【解決手段】吸収性本体10と、レッグギャザー部20と、ベルト部30を備え、前記レッグギャザー部は、前記吸収性本体の横方向の両側に配置され、前記ベルト部は、前記吸収性本体の一部及び前記レッグギャザー部と厚さ方向に重複するように配置され、前記ベルト部及び前記レッグギャザー部のうち少なくとも一方に設けられた切り欠き部35、25によって一対の脚回り開口部HLが形成され、前記ベルト部は、長手方向の両端部から前記脚回り開口部に向かって横方向の外側へ傾斜した接合部WL1、WL2にて、前記吸収性本体及び前記レッグギャザー部と接合されており、前記脚回り開口部の長手方向の前端と前記吸収性本体の長手方向の前端との間の距離が、前記脚回り開口部の長手方向の後端と前記吸収性本体の長手方向の後端の距離よりも短い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
長手方向と横方向と厚さ方向とを有し、吸収性本体と、レッグギャザー部と、ベルト部と、を備えた吸収性物品であって前記吸収性物品を前記吸収性本体の前記長手方向に沿って伸長させた状態において、前記レッグギャザー部は、前記吸収性本体の前記横方向の両側に配置され、前記ベルト部は、前記吸収性本体の一部及び前記レッグギャザー部と前記厚さ方向に重複するように配置され、前記ベルト部及び前記レッグギャザー部のうち少なくとも一方に設けられた切り欠き部によって一対の脚回り開口部が形成されており、前記ベルト部は、前記長手方向の両端部から前記脚回り開口部に向かって前記横方向の外側へ傾斜した接合部にて、前記吸収性本体及び前記レッグギャザー部と接合されており、前記脚回り開口部の前記長手方向の前端と前記吸収性本体の前記長手方向の前端との間の距離が、前記脚回り開口部の前記長手方向の後端と前記吸収性本体の前記長手方向の後端との間の距離よりも短い、ことを特徴とする吸収性物品。
【0011】
このような吸収性物品によれば、脚回り開口部が長手方向の前方寄りに配置されることにより、前側においては着用者が脚の動きが干渉され難くなり、後側においては着用者の臀部が広く覆われやすくなる。これにより、吸収性物品(おむつ)を着用したときのフィット性が向上する。また、脚回り開口部が前方寄りに配置され、おむつの背側領域における表面積が広くなることにより、おむつを視認したときに、前側と後側とを容易に判別することができる。
【0012】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー部は、前記脚回り開口部の前記長手方向の前端と、前記脚回り開口部の前記長手方向の後端との間に、前記横方向の幅が最も狭くなる部分を有する、ことが望ましい。
【0013】
このような吸収性物品によれば、おむつ着用時において、着用者の鼠径部に当接する領域付近でレッグギャザー部の幅が狭くなるため、レッグギャザー部と着用者の鼠径部との干渉が抑制され、フィット性を向上させると共におむつ着用時の違和感を軽減することができる。
【0014】
かかる吸収性物品であって、前記ベルト部は、前記脚回り開口部の前記長手方向の前端と、前記脚回り開口部の前記長手方向の後端との間に、前記横方向の幅が最も狭くなる部分を有する、ことが望ましい。
【0015】
このような吸収性物品によれば、おむつ着用時において、着用者の腰骨(骨盤)周辺に当接する領域でベルト部の幅が狭くなる。当該領域は、おむつを上方に引き上げる動作を行う際に着用者がベルト部を掴んで引っ張る部分であるため、当該領域でベルト部の幅を狭くしておくことで、ベルト部をしっかりと握っておむつを着用することが可能となり、着用時のフィット性をより高めることができる。
【0016】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー部の前記脚回り開口部の前記横方向内側の領域には、糸状弾性部材が前記長手方向に伸長された状態で配置されており、前記脚回り開口部の前記長手方向の中央位置における前記脚回り開口部の端部と前記糸状弾性部材のうち前記横方向の最も外側に配置されている前記糸状弾性部材との間の前記横方向の距離は、前記脚回り開口部の前記長手方向の前端若しくは後端における前記脚回り開口部の端部と前記糸状弾性部材のうち前記横方向の最も外側に配置されている前記糸状弾性部材との間の前記横方向の距離よりも小さい、ことが望ましい。
【0017】
このような吸収性物品によれば、着用者の鼠蹊部と当接する領域である脚回り開口部の中央位置付近でレッグギャザー部が収縮しやすくなり、着用者の鼠蹊部の形状に沿ってフィットしやすくなる。また、当該領域に糸状弾性部材による収縮力を集中して作用させることで、鼠蹊部に弛みが生じたり大きな皺が生じたりすることを抑制しやすくなる。
【0018】
かかる吸収性物品であって、前記脚回り開口部の周縁部には、伸縮性を有する弾性シート部材が前記長手方向に伸長された状態で配置されている、ことが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品によれば、弾性シート部材によって脚回り開口部の周縁が補強されるため、該脚回り開口部の強度が高くなり、おむつをより破れ難くすることができる。また、シート状の弾性伸縮シートがレッグギャザー部と重複して設けられていることにより、脚回り開口部の周縁部を面でフィットさせることができるようになり、おむつ着用時におけるレッグギャザー回りの肌触りが良好になる。
【0020】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー部と重複する領域に配置されている前記弾性シート部材は、前記脚回り開口部の前記長手方向の中央位置における前記横方向の幅が、前記脚回り開口部の前記長手方向の後端における前記横方向の幅よりも狭い、ことが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品によれば、脚回り開口部の長手方向の中央位置付近において弾性シート部材の幅を狭くすることにより、鼠径部に作用する収縮力が分散され難くなりフィット性をより高くすることができる。一方、脚回り開口部の長手方向の両端部において弾性シート部材が広くすることにより、腹部や臀部領域では収縮力が広い範囲に作用しやすくなり、過度な締め付けによる不快感を生じ難くすることができる。
【0022】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー部と前記ベルト部とが一の部材によって形成されている、ことが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品によれば、ベルト部とレッグギャザー部との間に接合部等が設けられていないため、おむつを着用する際に、ベルト部とレッグギャザー部との境界部に応力が集中した場合であっても、裂け目の起点が形成され難くなる。これにより、脚回り開口部においておむつが破れてしまうことを抑制することができる。
【0024】
かかる吸収性物品であって、前記長手方向の前側において形成される第1接合部と前記長手方向とがなす角度のうち小さい方の角度は、前記長手方向の後側において形成される第2接合部と前記長手方向とがなす角度のうち小さい方の角度よりも大きい、ことが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品をパンツ型に形成した状態で吸収性本体とベルト部とのなす角度は、前側(腹側)で大きく、後側(背側)で小さくなりやすい。その結果、おむつ着用時において吸収性本体の後側が着用者の臀部の上方まで引き上げられやすくなり、着用者の臀部との間に隙間が生じ難くフィット性が向上する。また、外観上、臀部がすっきりとした印象となるため、着用者におむつを着用することに対する抵抗感を与え難くなる。
【0026】
かかる吸収性物品であって、前記接合部と前記脚回り開口部との間には所定の間隔が設けられている、ことが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品によれば、おむつに形成される接合部と脚回り開口部の周縁部とが交差していないため、脚回り開口部の周縁部において裂け目の起点が形成され難く、おむつが破れることを抑制しやすくなる。
【0028】
===第1実施形態===
<パンツ型使い捨ておむつ1の基本構成>
第1実施形態に係る吸収性物品の一例として、パンツ型の使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)について説明する。
【0029】
図1は、おむつ1の外観を表す概略斜視図である。おむつ1は、吸収性本体10と、レッグギャザー部20と、ベルト部30とを有し、着用時において
図1に示されるようなパンツ型の形状をしている。このおむつ1は、
図1のパンツ型状態において、互いに直交する「縦方向」と「横方向」とを有している。そして、おむつ1の縦方向の上側には胴回り開口部HBが形成され、横方向の両側には1対の脚回り開口部HLが形成されている。また、おむつ1の前側は着用時において着用者の腹側を覆う部分であり、後側は着用者の背側覆う部分である。
【0030】
図2Aは、吸収性本体10の長手方向に沿って伸長させた状態のおむつ1について表す平面図である。
図2Bは、
図2AのA−A断面について表す概略断面図である。
図3Aは、製造工程の途中において、吸収性本体10の長手方向に沿って伸長させた状態のおむつ1を展開した状態について表す平面展開図である。
図3Bは、
図3AのB−B断面について表す概略断面図である。
【0031】
おむつ1は、製造工程の最終段階において
図2Aに示されるような平面状態である。おむつ1の製造工程については
図4を用いて後で説明する。平面状態のおむつ1は、互いに直交する三方向として「長手方向」と「横方向」と「厚さ方向」とを有している。平面状態のおむつ1の長手方向は、吸収性本体10の長手方向に沿った方向である。この長手方向は、
図1のパンツ型状態での縦方向に対応する方向であるが、厳密に言うとパンツ型状態での縦方向と平面状態での縦方向とは若干意味が異なるため、必要な場合には「パンツ型状態での縦方向」、「平面状態での長手方向」等、両者を区別して扱う。なお、
図2Aでおむつ1を長手方向に沿って伸長させた状態(すなわち平面状態)とは、後述するレッグギャザー弾性部材23やベルト弾性部材33による収縮力に抗しておむつ1を長手方向に伸長させた場合に、各弾性部材が配置されている部分において実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで伸長した状態のことを言う。さらに言うと、長手方向に伸長させた状態におけるおむつ1の形状は、レッグギャザー弾性部材23等の各種弾性部材による収縮力が発現していない場合において平坦に延びたときのおむつ1の形状と同じである。
【0032】
また、以下の説明では、吸収性本体10を長手方向に伸長させた状態で、着用者の腹側に当たる側を長手方向の前側(腹側)とし、着用者の背側に当たる側を長手方向の後側(背側)とする。平面状態のおむつ1の横方向は、
図1のパンツ型状態のおむつ1の横方向及び厚さ方向と同じ概念である。平面状態のおむつ1の厚さ方向は、長手方向及び横方向とそれぞれ直行する方向であり、着用者の肌と接触する側のことを「肌側」と言い、その逆側のことを「非肌側」と言う。
【0033】
図2A及び
図2Bに示されるように、平面状態のおむつ1において、吸収性本体10は長手方向に沿って配置されており、吸収性本体10の横方向両側には1対のレッグギャザー部20が配置されている。そして、吸収性本体10の一部及びレッグギャザー部20と厚さ方向の肌側に重複するように、1対のベルト部30が配置されている。第1実施形態のおむつ1では、
図3Aに示されるように、レッグギャザー部20とベルト部30とが一のシート部材であるサイドシート40によって形成されている。当該サイドシート40を長手方向に伸びる折り返し線FLにおいて横方向の内側に折り返すことによってレッグギャザー部20及びベルト部30が形成される。
【0034】
レッグギャザー部20には、横方向外側端部20eо(折り返し線FL)において一部が切り欠かれたレッグギャザー切り欠き部25が設けられている。同様に、ベルト部30には、横方向外側端部30eо(折り返し線FL)において一部が切り欠かれたベルト切り欠き部35が設けられている。このレッグギャザー切り欠き部25及びベルト切り欠き部35によって脚回り開口部HLが形成される。
【0035】
ベルト部30は、吸収性本体10の長手方向前側端部10efから脚回り開口部HLに向かって傾斜した1対の第1接合部WL1によって吸収性本体10(厳密に言うと、吸収性本体10の肌側に配置されているトップシート13)及びレッグギャザー部20と接合されている。同様に、ベルト部30は、吸収性本体10の長手方向後側端部10erから脚回り開口部HLに向かって傾斜した1対の第2接合部WL2によって吸収性本体10及びレッグギャザー部20と接合されている。第1接合部WL1及び第2接合部WL2は、熱溶着や超音波溶着等の公知の溶着手段によって接合されるが、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接合されるのであっても良い。
【0036】
なお、第1接合部WL1が長手方向となす角度のうち小さい方の角度を傾斜角度θ1、第2接合部WL2が長手方向となす角度のうち小さい方の角度を傾斜角度θ2とすると、傾斜角度θ1は、長手方向に対する第2接合部WL2の傾斜角度θ2よりも大きくなるように各接合部が形成される。詳細は後述するが、各接合部の傾斜角度θ1,θ2の大きさをこのように調整することにより、パンツ型に形成したときにおむつ1をショーツやブリーフのような下着に近い形状とするとともに、着用時のフィット性を良好なものにすることができる。
【0037】
このような平面状態のおむつ1を一対のベルト部30,30において横方向の内側端部30ei,30ei同士を横方向の両側に開きながら、吸収性本体10を長手方向の中央位置CL付近で二つ折りすることにより、パンツ型のおむつ1として着用可能な状態となる。このとき、吸収性本体10の長手方向前側端部10ef、長手方向後側端部10er及び、一対のベルト部30の内側端部30eiによって胴回り開口部HBが形成される(
図1参照)。
【0038】
図2Aに示されるように、吸収性本体10は、長手方向に伸びる略長方形の部材(
図3A参照)を第1接合部WL1及び第2接合部WL2に沿って切断することにより、長手方向の各端部がそれぞれ平面視略V字形に先細った形状のシート状部材である。吸収性本体10は、吸収体11と、同吸収体11を肌側から覆って設けられたトップシート13(肌側シートに相当)と、同吸収体11を非肌側から覆って設けられたバックシート15(非肌側シートに相当)と、を有する。これら各部材13,11,15は、それぞれ厚さ方向に隣接する部材と、ホットメルト接着剤等で接合されている(
図2B及び
図3B参照)。なお、同接着剤の塗布パターンとしては、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等を例示できて、このことは、後で出てくる他の接着剤についても同様である。
【0039】
吸収体11は、所定の液体吸収性素材が所定形状(例えば、平面視略砂時計形状)に成形された吸収性コアと、該吸収性コアの外周面を被覆するコアラップシートとを有し、おむつ1の着用時において尿等の排泄液を吸収する部材である。液体吸収性素材としては、パルプ繊維等の液体吸収性繊維や、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を例示できる。コアラップシートとしては、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを使用可能である。なお、吸収体11の形状は、
図3Aに示されるような平面視略砂時計形状に限らず、他の形状であっても良い。
【0040】
トップシート13は、液透過性を有する柔軟なシート部材で形成され、例えばエアスルー不織布等のシート部材を用いることができる。トップシート13の平面サイズは、吸収体11の長手方向の両側及び横方向の両側から突出するようなサイズである。
【0041】
バックシート15は、
図3Bに示されるように防漏シート15f及び外装シート15nの2枚のシート部材を厚さ方向に重ねて接合することによって形成されている。防漏シート15fは、ポリエチレン(PE)フィルム又はポリプロピレン(PP)フィルム等からなる液不透過性のシート部材であり、バックシート15の厚さ方向の肌側に配置される。外装シート15nは、不織布等からなるシート部材であり、バックシート15の厚さ方向の非肌側に配置され、吸収性本体10の外装を構成する部材である。但し、バックシート15は、一定の防漏性を有していれば、上述のような構成には限られない。バックシート15も、吸収体の長手方向の両側及び横方向の両側から突出するような平面サイズのシートである。そして、トップシート13とバックシート15とは、互いの長手方向両端部の略V字形が概ね揃うように厚さ方向に重ね合わせて接合され、これにより、シート13,15同士の間に吸収体が保持されている。
【0042】
レッグギャザー部20は、
図3A及び
図3Bに示されるように、吸収性本体10の横方向両側に接合された長手方向に長いシート部材であり、おむつ1をパンツ型に形成する際には、脚回り開口部HLに沿って収縮して襞状のレッグギャザーを形成する。レッグギャザー部20は、不織布等からなる第1シート21と第2シート22を厚さ方向に二枚重ねにして形成されている。なお、吸収性本体10とレッグギャザー部20との接合は、レッグギャザー部20の横方向の内側端部が吸収性本体10のトップシート13とバックシート15との間に挟み込まれた状態でホットメルト接着剤等により接着されることで行われている。
【0043】
ベルト部30は、
図3A及び
図3Bに示されるように、レッグギャザー部20の横方向両側に設けられた長手方向に長いシート部材であり、おむつ1をパンツ型に形成する際には胴回りのベルトを形成する(
図1参照)。ベルト部30は、不織布等からなる第1シート31と第2シート32とを厚さ方向に二枚重ねにして形成されている。
【0044】
上述したように、本実施形態においてレッグギャザー部20とベルト部30とは一の部材であるサイドシート40によって一体的に形成されている。すなわち、レッグギャザー部20の第1シート21及びベルト部30の第1シート31は一のシート部材41によって構成され、レッグギャザー部20の第2シート22及びベルト部30の第2シート32も一のシート部材42によって構成されている。本実施形態では、サイドシート40のうち折り返し線FLよりも横方向内側の部分がレッグギャザー部20となり、折り返し線FLの横方向外側の部分がベルト部30となる。
【0045】
そして、この折り返し線FLを跨ぐようにして脚回り開口部HLが形成されている。脚回り開口部HLは、上述したようにレッグギャザー部20の第1シート21及び第2シート22を切り欠いたレッグギャザー切り欠き部25と、ベルト部30の第1シート31及び第2シート32を切り欠いたベルト切り欠き部35とによって形成されている。このレッグギャザー切り欠き部25とベルト切り欠き部35とは、折り返し線FLに関して線対称ではない非対称形状に形成されている。
【0046】
但し、本実施形態において、レッグギャザー切り欠き部25とベルト切り欠き部35とが、必ずしも両方形成されている必要は無い。例えば、レッグギャザー部20にレッグギャザー切り欠き部25が形成され、ベルト部30にベルト切り欠き部35が形成されていない構成であっても良い。この場合、脚回り開口部HLはレッグギャザー切り欠き部25によって形成される。逆に、レッグギャザー切り欠き部25が形成されず、ベルト切り欠き部35のみが形成されているのであっても良く、この場合、脚回り開口部HLはベルト切り欠き部35によって形成される。また切り欠き部25,35は、
図3Aに示されるような略楕円形状ではなく、スリット状であっても良い。
【0047】
レッグギャザー部20の第1シート21と第2シート22との間には糸ゴム等からなるレッグギャザー弾性部材23が長手方向に伸長した状態で配置され、ホットメルト接着剤等によって固定されている。
図3Aにおいては、レッグギャザー切り欠き部25の横方向内側端部(すなわち、脚回り開口部HLの横方向内側端部)よりもさらに内側の位置に2条のレッグギャザー弾性部材23が配置されている。当該レッグギャザー弾性部材23によって、レッグギャザー部20に長手方向の伸縮性が付与される。これにより、おむつ1をパンツ型に形成する際に、脚回り開口部HLに沿ってレッグギャザー部20が収縮し、襞状のレッグギャザーが形成され、着用者の脚回りにおけるフィット性を向上させることができる。
【0048】
同様に、ベルト部30の第1シート31と第2シート32との間には糸ゴム等からなるベルト弾性部材33が長手方向に伸長した状態で配置され、ホットメルト接着剤等によって固定されている。
図3Aにおいては、ベルト切り欠き部35の横方向外側端部(すなわち、脚回り開口部HLの横方向外側端部)よりもさらに外側の領域に複数のベルト弾性部材33が横方向に並んで配置されている。当該ベルト弾性部材33によって、ベルト部30に長手方向の伸縮性が付与される。これにより、おむつ1をパンツ型に形成する際に、ベルト部30のほぼ全域に亘って胴回り開口部HBに沿った収縮力が発現し、おむつ1の着用時における胴回りのズレ落ちが抑制される。
【0049】
なお、レッグギャザー弾性部材23とベルト弾性部材33とは、
図2Bに示されるように厚さ方向において互いに重ならない位置に配置されている。すなわち、厚さ方向の上側から見た場合にレッグギャザー弾性部材23とベルト弾性部材33との各々が、横方向において交互に配置されるような位置関係となる。これにより、パンツ型に形成されたおむつ1の脚回り開口部HL付近において、弾性部材32、33が配置されている領域が面状にフィットしやすくなる。
【0050】
さらに、シート部材41(21,31)とシート部材42(22,32)との間には、伸縮性を有する不織布等によって形成された伸縮シート43が設けられている。伸縮シート43は、
図3Aの斜線部で示されるように脚回り開口部HLの横方向の幅よりも広い帯状の弾性シート部材であり、脚回り開口部HLと同形状の開口を有し、長手方向に伸長された状態でシート部材41,42にホットメルト接着剤等で固定されている。これにより、脚回り開口部HLの周縁部が、その全周に亘って伸縮シート43によって補強される。また、平面状の伸縮シート43によって発現される収縮力によって、脚回り開口部HLの周縁部におけるフィット性がより向上する。仮に、脚回り開口部HLの周縁部に伸縮シート43が設けられておらず、レッグギャザー弾性部材23のような糸ゴムのみが設けられていたとすると、糸ゴムと糸ゴムとの間に皺が形成されやすくなり、おむつ1の着用時において脚回り開口部HLにもたつきが生じたり、糸ゴムの跡が肌に残りやすくなったりするおそれがある。これに対して、脚回り開口部HLの周縁部に平面状の伸縮シート43が配置されることで、フィット性を向上させることができる。
【0051】
かかる伸縮シート43の一例としては、ポリウレタン系エラストマー等の略弾性を示すエラストマー繊維とポリオレフィン系樹脂等の略非弾性を示す熱可塑性樹脂繊維とを有した不織布に対して所謂ギア延伸加工を施して伸縮性が発現した不織布を例示できるが、何等これに限らない。
【0052】
また、
図3Bに示されるように、ベルト部30の横方向外側端部領域は、第1ベルト端部折り返し線FLb1及び第2ベルト端部折り返し線FLb2にて横方向の内側に2回折り返され、ホットメルト接着剤等で当該折り返し状態に固定されている。すなわち、第2ベルト端部折り返し線FLb2は、
図2Aにおいて、ベルト部30の横方向内側端部30eiとなる部分であり、胴回り開口部HBとなる部分である。胴回り開口部HBをこのような端部折り畳み構造とすることにより、おむつ1を着用する際に、着用者の胴周りにおけるストレスを軽減することができる。但し、当該横方向端部領域は必ずしも上述のような折り畳み構造とされていなくても良い。
【0053】
<おむつ1の製造について>
続いて、おむつ1を製造する方法について簡単に説明する。
図4は、おむつ1の製造工程の一例について説明する図である。
【0054】
この例でおむつ1は、材料となる基材シートを搬送方向に搬送させながら、該基材シートに対して所定の加工(S101〜S105)を施すことによって製造される。以下では、シート部材の搬送方向を「MD方向」と呼び、MD方向と直交する方向を「CD方向」と呼ぶ。MD方向は、
図2Aの長手方向(縦方向)に沿った方向であり、CD方向は、
図2Aの横方向に沿った方向である。
【0055】
第1実施形態でおむつ1の基材シートとなるシート部材は、吸収性本体連続シート10Aとサイド連続シート40Aである。吸収性本体連続シート10Aは、複数の吸収性本体10が長手方向(縦方向)に連続的に並んだシート部材である。すなわち、吸収性本体連続シート10Aは、MD方向に伸びるトップシート13の連続シートとバックシート15の連続シートとの厚さ方向の間に吸収体11が複数挟み込まれた状態のシート部材である。同様に、サイド連続シート40Aは、レッグギャザー部20とベルト部30とを形成するサイドシート40が長手方向(縦方向)に連続的に並んだシート部材である。
【0056】
先ず、
図4に示されるように吸収性本体連続シート10AのCD方向(横方向)両側にサイド連続シート40Aが接合された状態の基材シートがMD方向に連続的に搬送される(S101)。
【0057】
続いて、搬送される基材シートに対して、吸収体11のCD方向(横方向)両側で折り返し線FLを跨ぐ位置に脚回り開口部HLたるレッグギャザー切り欠き部25及びベルト切り欠き部35を形成する(S102)。当該切り欠き部は、不図示のカッターロール等を用いて形成される。なお、
図4のS102の工程で表される状態は、
図3Aの展開状態のおむつ1に相当する状態である。
【0058】
続いて、サイド連続シート40Aのうちベルト部30に相当する部分を折り返し線FLにてCD方向(横方向)の内側に折り返し、吸収性本体10の一部及びレッグギャザー部とベルト部30とが厚さ方向に重複した状態になるようにする(S103)。
【0059】
続いて、超音波融着や熱融着等の接合手段によって第1接合部WL1及び第2接合部WL2を形成し、ベルト部30と、吸収性本体10及びレッグギャザー部20とを接合する(S104)。第1接合部WL1及び第2接合部WL2は、上述したように各々の傾斜角度θ1,θ2が所定の条件(θ1>θ2)を満たすように形成される。
【0060】
続いて、基材シートのカッティングが行われる(S105)。具体的には、MD方向に連続する基材シートからおむつ1を個体ごとに切り離し、さらに、第1接合部WL1及び第2接合部WL2に沿って、長方形の四隅を切断する。これにより、
図2Aで示される平面状態のおむつ1が形成される。
【0061】
<おむつ1のフィット性等について>
本実施形態のおむつ1は、着用時において着用者が良好なフィット性を感じることができるように種々の構造を有している。特に、脚回り開口部HLが形成される位置を調整することにより、従来のおむつと比較して、脚繰り部におけるフィット性を向上させると共に、外観上おむつ1の前後を判別しやすくしている。以下、これらの点について説明する。
【0062】
図5は、おむつ1における脚回り開口部HLの配置について説明する図である。同
図5では、
図3Aと同様におむつ1を平面展開した状態において、横方向右側に配置されている脚回り開口部HLについて拡大して示している。
【0063】
本実施形態のおむつ1では、脚回り開口部HLの長手方向前端の位置HLefと吸収性本体10の長手方向前側端部10efとの間の長手方向の距離glfが、脚回り開口部HLの長手方向後端の位置HLerと吸収性本体10の長手方向前側端部10erとの間の長手方向の距離glrよりも小さくなるように、脚回り開口部HLが配置されている。つまり脚回り開口部HLは、長手方向の前方寄りに配置されており、脚回り開口部HLの長手方向の中央位置CLhlは、吸収性本体10の長手方向中央位置CLよりも長手方向の前側に位置している。
【0064】
脚回り開口部HLがおむつ1の長手方向前方寄りに配置されていることによって、着用者がおむつ1を着用した状態で前側に脚を動かす動作を行う際に、脚回り開口部HLによって脚の動きが干渉されることが抑制される。例えば、着用者がおむつ1を着用した状態で歩行する場合に、脚の付け根部分が脚回り開口部HLの周縁部に引っかかってしまい、脚を前方に動かし難くなるといった問題が生じ難くなる。また、脚回り開口部HLが前方寄りに配置されるということは、吸収性本体10の長手方向中央位置CLよりも後方の領域では開口面積が小さくなるということである。すなわち、長手方向の後方側では、おむつ1(吸収性本体10)の生地が存在している部分の面積(表面積)が広くなるということである。これにより、着用者の背側において着用者の臀部が広く覆われることになり、おむつ1の着用時におけるフィット性が向上する。
【0065】
さらに、脚回り開口部HLが前方寄りに配置され、おむつ1の背側領域における表面積が広くなることにより、外観上、おむつ1の前側と後側とを判別することが容易になる。これにより、おむつ1が前後逆に装着されることによって、フィット性が悪化したり着用者の身体と脚回り開口部HLとの間に隙間が生じて排泄物がおむつ1の外部に漏出しやすくなったりする等の問題が生じ難くなる。
【0066】
また、脚回り開口部HLの配置を長手方向の前方寄りにすると共に、開口部HLの形状を
図5に示されるような略楕円形状にすることにより、おむつ1のフィット性をより良好なものにすることができる。
図5において、脚回り開口部HLを形成するレッグギャザー切り欠き部25は、長手方向の前端HLefと後端HLerとの間の領域で横方向の幅が最も広くなっている。具体的に、レッグギャザー切り欠き部25は前端HLefと後端HLerとの間で横方向内側に凸となる緩やかなカーブを描き、レッグギャザー切り欠き部25の横方向の幅は、長手方向の中央位置CLhl付近で最も広くなっている。したがって、脚回り開口部HL(レッグギャザー切り欠き部25)が形成されている領域におけるレッグギャザー部20の横方向の幅をW20とすると、W20は長手方向の中央位置CLhl付近で最も狭くなる。この中央位置CLhl付近は、おむつ1の着用時において、着用者の鼠径部に当接する領域である。したがって、当該中央位置CLhl付近においてレッグギャザー部20の横方向の幅W20を狭くすることで、レッグギャザー部20と着用者の鼠径部との干渉が抑制され、フィット性を向上させると共に、おむつ着用時の違和感を軽減することができる。
【0067】
同様に、脚回り開口部HLを形成するベルト切り欠き部35も、長手方向の前端HLefと後端HLerとの間の領域で横方向の幅が最も広くなっている。
図5において、ベルト切り欠き部35は前端HLefと後端HLerとの間で横方向外側に凸となる緩やかなカーブを描き、長手方向の中央位置CLhl付近で横方向の幅が最も広くなっている。したがって、脚回り開口部HL(ベルト切り欠き部35)が形成されている領域におけるベルト部30の横方向の幅をW30とすると、W30は長手方向の中央位置CLhl付近で最も狭くなる。この中央位置CLhlは、おむつ1の着用時において着用者の腰骨(骨盤)周辺に当接し、おむつ1を上方に引き上げる動作を行う際に、着用者がベルト部30を掴んで引っ張る領域である。したがって、当該中央位置CLhl付近においてベルト部30の横方向の幅を狭くしておくことで、着用者は当該ベルト部30をしっかりと握っておむつ1を着用することが可能となり、おむつ1を身体にフィットさせやすくなる。また、当該部分におけるベルト部30の幅が細く見えることにより、おむつ1の外観がより下着に近くなるため、「おむつ」を着用することに対する着用者のためらいや抵抗感を軽減することができる。
【0068】
なお、脚回り開口部HLは、長手方向後側の領域よりも長手方向前側の領域において開口面積が大きくなるように形成されていることが望ましい。本実施形態では、長手方向前側の領域における脚回り開口部HLの横方向の幅は、当該長手方向前側の領域に対応する長手方向後側の領域における脚回り開口部HLの横方向の幅以上となっている。すなわち、脚回り開口部HL前端HLefから長手方向の内側に所定距離hだけ離れた位置における、レッグギャザー切り欠き部25の横方向の幅とベルト切り欠き部35の横方向の幅との合計値は、脚回り開口部HL後端HLerから長手方向の内側に所定距離hだけ離れた位置における、レッグギャザー切り欠き部25の横方向の幅とベルト切り欠き部35の横方向の幅との合計値以上である。このような形状であれば、脚回り開口部HLの大きさは、着用者の腹側(前側)において広く、着用者の背側(後側)において狭くなる。したがって、おむつ1の着用時において、前側では脚をより動かしやすくなり、後側では着用者の臀部がより広く覆われやすくなる。
【0069】
その際、少なくとも長手方向の前側領域では、レッグギャザー切り欠き部25の横方向の幅がベルト切り欠き部35の横方向の幅よりも大きくなるように形成されていることが望ましい。すなわち、脚回り開口部HLの前端HLefから長手方向の内側に所定距離hだけ離れた位置において、レッグギャザー切り欠き部25の横方向の幅がベルト切り欠き部35の横方向の幅よりも長いことが望ましい。レッグギャザー切り欠き部25が前側で大きく切り欠かかれていることにより、パンツ型に形成されたおむつ1を装着する動作において着用者が脚回り開口部HLに脚を通す際に、脚の指がレッグギャザー部25の前側部分に引っかかり難くなり、スムーズにおむつ1を着用しやすくなる。また、おむつ1着用後の脚回りの形状に沿って脚回り開口部HLが形成されやすくなるため、脚の動きが阻害され難くなると共に、すっきりとしたショーツやブリーフのような下着らしい外観を実現することができる。
【0070】
また、おむつ1では、レッグギャザー部20に長手方向に沿って配置されているレッグギャザー弾性部材23と脚回り開口部HL(レッグギャザー切り欠き部25)との位置関係を調整することにより、フィット性を高めている。
図5で、脚回り開口部HLの長手方向の中央位置CLhlにおける脚回り開口部HLの端縁部と、横方向の最も外側に配置されているレッグギャザー弾性部材23との間の横方向の距離W23cは、脚回り開口部HLの長手方向前端HLefにおける脚回り開口部HLの端縁部と、横方向の最も外側に配置されているレッグギャザー弾性部材23との間の横方向の距離W23fよりも小さい。同様に、距離W23cは、脚回り開口部HLの長手方向後端HLerにおける脚回り開口部HLの端縁部と、横方向の最も外側に配置されているレッグギャザー弾性部材23との間の横方向の距離W23rよりも小さい。
【0071】
着用者の鼠蹊部と当接する脚回り開口部HLの中央位置CLhl付近においてレッグギャザー弾性部材23を脚回り開口部HLの近くに配置することで、脚回り開口部HLに対してレッグギャザー弾性部材23による収縮力を作用させやすくしている。これにより、中央位置CLhl付近では、脚回り開口部HLの端縁部に沿ってレッグギャザー部20が収縮しやすくなり、着用者の鼠蹊部の形状に沿ってレッグギャザーをフィットさせることができる。そして、この領域では、上述のようにレッグギャザー部20の横方向の幅W20が狭くなっているため、レッグギャザー部20に対してレッグギャザー弾性部材23による収縮力を集中して作用させることができる。これにより、中央位置CLhl付近でレッグギャザー部20が不均等に収縮することが抑制され、鼠蹊部に弛みが生じたり大きな皺ができたりすることによる不快感を着用者に与え難くなる。一方、脚回り開口部HLの両端部HLef,HLerでは、レッグギャザー弾性部材23と脚回り開口部HLとの間隔が遠くなるため、脚回り開口部HLの端縁部に作用する収縮力が分散しやすく、レッグギャザー部20の過度の収縮が抑制され、臀部や腹部が覆われやすくなる。
【0072】
ところで、ベルト部とレッグギャザー部との間に脚回り開口部が形成されるタイプの使い捨ておむつでは、その構造上レッグギャザー部とベルト部との境界部において応力が集中しやすくなる。そして、おむつを着用する際に当該境界部に過度な応力が作用すると、不織布等が裂ける起点となっておむつが破れてしまうおそれがある。本実施形態のおむつ1の場合、レッグギャザー部20とベルト部30との境界部は、脚回り開口部HLの長手方向前端HLef及び後端HLerに形成され、当該部分に応力が集中しやすくなる。
【0073】
しかし、おむつ1ではレッグギャザー部20とベルト部30とが同一のシート部材(サイドシート40)によって構成されており、両者の境界部(HLef,HLer)には接合箇所等が設けられていないため、当該部分に応力が集中したとしても裂け目の起点は形成され難い。したがって、おむつ1を着用する際に脚回り開口部HLが破れてしまう等の問題は生じ難い。
【0074】
さらに、おむつ1では、脚回り開口部HLを取り囲むように伸縮シート43が配置されており、該伸縮シート43には脚回り開口部HLと同形状の開口が設けられている。この伸縮シート43によって脚回り開口部HLの周縁部が補強されるので、おむつ1を着用する際に脚回り開口部HLが破れることが抑制される。そして、シート状の伸縮シート43がレッグギャザー部20と重複して設けられていることにより、脚回り開口部HLの周縁部を面でフィットさせることができるようになるため、おむつ1着用時におけるレッグギャザー回りの肌触りが良好になる。
【0075】
本実施形態において伸縮シート43のレッグギャザー部20側の横方向の幅は、
図5に示されるように、長手方向の中央位置CLhlにおける幅W43cが、長手方向の前端HLefにおける幅W43f及び長手方向の後端HLerにおける幅W43rよりも狭くなっている。長手方向の中央位置CLhl付近において伸縮シート43の幅を狭くすることで鼠径部に作用する収縮力が分散され難くなり、フィット性をより高くすることができる。一方、脚回り開口部HLの両端部HLef,HLerにおいて伸縮シート43の幅が広くなるので、腹部や臀部領域では収縮力が広い範囲に作用しやすくなる。これにより、着用者の肌への締め付け力が分散され、過度な締め付けによる不快感を生じ難くすることができる。
【0076】
また、おむつ1では、吸収性本体10及びレッグギャザー部20とベルト部とを接合する接合部(第1接合部WL1及び第2接合部WL2)の傾斜角度を調整することにより、着用時のフィット性を高めている。
図6Aは、従来のパンツ型おむつを着用した状態について表す側面図である。
図6Bは、第1実施形態のおむつ1を着用した状態について表す側面図である。
【0077】
従来のパンツ型おむつでは、おむつの前側(腹側)に形成される接合部(本実施形態の第1接合部WL1に相当)と後側(背側)に形成される接合部(本実施形態の第2接合部WL2に相当)とは、長手方向について対称に形成されるのが一般的であった。すなわち、前側接合部の長手方向に対する傾斜角度と、後側接合部の長手方向に対する傾斜角度とが同じ角度となるように各接合部が形成されていた。この場合、パンツ型に形成した状態で吸収性本体とベルト部とのなす角度が前後で等しくなる。その結果、
図6Aに示されるように、おむつ着用時において吸収性本体の後側(背側)が下方に垂れ下がりやすくなり、おむつ本体と着用者の臀部との間に隙間を生じやすくなるおそれがあった。また、外観上、臀部側がだぶついた印象となり、着用者は「おむつ」を着用していることを意識しやすくなるため、抵抗感を生じさせる場合があった。
【0078】
これに対して、おむつ1では、第1接合部WL1の長手方向に対する傾斜角度θ1が第2接合部WL2の長手方向に対する傾斜角度θ2よりも大きくなるように調整されている(θ1>θ2)。この場合、パンツ型に形成した状態で吸収性本体10とベルト部30とのなす角度は、前側で大きく、後側で小さくなりやすい。その結果、
図6Bに示されるように、おむつ着用時において吸収性本体の後側(背側)が着用者の臀部の上方まで引き上げられ、着用者の臀部との間に隙間が生じ難く、フィット性が向上する。また、外観上、下着を着用しているように見え、おむつ1の前後を判別しやすくなるのに加えて臀部がすっきりとした印象となるため、着用者に「おむつ」を着用することに対する抵抗感を与え難くすることができる。
【0079】
なお、本実施形態では
図5で説明したように、長手方向後側において脚回り開口部HLと吸収性本体10の端部との間の距離glrが長く、長手方向前側において脚回り開口部HLと吸収性本体10の端部との間の距離glfが短く形成されている。したがって、長手方向後側では第2接合部WL2の長手方向に対する傾斜角度θ2を小さく、長手方向前側では第1接合部WL1の長手方向に対する傾斜角度θ1を大きく取りやすくなっている。これにより、長手方向後側(背側)では長手方向前側(腹側)と比較してベルト部30の幅を広くしつつ、該ベルト部30を上方まで引き上げやすくすることが可能となり、おむつ1の良好なフィット性が実現される。
【0080】
また、
図3Aに示されるように、おむつ1では、第1接合部WL1及び第2接合部WL2の端部がそれぞれ脚回り開口部HLと交差していない。言い換えると、第1接合部WL1及び第2接合部WL2と脚回り開口部HLとの間には所定の間隔が設けられる。仮に第1接合部WL1(第2接合部WL2)が脚回り開口部HLと交差するように形成されていると、おむつ1の着用時に当該交差部において応力が集中して裂け目の起点が形成され、脚回り開口部HLが破れやすくなるおそれがある。しかし、本実施形態のおむつ1では、脚回り開口部HLと各接合部とが交差していないため、そのような裂け目の起点は形成され難く、脚回り開口部HLも破れ難い。
【0081】
===第2実施形態===
第2実施形態では、レッグギャザー部20とベルト部30とが異なる部材によって形成されたパンツ型の使い捨ておむつ2(以下、おむつ2とも呼ぶ)について説明する。
図7Aは、吸収性本体10の長手方向に沿って伸長させた状態のおむつ2について表す平面図である。
図7Bは、
図7AのC−C断面について表す概略断面図である。
【0082】
おむつ2はその製造方法が第1実施形態のおむつ1と異なるが、おむつ2の構造はおむつ1とほぼ同様である。すなわち、吸収性本体10、レッグギャザー部20、及びベルト部30の構成はそれぞれ第1実施形態における各部の構成とほぼ同様である。以下、おむつ1と異なる点について説明する。
【0083】
おむつ2は、レッグギャザー部20とベルト部30とが異なる部材によって構成されているため、レッグギャザー部20の横方向外側端部20eо及びベルト部30の横方向外側端部30eоには、両者を接合するベルト横方向接合部WL30が形成されている。ベルト接合部WL30はホットメルト接着剤等を用いた接着によって形成されるが、ベルト横方向接合部WL30が溶着によって形成されるのであっても良い。
【0084】
また、おむつ2においてレッグギャザー部20に設けられるレッグギャザー弾性部材24は、長手方向に伸びつつ
図7Aに示されるように一部が横方向に湾曲して配置されている。但し、レッグギャザー弾性部材24は、おむつ1のレッグギャザー弾性部材23と同様に長手方向(縦方向)に沿って略直線状に配置されるのであっても良い。
【0085】
図8は、おむつ2の製造工程の一例について説明する図である。おむつ2を製造する際には、材料となる基材シートを搬送方向(MD方向)に搬送させながら、該基材シートに対して所定の加工(S201〜S204)が施される。このうち、S204〜S205は第1実施形態のS104〜S105と同様であるため説明を省略する。
【0086】
第2実施形態でおむつ2の基材シートとなるシート部材は、吸収性本体連続シート10Aとレッグギャザー連続シート20Aと、ベルト連続シート30Aである。レッグギャザー連続シート20Aは、レッグギャザー部20が長手方向(縦方向)に連続的に並んだシート部材である。ベルト連続シート30Aは、ベルト部30が長手方向(縦方向)に連続的に並んだシート部材である。
【0087】
おむつ2を製造する際には、先ず、吸収性本体連続シート10AのCD方向(横方向)両側にレッグギャザー連続シート20Aが接合された状態のシート部材と、ベルト連続シート30Aとを共にMD方向に搬送しつつ、レッグギャザー連続シート20Aの上方からベルト連続シート30Aを重ねて接合する(S201)。レッグギャザー連続シート20Aとベルト連続シート30Aとの接合は、上述したように、両者の横方向端部同士をホットメルト接着剤等を用いて接合することによって行われ、これにより、接合部WL30が形成される。
【0088】
続いて、開口部HLたるレッグギャザー切り欠き部25及びベルト切り欠き部35を形成する(S202)。これらの切り欠き部はカッターロール等を用いて上下方向からそれぞれ形成される。なお、S202の工程において切り欠き部が形成されるのではなく、S201の工程の前段階で、あらかじめレッグギャザー連続シート20A及びベルト連続シート30Aにそれぞれ切り欠き部を形成しておき、その後両者を接合して接合部WL30を形成するようにしても良い。
【0089】
続いてS203の工程で
図4のS104と同様に第1接合部WL1及び第2接合部WL2が形成され、S204の工程で
図4のS105と同様に基材の切断が行われる。このようにしておむつ2が製造される。
【0090】
完成したおむつ2は、第1実施形態のおむつ1と略同様の構造を有する。したがって、おむつ2に形成される脚回り開口部HLは、
図5で説明したように長手方向の前方寄りに配置されることになる。これにより、脚回り開口部HL付近においておむつ2のフィット性を良好なものにすると共に、前後の判別が容易になる。
【0091】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0092】
上述の実施形態では、脚回り開口部HLの周縁部に配置される伸縮シート43が、レッグギャザー部20及び/若しくはベルト部30を構成する2枚のシート部材(例えばシート部材41,42)の間に設けられていたが、伸縮シート43が設けられる位置はこの限りではない。例えば、レッグギャザー部20及び/若しくはベルト部30の厚さ方向の肌側に設けられていても良いし、非肌側に設けられていても良い。