剤ポリマー由来の約1732cm
-1のカルボニルの吸収とシリカ由来の1090cm
-1を持ち、シリカ中空粒子と粘着剤ポリマーの複合体であることがわかった。また、
図7右の電子顕微鏡像より、一部は壊れているものの、球状粒子が維持されていることも確認できた粒子、両者の複合体であることがわかる。
【0037】
この試料を実施例4と同様の方法で性能を測定したところ、200g加圧時はタックが発現せず、5kg加圧時にはタックの発現が確認された。また、5kg加圧時の粘着力は0.1N/cmであり、この粘着剤エマルジョンは、低荷重では粘着性を持たないが、5kg以上の加圧によって潰されて内部の粘着剤がはみ出すことで粘着性が発現される粘着剤であることが確認された。
【0038】
実施例6 粘着剤ポリマー内包シリカマイクロカプセル−3
3.024gのTween85をヘキサンに溶かして液総量144mLとした溶液に、水ガラス3号18.75g、塩化ナトリウム3.44gとイオン交換水で液総量36mLとした水溶液を加えて、ホモジナイザー(ヒスコトロン、NS30U)を用いて回転数800rpmで1分間W/Oエマルジョンを作った。このエマルジョンを、40℃に加熱した2M炭酸水素アンモニウム水溶液252mLに、400rpmで撹拌しながら加えた。そのまま10分撹拌の後、ろ別し、ロート上でエタノール洗浄後、1Lのイオン交換水で30分から1時間撹拌して洗浄し、その後にろ別した。この洗浄操作を計3回行った後、ろ別、ロート上で十分量のエタノールで洗浄後、自然乾燥した。
【0039】
この中空粒子を16マイクロの篩を用いて、その上部に残った粒径16ミクロン以上の中空粒子に篩分けした。この中空粒子1gを二口フラスコに入れ、次いでメタクリル酸ラウリル5gを加え、一晩冷蔵庫中で十分に染みこませた。その後、窒素雰囲気下、140℃で約23時間加熱して重合させた。室温に放冷後、ヘキサン50mLで2回洗浄し、得られた粉体は自然乾燥した。こうして得られた中空粒子中の粘着剤の量は、熱分析での200〜600℃の重量減少の結果より、48.09であった。
図8左に示す赤外線スペクトルより、この微粒子(マイクロカプセル)は粘着剤ポリマー由来の約1732cm
-1のカルボニルの吸収とシリカ由来の約1090cm
-1を持ち、シリカ中空粒子と粘着剤ポリマーの複合体であることがわかった。また、
図8右の電子顕微鏡像より、一部は壊れているものの、球状粒子が維持されていることも確認でき、粒子とポリメタクリル酸ラウリルの複合体であることがわかった。