【解決手段】縦方向と横方向と前後方向とを有するおむつ1であって、縦方向に沿った吸収性本体2と、横方向に沿ったベルト部31と、縦方向に沿ったレッグギャザー部32とを備えるシート部材3と、シート部材3の少なくとも一部に重なって配置された弾性シート部材4と、を有し、シート部材3と弾性シート部材4とを貫通する脚回り開口部5が形成されており、縦方向の上方側から脚回り開口部5に向かって、横方向外側へ傾斜した、少なくとも吸収性本体2及びシート部材3を接合する第1及び第2接合部61,62が、前方及び後方にそれぞれ設けられており、弾性シート部材4は、脚回り開口部5の周縁50全周に亘って配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0011】
縦方向と横方向と前後方向とを有する吸収性物品であって、前記縦方向に沿った吸収性本体と、前記横方向に沿ったベルト部と、前記縦方向に沿ったレッグギャザー部とを備えるシート部材と、前記シート部材の少なくとも一部に重なって配置された弾性シート部材と、を有し、前記シート部材と前記弾性シート部材とを貫通する脚回り開口部が形成されており、前記縦方向の上方側から前記脚回り開口部に向かって、前記横方向外側へ傾斜した、少なくとも前記吸収性本体及び前記シート部材を接合する接合部が、前方及び後方にそれぞれ設けられており、前記弾性シート部材は、前記脚回り開口部の周縁全周に亘って配置されている吸収性物品が明らかとなる。
【0012】
このような吸収性物品によれば、着用者の脚が接触する脚回り開口部の周縁において、弾性シート部材が全周に亘って途切れることなく配置されているため、ベルト部側とレッグギャザー部側とにおいて肌へのフィット感に偏りが生じにくくなると共に、弾性シート部材が肌に対して面でフィットするため、肌へのフィット感が良好となり、装着性が向上する。
【0013】
かかる吸収性物品であって、前記接合部の下方側の端と前記脚回り開口部の前記周縁とは、所定距離離れていることが望ましい。
【0014】
このような吸収性物品によれば、接合部の下方側の端は脚回り開口部の周縁まで到達しておらず、所定距離だけ離れているため、接合部の下方側の端が直接的に着用者の肌に接触しにくくなり、かつ弾性シート部材が肌に対して面で接触することで、肌に対する違和感を抑制することができる。
【0015】
かかる吸収性物品であって、前記弾性シート部材は、前記ベルト部の前記縦方向における下端部に配置されたベルト側弾性部と、前記レッグギャザー部の前記横方向における外端部に配置されたレッグギャザー側弾性部とを有し、前記ベルト側弾性部及び前記レッグギャザー側弾性部は、同じ方向に伸長された状態で前記シート部材に接合された後、前記脚回り開口部の前記周縁に沿って収縮していることが望ましい。
【0016】
このような吸収性物品によれば、ベルト部側に位置するベルト側弾性部とレッグギャザー部側に位置するレッグギャザー側弾性部とが、同じ方向に伸張された状態でシート部材に接合された後、脚回り開口部の周縁に沿って収縮するため、脚回りにおいて肌へのフィット感が均一になりやすく、弾性シート部材と肌との間に隙間が生じにくくなる。これにより、装着性がより向上する。
【0017】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー側弾性部の最下端での前記横方向の幅は、前記レッグギャザー側弾性部の後方側の最上端での前記横方向の幅よりも狭いことが望ましい。
【0018】
このような吸収性物品によれば、レッグギャザー側弾性部における着用者の股下側に対応する最下端では、横方向の幅を狭くすることでレッグギャザー側弾性部が有する弾性力を狭い範囲に集中して作用させることができ、肌との間に隙間が生じにくくなり漏れの抑制につながる。他方、着用者の臀部側に対応する前方側の最上端では、横方向の幅を広くすることにより弾性力を面で分散して作用させることができ、臀部への食い込みの抑制につながる。
【0019】
かかる吸収性物品であって、前記レッグギャザー側弾性部の最下端での前記横方向の幅は、前記レッグギャザー側弾性部の前方側の最上端での前記横方向の幅よりも狭いことが望ましい。
【0020】
このような吸収性物品によれば、レッグギャザー側弾性部における着用者の股下側に対応する最下端では、横方向の幅を狭くすることでレッグギャザー側弾性部が有する弾性力を狭い範囲に集中して作用させることができ、肌との間に隙間が生じにくくなり漏れの抑制につながる。他方、着用者の腹部側に対応する前方側の最上端では、横方向の幅を広くすることにより弾性力を面で分散して作用させることができ、腹部への食い込みの抑制につながる。
【0021】
かかる吸収性物品であって、前記弾性シート部材は、伸縮性不織布であることが望ましい。
【0022】
このような吸収性物品によれば、通気性がよく、かつ柔軟な伸縮性不織布を用いることによって、蒸れにくくなると共に、肌触りがよくなり、脚回りにおける肌への違和感を抑制することができる。また、不織布は繊維をそのままシート状にできるため、繊維を紡糸する必要がなく、コストの削減にもつながる。
【0023】
かかる吸収性物品であって、前方に設けられた前記接合部の前記縦方向に対する傾斜角度のうち小さい方の角度は、後方に設けられた前記接合部の前記縦方向に対する傾斜角度のうち小さい方の角度よりも大きいことが望ましい。
【0024】
このような吸収性物品によれば、吸収性物品の着用時において吸収性本体の後側(背側)が着用者の臀部の上方まで引き上げられるため、肌との間に隙間が生じにくくなり、装着性の向上につながる。また、外観において臀部がすっきりとした印象となり、着用者へ「おむつ」を着用することに対する抵抗感を与えにくくすることができる。
【0025】
===実施形態===
本発明の実施形態に係る吸収性物品の一例として、パンツ型の使い捨ておむつ1(以下では、単におむつ1とする)について説明する。
【0026】
<おむつ1の構成>
おむつ1の構成について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態に係るおむつ1の外観を示す概略斜視図である。
図2A及び
図2Bは、おむつ1の概略平面図であり、
図2Aは、おむつ1を前方から見た場合、
図2Bは、おむつ1を後方から見た場合を示している。
【0028】
このおむつ1は、着用時において
図1に示されるようなパンツ型の形状をしている。パンツ型の状態において、おむつ1は、互いに直交する「縦方向」と「横方向」と「前後方向」とを有している。なお、縦方向のうち、着用者の胴回り側を上側(上方)とし、着用者の股下側を下側(下方)とする。また、前後方向のうち、着用者の腹側を前側(前方)とし、着用者の背側を後側(後方)とする。
【0029】
図2A及び
図2Bに示すように、おむつ1は、縦方向に沿った吸収性本体2と、横方向に沿ったベルト部31及び縦方向に沿ったレッグギャザー部32を備えるシート部材3と、シート部材3の少なくとも一部に重なって配置された弾性シート部材4とを有している。
図1に示すように、おむつ1の縦方向の上側には胴回り開口部HBが形成され、横方向の両側には一対の脚回り開口部5が形成されている。
【0030】
吸収性本体2は、内部に吸収体21を備えており、帯状に形成されている。
図1に示すように、長手方向の一側が前側の上方に位置し、着用者の股下を介して長手方向の他側が後側の上方に位置している。
図1ならびに
図2A及び
図2Bでは、吸収体21を破線で示している。
【0031】
シート部材3のベルト部31は、本実施形態では、吸収性本体2の上側において横方向の両側に一対設けられている。シート部材3のレッグギャザー部32は、ベルト部31よりも下側において吸収性本体2の横方向の両側に一対設けられている。すなわち、本実施形態では、シート部材3は吸収性本体2の横方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0032】
弾性シート部材4は、
図2A及び
図2Bに示すように、ベルト部31の縦方向における下端部に配置されたベルト側弾性部41と、レッグギャザー部32の横方向における外端部に配置されたレッグギャザー側弾性部42とを有している。すなわち、弾性シート部材4は、ベルト部31側ではベルト部31の下側の一部に重なり、レッグギャザー部32側ではレッグギャザー部32の横方向の外側の一部に重なっている。なお、シート部材3と弾性シート部材4とは、一部が重なり合っている場合だけでなく、全体が重なり合っていてもよい。
【0033】
脚回り開口部5は、シート部材3と弾性シート部材4とを貫通して形成されている。これにより、弾性シート部材4は、脚回り開口部5の周縁50の全周に亘って配置されることとなる。仮に、着用者の脚が接触する脚回り開口部5の周縁50のうちベルト部31側の縁(一部の縁)にのみ弾性シート部材4が配置されている場合、つまり弾性シート部材4がベルト側弾性部41のみを有している場合には、レッグギャザー部32側が弾性を有しないため、レッグギャザー部32側においてシート部材3が肌にフィットしづらく、ベルト部31側とレッグギャザー部32側とにおいて肌へのフィット感に偏りが生じ、排泄物が漏れやすくなったり、おむつ1が適正な装着位置からずれてしまったりする可能性がある。
【0034】
その一方で、脚回り開口部5の周縁50において弾性シート部材4が全周に亘って途切れることなく配置されている場合には、ベルト部31側とレッグギャザー部32側とにおいて肌へのフィット感に偏りが生じにくくなると共に、弾性シート部材4が肌に対して面でフィットするため、肌へのフィット感が良好となる。よって、おむつ1の肌へのフィット感が改善されて装着性が向上する。
【0035】
おむつ1の前方には、
図2Aに示すように、縦方向の上方側(胴回り開口部HB)から脚回り開口部5に向かって横方向外側へ傾斜した第1接合部61が、横方向に並んで一対設けられている。本実施形態では、第1接合部61によって、シート部材3のベルト部31の縦方向上方における横方向の内側端部と吸収性本体2の縦方向の上方における横方向の外側端部とが接合されていると共に、弾性シート部材4のベルト側弾性部41の横方向の内側端部とレッグギャザー側弾性部42の縦方向の上方端部とが、一部において接合されている。
【0036】
同様に、おむつ1の後方には、
図2Bに示すように、縦方向の上方側から脚回り開口部5に向かって横方向外側へ傾斜した第2接合部62が、横方向に並んで一対設けられている。本実施形態では、第2接合部62によって、シート部材3のベルト部31の縦方向上方における横方向の内側端部と吸収性本体2の縦方向の上方における横方向の外側端部とが接合されていると共に、弾性シート部材4のベルト側弾性部41の横方向の内側端部とレッグギャザー側弾性部42の縦方向の上方端部とが、一部において接合されている。
【0037】
なお、第1接合部61及び第2接合部62は、必ずしも吸収性本体2とシート部材3とを接合すると共に、弾性シート部材4のベルト側弾性部41とレッグギャザー側弾性部42とを接合する必要はなく、少なくとも吸収性本体2とシート部材3とを接合していればよい。
【0038】
図2Aに示すように、第1接合部61の下方側の端610と脚回り開口部5の周縁50とは、所定の距離だけ離れている。同様に、
図2Bに示すように、第2接合部62の下方側の端620と脚回り開口部5の周縁50とは、所定の距離だけ離れている。すなわち、第1接合部61の下方側の端610及び第2接合部62の下方側の端620はそれぞれ、脚回り開口部5の周縁50まで到達しておらず、第1接合部61の下方側の端610と脚回り開口部5の周縁50との間、及び第2接合部62の下方側の端620と脚回り開口部5の周縁50との間にはそれぞれ、弾性シート部材4が介在している。
【0039】
これにより、第1接合部61の下方側の端610及び第2接合部62の下方側の端620が着用者の肌に直接的に接触しにくくなり、接触による肌のかゆみや違和感を抑制することができる。また、肌に対して弾性シート部材4が面で接触するため、肌へのフィット感が良好となり装着性の向上につながる。
【0040】
なお、第1接合部61の下方側の端610及び第2接合部62の下方側の端620は、必ずしも脚回り開口部5の周縁との間に所定の距離を空ける必要はなく、少なくとも縦方向の上方側から脚回り開口部5に向かって横方向外側へ傾斜して設けられていればよい。
【0041】
また、
図2A及び
図2Bに示すように、第1接合部61の縦方向に対する傾斜角度のうち小さい方の角度θ1は、第2接合部62の縦方向に対する傾斜角度のうち小さい方の角度θ2よりも大きい(θ1>θ2)。すなわち、一対の第1接合部61は、一対の第2接合部62よりも横方向の両側へ向かって広がるように設けられている。
【0042】
なお、第1接合部61と第2接合部62とは、必ずしも第1接合部61の当該傾斜角度θ1が第2接合部62の当該傾斜角度θ2よりも大きくなるように設けられている必要はなく、第1接合部61の当該傾斜角度θ1と第2接合部62の当該傾斜角度θ2とが等しくてもよいし(θ1=θ2)、第2接合部62の傾斜角度θ2が第1接合部61の傾斜角度θ1よりも大きくてもよい(θ2>θ1)。しかしながら、第1接合部61の当該傾斜角度θ1を第2接合部62の当該傾斜角度θ2よりも大きい方が望ましい。これについては、後述することとする。
【0043】
次に、おむつ1を吸収性本体2の長手方向に沿って伸長させた状態における各部材の構成について、
図3A及び
図3B、ならびに
図4A及び
図4Bを参照して説明する。
【0044】
図3Aは、吸収性本体2の長手方向に沿って伸長させた状態のおむつ1を示す平面図であり、
図3Bは、
図3AのA−A線断面図である。
図4Aは、製造工程の途中におけるおむつ1の展開状態を示す平面展開図であり、
図4Bは、
図4AのB−B線断面図である。
【0045】
おむつ1は、製造工程の最終段階では
図3Aに示されるような平面状態である。平面状態のおむつ1は、互いに直交する「長手方向」と「横方向」と「厚さ方向」とを有している。平面状態のおむつ1の長手方向は、吸収性本体2の長手方向に沿った方向であり、
図1ならびに
図2A及び
図2Bに示されるようなパンツ型の状態でのおむつ1の縦方向に対応する方向である。しかしながら、厳密には、パンツ型の状態におけるおむつ1の縦方向と平面状態におけるおむつ1の長手方向とは若干意味が異なるため、必要に応じて「パンツ型状態での縦方向」、「平面状態での長手方向」等、両者を区別して扱う。
【0046】
なお、
図3Aにおいて、おむつ1を吸収性本体2の長手方向に沿って伸長させた状態とは、おむつ1に配置された各弾性部材(例えば、弾性シート部材4等)による収縮力に抗しておむつ1を長手方向に伸長させた場合において、各弾性部材が配置されている部分において実質的に皺やギャザーが視認できなくなる程度まで伸長させた状態のことをいう。したがって、吸収性本体2の長手方向に伸長させた状態におけるおむつ1の形状は、各弾性部材による収縮力が発現していない状態において平坦に延びているおむつ1の形状と同じである。
【0047】
以下の説明では、おむつ1を長手方向に伸長させた状態において、着用者の腹側にあたる側を長手方向の前側、着用者の背側にあたる側を長手方向の後側とする。平面状態のおむつ1の横方向は、パンツ型状態のおむつ1の横方向と同じ概念である。平面状態のおむつ1の厚さ方向は、長手方向及び横方向に直交する方向であり、着用者の肌と接触する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0048】
図3A及び
図3Bに示すように、平面状態のおむつ1において、吸収性本体2の横方向の両側に一対のレッグギャザー部32が配置され、吸収性本体2の一部及びレッグギャザー部32と厚さ方向の肌側に重なるように一対のベルト部31が配置されている。このように配置されたベルト部31及びレッグギャザー部32は、
図4Aに示すように、長手方向に延びる折り返し線FLでシート部材3を横方向の内側に折り返すことによって形成されている。
図3Aならびに
図4A及び
図4Bでは、折り返し線FLを二点鎖線で示している。
【0049】
吸収性本体2は、長手方向に延びる略長方形状の部材(
図4A参照)を第1接合部61及び第2接合部62に沿って切断することにより、長手方向の各端部がそれぞれ先細った形状をしている。
図3B及び
図4Bに示すように、吸収性本体2は、尿等の液体を吸収する吸収体21と、吸収体21を厚さ方向の肌側から覆うトップシート22と、吸収体21を厚さ方向の非肌側から覆うバックシート23とを有する。
【0050】
吸収体21、トップシート22、及びバックシート23はそれぞれ、厚さ方向に隣り合う部材とホットメルト接着剤等の接着剤等で接合されている。なお、当該接着剤の塗布パターンとしては、Ωパターンやスパイラルパターン、ストライプパターン等が挙げられる。これは、他の接着剤の塗布パターンについても同様である。
【0051】
シート部材3は、不織布等を厚さ方向に二枚重ねにして形成され、その間には糸ゴム等の弾性部材が長手方向に伸長された状態で配置されている。
図4Bに示すように、ベルト部31の横方向の外側端部領域は、第1ベルト端部折り返し線FLb1及び第2ベルト端部折り返し線FLb2にて横方向の内側に2回折り返され、ホットメルト接着剤等で当該折り返し状態に固定されている。すなわち、第2ベルト端部折り返し線FLb2は、
図3Aにおいて、ベルト部31の横方向内側端部31eiとなる部分であり、胴回り開口部HBとなる部分である。
【0052】
胴回り開口部HBをこのような端部折り畳み構造とすることにより、おむつ1を着用する際に、着用者の胴周りにおけるストレスを軽減することができる。ただし、当該横方向端部領域は必ずしも上述のような折り畳み構造とされていなくても良い。
【0053】
図4Aに示すように、製造工程の途中におけるおむつ1の展開状態では、弾性シート部材4が、吸収性本体2の横方向の両側にそれぞれ、シート部材3と厚さ方向に重なるように接合されている。
【0054】
弾性シート部材4は、本実施形態では、伸縮性不織布である。伸縮性不織布の具体例としては、略弾性を示す熱可塑性エラストマー製繊維と、略非弾性を示す熱可塑性樹脂製繊維とを有した不織布に対してギア延伸処理等の適宜な延伸処理を施した不織布を例示できる。すなわち、かかる延伸処理を行うことによって、不織布に含まれる略非弾性の熱可塑性樹脂製繊維を塑性変形させたり、同繊維同士の接合点を破壊等させたりすれば、熱可塑性エラストマー製繊維の略弾性的な伸縮変形を阻害し難い構造に当該不織布を変化させることができ、これにより、当該不織布の伸縮性が発現されて、弾性シート部材4として使用可能な状態となる。
【0055】
なお、略弾性の熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等を例示することができる。また、略非弾性の熱可塑性樹脂製繊維としては、ポリオレフィン系樹脂を含む繊維などを例示でき、更にポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−αオレフィン共重合体等を例示することができる。
【0056】
このように、弾性シート部材4として通気性がよく、かつ柔軟な伸縮性不織布を用いることによって肌触りがよくなり、おむつ1の着用時において弾性シート部材4が脚回りに密着した状態となった場合であっても蒸れにくくなると共に、脚回りにおける肌への違和感を抑制することができる。また、不織布は繊維をそのままシート状にできるため、繊維を紡糸する必要がなく、コストの削減にもつながる。
【0057】
本実施形態では、弾性シート部材4は、ベルト側弾性部41及びレッグギャザー側弾性部42が長手方向に伸長された状態でシート部材3に接合されている。このときの伸長率は、ベルト側弾性部41では2.0倍〜4.0倍程度であり、レッグギャザー側弾性部42では1.3倍〜3.0倍程度である。
【0058】
弾性シート部材4において、ベルト側弾性部41は折り返し線FLよりも横方向の外側(ベルト部31側)に位置し、レッグギャザー側弾性部42は折り返し線FLよりも横方向の内側(レッグギャザー部32側)に位置している。したがって、製造工程の途中におけるおむつ1の展開状態(
図4Aに示す状態)において、シート部材3及び弾性シート部材4のうち、折り返し線FLよりも横方向の外側が着用者の胴回り側に対応する部分(ベルト部31及びベルト側弾性部41)となっており、折り返し線FLよりも横方向の内側(中央側)が着用者の股下側に対応する部分(レッグギャザー部32及びレッグギャザー側弾性部42)となっている。そして、弾性シート部材4は、シート部材3と共に折り返し線FLで横方向の内側に折り返されて、
図3Aに示すような状態となる。
【0059】
ベルト部31及びベルト側弾性部41には、横方向の外側端部310(折り返し線FL)において一部が切り欠かれた切り欠き311が設けられている。すなわち、切り欠き311は、ベルト部31とベルト側弾性部41とを厚さ方向に貫通している。
【0060】
同様に、レッグギャザー部32及びレッグギャザー側弾性部42には、横方向の外側端部320(折り返し線FL)において一部が切り欠かれた切り欠き321が設けられている。すなわち、切り欠き321は、レッグギャザー部32とレッグギャザー側弾性部42とを厚さ方向に貫通している。
【0061】
ベルト部31側の切り欠き311とレッグギャザー部32側の切り欠き321とによって胴回り開口5(
図1ならびに
図2A及び
図2B参照)が形成される。なお、本実施形態では、ベルト部31側の切り欠き311の形状とレッグギャザー部32側の切り欠き321の形状とが異なっているが、これに限らず、同一形状であってもよい。
【0062】
このような平面状態のおむつ1における一対のベルト部31の横方向の内側端部31ei同士を横方向の外側に向かって引っ張りながら開き、吸収性本体2を長手方向の中央位置CL付近で二つ折りすることにより、
図1ならびに
図2A及び
図2Bに示すようなパンツ型のおむつ1として着用可能な状態となる。
図3A及び
図4Aでは、中央位置CLを一点鎖線で示す。
【0063】
このとき、平面状態のおむつ1において長手方向に伸長された状態でシート部材3に接合されたベルト側弾性部41及びレッグギャザー側弾性部42は、パンツ型の状態において脚回り開口部5の周縁50に沿って収縮している。
【0064】
仮に、パンツ型の状態において、ベルト側弾性部41及びレッグギャザー側弾性部42が脚回り開口部5の周縁50に沿わない方向にも収縮している場合には、弾性シート部材4が脚回りに対して一様にフィットせず、肌との間に隙間を生じてしまう可能性がある。その一方、パンツ型の状態において、ベルト側弾性部41及びレッグギャザー側弾性部42が脚回り開口部5の周縁50に沿って収縮している場合には、脚回りにおいて弾性シート部材4が均一に肌にフィットして隙間が生じにくくなり、装着性が向上する。
【0065】
第1接合部61及び第2接合部62は、シート部材3及び弾性シート部材4が折り返し線FLで横方向の内側に折り返された状態(
図3Aに示す状態)において形成される。本実施形態では、第1接合部61及び第2接合部62は、端部が折り返し線FLまで延びるように形成されている。第1接合部61及び第2接合部62における接合方法としては、熱溶着や超音波溶着等の公知の溶着手段が挙げられるが、これに限らず、例えばホットメルト接着剤等の接着剤を用いて接着されてもよい。
【0066】
<レッグギャザー側弾性部42の構成>
次に、弾性シート部材4のレッグギャザー側弾性部42の構成について、
図5を参照して説明する。
【0067】
図5は、製造工程の途中のおむつ1の展開状態における脚回り開口部5、及びその周辺を示す部分拡大図である。
【0068】
レッグギャザー側弾性部42は、製造工程の途中におけるおむつ1の展開状態において、折り返し線FLの横方向の内側に配置されている。レッグギャザー側弾性部42は、長手方向の中央位置CLでの横方向の幅W1が、切り欠き311(脚回り開口5)の長手方向の後端での横方向の幅W2よりも狭い(W1<W2)。
【0069】
ここで、パンツ型の状態において、長手方向の中央位置CLは縦方向の最下端の位置に対応し、切り欠き311(脚回り開口5)の長手方向の後端は後方側における縦方向の最上端の位置に対応する。したがって、パンツ型の状態において、レッグギャザー側弾性部42の最下端での横方向の幅W1は、レッグギャザー側弾性部42の後方側の最上端での横方向の幅W2よりも狭い。
【0070】
パンツ型の状態における縦方向の最下端は着用者の股下側に対応するため、レッグギャザー側弾性部42の横方向の幅を狭くすることでレッグギャザー側弾性部42が有する弾性力を狭い範囲に集中して作用させることができ、肌との間に隙間が生じにくくなり排泄物の漏れの抑制につながる。他方、パンツ型の状態における後方側の最上端は着用者の臀部に対応するため、レッグギャザー側弾性部42の横方向の幅を広くすることでレッグギャザー側弾性部42が有する弾性力を面で分散して作用させることができ、臀部への食い込みの抑制につながる。
【0071】
また、レッグギャザー側弾性部42は、長手方向の中央位置CLでの横方向の幅W1が、切り欠き311(脚回り開口5)の長手方向の前端での横方向の幅W3よりも狭い(W1<W3)。
【0072】
ここで、パンツ型の状態において、長手方向の中央位置CLは縦方向の最下端の位置に対応し、切り欠き311(脚回り開口5)の長手方向の前端は前方側における縦方向の最上端の位置に対応する。したがって、パンツ型の状態において、レッグギャザー側弾性部42の最下端での横方向の幅W1は、レッグギャザー側弾性部42の前方側の最上端での横方向の幅W3よりも狭い。
【0073】
パンツ型の状態における縦方向の最下端は着用者の股下側に対応するため、レッグギャザー側弾性部42の横方向の幅を狭くすることでレッグギャザー側弾性部42が有する弾性力を狭い範囲に集中して作用させることができ、肌との間に隙間が生じにくくなり排泄物の漏れの抑制につながる。他方、パンツ型の状態における前方側の最上端は着用者の腹部に対応するため、レッグギャザー側弾性部42の横方向の幅を広くすることでレッグギャザー側弾性部42が有する弾性力を面で分散して作用させることができ、腹部への食い込みの抑制につながる。
【0074】
なお、本実施形態では、弾性シート部材4は、パンツ型の状態において、レッグギャザー側弾性部42の最下端での横方向の幅W1が、後方側の最上端での横方向の幅W2及び前方側の最上端での横方向の幅W3よりも狭く形成されているが、これに限らず、レッグギャザー側弾性部42の横方向の幅がすべて均一に形成されていてもよい。
【0075】
<第1接合部61及び第2接合部62の傾斜角について>
次に、第1接合部61の傾斜角θ1及び第2接合部62の傾斜角θ2について、
図6A及び
図6Bを参照して説明する。
【0076】
図6Aは、着用者が従来のパンツ型おむつを着用した状態を示す側面図であり、
図6Bは、着用者が本実施形態にかかるおむつ1を着用した状態を示す側面図である。
【0077】
従来のパンツ型おむつでは、おむつの前側(腹側)に形成される接合部(本実施形態の第1接合部61に相当)と後側(背側)に形成される接合部(本実施形態の第2接合部62に相当)とは、縦方向について対称に形成されるのが一般的であった。すなわち、前側接合部の縦方向に対する傾斜角度と、後側接合部の縦方向に対する傾斜角度とが同じ角度となるように各接合部が形成されていた。その結果、
図6Aに示されるように、おむつ着用時において吸収性本体の後側(背側)が下方に垂れ下がりやすくなり、おむつ本体と着用者の臀部との間に隙間を生じやすくなるおそれがあった。また、外観上、臀部側がだぶついた印象となり、着用者は「おむつ」を着用していることを意識しやすくなるため、抵抗感を生じさせる場合があった。
【0078】
これに対して、おむつ1では、第1接合部61の縦方向に対する傾斜角度θ1が第2接合部62の縦方向に対する傾斜角度θ2よりも大きくなるように調整されている(θ1>θ2)。その結果、
図6Bに示されるように、おむつ1の着用時において吸収性本体2の後側(背側)が着用者の臀部の上方まで引き上げられ、着用者の臀部との間に隙間が生じにくく、フィット性が向上する。また、外観上、ショーツやブリーフのような下着を着用しているように見え、臀部がすっきりとした印象となるため、着用者に「おむつ」を着用することに対する抵抗感を与えにくくすることができる。
【0079】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。