特開2016-217887(P2016-217887A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217887(P2016-217887A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】物質量濃度標準物質の値付け方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20161125BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   G01N21/64 B
   G01N21/64 F
   G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-103187(P2015-103187)
(22)【出願日】2015年5月20日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度・経済産業省 工業標準化推進事業委託費(戦略的国際標準化加速事業(国際標準共同研究開発・普及基盤構築事業:標準物質を用いた臨床検査機器の測定妥当性評価に関する国際標準化・普及基盤構築))委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 章
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA09
2G043EA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043FA07
2G043GA03
2G043GB02
2G043HA01
2G043HA02
2G043KA02
2G043KA05
2G043KA09
2G043LA02
2G043NA01
2G043NA02
2G043NA11
2G045DA13
2G045DA14
2G045FA14
2G045JA02
(57)【要約】
【課題】試料の種類によらない一次標準物質(認証標準物質)にトレーサブルな物質量濃度標準物質の値付け方法を提供する。
【解決手段】蛍光染色した物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質をFCS測定し、測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数Nを求め、前記物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)の認証標準濃度Cとアボガドロ数NAから、前記測定領域の体積Vを、次式:V=N/(NA×C)により算出して求める工程1と、蛍光染色した値付け対象物質をFCS測定で測定し測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数を求め、当該求めた分子数と、前記工程1で求めた測定領域の体積Vから、前記値付け対象物質の物質量濃度を、次式:物質量濃度=当該求めた分子数/(NA×V)により算出して求めた値で物質量濃度標準物質として値付けする工程2と、からなる物質量濃度標準物質の値付け方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FCS測定を用いた物質量濃度一次標準物質もしくは認証標準物質にトレーサブルな物質量濃度標準物質の値付け方法であって、
蛍光染色した物質量濃度一次標準物質、認証標準物質もしくはそれにトレーサブルな標準物質をFCS測定し、測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数Nを求め、前記物質量濃度一次標準物質、認証標準物質の認証物質量濃度もしくはそれにトレーサブルな標準物質濃度Cとアボガドロ数NAから、前記測定領域の体積Vを、次式
V=N/(NA×C)
により算出して求める工程1と、
蛍光染色した値付け対象物質をFCS測定で測定し測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数を求め、当該求めた分子数と、前記工程1で求めた測定領域の体積Vから、前記値付け対象物質の物質量濃度を、次式
物質量濃度=当該求めた分子数/(NA×V)
により算出して求めた値で物質量濃度標準物質として値付けする工程2と、
からなる物質量濃度標準物質の値付け方法。
【請求項2】
前記物質量濃度一次標準物質、認証標準物質もしくはそれにトレーサブルな標準物質および前記値付け対象物質のFCS測定において、質量比混合法により希釈して測定した場合には、希釈倍率を勘案して前記測定領域の体積Vの算出および値付け対象物質の物質量濃度を算出することを特徴とする請求項1に記載の物質量濃度標準物質の値付け方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物質量濃度標準物質の値付け方法によって値付けされた物質量濃度標準物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光相関解析を利用した生体分子等の物質量濃度(モル濃度)絶対定量法に関し、とくに、各種検査、診断の標準試料として用いる試料溶液にSIトレーサブルな物質量濃度を値付けする物質量濃度標準物質の値付け方法、および当該方法によって値付けされた物質量濃度標準物質に関する。
【背景技術】
【0002】
標準物質は、計測機器の校正や分析方法の評価の目的で用いられる物質であり、その中でも認証標準物質はトレーサビリティが確立された手順で認証値が付与された物質である。質量分析のような絶対定量法で値が求められ、他の標準への参照なしに値が認められる一次標準物質はアメリカのNISTや日本の産総研のNMIJのような公的機関によって作製される。一方、二次標準物質は、一次標準(認証標準)との比較によって値が付与され紐付けされた標準物質であり、日常利用における校正・評価のためのワーキングスタンダードとして用いられる(特許文献3参照)。
蛍光相関分光法(Fluorescence correlation spectroscopy:以下略して「FCS」と記載することがある)は、共焦点光学系を利用し、水溶液中に存在する蛍光分子がブラウン運動して生じる蛍光強度の時間ゆらぎを観測することで分子の拡散速度、数に関する情報を取得する手法として知られている(特許文献1、2等参照)。FCSはレーザー焦点領域である測定領域内の“分子数”の統計的解析にもとづき、直接物質量濃度を算出可能な数少ない方法である。FCSで得られる分子数を濃度に変換するには測定領域の体積を精確に求めることが必要である。現在、測定領域の体積はRhodamine 6Gの拡散定数(414μm2/s)と測定拡散時間の関係からガウシアンプロファイルのレーザー焦点領域を仮定して求められている(後述の図3参照)。一方、濃度既知の試料の測定を通じて測定領域の体積を求める理論も提唱されている(非特許文献1参照)が、用いる試料は実験者が調製したものであり標準物質といえる物ではなかった。
他にも、分子数を定量可能な蛍光相関解析はラスター走査画像相関分光法(RICS)やNumber & Brightness(N&B)解析が存在する。
【0003】
図1、2は、蛍光相関分光法(FCS)による測定領域内の分子数の絶対定量について説明した図である。図1はFCSによる測定装置の一例を説明した概略図であり、試料台上に載置した試料液滴(Sample droplet)中に、共焦点蛍光顕微鏡光学系の対物レンズ(Objective)によりレーザー光(波長473nm)の焦点を結ばせ、光強度の強い励起領域となる測定領域を形成し、測定領域中の分子に蛍光を発せしめ、発せられた蛍光を対物レンズの焦点と共役の位置に配置されたピンホール(Pinhole)により測定領域で発せられた蛍光のみを通過させ、フォトマルチプライヤ(PMT)によるフォトンカウンティングで蛍光を測定し、パソコンPCで自己相関関数による演算を行ってデータ処理を行う。なお、図1中、DMはダイクロイックミラー、Emission filter は発せられた蛍光を分離するフィルターである。開口数の高い対物レンズによって集光された測定領域の大きさは光の回折限界によって波長の半分程度のビーム半径(w)、その数倍程度の軸長(z)と規定される。
図2は測定領域内に存在する分子数が少ない場合と、多い場合において測定した蛍光強度(Fluorescence Intensity)の時間変化I(t)と、それらの自己相関関数(Autocorrelation function)のグラフ
G(τ)=<I(t)I(t+τ)>/<I(t)>2
を模式的に示したものである。式内<>はアンサンブル平均であることを示す。蛍光相関分光法では、微小な測定領域で低濃度の蛍光物質を観察すると、1分子がブラウン運動によって拡散し測定領域内外を出入りすることで蛍光強度シグナルにゆらぎが生じる。測定領域内に同時に存在する分子数が少ない(すなわち濃度が低い)場合には、平均蛍光強度に対してゆらぎの幅が大きくなり、一方、分子数が多い(濃度が高い)場合にはゆらぎの幅が小さくなる。分子の数を反映するこのゆらぎの幅は自己相関関数では曲線の振幅(y軸)の高さで表現される。そして、原理的には自己相関関数のグラフのいわゆるy切片、すなわち零時間遅れのとき(τ=0のとき)の自己相関係数の値から1を引いた値が、分子数の絶対量Nの逆数1/Nになることが知られている。また、x軸で表される相関時間(τ)方向の減衰時間は分子の拡散速度、すなわち大きさを反映する。以上のパラメータは実測定では理論式に対するフィッティング解析等で求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−166598号公報
【特許文献2】再公表WO2012−144528号公報
【特許文献3】特開2003−329551号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. Ruttinger et al., J Microscopy Vol.232, pp343-352 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、蛍光相関分光法(FCS)によると、測定領域内の分子数をアボガドロ数で割り付けることで物質量の絶対量(mol)が直接求まり、分子の形や大きさ等に影響されることがない。しかしながら、物質量濃度(mol/L)を求めるには測定領域の体積Vの正確な値が必要となるが、従来、図3に説明するように、レーザーの焦点領域は3D−ガウシアンの強度分布を持つと仮定して、蛍光色素ローダミン6G(R6G)のFCS実測値から、拡散時間τD=w2/4D、D:拡散定数[μm2/s]、R6G=414[μm2/s]、Structure parameter S=z/w(焦点領域は長径z:短径wの楕円体をなす)
実効体積:Veff=π3/2ω03
で求めるしかなかった。このように算出する実効体積では、焦点領域は3D-ガウシアンの強度分布を持つという仮定を前提にしており、実際のレーザーの焦点領域は装置条件次第できれいな楕円体からゆがんでいることが容易に推測され、計算で正確に見積もることは困難である。
一般的に、日常の分析で利用されるワーキングスタンダードとなる標準物質は、多様な試料を対象とする汎用的な標準物質となる。産業界には各利用者の測定系に合った標準物質のニーズが存在するが、全ての対象試料に対して一次標準物質(認証標準物質)を作製するには膨大なコストと時間がかかるため、各試料に対し標準を揃えることは現実的でない。したがって、いかにワーキングスタンダードとなる標準物質(二次標準、三次標準等)を簡便かつ理論的正確性を持って値付けするかが重要である。二次標準等の値づけは一次標準(認証標準)と比較して行うが、例えば核酸の場合、様々な生物種や遺伝子を対象とするため、大部分の試料で対象となる核酸の配列や鎖長が異なり、一般的な吸光法等では前記比較が不正確になってしまう。
そこで、本発明では以上の状況を鑑み、試料の種類によらない物質量濃度の値付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)の認証値または質量濃度認証値を当該標準物質の既知分子量を用いて換算した物質量濃度もしくはそれにトレーサブルな標準物質濃度を用いてFCSの測定領域体積を正確に規定することで、蛍光相関分光法(FCS)により、試料の種類によらない標準物質の物質量濃度の値付け方法を可能にしたものである。
本発明は、FCS測定を用いた物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)にトレーサブルな物質量濃度標準物質の値付け方法であって、
蛍光染色した物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質をFCS測定し、測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数Nを求め、前記物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)の標準濃度または質量濃度認証値を当該標準物質の既知分子量を用いて換算した物質量濃度もしくはそれにトレーサブルな標準物質濃度Cとアボガドロ数NAから、前記測定領域の体積Vを、式
V=N/(NA×C)
により算出して求める工程1と、
蛍光染色した値付け対象物質をFCS測定で測定し測定結果からFCS測定の測定領域中の分子数を求め、当該求めた分子数と、前記工程1で求めた測定領域の体積Vから、前記値付け対象物質の物質量濃度を、式
物質量濃度=当該求めた分子数/(NA×V)
により算出して求めた値で物質量濃度標準物質として値付けする工程2と、
からなる物質量濃度標準物質の値付け方法である。
また、本発明は、上記物質量濃度標準物質の値付け方法において、前記物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質および前記値付け対象物質のFCS測定において、質量比混合法により希釈して測定した場合には、希釈倍率を勘案して前記測定領域の体積Vの算出および値付け対象物質の物質量濃度を算出することを特徴とする。
また、本発明は、上記物質量濃度標準物質の値付け方法によって値付けされた物質量濃度標準物質である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、FCSは分子の形状等によらず分子数の定量が可能な点に特長があるため、物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質を用いてFCSの測定領域体積を規定することで、鎖長や配列の異なる核酸並びにタンパク質のような様々な値付け対象標準物質に対して、迅速(分オーダー)かつ簡便(精製等のプロセス無し)に一次標準(認証標準)にトレーサブルな物質量濃度の値付けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の値付け方法に用いるFCS測定装置の概略図である。
図2図2は、図1のFCS測定装置を用いて測定して得られる蛍光強度の時間変化I(t)とその自己相関係数G(τ)のグラフを説明した図である。
図3図3は、レーザーの焦点領域がガウシアン強度分布を持つと仮定することによる従来の測定領域体積の推定法を説明した図である。
図4図4は、本発明の工程1:一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質による測定領域体積の測定を説明した図である。
図5図5は、本発明の工程2:値付け対象標準物質の物質量濃度の値付け、におけるFCS測定結果を示したグラフである。
図6図6は、図5の測定結果と工程1で求めた測定領域体積Vを使って求めた物質量濃度を縦軸に、工程2で用いた対象物質(検証のため認証標準物質を用いている)の認証濃度を横軸で表した図である。
図7図7は、値付け対象物質としてRNAの塩基配列が異なるRNA標準溶液(RNA500−A,B,C)、RNAの鎖長の異なるRNA標準溶液(RNA1000−A,B)を用いて本発明の値付け方法によりFCS測定値と工程1で得られた測定領域体積の値を利用して濃度を算出し値付けした値と、標準溶液としての認証値とを比較した表に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
FCSは観察領域内の“分子数”にもとづき、直接物質量濃度を算出可能な数少ない方法である。FCSを用いれば、核酸の配列や鎖長によらず核酸分子の数を算出することができる。本発明者等は、鋭意研究の結果、物質量濃度一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質を用いてFCSの測定領域体積を規定することで、試料の種類(核酸・タンパク質等)を問わず値付け対象標準物質に対して一次標準(認証標準)にトレーサブルな物質量濃度の値付けが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
(工程1:一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質による測定領域体積の算出)
本発明の工程1の一次標準物質(認証標準物質)もしくはそれにトレーサブルな標準物質による測定領域体積の算出では、従来の拡散定数からの推定ではなく、直接既知濃度の色素溶液(標準物質)をFCS測定することで、測定領域体積を精確に見積った。本発明の工程1によれば、測定領域の形状を考慮する必要が無く、体積のみを精確に求めることができる。前記既知濃度の標準物質は蛍光染色した核酸標準物質を用いても良い。
図4は、本発明の工程1の一例を示したものであり、この例では、FCS測定領域体積を求めるための標準物質(一次標準物質にトレーサブル)としてフルオレセイン物質量濃度標準溶液(Fluorescein NIST Traceable:Life Technologies社製)を利用した。この溶液を質量比混合法により測定濃度Cに希釈しFCS測定に供した。得られた測定領域内の平均分子数Nの値と試料調製濃度Cから、FCS測定領域体積VをV=N/(NA×C)より算出した。ここでNAはアボガドロ数である。図4中の実測例では、N=12.1、C=52nMであるので、最終的にV=0.390fLが得られた。この値はレーザー発振や光学系の条件、すなわち気温や湿度等の環境要因に影響されうるため装置調整回毎に測定する必要がある。
なお、フルオレセインは非常にガラス等への吸着が少ないため標準溶液に向いているが、pH依存的に蛍光強度が変化するという特徴をもつ。フルオレセインの蛍光強度はアルカリ性に最適値と持つため、希釈バッファーには100mMホウ酸バッファー(pH9.5)を用い、pHを一定に保った。
【0012】
(工程2:二次標準物質の物質量濃度の値付け)
本発明の工程2では、上記工程1により算出したFCS測定領域体積Vを使って、被値付け物質に対して物質量濃度二次標準物質としての物質量濃度の値付けをFCS測定により行う。
ここでは、本発明の値付け方法の説明と同時に、本発明の値付け方法の妥当性をも検証可能とするために、被値付け物質として、本出願人のバイオメディカル研究部門および物質計測標準研究部門で開発したRNA標準溶液(NMIJ CRM6204-a)を用いた例で説明する。このRNA標準溶液は、一次標準物質(認証標準物質)であり、この物質を複数の異なる濃度に希釈したものに対して、本発明の値付け方法で物質量濃度標準として値付けした値を、一次標準物質(認証標準物質)としての認証値と比較することにより本発明の値付け方法の妥当性が検証できる。
このRNA標準溶液(以下「RNA500−A」等と記載することがある)を質量比混合法によって4つの混合比で希釈した試料を用い、核酸定量用のプローブであるQuant-iT RiboGreen RNA Assay kit(Life Technologies社製)で蛍光染色してFCS測定して得られた自己相関関数G(τ)のグラフを図5に示す。x軸は相関時間(τ)、y軸は相関関数値を表す。図5のグラフをそれぞれ理論式でフィッティング解析することで測定領域中の分子数Nが求まる。なお、図5中のRNA500A 44.5nmol/L、22.3nmol/L、11.1nmol/L、5.56nmol/Lは、RNA標準溶液を希釈した4種類の試料の物質量濃度を表しており、4本のグラフはそれぞれに対応している。
図5の自己相関関数G(τ)のグラフから得られた測定領域中の分子数を、工程1で得られた測定領域体積Vの値(V=0.390fL)で割り算して得た物質量濃度、すなわち1リットル当たりのRNAモル数をプロットしたのが図6のグラフであり、図6の横軸がRNA標準溶液の認証値から得られる物質量濃度(nmol/L)、縦軸がFCS測定から算出した本発明による値付け値となる物質量濃度(nmol/L)を表し、実線(横軸の値=縦軸の値を表す直線)上に載れば両者は完全に一致するといえ、図6からは本発明の値付け方法によってFCS測定で導き出された測定定量値はRNA標準溶液の認証値と誤差の範囲で一致していることがわかる。
【0013】
図7は、さらに、被値付け標準物質としてRNAの塩基配列が異なるRNA標準溶液(RNA500−A,B,C)、RNAの鎖長の異なるRNA標準溶液(RNA1000−A,B)を用いて本発明の値付け方法によりFCS測定値と工程1で得られた測定領域体積の値を利用して濃度を算出し値付けした値と、標準溶液としての認証値とを比較した図である。本測定例では、RNA標準物質の認証値が質量濃度(g/L)で与えられていたため、FCSで値付けした物質量濃度(図7右)に、既知である当該RNAの分子量をかけて質量濃度に換算した後に比較した(図7左)。図7から、いずれの試料でも図6と同様に物質量濃度を決定することができ、本発明によるFCS測定を用いた値付け方法では、核酸の配列や鎖長を選ばず精確な定量値を導出することが示された。
なお、本発明の値付け用法に用いる標準物質、および被値付け対象となる二次標準物質の試料としては、蛍光標識さえ可能であれば核酸のみならずタンパク質、小分子等多様な標的物質に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
FCSは分子の形状等によらず分子数の定量が可能であるので、本発明で用いる物質量濃度標準物質および被値付け物質量濃度標準物質としては、蛍光標識さえ可能であれば核酸のみならずタンパク質、小分子等多様な標的物質に適用可能である。また、本発明によれば、様々な標準物質に対して、迅速(分オーダー)かつ簡便(精製等のプロセス無し)に一次標準(認証標準)にトレーサブルな濃度の値付けが可能になることから、広く産業界で利用される様々なワーキングスタンダードの構築に威力を発揮し、バイオ測定の標準化に大いに貢献するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7