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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-216863(P2016-216863A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ紡糸の製造方法、カーボンナノチューブ紡糸、カーボンナノチューブ分散液、およびカーボンナノチューブ分散液の評価方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 9/127 20060101AFI20161125BHJP
   C01B 31/02 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   D01F9/127
   C01B31/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-104842(P2015-104842)
(22)【出願日】2015年5月22日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】森本 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊也
(72)【発明者】
【氏名】向 健
(72)【発明者】
【氏名】安積 欣志
(72)【発明者】
【氏名】畠 賢治
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 毅
【テーマコード(参考)】
4G146
4L037
【Fターム(参考)】
4G146AA12
4G146AB06
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC16A
4G146AC16B
4G146AC20B
4G146AC23B
4G146AD17
4G146BA04
4G146CB05
4G146CB09
4G146CB10
4G146CB35
4L037CS03
4L037CS04
4L037FA02
4L037PA01
(57)【要約】
【課題】良好な特性を有するCNT紡糸が得られるCNT分散液か否かを、紡糸工程の前に予測する。
【解決手段】本発明のCNT分散液の評価方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液の評価方法であって、次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすか否かを測定する測定工程と、測定工程で、(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たした場合に、CNT分散液をCNT紡糸の原料として適していると判定する判定工程とを有する。(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。(3)CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ分散体を含有するカーボンナノチューブ分散液を紡糸してカーボンナノチューブ紡糸を製造するカーボンナノチューブ紡糸の製造方法であって、
ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmであるカーボンナノチューブ紡糸の製造方法。
【請求項2】
カーボンナノチューブ分散体を含有するカーボンナノチューブ分散液を紡糸してカーボンナノチューブ紡糸を製造するカーボンナノチューブ紡糸の製造方法であって、
ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有するカーボンナノチューブ紡糸の製造方法。
【請求項3】
カーボンナノチューブ分散体を含有するカーボンナノチューブ分散液を紡糸してカーボンナノチューブ紡糸を製造するカーボンナノチューブ紡糸の製造方法であって、
前記カーボンナノチューブ分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在するカーボンナノチューブ紡糸の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかにおいて、
前記カーボンナノチューブ分散液を水または有機溶剤に注入して凝集した凝集カーボンナノチューブ紡糸を作製する工程と、
前記凝集カーボンナノチューブ紡糸からカーボンナノチューブ紡糸を作製する工程と、
を備えるカーボンナノチューブ紡糸の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかのカーボンナノチューブ紡糸の製造方法によって製造したカーボンナノチューブ紡糸。
【請求項6】
次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすカーボンナノチューブ分散体を含有するカーボンナノチューブ分散液。
(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。
(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。
(3)前記カーボンナノチューブ分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【請求項7】
カーボンナノチューブ分散体を含有するカーボンナノチューブ分散液の評価方法であって、
次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすか否かを測定する測定工程と、
測定工程で、(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たした場合に、前記カーボンナノチューブ分散液をカーボンナノチューブ紡糸の原料として適していると判定する判定工程と、
を有するカーボンナノチューブ分散液の評価方法。
(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。
(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した前記カーボンナノチューブ分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。
(3)前記カーボンナノチューブ分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な特性を有するカーボンナノチューブ紡糸が製造できるカーボンナノチューブ分散液およびその評価方法、このカーボンナノチューブ分散液を用いたカーボンナノチューブ紡糸の製造方法、ならびにこの製造方法により得られるカーボンナノチューブ紡糸に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある)は、炭素原子が平面的に六角形状に配置されて構成された炭素シート、すなわち、グラファイトからなるシートが円筒状に閉じた構造を有する炭素構造体である。CNTの応用の一つとして、CNTを糸状に紡いだ繊維状材料が注目されている。CNTの紡糸方法として、合成したCNTから直接紡糸を行う方法(特許文献1)と、分散液から紡糸を行う液相法(特許文献2)が存在する。特許文献2には、界面活性剤を用いて水中に分散させたCNTをイソプロパノールに注入して凝集CNT紡糸を得た後、荷重をかけて乾燥させてCNT紡糸を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−535434号公報
【特許文献2】特開2012−126635号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T.Morimoto, S.-K.Joung, T.Saito, D.N.Futaba, K.Hata and T.Okazaki, ACS Nano, 8(10), 9897-9904 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
性能が良いCNT紡糸がCNT分散液から製造されているものの、これまではCNT分散液の紡糸の可否、およびCNT分散液から得られた紡糸の特性の優劣は、実際に紡糸するまでわからないという問題があった。そして、CNT分散液中のCNTの粒度またはCNT分散液の品質などの特性と、CNT分散液から得られるCNT紡糸の特性とを関連づける評価法が知られていなかった。CNT分散液中のCNT分散体の特性と、CNT分散液から得られるCNT紡糸の特性とを関連づける評価法を見出すことができれば、より特性の良いCNT紡糸を歩留まり良く製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、CNT分散液から良好な特性を有するCNT紡糸が製造できるか否かと、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散液中のCNT分散体のサイズとの間に明確な関連性があることを見出した。すなわち、CNT分散液中のCNT分散体の球形換算直径のサイズが25nm〜1.3μmおよびCNT分散液中のCNT分散体の粒径分布の極大値が30nm〜1μmの少なくとも一方を満たす場合に、このCNT分散液から良好な特性を有するCNT紡糸が製造できることを見出した。さらに、CNT分散体の有効長さを表す指標であるプラズモン共鳴による遠赤外(FIR)ピーク位置(非特許文献1)が300cm-1以下に観測された場合、このCNT分散液から良好な特性を有するCNT紡糸が製造できることを見出した。
【0007】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば以下の構成が提供される。
【0008】
本発明のCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造するCNT紡糸の製造方法であって、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。本発明の他のCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造するCNT紡糸の製造方法であって、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。
【0009】
本発明の他のCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造するCNT紡糸の製造方法であって、CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。本発明の各CNT紡糸の製造方法において、CNT分散液を水または有機溶剤に注入して凝集した凝集CNT紡糸を作製する工程と、凝集CNT紡糸からCNT紡糸を作製する工程と、を備えていてもよい。本発明のCNT紡糸は、上記の本発明の各CNT紡糸の製造方法によって製造したものである。
【0010】
本発明のCNT分散液は、次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たす。
(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。
(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。
(3)CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【0011】
本発明のCNT分散液の評価方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液の評価方法であって、
次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすか否かを測定する測定工程と、
測定工程で、(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たした場合に、CNT分散液をCNT紡糸の原料として適していると判定する判定工程と、
を有するCNT分散液の評価方法。
(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。
(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。
(3)CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な特性を有するCNT紡糸が得られるCNT分散液か否かが紡糸工程の前に予測できる。このため、従来行っていた紡糸可能性が低いCNT分散液についての紡糸作業が不要となり、紡糸の最適化工程の時間や労力等を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1のCNT分散液に含まれるCNT分散体の粒径(分散体サイズ)をディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したときの粒度分布。
図2】実施例1のCNT分散液に含まれるCNT分散体のプラズモン実効長をフーリエ変換赤外分光光度計で測定したときのプラズモン共鳴遠赤外スペクトル。
図3】実施例1の凝集CNT紡糸体の各画像で、(a)がeDIPS分散液A、(b)がeDIPS分散液B、(c)がeDIPS分散液C、(d)がeDIPS分散液D、(e)がeDIPS分散液E、(f)がeDIPS分散液Fからそれぞれ得られた凝集CNT紡糸体の画像。
図4】実施例2のCNT分散液に含まれるCNT分散体の粒径(分散体サイズ)をディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したときの粒度分布。
図5】実施例2のCNT分散液に含まれるCNT分散体のプラズモン実効長をフーリエ変換赤外分光光度計で測定したときのプラズモン共鳴遠赤外スペクトル。
図6】実施例2の凝集CNT紡糸体の各画像で、(a)がSG分散液A、(b)がSG分散液B、(c)がSG分散液C、(d)がSG分散液D、(e)がSG分散液Eからそれぞれ得られた凝集CNT紡糸体の画像。
図7】実施例3のCNT分散液に含まれるCNT分散体の粒径(分散体サイズ)をディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したときの粒度分布。
図8】実施例3の凝集CNT紡糸体の各画像で、(a)がVGCF-X分散液A、(b)がVGCF-X分散液Bからそれぞれ得られた凝集CNT紡糸体の画像。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のCNT紡糸の製造方法、CNT紡糸、CNT分散液、およびCNT分散液の評価方法について、実施形態と実施例に基づいて詳細に説明する。重複説明は適宜省略する。なお、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合には、この2つの数値も数値範囲に含まれるものとする。
【0015】
本発明の第一実施形態に係るCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造する方法で、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。すなわち、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定した球形換算サイズが25nm〜1.3μmであるCNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造する。本発明の第二実施形態に係るCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造する方法で、ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。本発明の第三実施形態に係るCNT紡糸の製造方法は、CNT分散体を含有するCNT分散液を紡糸してCNT紡糸を製造する方法で、CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。
【0016】
第一実施形態から第三実施形態のCNT紡糸の製造方法によれば、本発明の実施形態に係るCNT紡糸が得られる。本実施形態のCNT紡糸は良好な特性を有する。なお、第一実施形態から第三実施形態のCNT紡糸の製造方法の条件を重複して満たしてもよい。また、各実施形態のCNT紡糸の製造方法では、CNT分散液を水または有機溶剤に注入して凝集した凝集CNT紡糸を作製する工程と、凝集CNT紡糸からCNT紡糸を作製する工程とを備えている。
【0017】
本発明の実施形態に係るCNT分散液は、次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすCNT分散体を含有する。(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。(3)CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。本実施形態に係るCNT分散液を原料として用いれば、良好な特性を有するCNT紡糸が得られる。
【0018】
本発明の実施形態に係るCNT分散液の評価方法は、次の(1)〜(3)の条件のうち、少なくとも一つを満たすか否かを測定する測定工程と、測定工程で(1)〜(3)の条件のうち少なくとも一つを満たした場合に、このCNT分散液をCNT紡糸の原料として適していると判定する判定工程とを有する。(1)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズが25nm〜1.3μmである。(2)ディスク式頻度別遠心沈降装置で測定したCNT分散体の球形換算サイズの分布チャートが30nm〜1μmに極大値を有する。(3)CNT分散体のプラズモン遠赤外共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在する。本実施形態に係るCNT分散液の評価方法によれば、良好な特性を有するCNT紡糸の原料としてそのCNT分散液が適しているかどうかを紡糸前に予測できる。
【実施例1】
【0019】
eDIPS法により製造された単層カーボンナノチューブ(以下、「eDIPS」ということがある)50mgと、コール酸ナトリウム(以下、「SC」ということがある)450mgを、24.5gの水に加え、超音波撹拌装置を用いて30分間撹拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて表1に記載した時間超音波照射し、eDIPS分散液AからeDIPS分散液Dの4種類の実施例と、eDIPS分散液EおよびeDIPS分散液Fの2種類の比較例のeDIPS分散液を得た。
【0020】
【表1】
【0021】
また、この6種類のeDIPS分散液を、22,000rpmの回転数を有する密度勾配を用いたディスク式頻度別遠心沈降装置(CPS Instruments社製DC24000UHR)へ注入し(以下、「ディスク式頻度別遠心沈降装置」を「DCS」ということがある)、各eDIPS分散液に含まれるeDIPS分散体の球形換算サイズ(分散体サイズ)を測定した。その結果を図1に示す。図1の分散体サイズ分布チャートは、下から順にeDIPS分散液A〜Fのものである。図1に示すように、実施例の4種類のeDIPS分散液には、分散体サイズが25nm〜140nmと10nmのeDIPS分散体が含まれていた。一方、比較例の2種類のeDIPS分散液には、分散体サイズが10nmのeDIPS分散体が含まれていたが、25nm〜140nmのeDIPS分散体は含まれていなかった。分散体サイズが25nm〜1.3μmのeDIPS分散体が含まれているか否かと、分散体サイズ分布の極大値が30nm〜1μmに存在するか否かを表1に記載した。
【0022】
また、この6種類のeDIPS分散液をそれぞれシリコン基板上に滴下し乾燥させた後、フーリエ変換赤外分光光度計(以下、「FT-IR」ということがある)を用いて、eDIPSのプラズモン遠赤外共鳴(以下、「FIR共鳴」ということがある)により、eDIPSのプラズモン実効長を測定した。その結果を図2に示す。図2のFIR共鳴チャートは、下から順にeDIPS分散液A〜Fのものである。図2に示すように、実施例の4種類のeDIPS分散液中のeDIPSは200cm-1以下に光学濃度ピークがあった。一方、比較例の2種類のeDIPS分散液中のeDIPSは200cm-1以下に光学濃度ピークがなかった。分散体のFIR共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在するか否かを表1に記載した。
【0023】
また、内径1.25mmの注入ノズルを介して、この6種類のeDIPS分散液をイソプロピルアルコール(以下、「IPA」ということがある)中に注入して、凝集eDIPS紡糸体を作製した。IPAに注入した直後の凝集eDIPS紡糸体の写真を図3に示す。図3に示すように、実施例の4種類のeDIPS分散液から得られた凝集eDIPS紡糸体と比べて、比較例の2種類のeDIPS分散液から得られた凝集eDIPS紡糸体は、太く、直線性が低かった。
【0024】
つぎに、この6種類の凝集eDIPS紡糸体をIPA内で1日放置した後、IPAを水に置換して3日以上浸漬した。そして、水中から取り出した凝集eDIPS紡糸体の一端を治具で固定し、荷重をかけて乾燥し、eDIPS紡糸体を得た。得られた6種類のeDIPS紡糸体のヤング率、破断強度、および導電率を測定した。その結果を表2に示す。なお、eDIPS分散液A〜Fを用いて作製したeDIPS紡糸体を、それぞれeDIPSファイバーA〜Fと表記した。
【0025】
【表2】
【0026】
以上より、分散体サイズが25nm〜140nmの分散体を含み、FIR共鳴において200cm-1以下のピークを有する分散体を含む実施例の4種類のeDIPS分散液を用いて作製したeDIPSファイバーA〜Dは、優れた機械的特性および導電特性を有していた。一方、分散体サイズが25nm〜140nmの分散体を含まず、かつFIR共鳴において200cm-1以下のピークを有する分散体を含まない比較例の2種類のeDIPS分散液を用いて作製したeDIPSファイバーE,Fは、eDIPSファイバーA〜Dと比べて、機械的特性が劣り、導電性が低かった。
【実施例2】
【0027】
スーパーグロース法により製造された単層カーボンナノチューブ(以下、「SG」ということがある)70mgとSC450mgを24.48gの水に加え、超音波撹拌装置を用いて30分間撹拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて表3に記載した時間超音波照射し、SG分散液AからSG分散液Dの4種類の実施例と、SG分散液Eの1種類の比較例のSG分散液を得た。
【0028】
【表3】
【0029】
また、実施例1と同様にして、この5種類のSG分散液に含まれるSG分散体の球形換算サイズ(分散体サイズ)を測定した。その結果を図4に示す。図4の分散体サイズ分布チャートは、下から順にSG分散液A〜Eのものである。図4に示すように、実施例の4種類のSG分散液には、分散体サイズが40nm〜130nmと10nm〜20nmのSG分散体が含まれていた。一方、比較例のSG分散液には、分散体サイズが10nm〜20nmのSG分散体が含まれていたが、40nm〜130nmのSG分散体は含まれていなかった。分散体サイズが25nm〜1.3μmのSG分散体が含まれているか否かと、分散体サイズ分布の極大値が30nm〜1μmに存在するか否かを表3に記載した。
【0030】
また、この5種類のSG分散液をそれぞれシリコン基板上に滴下し乾燥させた後、FT-IRを用いて、SGのFIR共鳴により、SGのプラズモン実効長を測定した。その結果を図5に示す。図5のFIR共鳴チャートは、下から順にSG分散液A〜Eのものである。図5に示すように、実施例の4種類のSG分散液中のSGは300cm-1以下に光学濃度ピークがあった。一方、比較例のSG分散液中のSGは300cm-1以下に光学濃度ピークがなかった。分散体のFIR共鳴のピーク波長が300cm-1以下に存在するか否かを表3に記載した。
【0031】
また、内径1.25mmの注入ノズルを介して、この5種類のSG分散液をIPA中に注入して、凝集SG紡糸体を作製した。IPAに注入した直後の凝集SG紡糸体の写真を図6に示す。図6に示すように、実施例の4種類のSG分散液から得られた凝集SG紡糸体と比べて、比較例のSG分散液から得られた凝集SG紡糸体は、太く、直線性が低かった。
【0032】
つぎに、この5種類の凝集SG紡糸体をIPA内で1日放置した後、IPAを水に置換して3日以上浸漬した。そして、水中から取り出した凝集SG紡糸体の一端を治具で固定し、荷重をかけて乾燥し、SG紡糸体を得た。得られた5種類のSG紡糸体のヤング率、破断強度、および導電率を測定した。その結果を表4に示す。なお、SG分散液A〜Eを用いて作製したSG紡糸体を、それぞれSGファイバーA〜Eと表記した。
【0033】
【表4】
以上より、分散体サイズが40nm〜130nmの分散体を含み、FIR共鳴において300cm-1以下のピークを有する分散体を含む実施例の4種類のSG分散液を用いて作製したSGファイバーA〜Dは、優れた機械的特性および導電特性を有していた。一方、分散体サイズが40nm〜130nmの分散体を含まず、かつFIR共鳴において300cm-1以下のピークを有する分散体を含まない比較例のSG分散液を用いて作製したSGファイバーEは、SGファイバーA〜Dと比べて、機械的特性が劣り、導電性が低かった。
【実施例3】
【0034】
昭和電工株式会社製多層カーボンナノチューブVGCF-X(以下、「VGCF-X」ということがある)500mgとSC450mgを24.05gの水に加え、超音波撹拌装置を用いて30分間撹拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて表5に記載した時間超音波照射し、実施例のVGCF-X分散液Aと、比較例のVGCF-X分散液Bを得た。
【0035】
【表5】
【0036】
また、実施例1と同様にして、この2種類のVGCF-X分散液に含まれるVGCF-X分散体の球形換算サイズ(分散体サイズ)を測定した。その結果を図7に示す。図7の分散体サイズ分布チャートは、下から順にVGCF-X分散液A,Bのものである。図7に示すように、VGCF-X分散液Aには、分散体サイズが300nm〜1.3μmと、120nmと、20nmのVGCF-X分散体が含まれていた。一方、VGCF-X分散液Bには、分散体サイズが120nmと20nmのVGCF-X分散体が含まれていたが、分散体サイズが300nm〜1.3μmのVGCF-X分散体は含まれていなかった。分散体サイズが25nm〜1.3μmのVGCF-X分散体が含まれているか否かと、分散体サイズ分布の極大値が30nm〜1μmに存在するか否かを表5に記載した。
【0037】
また、内径1.25mmの注入ノズルを介して、この2種類のVGCF-X分散液をIPA中に注入して、凝集VGCF-X紡糸体を作製した。IPAに注入した直後の凝集VGCF-X紡糸体の写真を図8に示す。図8に示すように、VGCF-X分散液Aから得られた凝集VGCF-X紡糸体と比べて、VGCF-X分散液Bから得られた凝集VGCF-X紡糸体は、太く、亀裂が生じていた。つぎに、この2種類の凝集VGCF-X紡糸体をIPA内で1日放置した後、IPAを水に置換して3日以上浸漬した。そして、水中から取り出した凝集VGCF-X紡糸体の一端を治具で固定し、荷重をかけて乾燥し、VGCF-X紡糸体を得た。
【0038】
つぎに、得られた2種類のVGCF-X紡糸体の導電率を測定した。その結果、VGCF-X分散液Aを用いて作製したVGCF-XファイバーAの導電率は30.8±2.1Scm-1で、VGCF-X分散液Bを用いて作製したVGCF-XファイバーBの導電率は17.6±0.3Scm-1であった。以上より、分散体サイズが300nm〜1.3μmの分散体を含まないVGCF-X分散液Bを用いて作製したVGCF-XファイバーBは、分散体サイズが300nm〜1.3μmの分散体を含むVGCF-X分散液Aを用いて作製したVGCF-XファイバーAと比べて導電性が低かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8