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特開2016-220163光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220163(P2016-220163A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/291 20130101AFI20161125BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20161125BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20161125BHJP
   H04B 10/2581 20130101ALI20161125BHJP
【FI】
   H04B9/00 291
   H01S3/10 D
   H01S3/067
   H04B9/00 268
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-106390(P2015-106390)
(22)【出願日】2015年5月26日
(11)【特許番号】特許第5967737号(P5967737)
(45)【特許公報発行日】2016年8月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構「革新的光通信インフラの研究開発 課題ア:マルチコア光増幅技術」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 誠
【テーマコード(参考)】
5F172
5K102
【Fターム(参考)】
5F172AF03
5F172AM08
5F172BB02
5F172BB27
5K102AA01
5K102AA57
5K102AD00
5K102KA12
5K102KA42
5K102MA01
5K102MB02
5K102MC11
5K102MH02
5K102MH13
5K102PA11
5K102PH13
5K102PH43
5K102PH47
5K102PH48
(57)【要約】
【課題】マルチモード光ファイバ増幅器において、増幅する信号光のモード数に依存した雑音特性の劣化を抑制する光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置を提供すること。
【解決手段】送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データを有さない他のモードの送信装置に対して、所定の波長の光信号を出力するよう制御する。これにより、送信データが重畳された信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3で増幅する際、全モードの信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3に入力する。また、別の制御方法として、送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データの有無を問わず、全送信装置1−1〜1−3に対して、所定の波長の光信号を出力するよう制御しても良い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数モードの光を伝送するマルチモードファイバと、
送信データが重畳された複数モードの信号光を送信する送信装置と、
前記送信装置から出力された前記複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、
前記マルチモード光ファイバ増幅器で増幅された前記複数モードの信号光を受信する受信装置と、
前記送信装置のモード毎の送信データの有無を監視し、送信データが有るモードが1つの場合、他のモードのうち少なくとも1以上のモードの信号光を送信させるよう前記送信装置を制御する監視制御装置と、
を備えたことを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
複数モードの光を伝送するマルチモードファイバと、
送信データが重畳された複数モードの信号光を送信する送信装置と、
前記送信装置から出力された前記複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、
前記マルチモード光ファイバ増幅器で増幅された前記複数モードの信号光を受信する受信装置と、
前記送信装置のモード毎の送信データの有無を監視し、送信データが無いモードが有る場合、前記送信データが無いモードの信号光を送信させるよう前記送信装置を制御する監視制御装置と、
を備えたことを特徴とする光通信システム。
【請求項3】
送信装置から送信される複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、
前記送信装置から送信される信号光のモードと同一のモードの光を出力する光源と、
前記光源から出力される複数モードの光を合波する合波器と、
前記送信装置から送信された信号光と前記合波器で合波された光とを結合して前記マルチモード光ファイバ増幅部に出力する光結合器と、
前記送信装置のモード毎の送信される信号光の有無を監視し、送信される信号光のモードが1つの場合、他のモードのうち少なくとも1以上のモードの光を出力させるよう前記光源を制御する監視制御装置と、
を備えたことを特徴とするマルチモード光ファイバ増幅装置。
【請求項4】
送信装置から送信される複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、
前記送信装置から送信される信号光のモードと同一のモードの光を出力する光源と、
前記光源から出力される複数モードの光を合波する合波器と、
前記送信装置から送信された信号光と前記合波器で合波された光とを結合して前記マルチモード光ファイバ増幅部に出力する光結合器と、
前記送信装置のモード毎の送信される信号光の有無を監視し、送信されない信号光のモードが有る場合、前記送信されない信号光のモードの光を出力させるよう前記光源を制御する監視制御装置と、
を備えたことを特徴とするマルチモード光ファイバ増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数モードの光信号を伝送する光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信サービスの高速化・大容量化するとともに、幹線系光伝送システムで伝送されるトラフィックが爆発的に増大している。そのため、光伝送システムの伝送容量を飛躍的に増大する技術検討が進められており、中でもモード多重光伝送技術の研究が近年急速に進んでいる。モード多重光伝送システムを長距離化するためには、複数の異なるモードの信号光を1本の増幅用ファイバで増幅するマルチモード光ファイバ増幅器が必要となる(非特許文献1)。モード多重光伝送システムにおいても、これまでのシングルモードファイバを用いた光伝送システムと同様に、光中継器として用いられる光ファイバ増幅器において雑音が付加され、光中継毎に光信号対雑音比(OSNR)が劣化し、所要のOSNRを下回る地点が伝送距離の限界となる。このため、光ファイバ増幅器で付加させる雑音をできるだけ小さくすることが求められる。
【0003】
光ファイバ増幅器は増幅用にファイバに添加されたイオン(例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器の場合はエルビウムイオン)の誘導放出を利用して信号光の増幅を行う。誘導放出により信号光を増幅すると、信号光パワーの揺らぎが増幅後の信号光において入力信号光より大きくなるが、これが光ファイバ増幅器で付加される雑音となる。光ファイバ増幅器での増幅の際に増加する揺らぎの大きさと増幅自然放出光(ASE光)には比例の関係があるため、信号光パワーとASE光パワーの比であるOSNRは、光ファイバ増幅器における増幅前後で劣化することになる。
【0004】
一方で、光ファイバ増幅器の雑音特性は、出力信号光の信号対雑音比(SNR)と入力信号光のSNRの比である雑音指数(NF)によって評価され、雑音指数が小さい方が光増幅によるOSNR劣化は小さくなる。すなわち、光ファイバ増幅器の雑音指数は可能な限り小さくすることが伝送特性上重要となる。
【0005】
シングルモード光ファイバ増幅器の雑音指数を小さくするため、通常以下のような対策が採られる。
【0006】
・添加イオンの励起波長を最適にする。例えば、エルビウムイオンの場合は980nm吸収帯を励起する励起光源を用いる。
【0007】
・光ファイバ増幅器の信号光入力側の損失をできるだけ小さくする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】E. Ip. et al., “88×3×112-Gb/s WDM transmission over 50 km of three-mode fiber with inline few-mode fiber amplifier,” in Proceeding of ECOC2011, PDP, Th.13.C.2.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、マルチモード光ファイバ増幅器では、単一モードの信号光を増幅した場合に雑音特性が劣化するという、シングルモード光ファイバ増幅器にはない課題がある。
【0010】
図1に、LP01モード信号光とLP11モード信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器の一種類である2LPモードエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)において、信号光としてLP01モード信号光とLP11モード信号光の両方を入力した場合の利得と雑音指数(NF)と一方のモード信号光のみを入力した場合の利得と雑音指数(NF)を示す。
【0011】
一方のモード信号光については、図1(a)はLP01モード信号光のみ、図1(b)はLP11モード信号光のみである。LP01モード信号光のみを入力した場合もLP11モード信号光のみを入力した場合も両方のモード信号光を入力したときより雑音指数が増加し、雑音特性が劣化している。
【0012】
このように入力する信号光のモード数が少なくなると光ファイバ増幅器の雑音特性が劣化することは、2LPモードの光ファイバ増幅器に限らず、それ以上のモード数をサポートするマルチモード光ファイバ増幅器でも見られる。したがって、マルチモード光ファイバ増幅器では入力する信号光のモード数の減少により過剰雑音が付加されるという課題がある。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、マルチモード光ファイバ増幅器において、増幅する信号光のモード数に依存した雑音特性の劣化を抑制する光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の発明は、複数モードの光を伝送するマルチモードファイバと、送信データが重畳された複数モードの信号光を送信する送信装置と、前記送信装置から出力された前記複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、前記マルチモード光ファイバ増幅器で増幅された前記複数モードの信号光を受信する受信装置と、前記送信装置のモード毎の送信データの有無を監視し、送信データが有るモードが1つの場合、他のモードのうち少なくとも1以上のモードの信号光を送信させるよう前記送信装置を制御する監視制御装置と、を備えたことを特徴とする光通信システム。
【0015】
請求項2に記載の発明は、複数モードの光を伝送するマルチモードファイバと、送信データが重畳された複数モードの信号光を送信する送信装置と、前記送信装置から出力された前記複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、前記マルチモード光ファイバ増幅器で増幅された前記複数モードの信号光を受信する受信装置と、前記送信装置のモード毎の送信データの有無を監視し、送信データが無いモードが有る場合、前記送信データが無いモードの信号光を送信させるよう前記送信装置を制御する監視制御装置と、をえたことを特徴とする光通信システム。
【0016】
請求項3に記載の発明は、送信装置から送信される複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、前記送信装置から送信される信号光のモードと同一のモードの光を出力する光源と、前記光源から出力される複数モードの光を合波する合波器と、前記送信装置から送信された信号光と前記合波器で合波された光とを結合して前記マルチモード光ファイバ増幅部に出力する光結合器と、前記送信装置のモード毎の送信される信号光の有無を監視し、送信される信号光のモードが1つの場合、他のモードのうち少なくとも1以上のモードの光を出力させるよう前記光源を制御する監視制御装置と、を備えたことを特徴とするマルチモード光ファイバ増幅装置。
【0017】
請求項4に記載の発明は、送信装置から送信される複数モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器と、前記送信装置から送信される信号光のモードと同一のモードの光を出力する光源と、前記光源から出力される複数モードの光を合波する合波器と、前記送信装置から送信された信号光と前記合波器で合波された光とを結合して前記マルチモード光ファイバ増幅部に出力する光結合器と、前記送信装置のモード毎の送信される信号光の有無を監視し、送信されない信号光のモードが有る場合、前記送信されない信号光のモードの光を出力させるよう前記光源を制御する監視制御装置と、を備えたことを特徴とするマルチモード光ファイバ増幅装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、マルチモード光ファイバ増幅器における過剰な雑音付加を効果的に避けることができ、その結果、信号光のOSNRの過剰な劣化を抑制してマルチモード光伝送システムの伝送品質の劣化を抑制できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】LP01モード信号光とLP11モード信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器の一種類である2LPモードエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)において、信号光としてLP01モード信号光とLP11モード信号光の両方を入力した場合の利得と雑音指数(NF)と一方のモード信号光のみを入力した場合の利得と雑音指数(NF)を示す図である。
図2】(a)、(b)はそれぞれ、マルチモード光ファイバ増幅器へ両モードの信号光を入力した場合のLP01モード信号光、LP11モード信号光の出力スペクトルを示す図であり、(c)、(d)はそれぞれ、マルチモード光ファイバ増幅器へLP01モード信号光のみを入力した場合のLP01モード信号光、LP11モード信号光の出力スペクトルを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムを示すブロック図である。
図4】本発明の光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20Gbaud四位相偏移変調(QPSK)で変調された40波波長多重信号と、LP11モード信号光及びLP21モード信号光として20GbaudQPSKで変調された1530.33nmの単一波長信号を伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を示す図である。
図5】本光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20GbaudQPSKで変調された40波波長多重信号と、LP21モード信号光として20GbaudQPSKで変調された1530.33nmの単一波長信号を伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を示す図である。
図6】本願発明における第3の実施形態のマルチモード光ファイバ増幅装置を示すブロック図である。
図7】LP01モード、LP11モード、LP21モードの送受信装置を本発明の第3の実施形態に係るマルチモード光ファイバ増幅装置において接続した光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20GbaudQPSKで変調された40波波長多重信号のみを、伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
励起光が入力されている状態の光ファイバ増幅器において、信号光の有無により光ファイバ増幅器から出力されるASE光パワーは異なり、信号光入力がないときは信号光入力があるときより出力ASE光パワーは大きくなる。
【0021】
LP01モード信号光とLP11モード信号光をサポートする2LPモードマルチモード光ファイバ増幅器において、LP01モード信号光のみを入力した場合は、光ファイバ増幅器から出力されるLP11モードのASE光パワーは両モードの信号光が入力したときより大きくなる。
【0022】
ところで、光ファイバ増幅器内部ではLP01モードとLP11モード間で頻繁にモード変換が起こっており、LP01モードとLP11モードとの間でASE光パワー変換が発生している。マルチモード光ファイバ増幅器への入力がLP01信号光のみの場合、モード変換によりLP11モードからLP01モードへ変換されるASE光パワーは両モードの信号光が入力したときより大きくなり、その結果LP01モード信号光増幅における雑音特性が劣化し、雑音指数が増加する。
【0023】
このことを、図2(a)〜(d)を用いて説明する。但し、図2(a)〜(d)は仮にモード変換がないとした場合のLP01モード信号光とLP11モード信号光の出力スペクトルを分けて描写した仮想的な光スペクトルである。
【0024】
図2(a)、(b)はそれぞれ、マルチモード光ファイバ増幅器へ両モードの信号光を入力した場合のLP01モード信号光、LP11モード信号光の出力スペクトルであり、両モードとも利得平坦(利得の波長依存性がある一定値より小さい)増幅状態となるように励起光パワーが調整されてある。
【0025】
図2(c)、(d)はそれぞれ、マルチモード光ファイバ増幅器へLP01モード信号光のみを入力した場合のLP01モード信号光、LP11モード信号光の出力スペクトルを示しており、LP01モード利得が利得平坦となるように励起光パワーが調整されている。このとき、LP11モードの信号光入力がないため、LP11モード出力光はASE光のみとなり、ASE光出力は利得平坦な増幅状態のASE光(図2(d)の点線で示した)より過大となる。実際には両モード間でモード変換が発生するため、LP11モードで発生した過大なASE光の一部がLP01モードへ変換され、その結果LP01モード出力におけるASE光パワーも過大となって雑音特性を劣化させることになる。
【0026】
LP11モード信号光のみを入力した場合も上記と同様の理由により、モード変換によりLP01モードからLP11モードへ変換されるASE光パワーは両モードの信号光が入力したときより大きくなり、その結果LP11モード信号光増幅における雑音特性が劣化し、雑音指数が増加する。したがって、2LPモード光ファイバ増幅器においては、常に両モードの信号光を入力して増幅することにより雑音特性の劣化を抑制できることになる。
【0027】
3以上のLPモードをサポートする光ファイバ増幅器の場合は、1つのモード信号光のみが入力する場合の雑音特性劣化が最大で、入力する信号光モード数が大きくなる程、雑音特性の劣化が抑制され、サポートされる全モードの信号光が入力する場合には雑音特性の劣化をほとんど回避することができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
図3に、本発明の第1の実施形態に係る光通信システムのブロック図を示す。LP01モード、LP11モード、LP21モードの信号光を送信する送信装置1−1〜1−3は、LP01モード、LP11モード、LP21モードの信号光を合波するモード合波器2に接続されている。LP01モード、LP11モード、LP21モードの信号光を受信する受信装置4−1〜4−3は、モード多重光をLP01モード、LP11モード、LP21モードの信号光に分波するモード分波器3に接続されている。
【0030】
モード合波器2とモード分波器3とは、LP01モード、LP11モード、LP21モードの3LPモードをサポートするマルチモードファイバ5−1、5−2、LP01モード、LP11モード、LP21モードの信号光を増幅するマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3を介して接続されている。
【0031】
マルチモードファイバ5−1、5−2はいずれも条長80kmのマルチモードファイバである。
【0032】
マルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3はそれぞれ後置増幅器(ブースタ増幅器)、中継増幅器、前置増幅器であり、いずれも増幅媒体としてLP01モード、LP11モード、LP21モードの3LPモードの信号光を増幅できるエルビウム添加ファイバを用いており、前方・後方励起それぞれ1セット(偏波合成した2台の励起LDを1セット)の980nm帯励起光源装置を備える。
【0033】
送信装置1−1〜1−3は、それぞれのモードにおいて、複数の波長(周波数)の信号光をそれぞれ発生させる光源と、信号光にデータを重畳するための変調器と、複数波長の信号を合波する合波器と、それらを動作させるための電子回路とを備えている。
【0034】
受信装置4−1〜4−3は、それぞれのモードにおいて、複数波長の信号を分波する分波器と複数の波長(周波数)の信号光をそれぞれ受信する受信機と、受信信号の電気処理を行う信号処理装置と、それらを動作させるための電子回路とを備えている。
【0035】
図3には示していないが、光通信システムを監視・制御する監視制御装置により、本光通信システムの各装置は制御される。
【0036】
各送信装置は、通常、送信データが有る場合にのみ送信データを重畳した信号光を出力するが、本発明では、送信データがない場合にも信号光を出力させる。本実施形態では、送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データを有さない他のモードの送信装置に対して、所定の波長の光信号を出力するよう制御する。これにより、送信データが重畳された信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3で増幅する際、全モードの信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3に入力する。
【0037】
また、別の制御方法として、送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データの有無を問わず、全送信装置1−1〜1−3に対して、所定の波長の光信号を出力するよう制御しても良い。但し、この制御方法では、送信データを有する送信装置から、送信データを重畳する信号光とは別に、送信データの重畳されていない信号光が出力されることもある。
【0038】
図4に、本発明の光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20Gbaud四位相偏移変調(QPSK)で変調された40波波長多重信号と、LP11モード信号光及びLP21モード信号光として20GbaudQPSKで変調された1530.33nmの単一波長信号を伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を示す。
【0039】
○はLP01モード信号光の、□はLP11モード信号光の、△はLP21モード信号光のQファクタを示している。また、図4には比較として、監視制御装置の設定を変えて、LP01モード信号光のみを伝送できるようにしたときのQファクタも●で併せて示している。図4の5.7dBの点線はこれ以上のQファクタのときに誤りなく伝送できることを示し、これよりQファクタが小さいときは伝送品質に劣化があることを意味している。図4から明らかなように、LP01モード信号光のみを伝送させたときはQファクタが5.7dBを下回る信号光波長があるのに対し、LP01モード、LP11モード、LP21モードの全モードを伝送させることで、全信号波長のQファクタが5.7dB以上で伝送品質が保たれており、本願発明が効果を発揮していることがわかる。
【0040】
(第2の実施形態)
本実施形態の光通信システムは、第1の実施形態の光通信システムと構成は同じであるが、光通信システムを監視・制御する監視制御装置の動作が異なり、監視制御装置の内部のソフトウェアにより少なくとも2つ以上のモードにおいて少なくとも1つ以上の波長の信号光が伝送されるように光通信システムを制御することが、本実施形態の特徴である。
【0041】
本実施形態では、送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データを有する送信装置の数が2以上であるか否かを判定し、2以上の場合は、送信データを有する送信装置から送信データを重畳した信号光を出力させる。送信データを有する送信装置の数が2以上でない、つまり、送信データを有する送信装置が1つの場合、出力される信号光のモード数が2になるよう、送信データを有さない他のモードの送信装置のうちの1つに信号光を出力させる。これにより、送信データが重畳された信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3で増幅する際、2つのモードの信号光をマルチモード光ファイバ増幅器6−1〜6−3に入力する。
【0042】
また、別の制御方法として、送信装置1−1〜1−3のうち少なくとも1つが送信データを有している場合、監視制御装置が、送信データの有無を問わず、送信装置1−1〜1−3のうちの2つに対して、所定の波長の光信号を出力するよう制御しても良い。但し、この制御方法では、送信データを有する送信装置から、送信データを重畳する信号光とは別に、送信データの重畳されていない信号光が出力されることもある。
【0043】
図5に、本光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20GbaudQPSKで変調された40波波長多重信号と、LP21モード信号光として20GbaudQPSKで変調された1530.33nmの単一波長信号を伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を示す。○はLP01モード信号光のQファクタ、△はLP21モード信号光のQファクタを示している。また、図5には比較として、監視制御装置の設定を変えて、LP01モード信号光のみを伝送できるようにしたときのQファクタも●で併せて示している。
【0044】
図5から明らかなように、LP01モード信号光のみを伝送させたときはQファクタが5.7dBを下回る信号光波長があるのに対し、LP01モード、LP21モードの2モードを伝送させることで、全信号波長のQファクタが5.7dB以上で伝送品質が保たれており、本願発明が効果を発揮していることがわかる。
【0045】
(第3の実施形態)
図6に、本願発明における第3の実施形態のマルチモード光ファイバ増幅装置100のブロック図を示す。先ず、マルチモード光ファイバ増幅装置100の光増幅部150について説明する。エルビウム添加ファイバ101は、LP01モード、LP11モード、LP21モードの各信号光を増幅することができる増幅用ファイバである。エルビウム添加ファイバ101には、エルビウム添加ファイバに添加されたエルビウムイオンを励起するための励起光を出力する、980nm帯半導体レーザである励起光源102−1、102−2が励起光/信号光合分波器103−1、103−2を介して接続されている。励起光/信号光合分波器103−1、103−2は、励起光とLP01モード、LP11モード、LP21モードの各信号光を合波または分波し、増幅された信号光のみマルチモード光ファイバ増幅装置100から出力される。光アイソレータ104−1、104−2が、光ファイバ増幅部150の入出力端に設置され、LP01モード、LP11モード、LP21モードの各信号光の伝搬方向を一方向に限定する。
【0046】
本実施形態では、光増幅部150の前段に、LP01モード、LP11モード、LP21モードの光を出力する光源105−1〜105−3が設置され、光源105−1〜105−3から出力された光は、モード合波器106で合波されて光結合器107でマルチモード光ファイバ増幅装置100に入力された信号光と結合される。光結合器107は、ポートaに入力される信号光の光パワー90に対して、ポートbに入力される光源105−1〜105−3からの出力光の光パワーは10で結合する。
【0047】
点線で囲まれた光増幅部150は本実施形態の構成に限定されず、励起構成や励起波長が異なったり(図6では980nm帯双方向励起であるが、他の励起波長や、前方励起や後方励起を用いたりすること)、増幅用ファイバ、励起光源、励起光/信号光合分波器をより多く備えた多段増幅の光増幅器構成であっても本願発明の効果は変わりない。
【0048】
マルチモード光ファイバ増幅装置100の制御装置(不図示)には、光通信システムの監視制御装置から各モードの信号光の有無情報が伝達される。マルチモード光ファイバ増幅装置100は、その各モードの信号光の有無情報を基にして、光ファイバ増幅部150に入力されないモードの信号光については、光源105−1〜105−3のうちの対応するモードの光源から光増幅部150に光を入力する。このことにより、光増幅部150は常に全モードの信号光が入力されることになる。光源105−1、105−2、105−3のどの光源の信号光を光増幅部150へ入力するかの判断は、光ファイバ増幅器の制御装置が光源105−1、105−2、105−3を制御する。
【0049】
本実施形態の光ファイバ増幅器を例えば図3のブロック図で示した光通信システムへ適用することで、光通信システムは各モードの信号光有無にかかわらず、伝送品質を保持した伝送が実現できる。
【0050】
図7に、LP01モード、LP11モード、LP21モードの送受信装置を本発明の第3の実施形態に係るマルチモード光ファイバ増幅装置において接続した光通信システムにおいて、LP01モード信号光として1530.33〜1561.42nmに100GHz間隔で配置された20GbaudQPSKで変調された40波波長多重信号のみを、伝送したときのQファクタ(受信装置内の前方誤り訂正回路の前段におけるQファクタ)を○で示す。図7から明らかなように、LP01モードの信号光のみを伝送しても、全信号波長のQファクタが5.7dB以上となり伝送品質が保たれており、本願発明が効果を発揮していることがわかる。
【0051】
尚、光源105−1〜105−3の制御方法は、第1および第2の実施形態における送信装置1−1〜1−3の制御方法と同様に制御することが可能である。
【0052】
第1〜第3の実施形態では、モード数が3の場合について記載したが、モード数に合わせてモード合分波器、送信装置、光源を用意すれば、所望のモード数においても同様の効果を奏する光通信システム及びマルチモード光ファイバ増幅装置が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1−1〜1−3 送信装置
2 モード合波器
3 モード分波器
4−1〜4−3 受信装置
5−1、5−2 マルチモードファイバ
6−1〜6−3 マルチモード光ファイバ増幅器
100 マルチモード光ファイバ増幅装置
101 エルビウム添加ファイバ
102 励起光源
103 励起光/信号光合分波器
104 光アイソレータ
105−1〜105−3 光源
106 モード合波器
107 光結合器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7